図1は、本発明の実施の一形態の発光サイリスタ1の構成を示す断面図である。発光サイリスタ1は、半導体から成り、N型およびP型のうちのいずれか一方の導電型の基板2と、一方の導電型の第1半導体層3と、他方の導電型の第2半導体層4と、一方の導電型の第3半導体層5と、他方の導電型の第4半導体層6と、オーミックコンタクト層7と、表面電極8と、裏面電極9と、ゲート電極11とを備える。本実施の形態では、一方の導電型をN型とし、他方の導電型をP型とする。発光サイリスタ1では、基板2の厚み方向の一表面2A上に、第1半導体層3、第2半導体層4、第3半導体層5および第4半導体層6が、この記載の順に積層されることによって、NPNPのサイリスタの構造が形成されている。
第1半導体層3は、基板2寄りのバッファ領域12と、基板2とは反対寄りで、第2半導体層4が積層される積層領域13と、バッファ領域12と積層領域13との間で、サブピーク波長の光を吸収するサブピーク吸収領域14との3層で構成され、これら各層はいずれもN型の半導体によって形成される。
第2半導体層4は、P型の半導体によって形成される。第1半導体層3から第3半導体層5、または第3半導体層5から第1半導体層3に注入される電荷のうち、第2半導体層4で電子と正孔とが再結合してしまうことを抑制するために、第2半導体層4の厚さは0.01μm〜0.5μmに選ばれる。
第3半導体層5は、基板2寄りの第1領域15と、基板2とは反対寄りの第2領域16と、第1および第2領域15,16に挟まれる第3領域17との各層を有する。第1領域15は、さらに基板2寄りで第2半導体層に接触する領域15aと、第3領域17に接触する領域15bとの2層で構成される。第1領域15の各領域15a,15b、第2領域16および第3領域17の各層は、いずれもN型の半導体によって形成される。第2領域16は、第3領域17の一部にのみ積層され、第3領域17の第2領域16が積層されていない部分18は露出する。
第4半導体層6は、基板2寄りの領域6aと、基板2とは反対寄りの領域6bとの2層によって構成され、これらの各層はいずれもP型の半導体によって形成される。
オーミックコンタクト層7は、P型の半導体によって形成される。表面電極8は、オーミックコンタクト層7の基板2とは反対側の表面7Aに形成される。裏面電極9は、基板2の厚み方向の他表面2Bである裏面に形成される。本実施の形態では、表面電極8はアノード電極として用いられ、裏面電極9はカソード電極として用いられる。裏面電極9が一方の導電型電極であり、表面電極8が他方の導電型電極である。また、第3半導体層5のうちの第3領域17の前記部分18のうちの基板2とは反対側の表面17Aに、ゲート電極11が積層して設けられる。
本実施の形態では、基板2をN型の半導体によって形成した場合について例示しているが、これとは逆に、基板2にP型の半導体基板を用い、第1半導体層3をP型、第2半導体層4をN型、第3半導体層5をP型、第4半導体層をN型としてPNPNのサイリスタ構造を形成することも可能である。この場合は、オーミックコンタクト層にはN型の半導体を用い、裏面電極9がアノード電極になり、表面電極8がカソード電極になる。しかしながら、基板2はN型の半導体によって形成する方が好ましい。これは、発光サイリスタ1を集積化したときに、裏面電極9を共通の電極とし、表面電極8に正電源を接続できるからである。なお、いずれの導電型の順を用いても本実施の形態の効果に変わりはない。基板をP型の半導体基板とした場合は、以下の説明は、正孔と電子を入れ替えればそのまま成り立つ。
また、基板2に絶縁性基板および半絶縁性基板などを用いることもできる。この場合は、第2半導体層4、第3半導体層5、第4半導体層6およびオーミックコンタクト層7の少なくとも一部をエッチングして、第1半導体層3の基板2とは反対側の表面を露出させ、第1半導体層3の露出させた表面に裏面電極9に相当する電極を形成すればよい。
各半導体層3,4,5,6およびオーミックコンタクト層7は、有機金属気層エピタキシャル成長法(Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy;略称MOVPE)および分子線エピタキシャル成長法(Molecular Beam Epitaxy;略称MBE)などのエピタキシャル成長法によって形成される。エピタキシャル成長が必要な理由は、格子欠陥などを多量に含んでいると発光素子として機能し得ないからである。
発光サイリスタ1は、680nm〜780nmの波長の光を出射するために、第3半導体層5の、第1領域15の各領域15a,15bおよび第2領域16は、N型のAlGaAsによって形成される。また第4半導体層6の領域6a,6bは、P型のAlGaAsによって形成される。さらに第1半導体層3の積層領域13は、N型のAlGaAsによって形成され、第2半導体層4は、P型のAlGaAsによって形成される。第1半導体層3の積層領域13および第2半導体層4は、AlGaAsに限らず、AlGaAsを積層して結晶成長することができる4元化合物半導体によって形成してもよい。
基板2の材料としては、InGaPの薄膜がエピタキシャル成長可能なものとして、たとえば、GaAs、InP、GaP、SiおよびGeなどを用いることができる。基板2に絶縁性基板または半絶縁性基板を使用する場合には、たとえば、GaAs、GaNおよびサファイアなどが用いられる。本実施の形態では、基板2をN型のGaAsによって形成し、基板2とInGaPの結晶性を良好にするために、N型のGaAsによって形成されるバッファ領域12が設けられる。基板2の不純物濃度は、2×10 18 (cm −3 )程度に選ばれる。
さらに本実施の形態ではバッファ領域12と積層領域13との間にN型のInGaAsによって形成されるサブピーク吸収領域14を設けている。第3半導体層5の第2領域16で発光した光がGaAsから成る基板2を励起すると、目的としない875nm付近の発光スペクトルが観測されてしまうので、基板2からの発光を吸収するために、GaAsのバンドギャップよりも小さいバンドギャップのInGaAsから成るサブピーク吸収領域14が設けられている。InGaAsのInの組成比は、0.05〜0.15に選ばれ、サブピーク吸収領域14の厚さは、100Å〜300Åに選ばれる。
第3半導体層5の第3領域17は、アルミニウム(Al)を含んでいない材料が用いられ、N型のInGaPによって形成される。Alを含んでいる場合は表面が大気中で酸化されやすく、ゲート電極11との間で良好なオーミック接触をとることが困難になるが、InGaPは酸化されにくく、ゲート電極11とオーミック接触させることができる。第3半導体層5の第3領域17の厚さは、5Å以上100Å未満に選ばれることが好ましく、さらに好ましくは5Å以上10Å未満に選ばれる。第3領域17は、第1および第2領域15,16を形成するAlGaAsよりもバンドギャップが広いInGaPによって形成されるが、前述のような厚さに選ぶことによって、障壁層になってしまうことがなく、発光サイリスタ1のサイリスタとしてのスイッチング特性および発光特性に影響を与えることが抑制され、第3領域17を設けない構成とほぼ同様のスイッチング特性および発光特性を有する発光サイリスタ1を実現することができる。
オーミックコンタクト層7の材料にはGaAs、InGaPなどAlを含んでいない材料が用いられる。また、オーミックコンタクト層7の不純物濃度は2×10 19 (cm −3 )以上に選ばれる。なお、オーミックコンタクト層7の厚さは0.01μm〜0.02μmとなるべく薄くすることが好ましい。特にGaAsによって形成する場合には、GaAsのバンドギャップの値は、Alを含んでいる材料よりも小さいので、膜厚が大きいと内部で発生した光の再吸収層となるからである。
表面電極8、裏面電極9およびゲート電極11の材料は、接触する半導体層または基板2との良好なオーミック接触を保つために適した材料が用いられる。表面電極8は、オーミックコンタクト層7と良好なオーミック接触をとるために、たとえば、金(Au)、金とゲルマニウムとの合金(AuGe)、および金と亜鉛との合金(AuZn)などが用いられる。裏面電極9は、基板2と、または基板2に非導電性の材料を用いた場合には第1半導体層3と良好なオーミック接触がとれるという観点から、たとえば、Au、AuGeおよびニッケル(Ni)などが用いられる。
ゲート電極11は、第3半導体層5の第3領域17と良好なオーミック接触をとるために、たとえば、金とゲルマニウムとの合金(AuGe)、ニッケル(Ni)および金(Au)を、積層面から前記記載の順番で積層した積層体によって形成される。
発光サイリスタ1の各半導体層3,4,5,6について、バンドギャップを波長に換算した値と、キャリア濃度(不純物濃度)と、膜厚との関係を表1に示す。
なお、具体的なドーパントとして、本実施の形態においては、N型半導体にはSiおよびTeなどを用いることができ、P型半導体にはZn、CおよびMgなどを用いることができる。実際の素子の作製には、シリコン(Si)と炭素(C)とを用いている。
各半導体層3,4,5,6のバンドギャップの値は、Al組成を調整することによって行う。アルミニウムガリウム砒素(Al x Ga 1−x As)は、格子整合条件を保ったまま、バンドギャップをAlの組成比xによって変化させることができる。波長が770nmのときのAl x Ga 1−x AsにおけるAlの組成比x=0.15であり、波長が680nmのときのAl x Ga 1−x AsにおけるAlの組成比x=0.32である。
本実施の形態ではバンドギャップについては、第2半導体層4と第3半導体層5の第1および第2領域15,16のバンドギャップが略同一であり、第2半導体層4と第3半導体層5の第1および第2領域15,16が、これらのバンドギャップよりも広いバンドギャップを持つ第1半導体層3の積層領域13および第4半導体層6に挟まれている。また熱平衡状態の不純物濃度については、第3半導体層5の第1領域15を、基板側(第2半導体層4に接する側)の領域15aと基板2とは反対側(第3半導体層5の第3領域17に接する側)の領域15bの2層に分けて、領域15bの不純物濃度を領域15aの不純物濃度よりも高濃度にしている。さらに、第2半導体層4の不純物濃度は領域15aの不純物濃度と略同一またはそれよりも高濃度にし、第1半導体層3の積層領域13は、第2半導体層4の不純物濃度よりも高濃度にしている。また、第4半導体層6の不純物濃度は、第3半導体層5の第2領域16の不純物濃度と略同一かそれよりも高濃度に設定している。各半導体層3,4,5,6のバンドギャップおよび不純物濃度をこのように設定することによって、主たる発光層を第3半導体層5の第2領域16とすることができ、内部量子効率と光の取り出し効率をいずれも向上させることができる。
以上のような発光サイリスタ1では、第3半導体層5が、一方の導電型のAlGaAsだけによって形成されるのではなく、一方の導電型のAlGaAsによって形成される第1および第2領域15,16の間に、一方の導電型のInGaPによって形成される第3領域17を有し、このInGaPにゲート電極11が接続されるので、酸化しにくいInGaPとゲート電極11とをオーミック接触させることができる。したがって、ゲート電極11と第3半導体層5との接続部位における電圧−電流特性が線形性を有するので、680nm〜770nm程度の波長の光を出射可能な発光サイリスタ1の発光の制御性を向上することができ、特に680nm程度のような短波長の光を出射可能で、かつ制御性が向上された発光サイリスタを実現することができる。
図2は、本発明の発光素子アレイの実施の形態としての発光素子アレイチップLを示す概略的な等価回路図である。発光素子アレイチップLは、k(記号kは、自然数)個の発光素子と、n個のスイッチ素子と、n本のゲート横配線GH1〜GHnとを含んで構成される。k個の発光素子は、それぞれ前述した図1に示す発光サイリスタ1から成る。スイッチ素子は、n個の前述した図1に示す発光サイリスタ1から成るスイッチ用サイリスタS1〜Snと、第1の抵抗体に対応するn個のプルアップ抵抗RP1〜RPnと、第2の抵抗体に対応するn個のCS抵抗RCS1〜RCSnとを含む。発光サイリスタ1において一方の導電型はN型であり、他方の導電型はP型であるとする。プルアップ抵抗RP1〜RPnおよびCS抵抗RCS1〜RCSnは、配線部の一部を構成する。以後、発光素子アレイチップを、アレイチップという場合がある。
本実施の形態では、n=4の場合について説明する。以後、k個の発光素子をそれぞれ発光用サイリスタT1〜Tkと記載する場合がある。また複数の発光用サイリスタT1〜Tk、複数のスイッチ用サイリスタS1〜Sn、複数のCS抵抗RCS1〜RCSn、および複数のプルアップ抵抗RP1〜RPnを総称する場合または不特定のものを指す場合、それぞれ単に発光用サイリスタT、スイッチ用サイリスタS、CS抵抗RCSおよびプルアップ抵抗RPと記載する場合がある。ゲート横配線GHは、信号伝送路である。
発光用サイリスタT1〜Tkの動作を制御するための電極として、アノード電極(表面電極8)a1〜akおよびNゲート電極(ゲート電極11)b1〜bkを用いる。各発光用サイリスタTのカソード電極(裏面電極9)は共通の電極として接地されている。アノード電極a1〜akおよびNゲート電極b1〜bkについても同様に、複数のものを総称する場合、または不特定のものを指す場合に、単にアノード電極a、Nゲート電極bと記載する場合がある。また、Nゲート電極bを単にゲート電極bと記載する場合がある。本実施の形態では、アノード電極aが第3電極に対応し、Nゲート電極bが第2制御電極に対応する。
スイッチ用サイリスタS1〜S4の動作を制御するための電極として、アノード電極(表面電極8)c1〜c4およびNゲート電極(ゲート電極11)d1〜d4を用いる。スイッチ用サイリスタSのカソード電極(裏面電極9)e1〜e4は共通の電極として接地されている。アノード電極c1〜c4およびNゲート電極d1〜d4についても同様に、複数のものを総称する場合、または不特定のものを指す場合に、単にアノード電極c、Nゲート電極dと記載する場合がある。また、Nゲート電極dを単にゲート電極dと記載する場合がある。本実施の形態では、アノード電極cが第2電極に対応し、Nゲート電極dは、第1制御電極に対応する。
スイッチ用サイリスタS1〜S4のNゲート電極d1〜d4は、CS抵抗RCS1〜RCS4の一端、プルアップ抵抗RP1〜RP4の一端およびゲート横配線GH1〜GH4と接続される。相互に接続される素子の参照符号には互いに同じ番号を付して記載する。たとえば第1番目のスイッチ用サイリスタS1のNゲート電極d1は、第1番目のCS抵抗RCS1、第1番目のプルアップ抵抗RP1および第1番目のゲート横配線GH1と接続される。第i4(1≦i4≦n、ただしn=4)番目のスイッチ用サイリスタSi4のNゲート電極di4は、第i4番目のCS抵抗RCSi4、プルアップ抵抗RPi4およびゲート横配線GHi4と接続される。さらに、CS抵抗RCSの他端は共通のセレクト信号が入力されるセレクト信号入力端子CSに接続されることで相互に電気的に接続される。プルアップ抵抗RPの他端は、共通の電源電圧が入力される電源用ボンディングパッドVsに接続される。ゲート横配線GHは、スイッチ用サイリスタSのNゲート電極dから出力された制御信号を伝送する。本実施の形態では、スイッチ用サイリスタSのアノード電極c1〜c4が第2電極に対応し、セレクト信号が第1信号に対応する。
各スイッチ用サイリスタSのアノード電極c1〜c4は、各ゲート信号入力端子G1〜G4にそれぞれ接続される。好ましい構成として、スイッチ用サイリスタSのアノード電極c1〜c4とゲート信号入力端子G1〜G4との間には電流制限抵抗RI1〜RI4が接続される。複数のゲート信号入力端子G1〜G4および電流制限抵抗RI1〜RI4を総称する場合または不特定のものを指す場合に、単にゲート信号入力端子Gおよび電流制限抵抗RIとそれぞれ記載する場合がある。本実施の形態では、ゲート信号が第2信号に対応し、電流制限抵抗RIは第3の抵抗体である。
発光用サイリスタTは、m個の発光素子ブロックB1〜Bmから構成され、1つの発光素子ブロックは、n個以下の発光用サイリスタTの群からなる。ここで、複数の発光素子ブロックB1〜Bmを総称する場合または不特定のものを指す場合に、単に発光素子ブロックBと記載する場合がある。1つの発光素子ブロックBを構成する発光用サイリスタTの数は、n以下である必要がある。本実施の形態ではn=4であり、すべての発光素子ブロックを構成する発光用サイリスタTの数をn(=4)に設定している。したがって、発光用サイリスタTの個数kと発光素子ブロックBの個数mとの関係は、k=4mとなる。また、発光用サイリスタTの配列方向に沿う一方から他方へ向かって、発光用サイリスタTに番号を第1番から第k番まで付し、各発光素子ブロックにも前記配列方向の前記一方から前記他方へ向かって第1番から第m番まで番号を付すと、第i5(1≦i5≦m)番目の発光素子ブロックBi5には、第4i5−3番目から第4i5番目の発光用サイリスタTが属する。
各発光素子ブロックB1〜Bmに、個別に発光信号入力端子A1〜Amが設けられる。発光信号入力端子A1〜Amについて、複数のものを総称する場合または不特定のものを指す場合、単に発光信号入力端子Aと記載する場合がある。各発光素子ブロックBを構成する発光用サイリスタTは、アノード電極aが発光素子ブロックBごとに共通の発光信号入力端子Aに接続されることで相互に電気的に接続される。また、各発光素子ブロックBを構成する発光用サイリスタTのNゲート電極bはそれぞれ、異なるゲート横配線GHに接続される。ゲート横配線GHの配線順に第1番から第4番まで番号を付すと、第i6(1≦i6≦m)番目の発光素子ブロックBi6では、第4i6−3番目の発光用サイリスタT4i6−3のゲート電極が1番目のゲート横配線GH1に接続され、第4i6−2番目の発光用サイリスタT4i6−2のゲート電極が2番目のゲート横配線GH2に接続され、第4i6−1番目の発光用サイリスタT4i6−1のゲート電極が3番目のゲート横配線GH3に接続され、第4i6番目の発光用サイリスタT4i6のゲート電極が4番目のゲート横配線GH4にそれぞれ接続される。また、第i6(1≦i6≦m)番目の発光素子ブロックBi6に属する全ての発光用サイリスタTのアノード電極aが共通の発光信号入力端子Ai6に接続される。本実施の形態では、発光信号が第3信号に対応する。
発光素子アレイチップLのスイッチ用サイリスタSのゲート電極dは共通のセレクト信号入力端子CSに接続されているので、共通のセレクト信号入力端子CSからローレベルの電圧が入力されると、全てのスイッチ用サイリスタS1〜S4のゲート電極d1〜d4の電位がCS抵抗RCSの抵抗値とプルアップ抵抗RPの抵抗値との分圧比で決まる電位(例えばこの例において分圧比が1:1のときには約2.5V)になる。この状態が、発光素子アレイチップLの選択状態(セレクト状態)である。このセレクト状態のときに、第i7(1≦i7≦4)番目のゲート信号入力端子Gi7から第i7番目のスイッチ用サイリスタSi7のアノード電極ci7にゲート信号が入力されると、その入力された第i7番目のスイッチ用サイリスタSi7がオン状態に遷移する。すると、第i7番目のスイッチ用サイリスタSi7のゲート電極di7の電圧がほぼ0Vになり、この結果、そのゲート電極di7に接続された第i7番目のゲート横配線GHi7、およびその第i7番目のゲート横配線GHi7に接続された発光用サイリスタTのゲート電極bの電圧がほぼ0Vになる。このことは、ローレベル(0V)の制御信号がスイッチ用サイリスタSi7のゲート電極di7から発光用サイリスタTのゲート電極bへゲート横配線GHi7を伝送して入力されたことを意味する。さらに第i7番目のゲート横配線GHi7に接続された発光用サイリスタTのアノード電極aに発光信号を与えることで、その発光用サイリスタTを選択的に発光させることができる。
以上のように、ローレベルのセレクト信号が入力されてスイッチ用サイリスタSがセレクト状態にあるときに、スイッチ用サイリスタSのうち、ゲート信号がアノード電極cに入力されたスイッチ用サイリスタSはオン状態に遷移する。スイッチ用サイリスタSがオン状態に遷移するとそのゲート電極dの電位は0Vになり、スイッチ用サイリスタSとゲート横配線GHで接続された発光用サイリスタTのゲート電極bの電位も0になる。この状態で発光用サイリスタTのアノード電極aに発光信号が入力されると、その発光用サイリスタはオン状態に遷移し発光する。セレクト信号が入力されていないとき(セレクト状態にないとき)には、ゲート信号が発光素子アレイチップLのスイッチ用サイリスタSのアノード電極cに入力されても、スイッチ用サイリスタSはオン状態に遷移することはない。したがって、そのスイッチ用サイリスタSにゲート横配線GHで接続された発光用サイリスタTのアノード電極aに発光信号を与えても、その発光用サイリスタTを発光させることはできない。このように、セレクト信号によって、ゲート信号をスイッチ用サイリスタSから発光用サイリスタTに受け渡すか否かを制御することができることから、複数の発光素子アレイチップを用いた発光装置では、発光素子アレイチップ間で発光信号およびゲート信号を共用して時分割駆動を行うことができる。
また、発光素子アレイチップLにおいては、発光素子ブロックB内においてアノード電極aが共通の発光信号入力端子Aに接続されるため、発光素子アレイチップL内においてもダイナミック駆動を実現できる。図2では、発光信号は発光素子ブロックBごとに設置された発光信号入力端子Aに入力される。発光信号は、選択された発光素子ブロックBのすべての発光用サイリスタTのアノード電極aに与えられるが、同じブロックに属する発光用サイリスタTは異なるゲート横配線GHに接続されているため、ゲート信号によって発光させる発光用サイリスタTを選択的に発光させることができる。このようにすれば、複数の発光素子ブロックBにおいてゲート横配線GHを共用することができるため、複数の発光素子ブロック間で時分割駆動をすることができ、発光用サイリスタTの数が多くてもゲート横配線GHの数を減らすことができてチップ幅を縮小することができる。また、ゲート横配線GHの数が減るから、スイッチ用サイリスタSの数も少なくて済み構成を簡単にすることができる。
発光素子アレイチップLを用いて発光装置を構成する場合には、高速化の目的で、複数の発光素子アレイチップLにセレクト信号を同時に与えて、複数の発光素子アレイチップLを同時にセレクト状態にすることができる。このとき、セレクト状態にある複数の発光素子アレイチップL間では、ゲート信号が共用されているので、複数のスイッチ用サイリスタSが同時期にスイッチングする。一般に発光サイリスタがスイッチングしてオン状態に遷移すると、アノードとカソードとの間に主電流が流れるので、ゲート信号供給用の駆動回路の出力電圧が低下する。したがって、複数のスイッチ用サイリスタSのアノード電極cに入力されるゲート信号のタイミングがずれる場合には、最初にゲート信号が入力されるスイッチ用サイリスタSがスイッチングして主電流が流れると、遅れてゲート信号が入力されるスイッチ用サイリスタSは、ゲート信号の電圧の不足のためにスイッチングしないことが起こりえる。そこで、各スイッチ用サイリスタSのアノード電極cに接続された電流制限抵抗RIを介してゲート信号を与えることで、駆動回路の出力電圧の低下を抑制し、複数のスイッチ用サイリスタを確実にスイッチングさせることができる。
次に、本実施の形態の発光素子アレイチップLの構成について具体的に説明する。図3は、第1の実施の形態の発光素子アレイチップLの基本構成を示す平面図である。図4は、図3の切断面線IV−IVから見た断面図であり、図5は図3の切断面線V−Vから見た断面図であり、図6は図3の切断面線VI−VIから見た断面図である。なお図3は、各発光用サイリスタTの光の出射方向を紙面に垂直手前側として配置された発光素子アレイチップLの平面を示し、ゲート横配線GH1〜GH4、電源ライン31、セレクト信号伝送路34、電源用ボンディングパッドVs、セレクト信号入力端子CS、発光用サイリスタT、スイッチ用サイリスタS、プルアップ抵抗RP、およびCS抵抗RCSは、図面の理解を容易にするため斜線を付して示されている。発光用サイリスタTおよびスイッチ用サイリスタSの基板2は一体に形成され、また裏面電極9についても一体に形成される。発光用サイリスタTの各半導体層には、その参照符号に加えて記号「t」を付し、スイッチ用サイリスタSの各半導体層には、その参照符号に加えて記号「s」を付す。
発光素子アレイチップLに含まれる複数の発光用サイリスタTは、相互に間隔W1をあけて配列されている。発光用サイリスタTは、露光用の発光素子である。本実施の形態では、各発光用サイリスタTは、等間隔に配列され、かつ直線状に配列される。以後、各発光用サイリスタTの配列方向Xを、単に配列方向Xと記載する場合がある。各発光用サイリスタTの光の出射方向に沿う方向を厚み方向Zとし、前記配列方向Xおよび厚み方向Zに垂直な方向を幅方向Yとする。
発光用サイリスタTはゲート電極b1〜bkに、制御信号を与えることによって発光信号の電圧よりも、しきい電圧が低下した状態で、前記発光信号がアノード電極a1〜akに与えられたとき発光する。発光用サイリスタT1〜Tkは、発光素子ブロックB1〜Bmに分けられ、同一の発光素子ブロックBに属する発光用サイリスタTのアノード電極aは共通の発光信号入力端子Aとしてのボンディングパッドに接続される。なお、発光信号入力端子Aとしてのボンディングパッドを単に発光信号用ボンディングパッドAと記載する場合がある。また、本実施の形態では、ゲート横配線GHの本数に等しい4個の発光用サイリスタTが1つの発光素子ブロックBを構成する。たとえば、発光用サイリスタTの配列方向Xに沿う一方から他方へ向かって、発光用サイリスタTに番号を第1番から第k番まで付し、前記配列方向Xに沿う前記一方から前記他方へ向かって、発光素子ブロックBに番号を第1番から第m番まで付すと、第i6(1≦i6≦m)番目の発光素子ブロックBi6に属する第4i6−3番目から第4i6番目の全ての発光用サイリスタT4i6−3〜T4i6のアノード電極aと、発光信号用ボンディングパッドAi6との間に接続部60が設けられて、電気的に接続される。発光用サイリスタTのアノード電極aと発光信号用ボンディングパッドAと接続部60とは同時に一体で形成される。また、本実施の形態では、好ましい構成として、発光信号用ボンディングパッドAは発光用サイリスタTの配列方向Xに沿って、ゲート横配線GHを挟んで発光用サイリスタTと反対側に設置される。
配列方向Xの各発光用サイリスタTの間隔W1および発光用サイリスタTの配列方向Xの長さW2は、発光素子アレイチップLが搭載される後述する画像形成装置87において形成すべき画像の解像度によって決定され、たとえば画像の解像度が600ドットパーインチ(dpi)の場合、前記間隔W1は、約24μm(マイクロメートル)に選ばれ、前記長さW2は、約18μmに選ばれる。
各ゲート横配線GHは、発光素子アレイチップLに沿って配列方向Xに、発光素子アレイチップLの配列方向Xの一端部から他端部間にわたって延びる。各ゲート横配線GHは、幅方向Yに間隔をあけて配列される。本実施の形態では、発光用サイリスタTに近接する側から順番に、ゲート横配線GH4、ゲート横配線GH3、ゲート横配線GH2およびゲート横配線GH1の順番に配列される。さらに、本実施の形態では、セレクト信号をスイッチ用サイリスタSのゲート電極dに供給するためのセレクト信号伝送路34がゲート横配線GH1と平行に、発光用サイリスタTと離反する側に配置される。セレクト信号伝送路34は、接続部75を介してセレクト信号入力端子CSとしてのボンディングパッドに接続される。セレクト信号入力端子CSとしてのボンディングパッドを単にセレクト信号入力端子CSと記載する場合がある。また、各ゲート横配線GH間およびゲート横配線GH1とセレクト信号伝送路34との間の間隔W3は、相互に隣接するゲート横配線GH間およびゲート横配線GH1とセレクト信号伝送路34との間で短絡が生じない距離に選ばれ、たとえば5μmに選ばれる。
発光用サイリスタTのゲート電極b1〜bkは、ゲート横配線GH1〜GH4のいずれかとの間で接続部61,62,63,64を介して電気的に接続される。ここで、発光用サイリスタTの配列方向Xに沿う一方から他方へ向かって、発光用サイリスタTに番号を第1番から第k番まで付し、前記配列方向Xの前記一方から他方へ向かって発光素子ブロックBに第1番から第m番まで番号を付すことにすれば、前記配列方向Xに沿う第i6(1≦i6≦m)番目の発光素子ブロックBi6に属する第4i6−3番目から第4i6番目の発光用サイリスタTについては、第4i6−3番目の発光用サイリスタT4i6−3のゲート電極と第1番目のゲート横配線GH1との間に接続部61が形成され、第4i6−2番目の発光用サイリスタT4i6−2のゲート電極と第2番目のゲート横配線GH2との間に接続部62が形成され、第4i6−1番目の発光用サイリスタT4i6−1のゲート電極と第3番目のゲート横配線GH3との間に接続部63が形成され、第4i6番目の発光用サイリスタT4i6のゲート電極と第4番目のゲート横配線GH4との間に接続部64が形成される。また、第i6(1≦i6≦m)番目の発光素子ブロックBi6に属する全ての発光用サイリスタTのアノード電極aと前記配列方向Xに沿うi6番目の発光信号入力端子Ai6との間に接続部60が形成される。このように、同じ発光素子ブロックBに属する発光用サイリスタTが異なるゲート横配線GHに接続されることで、前述したように発光用サイリスタTのダイナミック駆動が可能となる。
スイッチ用サイリスタSは、好ましい構成として、前記発光信号用ボンディングパッドA間に生じたスペースに配置される。複数の発光用サイリスタTからなる1つの発光素子ブロックBに対して、発光信号を供給するためのボンディングパッドを1つ備えることとなるので、発光信号用ボンディングパッドA間にスペースを生じ、そのスペースを有効に活用してスイッチ素子などを配置することができる。各スイッチ用サイリスタSのアノード電極cにゲート信号を供給するためのゲート信号入力端子Gとしてのボンディングパッドも、前記ボンディングパッド間に生じたスペースを活用して配置される。なお、ゲート信号入力端子Gとしてのボンディングパッドを単にゲート信号用ボンディングパッドGと記載する場合がある。アノード電極cとゲート信号用ボンディングパッドGとは一体に形成される。このように配置することで、スイッチ用サイリスタSなどを設けても、発光素子アレイチップ全体の大きさがそれによって増大することを避けることができ、小形な発光素子アレイチップを構成することができる。なお、スイッチ用サイリスタSの個数nはゲート横配線GHの本数に等しく、本実施の形態ではn=4である。また、CS抵抗RCSも、前記発光信号入力端子Aとしてのボンディングパッド間に生じたスペースを利用して、スイッチ用サイリスタSに近接して配置される。
スイッチ用サイリスタSのゲート電極dとCS抵抗RCSとの間には接続部65が形成され、さらにゲート電極dと対応するゲート横配線GHとの間にも接続部66が形成されることで電気的に接続される。ゲート電極dとCS抵抗RCSとを接続する接続部65と、ゲート電極dとゲート横配線GHとを接続する接続部66とは一体に形成される。またCS抵抗RCSとセレクト信号伝送路34との間に接続部67が形成される。
プルアップ抵抗RPは、本実施の形態では、スイッチ用サイリスタSを構成する半導体層に連なって、スイッチ用サイリスタSと一体で形成される。プルアップ抵抗RPは半導体膜のシート抵抗を利用したものである。プルアップ抵抗RPの一部と電源ライン31との間に接続部68が形成され、プルアップ抵抗RPの接続部68の側に電源電圧Vccが与えられる。
電源ライン31は、ゲート横配線GHと平行に配線され、本実施の形態では、発光信号用ボンディングパッドAを挟んでゲート横配線GHと離反する側に配置される。電源ライン31は、接続部69によって、電源電圧Vccが与えられるボンディングパッドに電気的に接続される。電源電圧Vccが与えられるボンディングパッドを単に電源用ボンディングパッドVsと記載する場合がある。
発光用サイリスタTのアノード電極a、スイッチ用サイリスタSのアノード電極c、ゲート横配線GH、セレクト信号伝送路34、電源ライン31、接続部60〜69、発光信号用ボンディングパッドA、ゲート信号用ボンディングパッドG、セレクト信号用ボンディングパッドCS、および電源用ボンディングパッドVsは、金属材料および合金材料などの導電性を有する材料によって形成される。具体的には、Au、金とゲルマニウムとの合金(AuGe)、AuZn、NiおよびAlなどによって形成される。
また、図3に示す発光素子アレイチップLは、好ましい構成として、スイッチ用サイリスタSの表面(基板反対側)に遮光手段として遮光膜32を設けている。スイッチ用サイリスタSは、発光用サイリスタTと同様にスイッチングの際に発光するが、その発光は不要であり、発光による光が発光用サイリスタTに入射して発光用サイリスタTのしきい値を変動させてしまうことを避けるために、遮光膜32が用いられる。遮光膜32としては、その発光に対して不透明な材質から成る部材で表面を覆ったものとすればよい。適当な層間絶縁膜を施した場合には、ゲート横配線GHに用いる金(Au)薄膜などが好適に用いられる。また、スイッチ用サイリスタSと発光用サイリスタTとをできるだけ遠ざけて配置することも有効であり、図3の平面図で示すように、ゲート横配線GHを跨いで一方側に発光用サイリスタT、他方側にスイッチ用サイリスタSを配置するようにしてもよい。なお、前述した電流制限抵抗RIはより好ましい構成として付加する場合があるが、図3に示した発光素子アレイチップLの平面図においては用いていない。
絶縁層28は、発光用サイリスタTおよびスイッチ用サイリスタSの表面に沿って形成されており、発光用サイリスタTとスイッチ用サイリスタSとの間にも形成され、各発光用サイリスタTおよび各スイッチ用サイリスタSが相互に絶縁層28によって電気的に絶縁される。絶縁層28は、電気絶縁性および透光性ならびに平坦性を有する樹脂材料によって形成される。たとえば、ポリイミドおよびベンゾシクロブテン(BCB)など、発光用サイリスタTが発する波長の光の95%以上を透過する樹脂材料が用いられる。
絶縁層28のうち、オーミックコンタクト層7tの表面7Atを覆う部分の一部に貫通孔29が形成される。この貫通孔29にアノード電極aの一部が形成されて、オーミックコンタクト層7tに接触している。前記貫通孔29は、発光用サイリスタTの配列方向Xの中央で、かつ発光用サイリスタTの幅方向Yの中央が絶縁層28から露出するように形成されており、アノード電極aからの電流を、発光用サイリスタTの中央部に効率的に供給して、発光用サイリスタTを発光させることができる。
発光用サイリスタTのアノード電極aの配列方向Xの長さW4は、発光用サイリスタTの配列方向Xの長さW2の1/3以下に形成される。アノード電極aは、発光用サイリスタTの光の出射方向の一部を覆うが、長さW4を前述したように選ぶことによって、発光用サイリスタTから発せられ光を、なるべく遮らないようにする。
図5に示すように、発光用サイリスタTは、第3領域17tの第2領域16tが積層されていない部分18tがゲート横配線GH寄りに配置される。またスイッチ用サイリスタSについても、第3領域17sの第2領域16sが積層されていない部分18sがゲート横配線GH寄りに配置される。発光用サイリスタTとスイッチ用サイリスタSとの間に形成された絶縁層28の表面には、ゲート横配線GHおよびセレクト信号伝送路34が形成され、さらにそれらの表面に沿って絶縁層103が形成される。また、スイッチ用サイリスタSを挟んでゲート横配線GHと離反する側の絶縁層28の表面には、電源ライン31が形成され、さらにその表面に沿って絶縁層103が形成される。
絶縁層28,103のうち、発光用サイリスタTの前記部分18tに積層される部分には、貫通孔104,105が形成される。発光用サイリスタTのゲート電極bとゲート横配線GHとを電気的に接続する接続部61は、これらの貫通孔104,105および絶縁層28,103に積層して設けられる。また、絶縁層28,103のうち、スイッチ用サイリスタSの前記部分18sに積層される部分にも、貫通孔105,106が形成される。スイッチ用サイリスタSのゲート電極dとゲート横配線GHを電気的に接続する接続部66は、これらの貫通孔105,106および絶縁層28,103とに積層して設けられる。図5に示すように、ゲート横配線GHに積層する部分の絶縁層103に設けられた貫通孔105が共通する場合には、前記接続部61,66は一体で形成される。
またアノード電極aは、発光信号入力端子Aとの接続部60とともに一体形成される。接続部60は発光用サイリスタTの第4半導体層6tとオーミックコンタクト層7tのゲート横配線GH寄りの端部の一部を覆い、前記部分18tの一部にも積層して形成される。スイッチ用サイリスタSに積層される絶縁層28のうち、オーミックコンタクト層7sの表面7Asに積層される部分の一部には貫通孔107が形成される。この貫通孔107にアノード電極cの一部が形成されて、オーミックコンタクト層7sに接触している。
またスイッチ用サイリスタSは遮光膜32で覆われる。遮光膜32の幅方向Yの一方の端は、スイッチ用サイリスタSの第4半導体層6sおよびオーミックコンタクト層7sの、発光用サイリスタTと反対側の端部を覆い、遮光膜32の幅方向Yの他方の端は、スイッチ用サイリスタSの前記部分18sを覆い、セレクト信号伝送路34とスイッチ用サイリスタSとの中央付近まで延びる。
CS抵抗RCSおよびプルアップ抵抗RPは、発光用サイリスタTおよびスイッチ用サイリスタSを構成する各半導体層3〜7のうち、第3半導体層5の第1および第3領域15,17と同様の半導体積層膜を、半導体抵抗素子として用いることによって実現される。CS抵抗RCSが含まれる積層体121CSおよびプルアップ抵抗RPが含まれる積層体121Pは、発光用サイリスタTおよびスイッチ用サイリスタSの、第1半導体層3、第2半導体層4ならびに第3半導体層5の第1領域15および第3領域17が積層されて成る積層体と同様の材料および厚さを有する半導体層によって形成される。積層体121CS,121Pに含まれる第1半導体層3、第2半導体層4ならびに第3半導体層5の第1領域15および第3領域17と同様の材料および厚さを有する半導体層について、積層体121CSに含まれる構成には対応する半導体層の参照符号に添え字「CS」を付し、積層体121Pに含まれる構成には対応する半導体層の参照符号に添え字「P」を付す。したがって積層体121CSは、第1半導体層3CS、第2半導体層4CSならびに第3半導体層5CSの第1領域15CSおよび第3領域17CSを含み、積層体121Pは、第1半導体層3P、第2半導体層4Pならびに第3半導体層5Pの第1領域15Pおよび第3領域17Pを含んで構成される。
CS抵抗RCSを構成する第3半導体層5CSの第3領域17CSの幅方向Yの一方の端部の表面は、スイッチ用サイリスタSのゲート電極dとCS抵抗RCSとを接続する接続部65の一端が接続され、CS抵抗RCSの一端に相当する。またCS抵抗RCSを構成する第3半導体層5CSの第3領域17CSの幅方向Yの他方の端部は、セレクト信号伝送路34とCS抵抗RCSとを接続する接続部67の一端が接続され、CS抵抗RCSの他端に相当する。
図6において、絶縁層28は、CS抵抗RCSおよびプルアップ抵抗RPの表面に沿って形成されるとともに、CS抵抗RCSおよびプルアップ抵抗RPとの間にも形成され、CS抵抗RCSおよびプルアップ抵抗RPが絶縁層28によって電気的に絶縁される。前述したように絶縁層28の表面には、ゲート横配線GH、セレクト信号伝送路34および電源ライン31が形成され、さらにそれらの表面に沿って絶縁層103が形成される。形成された絶縁層28,103のうち、セレクト信号伝送路34およびCS抵抗RCSを構成する第3半導体層5CSの第3領域17CSの幅方向Yの他端部の表面(基板反対側)に積層される部分には、貫通孔109,110が形成されて、それらを電気的に接続するための接続部67が設けられる。また、絶縁層28のうち、CS抵抗RCSを構成する第3半導体層5CSの第3領域17CSの幅方向Yの一端部の表面(基板反対側)に積層される部分にも貫通孔111が形成され、スイッチ用サイリスタSのゲート電極dとの接続部65が設けられる。さらに、形成された絶縁層28,103のうち、プルアップ抵抗RPと電源ライン31に積層される部分にも貫通孔112,113が形成され、それらを電気的に接続する接続部68が形成される。
図7は、同一基板に発光サイリスタおよび半導体抵抗素子を形成する方法を含む、発光素子アレイチップLの製造方法を示すフローチャートである。製造工程を開始すると、ステップs1では、基板2の一表面2A上にN型のGaAsから成る第1薄膜と、N型のInGaAsから成る第2薄膜と、N型のAlGaAsから成る第3薄膜とをエピタキシャル成長法を用いて、この記載の順番で積層し、第1半導体層を形成してステップs2に移る。第1薄膜のキャリア濃度、および膜厚は、前述したバッファ領域12のキャリア濃度および膜厚と等しく、第2薄膜の組成比、キャリア濃度、および膜厚は、前述したサブピーク吸収領域14の組成比、キャリア濃度および膜厚と等しく、第3薄膜の組成比、キャリア濃度、および膜厚は、前述した積層領域13の組成比、キャリア濃度および膜厚と等しい。
ステップs2では、ステップs1で形成した第1半導体層に、エピタキシャル成長法を用いて、P型のAlGaAsから成る第4薄膜を積層し、第2半導体層を形成してステップs3に移る。第4薄膜の組成比、キャリア濃度、および膜厚は、前述した第2半導体層4の組成比、キャリア濃度および膜厚と等しい。
ステップs3では、ステップs3で形成した第2半導体層に、エピタキシャル成長法を用いて、N型のAlGaAsから成る第5薄膜と、N型のAlGaAsから成る第6薄膜と、N型のGaInPから成る第7薄膜と、N型のAlGaAsから成る第8薄膜とを、この記載の順番で積層し、第3半導体層を形成してステップs4に移る。第5薄膜の組成比、キャリア濃度、および膜厚は、前述した第3半導体層5の第1領域15の領域15aの組成比、キャリア濃度および膜厚と等しい。第6薄膜の組成比、キャリア濃度、および膜厚は、前述した第3半導体層5の第1領域15の領域15bの組成比、キャリア濃度および膜厚と等しい。第7薄膜の組成比、キャリア濃度、および膜厚は、前述した第3半導体層5の第3領域17の組成比、キャリア濃度および膜厚と等しい。第8薄膜の組成比、キャリア濃度、および膜厚は、前述した第3半導体層5の第2領域16の組成比、キャリア濃度および膜厚と等しい。
ステップs4では、ステップs3で形成した第3半導体層に、エピタキシャル成長法を用いて、P型のAlGaAsから成る第9薄膜と、P型のAlGaAsから成る第10薄膜とを、この記載の順番で積層し、第4半導体層を形成してステップs5に移る。第9薄膜の組成比、キャリア濃度、および膜厚は、前述した第4半導体層6の領域6aの組成比、キャリア濃度および膜厚と等しい。第10薄膜の組成比、キャリア濃度、および膜厚は、前述した第4半導体層6の領域6bの組成比、キャリア濃度および膜厚と等しい。
ステップs5では、ステップs4で形成した第4半導体層に、エピタキシャル成長法を用いて、P型のGaAsから成る第11薄膜を積層し、第5半導体層を形成してステップs6に移る。第11薄膜の組成比、キャリア濃度、および膜厚は、前述したオーミックコンタクト層7の組成比、キャリア濃度および膜厚と等しい。
ステップs6では、第5半導体層上にフォトリソグラフィ法によってエッチングマスクを形成して、第3半導体層5の第3領域17を含む第7薄膜がエッチングストッパとして機能するエッチング液を用いて、第3半導体層5の第2領域16を含む第8薄膜の一部分およびこの部分に積層されている第9〜第11薄膜の一部分を除去する。前記エッチング液には、たとえばH 2 SO 4 +H 2 O 2 +H 2 Oが用いられる。このようなエッチング液を用いてエッチングすることによって、第7薄膜を、成膜したときの厚さに維持することができる。
ステップs7では、ステップs6で形成されたエッチングマスクを除去して、フォトリソグラフィ法によって新たなエッチングマスクを形成した後、第7薄膜の一部分をウエットエッチングによって除去し、続いて第1〜第6薄膜の一部分を除去して、第1〜第4半導体層の一部分を含み、かつ第2領域の基板2とは反対側の面の一部分が露出する第1積層体と、第1および第2半導体層の一部分ならびに第3半導体層のうち第1および第2領域の一部分を含む第2積層体とを形成してステップs8に移る。第1積層体および第2積層体は、基板2上に複数形成される。第7薄膜の一部分を除去するためのエッチング液には、たとえばHNO 3 +HCl+H 2 Oが用いられ、第1〜第6薄膜の一部を除去するためのエッチング液には、たとえばH 2 SO 4 +H 2 O 2 +H 2 Oが用いられる。第1積層体は、発光用サイリスタTおよびスイッチ用サイリスタSのサイリスタ本体であり、第2積層体は、前述した積層体121CS,121Pである。ステップs7では第1および第2積層体を形成した後、エッチングマスクを除去する。
図8は、ステップs7が終了した時点における作製途中の発光素子アレイチップLを模式的に示す断面図である。図8では、第1積層体として発光用サイリスタTについて示し、第2積層体として積層体121CSについて示すが、発光用サイリスタTおよび積層体121Pについても同様の形状となる。
ステップs8では、第1および第2積層体を覆って、たとえばプラズマスパッタ法によって透光性を有する絶縁層28を形成した後、この絶縁層28に積層して、たとえばスパッタリング法によって金属膜を形成し、フォトリソグラフィ法によって新たなエッチングマスクを形成した後、金属膜をエッチングして、配線部の一部を構成するゲート横配線GH1〜GHnおよび電源ライン31を形成して、ステップs9に移る。
ステップs9では、ステップs8で形成されたエッチングマスクを除去し、ゲート横配線GH1〜GHnおよび電源ライン31を覆う絶縁層103を形成して、ステップs10に移る。
ステップs10では、フォトリソグラフィ法によって、レジストマスクを形成し、サイリスタ本体と、積層体121CS,121Pとの電極または配線に接続すべき部分に積層される絶縁層28,103の一部に貫通孔を形成して、ステップs11に移る。
ステップs11では、ステップs10で形成されたエッチングマスクを除去し、絶縁層28,103に積層して、たとえばスパッタリング法によって、金属膜を形成し、フォトリソグラフィ法によって、新たなエッチングマスクを形成した後、金属膜をエッチングして、表面電極8、ゲート電極11、配線部の一部を構成する接続部60〜69、発光信号用ボンディングパッドA、ゲート信号用ボンディングパッドG、セレクト信号用ボンディングパッドCS、および電源用ボンディングパッドVsを形成して、ステップs12に移る。
ステップs12では、スピンコート法、フォトリソグラフィ法およびエッチングによって、遮光膜32を形成して、ステップs13に移る。ステップs13では、基板2の他表面2B上に、たとえばスパッタリング法によって裏面電極9となる金属膜を形成して、ステップs14に移る。ステップs14では、基板2をダイシングして個片化し、これによって発光素子アレイチップLが形成される。
以上のような発光素子アレイチップLの製造方法では、ステップs6において第3半導体層5の第3領域17を含む第6薄膜をエッチングストッパとして機能するエッチャング液を用いて、第6薄膜を露出させることによって、第2積層体である積層体121CS,121Pに含まれる第3半導体層5CS,5Pの第1領域15CS,15Pおよび第3領域17CS,17Pの厚さを正確に制御することができる。積層体121CS,121Pに含まれる第3半導体層5CS,5Pの第1領域14CS,14Pおよび第3領域17CS,17Pは、精度の高いエピタキシャル膜の膜厚で決定されることになるので、発光素子アレイチップLの駆動に大きな影響を与える半導体抵抗素子を作製する精度を向上することができ、所定の抵抗値に精度よく半導体抵抗素子であるCS抵抗RCSおよびプルアップ抵抗RPの抵抗値を合わせることができる。したがって、発光素子アレイチップLの歩留まりを向上させることができ、発光素子アレイチップLの動作の信頼性を向上させることができる。また各発光用サイリスタT、スイッチ用サイリスタS、半導体抵抗素子RCS,RPを、一連の製造プロセスにおいて、同時に形成することができるので、同じ構造で特性が安定したものを一度に簡単に作製することができ、製造コストを低減することができる。
図9は、本発明の実施の一形態の発光装置10を模式的に示すブロック回路図である。発光装置10は、複数の発光素子アレイチップL1,L2,…,Lp−1,Lp(記号pは、2以上の正の整数)と、前記発光素子アレイチップL1〜Lpの駆動回路として、発光信号を供給する発光信号駆動IC(Integrated Circuit)130と、ゲート信号を供給するゲート信号駆動IC131と、セレクト信号を供給するセレクト信号駆動IC132とを含んで構成される。各駆動ICは後述する制御手段96に基づいて、画像情報を出力する。各発光素子アレイチップL1〜Lpについて、それぞれを総称して指す場合および不特定のものを指す場合に、単に発光素子アレイチップLと記載する。なお、セレクト信号駆動IC132は第1の駆動回路であり、ゲート信号駆動IC131は第2の駆動回路であり、発光信号駆動IC130は第3の駆動回路である。
各アレイチップLは、配列方向Xに沿って発光用サイリスタTが一列に配列されて、各発光用サイリスタTからの光の出射方向を揃えて回路基板に実装される。ただし、図9には回路基板は図示していない。また、発光信号駆動IC130とゲート信号駆動IC131とセレクト信号駆動IC132とは、前記回路基板に実装される。回路基板にはさらに、各駆動IC130〜132の出力端子と各アレイチップLのボンディングパッドとを接続するためのパターン配線が形成され、パターン配線とボンディングパッドとがボンディングワイヤで接続される。
前述したように、図2に示す発光素子アレイチップLには、m個の発光信号用ボンディングパッドA、1個のセレクト信号用ボンディングパッドCS、および4個のゲート信号用ボンディングパッドGが含まれる。さらに前記プルアップ抵抗RPの他端(スイッチ用サイリスタSのゲート電極dが接続されるのと反対側)に印加される正電源を接続するための電源用ボンディングパッドVsが必要であり、図9に図示されている。なお、図9に示されたp個のアレイチップが実装されている本実施の形態の場合には、各アレイチップLを構成する発光用サイリスタTの配列方向Xに沿う一方から他方に向かって、各アレイチップに第1番から第p番まで番号を付すと、第i10(1≦i10≦p)番目のアレイチップLのセレクト信号用ボンディングパッドCSをセレクト信号用ボンディングパッドCSi10と記載する。不特定のアレイチップLのセレクト信号用ボンディングパッドCS1〜CSpを指すときは、単にセレクト信号用ボンディングパッドCSと記載する場合がある。
発光信号駆動IC130は、各アレイチップLの発光信号用ボンディングパッドA1〜Amと同数(m個)の発光信号出力端子λ1〜λmを有する。発光信号出力端子λ1〜λmについて、複数のものを総称する場合または不特定のものを指す場合に、単に発光信号出力端子λと記載する場合がある。各発光信号用ボンディングパッドAと発光信号出力端子λとの接続は、異なるアレイチップ間で配線を共用して接続される。p個のアレイチップが実装されている本実施の形態の場合には、各アレイチップLを構成する発光用サイリスタTの配列方向Xに沿う一方から他方に向かって、発光信号用ボンディングパッドA1〜Amに第1番から第m番まで番号を付し、また発光信号出力端子λ1〜λmにも第1番から第m番まで番号を付すと、p個のアレイチップのそれぞれの第i8(1≦i8≦m)番目の発光信号用ボンディングパッドAi8同士が電気的に接続され、さらに第i8番目の発光信号出力端子λi8に電気的に接続される。
ゲート信号駆動IC131は各アレイチップLのゲート信号用ボンディングパッドG1〜G4と同数(4個)のゲート信号出力端子μ1〜μ4を有する。ゲート信号出力端子μ1〜μ4について、複数のものを総称する場合または不特定のものを指す場合に、単にゲート信号出力端子μと記載する場合がある。各ゲート信号用ボンディングパッドGとゲート信号出力端子μとの接続は、異なるアレイチップ間で配線を共用して接続される。p個のアレイチップが実装されている本実施の形態の場合には、各アレイチップLを構成する発光用サイリスタTの配列方向Xに沿う一方から他方に向かって、ゲート信号用ボンディングパッドG1〜G4に第1番から第4番まで番号を付し、またゲート信号出力端子μ1〜μ4にも第1番から第4番まで番号を付すと、p個のアレイチップそれぞれの第i9(1≦i9≦4)番目のゲート信号用ボンディングパッドGi9同士が電気的に接続され、さらに第i9番目のゲート信号出力端子μi9に電気的に接続される。
セレクト信号駆動IC132はアレイチップLと同数(p個)のセレクト信号出力端子ν1〜νpを有する。セレクト信号出力端子ν1〜νpについて、複数のものを総称する場合または不特定のものを指す場合に、単にセレクト信号出力端子νと記載する場合がある。各セレクト信号用ボンディングパッドCSi10とセレクト信号出力端子νとの接続は、各アレイチップと個別に接続される。p個のアレイチップが実装されている本実施の形態の場合には、各アレイチップLを構成する発光用サイリスタTの配列方向Xに沿う一方から他方に向かって、各アレイチップに第1番から第p番まで番号を付し、またセレクト信号出力端子ν1〜νpにも第1番から第p番まで番号を付すと、第i10(1≦i10≦p)番目のアレイチップLのセレクト信号用ボンディングパッドCSi10と第i10番目のセレクト信号出力端子νi10とが電気的に接続される。
前述したように、各アレイチップLのセレクト信号用ボンディングパッドCSとセレクト信号出力端子νとが個別に接続されるので、セレクト信号駆動IC132は、各アレイチップLのセレクト信号用ボンディングパッドCSに順番にセレクト信号を出力して、アレイチップLを順番にセレクト状態にすることできる。一方、各アレイチップLとゲート信号駆動IC131との配線は共用されているので、例えば、第i9(1≦i9≦4)番目のゲート信号出力端子μi9から出力されたゲート信号は、すべてのアレイチップLの第i9(1≦i9≦4)番目のゲート信号用ボンディングパッドGi9に入力され、すべてのアレイチップLの第i9番目のスイッチ用サイリスタSi9のアノード電極ci9に入力される。しかし、各アレイチップLの第i9番目のスイッチ用サイリスタSi9の中でスイッチングするのは、セレクト信号が入力されることでセレクト状態にあるアレイチップLのみである。さらに、セレクト状態にあるアレイチップLの第i9番目のゲート横配線GHi9に接続された発光用サイリスタTの中で、発光信号駆動IC130から発光信号が入力された発光素子ブロックBに属する発光用サイリスタTが発光する。
このように、セレクト状態にあるアレイチップLを順番に切り替えることで、複数の発光素子アレイ間でゲート信号駆動IC131および発光信号駆動IC130を共用にする時分割駆動を安定に動作させることができる。したがって、駆動用ICの数、および駆動用ICを実装する基板の層数を少なくすることができ、発光素子アレイおよび駆動用IC実装基板の面積を小さくすることができ、結果として小型でかつ安定に動作する発光装置が実現できる。
図10は、発光装置10を使用した画像形成装置の基本的構成を示す側面図である。画像形成装置87は、電子写真方式の画像形成装置であり、前記発光装置10Y,10M,10C,10Kを、感光体ドラム90への露光装置に使用している。発光装置10Y,10M,10C,10Kは、各駆動IC(発光信号駆動IC130、ゲート信号駆動IC131、セレクト信号駆動IC132)が設けられる回路基板に実装される。
画像形成装置87は、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色のカラー画像を形成するタンデム方式を採用した装置であり、大略的に、4つの発光装置10Y,10M,10C,10Kと、集光手段であるレンズアレイ88Y,88M,88C,88Kと、発光装置10Y,10M,10C,10Kおよび各駆動IC130,131,132,136が実装された回路基板と、レンズアレイ88を保持する第1ホルダ89Y,89M,89C,89Kと、4つの感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kと、4つの現像剤供給手段91Y,91M,91C,91Kと、転写手段である転写ベルト92と、4つのクリーナ93Y,93M,93C,93Kと、4つの帯電器94Y,94M,94C,94Kと、定着手段95と、制御手段96とを含んで構成される。
各発光装置10Y,10M,10C,10Kは、各駆動ICによって各色のカラー画像情報に基づいて駆動される。たとえば、4つ発光装置10Y,10M,10C,10Kの配列方向Xの長さは、たとえば200mm〜400mmに選ばれる。
各発光装置10Y,10M,10C,10Kの発光用サイリスタTからの光は、レンズアレイ88を介して各感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kに集光して照射される。レンズアレイ88は、たとえば発光素子の光軸上にそれぞれ配置される複数のレンズを含み、これらのレンズを一体的に形成して構成される。発光装置10Y,10M,10C,10Kが実装される回路基板およびレンズアレイ88は、第1ホルダ89によって保持される。ホルダ89によって、発光用サイリスタTの光照射方向と、レンズアレイ88のレンズの光軸方向とがほぼ一致するようにして位置合わせされる。各感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kは、たとえば円筒状の基体表面に電子写真感光体層を被着して成り、その外周面には各発光装置10Y,10M,10C,10Kからの光を受けて静電潜像が形成される静電潜像形成位置が設定される。
各感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kの周辺部には、各静電潜像形成位置を基準として回転方向下流側に向かって順番に、露光された感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kに現像剤を供給する現像剤供給手段91Y,91M,91C,91K、転写ベルト92、クリーナ93Y,93M,93C,93K、および帯電器94Y,94M,94C,94Kがそれぞれ配置される。感光体ドラム90に現像剤によって形成された画像を記録シートに転写する転写ベルト92は、4つの感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kに対して共通に設けられる。
前記感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kは、第2ホルダによって保持され、この第2ホルダと第1ホルダ89とは、相対的に固定される。各感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kの回転軸方向と、各発光装置10Y,10M,10C,10Kの前記配列方向Xとがほぼ一致するようにして位置合わせされる。
転写ベルト92によって、記録シートを搬送し、現像剤によって画像が形成された記録シートは、定着手段95に搬送される。定着手段95は、記録シートに転写された現像剤を定着させる。感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kは、回転駆動手段によって回転される。
制御手段96は、前述した各駆動IC130,131,132,136にクロック信号および画像情報を与えるとともに、感光体ドラム90Y,90M,90C,90Kを回転駆動する回転駆動手段、現像剤供給手段91Y,91M,91C,91K、転写ベルト92、帯電器94Y,94M,94C,94Kおよび定着手段95の各部を制御する。
このような構成の画像形成装置87では、各発光素子を発光状態とするか、または非発光状態とするかを、主電流が流れないゲート電極bに接続されているゲート横配線GHを伝送するゲート信号によって切り換えるため、発光装置10Y,10M,10C,10Kを実装するための回路基板側に形成されるゲート信号の伝送路も細くすることが可能で、回路基板を小形化することができ、さらにこのゲート信号駆動IC131についても主電流を切り換える事が無いため、ICの容量が小さくできるので、小形化および低コスト化を実現することができる。
以上のように、本実施の形態の発光素子アレイチップLによれば、制御性が向上された発光サイリスタ1を用いることによって、制御信号に合わせて精度よく発光サイリスタを発光させることができるので、発光タイミングの信頼性を向上させることができる。またスイッチ素子として設けたスイッチ用サイリスタSが、セレクト信号により選択された時間にのみゲート信号を発光用サイリスタT側に受け渡すように動作するため、このような発光素子アレイチップLを複数配列して駆動する場合において、複数の発光素子アレイチップLごとに駆動用ICを接続せずとも、発光信号およびゲート信号を与える駆動用ICおよび配線を共用して時分割駆動することができるので、少ない駆動用ICと配線数で時分割駆動することができるという基本的な作用効果を有する。
また、アノード電極aが複数の発光用サイリスタTで共通化された発光素子ブロックBを複数設け、複数の発光素子ブロックBでゲート横配線GHを共有した場合には、1つの発光素子アレイチップL内においても複数の発光素子ブロックB間で時分割駆動をすることができる。この結果、駆動用ICに接続すべきゲート横配線GHの数を減らすことできるので、ゲート信号の出力ポート数の少ない駆動用ICを用いて、少ない駆動用ICで時分割駆動することができる発光装置を提供できる。
また、スイッチ素子および発光素子が発光サイリスタ1を含んで構成されるから、たとえばNANDゲートやインバータなどといった複雑な半導体装置を用いることなく、簡単な構成で、ゲート信号を入力すべき発光素子アレイチップLを選択する論理回路を構成することができるので、設計が容易となり、また製造工程を簡略化することができる点で有利である。また前記構成の発光素子アレイチップLを用いることにより、発光装置が、小形であって、安定に動作する信頼性の高いものとなるので、良好な画像を安定に形成することができる画像形成装置を提供できる。
なお、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良などが可能である。