以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
<1. 第1の実施の形態>
図1は、本発明に係る印刷装置100を示す概略斜視図である。また、図2は、印刷装置100の保持装置1および画像形成部2を示す概略斜視図である。また、図3は、保持装置1に2枚の印刷基材90,91が載置される様子を示す平面図であり、図4は、保持装置1に2枚の印刷基材90,91が載置される様子を示す側面図である。
なお、図1において、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義するが、それらは位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。以下の図についても同様である。また、図1では、印刷装置100の筐体を適宜省略している。また、印刷装置100における印刷基材の搬送方向はY軸に沿った方向である。さらに、印刷装置100が使用する印刷基材90,91は、紙に限定されるものではなく、布やパネル等であってもよいし、矩形の形状に限られるものではなく、ロール状のものであってもよい。
比較的大型の印刷装置100は、保持装置1、画像形成部2、操作部3、表示部4および制御部5を備える。保持装置1は、一対の搬送ローラ10,11、モータ12、吸着ベルト13、配置基準部14および印材検出センサ15を備え、図3に示すように、2枚の印刷基材90,91を同時に保持することが可能である。
(+Y)側に配置される搬送ローラ10と(−Y)側に配置される搬送ローラ11は、いずれもX軸方向を長手方向とする円筒形状の部材であり、図示しないリンク部材によってモータ12の駆動力が伝達される。すなわち、搬送ローラ10,11は、モータ12によってX軸方向を中心軸として回転する。なお、モータ12からの駆動力は搬送ローラ10,11のいずれか一方にのみ伝達されてもよい。すなわち、搬送ローラ10,11のうちの一方が駆動ローラとして機能し、他方が従動ローラとして機能してもよい。
モータ12は、制御部5からの制御信号に応じて回転速度、回転量、回転方向を容易に制御することができるサーボモータであって、先述のように搬送ローラ10,11を回転させるための回転駆動力を生成する。
搬送ローラ10,11には吸着ベルト13が掛け渡されている。吸着ベルト13の上面は、XY平面に平行な姿勢の印刷基材を載置することが可能な平面とされている。すなわち、吸着ベルト13は主に本願発明におけるベースに相当する。なお、本実施の形態における吸着ベルト13はX軸方向のサイズが2.5m程度であり、比較的大型の印刷基材を載置することが可能である。
さらに、吸着ベルト13には図示しない無数の孔が設けられており、載置された印刷基材を吸着することにより保持する機能を有している。すなわち、モータ12によって搬送ローラ10,11が所定の方向に回転することにより、吸着ベルト13も回転し、吸着ベルト13に保持された印刷基材はY軸方向(搬送方向)に搬送される。
配置基準部14は左ガイド部材16および右ガイド部材17を有している。後述するが、配置基準部14は、吸着ベルト13に載置された複数の印刷基材を印刷基材の搬送方向(Y軸方向)に直交する方向(X軸方向)について位置決めする機能を有している。
左ガイド部材16と右ガイド部材17とは、搬送方向の両側に分かれて、吸着ベルト13に対するX軸方向の位置が所望の位置となるように配置され固定されている。言い換えれば、左ガイド部材16と右ガイド部材17とは、互いにX軸方向に対向するように固設されており、吸着ベルト13によって搬送される印刷基材は左ガイド部材16と右ガイド部材17との間を通過する(搬送される)。
左ガイド部材16および右ガイド部材17は、それぞれが複数の印刷基材のうちの異なる印刷基材に当接する。より詳しくは、左ガイド部材16は左側に載置される印刷基材90の左側端部に当接し、右ガイド部材17は右側に載置される印刷基材91の右側端部に当接する。
これにより、印刷基材90は左ガイド部材16によって、図4に示す左原点18のX軸方向における位置を基準としてX軸方向について位置決めされる。また、印刷基材91は右ガイド部材17によって、図4に示す右原点19のX軸方向における位置を基準としてX軸方向について位置決めされる。すなわち、左ガイド部材16および右ガイド部材17は、主に本発明における基準部材に相当する。
図3において概略的に図示されている印材検出センサ15は、実際には吸着ベルト13の上方に配置されており、吸着ベルト13に載置された印刷基材がY軸方向の所望の位置に到達したことを検出するセンサである。印材検出センサ15の検出結果53(図5)は制御部5に伝達され、詳細は後述するが、モータ12の制御等に用いられる。
なお、印材検出センサ15としては、印刷基材の先端部を撮像して判定するCCDセンサや、投光したレーザが遮蔽あるいは反射されることを検出して判定するレーザセンサ等の非接触型のセンサを用いることができる。なお、印刷基材に接触したときの圧力を検出して判定する接触センサ等を採用することも可能である。
図2に示す画像形成部2は、印刷ヘッド20および印刷ヘッド移動部21を備える。
印刷ヘッド20は、制御部5の制御に基づいて、保持装置1に保持された印刷基材90,91に画像を形成する。なお、本実施の形態における印刷ヘッド20では、UVインクを用いたインクジェット方式が採用されるが、もちろんこれに限定されるものではない。また、印刷ヘッド20の個数は1つに限定されるものではない。
印刷ヘッド20は、図示しない駆動機構によって印刷ヘッド移動部21に沿ってX軸方向に往復移動が可能である。印刷ヘッド20がX軸方向に移動することにより、図4に破線矢印22で示すエリアが印刷ヘッド20の描画エリア(画像を形成することが可能な領域)となる。
図4から明らかなように、破線矢印22で示される印刷ヘッド20の描画エリアは、実線矢印23,24で示される印刷基材90,91におけるそれぞれの描画エリアを含むように設定されている。したがって、印刷ヘッド20は、同時に載置される印刷基材90,91に対してそれぞれ画像を形成することが可能である。
なお、先述のように、印刷基材は吸着ベルト13によってY軸方向に移動するため、印刷ヘッド20は印刷基材の任意の位置(より詳しくはXY平面内の任意の位置)にインクを吐出することが可能である。
操作部3は、各種のボタンやキー、マウス、タッチパネル等から構成され、印刷装置100に指示を入力するためにオペレータによって操作される。
表示部4は、一般的な液晶ディスプレイやランプ等が該当し、制御部5の制御によりオペレータに対して各種データを表示する。
図5は、制御部5の構成を示すブロック図である。制御部5は、図示しないCPUおよびROM、CPUの一時的なワーキングエリアとして使用されるRAM50を備える。また、制御部5は、先述のCPUがROM内に格納されているプログラムに従って動作することにより実現される複数の機能ブロックを備えている。図5に示す搬送制御部51および印刷データ生成部52がこれらの機能ブロックである。
搬送制御部51は、印材検出センサ15から得られる検出結果53に応じて、モータ12を制御する機能を有する。なお、搬送制御部51の具体的な制御動作は後述する。
印刷データ生成部52は、検出結果53に応じて印刷装置100の印刷処理を開始させるとともに、操作部3から入力される左印刷情報54および右印刷情報55に基づいて印刷ヘッド20に転送する印刷データを作成する機能を有する。
また、印刷データ生成部52は、各印刷基材の吸着ベルト13における載置位置(例えば、左側であるか右側であるか)に基づいて、当該印刷基材の側端部のうち、いずれが基準側端部であるかを特定する機能も有する。なお、印刷データ生成部52の具体的な制御動作については後述する。
以上が本実施の形態における印刷装置100の構成および機能の説明である。次に、印刷装置100の動作を説明する。
図6は、印刷装置100における処理を示す流れ図である。
まず、オペレータが印刷基材90,91をそれぞれ吸着ベルト13に載置する(ステップS1)。なお、ステップS1は図示しない搬送機構によって実現されてもよい。また、印刷基材90,91がロール上の印刷基材である場合には、前後のロール(供給ロールおよび巻き取りロール)が印刷装置100にセットされることによりステップS1が実行される。
オペレータが印刷基材90,91を配置基準部14に当接させ(ステップS2)、印刷基材90,91のX軸方向の位置決めを行う。具体的には、印刷基材90の左側の側端部を左ガイド部材16に沿わせるように当接させるとともに、印刷基材91の右側の側端部を右ガイド部材17に沿わせるように当接させる。
このように、複数の印刷基材(印刷基材90,91)に対して、それぞれ基準部材(左ガイド部材16および右ガイド部材17)を備えているため、印刷装置100は複数の印刷基材を確実に、かつ、正確に位置決めすることができる。
次に、オペレータは操作部3を操作して、X軸方向の位置決めが完了したことを印刷装置100に入力する。この指示が入力されると、搬送制御部51は、正方向に回転を開始するようにモータ12を制御する。これによりモータ12が正方向の回転を開始し、吸着ベルト13に載置された印刷基材90,91の(+Y)方向への搬送が開始される(ステップS3)。
印刷基材90,91の搬送は、印材検出センサ15が印刷基材90,91の(+Y)側先端部を検出するまで継続される(ステップS4)。すなわち、印材検出センサ15から得られる検出結果53が印刷基材を検出したことを示している場合(ステップS4においてYes)、搬送制御部51は回転を停止するようにモータ12を制御し、印刷基材90,91の搬送が停止される(ステップS5)。
これにより、印刷基材90,91の(+Y)側先端部の位置が、印材検出センサ15の検出位置(所望の位置)にあることになり、印刷基材90,91のY軸方向の位置決めがされたことになる。
また、ステップS5の処理と並行して(すなわち、検出結果53に応じて)、印刷データ生成部52が印刷処理(ステップS6)を開始する。なお、本実施の形態では、このときに、吸着ベルト13による印刷基材90,91の吸着も開始される。
図7は、印刷処理の詳細を示す流れ図である。
印刷処理が開始されると、印刷データ生成部52は、印刷基材90に形成される画像を表現した左印刷情報54をRAM50から読み出し(ステップS11)、左原点18を基準に印刷ヘッド20のデータバッファ25(図8)に転送する(ステップS12)。
次に、印刷データ生成部52は、印刷基材91に形成される画像を表現した右印刷情報55をRAM50から読み出し(ステップS13)、右原点19を基準に印刷ヘッド20のデータバッファ25に転送する(ステップS14)。
図8は、印刷ヘッド20のデータバッファ25を示す図である。図8において、白抜きの円は1画素分の画素データを示す。
印刷ヘッド20のデータバッファ25は、印刷ヘッド20の描画エリア(図4:破線矢印22)のX軸方向一列分の画素データを同時に、かつ、描画エリア内における互いの位置関係がわかるように記憶することが可能とされている。すなわち、データバッファ25は、いわゆるラインバッファとして構成されている。
図8では、印刷ヘッド20の描画エリアのX軸方向の画素数を簡略的に「24」として示す。また、本実施の形態では、データバッファ25の図8に示す左端の画素データから右端の画素データに向けて順次画素データが読み出され、印刷ヘッド20が左原点18の位置から右原点19に向かってX軸方向に移動しつつ描画する例で説明する。したがって、データバッファ25の両端に位置する画素データは、それぞれ左原点18および右原点19に位置する画素の画素データである。
ステップS11では、印刷データ生成部52によって、左印刷情報54のデータのうちX軸方向一列分の画素データが読み出される。そして、ステップS12では、読み出した一列分の画素データのうち印刷基材90の最も左側に描画する画素データがデータバッファ25における左端の画素データとなるように、印刷データ生成部52が読み出した一列分の画素データをデータバッファ25に転送する。これにより、データバッファ25に記憶される画素データと、左印刷情報54における画素データとの位置関係は、図8の太線矢印で示すものとなる。
ステップS13でもステップS11と同様に、印刷データ生成部52によって、右印刷情報55のデータのうちX軸方向一列分の画素データが読み出される。しかし、ステップS14では、読み出した一列分の画素データのうち印刷基材91の最も右側に描画する画素データがデータバッファ25における右端の画素データとなるように、印刷データ生成部52が読み出した一列分の画素データをデータバッファ25に転送する。これにより、データバッファ25に記憶される画素データと、右印刷情報55における画素データとの位置関係は、図8の太線矢印で示すものとなる。
なお、データバッファ25のうち、左印刷情報54または右印刷情報55のいずれも転送されなかった位置の画素データ(図8に示す中央部の画素データ)は、画像を形成しない画素(インクを吐出しない位置の画素)を示すデータとなる。
このようにして、印刷データ生成部52により、印刷ヘッド20のX軸方向一列分の印刷データがデータバッファ25上に作成される。
印刷データが作成されると(ステップS14が実行されると)、印刷ヘッド20が左原点18から右原点19に向けてX軸方向に移動しつつ、データバッファ25に記憶されている印刷データに基づいて、一列分の画像を印刷する(ステップS15)。このとき、先述のように、データバッファ25に格納されている画素データは、左端の画素データから順次読み出される。
図9は、2枚の印刷基材90,91に画像が形成される様子を示す図である。ただし、太矢印で示す位置を描画した時点では、各画像「A」は未だ形成されていないため、図9において各画像「A」は破線で示す。
図9に示すように、左側に載置される印刷基材90では、左側の側端部が左ガイド部材16に当接する。したがって、制御部5(印刷データ生成部52)は、印刷基材90の左側の側端部を基準側端部と特定し、画像形成部2(印刷ヘッド20)は当該基準側端部と特定された左側の側端部を基準に画像を形成する。
一方、右側に載置される印刷基材91では、右側の側端部が右ガイド部材17に当接する。したがって、制御部5(印刷データ生成部52)は、印刷基材91の右側の側端部を基準側端部と特定し、画像形成部2(印刷ヘッド20)は当該基準側端部と特定された右側の側端部を基準に画像を形成する。
これにより、各印刷基材について、位置決めの基準となった側端部を基準として画像を形成することができるため、印刷装置100は印刷基材の正確な位置に画像を形成することができる。
印刷装置100では、2枚の印刷基材90,91をそれぞれ位置決めするため、従来の技術に比べて印刷基材の位置決め精度は向上する。しかし、印刷基材90,91には、例えば熱や湿度によって、膨張・収縮等が生じる場合がある。例えば印刷基材91において右側の側端部の位置は常に右原点19であり正確であるが、印刷基材91に膨張または収縮が生じていると、左側の側端部の位置は不正確となる。したがって、このような状態の印刷基材91対して、印刷基材90と同様に左側の側端部を基準側端部として画像を形成すると、画像の位置が不正確となるおそれがある。
すなわち、印刷装置100では、複数の印刷基材を同時に載置する場合、印刷基材の載置される位置によって基準側端部が異なるため、従来の技術のように、基準側端部を固定して画像を形成すると、画像の位置がずれるという問題を生じるおそれがある。しかし、印刷装置100は、印刷基材90,91について、それぞれ基準側端部を特定するため、正確な位置に画像を形成することができる。
図7に戻って、ステップS15が実行されると、印刷装置100は、左印刷情報54または右印刷情報55の全てのX軸方向の列について印刷が終了したか否かを判定する(ステップS16)。
未だ印刷が終了していない場合は、搬送制御部51が所定量だけ正方向に回転するようにモータ12を制御することにより、吸着ベルト13が印刷基材90,91を一または複数画素分の距離だけ(+Y)方向に搬送し、ステップS11からの処理を繰り返す。これにより、次の一列分についての印刷処理が繰り返される。
一方、既に印刷が終了している場合は、印刷処理を終了して、図6に示す処理に戻る。
さらに、ステップS6の印刷処理を終了すると、印刷装置100は、オペレータの指示に基づいて、他の印刷基材について印刷処理を行うか、処理を終了するかを判定する(ステップS7)。
他の印刷基材についてさらに印刷処理を行うように指示された場合(ステップS7においてNo)、ステップS1に戻って処理を繰り返す。一方、処理を終了するように指示された場合(ステップS7においてYes)、印刷装置100は処理を終了する。
以上のように、本実施の形態における印刷装置100は、同時に複数の印刷基材90,91が載置される吸着ベルト13と、吸着ベルト13に載置された複数の印刷基材90,91を印刷基材の搬送方向に直交する方向(X軸方向)について位置決めする配置基準部14とを備え、さらに配置基準部14は、それぞれが異なる印刷基材90,91に当接する複数の基準部材(左ガイド部材16および右ガイド部材17)を有することにより、複数の印刷基材90,91をそれぞれ位置決めすることができる。したがって、印刷基材90,91の位置決め精度が向上し、正確な位置に画像を形成することができる。
また、保持装置1に保持された複数の印刷基材90,91のそれぞれについて左ガイド部材16または右ガイド部材17に接する側端部を基準側端部としてそれぞれ特定し、画像形成部2が複数の印刷基材90,91のそれぞれについて、特定された基準側端部を基準に、画像を形成することにより、印刷基材の位置決めの基準となった側端部を基準として画像を形成することができる。したがって、位置決めの基準となる側端部が複数の印刷基材90,91ごとに異なる場合でも、印刷基材の正確な位置に画像を形成することができる。
また、吸着ベルト13に載置された複数の印刷基材90,91を、印刷基材の搬送方向(Y軸方向)について、印材検出センサ15および搬送制御部51によって位置決めすることにより、さらに正確な位置に画像を形成することができる。
また、吸着ベルト13に載置された複数の印刷基材90,91について位置決めが完了したことを検出する印材検出センサ15をさらに備え、画像形成部2(印刷ヘッド20)は、印材検出センサ15による検出結果53に応じて画像の形成を開始することにより、オペレータが指示しなくても、位置決めが完了してから印刷処理が開始されるように構成することができる。
また、Y軸方向に位置決めするための印材検出センサ15を、位置決めが完了したことを検出するセンサとしても兼用することにより、コストを削減できる。なお、詳細は省略したが、図6のステップS4では、印刷装置100は片方の印材検出センサ15が印刷基材を検出した時点でYesと判定する。この場合、印刷装置100は、印材検出センサ15に検出されていない方の印刷基材については、(+Y)方向に移動させるように指示するメッセージを表示部4に表示し、当該印刷基材が印材検出センサ15に検出されるまで待機する。表示部4に表示される指示に従ってオペレータは、該当する印刷基材を印材検出センサ15に検出される位置まで、手動で(+Y)方向に移動させる。
<2. 第2の実施の形態>
上記実施の形態では詳細に述べなかったが、オペレータは透明な印刷基材に対する表裏両面印刷を要求する場合がある。このような場合には、一方面(例えば表面)に印刷された画像と、他方面(例えば裏面)に印刷された画像とは重なり合った状態で看取されるため、一方面に印刷された画像および他方面に印刷された画像の位置決めを、より一層正確に行う必要がある。
図10は、第2の実施の形態における印刷装置100aの機能ブロック図である。第1の実施の形態における印刷装置100では説明を省略したが、印刷装置100aは画像データメモリ56とデータ処理部58とを備えている。なお、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と類似の構成については同符号を付し、適宜説明を省略する。
画像データメモリ56は、不揮発性の記憶装置であって、主にジョブ情報57を記憶する。ジョブ情報57とは、オペレータによって登録された個々の印刷ジョブに関する情報である。
なお、ジョブ情報57には、例えば、ジョブ名や、使用する印刷基材の種別、印刷の種類(両面印刷や、複数ページ印刷、片面印刷等の区別)、画像を表現した印刷情報等が含まれる。また、以下の説明において、印刷ジョブを、単に「ジョブ」と省略する場合がある。
データ処理部58は、主に操作部3からの入力に従って、画像データメモリ56に記憶されているジョブ情報57から必要な情報をRAM50に読み出す機能を有している。このようにしてジョブ情報57から読み出される情報としては、左印刷情報54、右印刷情報55および属性情報59がある。なお、詳細は省略するが、新たにジョブを登録する場合には、データ処理部58が操作部3からの入力に従って、入力された新たなジョブに関するレコードを画像データメモリ56に登録する(記憶させる)。
図11は、第2の実施の形態における処理を示す流れ図である。以下では、透明な印刷基材93の両面に対して印刷を行うジョブが選択される例について説明する。
処理が開始されると、制御部5(データ処理部58)は、例えば表形式のジョブリストを表示部4に表示してオペレータによるジョブ選択を待ち受ける(ステップS20)。このような表示は、画像データメモリ56に記憶されているジョブ情報57に基づいて行われる。これにより、既に登録されている印刷ジョブの一覧が表示部4に表示されるので、オペレータは容易にジョブを選択することができる。
次に、オペレータによりジョブ選択が行われる(ステップS21)。すなわち、オペレータが操作部3を操作して、表示部4に表示されている一覧表から所望のジョブを指定する指示を入力する。
このオペレータの指示に従って、データ処理部58は、画像データメモリ56に記憶されているジョブ情報57から、選択されたジョブに関する情報を読み出して属性情報59を生成する。生成された属性情報59は、選択されたジョブの情報として表示部4に表示される(ステップS22)。
図12は、選択されたジョブに関する情報を表示するための画面40を例示する図である。
画面40には、選択されたジョブのジョブ名を表示するジョブ名ボックス401と、印刷が実行される印刷基材93の種類を表示する印刷基材種類表示ボックス402とが表示される。また、画面40には、印刷基材93の一方面(表面)に印刷されるべき画像の種類またはサムネイル等を表示する表面画像表示ボックス403と、印刷基材93の他方面(裏面)に印刷されるべき画像の種類またはサムネイル等を表示する裏面画像表示ボックス404とが表示される。
また、画面40には、オペレータによる入力が可能な入力ボックスとして、いずれの基準部材を用いてX軸方向の位置決めを行うかを設定する原点設定ボックス405と、何枚の印刷基材93に対して印刷を行うかを示す印刷枚数設定ボックス406とが表示される。制御部5は、オペレータが原点設定ボックス405に設定された情報に基づいて、印刷時の基準側端部を特定する。
本実施の形態では、原点設定ボックス405に「左」と設定された場合には、表面を印刷するときに左側に配置される側端部(左側端部)を基準側端部として特定し、原点設定ボックス405に「右」と設定された場合には、表面を印刷するときに右側に配置される側端部(右側端部)を基準側端部とするように特定する。
なお、これらの入力ボックスに表示される情報は、当該ジョブを登録する際に入力され、画面40が表示される時点では単に変更が可能なように構成されていてもよい。図12に示す例では、原点設定ボックス405には、左ガイド部材16を用いて位置決めを行うべく「左」が既に設定されており、印刷枚数として「n(自然数)」が既に設定されている。
さらに、画面40には、機能ボタンとして、キャンセル処理(中止処理)の実行を指示するキャンセルボタン407と、制御部5に次工程への遷移を指示する開始ボタン408とが表示される。
画面40が表示された状態で、オペレータは、位置決めの際に印刷基材93を当接させる基準部材の別(左ガイド部材16か右ガイド部材17かの別)を、画面40の原点設定ボックス405に入力することによって位置決め設定を行う。また、画面40の印刷枚数設定ボックス406に必要な数字を入力することによって印刷枚数を設定する(ステップS23)。
次に、オペレータは開始ボタン408を操作することにより、制御部5に次工程への遷移を指示する。すなわち、制御部5に対して印刷処理の開始を指示する(ステップS24)。この指示に従って、制御部5は、印刷基材を載置する際の指示を示す画面を表示する(ステップS25)。
図13ないし図15は、印刷基材を載置する際の指示を示す画面を例示する図である。なお、図13に示す載置指示画面41は、ステップS25が初めて実行されるときに表示される画面の例である。また、図14に示す載置指示画面42は、ステップS25の2回目の実行時に表示される画面の例である。さらに、図15に示す載置指示画面43は、ステップS25の最後の実行時に表示される画面の例である。
載置指示画面41ないし43には、左ガイド部材16によって位置決めされる印刷基材の載置領域を示す領域410と、右ガイド部材17によって位置決めされる印刷基材の載置領域を示す領域411とが表示される。
先述のように、本実施の形態では、原点設定ボックス405に「左」と設定された場合には、表面を印刷するときに左側端部を基準側端部として特定する。したがって、ここに示す例では、表面を印刷する印刷基材93は領域410に表示される。一方、表面を上向きにして載置したときの左側端部は、裏面を上向きにして載置したときには右側端部となる。すなわち、表面を印刷したときに左側端部を基準側端部とした場合において、裏面を印刷するときにも同一の側端部を基準側端部とするためには、裏面を印刷するときの右側端部を基準側端部とする必要がある。したがって、ここに示す例では、裏面を印刷する印刷基材93は領域411に表示される。
また、載置指示画面41は、ステップS25が初めて実行されるときに表示される画面の例であるから、領域411に表示される印刷基材93(裏面を印刷する印刷基材93)は存在しないため、領域411は破線で表示されている。また、載置指示画面42は、ステップS25の二回目の実行時に表示される画面の例であるから、領域410,411はいずれも実線で表示されている。さらに、載置指示画面43は、ステップS25が最後に実行されるときに表示される画面の例であるから、領域410に表示される印刷基材93(表面を印刷する印刷基材93)は存在しないため、領域410は破線で表示されている。
このように、領域410,411の表示状態を確認することにより、オペレータは、どの領域に印刷基材93を載置する必要があるかを容易に確認できる。
さらに、載置指示画面41ないし43には、機能ボタンとして、制御部5に印刷実行を指示する開始ボタン412と、キャンセル処理(中止処理)の実行を指示するキャンセルボタン413とが表示される。
載置指示画面41,42の領域410には、左ガイド部材16によって位置決めされる印刷基材93の番号を示す番号表示414と、当該印刷基材93の表裏どちらの面を上向きに載置すべきかを指示する表裏指示415とが表示される。
本実施の形態において番号表示414に表示される番号は、選択されたジョブにおける何枚目の印刷基材93であるかを示す数字である。先述のように、載置指示画面41は、ステップS25が初めて実行されるときに表示される画面の例であるから、番号表示414には一枚目(最初)であることを示す「1」が表示されている。一方、載置指示画面42は、ステップS25の二回目の実行時に表示される画面の例であるから、二枚目であることを示す「2」が表示されている。このように、番号表示414が表示されることにより、オペレータは印刷処理の進捗状況を容易に確認することができる。
また、ここに示す例では、先述のように、表面を印刷する印刷基材93が領域410に表示される。逆に言えば、領域410に表示される印刷基材93には表面が印刷される。したがって、領域410に載置される印刷基材93は、表面を上向きに載置すべきであるから、表裏指示415には「表」が表示されている。
また、領域410には、当該印刷基材93に印刷される画像の種類またはサムネイルを表示する画像表示416と、当該印刷基材93をいずれの方向に移動させつつ位置決めすべきかを示す矢印417とが表示される。
図12に例示した表面画像表示ボックス403には、表面に印刷する画像として「人物」が設定されている。したがって、ここに示す例では、画像表示416には「人物」が表示されている。これにより、オペレータは、領域410に載置される印刷基材93に印刷される画像を容易に確認することができる。
また、領域410は、先述のように、左ガイド部材16によって位置決めされる印刷基材の載置領域を示すので、矢印417は左向きである。これにより、オペレータは、領域410に載置する印刷基材93については、左方向にずらしながら左ガイド部材16に当接させることにより位置決めを行えばよいことを容易に確認できる。
載置指示画面42,43の領域411には、右ガイド部材17によって位置決めされる印刷基材93の番号を示す番号表示418と、当該印刷基材93の表裏どちらの面を上向きに載置すべきかを指示する表裏指示419とが表示される。
本実施の形態において番号表示418に表示される番号は、番号表示414と同様に、選択されたジョブにおける何枚目の印刷基材93であるかを示す数字である。先述のように、載置指示画面42は、ステップS25の二回目の実行時に表示される画面の例であるから、領域411に載置され印刷が実行される印刷基材93は一枚目の印刷基材93である。したがって、番号表示418には一枚目であることを示す「1」が表示されている。一方、載置指示画面43は、ステップS25が最後に実行されるときに表示される画面の例であるから、最後の印刷基材93であることを示す「n」が表示されている。このように、番号表示418が表示されることにより、オペレータは印刷処理の進捗状況を容易に確認することができる。
また、ここに示す例では、先述のように、裏面を印刷する印刷基材93が領域411に表示される。逆に言えば、領域411に表示される印刷基材93には裏面が印刷される。したがって、領域411に載置される印刷基材93は、裏面を上向きに載置すべきであるから、表裏指示419には「裏」が表示されている。
また、領域411には、当該印刷基材93に印刷される画像の種類またはサムネイルを表示する画像表示420と、当該印刷基材93をいずれの方向に移動させつつ位置決めすべきかを示す矢印421とが表示される。
図12に例示した裏面画像表示ボックス404には、裏面に印刷する画像として「景色」が設定されている。したがって、ここに示す例では、画像表示420には「景色」が表示されている。これにより、オペレータは、領域411に載置される印刷基材93に印刷される画像を容易に確認することができる。
また、領域411は、先述のように、右ガイド部材17によって位置決めされる印刷基材の載置領域を示すので、矢印421は右向きである。これにより、オペレータは、領域411に載置する印刷基材93については、右方向にずらしながら右ガイド部材17に当接させることにより位置決めを行えばよいことを容易に確認できる。
ステップS25が実行され、印刷基材を載置する際の指示を示す画面が表示されると、オペレータは当該画面に従って印刷基材93を吸着ベルト13に載置する(ステップS26)。
このように、オペレータが表示部4に表示される画面を確認しながら印刷基材93を載置することにより、オペレータは印刷基材93を吸着ベルト13に対して正しく載置することができる。例えば、載置指示画面41では、一番目の印刷基材93を表面を上向きにして、左ガイド部材16に当接させることによって位置決めして載置すればよいことが容易に確認できる。
印刷基材93の載置が終了すると、オペレータは開始ボタン412を操作することにより、印刷装置100aに実行指示を与える(ステップS27)。この実行指示に従って、データ処理部58が各印刷基材93についての原点情報を画像データメモリ56に記憶させるとともに(ステップS28)、第1の実施の形態と同様に印刷データ生成部52が印刷データを生成して基準側端部を基準に画像を印刷する(ステップS29)。
ただし、載置指示画面41が表示されている場合には、左側の印刷基材93のみが載置されているため、この場合は左印刷情報54のみに基づいて印刷データが作成される。一方、載置指示画面43が表示されている場合には、右側の印刷基材93のみが載置されているため、この場合は右印刷情報55のみに基づいて印刷データが作成される。
一回分の印刷が終了すると、全ての印刷が終了したか否かを判定し(ステップS30)、ステップS23で設定した枚数の印刷が終了していない場合はステップS25に戻って処理を繰り返す。一方、全ての印刷が終了した場合は処理を終了する。
以上のように、第2の実施の形態における印刷装置100aでは、1つの印刷基材に表裏を印刷する場合において、表面を印刷したときと裏面を印刷したときと、いずれも同一の側端部が位置決めの基準となるように指示を与える。
例えば、一枚目の印刷基材93について、図13と図14とを比べてみれば、表面を印刷する際に位置決めの基準となった側端部(左側に配置される側端部)が、裏面を印刷する際にも位置決めの基準となり基準側端部(右側に配置される側端部)となっている。
したがって、オペレータは、表示部4に表示される画面に従って印刷基材を載置するだけで、表面の画像と裏面の画像との重なり精度の高い、良好な画像形成を行うことができる。
<3. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
例えば、左ガイド部材16および右ガイド部材17はY軸方向に配列した複数のピンから構成されていてもよい。例えば、左ガイド部材16および右ガイド部材17を、吸着ベルト13から突出した複数の突起(ピン)として形成してもよい。この場合、左ガイド部材16および右ガイド部材17は吸着ベルト13の回転に伴ってY軸方向に移動する。すなわち、複数の印刷基材のそれぞれをX軸方向の位置決めすることができる構造であれば、基準部材の形状はどのようなものであってもよいし、必ずしも固定されていなければならないわけでもない。
また、左ガイド部材16および右ガイド部材17は、いわゆる幅寄せ機構のような構造により、X軸方向の位置が変更可能であってもよい。吸着ベルト13のX軸方向サイズに比べて充分に小さいサイズの印刷基材を2枚だけ載置する場合のように、複数の印刷基材の間隔が広くなる場合には、印刷ヘッド20の無駄な移動距離が増加する。このような場合には、左ガイド部材16と右ガイド部材17との距離を狭めてから印刷基材の位置決めを行うように構成してもよい。本発明では、各印刷基材に印刷する画像の原点位置は基準部材の位置に応じて決定するため、狭めた距離(基準部材の移動した距離)を検出するように構成しておけば、それぞれの印刷基材に印刷される画像がずれることはない。これにより印刷時間の短縮を図ることができる。すなわち、吸着ベルト13に対する印刷基材のX軸方向の位置決めを行うときに、基準部材はX軸方向に移動することのない構造であればよい。
また、上記実施の形態では、印刷基材の搬送方向における位置決めは印材検出センサ15、搬送制御部51およびモータ12で行うと説明した。しかし、印刷基材の先端部を、何らかの部材(例えば位置決めピンやガイド部材)に当接させることにより実現してもよい。この場合には複雑な制御を要することなくY軸方向の位置決めを行うことができる。ただし、当該部材が印刷基材の搬送の妨げにならないように、昇降機構や着脱方式等により、適宜退避可能な構成とすることが好ましい。
また、複数の印刷基材は2枚に限定されるものではない。例えば、3枚の印刷基材を保持する場合、中央部に配置される印刷基材に当接する基準部材を所定の位置に上方から下降させる構造を採用してもよい。あるいは、このような基準部材について、着脱容易なアダプター構造を採用してもよい。
また、印刷ヘッド20による描画順序(走査)は、上記実施の形態に示すものに限定されるものではない。図16および図17は、印刷ヘッド20の描画順序の変形例を示す図である。図16では、各印刷基材90,91において、それぞれ基準側端部の側から順に走査される例を示す。一方、図17では、例えば奇数番目の列を左側から描画し偶数番目の列を右側から描画する例を示す。図17に示す例では、印刷ヘッド20の移動時間を短縮することができる。なお、このように描画順序を変更する場合、データバッファ25における画像データの格納順序を変更することによって実現してもよいし、データバッファ25から読み出す順序を変更することによって実現してもよい。
また、左印刷情報54および右印刷情報55は操作部3から入力されると説明したが、例えば、ネットワークを介して取得されてもよいし、CD−ROMのような可搬性の記録媒体から読み込まれてもよい。
また、上記実施の形態に示した各工程は例示であって、このような処理内容あるいは順序に限定されるものではない。すなわち、同様の効果が得られるように、適宜変更されてもよい。例えば、右印刷情報55を先にデータバッファ25に転送してから、左印刷情報54を転送してもよい。
また、上記実施の形態における機能ブロック(搬送制御部51および印刷データ生成部52)は、ソフトウェア的に実現されると説明したが、これらの機能ブロックの機能の一部あるいは全部を専用の論理回路で構成し、ハードウェア的に実現してもよい。
また、第2の実施の形態では、最初の印刷を行うときに、一枚目の印刷基材93のみ載置するように説明したが、nが2以上の場合は、一枚目の印刷基材93の表面の印刷と、n番目の印刷基材93の裏面の印刷とを同時に行うように構成してもよい。
また、第2の実施の形態に示す番号表示415,418は、印刷枚数も同時に表示するように構成してもよい。例えば、印刷番号/印刷枚数(ここに示す例では「1/n」)と表示してもよい。