JP2008514539A - 水素の貯蔵用媒体及び貯蔵法 - Google Patents

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Abstract

本発明は水素の貯蔵用媒体及び貯蔵法に関する。本発明による水素貯蔵用媒体は、1種以上の水素化可能なイオン化合物を含有するか、少なくとも一部が1種以上の水素化可能なイオン化合物で構成されていることを特徴とする。イオン化合物は好ましくは液体及び/又は固体の形態で存在する。

Description

本発明は、水素の貯蔵用媒体並びに貯蔵法に関するものである。
水素の貯蔵及び配送は種々の方式で行うことができる。例えば、水素を圧縮形態で適切な高圧貯蔵容器、即ち最高875バールの圧力で貯蔵可能な容器内に貯蔵することは可能である。
また、極低温に液化された水素を、適切な深冷タンク、好ましくは超断熱形式の深冷タンク中に貯蔵することも知られている。この貯蔵方式は、特に水素燃料自動車(水素燃料内燃機関或いは燃料電池と電動機で走行するかに拘わらず)に採用されている。
試験的な試みとしては、水素と化学的に結合する能力を有する水素化可能な有機化合物を用いて水素を貯蔵する方式が知られている。この種の水素貯蔵方式は、MPH(メチルシクロヘキサン ポルエン 水素(Methylcyclohexane Poluene Hydrogen))方式、デカリン/ナフタレン(Decalin/Naphthalin)方式、及びn−ヘプタン/トルエン(n-Heptan/Toluol)方式等の名称で知られている。
これらの有機化合物を用いた水素貯蔵方式は、水素を適切な条件下で反応させ、その結果として有機化合物を水素化することにより水素の貯蔵を行う点で共通している。
これらの水素貯蔵方式はいずれも固有の長所と欠点を備えており、そのため、どの方式を採用するは、その時々の適用事例と状況によって決定される。最後に挙げたn−ヘプタン/トルエン方式の重大な欠点は、使用される化学反応系が比較的高い蒸気圧を持っており、揮発性であるため、水素の純度が大幅に低下することである。そのため、特に高純度の水素を得るためには、相当の技術的努力及び/又はエネルギーを費やしてこの種の反応系を部分的に除去する必要がある。
純粋又は最高純度の水素の貯蔵を可能とする方式を確立するための絶え間ない努力が続けられているが、その場合、可能な限り安全で且つコスト的に有利な形態で水素の貯蔵ができなければ意味はない。特に燃料電池の動作には極めて高純度の水素が必要とされる。また、水素の燃焼に適合するように改造された内燃機関(通常、排気系の下流側に触媒が接続される)の場合にも、高純度の水素の貯蔵を目指す努力がなされている。これは、水素の純度が低いと水素に随伴する炭化水素が触媒の活性と寿命に悪影響を及ぼす(可能性がある)からである。特に、水素を自動車燃料等の所謂動力用途に使用する場合には安全面が最重要視されることになる。これは、通常はドライバー自身、即ち「技術面に高度の知識を持たない普通の人」の手で行われる燃料補給操作について特に考慮されるべき事項である。
前述の諸問題を解決するために、本発明は1種以上の水素化可能なイオン化合物を含有するか、少なくとも一部が1種以上の水素化可能なイオン化合物で構成されていることを特徴とする水素貯蔵用媒体を提供するものである。
また本発明は対応する水素貯蔵法も提供し、この方法は、1種以上の水素化可能なイオン化合物を含有するか、少なくとも一部が1種以上の水素化可能なイオン化合物で構成された水素貯蔵用媒体を使用することを特徴とする。
本発明において、使用されるイオン化合物は液体及び/又は固体の形態で存在することが好ましい。
液体の形態で存在するイオン化合物は、以下では「イオン性液体」と称する。同様に、固体の形態で存在するイオン化合物は、以下では「イオン性固体」と称する。
従って水素化可能なイオン化合物は、水素と化学的に結合する能力を有するイオン性液体又はイオン性固体である。
イオン性液体は融点が100℃と−90℃の間にある低融点の有機塩類であり、そのようなイオン性液体の多くは、室温において既に液体の形態で存在する。従来の分子状液体とは異なり、イオン性液体は完全にイオン性であり、従って新規で特異的な特性を示す。イオン性液体は、アニオン及び/又はカチオンの構造を変えることにより、またそれらの特性の組み合わせを変えることにより、所要の技術的課題に比較的良好に適応することができる。この理由から、これらのイオン性液体は、所謂「デザイナー溶媒」と呼ぶことができる。これに対して、従来の分子状液体の場合には、構造の変化だけが可能である。
既存の分子状液体に対し、イオン性液体には本質的に分解温度未満の蒸気圧が測定限界未満、即ち測定可能なほどの蒸気圧を持たないという利点がある。これは、イオン性液体が分解温度に達しない限り高真空下においても微量の蒸発すらしないことを意味する。従ってイオン性液体は大気中に気化することができないため非可燃性であり、環境破壊の原因となることもないという有利な特性がもたらされる。
既に述べたように、イオン性液体の融点は定義に従って100℃未満である。所謂液化領域、即ち融点と熱分解点との間の領域は、通常400℃以上である。
加えて、イオン性液体は高い熱安定性を示す。分解温度はしばしば400℃を上回る。イオン性液体の場合、密度及び他の液体との混合挙動は、両方のイオンの選択によって影響を受ける。つまり調節が可能である。更にイオン性液体は導電性であり、そのため危険性をもたらす帯電現象を防止することができるという利点をも有する。
一方、「イオン性固体」は前述のイオン性液体の意味に沿った塩であって、100℃以上の融点を有するものと理解すべきである。更に、イオン性液体とイオン性固体との間には、前述した定義の意味により、原理上の化学的・物理的な相違はない。
本発明に係る水素貯蔵用媒体を適切な条件(圧力、温度、触媒、イオン性液体中への水素の導入等)の下に水素と反応せしめると水素化反応が起こり、それによって水素を本発明による水素貯蔵用媒体に結合させて該貯蔵用媒体中に貯蔵することができる。
貯蔵された水素の遊離によって本発明に係る水素貯蔵用媒体から水素の放出を行うことができる。この逆反応、即ち本発明に係る水素貯蔵用媒体からの水素の放出に必要なエネルギー消費量を軽減するために、本発明の有利な一実施形態による水素貯蔵用媒体は1個以上の共役した、好ましくは芳香族のπ電子系を有する。このπ電子系は、カチオン部、アニオン部、或いはそれら双方のいずれに存在しても良い。更に、1個の分子中に複数個の互いに共役状態又は隔離状態にあるπ電子系が結合していても良い。脱水素された形におけるπ電子系の更なる安定化、即ち水素化された形の熱力学的な意味における不安定化は、適当な置換基で誘導体とすることによって達成される。この場合、これら置換基とπ電子系との相互作用は、誘導効果、共鳴効果、及び/又はフィールド効果によって生じるものである。
関連するカチオン(Q+)nは、R1、R2、R3、R4を互いに同一又は一部同一或いは異種の残基とするとき、前記有機カチオンが、4級アンモニウム(R1R2R3R4N+)カチオン、ホスホニウム(R1R2R3R4P+)カチオン及び/又はスルホニウム(R1R2R3S+)カチオン、及び/又はこれらに類似の4級窒素、燐、或いは硫黄を含むヘテロ芳香族カチオンである。また、これらの残基R1、R2、R3、R4は、直鎖、環状、分岐、飽和及び/又は不飽和のアルキル基、単環又は多環の芳香族又はヘテロ芳香族残基、及び/又は他の官能基で置換されたこれら残基の誘導体であればよく、また残基R1、R2、R3、R4は互いに結合していてもよい。
アニオンとしては、既知のあらゆる有機アニオン及び無機アニオンを使用することができる。本発明の有利な一実施形態では水素化可能なアニオンが使用される。
以上のように、本発明による水素の貯蔵用媒体及び貯蔵法は、従来技術と比較して環境破壊を起こしにくいという優れた特質を持ち、また安全性が高いという長所を備えるものである。

Claims (13)

  1. 1種以上の水素化可能なイオン化合物を含有するか、少なくとも一部が1種以上の水素化可能なイオン化合物で構成されていることを特徴とする水素貯蔵用媒体。
  2. 前記イオン化合物が液体及び/又は固体の形態で存在することを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵用媒体。
  3. 水素吸蔵状態及び/又は水素未吸蔵状態において分解温度未満の蒸気圧が測定限界未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素貯蔵用媒体。
  4. 電気伝導度が0.01mS/cm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水素貯蔵用媒体。
  5. 水素化可能な前記イオン化合物が、1種以上の有機塩、及び/又は有機カチオンと有機及び/又は無機アニオンとからなる一種以上の有機塩混合物で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水素貯蔵用媒体。
  6. R1、R2、R3、R4を互いに同一又は一部同一或いは異種の残基とするとき、前記有機カチオンが、4級アンモニウム(R1R2R3R4N+)カチオン、ホスホニウム(R1R2R3R4P+)カチオン及び/又はスルホニウム(R1R2R3R4S+)カチオン、及び/又はこれらに類似の4級窒素、燐、或いは硫黄を含むヘテロ芳香族カチオンであることを特徴とする請求項5に記載の水素貯蔵用媒体。
  7. 前記残基R1、R2、R3、R4が、直鎖、環状、分岐、飽和及び/又は不飽和のアルキル基、単環又は多環の芳香族又はヘテロ芳香族残基、及び/又は他の官能基で置換されたこれら残基の誘導体であり、残基R1、R2、R3、R4が互いに結合又は非結合の状態にあることを特徴とする請求項6に記載の水素貯蔵用媒体。
  8. 前記無機アニオンが水素化可能なアニオンであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の水素貯蔵用媒体。
  9. 水素化可能な前記イオン化合物が水素の物理的結合能を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の水素貯蔵用媒体。
  10. 1種以上の水素化可能なイオン化合物を含有するか、少なくとも一部が1種以上の水素化可能なイオン化合物で構成された水素貯蔵用媒体を使用することを特徴とする水素貯蔵法。
  11. 前記水素貯蔵用媒体として、前記イオン化合物が液体状及び/又は固体の形態で存在する水素貯蔵用媒体を用いることを特徴とする請求項10に記載の水素貯蔵法。
  12. 前記水素貯蔵用媒体として、水素吸蔵状態及び/又は水素未吸蔵状態において分解温度未満の蒸気圧が測定限界未満の水素貯蔵用媒体を用いることを特徴とする請求項10又は11に記載の水素貯蔵法。
  13. 前記水素貯蔵用媒体として、電気伝導度が0.01mS/cm以上の水素貯蔵用媒体を用いることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の水素貯蔵法。
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