図1は、本発明の実施例1に係る摩擦係合装置の軸方向概略断面図、図2は、本発明の実施例1に係る摩擦係合装置における時間と温度、仕事及びタービン回転との関係を示す線図、図3は、本発明の実施例1に係る摩擦係合装置が適用された車両用の自動変速機の一例を示す骨子図、図4は、本発明の実施例1に係る摩擦係合装置が適用されるセンターデファレンシャルの一例を示す骨子図、図5は、本発明の実施例1に係る摩擦係合装置が適用される左右駆動力配分機構付デファレンシャルの一例を示す骨子図である。
実施例1に係る摩擦係合装置1は、動力の伝達経路中に設けられ、複数のセパレータプレート2と複数のフリクションプレート3との係合、離脱を行うものであり、ここでは、図3に示すように、自動変速機50に適用した場合で説明するが、この形式の自動変速機に限らず、種々の装置の摩擦係合装置として適用することができる。
自動変速機50は、自動変速機50内に摩擦係合装置として設けられる複数のクラッチと、変速比の異なる複数の歯車を組み合わせて構成される。このような自動変速機50の場合、駆動源としての内燃機関の回転を車輪に伝達する際に、適宜クラッチを作動させることにより歯車による自動変速機内での伝達経路を変化させることができ、自動変速機に入力される回転数と自動変速機から出力される回転数との回転比を変化させることができる。これにより、変速をすることができる。
具体的には、この自動変速機50は、図3に示すように、トルクコンバータ52、変速装置53を備えており、走行用の駆動源として内燃機関にて構成されるエンジン51の出力が、流体式伝動装置として機能するトルクコンバータ52、変速装置53、図示しない差動歯車装置、一対の車軸などを介して左右の駆動輪に伝達されるようになっている。
上記トルクコンバータ52は、エンジン51のクランク軸に連結されたポンプ翼車52p、変速装置53の入力軸54に連結されたタービン翼車52t、および一方向クラッチを介してハウジングケース55に連結されたステータ翼車52sを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それらのポンプ翼車52pおよびタービン翼車52tの間には、ロックアップクラッチ56が設けられており、ロックアップクラッチ56が係合されるとポンプ翼車52pおよびタービン翼車52tが一体的に回転させられるようになっている。
変速装置53は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置57を主体として構成されている第1変速部58と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置59およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置60を主体として構成されている第2変速部61とを同軸線上に有し、入力軸54の回転を変速して出力歯車62から出力する。入力軸54は、入力部材に相当するもので、前記トルクコンバータ52のタービン翼車52tと一体的に回転させられているタービン軸であり、出力歯車62は出力部材に相当するもので、カウンタ軸を介して或いは直接的に差動歯車装置と噛み合い、左右の駆動輪を回転駆動させる。なお、このトルクコンバータ52及び変速装置53は、中心線に対して略対称的に構成されており、図3では中心線の下半分が省略されている。
上記第1変速部58を構成している第1遊星歯車装置57は、サンギヤS1、キャリヤCA1、およびリングギヤR1の3つの回転要素を備えており、サンギヤS1が入力軸54に連結されて回転駆動させられると共に、リングギヤR1が第3ブレーキB3を介して選択的に非回転部材であるハウジングケース55に連結されることにより、キャリヤCA1が中間出力部材として入力軸54に対して減速回転させられて出力する。また、第2変速部61を構成している第2遊星歯車装置59および第3遊星歯車装置60は、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1乃至RM4が構成されており、具体的には、第3遊星歯車装置60のサンギヤS3によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置59のリングギヤR2および第3遊星歯車装置60のリングギヤR3が互いに連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置59のキャリヤCA2および第3遊星歯車装置60のキャリヤCA3が互いに連結されて第3回転要素RM3が構成され、第2遊星歯車装置59のサンギヤS2によって第4回転要素RM4が構成されている。上記第2遊星歯車装置59および第3遊星歯車装置60は、キャリヤCA2およびキャリヤCA3が共通の部材で構成されていると共に、リングギヤR2およびリングギヤR3が共通の部材にて構成されており、且つ第2遊星歯車装置59のピニオンギヤが第3遊星歯車装置60の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニヨ式の遊星歯車列とされている。
そして、第1回転要素RM1(サンギヤS3)はブレーキB1によって選択的にハウジングケース55に連結されて回転停止させられ、第2回転要素RM2(リングギヤR2、R3)は第2ブレーキB2によって選択的にハウジングケース55に連結されて回転停止させられ、第4回転要素RM4(サンギヤS2)は第1クラッチC1を介して選択的に前記入力軸54に連結され、第2回転要素RM2(リングギヤR2、R3)は第2クラッチC2を介して選択的に入力軸54に連結され、第1回転要素RM1(サンギヤS3)は中間出力部材である第1遊星歯車装置57のキャリヤCA1に一体的に連結され、第3回転要素RM3(キャリヤCA2、CA3)は前記出力歯車62に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。第1ブレーキB1乃至第3ブレーキB3、第1クラッチC1、第2クラッチC2は、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる多板式の油圧式摩擦係合装置として、図1に示すような摩擦係合装置1により構成され、これらのブレーキおよびクラッチの係合解放状態が切り換えられることにより、前進6段および後進1段の各変速段が成立させられる。本実施例の自動変速機50は、2つのクラッチC1、C2および3つのブレーキB1乃至B3のうち何れか2つの係合によって前進6段の多段変速機が達成される。
摩擦係合装置1は、図1に示すように、回転軸線Cの軸方向に沿って交互に設けられる複数のセパレータプレート2と複数のフリクションプレート3とを押圧力発生手段としての押圧力発生部4が発生させる押圧力によって接触させることで生じる摩擦力により、セパレータプレート2とフリクションプレート3とを係合可能とするものである。なお、以下の説明では、摩擦係合装置1は、回転軸線Cに対してほぼ対称になるように構成されることから、図1には回転軸線Cを中心として一方側のみを図示し、特に断りのない限り、当該一方側のみを説明し、他方側の説明はできるだけ省略する。また、以下の説明では、摩擦係合装置1をクラッチに適用する場合で説明し、摩擦係合装置1をブレーキに適用する場合の説明はできるだけ省略する。
具体的には、摩擦係合装置1は、複数のセパレータプレート2と、複数のフリクションプレート3と、押圧力発生手段としての押圧力発生部4と、インナシャフトとしての第1回転軸5(例えば、入力軸側として設定する)と、アウタシャフトとしての第2回転軸6(例えば、出力軸側として設定する)を備える。なお、この摩擦係合装置1では、第1回転軸5を出力軸側とし、第2回転軸6を入力軸側として設定してもよい。
摩擦係合装置1は、第1回転軸5と第2回転軸6とが、同軸上で相互に回動自由となるように設けられ、この第1回転軸5と第2回転軸6との間で回転トルクの接続又は切り離し操作を行う。第1回転軸5は、円柱状に形成される一方、第2回転軸6は、円筒状に形成される。そして、第1回転軸5と第2回転軸6とは、第1回転軸5が第2回転軸6内に挿入されるようにして同軸上に設けられる。そして、第1回転軸5は、その外周面に回転軸線Cの軸方向に沿ってスプライン溝5aが設けられる。このスプライン溝5aは、第1回転軸5の外周面の周方向に沿って複数本設けられる。同様に、第2回転軸6は、その内周面に回転軸線Cの軸方向に沿って複数のスプライン溝6aが設けられ、このスプライン溝6aは、第2回転軸6の内周面の周方向に沿って複数本設けられる。また、第2回転軸6は、軸方向の一端面が隔壁6bにより閉鎖されており、この隔壁6bの内面側に円環状の凹部6cが形成されている。
なお、この摩擦係合装置1は、上述のクラッチC1、C2(図3参照)に適用される場合、第2回転軸6が非回転部材としてのハウジングケース55(図3参照)に対して相対回転可能に設けられる一方、上述のブレーキB1乃至B3(図3参照)に適用される場合、第2回転軸6が非回転部材としてのハウジングケース55に固定的又は一体的に設けられることで、ハウジングケース55に対して相対回転不能に設けられる。
セパレータプレート2及びフリクションプレート3は、ともに円環状のプレート材として形成される。そして、複数のセパレータプレート2と複数のフリクションプレート3とは、第1回転軸5の径方向外周側、かつ、第2回転軸6の径方向内周側に設けられる。すなわち、第1回転軸5と第2回転軸6とは、第1回転軸5の径方向外周面と第2回転軸6の径方向内周面とにより区画される環状の空間に設けられる。各セパレータプレート2は、外周部に設けられるスプライン爪が第2回転軸6の各スプライン溝6aにスプライン嵌合されることで、この第2回転軸6に対して回転軸線Cの軸方向に沿って移動可能、かつ、相対回転不能に設けられる。同様に、各フリクションプレート3は、内周部に設けられるスプライン爪が第1回転軸5の各スプライン溝5aにスプライン嵌合されることで、この第1回転軸5に対して回転軸線Cの軸方向に沿って移動可能、かつ、相対回転不能に設けられる。なお、各フリクションプレート3の摩擦材料として、例えばペーパ、セミメタリック、焼結合金、コルク等を使用することができる。
複数のセパレータプレート2、フリクションプレート3は、回転軸線Cの軸方向に沿って交互に設けられている。本実施例の摩擦係合装置1は、図中左側から順に第1セパレータプレート21、第2セパレータプレート22、第3セパレータプレート23及び第4セパレータプレート24の合計4枚のセパレータプレート2を有すると共に、図中左側から順に第1フリクションプレート31、第2フリクションプレート32、第3フリクションプレート33及び第4フリクションプレート34の合計4枚のフリクションプレート3を有する。この摩擦係合装置1では、第1フリクションプレート31と第4フリクションプレート34とがそれぞれ回転軸線Cの軸方向両側に位置して、その間で第1セパレータプレート21、第2セパレータプレート22、第3セパレータプレート23及び第4セパレータプレート24と、第2フリクションプレート32、第3フリクションプレート33とが交互に設けられている。なお、以下の説明では、複数枚のセパレータプレートを特に区別する必要がない場合、単に「セパレータプレート2」と略記する。同様に、複数枚のフリクションプレートを特に区別する必要がない場合、単に「フリクションプレート3」と略記する。
本実施例の摩擦係合装置1は、回転軸線Cの軸方向に沿って交互に設けられる複数のセパレータプレート2及びフリクションプレート3のうちの両側に位置する第1フリクションプレート31と第4フリクションプレート34とに隣接するように、それぞれ端部プレート7a、7bが設けられる。さらに、摩擦係合装置1は、図中左側に位置する端部プレート7aに隣接するように押圧力発生部4のピストン41が設けられる一方、図中右側に位置する端部プレート7bに隣接するようにスナップリング8が設けられる。
端部プレート7a、7bは、セパレータプレート2とほぼ同径、同軸の円環状のプレート材として形成され、外周部に設けられるスプライン爪が第2回転軸6の各スプライン溝6aにスプライン嵌合されることで、この第2回転軸6に対して回転軸線Cの軸方向に沿って移動可能、かつ、相対回転不能に設けられる。端部プレート7aは、第1セパレータプレート21側にて、一方の面が第1フリクションプレート31に接するように設けられると共に、他方の面に押圧力発生部4のピストン41が接するように設けられる。端部プレート7bは、第4セパレータプレート24側にて、一方の面が第4フリクションプレート34に接するように設けられると共に、他方の面にスナップリング8が接するように設けられる。すなわち、この端部プレート7a、7bは、複数のセパレータプレート2、フリクションプレート3を挟み込むように設けられる。また、端部プレート7aは、押圧力発生部4が発生させる押圧力が作用した際に、ピストン41により直接接触して押圧される部材であるため、フリクションプレート3などに比べて相対的に厚く所定の厚みを有して形成されており、端部プレート7bは、押圧力が作用した際に、押圧力を受ける最後の部材であるため、同様に、相対的に厚く所定の厚みを有して形成される。したがって、この端部プレート7a、7bが複数のセパレータプレート2、フリクションプレート3を挟み込むように設けられることから、後述する押圧力発生部4が発生させる押圧力が各セパレータプレート2、フリクションプレート3に作用した際に、この複数のセパレータプレート2、フリクションプレート3の過度な変形(撓み)を抑制することができる。
そして、スナップリング8は、端部プレート7bなどと同軸のリング状に形成される。このスナップリング8は、端部プレート7bの他方の面(第4フリクションプレート34に接していない側の面)に接触するようにして第2回転軸6の内周面に固定されている。したがって、次に説明する押圧力発生部4が発生させる押圧力が各セパレータプレート2、フリクションプレート3に作用した際に、押圧力発生部4のピストン41側から離間する方向へのセパレータプレート2、フリクションプレート3の移動を規制することができるので、この結果、前記押圧力により複数のセパレータプレート2とフリクションプレート3とを互いに接触、係合させることができる。
押圧力発生部4は、上述したピストン41と、油室42と、油圧調整機構43とを備える。ピストン41は、環筒状に形成され、軸方向の一端部が上述したように第1フリクションプレート31の一方の面に接するように設けられ一方、他端部が閉端すると共に第2回転軸6の隔壁6bに形成された凹部6cに嵌め込まれるようにして設けられる。このピストン41は、外周側にてOリング44を介して凹部6cの外周面に摺動可能に、内周側にてOリング45を介して凹部6cの内周面に摺動可能に嵌め入れられている。上述した4枚のセパレータプレート2及びフリクションプレート3は、それぞれ、第1セパレータプレート21、第1フリクションプレート31が最もピストン41に近接した位置となる一方、第4セパレータプレート24、第4フリクションプレート34が最もピストン41に離間した位置となる。
そして、油室42は、この凹部6cの壁面とピストン41により囲われた円環状の油密な空間として形成される。つまり、ピストン41の軸方向一端側に油室42が設けられる一方で、ピストン41の軸方向一端側に摩擦係合要素として、複数のセパレータプレート2、フリクションプレート3等が設けられる。油圧調整機構43は、不図示の油路を介して油室42へ作動油としてのオイルを供給すると共に、このオイルの供給量を制御することで油室42内の油圧を調整する。
上記のように構成される摩擦係合装置1は、押圧力発生部4の油圧調整機構43が油室42へのオイルの供給量を増加することで油室42内の油圧が上昇し、これにより、ピストン41が油室42内の油圧により隔壁6bから離間する方向、すなわち、セパレータプレート2、フリクションプレート3の方向に押圧され、このセパレータプレート2、フリクションプレート3に向かって移動する。この押圧力がピストン41、端部プレート7aを介して各セパレータプレート2、フリクションプレート3に作用することで、複数のセパレータプレート2とフリクションプレート3とは、回転軸線Cの軸方向に沿って移動する。ここで、端部プレート7bに隣接するようにスナップリング8が設けられていることから、このスナップリング8により押圧力発生部4のピストン41側から離間する方向へのセパレータプレート2、フリクションプレート3の移動が規制されているので、この結果、摩擦係合装置1は、押圧力発生部4が発生させる押圧力によって複数のセパレータプレート2と複数のフリクションプレート3とを接触、係合させることで生じる摩擦力により、例えば、第1回転軸5から第2回転軸6に動力の伝達を行うことができる。このとき、入力軸回転数と出力軸回転数との違いにより、セパレータプレート2とフリクションプレート3は相対すべりを発生し、その時の摩擦によって回転数が等しくなり、相対的なすべりがなくなるまでセパレータプレート2とフリクションプレート3とは発熱する。
そして、油圧調整機構43が油室42へのオイルの供給量を減少させることで油室42内の油圧が下降し、各セパレータプレート2、フリクションプレート3に作用する押圧力がなくなり、これにより、複数のセパレータプレート2とフリクションプレート3との係合が解除される。この結果、上述したように、図3で説明した自動変速機50は、2つのクラッチC1、C2および3つのブレーキB1乃至B3のうち何れか2つの係合によって前進6段の多段変速機が達成される。
ところで、上述のような摩擦係合装置1では、それぞれのセパレータプレート2とフリクションプレート3とが全て同じ押圧力で係合されれば、各セパレータプレート2の温度は同じ温度になるはずであるが、実際には、各プレート間には摺動抵抗などが作用し、これにより、押圧力発生部4に近接したセパレータプレート2の方がより大きな押圧力が作用する傾向にある。このため、係合時に発生する熱エネルギーによるセパレータプレート2の温度上昇は、押圧力発生部4に近い第1セパレータプレート21ほど大きくなる一方、押圧力発生部4から遠い第4セパレータプレート24ほど小さくなるおそれがある。すると、このセパレータプレート2の温度依存性により摩擦係合要素における摩擦特性にバラツキが発生するおそれがある。
そこで、摩擦係合装置1では、図1に示すように、複数のセパレータプレート2は、押圧力発生部4のピストン41に近接する側のセパレータプレート2の体積をピストン41から離間した側のセパレータプレート2の体積より大きく設定することで、この複数のセパレータプレート2の温度依存性を低減し、摩擦係合要素における摩擦特性のバラツキの低減を図っている。
具体的には、複数のセパレータプレート2は、押圧力発生部4のピストン41側に向かうにしたがって第4セパレータプレート24、第3セパレータプレート23、第2セパレータプレート22、第1セパレータプレート21の順でその体積が大きくなるように設定されている。本実施例では、複数のセパレータプレート2は、第4セパレータプレート24の厚みt4、第3セパレータプレート23の厚みt3、第2セパレータプレート22の厚みt2、第1セパレータプレート21の厚みt1の順でその厚みを厚くしている。すなわち、本実施例の複数のセパレータプレート2は、その厚みを[t1>t2>t3>t4]に設定することで、第4セパレータプレート24、第3セパレータプレート23、第2セパレータプレート22、第1セパレータプレート21の順でその体積を大きくしている。これにより、複数のセパレータプレート2において、その熱容量は、第4セパレータプレート24、第3セパレータプレート23、第2セパレータプレート22、第1セパレータプレート21の順で大きくなる。
図2は、この摩擦係合装置1における時間と温度、仕事及びタービン回転との関係を示す線図である。本図は、アップシフト変速時の摩擦係合要素による仕事と各セパレータプレート2の温度特性を表している。本図中の「1」から「4」の数字は、「1」が押圧力発生部4のピストン41に最も近接した位置の第1セパレータプレート21の特性を示すのに対して、「4」がピストン41から最も離間した位置の第4セパレータプレート24の特性を示す。すなわち、摩擦係合装置1では、上述したように、各セパレータプレート2において、押圧力発生部4のピストン41に近接した第1セパレータプレート21の方がより大きな押圧力が作用する傾向にある。しかしながら、この摩擦係合装置1では、複数のセパレータプレート2の厚みを[t1>t2>t3>t4]に設定することで、第4セパレータプレート24、第3セパレータプレート23、第2セパレータプレート22、第1セパレータプレート21の順でその体積を大きくし、第4セパレータプレート24、第3セパレータプレート23、第2セパレータプレート22、第1セパレータプレート21の順で熱容量を増加させていることから、第1セパレータプレート21の温度勾配が相対的に小さくなる(言い換えれば、第4セパレータプレート24の温度勾配が相対的に大きくなる。)。このため、係合時に発生する熱エネルギーによる第1セパレータプレート21、第2セパレータプレート22、第3セパレータプレート23及び第4セパレータプレート24の温度上昇特性をほぼ同一化することができる。つまり、押圧力が作用するピストン41に近い第1セパレータプレート21とピストン41から遠い第4セパレータプレート24との温度がほぼ等しい温度となる。この結果、この複数のセパレータプレート2の温度依存性を低減することができ、摩擦係合要素における摩擦特性のバラツキを低減することができる。また、押圧力発生部4のピストン41に近い一部のセパレータプレート2の温度上昇が大きくなり、他のセパレータプレート2と比べて相対的に過熱されることが抑制されることから、当該一部のセパレータプレート2に焼き付きが発生することも抑制することができるので、耐久性も向上することができる。
なお、第1セパレータプレート21の厚みt1、第2セパレータプレート22の厚みt2、第3セパレータプレート23の厚みt3及び第4セパレータプレート24の厚みt4は、より詳細には、係合時に発生する熱エネルギー(仕事)に応じた適正な熱容量となるように設定すればよい。すなわち、例えば、第1セパレータプレート21の厚みt1、第2セパレータプレート22の厚みt2を従来のセパレータプレートよりも厚くする一方で、第3セパレータプレート23の厚みt3、第4セパレータプレート24の厚みt4を、適正な強度が確保される範囲で薄くすればよい。これにより、複数のセパレータプレート2のトータルの厚みを抑制、あるいは低減することができるので、この摩擦係合装置1をよりコンパクトにすることができる。
また、上記の摩擦係合装置1では、複数のセパレータプレート2の厚みを段階的に変えて体積を異ならせることで、例えば、複数のセパレータプレート2の径の大きさを段階的に変えることで体積を異ならせるような場合と比較して、第1回転軸5の外径や第2回転軸6の内径を各セパレータプレート2の径に応じて段形的に変える必要もないので、この摩擦係合装置1を容易に製造することができると共に、摩擦係合装置1の外形が大きくなってしまうことも防止することができる。
また、本実施例では、複数のセパレータプレート2は、押圧力発生部4のピストン41に近接するにしたがって1枚ごとに軸方向の厚みが厚く設定されているため、第1セパレータプレート21、第2セパレータプレート22、第3セパレータプレート23及び第4セパレータプレート24の温度上昇特性の相違をほぼなくすことができるので、摩擦特性のバラツキを極めて小さくすることができる。
以上で説明した本発明の実施例に係る摩擦係合装置1によれば、軸方向に沿って交互に設けられる複数のセパレータプレート2と複数のフリクションプレート3に押圧力発生部4が発生させる押圧力を作用させることで、摩擦力によりこのセパレータプレート2とフリクションプレート3とを係合可能な摩擦係合装置1において、複数のセパレータプレート2は、押圧力が作用する側のセパレータプレート2が他のセパレータプレート2より体積が大きく設定される。
したがって、少なくとも押圧力が作用する側のセパレータプレート2の体積を他のセパレータプレート2の体積より大きくすることで、温度上昇しやすいセパレータプレート2の熱容量が大きくなるので、複数のセパレータプレート2の温度を平均化することができ、この結果、複数のセパレータプレート2の温度依存性を低減することができ、摩擦係合要素における摩擦特性のバラツキを低減することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る摩擦係合装置1によれば、押圧力発生部4は、オイルが供給される油室42と、この油室42内の油圧に応じた押圧力をセパレータプレート2とフリクションプレート3とに作用させるピストン41と、油室42内の油圧を調整する油圧調整機構43とを有し、複数のセパレータプレート2は、ピストン41に近接する側のセパレータプレート2がピストン41から離間した側のセパレータプレート2より体積が大きく設定される。したがって、複数のセパレータプレート2は、温度上昇しやすいピストン41側に向かうにしたがってクラッチプレート2の体積を大きくすることで、複数のクラッチプレート2の各熱容量がピストン41側に向かうにしたがって大きくなるので、複数のクラッチプレート2の温度をほぼ均一にすることができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る摩擦係合装置1によれば、複数のセパレータプレート2は、押圧力発生部4のピストン41に近接する側のセパレータプレート2が該押圧力発生部4のピストン41から離間した側のセパレータプレート2より軸方向の厚みが厚く設定される。したがって、複数のセパレータプレート2の厚みを段階的に変えることでセパレータプレート2の体積、すなわち、熱容量を異ならせることができるので、この摩擦係合装置1の製造を容易にすることができると共に、摩擦係合装置1の外形が大きくなってしまうことも防止することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る摩擦係合装置1によれば、複数のセパレータプレート2は、前記押圧力が作用する側に向かって、すなわち、押圧力発生部4のピストン41に近接するにしたがって1枚ごとに軸方向の厚みが設定される。したがって、複数のセパレータプレート2における温度上昇特性の相違をほぼなくすことができるので、摩擦特性のバラツキを極めて小さくすることができる。
以上で説明した本発明の実施例に係る自動変速機50によれば、車両が有するエンジン51から駆動輪までの動力の伝達経路中に設けられ、エンジン51の回転速度を車速に応じて自動的に変速して伝達可能な自動変速機50において、上述した摩擦係合装置1が適用される。したがって、摩擦係合装置1(第1ブレーキB1乃至第3ブレーキB3、第1クラッチC1、第2クラッチC2)において、複数のセパレータプレート2の温度依存性を低減することができ、摩擦係合要素における摩擦特性のバラツキを低減することができることから、この自動変速機50の変速制御性を向上することができる。
なお、上述した本発明の実施例に係る摩擦係合装置は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、摩擦係合装置1は、図3に示す自動変速機50に適用した場合で説明したが、この形式の自動変速機に限らず、種々の装置の摩擦係合装置として適用することができる。
この摩擦係合装置1は、例えば、図4に示すように、車両70が有する駆動源としての内燃機関にて構成されるエンジン71から駆動輪までの動力の伝達経路中に設けられ、例えば、車両70の四輪駆動状態において前後の駆動輪のトルク配分を制御する前後輪駆動力配分装置としてのセンターデファレンシャル72に適用してもよい。ここでは、このセンターデファレンシャル72は、リアルタイム式四輪駆動の車両70に適用した場合の例を示す。このセンターデファレンシャル72は、車両70の四輪駆動状態と二輪駆動状態とを選択したり、或いはその四輪駆動状態において前輪75と後輪78との間の動力配分率を制御したりするためにプロペラシャフト76に直列に配設される。
すなわち、エンジン71からの駆動力は、トランスミッションを備えたトランスアクスル73を経てトランスファ74に伝達され、ここで前輪側に分配された駆動力は、フロントデファレンシャル(不図示)を経て左右の前輪75に伝達され、また後輪側に分配された駆動力は、途中にセンターデファレンシャル72を設けたプロペラシャフト76およびリヤデファレンシャル77を経て左右の後輪78に伝達される。そして、例えば、センターデファレンシャル72に適用される摩擦係合装置1のアウタシャフトとしての第2回転軸6(図1参照)は、プロペラシャフト76のエンジン71側となる入力軸76aの後端に同軸的にボルト止めされ、インナシャフトとしての第1回転軸5は、後輪78側となる出力軸76bの前端が連結されている。
摩擦係合装置1を適用したセンターデファレンシャル72を、第2回転軸6が前輪75側で第1回転軸5が後輪70側となるように配置して、エンジン71により駆動される前輪75に後輪78を連結すれば、通常の作動状態でぬかるみ等の悪路で前輪75がスリップした場合には第2回転軸6の回転数が第1回転軸5の回転数よりも大きくなり、センターデファレンシャル72による伝達トルクが増大してエンジン71から後輪78への駆動力の配分比率が増大するので、ぬかるみ等の悪路から脱出するためのトラクション性能が高くなる。またブレーキ制御デバイスが作動して第2回転軸6の回転数が第1回転軸5の回転数よりも小さくなった場合は、第1回転軸5から第2回転軸6へトルク伝達がなされることはないので、ブレーキ制御デバイスの作動が妨げられることはない。
そして、図4で説明した本発明の実施例に係るセンターデファレンシャル72によれば、車両70が有するエンジン71から駆動輪までの動力の伝達経路中に設けられ、前後の駆動輪75、78のトルク配分を制御するセンターデファレンシャル72において、上述した摩擦係合装置1が適用されることから、この摩擦係合装置1において、複数のセパレータプレート2の温度依存性を低減することができ、摩擦係合要素における摩擦特性のバラツキを低減することができることから、このセンターデファレンシャル72におけるトルク配分の制御性を向上することができる。
また、摩擦係合装置1は、例えば、図5に示すように、車両が有する駆動源としての内燃機関にて構成される駆動源としての内燃機関にて構成されるエンジンから駆動輪84、85までの動力の伝達経路中に設けられ、例えば、車両旋回時において左右の駆動輪84、85のトルク配分を制御する左右輪駆動力配分装置としての左右駆動力配分機構付デファレンシャル80に適用してもよい。
左右駆動力配分機構付デファレンシャル80は、駆動源としての内燃機関にて構成されるエンジン(例えば、図4に示すエンジン71)によりセンターデファレンシャル(例えば、図4に示すセンターデファレンシャル72)を介して回転駆動されるプロペラシャフト(例えば、図4に示すプロペラシャフト76)が傘歯車81、82を介して差動装置83のリングギヤ83rを回転駆動する。そして、左右駆動力配分機構付デファレンシャル80は、リングギヤ83rに伝達されたトルクを、左輪84に連結されたキャリヤ83cおよび右輪85に連結されたサンギヤ83sに均等に分配し、同じ方向へ回転駆動する。
差動装置83のリングギヤ83rには、連結部材86を介して変速機構87が連結されている。変速機構87は、ギヤ比が異なる一対の遊星歯車装置88、89を組み合わせたもので、差動装置83の右側、すなわちサンギヤ83sに連結された駆動輪(右輪85)側に隣接して同軸に配設されている。一対の遊星歯車装置88、89のキャリヤ88c、89cは、互いに一体的に連結され、リングギヤ88r、89rは、互いに一体的に連結され、遊星歯車装置89のサンギヤ89sは、出力部材90に一体的に連結され、遊星歯車装置88のサンギヤ88sは、連結部材86に一体的に連結されている。そして、上記リングギヤ88rおよび89rは、中間部材91を介して切替ブレーキB21によって選択的に非回転部材としてのハウジングケース92に連結されて回転停止させられ、反力受け要素として機能させられるようになっており、リングギヤ83rと一体回転させられるサンギヤ88sの回転は、遊星歯車装置88のギヤ比に応じて減速されてキャリヤ88cからキャリヤ89cに伝達され、そのキャリヤ89cの回転は、遊星歯車装置89のギヤ比に応じて増速されてサンギヤ89sから出力部材90に伝達される。
出力部材90は、第1クラッチ(左クラッチ)C21を介して差動装置83のキャリヤ83cに連結されるとともに、第2クラッチ(右クラッチ)C22を介してサンギヤ83sに連結されるようになっている。これらの切替ブレーキB21、第1クラッチC21、第2クラッチC22は、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる多板式の油圧式摩擦係合装置として、図1で説明した摩擦係合装置1により構成され、これらのクラッチの係合解放状態が切り換えられることともに、必要に応じて油圧制御が行われることによりスリップ係合時の伝達トルクが制御される。そして、例えば中低速走行中の右旋回時に第1クラッチC21を係合させて外側の左輪84の駆動力を増加させたり、中低速走行中の左旋回時に第2クラッチC22を係合させて外側の右輪85の駆動力を増加させたりすることにより、旋回性能を向上させることができる。また、高速走行中の右旋回時に第2クラッチC22を係合させて内側の右輪85の駆動力を増加させたり、高速走行中の左旋回時に第1クラッチC21を係合させて内側の左輪84の駆動力を増加させたりすることにより、走行安定性を向上させることができる。
そして、図5で説明した本発明の実施例に係る左右駆動力配分機構付デファレンシャル80によれば、車両が有する駆動源から駆動輪84、85までの動力の伝達経路中に設けられ、左右の駆動輪84、85のトルク配分を制御する左右駆動力配分機構付デファレンシャル80において、上述した摩擦係合装置1が適用されることから、この摩擦係合装置1(切替ブレーキB21、第1クラッチC21、第2クラッチC22)において、複数のセパレータプレート2の温度依存性を低減することができ、摩擦係合要素における摩擦特性のバラツキを低減することができることから、この左右駆動力配分機構付デファレンシャル80におけるトルク配分の制御性を向上することができる。
図8は、本発明の実施例3に係る摩擦係合装置の軸方向概略断面図である。実施例3に係る摩擦係合装置は、実施例1に係る摩擦係合装置と略同様の構成であるが、潤滑油供給手段を備える点で実施例1に係る摩擦係合装置とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
実施例3に係る内燃機関としての摩擦係合装置301は、図8に示すように、潤滑油供給手段としての潤滑油供給部309を備える。潤滑油供給部309は、複数のセパレータプレート2やフリクションプレート3に潤滑油としてオイルを供給するものであり、油路310と、複数の油穴315を有する。複数の油穴315は、第1回転軸305の軸方向に沿って、図中左側から順に、第1油穴311、第2油穴312、第3油穴313、第4油穴314の合計4つが設けられる。なお、以下の説明では、複数枚の油穴を特に区別する必要がない場合、単に「油穴315」と略記する。
油路310は、第1回転軸305の内部に回転軸線Cの軸方向に沿って延設されており、一端部が不図示のオイル貯留部や供給部に接続されている。第1油穴311、第2油穴312、第3油穴313、第4油穴314は、第1セパレータプレート21、第2セパレータプレート22、第3セパレータプレート23及び第4セパレータプレート24にそれぞれ対応して形成されている。複数の油穴315は、それぞれ第1回転軸305の径方向に外周面から油路310まで延設され、一端が油路310に連通すると共に他端がセパレータプレート2側に開口する。油路310や複数の油穴315を介して供給されるオイルは、セパレータプレート2やフリクションプレート3にて、油膜を形成して各部品間の潤滑を促進すると共に部品の酸化を防止するなどして潤滑作用を奏するとともに、セパレータプレート2、フリクションプレート3から摩擦熱等の熱を吸収して冷却する。
そして、この摩擦係合装置301では、第1油穴311、第2油穴312、第3油穴313、第4油穴314は、押圧力発生部4のピストン41に近接する側の第1油穴311がピストン41から離間した側の第4油穴314より開口面積が大きく設定される。すなわち、その厚みが[t1>t2>t3>t4]に設定される第1セパレータプレート21、第2セパレータプレート22、第3セパレータプレート23、第4セパレータプレート24に対応して、複数の油穴315は、開口面積が[第1油穴311の開口面積>第2油穴312の開口面積>第3油穴313の開口面積>第4油穴314の開口面積]となるように設定されている。これにより、例えば、流入できる開口面積が小さい第4油穴314から第4セパレータプレート24に供給されるオイルの供給量が相対的に少なくなる一方で、開口面積が大きい第1油穴311から第1セパレータプレート21に供給されるオイルの供給量が相対的に多くなる。そして、上述したように複数のセパレータプレート2において、その熱容量は、第4セパレータプレート24、第3セパレータプレート23、第2セパレータプレート22、第1セパレータプレート21の順で大きくなっていることから、熱容量が大きい第1セパレータプレート21ほどオイルの供給量が多くなる一方で、熱容量が小さい第4セパレータプレート24ほどオイルの供給量が少なくなる。この結果、オイルにより各セパレータプレート2が冷却される際の温度の低下度合を第1セパレータプレート21、第2セパレータプレート22、第3セパレータプレート23及び第4セパレータプレート24でほぼ同一化することができる。
以上で説明した本発明の実施例に係る摩擦係合装置301によれば、少なくとも押圧力が作用する側のセパレータプレート2の体積を他のセパレータプレート2の体積より大きくすることで、温度上昇しやすいセパレータプレート2の熱容量が大きくなるので、複数のセパレータプレート2の温度を平均化することができ、この結果、複数のセパレータプレート2の温度依存性を低減することができ、摩擦係合要素における摩擦特性のバラツキを低減することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る摩擦係合装置301によれば、複数のセパレータプレート2にオイルを供給すると共に、押圧力が作用する部分、すなわち、押圧力発生部4のピストン41に近接する側のセパレータプレート2への供給量が押圧力発生部4のピストン41から離間した側のセパレータプレート2への供給量より多く設定される潤滑油供給部309を備える。したがって、熱容量が大きいセパレータプレート2ほどオイルの供給量が多くなる一方で、熱容量が小さいセパレータプレート2ほどオイルの供給量が少なくなることから、オイルにより各セパレータプレート2が冷却される際の温度の低下度合を複数のセパレータプレート2間でほぼ同一化することができる。この結果、複数のセパレータプレート2の温度依存性をさらに低減することができ、摩擦係合要素における摩擦特性のバラツキをさらに低減することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係る摩擦係合装置301によれば、潤滑油供給部309は、フリクションプレート3が設けられる第1回転軸305に軸方向に沿って各セパレータプレート2に対応して形成された複数の油穴315を有し、複数の油穴315は、押圧力が作用する部分、すなわち、押圧力発生部4のピストン41に近接する側の油穴315が押圧力発生部4のピストン41から離間した側の油穴315より開口面積が大きく設定される。したがって、流入できる開口面積が小さい油穴315からセパレータプレート2に供給されるオイルの供給量が相対的に少なくなる一方で、開口面積が大きい油穴315からセパレータプレート2に供給されるオイルの供給量が相対的に多くなることから、簡易な構成でピストン41側のセパレータプレート2に供給されるオイルの供給量をピストン41から離間した側のセパレータプレート2に供給されるオイルの供給量より多く設定することができる。
なお、上述した本発明の実施例に係る摩擦係合装置、自動変速機、前後輪駆動力分配装置及び左右輪駆動力配分装置は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、フリクションプレートが第1回転軸5に、セパレータプレートが第2回転軸6に設けられるものとして説明したが、フリクションプレートを第2回転軸6に、セパレータプレートを第1回転軸5に設けるようにしてもよい。
また、以上の説明では、押圧力発生手段は油圧により押圧力を発生させる、油圧式の押圧力発生手段であるものとして説明したが、これに限らず、例えば、電磁式の押圧力発生手段を用いるようにしてもよい。
また、以上の説明では、複数のセパレータプレートの厚みを変えることで各セパレータプレートの体積を異ならせるものとして説明したが、各セパレータプレートの径を変えることで、体積を異ならせるようにしてもよい。