JP2008291341A - 耐圧痕性に優れる焼入れ鋼部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 鋼材の結晶粒を超微細化して表面欠陥を除去して自動車その他のギア、シャフト、軸受などの優れた耐圧痕性を有する鋼部品を製造する方法を提供する。
【解決手段】 質量%で、C:0.80〜1.20%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Ni:5.0%以下、Cr:6.0%以下、Mo:2.0%以下、Al:0.005〜0.05%、N:0.0130%以下を含有し、さらにTi:0.05〜0.20%、Nb:0.02〜0.20%のいずれか1種又は2種を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼材を部品形状に成形し、焼入れし、さらにズブ焼入れまたは高周波焼入れによる繰返し焼入れを行って旧オーステナイト結晶粒径をJIS G0551のNo.11以上に微細化し、焼戻し後に表面を研磨して耐圧痕性に優れた鋼部品とする。
【選択図】 図2
【解決手段】 質量%で、C:0.80〜1.20%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Ni:5.0%以下、Cr:6.0%以下、Mo:2.0%以下、Al:0.005〜0.05%、N:0.0130%以下を含有し、さらにTi:0.05〜0.20%、Nb:0.02〜0.20%のいずれか1種又は2種を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼材を部品形状に成形し、焼入れし、さらにズブ焼入れまたは高周波焼入れによる繰返し焼入れを行って旧オーステナイト結晶粒径をJIS G0551のNo.11以上に微細化し、焼戻し後に表面を研磨して耐圧痕性に優れた鋼部品とする。
【選択図】 図2
Description
自動車、建設機械、工作機械などのギア、シャフト、軸受などの焼入れ鋼部品、特に高面圧下での耐圧痕性に優れた鋼部品の製造方法に関する。
自動車、建設機械、工作機械などにおける、ギアの歯面、転がり軸受や直動軸受あるいはボールネジの軌道面などに、高荷重あるいは衝撃荷重を付与すると、その部分が塑性変形して圧痕が発生する。これらの圧痕を防止するためには、これらの部材の表面を硬化する必要がある。しかし、通常これらの部材は硬度58HRC以上で使用されているため、従来技術でさらに高硬度化することはコスト的に困難である。
一方、硬質異物を部品に噛み込むような環境で使用される部品には、熱処理により残留オーステナイト量を特定量に調整して、圧痕周縁の盛り上がり部の曲率を大きくすることで対策が採られて来た。しかし、残留オーステナイト自体は硬さが低く、したがって、圧痕自体は、付き易いという問題があった(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照。)。
旧オーステナイト結晶粒径を微細化した場合、降伏点が上昇するために耐圧痕性も上昇する可能性がある。しかし、従来は衝撃特性などの強度面での改善例しかなかった(例えば、特許文献4、特許文献5参照。)。また、部品の表面の加工精度が悪く、粗さが大きい場合や熱処理時の酸化層などの表面に欠陥が存在する場合は、ある結晶粒径までは粒径が小さくなるほど強度は向上するが、それ以上に微細化しても効果は飽和してしまって強度は向上しない。
発明者は、鋼部品の耐圧痕性の向上を検討した結果、鋼材の化学成分のバランスと焼入れによって表面強度を得るだけでなく、TiやNbを添加してピンニング粒子を増加させるとともに、通常の焼入れ後に繰返し焼入れを行って結晶粒を微細化することが、耐圧痕性の向上に有効であることを見出した。ただし、鋼の平均結晶粒径を微細化しても、混粒が発生した場合には耐圧痕性が低下する。さらに表面粗さが悪い場合や表面に酸化層が存在する場合には、結晶粒径を小さくしても、ある粒径で強度は飽和してしまっていた。しかしながら、これらのものにおいても、鋼部品の表面を研磨仕上げしたところ、上記の強度の飽和現象は見られず、結晶粒径が小さくなればなるほど耐圧痕性が向上することを見出した。これは、鋼部品の表面を研磨仕上げしていないものでは、鋼部品の表面の微細な凹凸や酸化層が欠陥として作用し、表面強度を制約したためと考えられる。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、鋼材の結晶粒を超微細化して表面欠陥を除去することで、自動車、建設機械、工作機械などのギア、シャフト、軸受などの優れた耐圧痕性を有する部品を製造する方法を提供することである。
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、鋼材の基本成分として、質量%で、C:0.80〜1.20%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Ni:5.0%以下、Cr:6.0%以下、Mo:2.0%以下、Al:0.005〜0.05%、N:0.0130%以下を含有し、さらにTi:0.05〜0.20%、Nb:0.02〜0.20%のいずれか1種又は2種を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼材を用いる。この鋼材を切削などの機械加工もしくは鍛造により部品形状に成形した後、焼入れを行い、さらにズブ焼入れもしくは高周波焼入れによる繰返し焼入れを行って旧オーステナイト結晶粒径をJIS G0551で規定のNo.11以上に微細化し、焼戻した後に表面を研磨することにより、耐圧痕性に優れた鋼部品とすることを特徴とする鋼部品の製造方法である。
請求項2の発明では、上記の耐圧痕性に優れた鋼部品は、自動車、建設機械、工作機械などのギア、シャフトあるいは軸受などにおける突発的に発生する4.3GPa以上の高面圧下での耐圧痕性に優れた鋼部品であることを特徴とする請求項1の手段の鋼部品の製造方法である。
本発明の方法に使用する鋼材の限定理由を説明する。
先ず、鋼材の化学成分について説明する。本発明の方法における鋼材からなる部品は、繰返し焼入れによって結晶粒を微細化するが、その際の加熱時に非常に微細なオーステナイト初期粒が生成し、通常の鋼では結晶粒が微細化せず、逆に粗大化してしまうという問題がある。そこで、その結晶粒の粗大化を防止するために、Ti、Nbといったピンニング力の高い元素を含有させている。
先ず、鋼材の化学成分について説明する。本発明の方法における鋼材からなる部品は、繰返し焼入れによって結晶粒を微細化するが、その際の加熱時に非常に微細なオーステナイト初期粒が生成し、通常の鋼では結晶粒が微細化せず、逆に粗大化してしまうという問題がある。そこで、その結晶粒の粗大化を防止するために、Ti、Nbといったピンニング力の高い元素を含有させている。
次に上記の繰返し焼入れについて説明すると、結晶粒の微細化手法として繰返し焼入れ法を用いている。繰返し焼入れ回数は1回よりも2回の方が効果は大きい。ただし、鋼種によっては、3回以上繰り返すと逆に混粒が発生し、強度も低下することがあるので、望ましくは2回までとする。
さらに表面研削について説明すると、表面の加工精度が悪く粗さが大きい場合や、焼入れ時の加熱などで表面に酸化層が生成した場合、その深さによって強度が制約されてしまい、結晶粒微細化効果がでない。そのため、対象となる部分の表面では、研磨仕上げが必須である。ただし、軸受のように通常の部品の製造工程で研磨仕上げが行なわれる場合、新たに研磨工程を追加する必要はない。
本発明に方法における鋼材の化学成分の限定理由をさらに詳細に説明する。なお、化学成分は質量%で示す。
C:0.80〜1.20%、望ましくは、0.95〜1.10%
Cは、焼入れ、焼戻しにて硬さを確保するために必要な元素であるが、0.80%未満であると転動疲労寿命が短く、1.10%を超えると加工性が低下し、靭性が低下する。そこで、Cは0.80〜1.20%、望ましくは、0.95〜1.10%とする。
Cは、焼入れ、焼戻しにて硬さを確保するために必要な元素であるが、0.80%未満であると転動疲労寿命が短く、1.10%を超えると加工性が低下し、靭性が低下する。そこで、Cは0.80〜1.20%、望ましくは、0.95〜1.10%とする。
Si:0.05〜2.00%
Siは、脱酸に有効な元素であるが、Siが0.05%未満であれば脱酸が不十分であり、Siが2.00%を超えると加工性が低下する。そこで、Siは0.05〜2.00%とする。
Siは、脱酸に有効な元素であるが、Siが0.05%未満であれば脱酸が不十分であり、Siが2.00%を超えると加工性が低下する。そこで、Siは0.05〜2.00%とする。
Mn:0.10〜2.00%
Mnは、焼入性を確保するのに必要な元素であるが、Mnが0.10%未満であれば焼入性が十分でなく、Mnが2.00%を超えると加工性を低下させる。そこで、Mnは0.10〜2.00%とする。
Mnは、焼入性を確保するのに必要な元素であるが、Mnが0.10%未満であれば焼入性が十分でなく、Mnが2.00%を超えると加工性を低下させる。そこで、Mnは0.10〜2.00%とする。
P:0.030%以下
Pは、不純物として不可避的に含有されるが、粒界を脆化させ、衝撃強度およびめげ強度を低下する。そこで、Pは0.030%以下とする。
Pは、不純物として不可避的に含有されるが、粒界を脆化させ、衝撃強度およびめげ強度を低下する。そこで、Pは0.030%以下とする。
S:0.030%以下
Sは、不純物として不可避的に含有されるが、Sは硫化物により転動寿命を低下する。そこで、Sは0.030%以下とする。
Sは、不純物として不可避的に含有されるが、Sは硫化物により転動寿命を低下する。そこで、Sは0.030%以下とする。
Ni:5.0%以下
Niは、焼入性を向上するとともに靱性を向上させる元素であるが、Niが5.0%を超えると加工性を低下する。そこで、Niは5.0%以下とする。
Niは、焼入性を向上するとともに靱性を向上させる元素であるが、Niが5.0%を超えると加工性を低下する。そこで、Niは5.0%以下とする。
Cr:6.0%以下、望ましくは4.0%以下
Crは、焼入性を向上するとともに、残留オーステナイトを安定化させる元素であるが、Crが多すぎると加工性を低下し、焼入れ性を低下する。そこで、Crは6.0%以下、望ましくは4.0%以下とする。
Crは、焼入性を向上するとともに、残留オーステナイトを安定化させる元素であるが、Crが多すぎると加工性を低下し、焼入れ性を低下する。そこで、Crは6.0%以下、望ましくは4.0%以下とする。
Mo:2.0%以下
Moは、焼入性を向上するとともに疲労強度を向上させる元素であるが、Moが2.0%を超えると加工性を低下する。そこで、Moは2.0%以下とする。
Moは、焼入性を向上するとともに疲労強度を向上させる元素であるが、Moが2.0%を超えると加工性を低下する。そこで、Moは2.0%以下とする。
Al:0.005〜0.05%
Alは、脱酸および結晶粒度調整に必要な元素であるが、Alが0.005%未満では、脱酸効果が不十分であり、Alが0.005を超えると、酸化物が増加する結果、疲労強度が低下しかつ加工性が低下する。そこで、Alは0.005〜0.05%とする。
Alは、脱酸および結晶粒度調整に必要な元素であるが、Alが0.005%未満では、脱酸効果が不十分であり、Alが0.005を超えると、酸化物が増加する結果、疲労強度が低下しかつ加工性が低下する。そこで、Alは0.005〜0.05%とする。
Ti:0.05〜0.20%、望ましくは0.10〜0.20%
Tiは、Nbと置換可能な、あるいは、ともに含有することのできる選択元素であり、Tiはピンニングにより結晶粒粗大化を防止する効果を有するが、Tiが0.05%未満ではその効果は十分でなく、Tiが0.20%を超えると加工性を低下する。そこで、Tiは0.05〜0.20%、望ましくは0.10〜0.20%とする。
Tiは、Nbと置換可能な、あるいは、ともに含有することのできる選択元素であり、Tiはピンニングにより結晶粒粗大化を防止する効果を有するが、Tiが0.05%未満ではその効果は十分でなく、Tiが0.20%を超えると加工性を低下する。そこで、Tiは0.05〜0.20%、望ましくは0.10〜0.20%とする。
Nb:0.02〜0.20%、望ましくは0.03〜0.10%
Nbは、ピンニングにより結晶粒粗大化を防止する効果を有するが、Nbが0.02%未満ではその効果は十分でなく、Nbが0.20%を超えると加工性を低下する。そこで、Nbは0.02〜0.20%とする。
Nbは、ピンニングにより結晶粒粗大化を防止する効果を有するが、Nbが0.02%未満ではその効果は十分でなく、Nbが0.20%を超えると加工性を低下する。そこで、Nbは0.02〜0.20%とする。
N:130ppm以下、望ましくは100ppm以下
Nは、Tiと結合してTiNを生成するが、TiNが過剰に生成されると疲労強度を低下するとともに加工性を低下する。そこで、Nは130ppm以下、望ましくは100ppm以下とする。
Nは、Tiと結合してTiNを生成するが、TiNが過剰に生成されると疲労強度を低下するとともに加工性を低下する。そこで、Nは130ppm以下、望ましくは100ppm以下とする。
本発明は上記の手段とすることで、鋼部品に突発的に発生する4.3GPa以上の荷重による高面圧の下で優れた耐圧痕性を示す自動車、建設機械、工作機械などのギア、シャフトあるいは軸受などの鋼部品を得ることができる優れた効果を奏する。
表1に示す化学成分からなる比較例および実施例の鋼を100kg真空誘導炉で溶解し、インゴットに鋳造し、これを1250℃に加熱し、5時間保持して溶体化した後、φ40mmの素材に鍛伸した。さらに、この鍛伸した素材を900℃に加熱して焼入・焼戻しを行い、さらに、これをズブ焼入れまたは高周波焼入れを1回または2回繰返して繰返し焼入れを行い、さらに表面異常層を研磨により除去した。一方、試験のために、上記の鍛伸した素材を10mm×10mm×50mmLの試験片に作製して焼入・焼戻しを行い、さらに、これをズブ焼入れまたは高周波焼入れを1回または2回繰返し後に、表面異常層を研磨により除去して試験片1とし、下記に記載の耐圧痕性の試験に付した。
上記の焼入・焼戻し条件は、焼入れを835℃に0.5時間保持した後、油冷して焼入れし、焼戻しを170℃に1.5時間保持した後、空冷した。
上記の繰返し焼入れの条件は、再焼入れを835℃に0.5時間保持した後、油冷する。この場合、高周波焼入れの条件は、周波数を150kHz、電力を150kw、加熱時間を2秒として水冷する。
上記の繰返し焼入れ材の表面に生じた表面異常層を研磨して除去した材料からなる、図1に示す、試験片1の圧痕箇所2に3.8インチのボール3を介して上方から荷重4を掛ける試験手段により、試験片1に掛けた荷重4の負荷により生じた、図2のグラフに示す、縦軸の高低差を耐圧痕性の指標とし、これらの値を表2および表3により試験結果として示す。ところで、表2および表3において、平均旧オーステナイト結晶粒度番号については、混粒が発生した場合を網掛けしている。さらに、耐圧痕性について、面圧4.3GPaでは0.40μm以上、4.9GPaでは0.50μm以上を従来レベルとして網掛けして示している。
表2および表3の実施例において、ズブ焼入れを2回以上、またはズブ焼入1回でも高周波焼入れを1回以上行なうと、平均旧オーステナイト結晶粒度番号が11以上となり、かつ混粒が発生しない。その結果、耐圧痕性すなわち圧痕の高低差は、面圧4.3GPaでは0.40μm未満、面圧4.9GPaでは0.50μm未満となり、耐圧痕性において優れた鋼部品を得ることができた。
1 試験片
2 圧痕箇所
3 3.8インチボール
4 荷重
2 圧痕箇所
3 3.8インチボール
4 荷重
Claims (2)
- 質量%で、C:0.80〜1.20%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Ni:5.0%以下、Cr:6.0%以下、Mo:2.0%以下、Al:0.005〜0.05%、N:0.0130%以下を含有し、さらにTi:0.05〜0.20%、Nb:0.02〜0.20%のいずれか1種又は2種を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼材を用い、部品形状に成形した後、焼入れを行い、その後の再焼入れにより旧オーステナイト結晶粒径をJIS G0551で規定のNo.11以上に微細化し、焼戻した後に研磨することにより耐圧痕性に優れた鋼部品とすることを特徴とする鋼部品の製造方法。
- 耐圧痕性に優れた鋼部品は、自動車、建設機械、工作機械などのギア、シャフトあるいは軸受などにおける突発的に発生する4.3GPa以上の高面圧下での耐圧痕性に優れた鋼部品であることを特徴とする請求項1に記載の鋼部品の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2007141011A JP2008291341A (ja) | 2007-05-28 | 2007-05-28 | 耐圧痕性に優れる焼入れ鋼部品の製造方法 |
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JP (1) | JP2008291341A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015074803A (ja) * | 2013-10-08 | 2015-04-20 | 山陽特殊製鋼株式会社 | 結晶粒度特性および衝撃特性に優れた機械構造用鋼からなる鋼部品の製造方法 |
WO2023053822A1 (ja) * | 2021-09-28 | 2023-04-06 | 株式会社不二越 | 合金鋼、それを用いた電食防止部品およびその製造方法 |
WO2023074653A1 (ja) * | 2021-10-27 | 2023-05-04 | 株式会社不二越 | 転がり軸受部品用合金鋼、それを用いた転がり軸受用軌道輪,転がり軸受および転がり軸受用軌道輪の製造方法 |
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2007
- 2007-05-28 JP JP2007141011A patent/JP2008291341A/ja active Pending
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