JP2008311583A - 固体電解コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 電気特性を損なうことなく、体積効率が優れたチップ型固体電解コンデンサ、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 アルミニウムの金属フレームに陽極リード線を抵抗溶接した後に、多孔質焼結体の表面に陽極酸化皮膜層の形成を行う。次いで金属フレームの小片を陽極リード線の先端に残して、金属フレームの内部を切断して金属フレームを除去する。そして実装陽極端子材と、金属フレームの小片とをワイヤーボンディングによって電気的に接続する。これにより、金属フレームの小片と多孔質焼結体の端面との間に陽極リード線の空隙を設ける必要がなく、そのため体積効率を向上させたチップ固体電解コンデンサを提供することができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は弁作用金属としてタンタル、ニオブなどの高融点材料を用いた小型の固体電解コンデンサ、およびその製造方法に関する。
弁作用金属としてタンタル、ニオブなどの高融点材料を弁作用金属として用いた固体電解コンデンサは、小型で静電容量が大きく、また周波数特性に優れているため、電子機器に搭載されるCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)のデカップリング回路や、同じく電子機器の電源回路などに広く使用されている。また、携帯型の電子機器にも多く搭載されており、携帯機器の発展に伴い、より一層の小型・大容量化が求められている電子デバイスである。とくに小型のタイプにはチップ型固体電解コンデンサと呼ばれるものがあり、これらは一般に外形が数ミリ角、あるいはそれ以下のサイズの直方体であって、外装樹脂に覆われた形状の製品である。
図4をもとに、従来のチップ型固体電解コンデンサの構成について説明する。図4は従来の一般的なチップ型固体電解コンデンサの構成の例についての側面方向の透視図である。図4において、タンタル、ニオブなどの金属からなる陽極リード線1の周囲には、陽極リード線1と同種の金属による多孔質焼結体2が形成されており、陽極リード線1はその一部が多孔質焼結体2から突出した形状となっている。また、この多孔質焼結体2の表面には陽極酸化処理(化成処理)によって陽極酸化皮膜層が形成されている。この陽極酸化皮膜層の表面に接して固体電解質層が設けられており、さらにその表面には、グラファイト層および陰極層がこの順に設けられている。これら陽極リード線1、多孔質焼結体2、固体電解質層、グラファイト層および陰極層を合わせてコンデンサ素子と称している。ただし図4では、多孔質焼結体2の外側に形成される陽極酸化皮膜層、固体電解質層、グラファイト層および陰極層は、多孔質焼結体2に比べて薄いために図示していない。
タンタル固体電解コンデンサの場合を例に、このコンデンサ素子の作製手順を以下に示す。まず弁作用金属である金属タンタルによる棒状の陽極リード線1を作製する。次いでタンタル多孔質粉末の中に陽極リード線1を埋め込んでプレス成形し、陽極リード線1の一端が突出した多孔質体を作製して真空焼結し、多孔質焼結体2を形成する。次に、例えばステンレスからなる金属フレームを用意し、この金属フレームに前記多孔質焼結体2から突出した陽極リード線1の端部を溶接などにより多数取り付ける。この多数の多孔質焼結体2を取り付けた金属フレームを熱リン酸水溶液などの化成液に浸漬して、電圧を印加して陽極酸化処理を実施し、多孔質焼結体2の表面を陽極酸化することにより陽極酸化皮膜層を形成する。次いでその表面に固体電解質層を形成し、さらにその少なくとも一部にグラファイト層、陰極層をこの順番に形成してコンデンサ素子とする。
次いで金属フレームに固定された陽極リード線1の端部を切断し、各コンデンサ素子から金属フレームを切り離す。この切り離しによって陽極リード線1の突出部の長さが短くなるので、予め切り代を見込んだ突出長さとしておく必要がある。また前記の陽極酸化処理の際に、陽極リード線を溶接した金属フレームに化成液の蒸発、再液化によって液滴が付着すると、それにより金属フレームと化成液面の間にブリッジが生じることとなる。この場合は両者が短絡することとなってしまい、多孔質焼結体2の表面への陽極酸化皮膜層形成に必要な化成電圧を印加できなくなる。このため陽極リード線1の突出長さは、短絡が起きない程度に金属フレームを化成液の液面から遠ざけることのできる長さとしておく必要がある。金属フレームの切り離し後の陽極リード線1の突出部には陽極酸化処理によって陽極酸化皮膜層が形成されているので、必要に応じてその一部を剥離する。次にこのコンデンサ素子の陽極リード線1および陰極層を、2つの電極端子にそれぞれ電気的に接続する。その後このコンデンサ素子を絶縁外装樹脂9により被覆して、各電極端子の一部が樹脂の表面に露出するように形成してチップ型固体電解コンデンサとする。
ここで図4に示した従来例の場合には、陽極リード線1は金属のボンディング材14を介して実装陽極端子材5に、陰極層は導電性接着剤7を介して実装陰極端子材4にそれぞれ接続されている。このボンディング材14は導電性の材料であればどのようなものでもよいが、一般にはアルミニウムなどからなる金属のブロックが用いられ、陽極リード線1とボンディング材14、およびボンディング材14と実装陽極端子材5の間は、一般にはそれぞれ抵抗溶接によって接続固定されている。なお図4ではボンディング材14が台形の形状の場合を図示しているが、チップ型固体電解コンデンサの設計上の必要に応じて任意の形状として構わない。また陽極リード線1は図4ではボンディング材14の側面に溶接されていて、ボンディング材14は陽極リード線1よりも紙面に対して奥の位置に配置されている。一方、陽極リード線1は多孔質焼結体2の中央部をほぼ貫通するように埋設されている。
特許文献1および特許文献2には、前記従来の構成とは異なるチップ型固体電解コンデンサの例が記載されている。このうち特許文献1に記載のチップ型固体電解コンデンサは、前記従来例にて用いられているボンディング材として金属のブロックではなく、ヒューズ機能を有する金属ワイヤーを用いたことが特徴であり、この金属ワイヤーとしては比較的融点の低い、銅合金や42合金(42重量%のNi、58重量%のFeからなる合金)が用いられる。チップ型固体電解コンデンサの下部には一部が絶縁外装樹脂から露出した実装陽極端子材が設けられており、金属ワイヤーはこの実装陽極端子材とワイヤーボンディングなどによって接続されている。一方、金属ワイヤーと陽極リード線の間は熱圧着により接続されている。
また特許文献2でも、陽極リード線と実装陽極端子材の間は同じく金属ワイヤーによって接続されている。この金属ワイヤーには前記特許文献1の場合と同様に、銅合金もしくは42合金が用いられる。なお特許文献2において金属ワイヤーと称されているものは、断面が四角形もしくは円形の柱状の金属片であり、図4に示した金属のブロックによるボンディング材と類似した大きさのものである。ここで金属ワイヤーと陽極リード線の間は抵抗溶接によって電気的に接続固定され、また金属ワイヤーと実装陽極端子材の間は、それぞれ導電性接着剤により電気的に接続されている。
チップ型固体電解コンデンサの小型化、大容量化を目指すには、チップ型固体電解コンデンサ全体の体積に対してコンデンサ素子が占める比率である、体積効率を高めることが重要である。しかし図4に示すように、チップ型固体電解コンデンサの内部ではコンデンサ素子が図4の右側に偏って配置されており、図の左側には陽極リード線の突出部やボンディング材が占有するだけの領域が存在している。体積効率の向上にはこの領域を削減することが重要であるが、以下に示す理由により、従来はこの領域を削減することができなかった。
この領域は、陽極リード線と実装陽極端子材とを接続している金属のブロックなどが置かれるボンディング材の領域と、陽極リード線の突出部のみが占める陽極リード部領域とにさらに分割される。このうちボンディング材の領域を縮小するにはボンディング材そのものを細く形成することが必要である。しかしボンディング材と陽極リード線や実装陽極端子材を、抵抗溶接により十分な信頼性を持って接続する場合は、接続される両者の接続箇所にそれぞれ一定の面積の溶融領域が必要である。そのためボンディング材の断面積をあまり小さくすることはできず、従ってボンディング材の領域の削減には限界がある。
一方、前記陽極リード部領域の削減には別の問題があった。図4に示した従来例や特許文献2に記載の例の場合には、コンデンサ素子の形成後に、陽極リード線とボンディング材や、ボンディング材と同じ役割を果たす金属ワイヤーを、抵抗溶接により接続している。抵抗溶接は一般に信頼性が高く、チップ型固体電解コンデンサの内部素子の接続には適した方法であるが、陽極リード線として用いられるタンタルやニオブが高融点材料である(融点:タンタル2990℃、ニオブ2470℃、前記非特許文献1による)ために、これらの材料と他の金属とを溶接する場合は、溶接箇所を陽極リード線が溶融する温度まで加熱する必要がある。
しかしコンデンサ素子内の陽極酸化皮膜層は、高温に曝された部位がアモルファス相から結晶化相に部分的に変化すると言われている。結晶化相に変化した陽極酸化皮膜層では、相変化した領域にて絶縁性の低下が生じ、漏れ電流が大きくなってしまうという問題があった。このためコンデンサ素子と陽極リード線の溶接箇所は、熱伝導による影響がコンデンサ素子の多孔質焼結体に生じないように、多孔質焼結体の端面から離して設ける必要があった。多孔質焼結体の端面と溶接箇所の離間距離は、経験的に最低でも0.2mmは必要である。このため多孔質焼結体と陽極リード線の溶接箇所の間に、陽極リード部領域を0.2mm以上の長さに渡り設ける必要があった。この陽極リード部領域の設置は図4に示す従来例の場合はもちろん必要であるが、金属ワイヤーと陽極リード線を抵抗溶接にて接続する特許文献2の場合にもやはり必要である。
一方、特許文献1の場合には金属ワイヤーと陽極リード線とは熱圧着により接続しており、また金属ワイヤーと実装陽極端子材の間もワイヤーボンディングによる接続としている。抵抗溶接による接続箇所がないため、熱伝導による影響を考慮する必要がなく、従って多孔質焼結体と陽極リード線の間に陽極リード部領域を設ける必要がない。また抵抗溶接とは異なり、接続箇所に一定の面積の領域を設ける必要もないので、使用する金属ワイヤーを十分に細く成形してボンディング材の領域を縮小させることも可能である。しかし一般にタンタルやニオブなどの金属は濡れ性が非常に悪いことが知られており、そのため熱圧着やはんだ付けなどの方法を用いて陽極リード線と金属ワイヤーの間に信頼性の高い電気的接続を実施することは技術的に難しい。つまり特許文献1に記載の方法では、十分に信頼性の高いチップ型固体電界コンデンサを、量産を前提として歩留まりよく作製することは実際には困難であった。
またこの他の加熱を伴わない接続方法としては、導電性接着剤を用いる方法が知られている。しかしこの接着を金属ワイヤーと陽極リード線との接続部に用いた場合には、導電性接着剤を透過する酸素が原因となって、陽極リード線の金属表面で酸化が生じて接触抵抗が増大してしまう。そのため、tanδ(誘電正接:寄生抵抗に流れる電流、即ちエネルギー損失の比率)およびESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)といった固体電解コンデンサの電気的特性を示す指標が増大してしまうという問題があった。
従って、本発明の課題は、陽極リード線とボンディング材との電気的接続に信頼性のある方法を採用するとともに、その場合であっても前記2つの領域のうち、溶接箇所と多孔質焼結体との間の陽極リード部領域を縮小することのできる、チップ型固体電解コンデンサ、およびその製造方法を提案することである。またそれによってコンデンサとしての電気的特性を損なうことなく、体積効率を高め、また信頼性にも優れたチップ型固体電解コンデンサ、およびその製造方法を提供することである。なおもう1つの領域である、ボンディング材の領域の広さについては、本発明では従来技術と同等である。
前記の課題を解決するために、本発明では、陽極リード線とボンディング材との間の電気的接続を、従来から信頼性が確立された接続方法である、抵抗溶接によって実施することとする。その上で多孔質焼結体の表面に陽極酸化処理を施す際に用いる金属フレームを、弁作用金属であるアルミニウムにて形成することとする。さらに従来は陰極層の形成後に陽極リード線の端部を切断して金属フレームから各コンデンサ素子を切り離していたが、この切り離しの位置を変更して、アルミニウムの金属フレームの内部で切断を行う。これによって陽極リード線の突出部の先端にはアルミニウムの小片である、金属フレームの小片が最後まで残存することとなるので、これを従来技術におけるボンディング材の代わりに、実装陽極端子材への電気的接続を行うための素子として使用する。本発明によるチップ型固体電解コンデンサの製造工程は、例えば弁作用金属としてタンタルを用いた場合は以下の通りである。
まず従来の場合と同様に、弁作用金属であるタンタルによる棒状の陽極リード線を作製して、タンタル多孔質粉末の中に前記陽極リード線を一部突出させて埋め込み、真空焼結によって多孔質焼結体を形成する。このとき陽極リード線の一端が多孔質焼結体から突出するように形成するが、従来の場合とは異なり、陽極リード線の端部を切断する工程は存在しないので、その突出量は短くても構わない。次いでこの突出した陽極リード線の端部をアルミニウムの金属フレームに抵抗溶接によって接続する。この際に、量産性の観点からは金属フレームに取り付ける陽極リード線の端部の数をなるべく多くする必要があり、金属フレームに多数の多孔質焼結体が同時に搭載されるようにする。次いで加熱したリン酸水溶液などの化成液にこれらの多孔質焼結体を浸漬して一度に陽極酸化処理を行い、誘電体の陽極酸化皮膜層をその表面に形成する。このとき、多孔質焼結体から突出している陽極リード線の表面部分にも同時に陽極酸化皮膜層が形成される。
タンタルによる陽極リード線を金属フレームに抵抗溶接によって接続する際には、前記の通りタンタルの融点が高いために溶接領域の周囲が高温に曝されることとなり、溶接領域に近い陽極リード線や多孔質焼結体の表面には結晶化した酸化皮膜が形成される。しかし本発明の場合は抵抗溶接の後に陽極酸化処理が実施されるため、その際に結晶化した酸化皮膜が他の部分と同じアモルファス相の陽極酸化皮膜に置き換えられることとなる。このためには金属フレームを化成液の液面に接近させ、あるいはその一部を浸漬させることによって、多孔質焼結体表面の結晶化した酸化皮膜の部分が確実に化成液内に浸漬するように、金属フレームを設置する必要がある。この場合は、結晶化した酸化皮膜が化成処理の際に確実に消失することとなるため、従来の方法のように、抵抗溶接の際に陽極リード線の溶接領域と多孔質焼結体の端面との間に、陽極リード部領域として一定の距離を設ける必要がない。従って金属フレームとの溶接領域を多孔質焼結体の端面から0.2mm以内に接近させて設けるという、従来の方法では実現できなかった接近配置が可能である。
陽極リード線を溶接した金属フレームを化成液の液面に近づけると、化成液の蒸発、再液化によって金属フレームの表面に液滴が付着して、化成液面との間にブリッジを発生させることがある。この場合はブリッジが金属フレームから液面までの短絡を形成することがあり、その場合は陽極酸化処理に必要な化成電圧を多孔質焼結体に印加することができなくなる。しかし発明者らの検討の結果、アルミニウムによる金属フレームを用いた場合には金属フレームの表面にも陽極酸化による誘電体が形成され、そのためブリッジが金属フレームとは短絡を起こさないことが判明した。従って多孔質焼結体に対して必要な化成電圧を印加し続けることが可能であり、金属フレームを化成液の液面に接近させても陽極酸化処理を問題なく実施することができる。またアルミニウムの金属フレームを化成液に浸漬した場合でも、その表面に陽極酸化皮膜が生じるだけであり、金属フレームが内部まで腐食されることはなく、やはり陽極酸化処理を問題なく進めることができる。
陽極酸化処理の次に、生成した陽極酸化皮膜層の表面に固体電解質層を形成し、さらにグラファイト層および銀ペーストなどによる陰極層を形成してコンデンサ素子とした後に、陽極リード線との溶接箇所を基準にアルミニウムの金属フレームを切断する。このとき金属フレームの小片が陽極リード線とともに残るようにする。これにより形成された金属フレームの切断面に、アルミニウムと合金を作りやすい金線、もしくはアルミニウム線を用いてワイヤーボンディングを行い、実装陽極端子材に電気的に接続する。前記の通り、タンタルなどの金属表面は濡れ性が非常に悪いために、直接ワイヤーボンディングを行うことは困難であるが、アルミニウムの場合は一般に酸化皮膜を除去した面であれば、ワイヤーボンディングは容易である。なお金属フレームの小片の切断面がワイヤーボンディングに利用できない場合には、小片の他の表面に形成された酸化皮膜の一部を除去して新鮮な金属面を形成し、その面に対してワイヤーボンディングを行ってもよい。
一方、実装陰極端子材とコンデンサ素子の陰極層との間は導電性接着剤により電気的に接続する。実装陰極端子材の表面や陰極層は酸化されにくい金属面となっており、そのため導電性接着剤を用いても透過する酸素によって接触抵抗が増大することはない。また、金属フレームの小片の形状によっては、コンデンサ内部の機械的接続強度を増加させるために、実装陽極端子材に対して金属フレームの小片を接着剤で固定してもよく、さらには陰極層と実装陰極端子材との接続工程と同時に行うことができるなどの工程上の理由により、この接着剤として導電性接着剤を用いてもよい。ただし両者の電気的接続はあくまでワイヤーボンディングによって実施する。このときボンディングを行う金属ワイヤーは1本のみに限定する必要はなく、金属ワイヤーの破断やルーズコンタクトの発生による接続不良の可能性を考慮して、2本以上形成してもよい。これらの外部端子への電気的接続を形成した後に、絶縁外装樹脂を被覆してチップ型固体電解コンデンサを形成し、エージングや各種検査を行って製品とする。
以上の課題の解決手段の説明では、陽極リード線や多孔質焼結体を形成する弁作用金属としてタンタルを用いた場合について記述したが、弁作用金属としてニオブを用いた場合でも、まったく同様の方法により、多孔質焼結体と金属フレームの小片の溶接領域とを接近させた、チップ型固体電解コンデンサを形成することができる。
ステンレスなどの金属フレームを用いた従来のチップ型固体電解コンデンサの製造方法と、前記の本発明による製造方法を表にまとめると、それぞれ表1に示す通りである。
即ち、本発明は、弁作用金属による陽極リード線が、同じく弁作用金属からなる多孔質焼結体に前記陽極リード線の一部を前記多孔質焼結体から突出させて埋め込まれて、陽極酸化処理によって表面に誘電体層が設けられた多孔質陽極体と、前記多孔質陽極体に接して設けられた固体電解質層と、実装陽極端子材および実装陰極端子材と、前記実装陽極端子材および前記実装陰極端子材の各々の少なくとも一部を残して、前記多孔質陽極体の突出部および前記固体電解質層を被覆してなる絶縁外装樹脂とを有する固体電解コンデンサであって、前記多孔質焼結体からの前記陽極リード線の突出部が弁作用金属からなる金属フレームに抵抗溶接によって固定され、前記陽極酸化処理の後に、前記陽極リード線の突出部に前記金属フレームの小片を残して前記金属フレームの他の領域が切断除去されており、前記金属フレームの小片と前記実装陽極端子材とがワイヤーボンディングにより接続されて、前記陽極リード線と実装陽極端子材の間が電気的に接続されたことを特徴とする固体電解コンデンサである。
また、本発明は、弁作用金属による陽極リード線が、同じく弁作用金属からなる多孔質焼結体に前記陽極リード線の一部を前記多孔質焼結体から突出させて埋め込まれて、陽極酸化処理によって表面に誘電体層が設けられた多孔質陽極体と、前記多孔質陽極体に接して設けられた固体電解質層と、実装陽極端子材および実装陰極端子材と、スルーホールが設けられた基板と前記基板面にそれぞれ設けられた陽極内部端子および陰極内部端子と、前記陽極内部端子および前記陰極内部端子の各々の少なくとも一部を残して、前記多孔質陽極体および前記固体電解質層を被覆してなる絶縁外装樹脂とを有する固体電解コンデンサであって、前記多孔質焼結体からの前記陽極リード線の突出部が弁作用金属からなる金属フレームに抵抗溶接によって固定され、前記陽極酸化処理の後に、前記陽極リード線の突出部に前記金属フレームの小片を残して前記金属フレームの他の領域が切断除去されており、前記金属フレームの小片と前記陽極内部端子とがワイヤーボンディングにより接続されて、前記陽極リード線と陽極内部端子の間が電気的に接続され、前記陽極内部端子と前記実装陽極端子材、および前記陰極内部端子と前記実装陰極端子材が、それぞれ前記基板を挟み、前記基板にそれぞれ設けられた前記スルーホールを介して電気的に接続されたことを特徴とする固体電解コンデンサである。
さらに、本発明は、前記ワイヤーボンディングによる接続が2以上なされていることを特徴とする固体電解コンデンサである。
さらに、本発明は、前記ワイヤーボンディングによる接続が金線によりなされていることを特徴とする固体電解コンデンサである。
さらに、本発明は、前記金属フレームの小片と前記実装陽極端子材とが接着剤によって固定されていることを特徴とする固体電解コンデンサである。
さらに、本発明は、前記金属フレームの小片と前記陽極内部端子とが接着剤によって固定されていることを特徴とする固体電解コンデンサである。
さらに、本発明は、前記接着剤が導電性接着剤であることを特徴とする固体電解コンデンサである。
さらに、本発明は、前記陽極リード線および前記多孔質焼結体が、いずれもタンタルからなることを特徴とする固体電解コンデンサである。
さらに、本発明は、前記陽極リード線および前記多孔質焼結体が、いずれもニオブからなることを特徴とする固体電解コンデンサである。
さらに、本発明は、前記金属フレームの小片がアルミニウムからなることを特徴とする固体電解コンデンサである。
さらに、本発明は、前記金属フレームの小片と前記陽極リード線の突出部との溶接部と、前記多孔質焼結体の前記陽極リード線の突出部に面した端部との距離が0.2mm以下であることを特徴とする固体電解コンデンサである。
さらに、本発明は、チップ型固体電界コンデンサであることを特徴とする固体電解コンデンサである。
さらに、本発明は、弁作用金属からなる陽極リード線を、同じく弁作用金属からなる多孔質粉末に前記陽極リード線の一部を突出させて埋め込み、焼結することで多孔質焼結体となし、前記陽極リード線の突出部に弁作用金属からなる金属フレームを抵抗溶接によって溶接し、前記多孔質焼結体を化成処理して前記多孔質焼結体の表面に誘電体層を形成して多孔質陽極体となし、前記金属フレームを切断して前記金属フレームの一部を前記陽極リード線の突出部に残して金属フレームの小片となし、前記金属フレームの他の領域を除去し、前記多孔質陽極体の表面に固体電解質層を形成し、実装陽極端子材を設けるとともに、前記実装陽極端子材と前記金属フレームの小片とをワイヤーボンディングによって電気的に接続し、実装陰極端子材を設けるとともに、前記実装陰極端子材と前記固体電解質層とを導電性接着剤によって電気的に接続し、前記実装陰極端子材および前記実装陽極端子材のそれぞれ少なくとも一部を残して、前記多孔質陽極体および前記固体電解質層を絶縁外装樹脂によって被覆することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法である。
さらに、本発明は、弁作用金属からなる陽極リード線を、同じく弁作用金属からなる多孔質粉末に前記陽極リード線の一部を突出させて埋め込み、焼結することで多孔質焼結体となし、前記陽極リード線の突出部に弁作用金属からなる金属フレームを抵抗溶接によって溶接し、前記多孔質焼結体を化成処理して前記多孔質焼結体の表面に誘電体層を形成して多孔質陽極体となし、前記金属フレームを切断して前記金属フレームの一部を前記陽極リード線の突出部に残して金属フレームの小片となし、前記金属フレームの他の領域を除去し、前記多孔質陽極体の表面に固体電解質層を形成し、実装陽極端子材を設けるとともに、前記実装陽極端子材と前記金属フレームの小片とを接着剤によって固定して、前記実装陽極端子材と前記金属フレームの小片とをワイヤーボンディングによって電気的に接続し、実装陰極端子材を設けるとともに、前記実装陰極端子材と前記固体電解質層とを導電性接着剤によって電気的に接続し、前記実装陰極端子材および前記実装陽極端子材のそれぞれ少なくとも一部を残して、前記多孔質陽極体および前記固体電解質層を絶縁外装樹脂によって被覆することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法である。
本発明によれば、多孔質焼結体を形成した陽極リード線とアルミニウムの金属フレームとを信頼性の高い接続方法である抵抗溶接によって固定し、化成液に浸漬して多孔質焼結体の表面に陽極酸化皮膜層を形成する。この際に、アルミニウムの金属フレームと多孔質焼結体とを極めて接近させて固定していても、前記抵抗溶接の際に多孔質焼結体の端面や陽極リード線の表面に形成された結晶化した酸化皮膜は、この陽極酸化処理によって他の部分と同じアモルファス相の酸化皮膜に置き換えられるため、この領域にて絶縁性の低下が生じることがない。また、アルミニウムの金属フレームを用いているので、陽極酸化処理の際に化成液の液面に金属フレームを接近させたり、あるいは浸漬させた場合でも、金属フレームと液面との間に短絡が発生することがなく、前記の接近配置にも関わらず、安定した陽極酸化処理を行うことが可能である。
また、コンデンサ素子の形成後に金属フレーム内で切断を行い、コンデンサ素子の陽極リード線の突出部の端部にアルミニウムによる金属フレームの小片が残存するようにする。そしてその切断面や新たに設けた酸化皮膜の除去面と、実装陽極端子材との間を、ワイヤーボンディングによって電気的に接続する。以上の方法によって、アルミニウムの金属フレームの小片と、多孔質焼結体の端面との間の陽極リード部領域を縮小させることができ、それによりチップ型固体電解コンデンサの体積効率を高めることができる。以上の方法によって、十分な電気的特性を有し、体積効率が高く、しかも信頼性にも優れたチップ型固体電解コンデンサ、およびその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態によるチップ型固体電解コンデンサ、およびその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明において製造される、チップ型固体電解コンデンサの第1の実施の形態の構成の例を示す側面方向の透視図である。図1において、タンタル、ニオブなどの金属からなる陽極リード線1の周囲には、図4に示される従来例の場合と同様に陽極リード線1と同種の金属による多孔質焼結体2が形成されている。多孔質焼結体2の表面には、図示していないものの陽極酸化皮膜層、固体電解質層、グラファイト層および陰極層が順に形成されており、陽極リード線1を含むこれらの各要素がコンデンサ素子を形成している。なお陽極酸化皮膜層、固体電解質層、グラファイト層および陰極層の各層は、多孔質焼結体2に比べてかなり薄い層である。陽極リード線1の多孔質焼結体2からの突出部にはアルミニウムからなる金属フレームの小片3が抵抗溶接により固定されており、またこのチップ型固体電解コンデンサの下方には、外部端子である実装陽極端子材5および実装陰極端子材4がそれぞれ設けられている。これらの各素子の隙間は絶縁外装樹脂9によって充填されており、チップ型固体電解コンデンサの表面には実装陽極端子材5および実装陰極端子材4のそれぞれ一部が露出しているのみである。
金属フレームの小片3と実装陽極端子材5の間はボンディングワイヤー6によって電気的に接続されており、また陰極層と実装陰極端子材4の間は導電性接着剤7によって電気的に接続されている。金属フレームの小片3と実装陽極端子材5は接着剤8によっても接続されているが、これは両者を強固に固定するために設けられたものである。この接着剤8として導電性接着剤を用いた場合には、工程上は陰極層と実装陰極端子材4の間の電気的接続と同時に実施することができる利点があり、また導電性接着剤による導通経路を設けることは、結果としてワイヤーボンディングの断線などに対する接続信頼性の向上にも寄与する。またボンディングワイヤー6は1本ではなく、複数本設けても構わない。
なお図1において、陽極リード線1は金属フレームの小片3の側面に溶接されており、そのため金属フレームの小片3は陽極リード線1よりも実際には紙面に対して奥の位置に配置されている。一方、陽極リード線1は多孔質焼結体2の中央部をほぼ貫通するように埋設されている。またボンディングワイヤー6の位置は金属フレームの小片3と実装陽極端子材5とを接続するのであれば任意であるが、金属フレームの小片3の側のボンディング面は、金属フレームからの切断面か、もしくは新規に酸化皮膜の剥離を行った面とする必要がある。
同様に、図2は本発明において製造される、チップ型固体電解コンデンサの第2の実施の形態の構成の例を示す側面方向の透視図であり、図3は同じく第3の実施の形態の構成の例を示す側面方向の透視図である。図2は金属フレームの小片3と実装陽極端子材5の間に両者を固定する接着剤の領域を設けていない場合であり、両者の間には絶縁外装樹脂9が充填されている。
また図3は基板13を新たに設けて、実装陽極端子材5および実装陰極端子材4をこの基板13の面上に形成した場合である。金属フレームの小片3は基板13の裏面の陽極内部端子12にボンディングワイヤー6により電気的に接続され、また陰極層は同じく基板13の裏面の陰極内部端子11に導電性接着剤7によりそれぞれ電気的に接続されている。また金属フレームの小片3は陽極内部端子12に接着剤8によって固定されている。基板13を挟む陽極内部端子12と実装陽極端子材5、陰極内部端子11と実装陰極端子材4はそれぞれ基板13を貫通するスルーホール10によって電気的に接続されている。
なお図2および図3においても、陽極リード線1は金属フレームの小片3の側面に溶接されており、そのため金属フレームの小片3は陽極リード線1よりも実際には紙面に対して奥の位置に配置され、また陽極リード線1は多孔質焼結体2の中央部をほぼ貫通するように埋設されている。ボンディングワイヤー6の位置は金属フレームの小片3と実装陽極端子材5とを接続するのであれば任意であるが、金属フレームの小片3との接続面は、金属フレームからの切断面か、もしくは新規に酸化皮膜を剥離した面とする。
次に、本発明の第1の実施の形態の場合における、チップ型固体電解コンデンサおよびその製造方法について説明する。
チップ型固体電解コンデンサのコンデンサ素子を構成する多孔質焼結体は弁作用金属からなる必要がある。この弁作用金属としては、タンタルもしくはニオブを用いることが好適である。以下では、タンタルを用いたチップ型タンタル固体電解コンデンサの場合について説明するが、ニオブを用いた場合にも同様の結果を得ることができる。また工程のうち、公知技術である部分については詳細な解説を省略する。
まず、タンタルからなる陽極リード線を作製し、これを埋め込んだタンタル多孔質粉末のプレス成形体を真空焼結して、多孔質焼結体を形成する。多孔質焼結体の一端からは前記陽極リード線の一部が突出した形状とする。次いでアルミニウムの金属フレームを用意し、この金属フレームに、多孔質焼結体の陽極リード線の一端を抵抗溶接によって多数溶接する。金属フレームに溶接する多孔質焼結体の個数を多くするのは、量産性を高めるためである。このとき多孔質焼結体の端面と、アルミニウムの金属フレームの溶接箇所の間の溶接距離を0.2mm以下とする。この距離はもっと短くても構わず、距離を短くするほどチップ型固体電解コンデンサの体積効率を高めることができる。このとき、距離を短くすることにより熱伝導により多孔質焼結体の表面の一部に結晶化した酸化皮膜が形成されることとなるが、この酸化皮膜は次の化成工程での陽極酸化処理にてよりモルファス相に置き換わるため、問題とはならない。
次に、金属フレームに接続したままの前記多孔質焼結体を、熱リン酸水溶液などの化成液に浸漬して電圧を印加し、陽極酸化処理を実施する。これによって多孔質焼結体の表面に、誘電体層であるTa2O5による陽極酸化皮膜層を形成する。このとき化成液の蒸発、再液化によって金属フレームと化成液面の間にブリッジが形成されても、弁作用金属であるアルミニウムの金属フレームの表面も酸化されて酸化皮膜が形成されるため、ブリッジとの接触部が誘電体となって短絡による電圧降下を防止する。次に形成された陽極酸化皮膜層の表面に固体電解質層を形成する。固体電解質層としては硝酸マンガンを熱分解することによってMnO2層を形成してもよく、またピロール、チオフェンまたはこれらの誘導体を重合して、導電性高分子とした層を形成してもよい。これらの固体電解質層の表面の少なくとも一部にグラファイトペースト、銀ペーストを順次形成して、グラファイト層および陰極層を備えたコンデンサ素子とする。
次いで、金属フレームのうち、陽極リード線を抵抗溶接した部位の周辺を切断して個片化し、金属フレームの小片とする。さらにチップ型固体電解コンデンサの外部端子である実装陽極端子材と、この金属フレームの小片の切断面とを、ワイヤーボンディングによって電気的に接続する。このときボンディングワイヤーの材料としては、金属フレームの小片をなすアルミニウムと合金を作りやすい性質を持つ、金線またはアルミニウム線が好適である。なお金属フレームの小片に、新鮮な金属表面が露出していてしかも平坦な、ワイヤーボンディング接続に適した面が形成されていない場合は、研磨などによって酸化皮膜を剥離し、新たにワイヤーボンディングに適した面を形成する必要がある。
またワイヤーボンディングの際の超音波接合では、振動が直接加えられる素子は金属フレームの小片であり、多孔質焼結体には、この金属フレームの小片と陽極リード線の2つを介して超音波の振動が伝わることとなる。このため、接合時の振動による誘電体である陽極酸化皮膜層を破壊するようなダメージが伝わりにくくなる。またワイヤーボンディングによる接続対象もタンタルなどの高融点材料ではなく、より低融点なアルミニウムであるために、必要な加熱温度を小さくすることができる。さらにワイヤーボンディングによる加熱位置を、陽極リード線の溶接部とは離れた位置に設けることもできる。これらの結果として、陽極酸化皮膜層に対するワイヤーボンディングによる熱伝導の影響を十分に小さなものとして、陽極酸化皮膜層の破壊を防ぐことができる。以上の効果によって、陽極リード線の溶接箇所と多孔質焼結体の端部との間の距離を短くした場合であっても、ワイヤーボンディングによって、コンデンサ素子の誘電体層が破壊される危険を十分に小さくすることができる。
ワイヤーボンディングは、半導体の製造技術として実績があり、接続信頼性に優れた電気的接続方法として知られている。従って、この技術をチップ型固体電解コンデンサの製造工程に適用した場合にも、同様に高い接続信頼性を得ることが可能である。とくに、ボンディングワイヤーとして金線を用いた場合はその低抵抗性により、tanδやESRを十分に小さくすることができる。アルミニウムの金属フレームの小片はワイヤーボンディングによって実装陽極端子材に電気的に接続されているが、絶縁外装樹脂などの熱膨張に起因する熱応力による変形によって、コンデンサ素子と実装陽極端子材や実装陰極端子材との電気的接続が妨げられるような場合には、金属フレームの小片と実装陽極端子との間を接着剤により固定して、この熱応力による変形への対策としてもよい。このとき導電性接着剤を用いるならば、陰極層と実装陰極端子材との導電性接着剤による固定と同じ工程によって固定作業を行うことができるために有利である。
この導電性接着剤による電気的な接続は、金属フレームの小片と実装陽極端子材との間にワイヤーボンディング以外の導通経路を設けることになるために、断線などに対する接続信頼性の向上の面では有利である。しかし前記の通り、導電性接着剤を透過する酸素による接触面での接触抵抗の増大の問題があるため、実装陽極端子材への主要な電気伝導の経路とすることはできない。金属フレームの小片と実装陽極端子材との主要な電気的な接続は、あくまでワイヤーボンディングの経路によって行われる。またワイヤーボンディングによる経路は1本に限定する必要はなく、絶縁外装樹脂の被覆の際の成形圧力や、はんだ付けリフローによる熱応力発生による断線を考慮して、ボンディングワイヤーを2本以上設けてもよい。実装陽極端子材および実装陰極端子材としては従来構造のリードフレームを用いることができる。実装陰極端子材とコンデンサ素子の陰極層の間を銀フィラーなどを含む導電性接着剤により接続し、その後コンデンサ素子外部に絶縁性外装樹脂を被覆して形成し、エージングおよび特性検査を行うことにより、この方法で本発明の第1の実施の形態の場合のチップ型固体電解コンデンサを得ることができる。
本発明の第2の実施の形態の場合におけるチップ型固体電解コンデンサは、本発明の第1の実施の形態の場合において、金属フレームの小片と実装陽極端子材との間に接着剤による固定を行わない場合のものである。この場合は両者の間の隙間に絶縁性外装樹脂が充填されることとなり、この両者は1本もしくは複数のボンディングワイヤーのみによって電気的に接続される。
本発明の第3の実施の形態の場合におけるチップ型固体電解コンデンサは、本発明の第1の実施の形態の場合において、実装陽極端子材および実装陰極端子材をそれぞれ基板上に設けたものである。この基板にはスルーホールが設けられており、基板の裏側の面には各端子材に対して内部陽極端子および内部陰極端子が設けられ、前記スルーホールを介してそれぞれ実装陽極端子材および実装陰極端子材と電気的に接続されている。金属フレームの小片はワイヤーボンディングおよび接着剤によって内部陽極端子と、コンデンサ素子の陰極層は導電性接着剤によって内部陰極端子にそれぞれ接続されている。実装陽極端子材および実装陰極端子材が基板上に設けられているためにリードフレームなどを用いる必要がなく、外部電極端子を電極箔などにより構成することができる。
本発明の第1、第2、第3のそれぞれの実施の形態の場合に基づき、実際にチップ型固体電解コンデンサを作製してその電気的特性を測定した。また比較例として、陽極酸化処理の後で金属フレームを切り離し、その後で陽極リード線とボンディング材とを抵抗溶接により接続する、従来の方法によるチップ型固体電解コンデンサを作製して、その電気的特性を同様に測定した。各実施例および比較例とも、それぞれの作製条件を変化させて複数の異なる形状の試料を作製し、それらの体積効率やその向上量、およびtanδとESRの電気的特性の値を比較した。
まず、標準のコンデンサとして、容量が10μFのチップ型固体電解コンデンサについて検討した。この容量のコンデンサは、多孔質焼結体の部分のみの寸法が、長さ1.0mm×幅0.6mm×高さ0.3mmの場合に実現することができた。この寸法の多孔質焼結体を有するチップ型固体電解コンデンサを従来の方法によって実現する場合、前記の通り陽極リード部領域としては最低でも0.2mmの長さが必要である。図4に示す形状の従来のコンデンサを作製する場合、絶縁外装樹脂や実装陽極端子材、実装陰極端子材を含むチップ型固体電解コンデンサの外形寸法は、長さ1.6mm×幅0.85mm×高さ0.5mmであった。なおこのときの体積効率(チップ型固体電解コンデンサ全体の体積に対する、多孔質焼結体の部分の体積の比率)は0.265である。従来のチップ型固体電解コンデンサの場合、長さ、幅、高さとも、外形寸法をこれ以上小さくすると絶縁外装樹脂が薄くなって必要な強度を保つことができなくなったり、各端子材を設置する領域が確保できなくなるなどの問題が生じることとなる。
本発明のチップ型固体電解コンデンサにおいて、この形状から陽極リード部領域を小さくして体積効率を向上させ、コンデンサの特性を向上させる場合を考える。ここで体積効率の向上をコンデンサの静電容量の向上に振り分けても、その向上量は十数%に過ぎず、静電容量の一般的なばらつきの規格(±20%)に比較して有意な値とはいえない。チップ型固体電解コンデンサのニーズとしてはとくに低背化の要求が強いので、体積効率の向上を静電容量の増加ではなく、それによるチップ高さの低減に振り分けることとする。この場合、外形寸法のうち、長さおよび幅は一定とする。
陽極リード部領域の長さを、当初の0.2mmから0.12mm、0.08mm、0mmと順に短くしていき、チップ型固体電解コンデンサが内蔵する多孔質焼結体の長さをその分だけそれぞれ長くする。多孔質焼結体の長さと陽極リード部領域の長さの合計は変化させないので、チップ型固体電解コンデンサの外形長さは変化しない。ここで、大きな凹凸を持つ陽極酸化皮膜層は多孔質焼結体のほぼ全体に渡って設けられていることから、この層における陽極側と陰極側の対向面積は、多孔質焼結体の体積に概ね比例すると考えられる。従って、陽極リード部領域の長さの減少によって多孔質焼結体の底面積が増加した場合、その増加量はほぼ静電容量の増加量に比例する。逆にその分の多孔質焼結体の高さを減少させて多孔質焼結体の体積を一定に保つ場合には、静電容量もほぼ一定に保たれることとなる。
以上の検討をもとに、本発明の第1、第2、第3の各実施の形態および比較例にそれぞれ基づくチップ型固体電解コンデンサを各20個ずつ作製し、その静電容量、tanδ、ESRの値をそれぞれ測定し、合否を判定した。各コンデンサ素子での外形寸法の長さと幅の値は同一であり、その高さのみを変化させている。その結果を表2に示す。表2において、各チップ型固体電解コンデンサの外形の長さと幅はそれぞれ1.6mm、0.85mmであり、外形高さは表2に示す通りである。
また内蔵する多孔質焼結体の幅は0.6mmで共通であり、高さは各素子の外形高さからそれぞれ0.2mmを引いた値である。体積効率は計算値である。向上量は各実施形態の中で陽極リード部領域の長さが0.2mmの場合を基準として、体積効率がどの程度向上したのかを記述した値である。静電容量、tanδ、ESRのそれぞれの値は実測値である。実施例および比較例の電気的特性は、各20個の試料の測定値のそれぞれ平均値である。また合否の判定は、tanδおよびESRの値がそれぞれの規格(tanδ:0.04+0.005以下、ESR:300mΩ以下)内であった場合を合格(「○」を付与)とした。なお静電容量(容量(μF)と記載)の値が、規格である10±2.0μFから外れた試料はなかった。
表2において、本発明の第1の実施の形態に基づく実施例1〜4のチップ型固体電解コンデンサでは、いずれも電気的特性は良好であり、陽極リード部領域を短縮して外形高さを低くしても、作製されたコンデンサ素子は比較例1の場合に比べて全く遜色のないものであった。この傾向は本発明の第2の実施の形態に基づく実施例5〜8、第3の実施の形態に基づく実施例9〜12の場合でも同様であり、陽極リード部領域を全く無くした場合でも、特性上の問題はとくに生じていない。一方、従来形状のままで陽極リード部領域を短縮し、あるいは全く無くした比較例2〜4の場合には、いずれもtanδおよびESRの値が劣化して規格から外れてしまう。これは陽極リード線への抵抗溶接によって多孔質焼結体の端面付近の陽極酸化皮膜層に結晶化相が生じ、それによってリーク電流が発生したことが原因であると考えられる。従ってこの場合にはコンデンサの体積効率の向上を図ることができず、本発明にて提案した方法は、チップ型固体電解コンデンサの低背化を図る上で効果的であることが分かる。
以上示したように、本発明のチップ固体電解コンデンサによれば、多孔質焼結体の表面への化成処理の際に、陽極リード線に抵抗溶接したアルミニウムの金属フレームを用い、その後にこの金属フレームの小片を陽極リード線の端部に残して、金属フレーム内部を切断して除去する。そして実装陽極端子材と、金属フレームの小片をワイヤーボンディングにて電気的に接続することにより、陽極リード部領域を設ける必要がなく、しかも体積効率を向上させたチップ固体電解コンデンサを提供することができる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、この実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、なしえるであろう各種変形、修正を本発明が含むことはもちろんである。
1 陽極リード線
2 多孔質焼結体
3 金属フレームの小片
4 実装陰極端子材
5 実装陽極端子材
6 ボンディングワイヤー
7 導電性接着剤
8 接着剤
9 絶縁外装樹脂
10 スルーホール
11 陰極内部端子
12 陽極内部端子
13 基板
14 ボンディング材
2 多孔質焼結体
3 金属フレームの小片
4 実装陰極端子材
5 実装陽極端子材
6 ボンディングワイヤー
7 導電性接着剤
8 接着剤
9 絶縁外装樹脂
10 スルーホール
11 陰極内部端子
12 陽極内部端子
13 基板
14 ボンディング材
Claims (14)
- 弁作用金属による陽極リード線が、同じく弁作用金属からなる多孔質焼結体に前記陽極リード線の一部を前記多孔質焼結体から突出させて埋め込まれて、陽極酸化処理によって表面に誘電体層が設けられた多孔質陽極体と、
前記多孔質陽極体に接して設けられた固体電解質層と、
実装陽極端子材および実装陰極端子材と、
前記実装陽極端子材および前記実装陰極端子材の各々の少なくとも一部を残して、前記多孔質陽極体の突出部および前記固体電解質層を被覆してなる絶縁外装樹脂とを有する固体電解コンデンサであって、
前記多孔質焼結体からの前記陽極リード線の突出部が弁作用金属からなる金属フレームに抵抗溶接によって固定され、前記陽極酸化処理の後に、前記陽極リード線の突出部に前記金属フレームの小片を残して前記金属フレームの他の領域が切断除去されており、
前記金属フレームの小片と前記実装陽極端子材とがワイヤーボンディングにより接続されて、前記陽極リード線と実装陽極端子材の間が電気的に接続されたことを特徴とする固体電解コンデンサ。 - 弁作用金属による陽極リード線が、同じく弁作用金属からなる多孔質焼結体に前記陽極リード線の一部を前記多孔質焼結体から突出させて埋め込まれて、陽極酸化処理によって表面に誘電体層が設けられた多孔質陽極体と、
前記多孔質陽極体に接して設けられた固体電解質層と、
実装陽極端子材および実装陰極端子材と、
スルーホールが設けられた基板と
前記基板面にそれぞれ設けられた陽極内部端子および陰極内部端子と、
前記陽極内部端子および前記陰極内部端子の各々の少なくとも一部を残して、前記多孔質陽極体および前記固体電解質層を被覆してなる絶縁外装樹脂とを有する固体電解コンデンサであって、
前記多孔質焼結体からの前記陽極リード線の突出部が弁作用金属からなる金属フレームに抵抗溶接によって固定され、前記陽極酸化処理の後に、前記陽極リード線の突出部に前記金属フレームの小片を残して前記金属フレームの他の領域が切断除去されており、
前記金属フレームの小片と前記陽極内部端子とがワイヤーボンディングにより接続されて、前記陽極リード線と陽極内部端子の間が電気的に接続され、
前記陽極内部端子と前記実装陽極端子材、および前記陰極内部端子と前記実装陰極端子材が、それぞれ前記基板を挟み、前記基板にそれぞれ設けられた前記スルーホールを介して電気的に接続されたことを特徴とする固体電解コンデンサ。 - 前記ワイヤーボンディングによる接続が2以上なされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記ワイヤーボンディングによる接続が金線によりなされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記金属フレームの小片と前記実装陽極端子材とが接着剤によって固定されていることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記金属フレームの小片と前記陽極内部端子とが接着剤によって固定されていることを特徴とする請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記接着剤が導電性接着剤であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記陽極リード線および前記多孔質焼結体が、いずれもタンタルからなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記陽極リード線および前記多孔質焼結体が、いずれもニオブからなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記金属フレームの小片がアルミニウムからなることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記金属フレームの小片と前記陽極リード線の突出部との溶接部と、前記多孔質焼結体の前記陽極リード線の突出部に面した端部との距離が0.2mm以下であることを特徴とする請求項9に記載の固体電解コンデンサ。
- チップ型固体電界コンデンサであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
- 弁作用金属からなる陽極リード線を、同じく弁作用金属からなる多孔質粉末に前記陽極リード線の一部を突出させて埋め込み、焼結することで多孔質焼結体となし、
前記陽極リード線の突出部に弁作用金属からなる金属フレームを抵抗溶接によって溶接し、
前記多孔質焼結体を化成処理して前記多孔質焼結体の表面に誘電体層を形成して多孔質陽極体となし、
前記金属フレームを切断して前記金属フレームの一部を前記陽極リード線の突出部に残して金属フレームの小片となし、前記金属フレームの他の領域を除去し、
前記多孔質陽極体の表面に固体電解質層を形成し、
実装陽極端子材を設けるとともに、前記実装陽極端子材と前記金属フレームの小片とをワイヤーボンディングによって電気的に接続し、
実装陰極端子材を設けるとともに、前記実装陰極端子材と前記固体電解質層とを導電性接着剤によって電気的に接続し、
前記実装陰極端子材および前記実装陽極端子材のそれぞれ少なくとも一部を残して、前記多孔質陽極体および前記固体電解質層を絶縁外装樹脂によって被覆することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。 - 弁作用金属からなる陽極リード線を、同じく弁作用金属からなる多孔質粉末に前記陽極リード線の一部を突出させて埋め込み、焼結することで多孔質焼結体となし、
前記陽極リード線の突出部に弁作用金属からなる金属フレームを抵抗溶接によって溶接し、
前記多孔質焼結体を化成処理して前記多孔質焼結体の表面に誘電体層を形成して多孔質陽極体となし、
前記金属フレームを切断して前記金属フレームの一部を前記陽極リード線の突出部に残して金属フレームの小片となし、前記金属フレームの他の領域を除去し、
前記多孔質陽極体の表面に固体電解質層を形成し、
実装陽極端子材を設けるとともに、前記実装陽極端子材と前記金属フレームの小片とを接着剤によって固定して、前記実装陽極端子材と前記金属フレームの小片とをワイヤーボンディングによって電気的に接続し、
実装陰極端子材を設けるとともに、前記実装陰極端子材と前記固体電解質層とを導電性接着剤によって電気的に接続し、
前記実装陰極端子材および前記実装陽極端子材のそれぞれ少なくとも一部を残して、前記多孔質陽極体および前記固体電解質層を絶縁外装樹脂によって被覆することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
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- 2008-06-17 US US12/140,373 patent/US7619876B2/en active Active
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