JP2008296386A - 射出成形機用の射出ノズル - Google Patents

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Abstract


【課題】金属錯体が溶解された超臨界状態の流体が注入できると共に、可塑化時、浸透時および射出時に溶融樹脂の逆流が防止できる、コンパクトな射出ノズルを提供する。
【解決手段】ノズル本体(10)と、その先端部が射出孔(12)となっているノズル部(11)とから構成する。加熱シリンダ(2)の計量室(9)と射出孔(12)は、溶融樹脂流路(6、13、14、32、19)を介して連通している。溶融樹脂流路(14)には金属錯体が溶解された超臨界状態の流体の供給孔(21)が開口している。このように構成されているノズル本体(10)とノズル部(11)とにわたって棒状ニードル(37)と傘状ニードル(30)とを同心的に設ける。棒状ニードル(37)により射出孔(12)を開閉し、傘状ニードル(30)により供給孔(21)を開閉する。これらのニードル(30、37)を駆動する操作レバー(43、53)は加熱シリンダ(2)寄りに位置している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、射出成形機の射出ノズルに関し、さらに具体的には表面のみが改質された樹脂成形品を得る射出成形方法の実施に適用して好適な射出成形機用の射出ノズルに関するものである。
射出成形により成形されるプラスチック成形品は多々あるが、可塑化溶融される樹脂材料によってその物性は決まる。また、プラスチック成形品は用途によっては、その表面に印刷、塗装等が施され、導電体や金属膜の形成、成形品同士の接合、その他の後加工が施される場合もある。このような後加工を施す必要がある場合には、加工性向上のため、プラスチック成形品の表面を活性化させて表面を改質することが一般に行われている。例えば、プラスチック成形品よりなる電子機器の表面に金属導電膜を形成する手段として、無電解メッキ法が広く採用されている。しかし、無電解メッキプロセスには脱脂、エッチング、湿潤化、キャタリスト、アクセレーターといった複雑な工程が必要でコスト高の上、有害物質を多く使わなければならず、廃液の処理にも費用がかかるという問題もある。
そこで、このような複雑な工程を経ることなく、射出成形時に表面を全体的又は選択的に無電解メッキに適用可能なように改質する表面改質方法が特許文献1により提案されている。
特許第3696878号
特許文献1に記載されている射出成形機は、概略図5に示されているように構成されている。すなわち、バンドヒータ139が外周部にまかれている可塑化シリンダ140と、この可塑化シリンダ140内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ107とから構成されている。可塑化シリンダ140の前方には射出ノズル108が取り付けられ、この射出ノズル108内にシャットオフ弁105が設けられている。また、シャットオフ弁105とスクリュ107の間に、超臨界流体供給口106が設けられている。この供給口106から、表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体が供給されるようになっている。
したがって、シャットオフ弁105を閉じて、スクリュ107を回転駆動すると、ホッパ110から供給されるペレット状の樹脂は、従来周知のように前方へ送られる過程で可塑化溶融されてフロント111に蓄積される。所定量蓄積したら、スクリュ107を後方へ駆動して、すなわちサックバックしてフロント111内を減圧すると共に、電磁弁109を開く。そうすると、超臨界流体発生装置112から供給される超臨界状態の流体に、容器123中の金属錯体のような表面改質物質が溶解され、そして供給口106からフロント111に注入される。電磁弁109を閉じ、そしてスクリュ107を所定量だけ前進駆動する。そうすると、フロント111内は10MPaに加圧され、表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体は、フロント111内の先端付近の一部の溶融樹脂に浸透する。次いで、シャットオフ弁105を開いて、スクリュ107を射出方向に駆動する。そうすると、図示されない金型のキャビティに溶融樹脂が射出・充填される。このとき、超臨界状態の流体が浸透した溶融樹脂が流れの先端部、すなわちフローフロント部を形成する。金型内では、いわゆるファウンテンフロー現象により、フローフロント部の溶融樹脂はキャビティ表面に引っ張られながら表面層を形成するので、超臨界状態の流体が浸透した溶融樹脂は、キャビティ表面近傍の層を形成する。超臨界状態の流体には表面改質物質が溶解されているので、特許文献1に記載されているような、表面が改質されたプラスチック成形品が得られる。
上記特許文献1により提案されている射出成形機によると、金属錯体等の表面改質物質が金型のスタンパの表面に配置されることによりプラスチック成形品の表面改質が行われ、従来の無電解メッキプロセスのような複雑な工程を実施することなく無電解メッキができる利点は認められる。
しかしながら、改良すべき問題点、特に射出成形機に改良すべき点が認められる。例えば、表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体を注入する供給口106が、シャットオフ弁105とスクリュ107との間に位置しており、射出充填時には高圧の射出圧力が供給口106に作用する。射出圧力によって溶融樹脂が供給口106内に逆流すると、表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体の注入量や溶融樹脂の射出量が不正確になる。このため、供給口106は表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体を注入するときには「開」状態となり、溶融樹脂を計量可塑化するとき、および射出充填するときには溶融樹脂が逆流しないよう「閉」の状態となるような逆流防止機能をもった開閉機構109を必要とする。この開閉機構109は高圧の射出圧力に耐える十分な強度を持つ必要がある。実際、射出圧力は200MPaを超える高圧であり、このような高圧に強度的に耐え、且つ超臨界状態の流体とその溶解物を滞りなく注入できるような開閉機構109は、特殊な材料を選択し、特殊な形状・構造に製作しても、大型化してしまう。このように材料を選択し、特殊な構造に製作しても品質、性能面で満足のいく開閉機構が得られる保証はない。
ところで、フローフロント以外の溶融樹脂に、表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体が浸透していると、成形品の内部で発泡して成形品の強度を損なう恐れがあるので、溶融樹脂全体ではなく、フローフロント部にあたる部分のみに、表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体を浸透させる必要がある。このため、供給口106は射出ノズル108の先端部近傍に取り付けられることが好ましい。しかし、射出ノズル108の先端部近傍に設けると、上記したような大型化した開閉機構109も、射出ノズル108の先端部近傍に取り付けられることになり、射出・充填時など射出ノズル108を最前進させて金型にタッチさせるとき、開閉機構109が固定プラテン125の切欠126の内壁面と干渉する恐れがある。
同様に、シャットオフ弁105についても、固定プラテン125の切欠126の内壁面と干渉する恐れがあるので、シャットオフ弁105は射出ノズル108の先端部から所定距離後退させて取り付ける必要がある。そうすると、射出ノズル108にはシャットオフ弁105から射出孔まで、長い樹脂流路141ができてしまう。射出充填後、射出ノズル108が金型のスプルから離間されたり、成形品を取り出すために金型が開かれたりすると、樹脂流路141内に残されている溶融樹脂は大気圧に開放される。そうすると、樹脂流路141内の溶融樹脂が発泡してしまう。発泡してしまった溶融樹脂は製品として利用できないので、金型内に格別に樹脂溜りを設けて、成形品に混入しないように留意しなければならない煩わしさもある。
本発明は、上記したような従来の問題点あるいは課題を解決した射出成形機用の射出ノズルを提供することを目的とし、具体的には従来のシャットオフ弁が奏する機能と逆流防止機構が奏する機能の、両機能を同時に備えた射出成形機用の射出ノズルを提供することを目的とし、さらに具体的にはシャットオフ機能は勿論のこと、表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体を正確な量だけ射出ノズルの先端部近傍に注入できると共に、射出充填時には表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体が浸透された溶融樹脂が超臨界状態の流体の供給孔の方へ逆流することを確実に防止することができる、射出成形機用の射出ノズルを提供することを目的としている。また、固定プラテンの切欠の内壁面と干渉しない、射出成形機用の射出ノズルを提供することも目的としている。
本発明は、上記目的を達成するために、射出機の加熱シリンダの先端部に取り付けられる射出ノズルには、棒状ニードルと傘状ニードルとが同心的に設けられる。そして、棒状ニードルは、射出ノズルの先端部の射出孔を開閉するように構成される。また、傘状ニードルは、表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体を溶融樹脂流路内に注入するための供給孔を開閉するように構成される。傘状ニードルは弁部と軸部とから構成され、弁部がシール作用を奏し、軸部はノズル本体に形成されているガイド孔に通され案内されるように構成される。上記のように作用する棒状ニードルと傘状ニードルを操作する第1、2の操作レバーは、加熱シリンダ側に寄った位置に配置され、そして第1、2の操作レバーは、互いに独立した駆動手段により駆動されるように構成される。
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、可塑化方向と射出方向とに駆動可能に設けられているスクリュを有する加熱シリンダの前方に取りつけられる射出ノズルであって、前記射出ノズルは、略筒状を呈するノズル本体と、このノズル本体の先端部に取り付けられ、その先端部が射出孔となっているノズル部と、前記ノズル本体とノズル部とにわたって同心的に設けられている棒状ニードルと傘状ニードルとからなり、前記ノズル本体とノズル部には、前記加熱シリンダの計量室と前記射出孔に連通した溶融樹脂流路が形成されていると共に、前記ノズル本体の溶融樹脂流路には表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体が供給される供給孔が開口し、前記棒状ニードルが第1の位置へ駆動されると、前記ノズル部の射出孔は前記棒状ニードルにより閉鎖され、第2の位置へ駆動されると解放され、前記傘状ニードルが第1の位置へ駆動されると、前記供給孔は前記傘状ニードルにより閉鎖され、第2の位置へ駆動されると解放されるように構成されている。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の射出ノズルにおいて、傘状ニードルは弁部と軸部とからなり、前記弁部には前記溶融樹脂流路の内壁に液密的あるいは気密的に接してシール作用を奏するランド部と、溶融樹脂の流路を確保する切欠あるいは透孔とが設けられ、前記軸部は前記弁部から前記加熱シリンダの方向に延びるように形成され、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の射出ノズルにおいて、前記傘状ニードルは、その軸部が前記ノズル本体の軸心に形成されているガイド孔により案内され、前記棒状ニードルは、前記傘状ニードルの軸心に前記弁部と軸部とにわたって形成されているガイド孔により案内されるように構成されている。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の射出ノズルにおいて、前記ノズル本体には前記棒状ニードルに結合される操作するレバーが挿入される第1の操作レバー取付用の穴と、前記傘状ニードルに結合される操作するレバーが挿入される第2の操作レバー取付用の穴とが設けられ、これらの第1、2の操作レバー取付用の穴は前記加熱シリンダ寄りで軸方向には所定の間隔をおいて、円周方向には180度の間隔をおいて設けられ、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかの項に記載の射出ノズルにおいて、前記ノズル部の、前記傘状ニードルの下流側は大径の樹脂溜となり、該樹脂溜は前記射出孔に向けてテーパ状に絞られ、そして請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかの項に記載の射出ノズルにおいて、前記棒状ニードルと傘状ニードルを駆動する駆動手段は、互いに独立しているように構成される。
以上のように、本発明によると、射出ノズルは、略筒状を呈するノズル本体と、このノズル本体の先端部に取り付けられ、その先端部が射出孔となっているノズル部と、前記ノズル本体とノズル部とにわたって同心的に設けられている棒状ニードルと傘状ニードルとからなり、前記ノズル本体とノズル部には、前記加熱シリンダの計量室と前記射出孔に連通した溶融樹脂流路が形成されていると共に、前記ノズル本体の溶融樹脂流路には表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体が供給される供給孔が開口し、前記棒状ニードルが第1の位置へ駆動されると、前記ノズル部の射出孔は前記棒状ニードルにより閉鎖され、第2の位置へ駆動されると解放され、前記傘状ニードルが第1の位置へ駆動されると、前記供給孔は前記傘状ニードルにより閉鎖され、第2の位置へ駆動されると解放されるように構成されているので、棒状ニードルにより射出孔を閉鎖し、傘状ニードルにより供給孔を開いてフローフロント部の成形用として射出される溶融樹脂に表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体を浸透させることができる。また、ノズル本体とノズル部には、前記加熱シリンダの計量室と前記射出孔に連通した溶融樹脂流路が形成されているので、超臨界状態の流体が浸透された溶融樹脂と計量室の溶融樹脂とを、射出孔を開き供給孔を塞いで、連続して金型に射出充填することができる。このように、本発明によると、供給孔が傘状ニードルにより遮断されるので、射出・充填時に超臨界状態の流体が浸透された溶融樹脂および計量室の溶融樹脂が供給孔の方へ逆流することはない。したがって、表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体の注入量、超臨界状態の流体が浸透された溶融樹脂の射出量、計量室の溶融樹脂の射出量等は正確である。また、棒状ニードルによって射出孔が閉塞されるので、射出ノズル内の溶融樹脂が大気圧に開放されて発泡して、溶融樹脂が無駄になるようなこともない。さらには、傘状ニードルも棒状ニードルも、ニードルすなわち棒状部材から構成されているので、射出ノズルの先端部の射出孔も、超臨界状態の流体が供給される供給孔も、これらの孔から離間した位置から操作することができ、これらの弁の操作手段を加熱シリンダ側に寄った位置に配置することができる。したがって、射出ノズルを固定金型にタッチさせるときに、棒状ニードルと傘状ニードルの操作手段が固定プラテンの切欠の内壁と干渉するようなことはない。また、棒状ニードルと傘状ニードルは同心的に設けられているので、射出ノズルが徒に大型化することもない。
したがって、本発明によると、従来装置の開閉弁あるいは逆止弁のような高圧の射出圧力を考慮した逆流防止機能を備えた開閉機構が不要となり、品質・性能面において向上すると同時に、コンパクトな射出成形機用の射出ノズルを提供することができる、という本発明に特有の効果が得られる。
また、ノズル本体に棒状ニードルに結合される操作するレバーが挿入される第1の操作レバー取付用の穴と、傘状ニードルに結合される操作するレバーが挿入される第2の操作レバー取付用の穴とが設けられ、これらの第1、2の操作レバー取付用の穴が、加熱シリンダ寄りで軸方向には所定の間隔をおいて、円周方向には180度の間隔をおいて設けられている発明によると、棒状ニードルの駆動手段と傘状ニードルの駆動手段は互いに干渉しないので、射出ノズルをよりコンパクトに構成することができるという効果がさらに得られる。また、ノズル部の、傘状ニードルの下流側が大径の樹脂溜となっている発明によると、上記のような効果に加えて、主としてフローフロント部を形成する溶融樹脂に表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体を浸透させることができる効果が得られ、棒状ニードルと傘状ニードルを駆動する駆動手段が互いに独立している発明によると、射出成形の各工程の実施が容易になる効果がさらに得られる。
以下、本発明の実施形態を図1〜4により説明する。図1は、本実施の形態に係る射出成形機の一部を側面から見た縦断面図であり、図3の(ア)は、本実施の形態に係る射出成形機の一部を上面から見た水平断面図である。射出成形機1は、従来周知のように、加熱シリンダ2を備えている。そして、加熱シリンダ2の前方にシリンダブロックSBが、このシリンダブロックSBにノズル本体10が図示されないボルト、ネジ等の手段により取り付けられている。加熱シリンダ2、シリンダブロックSBおよびノズル本体10の外周部には、個々に発熱温度が調整される複数個のバンドヒータ4、4、…が設けられている。加熱シリンダ2の内部には、シリンダボア5が軸方向に形成されている。このシリンダボア5は、シリンダブロックSB中の溶融樹脂流路6に連通しており、さらに、後で説明するように、ノズル本体10内の溶融樹脂流路およびノズル部11の射出孔12にも連通している。加熱シリンダ2のボア5には、従来周知のように、回転方向と軸方向とに駆動されるスクリュ8が設けられている。このスクリュ8の先端部には、図示されないスクリュヘッドが取り付けられ、スクリュヘッドの前方の、加熱シリンダ2のシリンダボア5内が計量室9となっている。
射出ノズルは、本実施の形態によると、概略円柱状を呈するノズル本体10と、このノズル本体10の先端部に装着されているノズル部11とからなっている。このように構成されているノズル本体10に、詳しくは後述するように、棒状ニードル37からなる第1のシャットオフ装置と、傘状ニードル30からなる第2のシャットオフ装置とが同心状に組み込まれている。
ノズル本体10の軸心には、その先端部から後端部に向けて所定深さの比較的大径のノズル穴15が形成されている。そして、このノズル穴15の後端部から軸方向に整合して比較的小径のガイド穴16が所定の深さに形成されている。大径のノズル穴15は、詳しくは後述する傘状ニードル30の弁部を案内するもので、その内径は傘状ニードル30の弁部の外径よりも極わずかに大きく、また小径のガイド穴16は傘状ニードル30の軸部を案内するもので、その内径は傘状ニードルの軸部の外径よりも極わずかに大きく選定されている。大径のノズル穴15の先端部分は所定長さにわたって拡径され、拡径された内周面にノズル部11を取り付けるための雌ネジが形成されている。また、ノズル本体10の先端から可及的に離間した位置、すなわち加熱シリンダ2に近い位置に、所定幅で所定深さの操作レバー取付用の穴17、18が設けられている。これらの操作レバー取付用の穴17、18は、ノズル本体10の軸方向には所定間隔を、回転方向には180度の間隔をおいて軸中心に向かって小径のガイド穴16に達するように明けられている。これらの操作レバー取付用の穴17、18内に、後で説明するように、傘状ニードル30と棒状ニードル37とをそれぞれ操作する操作レバー43、53が挿入される。また、図3の(ア)にも示されているように、大径のノズル穴15の端部からは、小径のガイド穴16と平行して長い2本の樹脂用の貫通孔13、13が明けられている。これにより、シリンダブロックSB内の溶融樹脂流路6と大径のノズル穴15は、樹脂用の貫通孔13、13を介して連通している。
ノズル部11は、外形は略円筒状を呈しているが、内部は後端部から先端部に向けてテーパ状に絞られたテーパ部11’となっている。すなわち、テーパ部11’の始端部の径は、ノズル本体10のノズル穴15と同じ径になっているが、先端部に向けてテーパ状に絞られ、そして射出孔12となっている。この射出孔12は棒状ニードル37が着座する弁座にもなっている。ノズル部11のテーパ部11’と大径のノズル穴15は共働して樹脂溜19を形成している。このように構成されているノズル部11の外周部には雄ネジが形成され、この雄ネジをノズル本体10の前述した雌ネジに螺合することにより、ノズル部11はノズル本体10に取り付けられている。
図3の(イ)は、図3の(ア)において線イ−イで切断して射出ノズルを示す断面図である。この断面図にも示されているように、ノズル本体10の右上方45度と左上方45度の2カ所には、中心方向に向かう浅い穴20、20が設けられ、さらにこれらの穴20、20の底部から、中心方向に向かい、大径のノズル穴15に開口する細い表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体供給孔21、21が明けられている。穴20、20の内周面には雌ネジが形成されており、この雌ネジに図示されない表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体供給パイプが取り付けられるようになっている。表面改質物質、例えば金属錯体が溶解された超臨界状態の流体は、これらのパイプを通して超臨界状態の流体供給孔21、21から大径のノズル穴15の、後述する傘状ニードル30の弁部の上流側の溶融樹脂流路14内に注入されるようになっている。
ノズル本体10には、2個の弁すなわち第1、2のシャットオフ装置が同心的に組み込まれている。第2のシャットオフ装置は、図2の斜視図に示されているように、略傘状を呈する傘状ニードル30からなっている。傘状ニードル30は、所定厚さの傘状の弁部30bと、この弁部30bの中心部から後方へ延びている軸部30jとから構成されている。弁部30bには、円周方向に等間隔に半径外方が開口した4個の樹脂通路用切欠32、32、…が軸方向に形成されている。これらの樹脂通路用切欠32、32、…により溶融樹脂流路が確保されている。このように樹脂通路用切欠32、32、…が4個形成されているので、弁部30bの外周面のランド部31、31、…すなわちノズル本体10の大径のノズル穴15に密に接して軸方向に移動可能な部分は4個形成されている。これらのランド部31、31、…は、傘状ニードル30がノズル本体10に組み込まれて、軸方向の所定位置へ駆動されるとき、ノズル本体10の超臨界状態の流体供給孔21、21を遮断あるいは閉鎖する位置に形成されている。
弁部30bの先端部分は緩やかな円錐状を呈し、先端部は平らとなっている。そして、先端部の円錐面の所定位置すなわち中心点から半径方向の所定位置には溝状の所定深さの切込33が形成されている。また、弁部30bの後端部はランド部31、31…近傍で盛り上げられて鍔部が形成されている。さらには、弁部30bのランド部31、31、…は、樹脂通路用切欠32、32、…によって非連続となっている。したがって、溶融樹脂の圧力により、ランド部31、31、…の自己シール性が高められることになる。軸部30jの後端部近傍には、軸方向に所定長さの切欠35、35が、軸線に対して向かい合うように2個形成されている。この切欠35、35を挟むようにして操作レバー43の先端部が取り付けらる。このように構成されている弁部30bと軸部30jとにわたって軸心にガイド孔36が形成されている。このガイド孔36は、次に説明する棒状ニードル37をガイドする孔で、その内径は棒状ニードル37の軸径より、極わずかに大きく選定されている。
第1のシャットオフ装置は、細長い棒状を呈する従来周知の棒状ニードル37からなっている。この棒状ニードル37の先端部は針状に縮径されて、射出孔12に着座するようになっている。また、後端部近傍には、傘状ニードル30の軸部30jに形成されている切欠35、35と同様な一対の切欠が所定長さに設けられている。この一対の切欠を挟むようにして操作レバー53が取り付けられる。
このように構成されている傘状ニードル30と棒状ニードル37は、次のようにしてノズル本体10に組み込まれる。すなわち、ノズル部11をノズル本体10から取り外した状態で、傘状ニードル30を軸部30jからノズル本体10の小径のガイド孔16に、後端部が操作レバー取付用の穴17内に位置するように挿入する。そうすると、軸部30jが小径のガイド穴16に、弁部30bが大径のノズル穴15に、それぞれ位置して摺動可能に組み込まれる。次いで、棒状ニードル37を傘状ニードル30のガイド孔36に挿入する。そうすると、先端部は樹脂溜19内に、そして後端部は操作レバー取付用の穴18内に位置するようになる。最後にノズル部11をノズル本体10にねじ込む。これにより、図1に示されているように、加熱シリンダ2の先端部にシリンダブロックSBを介して取り付けられる。
傘状ニードル30を駆動する駆動装置40は、図1に示されているように、ピストンシリンダユニット41、ピストンロッド、回動レバー42、操作レバー43等から構成されている。操作レバー取付用穴17に位置している操作レバー43は、ピン45でノズル本体10に枢着され、その先端部は二股状に分岐している。そして、操作レバー43の二股に分かれている先端部は、傘状ニードル30の軸部30jに設けられている切欠35、35に遊びをもって係合している。したがって、ピストンシリンダユニット41に空気のような作動流体を給排すると、ピストンロットが伸縮し、操作レバー43がピン45を中心に回動し、傘状ニードル30は軸方向に直線的に駆動される。棒状ニードル37を駆動する駆動装置50も、同様にピストンシリンダユニット51、ピストンロット、回動レバー52、操作レバー53等から構成されている。操作レバー取付用穴18に位置している操作レバー53は、ピン55でノズル本体10に枢着され、その二股に分かれている先端部は、棒状ニードル37に設けられている切欠に遊びをもって係合している。したがって、棒状ニードル37も軸方向に駆動駆動される。ピストンシリンダユニット41、51は、図1にも示されているように独立しているので、傘状ニードル30と棒状ニードル37は独立して駆動することができる。
このように構成されている射出成形機1は、使用に当たっては図1に示されているように、射出ノズルを固定プラテン3の切欠3’に挿入し、そしてノズル部11の先端部を図示されない固定側金型に当接させる。このとき、樹脂溜19は固定プラテン3の切欠3’内に位置するが、操作レバー43、53はノズル部11の先端部から離間した位置に取り付けられ、また操作レバー43、53は上下に分けて配置されているので、固定プラテン3の切欠3’の内壁と干渉することはない。
次に、図4によって、上記実施の形態の作用について説明する。図4は、ノズル本体10に設けられている傘状ニードル30と棒状ニードル37が所定位置に駆動されている状態を模式的に示す断面図であるが、同図の(ア)に示されているように、傘状ニードル30を矢印YB方向に駆動する。そうすると、傘状ニードル30のランド部31、31が超臨界状態の流体供給孔21、21を塞ぐ。すなわち、溶融樹脂流路14と超臨界状態の流体供給孔21、21の連通が遮断される。次いで、棒状ニードル37を矢印YA方向に駆動して、射出孔12を閉鎖する。
スクリュ8を回転駆動すると共に、ペレット状の樹脂材料を加熱シリンダ2に供給する。樹脂材料はスクリュ8の回転により前方へ送られる過程でスクリュ8の回転による摩擦力、せん断力等により生じる熱およびバンドヒータ4、4、…から加えられる熱とにより溶融し、計量室9、溶融樹脂流路6、貫通孔13、13、溶融樹脂路14、樹脂溜19に充満される。スクリュ8は蓄積される溶融樹脂の圧力により後退する。あるいはサックバックする。所定量計量したら可塑化を終わる。
次に、図4の(イ)に示されているように、棒状ニードル37により射出孔12を閉鎖した状態で、傘状ニードル30を矢印YC方向に駆動する。そうすると、超臨界状態の流体供給孔21、21は、ノズル本体10内の、弁部30bの後方の溶融樹脂流路14に開口する。スクリュ8を後方へ駆動して、すなわちサックバックして計量室9内を減圧すると、超臨界状態の流体供給孔21、21から金属錯体が溶解された超臨界状態の流体が溶融樹脂路14内に正確な量だけ注入される。次いで、傘状ニードル30を矢印YCと逆方向に駆動する。そうすると、傘状ニードル30のランド部31、31が超臨界状態の流体供給孔21、21を塞ぐ。すなわち、溶融樹脂流路14と超臨界状態の流体供給孔21、21との連通が遮断される。スクリュ8を所定量だけ例えば内圧が10MPa程度になるように前進させる。そうすると、この加圧により、金属錯体が溶解された超臨界状態の流体は溶融樹脂路14内の溶融樹脂に溶解、浸透すると共に樹脂通路用切欠32、32、…を通って樹脂溜19中の溶融樹脂に十分に溶解、浸透する。金属錯体が溶解された超臨界状態の流体は、注入される量によっては、貫通孔13、13中の溶融樹脂中にも若干浸透することもあるが、超臨界状態の流体供給孔21、21がノズル本体10の先端部近傍に設けられているので、浸透する量は多くはない。
傘状ニードル30によって超臨界状態の流体供給孔21、21を遮断した状態で、棒状ニードル37を矢印YDの方向に駆動して射出孔12を開口する。図4の(ウ)に矢印YD方向に棒状ニードル37を駆動した状態が示されている。スクリュ8を軸方向に駆動して図示されない金型のキャビティへ溶融樹脂を射出する。最初に、樹脂溜19中の溶融樹脂が射出され、引き続き計量室9の溶融樹脂が射出される。そうすると、金属錯体が溶解された超臨界状態の流体が浸透している溶融樹脂がフローフロントを形成する。射出されてから溶融樹脂が冷却されるまで、必要に応じて金型の隙間から吸引を行って、キャビティ内で超臨界状態の流体が気化されて生じるガスを取り除く。冷却固化を待って金型を開く。これにより、無電解メッキが可能な、表面が改質された成形品が得られる。以下、同様にして成形する。
上記のようにして可塑化、計量工程および射出工程を実施するとき、溶融樹脂の圧力がノズル本体10にも作用する。そのため、傘状ニードル30の弁部30bの鍔部に溶融樹脂の圧力が作用して、超臨界状態の流体供給孔21、21を遮断するシール効果がさらに高くなる。この自己シール作用により、超臨界状態の流体供給孔21、21は確実に遮断され、ノズル本体10に外部から取り付けられている、金属錯体が溶解された超臨界状態の流体を注入するパイプに射出圧力が作用することはない。
上記した実施の形態の作用の説明では、可塑化・計量を先に行った後に、溶融樹脂に対して金属錯体が溶解された超臨界状態の流体を注入するように説明されているが、金属錯体が溶解された超臨界状態の流体を所定量注入した後に、可塑化あるいは計量を行うこともできる。このように実施するときは、棒状ニードル37により射出孔12を遮断した後、傘状ニードル30を駆動して超臨界状態の流体供給孔21、21を開口し、金属錯体が溶解された超臨界状態の流体を注入する。次いで、傘状ニードル30を駆動して超臨界状態の流体供給孔21、21を遮断して、前述したようにして可塑化あるいは計量をする。
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、傘状ニードル30は、軸方向に駆動して超臨界状態の流体供給孔21、21を遮断するようになっているが、軸を中心に回転させて、超臨界状態の流体供給孔21、21を遮断するように実施することもできる。さらには、樹脂通路用切欠32、32、…は、切欠に代えて透孔でも実施できる。また、樹脂通路用切欠32、32、…、ランド部31、樹脂用の貫通孔13、13等の数が図示の実施の形態に限定されることなく実施できることも明らかである。
金属錯体に限らず、他の表面改質物質でも同様に実施できることは言うまでもなく、さらには、成形品の美観を高めるような着色剤、蛍光塗料等を注入して、射出成形する射出成形機にも適用可能である。
本発明の実施の形態に係る射出成形機の縦断面図である。 本発明の実施の形態に係る傘状ニードルを示す斜視図である。 本実施の形態に係る射出成形機を示す図で、その(ア)は射出成形機の水平断面図であり、その(イ)は(ア)において線イ−イで射出ノズルを切断して示す断面図である。 本発明の実施の形態に係る傘状ニードルと棒状ニードルの、各工程における動作位置を模式的に示す断面図で、その(ア)は可塑化・計量工程における、その(イ)は金属錯体が溶解された超臨界状態の流体を注入する工程における、その(ウ)は射出工程における、各動作位置をそれぞれ示す断面図である。 従来の射出成形機の一部を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1 射出成形機 2 加熱シリンダ
6 溶融樹脂流路 8 スクリュ
9 計量室 10 ノズル本体
11 ノズル部 12 射出孔
15 ガイド孔 17 操作レバー取付用の穴
18 操作レバー取付用の穴 19 樹脂溜
30 傘状ニードル 30b 弁部
30j 軸部 31 ランド部
36 ガイド孔 37 棒状ニードル
40 駆動装置 50 駆動装置
43 操作レバー 53 操作レバー

Claims (6)

  1. 可塑化方向と射出方向とに駆動可能に設けられているスクリュを有する加熱シリンダの前方に取りつけられる射出ノズルであって、
    前記射出ノズルは、略筒状を呈するノズル本体と、このノズル本体の先端部に取り付けられ、その先端部が射出孔となっているノズル部と、前記ノズル本体とノズル部とにわたって同心的に設けられている棒状ニードルと傘状ニードルとからなり、
    前記ノズル本体とノズル部には、前記加熱シリンダの計量室と前記射出孔に連通した溶融樹脂流路が形成されていると共に、前記ノズル本体の溶融樹脂流路には表面改質物質が溶解された超臨界状態の流体が供給される供給孔が開口し、
    前記棒状ニードルが第1の位置へ駆動されると、前記ノズル部の射出孔は前記棒状ニードルにより閉鎖され、第2の位置へ駆動されると解放され、前記傘状ニードルが第1の位置へ駆動されると、前記供給孔は前記傘状ニードルにより閉鎖され、第2の位置へ駆動されると解放されるようになっていることを特徴とする射出成形機用の射出ノズル。
  2. 請求項1に記載の射出ノズルにおいて、傘状ニードルは弁部と軸部とからなり、前記弁部には前記溶融樹脂流路の内壁に液密的あるいは気密的に接してシール作用を奏するランド部と、溶融樹脂の流路を確保する切欠あるいは透孔とが設けられ、前記軸部は前記弁部から前記加熱シリンダの方向に延びるように形成されていることを特徴とする射出成形機用の射出ノズル。
  3. 請求項2に記載の射出ノズルにおいて、前記傘状ニードルは、その軸部が前記ノズル本体の軸心に形成されているガイド孔により案内され、
    前記棒状ニードルは、前記傘状ニードルの軸心に前記弁部と軸部とにわたって形成されているガイド孔により案内されるようになっていることを特徴とする射出成形機用の射出ノズル。
  4. 請求項1〜3のいずれかの項に記載の射出ノズルにおいて、前記ノズル本体には前記棒状ニードルに結合される操作するレバーが挿入される第1の操作レバー取付用の穴と、前記傘状ニードルに結合される操作するレバーが挿入される第2の操作レバー取付用の穴とが設けられ、これらの第1、2の操作レバー取付用の穴は前記加熱シリンダ寄りで軸方向には所定の間隔をおいて、円周方向には180度の間隔をおいて設けられていることを特徴とする射出成形機用の射出ノズル。
  5. 請求項1〜4のいずれかの項に記載の射出ノズルにおいて、前記ノズル部の、前記傘状ニードルの下流側は大径の樹脂溜となり、該樹脂溜は前記射出孔に向けてテーパ状に絞られていることを特徴とする射出成形機用の射出ノズル。
  6. 請求項1〜5のいずれかの項に記載の射出ノズルにおいて、前記棒状ニードルと傘状ニードルを駆動する駆動手段は、互いに独立していることを特徴とする射出成形機用の射出ノズル。
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