JP2008282835A - コンデンサ用電極シートおよびその製造方法 - Google Patents

コンデンサ用電極シートおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属間化合物を分散させたコンデンサ用電極シートにおいて、金属間化合物に対する結着力が強く、エッチング処理における電気量を増大させても金属間化合物を失うことなく確実に表面積を拡大させる。
【解決手段】芯材(3)の少なくとも片面に、AlにZrおよびSiが固溶された固溶体相(8)中にZrとAlとからなる金属間化合物(7)が分散してなる合金層(4)が積層一体化されたコンデンサ用電極シート(1)であって、前記合金層(4)中のAlとZrの原子数比がAl:Zr=1:0.05〜1:0.15であり、前記合金(4)層中のSi濃度(Csi)が、AlとZrの合計に対するAlの割合をDAl質量%としたときに、Csi(質量%)={(DAl−47)/53}×K(K=4〜17)の範囲となされている。
【選択図】 図1

Description

この発明は、大きな静電容量が得られるコンデンサ用電極シート、特にエッチング時の電気量を増加させて大きな静電容量が得られるコンデンサ用電極シート、およびその関連技術に関する。
近年、電気機器のデジタル化が進むのに伴い、電解コンデンサとしては小型で大容量のものが求められるようになってきている。とりわけ、パーソナルコンピュータや携帯電話等の通信機器では、搭載されるCPUの演算速度の高速化に伴い、コンデンサの静電容量をさらに増大させることが強く求められている。
大きな静電容量を確保できるコンデンサ用電極材料としては、アルミニウム中にTi、Zr等のバルブメタルとアルミニウムとからなるデンドライト状金属間化合物が微細に分散された層を有する電極シートが用いられている。この電極シートはエッチングによる表面積のさらなる拡大とその酸化皮膜が高い誘電率を有することから、従来のアルミニウムコンデンサに比べて2〜40倍の静電容量を得られることが知られている(特許文献1参照)。
また、このようなバルブメタルとアルミニウムとの金属間化合物が分散された層を有する電極材料において、耐折性を向上させるために金属間化合物の微粒子を固溶体で結着させることも提案されている(特許文献2、3参照)。特許文献2には、芯材にアルミニウムとバルブメタルとからなる合金溶湯を霧状に噴霧した後に急冷する方法が記載され、特許文献3には、芯材上にアルミニウムとバルブメタルとの金属間化合物粉末とアルミニウム粉末とを溶射する方法が記載されている。
特開平01−124212号公報 特開2005−72462号公報 特開2006−302917号公報
しかしながら、電解エッチング処理において、電気量を増大させるに従って金属化合物の微粒子を結着している固溶体までもが溶解し、金属間化合物が失われて有効な表面積が得られず十分な容量増大効果が得られていなかった。
本発明のコンデンサ用電極シートは、上述した技術背景に鑑み、金属間化合物の微粒子に対する結着力が強く、エッチング処理における電気量を増大させても金属間化合物を失うことなく確実に表面積を拡大させることができるコンデンサ用電極シートおよびその製造方法の提供を目的とする。
即ち、本発明のコンデンサ用電極シートおよびその関連発明は下記の構成を有する。
[1]AlまたはAl合金からなる芯材の少なくとも片面に、AlにZrおよびSiが固溶された固溶体相中にZrとAlとからなる金属間化合物が分散してなる合金層が積層一体化されたコンデンサ用電極シートであって、
前記合金層中のAlとZrの原子数比がAl:Zr=1:0.05〜1:0.15であり、
前記合金層中のSi濃度(Csi)が、AlとZrの合計に対するAlの割合をDAl質量%としたときに下記(i)式においてK=4〜17の範囲となされている
si(質量%)={(DAl−47)/53}×K …(i)
ことを特徴とするコンデンサ用電極シート。
[2]前記合金層中のSi濃度(Csi)が、(i)式においてK=6〜16の範囲である前項1に記載のコンデンサ用電極シート。
[3]前記芯材の厚さが5〜200μmであり、前記合金層の厚さが5〜150μmである前項1または2に記載のコンデンサ用電極シート。
[4]前記金属間化合物の平均デンドライトアームスペーシング(DAS)が5μm以下である前項1〜3のいずれかに記載のコンデンサ用電極シート。
[5]AlまたはAl合金からなる芯材の少なくとも片面に、ZrとAlとからなる金属間化合物を含むAl−Zr−Si合金粉末を溶射し、AlにZrおよびSiが固溶された固溶体相中に前記金属間化合物が分散した合金層を積層するに際し、
前記Al−Zr−Si合金粉末として、該合金中のAlとZrの原子数比がAl:Zr=1:0.05〜1:0.15であり、該合金層中のSi濃度(Csi)が、AlとZrの合計に対するAlの割合をDAl質量%としたときに下記(i)式においてK=4〜17の範囲となされている
si(質量%)={(DAl−47)/53}×K …(i)
合金粉末を用いることを特徴とするコンデンサ用電極シートの製造方法。
[6]前項1〜5のいずれかに記載されたコンデンサ用電極シートをエッチングした後、さらに化成処理を行って表面に誘電体皮膜を形成することを特徴とする電解コンデンサ用陽極材の製造方法。
[7]前項6に記載された製造方法により製造された電解コンデンサ用陽極材。
[8]前項7に記載された電解コンデンサ用陽極材を用いて構成された電解コンデンサ。
上記[1]に記載のコンデンサ用電極シートは、Siの含有によって固溶体相の融点が低下して金属間化合物に対する結着力が強くなる。このため、エッチングよって露出した金属間化合物が外れにくくなり、金属間化合物による表面積の拡大が確かなものとなり、ひいては静電容量を増大させることができる。
上記[2]に記載のコンデンサ用電極シートによれば、特に固溶体相の融点を低くすることができる。
上記[3]に記載のコンデンサ用電極シートによれば、十分なシート強度および大きな静電容量を確保することができる。
上記[4]に記載のコンデンサ用電極シートによれば、より大きな静電容量を確保することができる。
上記[5]に記載のコンデンサ用電極シートの製造方法によれば、大きな静電容量が得られる電極シートを製造することができる。
上記[6]に記載の電解コンデンサ用陽極材の製造方法によれば、大きな静電容量が得られる陽極材を製造することができる。
上記[7]に記載の電解コンデンサ用陽極材は、本発明の方法により製造されたものであるから大きな静電容量を得ることができる。
上記[8]に記載の電解コンデンサは、陽極材として本発明の電極シートを用いたものであるから大きな静電容量を得ることができる。
図1に、本発明にかかるコンデンサ用電極シート(1)の一実施形態を示す。このコンデンサ用電極シート(1)は、箔状の芯材(3)の両面に、固溶体相(8)中にZrとAlとからなる金属間化合物(以下、「Zr−Al金属間化合物」と称する)(7)が微粒子状で分散してなる合金層(4)が積層一体化されたシートである。
前記芯材(3)の材料としては、AlまたはAl合金が用いられる。例えば、純アルミニウム、Al−Ti系合金、Al−Zr系合金、Al−Nb系合金、Al−Hf系合金、Al−Ta系合金からなるシートが用いられる。芯材材料としてAlまたはこれらのAl合金を用いることにより、漏れ電流を顕著に低減することができる。
前記合金層(4)において、ZrとAlとからなる金属間化合物(7)の種類は特に限定されるものではないが、例えばZrAl、ZrAl、ZrAl、ZrAl等を例示できる。これらのZr−Al金属間化合物(7)は微粒子として固溶体相(8)に結着されて固溶体相(8)中に分散している。図3に示すように、これらのZr−Al金属間化合物(7)は多数の樹枝を有するデンドライト状化合物であるため、後に詳述するようにエッチングによって露出すると表面積が格段に増大し、ひいては静電容量を増大させることができる。十分に表面積を増大させるために、前記Zr−Al金属間化合物(7)における隣合う2次枝の間隔(デンドライトアームスペーシング、DAS)(S)は平均で5μm以下とすることが好ましい。
前記固溶体相(8)は、AlにZrおよびSiが固溶してなる相である。Siは固溶体相(8)の融点を降下させる元素であり、固溶体相(8)の融点を低くすることによってZr−Al金属間化合物(7)および芯材(3)に対して強い結着力が得られる。前記微粒子状のZr−Al金属間化合物はこのような固溶体相(8)に結着されているので、コンデンサ用電極シート(1)は十分な延性が得られて耐折性(耐折り曲げ性)に優れたものとなる。なお、前記固溶体相(8)は、十分な結着性および延性が得られる限り、その内部に第二相粒子や空隙を含んでいても良い。
前記合金層(4)において、Zrは固溶体相(8)とZr−Al金属間化合物(7)相の両方に存在し、Siは固溶体相(8)に存在する。
以下に、本発明におけるZr濃度およびSi濃度について、図4および図5のZr−Al合金状態図および図6のAl−Si合金状態図を参照しつつ説明する。これらの状態図は、「BINARY ALLOY PHASE DIAGRAMS SECOND EDITION」Thaddeus B. Massalski, Hiroaki Okamoto, P.R. Subramanian, Linda Kacprzak編、ASM International,1990,vol.1,212頁、242頁より引用したものである。また、以下の説明において、状態図に記載された「Weight Percent」はSI単位の「質量%」に読み替えるものとする。
図4および図5のZr−Al合金状態図より、Zr−Al合金はAlが47質量%以上の領域において固溶体と金属間化合物とが共存している。本発明においては、前記共存領域内でも、AlとZrの原子数比がAl:Zr=1:0.05〜1:0.15となる範囲に規定する。前記原子数比率は、Zr:4.8原子%〜13.0原子%(Al:87.0原子%〜95.2原子%)、Zr:14.5質量%〜33.9質量%(Al:66.1質量%〜85.5質量%)に対応する。前記範囲は図4および図5において破線間で示した領域である。ZrがAl:Zr=1:0.05に満たない場合は、析出するZr−Al金属間化合物(7)が過少となり静電容量に寄与すべき表面積の拡大は望めない。一方、ZrがAl:Zr=1:0.15を超えて多くなると、金属間化合物量が多くなり過ぎて微細分散が困難となり、エッチング処理により形成されるエッチング孔の大きさが小さくなり電解質がエッチング層のすべてに入っていかなくなって良好な静電容量が得られなくなるので好ましくない。好ましいAlとZrの原子数比はAl:Zr=1:0.06〜1:0.13である。
また、SiはAlに固溶され、固溶体相(8)の融点を降下させて金属間化合物(7)の粒子に対する結着力を向上させる。このため、エッチングよって露出した金属間化合物(7)が外れにくくなり、金属間化合物(7)による表面積の拡大が確かなものとなる。かかるSiは、合金層(4)中の濃度(CSi)として、Al−Zr合金状態図およびAl−Si合金状態に基づいてその適正範囲を求めることができる。
図5に示すように、Al−Zr合金の固溶体−金属間化合物共存領域において、Alの下限値47質量%の位置をaとし、100質量%Alの位置をbとすると、任意のAl濃度X(質量%)に対応する固溶体と金属間化合物の質量比は下記(ii)式で表される。
固溶体質量:金属間化合物質量=線分aX:線分Xb …(ii)
AlとZrの合計を100質量%としたときのAl、Zrの割合をそれぞれDAl(質量%)、DZr(質量%)とすると、X(質量%)は下記(iii)式で表される。また、合金中の固溶体質量比(A)を線分で表すと下記(iv)式で表される。
X(質量%)={(DAl)/(DAl+DZr)}×100 …(iii)
A=(線分aX)/(線分aX + 線分Xb)=(線分aX)/(線分ab) …(iv)
従って、固溶体質量比比(A)は下記(v)で表される。
A=(線分aX)/(線分ab)
=(X−a)/(b−a)
=[〔{(DAl)/(DAl+DZr)}×100}〕−a]/[b−a] …(v)
また、a=47質量%、b=100質量%、DAl+DZr=100質量%より、(v)式で表される固溶体質量比(A)は下記(vi)式となる。
A=[〔{(DAl)/(DAl+DZr)}×100}〕−47]/53
=(DAl−47)/53 …(vi)
さらに、前記固溶体質量比(A)に対し、AlとSiの合計に対するSiの割合(K質量%)を乗じた数値が合金層中のSi濃度(CSi)質量%となり、本発明における(i)式が導かれる。
si={(DAl−47〕/53)×K …(i)
ここで、図6のAl−Si合金状態図に示されるように、Al−Si合金においてはSi濃度(K)が12.6質量%のときに融点は577℃となり最も低くなるから、固溶体質量比(A)×12.6が固溶体相(8)の最低融点となる。AlとSiの合計に対するSiの割合(K)が12.6質量%より低くなっても、高くなっても前記最低融点よりも高くなるが、上記(i)式においてK=4〜17であれば結着力向上効果が得られる融点となるので、上記(i)においてK=4〜17の範囲を本発明におけるSi濃度(CSi)に規定する。図6中の2本の破線はSi濃度の6質量%および16質量%を示し、この濃度領域における融点が低いことを示している。固溶体相(8)は融点が低くなるほど結着力が向上するため、特に融点が低くなるK=6〜16の範囲に設定することが好ましい。
表1に、Al:Zr(原子数比)=1:0.11のZr含有するAl−Zr合金(No.1)、およびSi濃度(Csi)の異なるAl−Zr−Si合金(No.2〜9)について、DSC(Differential Scanning Calorimetry)により測定した固溶体相の融点を示す。この結果は、合金層(4)中のSi濃度が固溶体の質量比と対応することを示し、上述したSi濃度(Csi)の適正範囲の求め方が正しいことを示している。即ち、Al−Zrの二元合金状態図におけるAlとZrの質量比をそのまま合金層(4)中のAl(質量%)とZr(質量%)として当てはめて固溶体と金属間化合物の比率を求める。そして、合金層(4)に占める固溶体の比率に、Al−Si合金で最も融点が低くなるSi濃度(12.6質量%)を掛けて得られた数値が固溶体相(8)の融点を最も低くする合金層(4)中のSi濃度(Csi)となる。また、AlとZrの原子数比が変更されても同様にして合金層(4)中のSi濃度を求めることができる。
前記コンデンサ用電極シート(1)において、芯材(3)の厚さは5〜200μmであるのが好ましい。5μm未満ではコンデンサ用電極シート(1)としての剛性、ひいてはエッチングおよび化成処理後の陽極材(2)(図2参照)としての剛性が不十分となり、陽極材(2)を曲げたり切断した場合に割れが生じやすくなるので好ましくない。一方200μmを超えると、陽極材(2)を捲回して捲回型ケースに収納する場合において捲回の際の曲率Rが大きくなってしまい捲回型ケースに収納するのが困難になるので好ましくない。特に好ましい芯材(3)の厚さは20〜100μmである。
また、前記合金層(4)の厚さは5〜150μmであるのが好ましい。5μm未満ではエッチング処理時に芯材(3)が露出して十分な静電容量が得られなくなるので好ましくない。一方150μmを超えると、電解質がエッチング層のすべてに入っていかなくなって十分な静電容量が得られなくなる。特に好ましい合金層(4)の厚さは20〜100μmである。
前記電極シート(1)は、エッチング処理および化成処理を行って表面に電気化学的に誘電体皮膜(6)を形成させることによって、電解コンデンサ用陽極材(2)として好適に用いられるシートを製造することができる(図2参照)。前記電極シート(1)をエッチングすると、合金層(4)の固溶体相(8)が侵食されてデンドライト状の金属間化合物(7)が露出して複雑な内面形状をもつ侵入孔(9)が形成されて表面積が拡大される。しかも、図3の要部拡大図に示すように、エッチングによってデンドライト状金属間化合物(7)が露出することによって表面積はさらに拡大される。そして、従って、表面積を格段に増大させることができて電解質との接触表面積を顕著に増大できるので、コンデンサとしての静電容量を顕著に増大させることができる。
前記エッチング処理としては、例えば塩酸水溶液または硫酸アルミニウム溶液中で直流電流を通電してエッチングする方法等を例示できるが、特にこれに限定されない。
また、前記化成処理としては、特に限定されるものではないが、例えばホウ酸浴、リン酸浴またはアジピン酸浴中での化成処理等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明にかかる電解コンデンサは、上記陽極材を用いて構成されたものである。本発明のコンデンサ用電極シート(1)を構成素材にした陽極材を用いているので、小型でかつ大容量の電解コンデンサとなる。
次に、上述したコンデンサ用電極シートの製造方法について詳述する。
コンデンサ用電極シートは溶射によって製造することができる。即ち、シート状の芯材(3)の片面または両面に、ZrとAlとからなる金属間化合物を含むAl−Zr−Si合金粉末を溶射して付着させ、芯材(3)に合金層(4)を積層する。溶射によって形成された合金層(4)は、AlにSiが固溶された固溶体相(8)中に金属間化合物(7)が分散している。
溶射に用いる粉末の粒径は、小さくなりすぎると溶射時の原料供給ノズルが詰まり易くなり、大きくなりすぎると合金(4)層にボイドを生じやすくなるので好ましくない。このため、粉末の平均粒径は20〜150μmが好ましく、特に平均粒径30〜80μmの粉末を用いることが好ましい。
前記溶射の手法としては、公知の溶射方法を採用することができ、特に限定されるものではないが、例えばプラズマ溶射、コールドスプレー等を例示できる。
前記プラズマ溶射とは、電極の間にアルゴン、ヘリウム等のガスを流して放電すると、電離して高温高速のプラズマが発生するが、このプラズマを溶射の熱源として用いる溶射法であり、前記高温高速のプラズマ流(プラズマジェット)に溶射材料の粉末を投入して加熱加速せしめて芯材に衝突させて溶射するものである。
前記コールドスプレーとは、溶射材料の融点または軟化温度よりも低い温度に加熱した高圧のガスを超音速流にし、この超音速流に溶射材料の粉末を投入して加速せしめ、固相状態のまま芯材に衝突させて溶射するものである。
芯材(3)に合金層(4)を積層させた電極シート(1)は、さらに焼鈍すればシートの耐折性を向上させることができる。また、圧延すれば、溶射した合金層(4)の表面凹凸を均して平坦性を向上させることができるとともに、シート(1)の厚さを均一にすることができる。焼鈍および圧延はどちらか一方のみを実施して良いし、両方実施しても良い。またその順序も任意である。
なお、本発明のコンデンサ用電極シートは、図示例の芯材の両面に合金層が積層されたシートのみならず、片面にのみ合金層が形成された電極シートも本発明に含まれる。
〔コンデンサ用電極シートの製作〕
表1に示す9種類の電極シートを製作した。
No.1〜のNo.1〜9の芯材(3)として、Al純度99.5質量%、厚さ50μmのアルミニウム箔を用いた。
No.2〜9の合金層(4)の材料として、AlZrなるデンドライト状金属間化合物を含む平均粒径70μmのAl−Zr−Si合金粉末を用いた。このAl−Zr−Si合金粉末において、AlとZrの原子数比はAl:Zr=1:0.11でありSi濃度(Csi)は表1に示すとおりである。前記合金粉末において、AlとZrの合計を100質量%としたときのAlの割合(DAl)は72.9質量%、同じくZrの割合(DZr)は27.1質量%あるから、(i)式およびK=4〜17により求められる合金層中のSi濃度(Csi)が2.0〜8.3質量%のものが本発明の範囲となり、表1のNo.2〜8が本発明の実施例となる。さらに、(i)式およびK=6〜16により求められる合金層中のSi濃度(Csi)が2.9〜7.8質量%のものはNo.3〜7である。
No.1の合金層(4)の材料として、AlZrなるデンドライト状金属間化合物を含む平均粒径70μmのAl−Zr合金粉末を用いた。このAl−Zr合金粉末において、AlとZrの原子数比はNo.2〜9と同じAl:Zr=1:0.11であるが、Siは含有していない。従って、前記DAl=72.9質量%、DZr=27.1質量%がそのままAl−Zr合金の組成となる。
前記合金層材料について、DSC((Differential Scanning Calorimetry)により測定した固溶体相の融点を表1に示す。
Figure 2008282835
前記芯材(3)の両面に、前記Al−Zr−Si合金粉末またはAl−Zr合金粉末溶射し、10種類の積層シートを製作した。溶射条件は、プラズマ溶射で、Ar:80体積%、N:10体積%、H:10体積%の混合ガスを用い、溶射出力75kW(170A、440V)、溶射ガス流量250L/minとし、溶射層の厚さを片面につき190μmとした。
次に、前記積層シートを総厚さが230μmになるまで圧延し、芯材(3)の両面に合金層(4)(4)を有するコンデンサ用電極シート(1)とした(図1参照)。これらの電極シート(1)における芯材(3)の厚さは42μm、合金層(4)の厚さは片面につき94μmとなった。また、前記合金層(4)における金属間化合物の平均DASは表1に示すとおりである。
〔エッチング〕
前記電極シート(1)に対し、前処理として、3質量%HPO水溶液中に浸漬して90℃で120秒間煮沸することによって、表面の酸化皮膜を除去した後、流水で水洗した。
次いで、エッチング処理を行った。エッチング液として5N−Al(SO+0.5N−AlCl水溶液を用い、温度90℃、電流密度DC0.5A/cm(両面)、片面の試料面積36cmの条件でエッチング処理を行った。また、エッチング時間は単位面積あたりの電気量が100C(クーロン)/cm、150C/cm、200C/cmの3段階に設定した。さらに、50℃の6%HNO水溶液に30秒間浸漬した後、流水で洗浄した。
〔化成処理〕
上述のエッチング処理を施した電極シート(1)に対し、電圧10Vで3段階の化成処理を施して酸化皮膜を形成して陽極材(2)(図2参照)とした。化成処理浴はいずれもアジピン酸アンモニウム(濃度:100g/L、温度90℃)、電流密度は50mA/cmとし、化成処理時間は1段階目が120分、2段階目および3段階目がそれぞれ10分とし、各段階の間には熱処理として500℃で10分間雰囲気加熱を行った。
〔陽極材の評価〕
製作した陽極材について、日本電子機械工業会規格EIAJ RC−2364に基づいて静電容量と皮膜耐電圧を測定し、CV積=(静電容量)×(皮膜耐電圧)を求めた。これらの結果を表1に示す。
表1の結果より、Siの含有により、高いCV積を得、かつエッチングの電気量を増大させることにより顕著にCV積の増大を図り得ることを確認した。
本発明のコンデンサ用電極シートは、Al−Zr金属間化合物の微粒子が固溶体相に強く結着されているために、エッチング時の電気量を増大させても微粒子が外れにくく、確実に表面積を拡大することができる。このため、大容量が要求される電解コンデンサの電極材として好適に利用することができる。
本発明のコンデンサ用電極シートの一実施形態を示す模式的断面図である。 本発明の陽極材を示す模式的断面図である。 図2の要部拡大図である。 Al−Zr合金状態図である。 図4の一部拡大図である。 Al−Si合金状態図である。
符号の説明
1…コンデンサ用電極シート
2…陽極材
3…芯材
4…合金層
6…誘電体皮膜
7…ZrとAlとからなる金属間化合物
8…固溶体相
9…エッチング孔

Claims (8)

  1. AlまたはAl合金からなる芯材の少なくとも片面に、AlにZrおよびSiが固溶された固溶体相中にZrとAlとからなる金属間化合物が分散してなる合金層が積層一体化されたコンデンサ用電極シートであって、
    前記合金層中のAlとZrの原子数比がAl:Zr=1:0.05〜1:0.15であり、
    前記合金層中のSi濃度(Csi)が、AlとZrの合計に対するAlの割合をDAl質量%としたときに下記(i)式においてK=4〜17の範囲となされている
    si(質量%)={(DAl−47)/53}×K …(i)
    ことを特徴とするコンデンサ用電極シート。
  2. 前記合金層中のSi濃度(Csi)が、(i)式においてK=6〜16の範囲である請求項1に記載のコンデンサ用電極シート。
  3. 前記芯材の厚さが5〜200μmであり、前記合金層の厚さが5〜150μmである請求項1または2に記載のコンデンサ用電極シート。
  4. 前記金属間化合物の平均デンドライトアームスペーシング(DAS)が5μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載のコンデンサ用電極シート。
  5. AlまたはAl合金からなる芯材の少なくとも片面に、ZrとAlとからなる金属間化合物を含むAl−Zr−Si合金粉末を溶射し、AlにZrおよびSiが固溶された固溶体相中に前記金属間化合物が分散した合金層を積層するに際し、
    前記Al−Zr−Si合金粉末として、該合金中のAlとZrの原子数比がAl:Zr=1:0.05〜1:0.15であり、該合金層中のSi濃度(Csi)が、AlとZrの合計に対するAlの割合をDAl質量%としたときに下記(i)式においてK=4〜17の範囲となされている
    si(質量%)={(DAl−47)/53}×K …(i)
    合金粉末を用いることを特徴とするコンデンサ用電極シートの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載されたコンデンサ用電極シートをエッチングした後、さらに化成処理を行って表面に誘電体皮膜を形成することを特徴とする電解コンデンサ用陽極材の製造方法。
  7. 請求項6に記載された製造方法により製造された電解コンデンサ用陽極材。
  8. 請求項7に記載された電解コンデンサ用陽極材を用いて構成された電解コンデンサ。
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