しかしながら、造影リングは上記のとおりチューブの外周面側から装着されるため、造影リングのチューブからの脱落が懸念される。これに対して、上記特許文献1には造影リングをチューブの外周に埋め込む構造が開示されているが、依然として、造影リングはチューブの外周から外側に突出しており、造影リングの脱落が確実に防止されているとは言えない。
また、上記のように造影リングを設けた構成においては、その部分の柔軟性が損なわれてしまう。カテーテルに要求される重要な性能の一つとして屈曲血管の追随性が挙げられ、上記のように柔軟性が損なわれてしまうと、追随性が低下してしまい好ましくない。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、造影標識部分の脱落を確実に防止するとともに、造影標識部分の柔軟性の向上を図ることができる造影標識付きのカテーテル及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。なお以下では、理解を容易にするため、発明の実施形態において対応する構成例を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
本発明のカテーテル(カテーテル10)は、チューブ状のカテーテル本体(カテーテル本体11,31)と、当該カテーテル本体における軸線方向の一部の領域に形成され、カテーテル本体のチューブ壁部(チューブ壁部17,32)を形成する合成樹脂材料内に多数の造影用粉体が分散されてなる造影領域(造影領域15,35)と、を備えていることを特徴とする。
本構成によれば、造影標識の機能が、カテーテル本体のチューブ壁部を形成する合成樹脂材料内に多数の造影用粉体が分散されてなる造影領域として設けられている。つまり、造影標識部分がカテーテル本体のチューブ壁部に対して一体化されている。よって、造影標識部分がカテーテル本体から脱落してしまうことを確実に防止することができる。また、造影領域の基礎となる材料は合成樹脂材料であり、その合成樹脂材料に造影用粉体が分散されて形成されているため、従来のように全体が金属により形成された造影リングを装着する構成に比して、造影標識部分の柔軟性の向上を図ることができる。さらには、造影領域はチューブ壁部としての機能も兼ねているため、従来のようにチューブに別体の造影リングを装着する構成に比して、造影標識部分の薄膜化を図ることができる。そして、造影標識部分の薄膜化を図ることで、カテーテルの通過性の向上を図ることができる。
なお、造影領域を、カテーテル本体の軸線を中心として連続的又は断続的な環状に形成することが好ましい。これにより、カテーテル本体に対していずれの角度からも良好な造影像を得ることができる。
前記造影領域を、それよりも先端側の非造影領域との境界部分において当該非造影領域側の外周面に対する外方への段差が生じないように形成することが好ましい。従来のように造影リングを装着する構成では、その部分の外径がチューブの外径よりも大きくなる。そうすると、例えばカテーテルを挿入して血管の狭窄箇所を通過させようとしても、造影リングの先端側の端面が狭窄箇所に引っ掛かってしまい、通過させることができないおそれがある。これに対して、造影標識部分を造影領域として設けることで、上記のように非造影領域との境界部分において外方への段差が生じないようにすることができ、このように外方への段差が生じないようにすることで、造影標識部分が狭窄箇所に引っ掛かってしまうこともない。よって、本構成によれば、カテーテルの通過性の向上を図ることができる。
なお、前記造影領域を、それよりも基端側の非造影領域との境界部分において当該非造影領域側の内周面に対する内腔(内腔13)側への段差が生じないように形成することが好ましい。これにより、カテーテル本体の内腔を先端側に向けて流れる流体やカテーテル本体の内腔を通されるガイドワイヤなどのデバイスの通過性を低下させることなく、上記優れた効果を得ることができる。
前記造影領域を、厚み方向の全体が同一の合成樹脂材料からなるチューブ壁部に、前記多数の造影用粉体を分散して形成することが好ましい。例えば、造影領域のチューブ壁部をその厚み方向に複数層構造とし、そのうちのいずれかの層に造影用粉体を分散させる構成も想定されるが、この場合、各層間に境界が生じる。そして、このように境界が生じると、各層の剥離などが懸念される。これに対して、本構成によれば、チューブ壁部が複数層構造をなしていないため、上記のような剥離が生じることはない。
前記造影領域を、前記チューブ壁部における内層(内チューブ層33)、中間層(粉体分散層36)及び外層(外チューブ層34)を含めて複数層が積層された領域において、前記中間層を形成する合成樹脂材料に前記多数の造影用粉体を分散して形成する構成では、前記中間層を形成する合成樹脂材料を、前記内層を形成する合成樹脂材料又は前記外層を形成する合成樹脂材料の少なくとも一方と同一とすることが好ましい。これにより、中間層を形成する合成樹脂材料を、内層を形成する合成樹脂材料及び外層を形成する合成樹脂材料のいずれとも異ならせる構成に比べ、材質の相違に伴う造影領域における剛性の変化が低減され、カテーテル本体の耐キンク性の低下を抑えつつ、上記造影領域を設けることができる。
なお、耐キンク性の低下を抑えるという観点からは、造影領域のみが複数層構造となった構成よりも、少なくともカテーテル本体の先端部から前記造影領域よりも末端側の領域が前記内層及び外層を含めて複数積層されているとともに、前記造影領域では前記中間層が含まれた構成とすることが好ましい。
カテーテルの製造方法について、合成樹脂材料によりチューブ体(チューブ体21、内チューブ層33)を形成するチューブ体形成工程と、前記チューブ体における軸線方向の一部の領域に造影領域(造影領域15,35)を形成する造影領域形成工程と、を備え、当該造影領域形成工程は、合成樹脂材料に多数の造影用粉体を分散させた付与材を、前記チューブ体の外周面に付与する付与工程と、前記付与材を前記チューブ体に一体化させる一体化工程と、を備えた構成とすることが好ましい。
本製造方法によれば、カテーテル本体における軸線方向の一部の領域に、当該領域のチューブ壁部を形成する合成樹脂材料内に多数の造影用粉体が分散されてなる造影領域を形成することができる。これにより、造影標識部分の脱落を確実に防止するとともに、造影標識部分の柔軟性の向上を図ることができ、さらにはカテーテルの通過性の向上をも図ることができる。また、本製造方法によれば、外周側からの加熱により外周面を熱溶着する構成であるため、造影用粉体が分散されたチューブ体の端面と、造影用粉体が分散されていない他のチューブ体の端面とを熱溶着した構成に比して、熱による硬度変化を小さくすることができる。
また、前記一体化工程は、前記付与材を前記チューブ体に熱溶着する熱溶着工程を備えた構成とすることで、付与材がチューブ体に熱溶着により一体化され、両者の一体化を強固に行うことが可能となる。
前記付与工程における前記付与材を形成する前記合成樹脂材料を、前記チューブ体を形成する合成樹脂材料と同一のものとすることが好ましい。これにより、付与材とチューブ体との熱溶着を良好に行うことができる。また、付与材とチューブ体との境界部分が両者の溶融により存在しづらくなる。例えば、両者の間に境界が生じている構成を想定すると、カテーテルの使用時などにおいてチューブ体から付与材が剥離してしまうことが懸念される。これに対して、本構成によれば、このような剥離が生じることはない。さらに、本構成によれば、付与材とチューブ体との両方が溶融することとなるため、造影領域のチューブ壁部の薄肉化を良好に実現することができる。
前記熱溶着工程では、前記チューブ体の内腔(内腔13)に当該チューブ体の内側への変形を規制するサポート具(溶着用金属棒D1)を配置し、さらに前記付与材が付与された領域を前記サポート具と内外に挟み込むようにして前記付与材の外周面側から加熱具(熱溶着機器D2)による加熱操作を行うことにより、前記造影領域を、それよりも先端側の非造影領域との境界部分において当該非造影領域側の外周面に対する外方への段差が生じないように形成することが好ましい。これにより、造影標識部分が血管等の狭窄箇所に引っ掛かってしまうことはないため、カテーテルの通過性の向上を図ることができる。
なお、前記熱溶着工程において、上記のようにサポート具及び加熱具を用いることにより、前記造影領域を、それよりも基端側の非造影領域との境界部分において当該非造影領域側の内周面に対する内腔側への段差が生じないように形成することが好ましい。これにより、カテーテル本体の内腔を先端側に向けて流れる流体やカテーテル本体の内腔を通されるガイドワイヤなどのデバイスの通過性を低下させることなく、上記優れた効果を得ることができる。
前記一体化工程は、合成樹脂材料により形成された被覆材(被覆材23)を前記付与材が付与された領域を外側から覆うように前記チューブ体に被せる被覆工程をさらに備え、前記熱溶着工程では、さらに前記被覆材を前記チューブ体に熱溶着することが好ましい。これにより、造影領域の形成を良好に行うことができる。
前記被覆工程において前記チューブ体に被せる前記被覆材を、前記チューブ体と同一の合成樹脂材料により形成することが好ましい。これにより、被覆工程の直後において存在していたチューブ体と被覆材との境界部分が両者の溶融により存在しづらくなる。例えば、両者の間に境界が生じている構成を想定すると、カテーテルの使用時などにおいてチューブ体から被覆材が剥離してしまうことが懸念される。これに対して、本構成によれば、このような剥離が生じることはない。さらに、本構成によれば、被覆材とチューブ体との両方が溶融することとなるため、造影領域のチューブ壁部の薄肉化を良好に実現することができる。
なお、前記付与工程における前記付与材を形成する前記合成樹脂材料及び前記被覆工程において前記チューブ体に被せる被覆材を形成する前記合成樹脂材料を、前記チューブ体と同一の合成樹脂材料とすることが好ましい。これにより、造影領域を、厚み方向の全体に亘って同一の合成樹脂材料からなるチューブ壁部に多数の造影用粉体が分散された構成とすることができ、既に説明したような優れた効果を得ることができる。
一体化工程において前記熱溶着工程を行わない別の製造方法として、前記一体化工程が、少なくとも前記付与材が付与された領域を外側から覆うように、前記チューブ体の外周面に合成樹脂材料よりなる被覆層(外チューブ層34)を押出し成形により形成する押出し成形工程を備えた構成としてもよい。これにより、被覆層を介して付与材がチューブ体に一体化される。
また、前記付与工程における前記付与材を形成する合成樹脂材料を、前記チューブ体を形成する合成樹脂材料又は前記被覆層を形成する合成樹脂材料の少なくとも一方と同一とすることが好ましい。この場合、付与材を形成する合成樹脂材料が、チューブ体を形成する合成樹脂材料及び被覆層を形成する合成樹脂材料のいずれとも異なる構成に比べ、材質の相違に伴う造影領域における剛性の変化が低減され、カテーテル本体の耐キンク性の低下を抑えつつ、上記造影領域を設けることができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1はカテーテル10の概略全体側面図、図2は図1における領域C1の拡大図、図3は図2における領域C2の拡大断面図、図4は図3におけるA―A線断面図である。
図1に示すように、カテーテル10は、チューブ状をなすカテーテル本体11と、当該カテーテル本体11の基端部に装着されたハブ12とを備えている。
カテーテル本体11の内腔(ルーメン)13内には、血管等へカテーテル10を挿入する際にガイドワイヤが挿通される。また、内腔13は、造影剤、薬液、洗浄液等の通路として用いられる。ハブ12は、内腔13内へのガイドワイヤの挿入口、内腔13内への造影剤、薬液、洗浄液等の注入口等として機能し、また、カテーテル10を操作する際の把持部としても機能する。
カテーテル本体11は、その全体が合成樹脂材料により形成されている。なお、カテーテル本体11の全体が合成樹脂材料により形成されている必要はなく、少なくとも血管等の体内に挿入される領域が合成樹脂材料により形成されていればよい。したがって、先端側を合成樹脂材料製とし、基端側を金属製としてもよい。また、3つ以上のチューブ体を軸線方向に並べて連結することでカテーテル本体11を形成してもよい。
本カテーテル10のカテーテル本体11は、ポリアミドにより形成されている。但し、ポリアミドに限定されることはなく、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリイミド、ポリイミドエラストマー、シリコンゴム、天然ゴムなどといった他の熱可塑性樹脂を用いることもできる。
カテーテル本体11には、図2に示すように、造影領域15が形成されている。造影領域15は、カテーテル本体11の先端側の領域における一部の領域を占めており、カテーテル本体11の軸線を中心として環状に形成されている。なお、造影領域15の位置についてより詳細には、本カテーテル本体11はその先端部が先細りするようにテーパ形状をなしており、造影領域15はこのテーパ領域16よりも基端側であって当該テーパ領域16に近接した位置にある。また、造影領域15は連続的な環状に限定されることはなく、断続的な環状としてもよく、また造影領域15をカテーテル本体11の軸線を中心とした一部の円弧領域のみに形成する構成としてもよい。但し、良好な造影像を得るという観点からは、造影領域15を連続的又は断続的な環状に形成することが好ましい。
造影領域15は、図2〜図4に示すように、カテーテル本体11のチューブ壁部17内に多数の造影用粉体18が分散されて形成されている。造影用粉体18は、X線造影性を有するものであり、具体的にはタングステンが用いられている。なお、造影用粉体18は、タングステンに限定されることはなく、金、白金、イリジウム、バリウム、硫酸バリウム、ビスマス、酸化ビスマス、オキシ炭酸ビスマス、次炭酸ビスマス、酸化ジルコニウム、タンタル、コバルトクロム合金、ヨウ化ナトリウム、銀―タンパク質コロイド、ヨウ化銀―ゼラチンコロイド、ステンレス、チタンなどを用いることができる。但し、X線造影性と経済性との観点からタングステンを用いることが好ましい。また、タングステン粉の粒度は、0.1μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.3μm〜1.0μmである。
造影用粉体18は上記のとおりチューブ壁部17内に分散されているため、図3及び図4に示すように、チューブ壁部17を形成する単一の合成樹脂層内に造影用粉体18の分散層が内在した状態となっている。
上記のように造影領域15が形成された構成において、カテーテル本体11の外周面は、造影領域15において外方に張り出していない。つまり、カテーテル本体11の外周面における、造影領域15と当該領域15よりも先端側の領域との境界部分、造影領域15の途中位置、及び造影領域15と当該領域15よりも基端側の領域との境界部分には、外方へ突出した段差は生じていない。ちなみに、造影領域15の外径は、当該造影領域15よりも基端側であって造影領域15に近接した領域の外径と同一又はそれよりも若干小さくなっている。なお、造影領域15をテーパ領域16に近接させた位置に形成するのではなく、カテーテル本体11における外径が同一となった領域に造影領域15を形成する構成においては、造影領域15の外径を、当該造影領域15よりも基端側であって造影領域15に近接した領域の外径、及び造影領域15よりも先端側であって造影領域15に近接した領域の外径と同一又はそれよりも若干小さくすると良い。
また、カテーテル本体11の内周面は、造影領域15において内方(内腔13側)に張り出していない。つまり、カテーテル本体11の内周面における、造影領域15と当該領域15よりも先端側の領域との境界部分、造影領域15の途中位置、及び造影領域15と当該領域15よりも基端側の領域との境界部分には、内方へ突出した段差は生じていない。ちなみに、造影領域15の内径は、当該造影領域15よりも基端側であって造影領域15に近接した領域の内径、及び造影領域15よりも先端側であって造影領域15に近接した領域の内径と同一又はそれよりも若干大きくなっている。
次に、カテーテル10の製造工程について、図5を用いて説明する。但し、ここでは造影領域15の形成工程に着目して各工程を説明していく。
先ず、カテーテル本体11を構成するチューブ体(基体)21の形成工程を行う。当該形成工程を行うことにより、図5(a)に示すように、外径及び内径がそれぞれ軸線方向の全体に亘って同一となったチューブ体21が形成される。この場合、チューブ体21は、ポリアミドにより形成されている。
その後、図5(b)に示すように、チューブ体21の外周面に塗布用材料22を塗布する塗布工程を行う。塗布用材料22は、チューブ体21を形成する合成樹脂材料と同一の合成樹脂材料(本実施形態では、ポリアミド)を揮発性溶剤に溶かした溶液に対して造影用粉体18を分散させたものである。塗布工程では、この塗布用材料22をチューブ体21における軸線方向の一部の領域の外周面全体に塗布する。この場合、塗布用材料22は粘性を有しているため、チューブ体21の外周面に付与された状態が維持される。
その後、塗布用材料22に付与した揮発性溶剤の揮発工程を行う。この揮発工程により、揮発性溶剤が揮発し、合成樹脂材料に造影用粉体18が分散された塗布用材料22がチューブ体21の外周面に保持される。
その後、図5(c)に示すように、塗布用材料22が塗布された塗布領域を外側から覆うように、環状の被覆材23をチューブ体21に被せる被覆工程を行う。この被覆材23は、チューブ体21を形成する合成樹脂材料及び塗布用材料22を形成する合成樹脂材料と同一の合成樹脂材料(本実施形態では、ポリアミド)により形成されたものである。また、被覆材23の肉厚は、チューブ体21の肉厚よりも小さい。被覆工程を行うことにより、塗布用材料22が被覆材23により外側から覆われる。
その後、図5(d)に示すように、熱溶着工程を行う。詳細には、外周面が滑らかな曲面状をなし、且つ外径がチューブ体21の内径と略同一の溶着用金属棒(サポート具)D1を、チューブ体21の内腔13全体に亘って位置するように配置する。つまり、溶着用金属棒D1は、少なくともチューブ体21における被覆材23により覆った領域の内腔13を軸線方向に跨ぐように配置されている。チューブ体21の内腔13全体に亘って位置するように溶着用金属棒D1を配置することで、後述する熱溶着に際してチューブ体21の内腔13が潰れてしまうことが防止されるとともに、当該熱溶着に際してチューブ体21が折れ曲がってしまうことが防止される。
上記のように溶着用金属棒D1を配置した後は、被覆材23とチューブ体21との重ね合わせ部分24を溶着用金属棒D1と内外に挟み込むようにして被覆材23の外周面側から熱溶着機器D2による加熱及び加圧を行う。熱溶着機器D2による加熱及び加圧について詳細には、熱溶着機器D2は一対の金属板を備えており、それら金属板を組み合せることで円形の孔部が形成される。この孔部の孔径はチューブ体21の外径と同一となっている。そして、孔部の位置に上記重ね合わせ部分24が位置するようにチューブ体21を配置した後に、金属板を加熱し、さらに両金属板を相互に近づけるように加圧する。この場合、上記のとおりチューブ体21を形成する合成樹脂材料、塗布用材料22の合成樹脂材料及び被覆材23を形成する合成樹脂材料が全て熱可塑性樹脂であるポリアミドであるため、チューブ体21、塗布用材料22及び被覆材23が全て溶融され、それらが熱溶着される。特に、同一の合成樹脂材料であるため、それぞれの溶融タイミングが同時期となるとともに、相互の熱溶着が良好に行われる。
また、上記のように溶着用金属棒D1及び熱溶着機器D2により重ね合わせ部分24を内外に挟み込むようにしたことで、重ね合わせ部分24はその内径が溶着用金属棒D1の外径と一致し、外径が孔部の上記孔径と一致する。これにより、重ね合わせ部分24は、チューブ体21における重ね合わせ部分24よりも基端側及び先端側の領域と、各外径及び各内径が同一となる。以上のように熱溶着工程を行うことで、造影領域15の形成が完了する。
なお、重ね合わせ部分24の外径がそれよりも基端側及び先端側の領域の外径よりも若干小さくなるように熱溶着を行ってもよく、重ね合わせ部分24の内径がそれよりも基端側及び先端側の内径よりも若干大きくなるように熱溶着を行ってもよい。また、熱溶着機器D2と重ね合わせ部分24との間に加熱することによって収縮する熱収縮チューブを介在させてもよい。この場合、熱溶着機器D2から熱が直接加えられた場合と比較して、重ね合わせ部分24に均一に力が加わるので、熱溶着した重ね合わせ部分24の外径を均一に形成することができる。熱収縮チューブを介在させた場合は、熱溶着後に重ね合わせ部分24から熱収縮チューブを離脱させる。
その後、図5(e)に示すように、後工程として、チューブ体21における造影領域15よりも先端側の外周面をテーパ状とするテーパ状形成工程を行う。当該テーパ状形成工程では、チューブ体21の外周面を研磨する。この場合に、上記のとおり、造影標識がチューブ壁部17を形成する合成樹脂材料に造影用粉体18が分散された造影領域15として設けられていることにより、造影標識が造影リングとして設けられていた構成に比べ、テーパ状の形成を良好に行うことができる。つまり、造影標識が造影領域15として設けられていることにより、二次加工の容易化が図られている。当該後工程が終了することで、カテーテル本体11の形成が完了する。なお、上記テーパ状の形成を、チューブ体21の形成工程において行うようにしてもよい。例えば、チューブ体21を射出成型する場合には、その射出成型に際してチューブ体21の先端部をテーパ状としておくようにしてもよい。また、後工程として、カテーテル本体11へのハブ12の装着工程などを行う。
上記構成のカテーテル10は、以下のように使用される。
先ず血管内に挿入されたシースイントロデューサにガイディングカテーテルを挿通する。次いで、ガイドワイヤをカテーテル10の内腔及びガイディングカテーテル内に挿通し、治療対象箇所又は検査対象箇所を越える位置まで挿入する。続いて、ガイドワイヤに沿ってカテーテル10を、押引又は捻り操作を加えながら治療対象箇所又は検査対象箇所まで挿入する。この場合に、カテーテル10のカテーテル本体11には造影領域15が形成されているため、X線透視下で生体内におけるカテーテル本体11の先端部の位置を体外より確認することができる。カテーテル本体11の先端部が治療対象箇所又は検査対象箇所に到達したら、薬液や造影剤を注入し治療や検査を行う。
なお、カテーテル10は上記のように主として血管内を通されて、当該血管内を治療又は検査するために用いられるが、血管以外の尿管や消化管などの生体内の「管」や、「体腔」にも適用可能である。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
造影標識の機能を、カテーテル本体11のチューブ壁部17を構成する合成樹脂材料内に多数の造影用粉体が分散されてなる造影領域15として設けた。つまり、造影標識部分がカテーテル本体11のチューブ壁部17に対して一体化されている。よって、造影標識部分がカテーテル本体11から脱落してしまうことを確実に防止することができる。
また、造影領域15は基礎となる材料は合成樹脂材料であり、その合成樹脂材料に造影用粉体18が分散されて形成されているため、従来のように全体が金属により形成された造影リングを装着する構成に比して、造影標識部分の柔軟性の向上を図ることができる。
さらには、造影領域15はチューブ壁部17としての機能も兼ねているため、従来のようにチューブに別体の造影リングを装着する構成に比して、造影標識部分の薄膜化を図ることができる。そして、造影標識部分の薄膜化を図ることで、カテーテルの通過性の向上を図ることができる。
造影領域15を、それよりも先端側の非造影領域との境界部分において当該非造影領域側の外周面に対する外方への段差が生じないように形成した。従来のように造影リングを装着する構成では、その部分の外径がチューブの外径よりも大きくなる。そうすると、例えばカテーテルを挿入して血管の狭窄箇所を通過させようとしても、造影リングの先端側の端面が狭窄箇所に引っ掛かってしまい、通過させることができないおそれがある。これに対して、造影標識部分を造影領域15として設けることで、上記のように外方への段差が生じないようにすることができ、このように外方への段差が生じないようにすることで、造影標識部分が狭窄箇所に引っ掛かってしまうこともない。よって、本構成によれば、カテーテル10の通過性の向上を図ることができる。
また、造影領域15を、それよりも基端側の非造影領域との境界部分において当該非造影領域側の内周面に対する内方への段差が生じないように形成した。これにより、カテーテル本体11の内腔13を先端側に向けて流れる流体やカテーテル本体11の内腔13を通されるガイドワイヤなどのデバイスの通過性を低下させることなく、上記優れた効果を得ることができる。
チューブ体21と同一の合成樹脂材料に造影用粉体18を分散させた塗布用材料22を、チューブ体21の外周面に塗布するとともに、その塗布領域を外側から覆うように、チューブ体21と同一の合成樹脂材料により形成された被覆材23を被せ、それらを熱溶着することで、造影領域15を形成した。これにより、造影領域15を、厚み方向の全体が同一の合成樹脂材料からなるチューブ壁部17に、多数の造影用粉体18が分散されてなる構成とした。例えば、造影領域15のチューブ壁部17をその厚み方向に複数層構造とし、そのうちのいずれかの層に造影用粉体18を分散させる構成も想定されるが、この場合、各層間に境界が生じる。そして、このように境界が生じると、各層の剥離などが懸念される。これに対して、本構成によれば、チューブ壁部17が複数層構造をなしていないため、上記のような剥離が生じることはない。また、造影領域15のチューブ壁部17の薄肉化を良好に実現することができる。
(第2の実施形態)
本実施形態では、カテーテル本体の構成が上記第1の実施形態と異なっている。この相違する構成について、図6及び図7を用いて以下に説明する。図6はカテーテル本体31の縦断面図、図7は図6におけるB−B線断面図である。
図6に示すように、カテーテル本体31のチューブ壁部32は、その厚み方向に複数層構造となっている。具体的には、チューブ壁部32は、内チューブ層(基体)33と、外チューブ層(被覆材)34とを備えており、内チューブ層33の外周面に外チューブ層34の内周面が接着されて、両者が一体化されている。カテーテル本体31のチューブ壁部32は、その軸線方向(長さ方向)の全体に亘って上記複数層構造となっている。なお、複数のチューブ体を軸線方向に並べて連結することでカテーテル本体31を形成する構成においては、それら複数のチューブ体のうち、生体内に挿入される先端側のチューブ体のみ上記複数層構造としてもよい。
内チューブ層33及び外チューブ層34は共に、ポリアミドにより形成されている。但し、ポリアミドに限定されることはなく、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリイミド、ポリイミドエラストマー、シリコンゴム、天然ゴムなどにより内チューブ層33及び外チューブ層34を形成してもよい。また、内チューブ層33と外チューブ層34とで異なる合成樹脂材料を用いてもよい。
カテーテル本体31には、その先端側に造影領域35が形成されている。造影領域35は、上記第1の実施形態と同様に、カテーテル本体31の先端側の領域における一部の領域を占めており、カテーテル本体31の軸線を中心として環状に形成されている。
造影領域35は、内チューブ層33と外チューブ層34との境界部分に粉体分散層36が埋設されて形成されている。粉体分散層36は、合成樹脂材料内に多数の造影用粉体18が分散されて形成されており、カテーテル本体31の軸線を中心として環状に形成されている。なお、内チューブ層33、外チューブ層34及び粉体分散層36の軸線は全て同一直線上にある。
粉体分散層36を形成する合成樹脂材料は、内チューブ層33を形成する合成樹脂材料及び外チューブ層34を形成する合成樹脂材料と同一である。具体的には、ポリアミドである。このように、造影領域35の各層33,34,36を形成する合成樹脂材料を同一の合成樹脂材料とすることで、各層33,34,36を形成する合成樹脂材料をそれぞれ異ならせる構成に比べ、造影領域35における剛性(曲げモーメント)の変化が低減され、カテーテル本体31の耐キンク性を低下させることなく上記造影領域35を設けることができる。
なお、内チューブ層33と外チューブ層34とがそれぞれ異なる合成樹脂材料により形成された構成においては、粉体分散層36を形成する合成樹脂材料を、内チューブ層33又は外チューブ層34のいずれか一方と同一とすることが好ましい。この場合、粉体分散層36を形成する合成樹脂材料を、内チューブ層33及び外チューブ層34の両方と異ならせる構成に比べ、造影領域35における剛性の変化が低減される。
上記のように造影領域35が3層構造となった構成において、上記第1の実施形態におけるカテーテル本体11と同様に、カテーテル本体31の外周面は造影領域35において外方に張り出していない。また、カテーテル本体31の内周面は造影領域35において内方に張り出していない。当該構成について具体的には、粉体分散層36は、内チューブ層33の外周面に接着されており、内チューブ層33の外周面に対して粉体分散層36は外方に張り出しているが、その張り出した分を吸収するようにして外チューブ層34が形成されている。
次に、カテーテル本体31の製造工程について、図8を用いて説明する。但し、ここでは造影領域35の形成工程に着目して各工程を説明していく。
先ず、内チューブ層33の形成工程を行う。当該形成工程を行うことにより、図8(a)に示すように、外径及び内径がそれぞれ軸線方向の全体に亘って同一となった内チューブ層33が形成される。
その後、図8(b)に示すように、粉体分散層36の形成工程を行う。具体的には、内チューブ層33の外周面に塗布用材料22を塗布する。塗布用材料22は、上記第1の実施形態と同様に、合成樹脂材料を揮発性溶剤に溶かした溶液に対して造影用粉体18を分散させたものである。その後、塗布用材料22に付与した揮発性溶剤の揮発工程を行う。
その後、図8(c)に示すように、外チューブ層34の形成工程を行う。具体的には、金型D4に押出し機D5が接続された押出し成形機D3を用いて、粉体分散層36が形成された領域を含めた内チューブ層33の外周面に外チューブ層34を形成する。この場合、金型D4は、内チューブ層33の外周面に対する粉体分散層36の段差が外チューブ層34によって吸収され、カテーテル本体31の外周面が造影領域35にて外方に張り出さないように形成されている。
その後、図8(d)に示すように、後工程として、カテーテル本体31における造影領域35よりも先端側の外周面をテーパ状とするテーパ状形成工程を行う。この場合に、従来の造影標識として造影リングを用いていた構成に比べ、テーパ状の形成(すなわち、二次加工)を良好に行える点は、上記第1の実施形態と同様である。当該後工程が終了することで、カテーテル本体31の形成が完了する。
以上詳述した本実施形態によれば、チューブ壁部32を形成する合成樹脂材料が単層構造ではなく複数層構造となる点で、上記第1の実施形態における単層構造に起因する効果を得ることができないものの、造影標識を造影領域35として設けたことによるそれ以外の効果は同様に得ることができる。
(他の実施形態)
本発明は上記各実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
(1)造影領域の変形例を、図9及び図10に示す。
図9に示す変形例では、造影領域41は、カテーテル本体11のチューブ壁部17内に、粉体分散層42が埋設され当該粉体分散層42が外部に露出しないように形成されている。そして、この粉体分散層42は、当該粉体分散層42の周囲の領域とは異なる合成樹脂材料に造影用粉体18を分散させて形成されている。
また、図10に示す変形例では、カテーテル本体11のチューブ壁部17の外周面に、上記粉体分散層42が埋め込まれている。この場合、粉体分散層42は、カテーテル本体11の外周面において露出している。
上記各構成によれば、上記第2の実施形態と同様に粉体分散層42とその周囲の領域とで境界が生じ造影領域41のチューブ壁部17が複数層構造となってしまうものの、造影標識部分がカテーテル本体11から脱落してしまうことを確実に防止しつつ、造影標識部分の柔軟性の向上を図ることができ、さらにはカテーテル10の通過性の向上を図ることができる。
(2)別のカテーテルに本発明を適用した例を、図11〜図13に示す。
図11に示すカテーテル50は、カテーテル本体51が二重同軸管となっている。本構成であっても、外側管52に対して上記第1の実施形態と同様に造影領域15を形成することで、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、当該カテーテル本体51において外側管52を上記第2の実施形態と同様に複数層構造とし、上記第2の実施形態と同様の造影領域35を設けてもよい。
また、図12及び図13に示すカテーテル60,70は、カテーテル本体61,71がデュアルルーメンチューブとなっている。これらの構成であっても、カテーテル本体61,71に対して上記第1の実施形態と同様に造影領域15を形成することで、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、これらカテーテル本体61,71においてそのチューブ壁部を上記第2の実施形態と同様に複数層構造とし、上記第2の実施形態と同様の造影領域35を設けてもよい。
また、図示による説明を省略するが、本発明を、バルーンカテーテルに適用してもよい。バルーンカテーテルには、体内に挿入されたバルーン部の位置を体外より確認するために、カテーテル本体におけるバルーン部が取り付けられた位置に造影標識を設けることが一般的である。この場合に、当該造影標識を上記各実施形態と同様に造影領域15,35として設けることで、バルーンカテーテルにおいて上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、当該バルーンカテーテルは、PTCA用,PTA用,IABP用などのいずれであってもよい。また、バルーンカテーテル以外にも、種々の吸引カテーテルや、血流遮断用のカテーテルなどに対して本発明を適用してもよい。
(3)造影領域15,35を、カテーテル本体11,31における造影領域15,35よりも先端側であって当該造影領域15,35に近接した領域の外周面に対して外方への段差が生じないように形成したが、外方への段差が生じるように造影領域15,35を形成してもよい。本構成の場合、上記実施形態のようカテーテル10の通過性を飛躍的に向上させることができないものの、造影標識部分がカテーテル本体11,31から脱落してしまうことを確実に防止することができるとともに、従来のように造影リングを装着する構成に比して、造影標識部分の柔軟性の向上を図ることができる。
また、造影領域15,35を、カテーテル本体11,31における造影領域15,35よりも基端側であって当該造影領域15,35に近接した領域の内周面に対して内方への段差が生じないように形成したが、内方への段差が生じるように造影領域15,35を形成してもよい。本構成の場合、上記実施形態に比べ流体やデバイスの通過性が低下してしまうおそれがあるものの、造影標識部分がカテーテル本体11,31から脱落してしまうことを確実に防止することができるとともに、造影標識部分の柔軟性の向上を図ることができ、さらにはカテーテル10の通過性の向上を図ることができる。
(4)上記各実施形態では、カテーテル10の製造に際して、チューブ体21又は内チューブ層33の外周面に塗布用材料22を塗布する構成を示したが、これを変更してもよい。例えば、合成樹脂材料に造影用粉体18を分散したものを環状のシート材に加工し、そのシート材をチューブ体21又は内チューブ層33の外周面に被せる構成としてもよい。また、このシート材を押出し成形によりチューブ体21又は内チューブ層33の外周面に直接形成する構成としてもよい。
(5)上記第1の実施形態では、カテーテル10の製造に際して、被覆材23を用いる構成を示したが、これに代えて、当該被覆材23を用いない構成としてもよい。本構成であっても、例えば上記(4)の構成を適用することで、カテーテル本体11に造影領域15を形成することは可能である。
(6)上記第2の実施形態において、外チューブ層34を内チューブ層33の外周面の全体に形成する構成に代えて、内チューブ層33の外周面における粉体分散層36が形成された領域及びその周辺の領域のみに外チューブ層34を形成する構成としてもよい。この場合、カテーテル本体31の外周面において造影領域35が外方に張り出してしまうものの、チューブ壁部32を形成する合成樹脂材料内に造影用粉体18が分散された造影領域の形成は可能である。
また、造影領域35において、チューブ壁部32が3層構造ではなく4層以上が積層された構造としてもよい。当該構成であっても、内チューブ層と外チューブ層との間にあるいずれかの中間チューブ層を形成する合成樹脂材料に多数の造影用粉体18を分散させることで、造影領域を形成することができる。
10…カテーテル、11…カテーテル本体、13…内腔、15…造影領域、17…チューブ壁部、21…チューブ体、22…塗布用材料、23…被覆材、31…カテーテル本体、32…チューブ壁部、33…内チューブ層、34…外チューブ層、35…造影領域、36…粉体分散層、D1…溶着用金属棒、D2…熱溶着機器、D3…押出し成形機、D4…金型、D5…押出し機。