JP2016069677A - 穴広げ性に優れたフェライト系ステンレス鋼鈑及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)
重量%で、
C:0.0005〜0.020%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:0.01〜1.0%、
P:0.050%未満、
S:0.010%未満、
Cr:10.0〜15.0%、
N:0.0005〜0.020%、
Sn:0.010〜0.050%
Ti:0.03〜0.25%、
Nb:0.030%未満、
を含有し、残部が実質的に鉄及び不可避的不純物である鋼組成を有し、結晶粒の結晶粒度番号が7.0以上9.5以下であることを特徴とする穴広げ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(2)
質量%で、
Al:0.003〜0.5%
を含有することを特徴とする(1)に記載の穴広げ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(3)
質量%で、
Ni:0.01〜0.50%、
Cu:0.01〜0.50%、
Mo:0.01〜0.50%
Sb:0.001〜0.30%、
Zr:0.005〜0.5%、
Co:0.005〜0.50%、
W:0.002〜0.50%、
V:0.02〜0.50%、
Ga:0.001〜0.10%のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の穴広げ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(4)
質量%で、
B:0.0003〜0.0025%、
Mg:0.0001〜0.0030%、
Ca:0.0003〜0.0030%
REM(希土類金属):0.002〜0.20%
Zn:0.002〜0.10%
Ta:0.002〜0.50%
Hf:0.002〜0.50%
As:0.001〜0.20%
Bi:0.001〜0.30%
Pb:0.001〜0.10%
Se:0.001〜0.10%
のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)乃至(3)の何れか一項に記載の穴広げ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(5)
(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の成分を有する鋼を、熱間圧延における総圧下率を97%以上且つ最終パスの圧延仕上げ温度を950℃以下として熱間圧延を行った後、700℃未満の温度で巻き取り処理を行った後に、875℃以上950℃以下の温度に加熱して熱処理を実施し、その後冷間圧延における圧下率を50%以上85%未満となる冷間圧延を行ない、その後の熱処理工程において820〜900℃の範囲になるよう加熱し熱処理を行うことを特徴とする穴広げ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
本発明者らは、13%Crステンレス鋼を基本成分として、種々の元素の添加量を変化させてサイズの異なる鋼塊を作製した。鋼塊を種々の条件で熱間圧延後、冷間圧延と熱処理の組み合わせにより1.0mm厚の鋼板を作製した。最終焼鈍温度を調整して結晶粒径を調整した。得られた鋼板より90mm角の鋼板を切り出し、穴拡げ試験に供した。穴拡げ試験は直径10mmの円形状の穴をクリアランスが12.5%となるように打ち抜いた後、60°円錐ポンチにて押し込み成形して穴縁の亀裂が板厚を貫通したときに試験を停止した。穴広げ率λは、試験後の穴径と試験前の穴径から下記(1)の計算式で求めた。
Cは、多量に添加されると加工性の劣化を招く。また溶接部の鋭敏化による耐食性を招く場合があるため少ない方が好ましい。ただし、過度に低減することは製鋼段階でのコスト増加を招くため、その下限値は0.0005%とする。なお、安定的な製造性の観点からは0.0015%以上とすることが好ましい。上限は耐食性の点から0.020%とする。なお、深絞り性、曲げ性等を考慮すると0.0080%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.0060%以下である。
Siは、脱酸元素として活用する場合や、耐酸化性の向上のために積極的に添加する場合があるが、極低Si化はコスト増加を招くためその下限を0.01%とする。なお、脱酸の観点から、0.03%以上とすることが好ましい。また多量の添加は材質硬質化による穴拡げ性の低下を招くことがあるため、上限は1.0%とするのがよい。なお、加工性、安定製造性の観点からは0.30%以下とすることが好ましく、さらに0.20%以下とすることが好ましい。さらに加工性、安定製造性を確実にするために0.15%以下にすることが望ましい。
MnもSi同様脱酸元素として活用する場合があるが、Mnの過度な低化はコストの増加を招くためその下限を0.01%とする。なお、精錬コストの点から0.03%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは0.07%以上である。また多量のMn添加は材質硬質化を招くことがあるため上限を1.0%とするのがよい。なお、加工性、安定製造性の観点からは0.30%以下とすることが好ましく、さらに0.25%以下とすることが好ましい。さらに加工性、安定製造性を確実にするために0.15%以下にすることが望ましい。
Pは、不可避的不純物である。原料から不純物元素として混入する場合があるが、その含有量は少ないほど良い。Pが大量に存在すると二次加工性の劣化を招くため、不可避的不純物ではあるが上限を0.050%未満と制限する。なお、加工性劣化の抑制の観点から、0.035%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.030%未満である。一方、P量の下限は特に決める必要はないが、過度の低減は原料及び製鋼コストの増大に繋がるため、この点からは0.005%を下限としてもよく、さらには0.010%以上としてもよい。
Sは、不可避的不純物である。原料から不純物元素として混入する場合がある。耐食性を劣化させる元素でありその含有量は少ないほど良いため、不可避的不純物ではあるが上限を0.010%未満と制限する。また含有量が低いほど耐食性は良好でありため、好ましくは0.0030%未満である。更に好ましくは0.0010%未満である。一方、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限を0.0002%としてもよく、さらには0.0005%以上としてもよい。
Crは、耐食性を確保する上で極めて重要な元素であり、不動態被膜を形成して安定的な耐食性を発揮する。この効果を得るには10.0%以上が必要である。なお、耐食性及び安定製造性の観点から、12.0%以上とすることが好ましい。
一方、多量の添加は製造時の靭性劣化を招くため、上限は15.0%とする。なお、穴拡げ性の点からは14.0%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは13.5%以下である。
NもCと同様に加工性の低下、ストレッチャーストレインの発生をもたらす元素であるため少ない方が好ましい。ただし、過度に低減することは製鋼段階でのコスト増加を招くため、その下限値は0.0005%としてもよい。なお、安定的な製造性の観点からは0.0015%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは0.0030%以上である。またN加工性が低下することに加えて溶接部の耐食性が低下するため上限を0.020%とする。なお、加工性の観点からは0.015%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.010%以下である。
Snは、本発明において重要な元素であり、結晶粒径との組み合わせにより、穴拡げ性を極大にする元素である。その効果を発現するには0.010%以上の添加量が必要であるため、これを下限とする。なお、当該効果をより安定して確保するためには、0.015%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.020%以上とするとよい。また0.050%を超えて添加しても穴拡げ向上の効果は発揮されないためこれを上限とする。なお、穴拡げ性及び原料コストの観点からは0.040%とすることが好ましく、さらに好ましくは0.035%以下とするとよい。
また、Snは特許文献4及び特許文献5に記載されているように耐銹性向上にも寄与する。Snの含有量が上記範囲内であれば、耐銹性向上効果も得ることができる。
Tiは、C及びNを析出物として固定して深絞り性を向上するのに重要な元素であり、加工性向上にも有効である。その効果を発揮するには0.03%以上の添加が必要であるため、これを下限とする。また深絞り性を考慮した場合には0.06%以上の添加が好ましい。さらに好ましくは0.1%以上とするとよい。一方、多量の添加は製品の延性劣化を招くことに加えて、製造時の圧延疵の発生を招く。このため上限を0.25%とする。原料コスト及び製造安定性を考慮すると上限は0.20%とすることが好ましい。
Nbは、添加することによって材料の硬質化を招くため、低い方が好ましい。但し、不純物として鋼中に含有する場合があるため、上限を0.030%とした。低い方が好ましく、上限は0.020%未満とすることが好ましい。
本発明は、結晶粒の大きさ(結晶粒度番号)とSn添加量と穴広げ率が密接な関係を有すことを知見したことに基づいており、結晶粒度番号は重要な要件である。本発明で言う結晶粒はフェライト結晶粒である。結晶粒度番号は、JIS G 0552に準拠する。図1に示すように、結晶粒度番号が6.3の場合は、Snの含有量に関わらず穴広げ性はほとんど変化しない。一方、結晶粒度番号が8.0の場合は、Sn含有量が0.01%〜0.05%の範囲で穴広げ率が変化することを知見した。この時、Sn含有量が0.03%で穴広げ率は極大を示す。
Alは脱酸元素として用いる場合があり、また耐酸化性を向上させることが知られているため必要に応じて添加してもよい。なお、脱酸に有効な量は0.003%であり、これを下限とすることが好ましく、ある程度の脱酸効果を得るためには下限を0.005%とすることが好ましい。また添加量が1.0%を超える場合には強度増加が大きくなり、成形性が劣化するおそれがあるため、これを上限とすることが好ましい。成形性を大きく低下させないために、より好ましくは、その上限を0.15%とよい。
の1種または2種以上を添加することが好ましい。
本発明は結晶粒度番号と成分、特にSn量の最適値を見つけた点に新規性がある。結晶粒度は最終熱処理温度及びその前のひずみ量の影響を大きく受ける。
そのため、熱間圧延における総圧下率を97%以上とする。熱間圧延における総圧下率はその後の熱処理における再結晶粒径並びに再結晶集合組織に大きく影響する。総圧下率が97%未満であると熱間圧延後の結晶粒径が粗大になり、後述の冷間圧延及び熱処理条件では所定の結晶粒度が得られないため、これを下限とした。総圧下率の上限は特に定める必要ないが、圧延機への負荷を考慮すると99%とすることが望ましい。熱間圧延における総圧下率は、熱延前のスラブ厚(板厚)をt0、熱延終了後の板厚をtfとしたとき、以下の関係となる。従って、理論的には熱間圧延における総圧下率は100%以上となることはない。
以上の製造プロセスを経ることにより、結晶粒度番号7.0〜9.5となるステンレス鋼板を得ることができる。
Claims (5)
- 重量%で、
C:0.0005〜0.020%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:0.01〜1.0%、
P:0.050%未満、
S:0.010%未満、
Cr:10.0〜15.0%、
N:0.0005〜0.020%、
Sn:0.010〜0.050%
Ti:0.03〜0.25%、
Nb:0.030%未満、
を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物である鋼組成を有し、結晶粒の結晶粒度番号が7.0以上9.5以下であることを特徴とする穴広げ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。 - 質量%で、
Al:0.003〜0.5%
を含有することを特徴とする請求項1に記載の穴広げ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。 - 質量%で、
Ni:0.01〜0.50%、
Cu:0.01〜0.50%、
Mo:0.01〜0.50%
Sb:0.001〜0.30%、
Zr:0.005〜0.50%、
Co:0.005〜0.50%、
W:0.002〜0.50%、
V:0.02〜0.50%、
Ga:0.001〜0.10%
のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の穴広げ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。 - 質量%で、
B:0.0003〜0.0025%、
Mg:0.0001〜0.0030%、
Ca:0.0003〜0.0030%
REM(希土類金属):0.002〜0.20%
Zn:0.002〜0.10%
Ta:0.002〜0.50%
Hf:0.002〜0.50%
As:0.001〜0.20%
Bi:0.001〜0.30%
Pb:0.001〜0.10%
Se:0.001〜0.10%
のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の穴広げ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。 - 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の成分を有する鋼を、熱間圧延における総圧下率を97%以上且つ最終パスの圧延仕上げ温度を950℃以下として熱間圧延を行い700℃未満の温度で巻き取り処理を行った後に、875℃以上950℃以下の温度で熱処理を実施し、その後圧下率を50%以上85%未満と冷間圧延を行ない、その後820〜900℃の温度で熱処理を行うことを特徴とする穴広げ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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