JP2008291368A - 表面処理液の制御方法および表面処理システム - Google Patents

表面処理液の制御方法および表面処理システム Download PDF

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Abstract

【課題】電気的手法によってメッキやメッキ前処理を施す場合に、メッキ液やメッキ前処理液を適正に管理・制御するための表面処理液の制御方法および表面処理システムを提供する。
【解決手段】表面処理に用いるメッキ液の通電量を計測しつつ、メッキ処理により減少した金属材の量に相当する金属塩を該メッキ液に補給するとともに、メッキ処理の電極として不溶性陽極を用いることを特徴とする表面処理液の制御方法、並びに、メッキ槽と金属塩を供給するフィーダーと電極と該メッキ槽内のメッキ液を分析するメッキ薬品濃度分析装置とを備えており、該メッキ薬品濃度分析装置によるメッキ液分析データをフィードバックして、メッキ薬品を補給することを特徴とする表面処理システム。
【選択図】図1

Description

本発明は、表面処理液の制御方法および表面処理システムに関する。さらに詳しくは、電気的手法によってメッキやメッキ前処理を施す場合に、メッキ液やメッキ前処理液を適正に管理・制御するための表面処理液の制御方法および表面処理システムに関するものである。
近年、自動車用エンジンの軽量化のため、アルミ合金製のシリンダブロックが採用されている。この場合、シリンダボアの耐摩耗性を向上させるため、シリンダにはニッケルなどの硬質めっきが一般に施されている。そのメッキ方法としては、ワークを処理液槽に浸漬させて表面処理を行う方法、あるいは、最近では被処理面であるシリンダボアにのみ処理液を導入して、高速で流動させながら表面処理を行う方法などがある。
上記のうち、処理液をポンプにより被処理面に流動させる方法は、メッキを高速で行うことが可能であるとともに、処理液槽などの設備を小型化することができる点では優れている。ところが、高速で処理する場合には、各処理薬品の消費量が著しいため、処理液の濃度管理が困難になるという問題があった。
そこで、表面処理液の自動管理を行うことが好ましく、例えば特開平7−278898号公報記載の方法のように、ニッケルめっき液のpHを測定して炭酸ニッケルの補給をする方法が提案されている。
例えばニッケルめっきにおいては、メッキ処理を連続して行うとニッケルの析出に伴い、メッキ液中のニッケルイオンが減少する。よって、メッキ液中にはスルファミン酸イオンや硫酸イオン等の酸イオンの相対濃度が高くなるため、メッキ液のpH値は徐々に低下してしまう。
しかしながら、pH値の変動は必ずしもニッケルイオン濃度と相関があるわけではなく、図3のグラフに示すように、pH値の低い領域(例えばpH2程度)においては、メッキ処理によりニッケルイオンが減少しているにもかかわらずpH値の変化はほとんど見られない。つまり、低pH値の領域でメッキを行う場合には、pH値を計測することによるメッキ液の管理は、精度が低いという問題点があった。
上記特開平7−278898号公報記載の方法で用いられる陽極は、溶解性ニッケルペレットを充填するため2重パイプ構造となっており、このペレットがメッキ液中に溶出して、メッキ液中にニッケルが補給される。このような方法では、陽極構造が複雑なだけでなく、ニッケルペレットを自動的に補給することが困難であった。
本発明者らは、上記問題点に鑑み、高速処理を行うメッキにおいて、低pH領域においても精度良く自動計測を行い、かつ、迅速で的確なニッケル補給が可能となる表面処理液の制御方法およびその装置を開発すべく、鋭意検討した。
その結果、本発明者らは、表面処理を行うメッキ液の通電量を計測しながら、メッキ処理により減少した金属材の量に相当する金属塩を該メッキ液に補給すること、さらにメッキ処理用の電極として不溶性陽極を用いることによって、かかる問題点が解決されることを見い出した。
本発明は、かかる見地より完成されたものである。
すなわち、本発明は、表面処理に用いるメッキ液の通電量を計測しつつ、メッキ処理により減少した金属材の量に相当する金属塩を該メッキ液に補給するとともに、メッキ処理用の電極として不溶性陽極を用いることを特徴とする表面処理液の制御方法を提供するものである。本発明の方法では、上記金属材としてニッケル、金属塩として炭酸ニッケルを用いることが好適である。そして、炭酸ニッケルの補給量は、メッキ液におけるニッケルの析出効率を含めて決定されることが好ましい。
また、本発明は、メッキ槽と、金属塩を供給するフィーダーと、電極と、該メッキ槽内のメッキ液を分析するメッキ薬品濃度分析装置とを備えており、該メッキ薬品濃度分析装置によるメッキ液分析データをフィードバックして、メッキ薬品を補給することを特徴とする表面処理システムを提供するものである。ここで、 上記メッキ薬品の補給に際しては、上記メッキ薬品濃度分析装置に接続され、かつ、メッキ液通電量により制御されるメッキ薬品補給装置を用いることが好適である。
本発明では、高速処理を行うメッキにおいて、低pH領域においても精度良く自動計測を行い、かつ、ニッケル補給が可能である。
本発明によれば、メッキ通電量の自動計測により、ニッケル減少量が正確に計測可能であり、低pH領域でも運転が可能である。また、不溶性陽極を用いることによって、ニッケルペレットの補給が不要であり、流路が広くなり、流量を多くできる。
また、本発明によれば、リアルタイムで不足薬品を補給できるため、メッキ液管理精度が著しく向上するとともに、ニッケルイオン濃度のコントロール精度を高めることができる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明では、メッキ通電量の自動計測により、ニッケル減少量が正確に計測可能であり、低pH領域でも運転が可能である。また、不溶性陽極を用いることによって、ニッケルペレットの補給が不要であり、流路が広くなり、流量を多くできる。
また、本発明によれば、リアルタイムで不足薬品を補給できるため、メッキ液管理精度が著しく向上する。さらに、本発明によれば、ニッケルイオン濃度のコントロール精度を高めることができる。
本発明の実施の形態について、ニッケルメッキを一例として詳細に説明する。
メッキ処理することによって減少したニッケルの補給方法として、炭酸ニッケル粉末をメッキ液へ溶解させる方法がある。この炭酸ニッケルは、メッキ液に溶解すると炭酸ガスが放出され、ニッケルイオンのみがメッキ液に供給されるので、他のニッケル塩に比べてメッキ液組成の変質や不純物イオンの混入が少ないという利点がある。
ここで、炭酸ニッケルはその溶解度が低いため、ニッケルイオン補給を十分に行うには、メッキ液のpHが低い領域で処理を行う必要がある。すなわち、メッキ処理を連続して行うと、メッキ液中のニッケルイオンが減少するとともにスルファミン酸イオンや硫酸イオンなどの酸イオンの相対濃度が高くなるために、メッキ液のpH値は次第に低下してくる。一方、図3のグラフに示すようにpHの低い領域においては、メッキすることによるpHの変動が極めて小さいため、通常のpH測定法ではメッキ液の自動管理は困難である。
また、炭酸ニッケルをメッキ液に溶解させた場合、pHの変動にはタイムラグが生じる。図4のグラフには、pH1.51のめっき液2リットルに炭酸ニッケル120gを投入した際のメッキ液のpH変動を示した。図4から明らかなように、炭酸ニッケル投入後、pH変動が安定するまでには20分以上かかってしまい、被メッキ物であるワーク(例えばシリンダブロック等)を高速メッキで連続処理するには、pHモニタリングによる自動管理システムは適していない。
本発明の制御方法では、メッキ電源の通電量をモニタリングし、積算通電量から算出した理論ニッケル量を炭酸ニッケル粉末としてメッキ液に補給する。これにより、低pH領域においてもニッケルイオンの減少量を正確に計測できるため、炭酸ニッケル粉末の溶解性の良好な低pH領域におけるメッキ処理が可能となる。
一般に、メッキ処理方法は、電気メッキと無電解メッキとに分けられる。電気的手法によりニッケルなどのメッキ処理を行う場合、メッキにより消費されるイオンの補給には溶解性ペレットが用いられる。この方法では、陽極内に充填されているニッケルペレットが、通電によってメッキ液中にイオンとして溶出することでメッキ液中のニッケルが補われるようになっている。
ニッケルペレットは表面が不導体化する場合があり、そのような場合にはニッケルイオンの溶出が起こらず、メッキ液中のニッケルイオン濃度が減少する不具合が生じる。また、陽極内へペレットを供給する必要があり、自動化ラインにはペレット補給装置を組み込まねばならず、装置が複雑でコストアップとなってしまう。特にシリンダブロックのボア内へめっき液を流動させて高速メッキを行う際には、陽極がメッキ液の流入または流出路となっている。この陽極内に、ニッケルペレットを充填させる構造にすると、メッキ液流路が狭くなってしまうため、メッキ液の流量が少なくなるので高速メッキに好ましくない。
このようなことから、本発明においては、陽極は単純なパイプ形状の不溶性陽極を用いる。陽極材質は特に限定されることなく、通常用いられる材料を用いることができるが、具体的には、例えばステンレスやチタン等の材質を使用すれば良く、さらに、その表面に導電性を向上させるために白金めっき等を施すことがより好ましい。
以下、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施の形態によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
図1に、本発明の制御方法を用いるメッキ処理システムの一例の概略図を示す。
被めっき物であるワーク1(シリンダブロック等)は、ワーク支持台2上へ載置され、上部からエアシリンダーなどによって駆動するシール治具17を抑圧することで、シールおよび固定される。メッキ液はメッキ槽7からポンプ5により圧送され、メッキ液導入管4,更に流路を兼ねてパイプ形状とした電極3を経由して、被処理物であるシリンダボア内まで運ばれる。シリンダボアを通ったメッキ液は、ワーク支持台2内を通過してメッキ液導出管6から補給槽8へ戻される。
補給槽8はメッキ槽7と連通しており、オーバーフローまたは循環ポンプ(図示せず)によってメッキ槽7および補給槽8内のメッキ液が混合される構造となっている。この補給槽8は必要に応じて使用すればよく、補給槽8を用いずメッキ槽7のみからなる構造でもよい。ワーク1および電極3は、リード線10により電源9に連結されている。メッキの場合は、ワーク1を−極、電極3を+極へそれぞれ接続する。陽極酸化や電解エッチングの前処理をする場合は、ワーク1を+極、電極3を−極へそれぞれ接続する。
電源9からの通電量の信号は、入力ケーブル14(BNCコード等)を通してアナログ/デジタルコンバータ12へ入力され、デジタル値に変換された後に制御コンピュータ13へ取り込まれる。制御コンピュータ13では、一定時間の積算通電量を計測し、この積算通電量(電流値)から炭酸ニッケル補給量を算出する。算出された炭酸ニッケル補給量は、出力ケーブル15(RS−232C等)からフィーダ11へ転送される。
フィーダ11では、転送されたデータに基づいて炭酸ニッケル粉末を補給槽8へ供給する。補給槽8には炭酸ニッケル粉末の溶解を促進させるために、撹拌プロペラ16を設置すると効果的である。
ここで、本処理システムにおいて実行されるコンピュータプログラムを、図2にフロー図として示す。
システムの立ち上げを行うと、まずフィーダが初期設定される。これによりフィーダがマニュアル操作からコンピュータによるリモート操作状態に設定され、制御コンピュータ13からの命令待ち状態になる。次いで、電源からの通電量信号の入力を開始する。メッキスタートまでは、通電量ゼロが入力される。電源には、ワーク1に流れている電流値を表示すると同時に、電流値に対応する電圧信号出力を行うメータが設置されている。例えば、電流値0〜1000Aを0〜1Vへ換算して出力する場合、コンピュータが0.350Vの入力信号を得たときには、実際のワークには350Aの電流が流れていることになる。
そして、メッキを開始する。それと同時に、通電量がコンピュータ13のメモリーへ積算されていく。電流値入力信号のサンプリングは、できるだけ頻繁に行うの方が好ましく、例えば約1秒間隔程度が良い。そしてコンピュータの内部クロックの割込み時間になるまで、ルーチンAの積算を繰り返す。クロック割込み時間はあらかじめ設定しておくが、1分以内が良い。クロック割込み時間になると、炭酸ニッケル粉末補給のルーチンBへと移行する。
前回の割り込みから今回の割り込みまでの積算通電量より、炭酸ニッケル粉末の補給量を計算する。例えばニッケルめっきの場合、下式(1)の反応でニッケルが析出する。
Figure 2008291368
すなわち、
Figure 2008291368
の通電量で、ニッケル1モル(58.7g)が析出することになる。つまり1A・min.あたりでは、58.7/3217により0.01825gのニッケル補給が必要とされる。
例えば、350A・min.の通電量があり、金属ニッケル含有量40%の炭酸ニッケルを補給する場合、
Figure 2008291368
により、16.0gの炭酸ニッケルをフィーダから補給すればよいことになる。
また、不溶性陽極を用いた際のニッケルめっきにおける各電極表面の反応は、ワークである陰極では下式(2)、陽極では下式(3)のようになる。
Figure 2008291368
そして、低pH領域のメッキでは、ワークである陰極における副反応として下式(4)の反応が起きる。
Figure 2008291368
上記(4)式の反応によりニッケル析出効率が下がるとともに、水素イオンが消費されるためにpHの減少が抑制される。メッキ液のpHが低い程、ニッケル析出効率は下がる傾向にある。実際の炭酸ニッケルの補給においては、このニッケル析出効率を加味する必要があり、予め制御コンピュータ13にインプットしておき、その都度計算する。
上記補給例において、例えばpH4.0,ニッケル析出効率97%の場合には、16.0gに0.97を掛けた15.5gの炭酸ニッケルを補給すればよく、例えばpH2.5,ニッケル析出効率78%の場合には、16.0gに0.78を掛けた12.5gの炭酸ニッケルを補給すればよい。
(実施例2)
また、本発明による制御精度を高めるために、メッキ薬品濃度分析装置およびメッキ薬品補給装置を処理システムに導入することもできる。メッキ処理による生産時に、ワークに付着したメッキ液が持ち出されることで、メッキ薬品濃度が減少する。また、特に電極近傍などでpHが極端に低くなると、スルファミン酸イオンがアンモニウムイオンと硫酸イオンとに分解してしまうといった分解反応などの劣化によってもメッキ薬品濃度が減少する場合がある。
そこで、メッキ薬品濃度分析およびメッキ薬品補給装置を設けることが好ましく、以下、図1に基づいて説明する。
先ず、メッキ液サンプリング管18を通して、メッキ槽7からメッキ液をサンプリングする。キャピラリー電気泳動装置などの薬品濃度分析装置19で各メッキ薬品濃度を分析後、その分析結果を制御コンピュータ13にフィードバックして補給量を求め、薬品補給装置から所定量のメッキ薬品を補給槽8又はメッキ槽7へ補給する。補給する薬品は、スルファミン酸、硫酸、ホウ酸およびメッキ添加剤であるサッカリンナトリウムや次亜リン酸などである。
スルファミン酸、硫酸およびホウ酸などをメッキ液へ添加すると、メッキ液のpHが大幅に低下するが、従来のpHモニタリングによる自動管理システムでは、メッキ薬品補給によるpH低下とニッケルイオン析出反応(ニッケルイオンの減少)によるpH低下を識別できないといった不具合が生じ得る。その点、本実施の形態における通電量モニタリングによる管理システムにおいては、メッキ薬品添加の影響は全く受けないので、高精度の自動管理・補給を行うことができる。
図1は、本発明の制御方法を用いるメッキ処理システムの一例を示す概略図である。 図2は、本処理システムにおいて実行されるコンピュータプログラムの一例を示すフロー図である。 図3は、195リットルの浴で370Aにてメッキした場合のメッキ時間に対するpHの変化をプロットしたグラフである。 図4は、pH1.51のめっき液2リットルに炭酸ニッケル120gを投入した際のメッキ液のpH変動を示したグラフである。
符号の説明
1 ワーク
2 ワーク支持台
3 電極
4 メッキ液導入管
5 ポンプ
6 メッキ液導出管
7 メッキ槽
8 補給槽
9 電源
10 リード線
11 フィーダー
12 アナログ/デジタルコンバーター
13 コンピューター
14 入力ケーブル
15 出力ケーブル
16 撹拌プロペラ
17 シール治具
18 メッキ液サンプリング管
19 薬品濃度分析装置(pH分析含む)
20 薬品補給装置
21 薬品補給管
A ルーチンA
B ルーチンB

Claims (5)

  1. 表面処理に用いるメッキ液の通電量を計測しつつ、メッキ処理により減少した金属材の量に相当する金属塩を該メッキ液に補給するとともに、メッキ処理の電極として不溶性陽極を用いることを特徴とする表面処理液の制御方法。
  2. 上記金属材がニッケルであり、上記金属塩として炭酸ニッケルを用いることを特徴とする請求項1記載の表面処理液の制御方法。
  3. 上記炭酸ニッケルの補給量が、メッキ液におけるニッケルの析出効率を含めて決定されることを特徴とする請求項2記載の表面処理液の制御方法。
  4. メッキ槽と、金属塩を供給するフィーダーと、電極と、該メッキ槽内のメッキ液を分析するメッキ薬品濃度分析装置とを備えており、該メッキ薬品濃度分析装置によるメッキ液分析データをフィードバックして、メッキ薬品を補給することを特徴とする表面処理システム。
  5. 上記表面処理システムにおけるメッキ薬品の補給に際し、上記メッキ薬品濃度分析装置に接続され、かつ、メッキ液通電量により制御されるメッキ薬品補給装置を用いることを特徴とする請求項4記載の表面処理システム。
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