図1は、本発明の実施の一形態のラインセンサL1の要部を模式的に示す平面図である。なお、図1では理解を容易にするために、ラインセンサL1の長手方向の端部のみを示し、また第1および第2絶縁層41,42を省略して示している。図2は、図1の切断面線II−IIから見た断面図である。図3は、図1の切断面線III−IIIから見た断面図である。図4は、ラインセンサL1の概略的な回路構成を示す等価回路図である。
ラインセンサL1は、基板1と、複数の発光部2と、複数の受光部3と、配線部4と、スタート用発光部5とを含んで構成される。発光部2は、発光用のサイリスタである発光サイリスタTaと、受光用のサイリスタである受光サイリスタTbとを含んで構成される。複数の発光部2は、基板1の一主面1a上に列状に設けられ、かつ前記一主面1aの一方側(図1の紙面手前)に光を放射可能に設けられる。発光部2の列の延在方向をX方向とする。また基板1の厚み方向をZ方向とし、X方向およびZ方向に相互に垂直な方向をY方向とする。発光サイリスタTaと受光サイリスタTbとはX方向に並び、隣接する発光部2では、発光サイリスタTaと受光サイリスタTbとが相互に臨む。発光部2では、発光サイリスタTaのゲートと受光サイリスタTbのゲートとが、相互に接続される。
発光サイリスタTaおよび受光サイリスタTbは、それぞれ基板1側から順番に、第1の一方導電型半導体層21a,21b、第1の他方導電型半導体層22a,22b、第2の一方導電型半導体層23a,23b、第2の他方導電型半導体層24a,24b、オーミックコンタクト層25a,25bが積層されて形成され、PNPN構造を有する。第1の一方導電型半導体層21a,21b、第1の他方導電型半導体層22a,22b、第2の一方導電型半導体層23a,23bは、発光サイリスタTaおよび受光サイリスタTbにおいて一体に形成される。これによって、発光サイリスタTaおよび受光サイリスタTbのゲート同士が相互に接続されている。本実施の形態では、一方導電型はN型であり、他方導電型はP型である。
ラインセンサL1では、各発光サイリスタTaの間に受光サイリスタTbがそれぞれ設けられることになり、各発光サイリスタTaはX方向の一方に隣接する受光サイリスタTbと一体に形成される。各発光サイリスタTaはX方向に等間隔に配置される。したがって、異なる発光部2に含まれ、隣接する発光サイリスタTaおよび受光サイリスタTb間の距離は、隣接する発光サイリスタTa間の距離よりも短くなる。受光サイリスタTbは、この受光サイリスタTbとゲートが接続される発光サイリスタTaが発光したときに、この光が、X方向の一方に隣接する発光サイリスタTaに光が照射されてしまうのを抑制する。各発光サイリスタTaの間隔は、1つの発光サイリスタTaが発光しているときに、この発光している発光サイリスタTaのX方向の一方に隣接する発光サイリスタTaが光を受光しても、後述する発光制御信号に応じて発光しないように選ばれる。
基板1は、一方導電型の半導体によって形成され、導電性を有する。基板1の他主面1bには、各発光部2で共用される共通電極12が形成される。共通電極12には、基準電位が与えられ、これによって各発光サイリスタTaおよび受光サイリスタTbのカソードには基準電位が与えられることになる。本実施の形態では共通電極12は、接地される。
受光部3は、前記一主面1a上で、複数の発光部2のそれぞれに隣接して設けられ、かつ前記一主面1aの一方側から到来する光を受光可能に設けられる。受光部3は、フォトトランジスタTrと、検出用のサイリスタである検出サイリスタTcとを含んで構成される。各フォトトランジスタTrは、発光サイリスタTaのY方向の一方に、発光サイリスタTaに所定の間隔をあけて隣接して設けられる。Y方向に相互に隣接する発光サイリスタTaと、フォトトランジスタTrとは、フォトインタラプタを構成する。フォトトランジスタTrは、基板1側から順番に、第1の一方導電型半導体層21c、第1の他方導電型半導体層22c、第の一方導電型半導体層23cが積層されて形成され、NPN構造を有する。検出用のサイリスタは、基板1側から順番に、第1の一方導電型半導体層21d、第1の他方導電型半導体層22d、第2の一方導電型半導体層23d、第2の他方導電型半導体層24d、オーミックコンタクト層25dが積層されて形成される。第1の一方導電型半導体層21c,21d、第1の他方導電型半導体層22c,22d、第2の一方導電型半導体層23c,23dは、フォトトランジスタTrおよび検出サイリスタTcにおいて一体に形成される。これによってフォトトランジスタTrの出力端(コレクタ)と、検出サイリスタTcのゲートと相互に接続される。したがってフォトトランジスタTrの受光状態に応じた出力が検出サイリスタTcのゲートに与えられる。各フォトトランジスタおよび検出サイリスタTcについても前記共通電極12を共用され、各フォトトランジスタのエミッタと、各検出サイリスタTcのカソードにも基準電位が与えられる。
フォトトランジスタTrの基板1から最も離反する部位の受光面13は、発光サイリスタTaの基板1から最も離反する部位の発光面14よりも基板1側に設けられる。これによって、発光サイリスタTaの発光面14から直接到来する光が、フォトトランジスタTrによって受光されることを抑制することができる。検出サイリスタTcは、フォトトランジスタTrのY方向の一方に設けられる。これによって発光部2の間隔を決定するときに、検出サイリスタTcを考慮する必要がなくなるので、発光部2の間隔の自由度が向上される。
スタート用発光部5は、発光サイリスタTaと同様な構造を有する発光サイリスタT0によって形成されるので、同様の部分には同様の参照符号を付してその説明を省略する。発光サイリスタT0は、複数の発光部2のうちX方向の一方の端部の発光部2aのX方向の一方に隣接して設けられる。発光サイリスタT0は、発光部2aの受光サイリスタTbに臨んで設けられる。発光サイリスタT0のゲートは、接続配線30によって基板1に接続される。これによって、発光サイリスタT0を発光ダイオードとして機能させることができる。
配線部4は、第1〜第3電極4a,4b,4cと、第4および第5電極4d,4eとを有する。第1および第2電極4a,4bは、第1部位であり、第4および第5電極4d,4eは、第2部位である。配線部4は、発光部2および受光部3に選択的に接続される。第1〜第3電極4a,4b,4cには、外部から発光サイリスタTの発光状態を制御する信号(以下、発光制御信号という)が与えられる。また第4および第5電極4d,4eから、外部に受光部3の受光状態に応じた信号(以下、検出信号という)が出力される。第1〜第5電極4a〜4eは、ボンディングパッドによって実現される。
第1〜第5電極4a〜4eは、外部の装置を接続する配線がされる部位である。第1〜第5電極4a〜4eは、複数の発光部2および受光部3のうち、端部に設けられる発光部2および受光部3よりも列の延在方向(X方向)の外方に設けられる。本実施の形態では、第1〜第5電極4a〜4eは、X方向の一方の発光部2aおよび受光部3aよりも、前記X方向の一方にのみ配置され、すなわち基板1の一端部11のみに配置される。
配線部4は、第1電極4aと発光サイリスタT0とを接続する第1信号伝送路31と、第2および第3電極4b,4cを、それぞれ異なる複数の発光サイリスタTaに接続する第2および第3信号伝送路32,33を含む。第2および第3信号伝送路32,33は、Y方向において発光部2を挟んで受光部3とは反対側に配置される。第4および第5信号伝送路34,35は、Y方向において受光部3を挟んで発光部2とは反対側に配置される。第2および第3信号伝送路32,33は、第2および第3電極4b,4cに、発光制御信号を与えたときに、発光サイリスタTaが、相互に隣接する発光サイリスタTaの発光状態と、発光制御信号とに応じて選択的に発光可能となるように各発光サイリスタTaに接続される。本実施の形態では、隣接する発光部2は、第2および第3電極4b,4cのうち互いに異なる電極に接続される。ここでは、第2信号伝送路32は、X方向の一方から奇数番目に配置される発光サイリスタTaのオーミックコンタクト層25aにそれぞれ接続される。また第3信号伝送路33は、X方向の一方から偶数番目に配置される発光サイリスタTaのオーミックコンタクト層25aにそれぞれ接続される。
配線部4は、第4および第5電極4d,4eを、それぞれ異なる複数の受光部3に接続する第4および第5信号伝送路34,35をさらに含む。隣接する受光部3は、第4および第5電極4d,4eのうち互いに異なる電極に接続される。ここでは、第4信号伝送路34は、X方向の一方から奇数番目に配置される受光部3の検出サイリスタTcのオーミックコンタクト層25dにそれぞれ接続される。また第5信号伝送路35は、X方向の一方から奇数番目に配置される受光部3の検出サイリスタTcのオーミックコンタクト層25dにそれぞれ接続される。配線部4および共通電極12は、金(Au)、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)などの金属によって形成される。
第4および第5電極4d,4eは、プルアップ抵抗PRを介して図示しない電圧供給源に接続される。受光部3の受光状態を検出するときは、検出サイリスタTcが、アノードおよびカソード間に電流が流れないオフ状態のときに、第4または第5電極4d,4eを介して、検出サイリスタTcのアノードに予め定める電圧が与えた状態にしておく。この状態で、フォトトランジスタTrが所定の光量を受光すると、フォトトランジスタTrの出力に応じて検出サイリスタTcのしきい電圧を低下させることができ、検出サイリスタTcがオフ状態から、オン状態に遷移する。検出サイリスタTcがオフ状態からオン状態に切り換わることによって、第4および第5電極4d,4eの電位および第4および第5電極4d,4eに流れる電流が大きく変化する。この電位の変化または電流を検出信号として、受光部3が受光しているか否かを調べることができる。このように検出サイリスタTcを用いることによって、フォトトランジスタTrの出力を増幅することができ、増幅回路を別途も受ける必要がない。また検出サイリスタTcは基板1に形成されるので、増幅素回路を別体で設けるよりも小型化が可能である。
発光サイリスタTa,受光サイリスタTb,フォトトランジスタTrおよび検出サイリスタTcは、単結晶半導体から成る基板1上にエピタキシャル成長によって形成される。第1の一方導電型半導体層21a,21b,21c,21dは、同一の材料によって形成される。また、第1の他方導電型半導体層22a,22b,22c,22dは、同一の材料によって形成される。また第2の一方導電型半導体層23a,23b,23c,23dは、同一の材料によって形成される。また第2の他方導電型半導体層24a,24b,24dは、同一の材料によって形成される。またオーミックコンタクト層25a,25b,25dは、同一の材料によって形成される。
第1の一方導電型半導体層21a,21b,21c,21d、第1の他方導電型半導体層22a,22b,22c,22d、第2の一方導電型半導体層23a,23b,23c,23d、第2の他方導電型半導体層24a,24b,24d、およびオーミックコンタクト層25a,25b,25dを形成する半導体材料としては、ガリウム砒素(GaAs)系、ガリウム燐(GaP)系および窒化ガリウム(GaN)系などの化合物半導体が好適である。基板1の材質としては、前記第1の一方導電型半導体層21a,21b,21c,21dを形成する化合物半導体の材質に応じて、たとえば、ガリウム砒素(GaAs)、ガリウム燐(GaP)、窒化ガリウム(GaN)、シリコン(Si)、サファイア(Al2O3)、炭化シリコン(SiC)または硼化ジルコニウム(ZrB2)などを用いることができる。
前記発光部2および受光部3は、電気絶縁性および透光性を有する第1絶縁層41によって一体的に覆われる。第1絶縁層41は、たとえばポリイミドなどによって形成される。第1絶縁層41のうち、オーミックコンタクト層25a,25dにそれぞれ積層される部位には、貫通孔が形成される。第2〜第5信号伝送路32〜35は、これら貫通孔を介してオーミックコンタクト層25a,25dに接続される。また第1絶縁層41は、配線部4と基板1とを絶縁する。また第2〜第5信号伝送路32〜35は、X方向に沿って延びる部分と、Y方向に沿って延びる部分とをそれぞれ有する。第2〜第5信号伝送路32〜35のうち、X方向に沿って延びる部分は、前記第1絶縁層41に積層して設けられる、また電気絶縁性を有する第2絶縁層42によって覆われる。第2〜第5信号伝送路32〜35のうち、Y方向に沿って延びる部分は、前記第1および第2絶縁層41,42にそれぞれ積層して設けられ、第2絶縁層42に形成される貫通孔を介して、接続されるべき第1部分に接続される。
ラインセンサL1は、隣接する発光部2のうち一方の発光部2の発光サイリスタTaと他方の発光部2の受光サイリスタTbとにまたがって、これらを覆う遮光膜44をさらに有する。遮光膜44は、発光サイリスタTaからの光がフォトトランジスタTrに直接受光されてしまわないように設けられる。また遮光膜44は、隣接する発光部2のうち一方の発光部2からの光を反射して、他方の発光部2の受光サイリスタTbに照射させることができる位置に設けられる。遮光膜44は、発光面14のうち周縁部を除く位置には設けられず、したがって、発光サイリスタTaからZ方向の一方に放射される光を遮らない。遮光膜44は、配線部4と同様の材料によって形成され、本実施の形態では、第2〜第5信号伝送路32〜35のうちの第2部分と一体に形成される。
また発光サイリスタT0とこの発光サイリスタT0に相互に隣接する受光トランジスタTbとにまたがって、これらを覆う遮光膜45をさらに有する。遮光膜45は、発光サイリスタT0からの光がフォトトランジスタTrに受光されてしまわないように設けられる。また遮光膜45は、発光サイリスタT0からの光を反射して、受光サイリスタTbに照射させることができる位置に設けられる。遮光膜45は、配線部4と同様の材料によって形成され、本実施の形態では、第1信号伝送路31と一体に形成される。
第1〜第3電極4a〜4cについても、プルアップ抵抗PRを介して、発光制御用信号を出力する駆動用回路に接続される。プルアップ抵抗PRを介して電圧を印加することによって、発光サイリスタTaが発光したときに発光サイリスタTaに不所望な大電流が流れてしまうことを抑制することができ、サイリスタアレイLを安定して動作させることができる。
次に、ラインセンサL1の動作について説明する。図5は、ラインセンサL1の動作を示すタイミングチャートである。駆動用回路が第1電極4aに与える発光制御信号をφSとし、第2および第3電極4b,4cに与える発光制御信号をそれぞれ、φ1およびφ2とする。また駆動用回路が第2および第3電極4b,4cに接続されるプルアップ抵抗にそれぞれ与える駆動信号をV1,V2で表し、第2および第3電極4b,4cから出力される検出信号をOutput1、Output2でそれぞれ表す。前記発光制御信号、駆動信号および検出信号は、電圧で表され、この電圧は基準電位である接地電位との電位差である。各発光制御信号φS,φ1およびφ2、ならびに駆動信号V1,V2は、それぞれの信号レベルが、ハイ(H)レベルのときには、予め定める電位を与えることができ、信号レベルがロー(L)レベルのときには、接地電位を与えることができるとする。ここでは、複数の発光部2のうち、X方向の一方から3つの発光部2が臨む領域には、検出対象物が存在せず、残りの発光部2が臨む領域に検出対象物が存在するとする。
発光制御信号φ1,φ2がハイレベルのときの予め定める電圧は、ゲートが接続される受光サイリスタTbが相互に隣接する他の発光部2の発光サイリスタTaからの光を受光していないときの発光サイリスタTaのしきい電圧未満に選ばれる。また発光制御信号φ1およびφ2のハイレベルのときの予め定める電圧は、ゲートが接続される受光サイリスタTbが受光することによってしきい電圧が低下したときの、発光サイリスタTaのしきい電圧を超えるように選ばれる。
駆動信号V1,V2がハイレベルのときの予め定める電圧は、接続されるフォトトランジスタTrが、相互に隣接する発光サイリスタTaから放射され検出対象物によって反射された光を受光していないときの検出サイリスタTcのしきい電圧未満に選ばれる。また駆動信号V1,V2がハイレベルのときの予め定める電圧は、接続されるフォトトランジスタTrが、相互に隣接する発光サイリスタTaから放射され検出対象物によって反射された光を受光することによってしきい電圧が低下したときの、検出サイリスタTcのしきい電圧を超えるように選ばれる。
はじめに、発光制御信号φS,φ1,φ2および駆動信号V1,V2の信号レベルはローレベルであるとする。また駆動用回路は、発光制御信号φS,φ1,φ2および駆動信号V1,V2の信号レベルについて、信号レベルを切換えるまでは、一定に維持する。
時刻t1で、発光サイリスタT0に入力される発光制御信号φSの信号レベルをハイ(H)レベルにすると、発光サイリスタT0が発光して、その光が隣接する発光部2の受光サイリスタTbに入射する。
次に受光サイリスタTbが発光サイリスタT0からの光を受けている状態で、時刻t2において発光制御信号φ1の信号レベルをハイレベルに切換える。これによって、受光している受光サイリスタTbとゲートが接続されている発光サイリスタTaが励起状態となって、発光制御信号φ1が与えられる発光サイリスタTaのうち、受光している受光サイリスタTbとゲートが接続されている発光サイリスタTaのみが発光する。発光した発光サイリスタTaからの光は、この発光サイリスタTaに隣接する他の発光部2の受光サイリスタTbに入射する。この発光サイリスタTaからの光が入射する受光サイリスタTbにゲートが接続される発光サイリスタTaは、発光制御信号φ2の信号レベルがハイレベルにまでは励起状態とはならず、発光しない。
発光サイリスタTaが発光すると、この光は基板1の一主面1aの一方に照射される。この光が照射される領域に検出対象物が存在する場合では、発光サイリスタTaからの光は、検出対象物によって反射されて、発光している発光サイリスタTaに隣接するフォトトランジスタTrにおいて受光される。また光が照射される前記領域に検出対象物が存在しない場合では、発光サイリスタTaからの光は、検出対象物によって反射されないので、フォトトランジスタTrに発光サイリスタTaからの光は照射されない。
時刻t3で、駆動用回路が、発光制御信号φSの信号レベルをローレベルに切換える。これによって、発光サイリスタT0の発光が停止する。次に時刻t4で、発光制御信号φ2の信号レベルをハイレベルに切換える。X方向の一方から2つ目の受光部3の受光サイリスタTbは、隣接する発光サイリスタTaから光が照射されているので、発光制御信号φ2の信号レベルがハイレベルに切換わるとオフ状態からオン状態に遷移して発光する。このとき発光制御信号φ2が与えられる残余の発光サイリスタTaは、ゲートが接続される受光サイリスタTbに隣接する発光サイリスタTaから光が照射されていないので、発光しない。
次に時刻t5で、駆動用回路が、発光制御信号φ1の信号レベルをローレベルに切換えると、X方向の一方から1つ目の発光部2の発光サイリスタTaは、オン状態からオフ状態に遷移して、発光を停止する。次に時刻t6で、駆動用回路が、発光制御信号φ1の信号レベルをハイレベルに切換えると、X方向の一方から3つ目の発光部2の発光サイリスタTaが発光し、時刻t7で発光制御信号φ2の信号レベルをローレベルに切換えると、X方向の一方から2つ目の発光部2の発光サイリスタTaの発光が停止する。また時刻t8で、発光制御信号φ2の信号レベルをハイレベルに切換えると、X方向の一方から4つ目の発光部2の発光サイリスタTaが発光する。
以後同様にして、発光制御信号φ1,φ2の信号レベルを予め定める周期で交互に切換えることによって、発光サイリスタTaをX方向の一方から他方に向かって順番に発光させることができる。発光制御信号φ1,φ2が切換わるときに、発光制御信号φ1,φ2を共にハイレベルにすることによって、発光している発光サイリスタTaの次に発光させるべき発光サイリスタTaのしきい電圧を確実に低下させた状態で、発光させるべき発光サイリスタTaにハイレベルの発光制御信号を与えることができる。これによって、X方向の一方から他方に向かって順番に発光サイリスタTaを確実に発光させることができる。
駆動用回路は、発光制御信号φ1の信号レベルがハイレベルとなっている間で、かつ、発光制御信号φ2の信号レベルがローレベルとなっている間に、予め定める時間だけ駆動信号V1をハイレベルに切換える。発光している発光サイリスタTaが臨む領域に検出対象物が存在する場合には、発光している発光サイリスタTaに隣接するフォトトランジスタTrが反射光を受光するので、このフォトトランジスタTrにゲートが接続される検出サイリスタTcに与えられる駆動信号の信号レベルがハイレベルになると、この検出サイリスタTcは、オン状態になる。これによって、オン状態になった検出サイリスタTcのアノードに接続される電極の電位は低下して、接地電位から拡散電位分だけ高い電位となり、検出信号Output1の信号レベルがほぼローレベルとなる。また発光している発光サイリスタTaが臨む領域に検出対象物が存在しない場合には、発光している発光サイリスタTaに隣接するフォトトランジスタTrが反射光を受光しないので、このフォトトランジスタTrにゲートが接続される検出サイリスタTcに与えられる駆動信号の信号レベルがハイレベルになっても、この検出サイリスタTcは、オフ状態のままとなる。これによって、検出サイリスタTcのアノードに接続される電極の電位は、駆動信号の信号レベルとなる。これによって、発光している発光サイリスタTaが臨む領域に検出対象物が存在する場合には、検出信号Output1の信号レベルがハイレベルとなり、発光している発光サイリスタTaが臨む領域に検出対象物が存在しない場合には、検出信号Output1の信号レベルがローレベルとなる。
また駆動用回路は、発光制御信号φ2の信号レベルがハイレベルとなっている間で、かつ、発光制御信号φ1の信号レベルがローレベルとなっている間に、予め定める時間だけ駆動信号V2をハイレベルに切換える。これによって、同様に、発光している発光サイリスタTaが臨む領域に検出対象物が存在する場合には、検出信号Output2の信号レベルがハイレベルとなり、発光している発光サイリスタTaが臨む領域に検出対象物が存在しない場合には、検出信号Output2の信号レベルがローレベルとなる。
本実施の形態では、第4および第5信号伝送路34,35が、X方向の一方から他方に向かって交互に検出サイリスタTcに接続されている。本実施の形態のように複数本の信号伝送路(第4および第5信号伝送路34,35)を用いると、と、X方向に並ぶ発光サイリスタTaおよびフォトトランジスタTrのピッチにもよるが、X方向における検出精度を向上させることができる。たとえば発光サイリスタTa間に披検出物がある場合、所定の発光サイリスタTaから斜めに照射された光が、この発光サイリスタTaのY方向に隣接するフォトトランジスタTrだけでなく、このフォトトランジスタTrに隣接するフォトトランジスタTrにおいても受光される。このような場合において、全ての検出サイリスタTcのアノードに共通の信号伝送路を接続しておくと、実際には披検出物がない領域にフォトトランジスタTrが臨んでいても、このフォトトランジスタTrが受光するので、1素子分余分に披検出物があると誤検出されるおそれがある。本実施の形態のように、検出サイリスタTcのアノードに複数本の信号伝送路を交互に接続すると、検出すべきフォトトランジスタTrに相互に隣接するフォトトランジスタTrによる検出を休止することができるので、前述のような誤検出を抑制することができ、これによって検出精度を向上させることができる。
また本実施の形態では、第4および第5信号伝送路34,35の2本を用いているが、X方向に並ぶ発光サイリスタTaおよびフォトトランジスタTrのピッチがさらに小さくなれば、検出信号を伝送する信号伝送路をさらに増やしてもよい。たとえば検出信号を伝送する信号伝送路のK(Kは3以上の自然数)本とすると、各受光サイリスタTcがいずれか一つの信号伝送路にのみ接続され、かつ各信号伝送路がX方向において接続される受光サイリスタTcの間の受光サイリスタTcの数がK−1個となるように、検出サイリスタTcのアノードに接続する。そして各信号伝送路に与える駆動信号を、1つずつ順番にハイレベルに切換える構成とすればよい。
また、X方向に並ぶ発光サイリスタTaおよびフォトトランジスタTrのピッチが大きい場合、検出精度を特別に必要としない場合などでは、もちろん、全ての検出サイリスタTcのアノードに共通の信号伝送路を接続する構成としてもよい。
図6は、ラインセンサL1の使用状態を示す図である。ラインセンサL1は、記録シート体などの検出対象物50の端部の検出、および検出対象物50の傾きの検出などに用いられる。ここでは、ラインセンサL1の発光部2が臨む領域からラインセンサL1のX方向の他方側にわたって検出対象物50が設けられることが予め定められているときについて説明する。ラインセンサL1の各発光部2が臨む領域に検出対象物50が存在するときに、駆動用回路は、X方向の一方から他方に向かって順番に発光サイリスタTaを発光させ、前述したように駆動信号V1,V2を予め定める周期で切換える。たとえば駆動用回路には、検出信号Output1,Output2の信号レベルが、予め定めるしきい値よりも高くなる回数を計数するカウンタが設けられる。この予め定めるしきい値は、前述した拡散電位よりも大きくなるように選ばれる。駆動用回路は、検出信号Output1,Output2の信号レベルがローレベルからハイレベルに切換わる回数を計数する。検出信号Output1,Output2の信号レベルがローレベルからハイレベルに切換わる回数は、複数の発光部2および受光部3のうち、X方向の一方からの順番に対応する。したがって、検出信号Output1,Output2の信号レベルがローレベルからハイレベルに切換わる回数を計数することによって、検出対象物50が複数の発光部2および受光部3のうち、X方向の一方からN(Nは自然数)個目の発光部2および受光部3が臨む領域には存在せずに、X方向の一方からN+1個目の発光部2および受光部3が臨む領域には存在することを検出することができる。したがって、検出対象物50の端部51が、X方向においてどの位置にあるのかを検出することができる。
検出対象物50が搬送物であるときには、Y方向を検出対象物50の搬送方向に沿って配置し、被搬送物である検出対象物50のうち、搬送方向に間隔をあけた少なくとも2箇所をラインセンサL1によって検出する。被搬送物50のうち、搬送方向に間隔をあけた少なくとも2箇所で、ラインセンサL1によって検出された被搬送物50の端部51の位置に基づいて、被搬送物50が搬送方向に対して傾斜しているか否かを検出することができる。すなわち、被搬送物50が画像形成装置に用いられる矩形状の記録シート体であれば、被搬送物50のうち、搬送方向に間隔をあけた少なくとも2箇所で、ラインセンサL1によって検出された被搬送物50の端部51の位置が同じであれば、被搬送物50が搬送方向に対して傾斜していないことがわかる。ラインセンサL1は、好ましくは、被搬送物50のうち、搬送方向上流側の端部と、搬送方向下流側の端部とを検出する。被搬送物50が搬送方向に対してX方向に傾いているときには、X方向においては被搬送物50のうち、搬送方向上流側の端部と、搬送方向下流側の端部とが最も離反する。したがって、ラインセンサL1によって、被搬送物50のうち、搬送方向上流側の端部と、搬送方向下流側の端部とを検出すると、被搬送物50の傾きを検出しやすくすることができる。
以上のようにラインセンサL1では、第1〜第4電極4a〜4eが、いずれも発光部2および受光部3のうちX方向の端部に設けられる発光部2および受光部3よりも、X方向の外方に設けられる。これによって第1〜第4電極4a〜4eと、外部の装置である駆動用回路とを接続する外部配線が、発光部2および受光部3に臨む領域に存在する検出対象物50に対して障害となることを抑制することができ、検出対象物50を良好に検知することができる。また外部配線を、受光部3から遠ざけることができ、外部配線をボンディングワイヤなどによって実現しても、この外部配線からの不要な反射光の受光部3による受光を抑制することができる。したがって、図6に示すように列状に配置された複数の発光部2および受光部3が臨む領域を、検出対象物50の端部51にまたがって設ければ、検出対象物50の端部51の位置を、精度よく適切に検出することができる。このようにラインセンサL1は、前述したような簡単な構成で検出対象物50の端部51の位置を適切に検出することができる。
またラインセンサL1では、発光部2は、発光サイリスタTaおよび受光サイリスタTbで構成され、受光部3はフォトトランジスタTrおよび検出サイリスタTcで構成し、スタート用発光部5は発光サイリスタT0で構成される。発光サイリスタTa、受光サイリスタTb、検出サイリスタTcおよび発光サイリスタT0は、同様の構成であり、同様の半導体層を積層して形成される。またフォトトランジスタTrは、発光サイリスタTa、受光サイリスタTb、検出サイリスタTcおよび発光サイリスタT0の一部の半導体層と同様の半導体層を積層して形成される。したがって、光サイリスタTa、受光サイリスタTb、検出サイリスタTcおよび発光サイリスタT0、ならびにフォトトランジスタTrは、一連の半導体プロセスによって一括して形成することができ、構造的に製造しやすく、生産性を向上させることができる。
またラインセンサL1によれば、発光サイリスタTaおよび受光サイリスタTbと、第2および第3信号伝送路32,33とを組み合わせて、隣接する発光サイリスタTaからの光を発光サイリスタTaが発光するための制御信号として用いている。隣接する発光サイリスタTaからの光を、制御信号を用いて、発光サイリスタTaをX方向で順番に発光させることによって、発光サイリスタTaの数を多くして分解能を高めても、発光サイリスタTaの数よりも格段に少ない数の信号伝送路で、発光制御信号を伝送させることができる。本実施の形態では、2本の信号伝送路で、各発光サイリスタTaを発光させることができる。したがって、発光制御信号を伝送するための配線、および電極を少なくすることができ、基板1の短辺方向、すなわちY方向の幅を小さくすることができるので、検出の分解能を高くしても実現可能な寸法で小型にラインセンサを構成することができる。また、ラインセンサL1は、高分解能であっても小型であるからウェハプロセスにおいて量産性に有利、すなわち生産効率が向上する。
図7は、本発明の実施の他の形態のラインセンサL2の概略的な回路構成を示す等価回路図である。ラインセンサL2は、前述した実施の形態のラインセンサL1に類似し、発光部2および配線部4の構成が異なるのみであるので、同様な構成には同様の参照符号を付して、異なる部分についてのみ説明する。前述した実施の形態では、発光部2は、発光サイリスタTaと、受光サイリスタTbとを含む構成であるが、本発明の実施の他の形態では、発光部2は、前述した発光サイリスタTaのみを含んで構成される。発光サイリスタTaは、光を受光するとしきい電圧が低下する。したがって、隣接する発光サイリスタTaから光が照射された状態で、発光制御信号の信号レベルがハイレベルにすることによって発光サイリスタTaを発光させることができる。
本実施の形態では、発光サイリスタTaの光が、X方向の両側に隣接する発光サイリスタTaにそれぞれ入射し、これらの隣接する各発光サイリスタTaの受光量が等しいので、前述の実施の形態のように2本の信号伝送路によって、発光制御信号を与えると、同じ発光制御信号が与えられる複数の発光サイリスタTaが同時に点灯してしまうことになってしまう。そこで、ラインセンサL2では、配線部4は、さらに第6電極4fと、第6電極4fを、第2および第3電極4b,4cが接続される発光サイリスタTaとは異なる発光サイリスタTaに接続する第6信号伝送路36をさらに有する。第6電極4fは、第1〜第5電極4a〜4eと同様に、複数の発光部2および受光部3のうち、端部に設けられる発光部2および受光部3よりもX方向の外方に設けられる。第6電極4fには、外部から発光制御信号が与えられる。第6信号伝送路36は、第2および第3信号伝送路32,33と同様にY方向において発光部2を挟んで受光部3とは反対側に配置される。
第2、第3および第6信号伝送路32,33,36は、第2,第3および第6電極4b,4c,4fに、発光制御信号を与えたときに、発光サイリスタTaが、相互に隣接する発光サイリスタTaの発光状態と、発光制御信号とに応じて選択的に発光可能となるように各発光サイリスタTaに接続される。本実施の形態では、X方向に相互に隣接する3つの発光部2の発光サイリスタTaは、それぞれ異なる信号伝送路に接続される。たとえば、X方向の一方からJ1(J1=3×k−2(kは自然数))番目の発光サイリスタTaは、第2信号伝送路32に接続され、X方向の一方からJ2(J2=3×k−1)番目の発光サイリスタTaは、第3信号伝送路33に接続され、X方向の一方からJ3(J3=3×k)番目の発光サイリスタTaは、第6信号伝送路36に接続される。
ラインセンサL2では、駆動用回路が第2,第3および第6電極4b,4c,4fに、それぞれ与える発光制御信号を、順番にハイレベルにすることによって、発光サイリスタTaをX方向の一方から順番に発光させることができる。第6電極4fは、プルアップ抵抗を介して駆動用回路に接続される。
図8は、ラインセンサL2の動作を示すタイミングチャートである。駆動用回路が第1電極4aに与える発光制御信号をφSとし、第2、第3および第6電極4b,4c,4fに与える発光制御信号をそれぞれ、φ1,φ2およびφ3とする。前記発光制御信号は、電圧で表され、この電圧は基準電位である接地電位との電位差である。各発光制御信号φS,φ1,φ2,φ3の信号レベルが、ハイ(H)レベルのときには、予め定める電位を与えることができ、信号レベルがロー(L)レベルのときには、接地電位を与えることができるとする。ここでは、複数の発光部2のうち、X方向の一方から3つの発光部2が臨む領域には、検出対象物が存在せず、残りの発光部2が臨む領域に検出対象物が存在するとする。
発光制御信号φ1,φ2,φ3がハイレベルのときの予め定める電圧は、相互に隣接する発光サイリスタTaからの光を受光していないときの発光サイリスタTaのしきい電圧未満に選ばれる。また発光制御信号φ1,φ2,φ3のハイレベルのときの予め定める電圧は、相互に隣接する発光サイリスタTaからの光を受光することによってしきい電圧が低下したときの、発光サイリスタTaのしきい電圧を超えるように選ばれる。
はじめに、発光制御信号φS,φ1,φ2,φ3および駆動信号V1,V2の信号レベルはローレベルであるとする。また駆動用回路は、発光制御信号φS,φ1,φ2,φ3および駆動信号V1,V2の信号レベルについて、信号レベルを切換えるまでは、一定に維持する。
時刻t1で、発光サイリスタT0に入力される発光制御信号φSの信号レベルをハイ(H)レベルにすると、発光サイリスタT0が発光して、その光が隣接する発光部2の受光サイリスタTbに入射する。
次に発光サイリスタTaが発光サイリスタT0からの光を受けている状態で、時刻t2において発光制御信号φ1の信号レベルをハイレベルに切換える。これによって、受光している発光サイリスタTaが励起状態となって、発光制御信号φ1が与えられる発光サイリスタTaのうち、受光している発光サイリスタTaのみが発光する。発光した発光サイリスタTaからの光は、この発光サイリスタTaに隣接する発光サイリスタTaに入射する。発光サイリスタTaは、発光制御信号φ2の信号レベルがハイレベルにまでは励起状態とはならず、発光しない。
時刻t3で、駆動用回路が、発光制御信号φSの信号レベルをローレベルに切換える。これによって、発光サイリスタT0の発光が停止する。次に時刻t4で、発光制御信号φ2の信号レベルをハイレベルに切換える。X方向の一方から2つ目の発光サイリスタTaは、隣接する発光サイリスタTaから光が照射されているので、発光制御信号φ2の信号レベルがハイレベルに切換わるとオフ状態からオン状態に遷移して発光する。このとき発光制御信号φ2が与えられる残余の発光サイリスタTaは、相互に隣接する発光サイリスタTaから光が照射されていないので、発光しない。
次に時刻t5で、駆動用回路が、発光制御信号φ1の信号レベルをローレベルに切換えると、X方向の一方から1つ目の発光サイリスタTaは、オン状態からオフ状態に遷移して、発光を停止する。次に時刻t6で、駆動用回路が、発光制御信号φ3の信号レベルをハイレベルに切換えると、X方向の一方から3つ目の発光サイリスタTaが発光し、時刻t7で発光制御信号φ3の信号レベルをローレベルに切換えると、X方向の一方から2つ目の発光サイリスタTaの発光が停止する。また時刻t8で、発光制御信号φ1の信号レベルをハイレベルに切換えると、X方向の一方から4つ目の発光サイリスタTaが発光する。
以後同様にして、発光制御信号φ1,φ2,φ3の信号レベルを予め定める周期で順番に切換えることによって、発光サイリスタTaをX方向の一方から他方に向かって順番に発光させることができる。発光制御信号φ1,φ2,φ3のそれぞれが切換わるときに、発光制御信号φ1,φ2,φ3のうちの、発光している発光サイリスタTaと、発光させるべき発光サイリスタTaとに与えられものを共にハイレベルにする。これによって発光している発光サイリスタTaの次に発光させるべき発光サイリスタTaのしきい電圧を確実に低下させた状態で、発光させるべき発光サイリスタTaにハイレベルの発光制御信号を与えることができる。これによって、X方向の一方から他方に向かって順番に発光サイリスタTaを確実に発光させることができる。
駆動用回路は、発光制御信号φ1の信号レベルがハイレベルとなり、かつ発光制御信号φ2,φ3の信号レベルがローレベルとなっているとき、発光制御信号φ2の信号レベルがハイレベルとなり、かつ発光制御信号φ1,φ3の信号レベルがローレベルとなっているとき、発光制御信号φ3の信号レベルがハイレベルとなり、かつ発光制御信号φ1,φ2の信号レベルがローレベルとなっている間に、予め定める時間だけ駆動信号V1またはV2をハイレベルに切換える。駆動信号V1,V2の信号レベルは、前述の実施の形態と同様に、交互にハイレベルに切換えられる。
本実施の形態では、発光サイリスタTaからの光が、この発光サイリスタTaに相互に隣接する発光サイリスタTaに入射するが、第2,第3および第6信号伝送路32,33,36によって、発光制御信号φ1〜φ3を伝送することによって、X方向の他方に隣接する発光サイリスタTaのみを発光させることができる。
以上のような構成によって、ラインセンサL2は、前述したラインセンサL1と同様の効果を達成することができる。ラインセンサL2は、ラインセンサL1よりも電極および信号伝送路が1つずつ多く必要にはなるが、受光サイリスタTbを形成する必要がない。またラインセンサL2では、受光サイリスタTbがないので、発光サイリスタTaの間隔をラインセンサL1よりも近接して設けることができるようになり、さらに分解能を向上させることができる。
図9は、本発明の実施の他の形態のラインセンサL3の概略的な回路構成を示す等価回路図である。ラインセンサL3は、前述した実施の形態のラインセンサL1に類似し、発光部2および配線部4の構成が異なるのみであるので、同様な構成には同様の参照符号を付して、異なる部分についてのみ説明する。前述した実施の形態では、発光部2は、発光サイリスタTaと、受光サイリスタTbとを含む構成であるが、本発明の実施の他の形態では、発光部2は、前述した発光サイリスタTaのみを含んで構成される。またラインセンサL3は、スタート用発光部5を備えない。発光サイリスタTaは、光を受光するとしきい電圧が低下する。したがって、隣接する発光サイリスタTaから光が照射された状態で、発光制御信号の信号レベルがハイレベルにすることによって発光サイリスタTaを発光させることができる。
ラインセンサL3の配線部4は、予め定める電圧が印加される電圧供給線61と、電圧供給線61と各発光サイリスタTaのゲートとをそれぞれ接続する抵抗素子RLと、相互に隣接する発光サイリスタTaのゲートに接続されるダイオードDとを含む。ダイオードDは、相互に隣接する発光サイリスタTaのうち、X方向の一方の発光サイリスタTaのゲートにカソードが接続され、X方向の他方の発光サイリスタTaのゲートにアノードが接続される。また各ダイオードDのアノードおよびカソードは、抵抗素子RLを介して、電圧供給線61に接続される。また第1信号伝送路31は、X方向の一方の端部の発光サイリスタTaのゲートに接続される。
電圧供給線61には、予め定める電圧が与えられる。電圧供給線61が電源と接続される部位は、複数の発光部2および受光部3のうち、端部に設けられる発光部2および受光部3よりもX方向の外方に設けられる。駆動用回路は、はじめに発光制御信号φS,φ1,φ2の信号レベルをともにローレベルとしておく。そして駆動用回路が、第2電極4bに与える発光制御信号φ1の信号レベルをハイレベルにすることによって、X方向の一方から1番目の発光サイリスタTaを発光させることができる。X方向の一方から1番目の発光サイリスタTaが発光すると、駆動用回路が、発光制御信号φSの信号レベルをハイレベルにする。以後駆動用回路は、発光制御信号φSの信号レベルをハイレベルとしたままにする。発光制御信号φSのハイレベルのときの電位は、電圧供給線61の電位と等しく選ばれる。
X方向の一方から1番目の発光サイリスタTaが発光すると、X方向の一方から2番目の発光サイリスタTaのゲートの電位が低下する。X方向の一方から3番目以降の発光サイリスタTaのゲートの電位も低下するが、発光サイリスタTaのゲート間には、ダイオードDが接続されているので、X方向の他方に向かうほど、ダイオードDの拡散電位分だけ電位が高くなり、ゲート電位の低下が少ない。この状態で駆動用回路が、発光制御信号φ2の信号レベルをハイレベルにすると、X方向の一方から2番目の発光サイリスタTaが発光する。X方向の一方から2番目の発光サイリスタTaが発光すると、駆動用回路が、発光制御信号φ1の信号レベルをローレベルにする。駆動用回路は、以後、前述の実施の形態と同様に、予め定める周期で、図5のタイミングチャートに示すように、発光制御信号φ1,φ2の信号レベルを交互に切換える。これによって、X方向の一方から順番に発光サイリスタTaを発光させることができる。
駆動用回路は、前述の実施の形態と同様に駆動信号V1,V2を切換えることによって、前述した実施の形態と同様の効果を達成することができる。ラインセンサL3では、ダイオードDおよび抵抗素子RLを基板1に形成する必要があるが、スタート用発光部5を備える必要がない。
図10は、ラインセンサL1を使用した画像形成装置87の基本的構成を示す側面図である。画像形成装置87は、電子写真方式の画像形成装置である。画像形成装置87は、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色のカラー画像を形成するタンデム方式を採用した装置であり、大略的に、4つの発光装置10Y,10M,10C,10K、集光手段であるレンズアレイ88Y,88M,88C,88K、発光装置10Y,10M,10C,10Kおよび各駆動ICが実装された回路基板およびレンズアレイ88を保持する第1ホルダ89Y,89M,89C,89K、4つの感光体ドラム90Y,90M,90C,90K、4つの現像剤供給手段91Y,91M,91C,91K、転写手段である転写ベルト92、4つのクリーナ93Y,93M,93C,93K、4つの帯電器94Y,94M,94C,94K、定着手段95および制御手段96を含んで構成される。
各発光装置10Y,10M,10C,10Kは、制御手段96からの制御指令が与えられて動作し、駆動用回路によって各色のカラー画像情報に基づいて駆動される。各発光装置10Y,10M,10C,10Kの発光装置10Y,10M,10C,10Kからの光は、レンズアレイ88を介して各感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kに集光して照射される。レンズアレイ88は、たとえば発光素子の光軸上にそれぞれ配置される複数のレンズを含み、これらのレンズを一体的に形成して構成される。
発光装置10Y,10M,10C,10Kが実装される回路基板およびレンズアレイ88は、第1ホルダ89によって保持される。第1ホルダ89によって、発光装置10Y,10M,10C,10Kの光照射方向と、レンズアレイ88のレンズの光軸方向とがほぼ一致するようにして位置合わせされる。各感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kは、たとえば円筒状の基体表面に感光体層を被着して成り、その外周面には各発光装置10Y,10M,10C,10Kからの光を受けて静電潜像が形成される静電潜像形成位置が設定される。
各感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kの周辺部には、各静電潜像形成位置を基準として回転方向下流側に向かって順番に、露光された感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kに現像剤を供給する現像剤供給手段91Y,91M,91C,91K、転写ベルト92、クリーナ93Y,93M,93C,93K、および帯電器94Y,94M,94C,94Kがそれぞれ配置される。感光体ドラム90に現像剤によって形成された画像を記録シート体71に転写する転写ベルト92は、4つの感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kに対して共通に設けられる。
前記感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kは、第2ホルダ(図示省略)によって保持され、この第2ホルダと第1ホルダ89とは、相対的に固定される。各感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kの回転軸方向と、各発光装置10Y,10M,10C,10Kの前記配列方向とがほぼ一致するようにして位置合わせされる。転写ベルト92によって、記録シート体71を搬送し、現像剤によって画像が形成された記録シート体71は、定着手段95に搬送される。定着手段95は、記録シート体71に転写された現像剤を定着させる。感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kは、回転駆動手段によって回転される。
制御手段96は、前述した各駆動用回路に画像情報を与えるとともに、感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kを回転駆動する回転駆動手段、現像剤供給手段91Y,91M,91C,91K、転写ベルト92、帯電器94Y,94M,94C,94Kおよび定着手段95の各部を制御する。
ラインセンサL1は、たとえば感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kのうち、記録シート体71の搬送方向の上流側に配置される感光体ドラム90Yの近傍に設けられる。ラインセンサL1は、感光体ドラム90Yよりも記録シート体71の搬送方向の上流側に設けられ、記録シート体71の搬送経路のうち、記録シート体71の幅方向の端部が通過する領域に発光部2および受光部3が臨むように固定される。ラインセンサL1によって、記録シート体71の搬送中に、その幅方向の端部の位置を検出する。記録シート体71の幅方向の端部の位置が変化すれば、その位置変化をラインセンサL1が検出することができ、感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kに向かって搬送される記録シート体71が傾いているか否かがわかる。ラインセンサL1は、制御手段96と接続されて、ラインセンサL1によって、記録シート体71が傾いていると制御手段96が判断すると、制御手段96は、たとえば、装置の各部を制御してもう一度同じ画像を形成させる。
本実施の形態では、画像形成装置87はラインセンサL1を備えるが、ラインセンサL2,L3を用いてもよく、前述したいずれの実施の形態のラインセンサを用いてもよい。また画像形成装置87において、ラインセンサを設ける位置は、前述した位置に限らず、記録シート体71の搬送経路に臨む位置であればよい。またラインセンサは、記録シート体71の幅方向の両端部を検出するように、搬送経路に臨む複数の位置に設けられてもよい。
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良などが可能である。たとえば、前述した実施の形態では、発光部2として発光サイリスタTaを用いているが、発光サイリスタTaの替わりに発光ダイオードを用いてもよい。また、前述した実施の形態において、フォトトランジスタTrの替わりにフォトダイオードを用いてもよい。またたとえば、本発明の実施のさらに他の形態では、前述の各実施の形態において、各電極は、発光部2および受光部3のうちX方向の端部に設けられる発光部2および受光部3よりも、X方向の外方のうちのいずれか一方だけではなく、両方に設けられてもよい。
また前述した発光サイリスタT0のY方向の一方に隣接して、受光部3を設けてもよい。この場合、発光サイリスタT0のオーミックコンタクト層25aが露出するように絶縁層41および遮光膜45が形成される。