JP2008308705A - 打ち抜き加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.012%以下、Si:0.20%以下、Mn:0.25%以下、P:0.015〜0.05%、S:0.005%以下、Al:0.06%以下、N:0.012%以下、Cr:20.5〜23.5%、Cu:0.3〜0.6%、Ni:0.5%以下、Ti:0.20〜0.35%を含有するスラブを1100℃以上に加熱後、仕上圧延終了温度を900℃以上とする熱間圧延し、400〜550℃で巻き取り、熱延板焼鈍し、酸洗し、冷間圧延したのち850℃以上の温度で仕上焼鈍することにより、FeTiPとしてのPが0.005%以上、フェライト粒径が30μm以下、降伏比が0.65以上のフェライト系ステンレス鋼板とする。
【選択図】なし
Description
C:0.012mass%以下
Cは、Cr炭化物を形成して鋭敏化を引き起こす原因となる。そこで、本発明では、Tiを添加して、CをTiCとして固定している。このTiCの析出物は、微細であり、鋼を析出強化する作用がある。しかし、Cの含有量が0.012mass%を超えると、TiCの析出量が多くなり、剪断時のかえりの抑制に有効なFeTiPの形成に必要なTi量が減少することになるため、かえりが大きくなる。よって、Cの含有量は0.012mass%を上限とする。好ましくは、0.010mass%以下である。
Siは、固溶強化元素であり、鋼を硬質化し、延性を低下させる。そのため、本発明では、Siの含有量は0.20mass%以下とする必要がある。好ましくは、0.12mass%以下である。
Mnは、耐食性を劣化させる元素であり、また、打ち抜き加工性を劣化させるMnSを構成する元素でもある。MnSは、フェライト粒界に片状に析出して、フェライト粒を展伸粒とし、打ち抜き加工時のかえりを大きくする。よって、本発明では、Mn含有量は0.25mass%以下とする必要がある。好ましくは、0.20mass%以下である。
Pは、FeTiPを形成して打ち抜き時の亀裂の発生、進展を促し、かえりの高さを低減する働きを有する、本発明においては重要な元素の1つである。上記効果を得るためには、Pを0.015mass%以上含有させる必要がある。しかし、0.05mass%超え添加すると、材料の脆化を招くことから、上限を0.05mass%とする。好ましくは、0.025〜0.035mass%の範囲である。
Sは、MnSあるいはTiSを形成して、フェライト粒の等軸化を抑制し、展伸化を促進するため、かえりの発生を助長する。この現象を防止するには、S含有量を0.005mass%以下とする必要がある。好ましくは、0.003mass%以下である。
Alは、脱酸剤として添加される成分であり、鋼の清浄度を向上させるためには、0.02mass%以上添加するのが好ましい。しかし、多量に添加すると、AlNを析出して、フェライト粒の成長を抑制するほか、フェライト粒が圧延方向に展伸する原因ともなる。そこで、本発明においては、Alは0.06mass%以下とする。好ましくは、0.045mass%以下である。
Nは、Tiと結合してTiNを形成する。特に、N含有量が0.012mass%を超えると、鋼中に粗大な直方体のTiNが多量に析出して鋼板の伸びを低下させるとともに、本発明において重要なFeTiP析出量が減少してしまう。よって、N含有量は0.012mass%以下とする。好ましくは、0.0080mass%以下である。
Crは、ステンレス鋼表面に不動態被膜を形成し、耐食性を向上させる重要な元素であるが、本発明では、鋼の加工硬化を抑制し、かえり高さを低減するものとして添加する。かえりを低減するためには、Crを20.5mass%以上添加する必要がある。しかし、23.5mass%を超えると、Crによる再結晶の遅延が顕著となり、フェライト粒が圧延方向に伸びやすくなるため、かえりが大きくなる。よって、Cr含有量の上限は23.5mass%とする。好ましくは、20.8〜21.8mass%の範囲である。
Cuは、Cr含有量が20.5mass%以上の鋼板の加工硬化を低減する働きがある。よって、Crを20.5mass%以上含有する本発明の鋼板では、Cuを0.3mass%以上添加して加工硬化を抑制してかえりを低減する。ただし、0.6mass%を超えて添加すると、CuSが析出してフェライト粒が展伸しやすくなるので、かえりが大きくなる。よって、Cuの上限は0.6mass%とする。好ましくは、0.5mass%以下である。
Niは、耐食性を向上させる元素であるが、多量に添加すると、鋼を硬質化して延性低下の原因となる。よって。Ni含有量は0.5mass%以下とする。好ましくは、0.25mass%以下である。
Tiは、FeTiPを形成し、かえりの発生を抑制する、本発明においては重要な元素の1つである。また、Tiは、C,N,Sと結合して炭化物、窒化物、硫化物を形成する。Ti含有量が0.20mass%未満では、これらの元素の固定に消費された後で、さらに、本発明で重要な働きをするFeTiPを析出させることができない。よって、Tiは0.20mass%以上添加する必要がある。一方、Tiを0.35mass%超え添加すると、再結晶が抑制されてフェライト粒が展伸しやすくなるとともに、FeTiPの析出物が粗大化して、分布密度が小さくなり、逆にかえりの発生を促進してしまう。よって、Tiの上限は0.35mass%とする。好ましくは、Tiは、0.25〜0.3mass%の範囲である。
FeTiPとしてのP:0.005mass%以上
FeTiPは、本発明の鋼板においては、打ち抜き時における亀裂発生の起点となり、かえりの発生を抑制する重要な働きを有するものである。この効果を発現させるためには、少なくともP量に換算して0.005mass%以上のFeTiPが析出している必要がある。これを下回ると、亀裂発生の密度が減少し、かえりが大きくなる。
フェライト粒径が大きいと、打ち抜き時に起こる1つ1つのフェライト粒の変形量が大きくなるため、かえりが大きくなる。そこで、フェライト粒径は30μm以下とする必要がある。好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下である。
降伏比が小さいと、加工硬化が大きくため、フェライト粒が変形しやすくなる。このため、1つ1つのフェライト粒の変形量が大きくなって、かえりが大きくなる。そこで、降伏比を0.65以上とする。好ましくは、0.70以上である。
本発明のフェライト系ステンレス鋼板の素材となる鋼スラブの製造は、通常公知の方法を用いることができ、例えば、転炉、電気炉等で鋼を溶製し、必要に応じて、RH脱ガス装置やAOD炉、VOD炉等で2次精錬して上記成分組成に調整し、その後、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法でスラブとするのが好ましい。
スラブ加熱温度:1100℃以上
熱間圧延に先立つスラブの加熱温度は、1100℃以上とする必要がある。1100℃未満では、熱間圧延組織が熱延板に残留し易くなり、フェライト粒が圧延方向に展伸し易くなり、かえりを大きくするからである。
熱間圧延における仕上圧延終了温度は、900℃以上とする必要がある。900℃を下回ると、熱間圧延中に材料が再結晶しにくくなり、結果的にフェライト粒が展伸しやすくなるからである。
熱間圧延後の巻取温度は、熱延板中の析出物の制御に重要であり、400〜550℃の範囲とする必要がある。巻取温度が400℃を下回ると、FeTiPが熱延板の粒内に析出せず、続く、熱延板焼鈍時にFeTiPがフェライト粒界に析出してフェライト粒を展伸化し、これが冷延焼鈍板まで引き継がれて冷延焼鈍板のかえりを大きくする。一方、巻取温度が550℃を超えると、FeTiPが粒界に粗大に析出し、析出密度が低下してしまうからである。好ましくは、430〜480℃の範囲である。
熱延板焼鈍温度:800〜900℃
熱延板焼鈍温度は、800〜900℃の範囲で行うのが好ましい。800℃未満では、熱延板の再結晶が不十分でフェライト粒が展伸化し、一方、900℃を超えると、FeTiPが再び溶解し、冷延板の仕上焼鈍の再結晶する前にフェライト粒界に析出してフェライト粒を展伸させてしまうためである。
冷間圧延後の仕上焼鈍温度は、850℃以上とする。850℃を下回ると、圧延方向に展伸した冷間圧延組織が残留し易くなり、かえりが大きくなる。また、再結晶が不十分となり、伸びも極端に低くなるからである。好ましくは、870〜920℃の範囲である。
上記冷延焼鈍板から、引張方向が圧延方向と平行になるよう、JIS13号B試験片を採取して引張試験を行い、引張強さTS、降伏比YRおよび破断までの伸びElを測定した。
(2)打ち抜き性の評価
上記冷延焼鈍板を、クリアランス12%で、20mmφの穴を打ち抜き加工し、剪断面のかえりの高さを測定した。
(3)フェライト結晶粒径の測定
上記冷延焼鈍板の圧延方向に平行な板厚断面の板厚中央部を鏡面研磨し、王水で腐食して組織を現出し、JIS G0552に規定された切断法で、フェライト粒のASTM公称粒径を測定した。粒径の測定は、実際の長さが800μmの線分を写真上に、板厚方向に5本、圧延方向に5本引き、これらの線分とフェライト粒界の交点を数え、この交点の数で、板厚方向の線分の総長を除し、板厚方向のフェライト粒界で切断された線分の平均長さを求め、同様にして、圧延方向の切断された線分の平均長さも求め、これらをさらに平均した値に1.13を乗じてASTM公称粒径とした。
(4)FeTiPとしてのPの測定
上記冷延焼鈍板を電解抽出してマトリックスを溶解し、0.2μmφのフィルターを用いて、鋼中の析出物を濾過捕集した。この濾過捕集した残渣中のP量を定量分析し、その値を鋼中に析出したFeTiPとしてのP量とした。
No.1〜4の鋼板は、C含有量を変化させた例であり、C含有量が本発明外であるNo.4の鋼板は、かえりの高さが50μmを超えている。
また、No.5〜9の鋼板は、P含有量を変化させた例であり、P含有量の低いNo.5では、FeTiPの析出量が少ないため、かえりが大きい。
No.10〜14の鋼板は、Ti含有量を変化させた例であり、Ti含有量の低いNo.10は、FeTiPの析出量が少なく、かえりが大きい。また、Ti含有量の高いNo.14の鋼板は、フェライト粒が粗大化して展伸し、かえりが大きくなっている。
No.15〜19の鋼板は、成分組成が本発明に適合する鋼の熱間圧延において、仕上圧延終了温度を変化させた例であり、仕上温度が低いNo.15,16の鋼板は、フェライト粒が展伸して粗大化しており、かえりが大きい。
No.20〜24の鋼板は、成分組成が本発明に適合する鋼の熱間圧延において、巻取温度を変化させた例であり、No.20,21の鋼板は、巻取温度が低くフェライト粒が展伸しており、降伏比も低いため、かえりが大きい。また、No.24の鋼板は、巻取温度が高いため、フェライト粒が展伸し、また、降伏比も低いため、かえりが大きい。
これに対して、成分組成が本発明の範囲内である鋼を本発明の製造方法に従って製造した鋼板(No.1〜3、6〜9、11〜13、17〜19、22および23)は、いずれもかえり高さが50μm以下と良好である。
Claims (2)
- C:0.012mass%以下、Si:0.20mass%以下、Mn:0.25mass%以下、P:0.015〜0.05mass%、S:0.005mass%以下、Al:0.06mass%以下、N:0.012mass%以下、Cr:20.5〜23.5mass%、Cu:0.3〜0.6mass%、Ni:0.5mass%以下、Ti:0.20〜0.35mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、FeTiPとしてのPが0.005mass%以上、フェライト粒径が30μm以下、降伏比が0.65以上である打ち抜き加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼板。
- C:0.012mass%以下、Si:0.20mass%以下、Mn:0.25mass%以下、P:0.015〜0.05mass%、S:0.005mass%以下、Al:0.06mass%以下、N:0.012mass%以下、Cr:20.5〜23.5mass%、Cu:0.3〜0.6mass%、Ni:0.5mass%以下、Ti:0.20〜0.35mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを1100℃以上に加熱後、仕上圧延終了温度を900℃以上とする熱間圧延し、400〜550℃で巻き取り、次いで、熱延板焼鈍し、酸洗し、冷間圧延したのち850℃以上の温度で仕上焼鈍する打ち抜き加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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