JP2008280854A - 内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents

内燃機関の空燃比制御装置 Download PDF

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【課題】 第1触媒と同触媒より下流の第2触媒との間に配設された起電力式の酸素濃度センサの出力値から算出される補正値に基づく空燃比フィードバック制御をする空燃比制御装置において第2触媒に流入するNOxの量を抑制しつつOを十分に供給すること。
【解決手段】 この装置は、酸素濃度センサの出力がリッチを示す値からリーンを示す値に反転してから所定期間βにおいて、空燃比リッチ制御をするのに代えて、触媒上流空燃比を、同反転前の空燃比リーン制御における触媒上流側空燃比の理論空燃比からのリーン方向の偏移程度(リーン深さ)より小さいリーン深さをもつ理論空燃比よりリーンな空燃比に制御する。ここで、上記反転前の空燃比リーン制御におけるリーン深さが大きいほど、第1触媒からのO流出開始時期がNOx流出開始時期に近づく傾向がある。これにより、第1触媒からのO流出期間を長くでき、NOx流出量を抑制することができる。
【選択図】 図5

Description

本発明は、内燃機関の排気通路に配設された第1触媒の下流であって、第1触媒より下流の排気通路に配設された第2触媒の上流の排気通路に設けられた起電力式の酸素濃度センサの出力値に基づいて、第1触媒に流入するガスの空燃比である触媒上流空燃比をフィードバック制御する内燃機関の空燃比制御装置に関する。
従来より、この種の空燃比制御装置が広く知られている。例えば、特許文献1に記載の空燃比制御装置では、内燃機関の排気通路に配設された酸素吸蔵機能を有する第1触媒(三元触媒)よりも下流であって、第1触媒よりも下流の排気通路に配設された酸素吸蔵機能を有する第2触媒(三元触媒)よりも上流の排気通路に配設された、起電力式(濃淡電池式)の酸素濃度センサの出力値と目標空燃比(=理論空燃比)に相当する値との偏差が比例・積分・微分処理(PID処理)されてフィードバック補正値が算出されるようになっている。そして、フィードバック補正値に基づいて燃料噴射量が補正されることで、触媒上流空燃比が目標空燃比に一致するようフィードバック制御されるようになっている。
特開2005−351250号公報
図13は、上記文献に記載の空燃比制御装置により上述したフィードバック制御が実行される際の各種変数の変化の一例を示したタイムチャートである。前記酸素濃度センサの出力がリッチを示す値(最大値)に維持されているときに、燃料噴射量を減量する方向に補正するためのフィードバック補正値が算出されることで、前記触媒上流空燃比が理論空燃比よりリーンな空燃比に制御される。この制御を「空燃比リーン制御」と称呼する。一方、前記酸素濃度センサの出力がリーンを示す値(最小値)に維持されているときに、燃料噴射量を増量する方向に補正するためのフィードバック補正値が算出されることで、前記触媒上流空燃比が前記理論空燃比よりリッチな空燃比に制御される。この制御を「空燃比リッチ制御」と称呼する。
上記起電力式の酸素濃度センサの出力は、一旦リッチを示す値(最大値)になると、その後の空燃比リーン制御により第1触媒から比較的多量の窒素酸化物NOx(、及び酸素O)が流出してくるまで同リッチを示す値に維持され、一旦リーンを示す値(最小値)になると、その後の空燃比リッチ制御により第1触媒から比較的多量の一酸化炭素CO、及び未燃炭化水素HCが流出してくるまで同リーンを示す値に維持される特性を有する。
従って、上述のようにフィードバック制御が実行されると、酸素濃度センサの出力のリッチを示す値からリーンを示す値への反転前後の短期間において第1触媒から窒素酸化物NOx、及び酸素Oが流出し、酸素濃度センサの出力のリーンを示す値からリッチを示す値への反転前後の短期間において第1触媒から一酸化炭素CO、及び未燃炭化水素HCが流出する。また、未燃炭化水素HCについては、燃料噴射が実行される全期間に亘って第1触媒から微量の未燃炭化水素HCが流出する傾向がある。以下、酸素濃度センサの出力のリッチを示す値からリーンを示す値への反転を、単に「リッチからリーンへの反転」と、酸素濃度センサの出力のリーンを示す値からリッチを示す値への反転を、単に「リーンからリッチへの反転」と称呼することもある。また、第1触媒から流出する窒素酸化物NOx、酸素O、一酸化炭素CO、及び未燃炭化水素HCを、単にNOx,O,CO、及びHCとそれぞれ称呼することもある。
このCO,HCは第1触媒より下流の排気通路に配設された第2触媒に流入し、第2触媒中のプラチナPt等の貴金属に吸着される。これにより、第2触媒の活性の程度が低下する所謂「被毒」が発生する。ここで、Oも第2触媒に流入することに着目し、上記吸着されているCO,HCを同流入するOを利用して酸化させることで、第2触媒の被毒を解消させることが考えられる。
しかしながら、上述のフィードバック制御では、Oの流出期間が短いため、第2触媒に供給されるOの総量が小さい。このため、上記第2触媒の被毒を十分に解消させることが困難であった。
そこで、第2触媒に供給されるOの総量を大きくする観点から、「リッチからリーンへの反転」からの所定期間(以下、「リーンディレイ期間」とも称呼する。)において、上記空燃比リッチ制御を実行するのに代えて、触媒上流空燃比を理論空燃比よりリーンな空燃比に制御する「空燃比リーンディレイ制御」を実行することが提案されている。以下、上述したフィードバック制御に加え、空燃比リーンディレイ制御が実行される場合における、各種変数の変化の一例を示したタイムチャートである図14を参照しながら、空燃比リーンディレイ制御が実行される場合におけるNOx、及びOの流出傾向について説明する。
ここで、NOx、及びOの第1触媒からの流出が開始するタイミング(以下、単に「NOx流出開始タイミング」、及び「O流出開始タイミング」とそれぞれ称呼する。)について付言する。「リッチからリーンへの反転」前の空燃比リーン制御中においては、触媒上流空燃比が理論空燃比よりリーンな空燃比に制御されるため、第1触媒の酸素吸蔵量OSAが増大していく。そして、第1触媒の酸素吸蔵量OSAが第1触媒の最大酸素吸蔵量Cmaxに達したとき、O流出開始タイミングが到来する。
一方、第1触媒の酸素吸蔵量OSAが、上記最大酸素吸蔵量Cmaxより若干小さい或る値OSANに達したとき、NOx流出開始タイミングが到来する。これは、第1触媒に流入するガス中のNOxの濃度が同排ガス中のOの濃度に比して小さいこと、第1触媒においてNOxから酸素が脱離した後に酸素が吸蔵されること等により、第1触媒におけるNOxの処理速度が第1触媒に流入するOの吸蔵速度より小さいことに基づくと考えられる。
即ち、上記O流出開始タイミングは、上記最大酸素吸蔵量Cmaxからの上記値OSAの乖離の程度δOSA(以下、「NOx未処理区間δOSA」と称呼する。)に相当する分だけ、上記NOx流出開始タイミングより遅れて到来する。以下、NOx流出開始タイミングからO流出開始タイミングまでの時間を「O流出遅れ時間」と称呼する。
上記乖離の程度δOSAが一定の場合、「リッチからリーンへの反転」前の空燃比リーン制御中における触媒上流空燃比の理論空燃比からのリーン方向の偏移の程度が大きいほど(即ち、第1触媒に流入するガス中のNOx、及びO濃度が大きいほど)、第1触媒の酸素吸蔵量OSAの増大速度が増大するのに伴い、上記O流出遅れ時間がより短くなる。以下、触媒上流空燃比の理論空燃比からのリーン方向の偏移の程度を、「リーン深さ」と称呼する。
即ち、NOx流出開始タイミング、及びO流出開始タイミングにおいては、「リッチからリーンへの反転」前の空燃比リーン制御中における上記リーン深さが大きいほど、上記O流出遅れ時間がより短くなる。
先ず、空燃比リーン制御、及び空燃比リーンディレイ制御の何れにおいても、上記リーン深さが大きい場合について説明する(図14の実線を参照)。この場合、上記リーンディレイ期間において、フィードバック補正値は、「リッチからリーンへの反転」に対応する時刻tA(の直前)(即ち、リーンディレイ期間の始期tA(の直前))において算出されていたフィードバック補正値Vafsfbと等しい値に維持され、リーンディレイ期間の終期tB1以降、通常の空燃比リッチ制御を実行するための値となる。
空燃比リーン制御中においては、第1触媒の酸素吸蔵量OSAの増大速度が大きいため、上記O流出遅れ時間が短い(期間δtOを参照)。従って、NOx流出開始タイミングtNが到来した後、O流出開始タイミングtOが比較的早く到来する。空燃比リーンディレイ制御が実行されるため、上記時刻tA以降、NOx、及びOが大きい濃度N、及び大きい濃度Oをもって第1触媒からそれぞれ流出していく。そして、リーンディレイ期間の終期tB1にて第1触媒からの流出がそれぞれ終了する。これにより、第2触媒に供給されるOの量が上記被毒を解消するのに十分な量となり得る一方、第2触媒に流入するNOxの量が過度に大きくなるという問題がある。
次に、空燃比リーン制御、及び空燃比リーンディレイ制御の何れにおいても、上記リーン深さが小さい場合について説明する(図14の破線を参照)。この場合、上記リーンディレイ期間において、フィードバック補正値は、上記時刻tAにおけるフィードバック補正値Vafsfb’(|Vafsfb’|<|Vafsfb|)と等しい値に維持され、リーンディレイ期間の終期tB1以降、通常の空燃比リッチ制御を実行するための値となる。
空燃比リーン制御中においては、第1触媒の酸素吸蔵量OSAの増大速度が小さいため、上記O流出遅れ時間が長い(期間δtO’を参照)。従って、NOx流出開始タイミングtNが到来した後、O流出開始タイミングtO’が遅く到来する。空燃比リーンディレイ制御が実行されるため、上記時刻tA以降、NOx、及びOが小さい濃度N’、及び小さい濃度O’をもって第1触媒からそれぞれ流出していく。そして、リーンディレイ期間の終期tB1にて第1触媒からの流出がそれぞれ終了する。これにより、第2触媒に流入するNOxの量が過度に大きくなることが抑制され得る一方、第2触媒に供給されるOの量が上記被毒を解消するのに十分な量に達しないという問題がある。
従って、本発明の目的は、積極的に第1触媒からOを流出させるための上記空燃比リーンディレイ制御が実行される内燃機関の制御装置において、第2触媒に供給される(第1触媒から流出する)Oの量が第2触媒の被毒を解消するのに十分な量とされつつ、第2触媒に流入する(第1触媒から流出する)NOxの量が過度に大きくなることが抑制され得るものを提供することにある。
本発明に係る空燃比制御装置は、排気通路に配設された酸素吸蔵機能を有する第1触媒と、第1触媒よりも下流の排気通路に配設された酸素濃度センサと、酸素濃度センサよりも下流の排気通路に配設された第2触媒とを備えた内燃機関に適用される。
本発明に係る空燃比制御装置の特徴は、前記酸素濃度センサの出力がリーンを示す値からリッチを示す値に反転した後同リッチを示す値に維持されているときに前記触媒上流空燃比を理論空燃比よりリーンな空燃比である第1リーン空燃比に制御し、前記酸素濃度センサの出力がリッチを示す値からリーンを示す値に反転した後同リーンを示す値に維持されているときに前記触媒上流空燃比を前記理論空燃比よりリッチな空燃比に制御する空燃比制御手段と、前記酸素濃度センサの出力のリッチを示す値からリーンを示す値への反転から第1所定期間(即ち、上記リーンディレイ期間)において、前記触媒上流空燃比を、前記理論空燃比よりリッチな空燃比に代えて、上記リーン深さが前記第1リーン空燃比のものより小さい前記理論空燃比よりリーンな空燃比である第2リーン空燃比に制御する空燃比リーンディレイ制御手段とを備えたことにある。
ここにおいて、「前記第2リーン空燃比」は、例えば、リッチを示す値(最大値)に維持されていた酸素濃度センサの出力が減少し始める時点に対応する第1リーン空燃比のリーン深さより小さいリーン深さをもつ理論空燃比よりリーンな空燃比、「リッチからリーンへの反転」前の空燃比リーン制御期間中において変化する第1リーン空燃比のリーン深さの平均値より小さいリーン深さをもつ理論空燃比よりリーンな空燃比、空燃比リーン制御期間中において変化する第1リーン空燃比のリーン深さの最大値より小さいリーン深さをもつ理論空燃比よりリーンな空燃比等であり、これらに限定されない。
上記構成によれば、第1リーン空燃比のリーン深さが、第2リーン空燃比のリーン深さより大きくされ得る。従って、上記NOx流出タイミング(図14の時刻tNを参照)から上記リーンディレイ期間の始期(図14の時刻tAを参照)までの、第1触媒の酸素吸蔵量の増大速度が大きくされ得、上記O流出遅れ時間が短くされ得る。これにより、Oが第2触媒に流入する期間が長くされ得る。
また、第2リーン空燃比のリーン深さが、第1リーン空燃比のリーン深さより小さくされ得る。これにより、上記リーンディレイ期間中に第2触媒に流入するガス中のNOxの濃度が小さくされ得る。以上のことから、第2触媒に供給されるOの量を第2触媒の被毒を解消するのに十分な量にしつつ、第2触媒に流入するNOxの量が過度に大きくなることを抑制することができる。
本発明に係る空燃比制御装置においては、同空燃比制御装置が、前記第1触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど、前記第1所定期間(即ち、上記リーンディレイ期間)をより短い時間に決定する手段を備えるように構成されることが好適である。
ここにおいて、「前記第1触媒の最大酸素吸蔵量」は、第1触媒が吸蔵し得る酸素の最大量であり、第1触媒の温度が低いほど、また第1触媒の劣化の程度が大きいほどより小さくなる量である。
酸素吸蔵機能を有する第1触媒においては、第1触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど、上記NOx未処理区間がより小さくなる傾向がある。従って、「リッチからリーンへの反転」前の空燃比リーン制御中における第1触媒の酸素吸蔵量の増大速度が同一の場合(即ち、空燃比リーン制御中におけるリーン深さが同一の場合)においては、第1触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど、上記O流出遅れ時間がより短くなる。
また、上記O流出遅れ時間が短いほど、第1触媒からOが流出する期間がより長くなり得る。従って、上記リーンディレイ期間が同一の場合においては、第1触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど、第1触媒からOが流出する期間がより長くなる(後述する図6の破線を参照)。
このことは、例えば、第1触媒からOが流出する期間を同一の所定の期間とする場合において(即ち、第1触媒から流出するOの総量を同一の所定量とする場合において)、第1触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど、上記O流出遅れ時間が短くなる分だけ上記リーンディレイ期間の終期を早められる(即ち、リーンディレイ期間を短くする)余地が大きくなることを意味する。
他方、上記リーンディレイ期間の終期が早いほど、第1触媒からNOxが流出する期間もより短くなり、第2触媒に流入するNOxの総量がより小さくなる。従って、上記構成によれば、第1触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど、上記リーンディレイ期間がより短くされることで、第2触媒に供給されるOの総量を同一の所定量に維持しながら、第2触媒に流入するNOxの総量を上記リーンディレイ期間が短くされた分だけ小さくすることができる。従って、上記同一の所定量を、上記第2触媒の被毒の解消のために必要なOの量に設定することで、第2触媒に流入するNOxの量を更に小さくすることができる。
このように、前記第1触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど上記リーンディレイ期間がより短い時間に決定される場合、上記空燃比制御装置が、前記第1触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど、前記第2リーン空燃比のリーン深さをより大きい程度に決定する手段を備えるように構成されてもよい。
この場合において、上記リーンディレイ期間が短くされることで第2触媒に流入するNOxの量がより小さくなることは、同NOxの量を増大させられる余地がより大きくなることを意味する。即ち、上記リーンディレイ期間が短くされるほど、同リーンディレイ期間における第2リーン空燃比のリーン深さをより大きくすることで、第1触媒から流出するガス中のNOxの濃度、及びOの濃度を大きくできる余地がより大きくなる(後述する図6の1点鎖線を参照)。
上記構成によれば、第1触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど(即ち、上記リーンディレイ期間がより短くされるほど)、第2リーン空燃比のリーン深さがより大きくされる。これにより、第2触媒に流入するNOxの量が過度に大きくなることが抑制されつつ、第2触媒に供給されるOの総量を上記リーン深さが大きくされた分だけ大きくすることができる。
例えば、第1触媒の最大酸素吸蔵量の減少に応じて上記リーンディレイ期間が短くされた分に対応するNOxの減少量だけNOxの量を増大させるように、第2リーン空燃比のリーン深さを増大させれば、第2触媒に流入するNOxの総量を同一の所定量に維持しながら第2触媒に供給されるOの総量を増大させることができる。上記同一の所定量が、第2触媒に流入するNOxの総量が第2触媒への流入が許容される範囲内の所定量に設定されることで、同NOxの総量が同範囲を逸脱することが抑制され得、第2触媒の被毒をより効果的に解消させることができる。
本発明に係る空燃比制御装置においては、前記第2触媒が酸素吸蔵機能を有する場合、同空燃比制御装置が、前記内燃機関の運転状態に応じて燃料噴射を禁止する処理(以下、「フューエルカット処理」とも称呼する。)を行う手段と、過去において最も後に発生した前記燃料噴射を禁止する処理の終了時点から前記第1所定期間(上記リーンディレイ期間)の始期までの期間が短いほど前記第1所定期間をより短い時間に決定する手段を備えるように構成されることが好適である。
第2触媒が酸素吸蔵機能を有している場合、上記フューエルカット処理の実行中において、理論空燃比から大きくリーン方向に偏移した空燃比のガスが第2触媒に流入することで第2触媒の酸素吸蔵量が大きい速度をもって増大していく。従って、上記フューエルカット処理の終了時点においては、同第2触媒の酸素吸蔵量が大きい量となっており、第2触媒に流入するNOxを処理し得る余地が小さい場合が多い。
上記フューエルカット処理の終了時点以降、上述したフィードバック制御が実行されることにより、同終了時点から新たなフューエルカット処理が実行されることなく経過した時間が長いほど、第2触媒の酸素吸蔵量が減少していくことに伴い、第2触媒に流入するNOxを処理し得る余地がより大きくなる。
従って、過去において最も後に発生した上記フューエルカット処理の終了時点から上記リーンディレイ期間の始期までの期間が短いほど、第2触媒に流入するNOxを処理し得る余地がより小さいため、第2触媒に流入するNOxの量をより小さくする必要がある。このためには、上記終了時点から上記リーンディレイ期間の始期までの期間が短いほど、上記リーンディレイ期間をより短くすればよい。
上記構成は係る知見に基づく。これにより、第2触媒に流入するNOxの処理をする余地が考慮されながらリーンディレイ期間が決定されるから、第2触媒から流出するNOxの量が過度に大きくなることが抑制されつつ、上記空燃比リーンディレイ制御を実行することができる。
また、本発明に係る空燃比制御装置においては、前記第2触媒が酸素吸蔵機能を有する場合、同空燃比制御装置が、前記第2触媒が活性状態となる前記第2触媒の温度範囲内の基準温度から前記第2触媒の温度が乖離するほど前記第1所定期間(上記リーンディレイ期間)をより短い時間に決定する手段を備えるように構成されることが好適である。
一般に、酸素吸蔵機能を有する触媒において、触媒の劣化の程度が同一である場合、触媒の温度が、触媒が活性状態となる触媒の温度範囲の下限温度より低いほど、触媒の最大酸素吸蔵量が小さくなる。また、触媒の最大酸素吸蔵量は、触媒に流入するNOxを処理し得る余地の大きさをも表す値となる。従って、触媒の温度が上記温度範囲の下限温度より低いほど、触媒に流入するNOxの量を小さくする必要がある。
他方、上記触媒の温度が比較的高い場合、同触媒に大きい量のOが流入すると触媒の劣化が進行する場合が多く、触媒の劣化が過度に進行しないOの流入量の範囲の上限量は、触媒の温度が高いほど小さくなる傾向がある。
従って、第2触媒が酸素吸蔵機能を有する場合、第2触媒の温度が高いほどリーンディレイ期間をより長くすると、第2触媒から流出するNOxの量が過度に大きくなることは抑制され得るものの、第2触媒に流入するOの量が上記範囲の上限量より大きくなり得、第2触媒の劣化が過度に進行し得るという問題がある。一方、第2触媒の温度が低いほどリーンディレイ期間をより長くすると、第2触媒の劣化が過度に進行することは抑制され得るものの、第2触媒に流入するNOxの量が処理し得る量より大きくなり得、第2触媒から流出するNOxの量が過度に大きくなり得るという問題がある。
上記構成によれば、第2触媒の温度が基準温度より低いほど、また、第2触媒の温度が基準温度より高いほど、リーンディレイ期間がより短く決定され得る。従って、例えば、基準温度を、所定の長さのリーンディレイ期間に対応する量のNOxを処理し得る第2触媒の温度範囲内の温度であって、同リーンディレイ期間に対応する量のOが第2触媒に流入しても第2触媒の劣化が過度に進行しない第2触媒の温度範囲の上限温度に設定することで、第2触媒の過度な劣化を抑制しつつ、第2触媒からNOxが流出する量が過度に大きくなることを抑制することができる。
また、本発明に係る空燃比制御装置においては、前記内燃機関が、前記酸素濃度センサよりも下流であって前記第2触媒よりも上流の前記排気通路に配設されて前記第1触媒から流出するガスの空燃比が前記理論空燃比よりもリーンのときに前記第1触媒から流出するガス中のNOxを吸収し前記理論空燃比のとき又は前記理論空燃比よりもリッチのときに前記吸収したNOxを放出して還元する吸蔵還元型NOx触媒を備えるように構成されてもよい。
これによれば、上記空燃比リーンディレイ制御中において、第1触媒から流出する理論空燃比よりリーンな空燃比のガス中のNOxが吸収されるから、第2触媒に流入するNOxの量が抑制されつつ、同ガス中のOが選択的に第2触媒に供給され得る。従って、第2触媒に流入するNOxを処理し得る余地の大きさにかかわらず、上記空燃比リーンディレイ制御において、リーンディレイ期間を大きくする、及び/又は、リーン深さを大きくすることで、第2触媒に供給されるOの総量が大きくされ得る。この結果、第2触媒から流出するNOxの量が過度に大きくなることが抑制されつつ、第2触媒の被毒をより効果的に解消させることができる。
このように、前記内燃機関の排気通路に前記吸蔵還元型NOx触媒が備えられている場合、上記空燃比制御装置が、前記酸素濃度センサの出力のリーンを示す値からリッチを示す値への反転から第2所定期間において、前記触媒上流空燃比を、前記第1リーン空燃比に代えて、前記理論空燃比よりリッチな空燃比に制御する空燃比リッチディレイ制御手段を備えるように構成されることが好適である。
これによれば、上記空燃比リッチディレイ制御が実行されない場合に比して、第1触媒から流出するCO,HCの量がより大きくされる。従って、上記空燃比リッチディレイ制御の実行中において、理論空燃比よりリッチな空燃比のガスを利用して吸蔵還元型NOx触媒中のNOxの還元を十分に行うことができる。この結果、上記空燃比リーンディレイ制御により、吸蔵還元型NOx触媒のNOx吸蔵量が、同触媒がNOxを吸蔵し得る最大量に達した場合であっても、同触媒中のNOxの還元が十分に行われることで、同触媒のNOx吸蔵機能を十分に回復させることができる。
以下、本発明による内燃機関の空燃比制御装置の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る空燃比制御装置を火花点火式多気筒(4気筒)内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。この内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース、及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排気ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23、及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これによりクランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22のヘッドは、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともにインテークカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38、及び燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ39を備えている。
吸気系統40は、吸気ポート31に連通し吸気ポート31とともに吸気通路を形成するインテークマニホールドを含む吸気管41、吸気管41の端部に設けられたエアフィルタ42、吸気管41内にあって吸気通路の開口断面積を可変とするスロットル弁43、及びスロットル弁駆動手段を構成するDCモータからなるスロットル弁アクチュエータ43aを備えている。
排気系統50は、排気ポート34に連通したエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51に接続されたエキゾーストパイプ52、エキゾーストパイプ52に配設された上流側触媒(スタート・コンバータ、前記第1触媒に対応)53、上流側触媒53よりも下流のエキゾーストパイプ52に配設された下流側触媒(アンダフロア・コンバータ、前記第2触媒に対応)54を備えている。排気ポート34、エキゾーストマニホールド51及びエキゾーストパイプ52は、排気通路を構成している。
上流側触媒53及び下流側触媒54のそれぞれは、所謂、プラチナPt等の貴金属からなる活性成分を担持する三元触媒装置である。各触媒は、触媒流入ガスがほぼ理論空燃比であるとき、CO,HCなどの未燃ガスを酸化するとともに、NOxを還元する機能を有する。更に、各触媒は、酸素を吸蔵(貯蔵)する酸素吸蔵機能を有し、この酸素吸蔵機能により空燃比が理論空燃比から偏移したとしても未燃ガス及びNOxを浄化することができる。この酸素吸蔵機能は、触媒の担体であるセリアCeOによってもたらされる。
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ61、スロットルポジションセンサ62、カムポジションセンサ63、クランクポジションセンサ64、水温センサ65、空燃比センサ66、酸素濃度センサ67、上流側触媒温度センサ68S、下流側触媒温度センサ68U、及びアクセル開度センサ69を備えている。
熱線式エアフローメータ61は、吸気管41内を流れる吸入空気の単位時間あたりの質量流量を検出し、質量流量Gaを表す信号を出力するようになっている。スロットルポジションセンサ62は、スロットル弁43の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。カムポジションセンサ63は、インテークカムシャフトが90°回転する毎に(即ち、クランク軸24が180°回転する毎に)一つのパルスを有する信号(G2信号)を発生するようになっている。クランクポジションセンサ64は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともにクランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、運転速度NEを表す。水温センサ65は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
空燃比センサ66は、排気通路であって上流側触媒53よりも上流側に配設されている。空燃比センサ66は、所謂「限界電流式酸素濃度センサ」であって、上流側触媒53に流入する排ガス中の空燃比(以下、「触媒上流空燃比」と称呼する。前記触媒上流空燃比に対応)を検出し、図2に実線にて示したように、空燃比A/Fに応じた電流を出力し、この電流に応じた電圧である出力値Vabyfs(V)を出力するようになっている。特に、正常状態では、空燃比が理論空燃比であるときに出力値Vabyfs(V)は値Vstoich(V)になるようになっている。図2から明らかなように、空燃比センサ66によれば、広範囲にわたる空燃比A/Fを精度良く検出することができる。
酸素濃度センサ67は、排気通路であって上流側触媒53よりも下流側であり下流側触媒54よりも上流側に配設されている。酸素濃度センサ67は、所謂「起電力式(濃淡電池型)酸素濃度センサ」である。図3に示したように、酸素濃度センサ67は、上流側触媒53から流出するガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチ及びリーンのとき略0.9(V)(最大値)及び略0.1(V)(最小値)の電圧をそれぞれ出力し、上流側触媒53から流出するガスの空燃比が理論空燃比であるときは0.5(V)(=下流側目標値Voxsref)の電圧を出力するようになっている。
上流側触媒温度センサ68Sは、上流側触媒53の温度を検出し、上流側触媒温度THSCを表す信号を出力するようになっている。下流側触媒温度センサ68Uは、下流側触媒54の温度を検出し、下流側触媒温度THUFを表す信号を出力するようになっている。アクセル開度センサ69は、運転者によって操作されるアクセルペダル81の操作量を検出し、アクセルペダル81の操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置70は、互いにバスで接続されたCPU71、CPU71が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、及び定数等を予め記憶したROM72、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM73、電源が投入された状態でデータを格納するとともに格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM74、並びにADコンバータを含むインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。インターフェース75は、前記センサ61〜69と接続され、CPU71にセンサ61〜69からの信号を供給するとともに、CPU71の指示に応じて可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、イグナイタ38、インジェクタ39、及びスロットル弁アクチュエータ43aに駆動信号を送出するようになっている。
(空燃比フィードバック制御の概要)
次に、上記のように構成された空燃比制御装置が行う空燃比のフィードバック制御の概要について説明する。
この空燃比制御装置(以下、「本装置」と称呼する。)は、酸素濃度センサ67の出力値Voxsと目標空燃比に相当する下流側目標値Voxsref(=0.5(V))との偏差DVoxs(=Voxsref-Voxs)を比例・積分・微分処理(PID処理)した値である下流側PID処理値sfbpidを求め、原則的に、下流側フィードバック補正値Vafsfbを下流側PID処理値sfbpidと等しい値に決定する。
一方、後述するように、酸素濃度センサ67の出力のリッチを示す値(略0.9(V)(最大値))からリーンを示す値(略0.1(V)(最小値))への反転(以下、単に「リッチからリーンへの反転」とも称呼する。)から所定の期間(以下、「リーンディレイ期間β」と称呼する。前記第1所定期間に対応)においては、本装置は、上記下流側PID処理値sfbpidに代えて、下流側フィードバック補正値Vafsfbを、触媒上流空燃比を理論空燃比よりリーンな空燃比とするための値である後述するリーンディレイ補正値sfbdelayと等しい値に決定する。
そして、本装置は、下流側フィードバック補正値Vafsfb(即ち、下流側PID処理値sfbpid、又は、リーンディレイ補正値sfbdelay)を空燃比センサ66の出力値Vabyfsに加えて空燃比センサ66の出力値Vabyfsを補正し、この補正した値に対応する空燃比(以下、「制御用空燃比」と称呼する。)が目標空燃比と一致するように空燃比をフィードバック制御する。特に、上記リーンディレイ補正値sfbdelayが用いられる際の制御を「空燃比リーンディレイ制御」と称呼する。
より具体的に述べると、本装置は、機能ブロック図である図4に示したように、A1〜A11の各機能ブロックを含んで構成されている。以下、図4を参照しながら各機能ブロックについて説明していく。
<基本燃料噴射量の算出>
先ず、筒内吸入空気量算出手段A1は、エアフローメータ61が計測している吸入空気流量Gaと、クランクポジションセンサ64の出力に基づいて得られる運転速度NEと、ROM72が記憶しているテーブルMapMcとに基づき、吸気行程を迎える気筒の今回の吸入空気量である筒内吸入空気量Mcを求める。
上流側目標空燃比設定手段A2は、内燃機関10の運転状態である運転速度NE、及びスロットル弁開度TA等に基づいて上流側目標空燃比abyfrを決定する。この上流側目標空燃比abyfrは、例えば、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得するために触媒上流空燃比を理論空燃比からリッチ側、及びリーン側に交互に変動させる(所謂、アクティブ空燃比制御)場合等の特殊な場合を除き理論空燃比に設定されている。なお、アクティブ空燃比制御については、例えば、特開平5−133264号公報等に記載されているので、ここではその詳細な説明を省略する。
基本燃料噴射量算出手段A3は、筒内吸入空気量算出手段A1により求められた筒内吸入空気量Mcを上流側目標空燃比設定手段A2により設定された上流側目標空燃比abyfrで除することにより、空燃比を上流側目標空燃比abyfrとするための今回の吸気行程に対する基本燃料噴射量Fbaseを求める。
このようにして、本装置は、筒内吸入空気量算出手段A1、上流側目標空燃比設定手段A2、基本燃料噴射量算出手段A3を利用して、基本燃料噴射量Fbaseを求める。
<燃料噴射量の算出>
燃料噴射量算出手段A4は、基本燃料噴射量算出手段A3により求められた基本燃料噴射量Fbaseに、後述する上流側フィードバック補正値DFiを加えることで、下記(1)式に基づいて燃料噴射量Fiを求める。
Fi=Fbase+DFi ・・・(1)
このようにして、本装置は、燃料噴射量算出手段A4により、基本燃料噴射量Fbaseを上流側フィードバック補正値DFiに基づいて補正することにより得られる燃料噴射量Fiの燃料の噴射指示を今回の吸気行程を迎える気筒についてのインジェクタ39に対して行う。
<下流側フィードバック補正値の算出>
先ず、下流側目標値設定手段A5は、上述した上流側目標空燃比設定手段A2と同様、内燃機関10の運転状態である運転速度NE、及びスロットル弁開度TA等に基づいて下流側目標値Voxsrefを決定する。この下流側目標値Voxsrefは、本例では、下流側目標値Voxsrefに対応する空燃比が上述した上流側目標空燃比abyfrと常時一致するように設定される。即ち、下流側目標値Voxsrefは、原則的には、理論空燃比に相当する値(0.5(V))に設定される。
出力偏差量算出手段A6は、下記(2)式に基づいて、下流側目標値設定手段A5により設定されている現時点(具体的には、今回のFiの噴射指示開始時点)での下流側目標値Voxsrefから現時点での酸素濃度センサ67の出力値Voxsを減じることにより、出力偏差量DVoxsを求める。
DVoxs=Voxsref−Voxs ・・・(2)
下流側フィードバック補正値算出手段A7は、出力偏差量DVoxsを比例・積分・微分処理(PID処理)することで、下記(3)式に基づいて下流側PID処理値sfbpidを求める。
sfbpid=Kp・DVoxs+Ki・SDVoxs+Kd・DDVoxs ・・・(3)
上記(3)式において、Kpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Kiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)、Kdは予め設定された微分ゲイン(微分定数)である。また、SDVoxsは出力偏差量DVoxsの時間積分値であり、DDVoxsは出力偏差量DVoxsの時間微分値である。即ち、下流側目標値Voxsrefと酸素濃度センサ67の出力値Voxsとの定常偏差がゼロになるように下流側PID処理値sfbpidが求められる。
また、本装置は、上記「リッチからリーンへの反転」からリーンディレイ期間βの始期において、下記(4)に基づいて、リーンディレイ期間βの始期の直前に上記PID処理により求められていた下流側PID処理値sfbpid1に後述するリーン深さ係数γ(<1.0)を乗じることにより、リーンディレイ補正値sfbdelayを求める。
sfbdelay=sfbpid1・γ ・・・(4)
そして、本装置は、原則的には、下流側フィードバック補正値Vafsfbを上記下流側PID処理値sfbpidに設定する。一方、上記リーンディレイ期間βにおいては、下流側フィードバック補正値Vafsfbを、上記下流側PID処理値sfbpidに代えて、上記リーンディレイ補正値sfbdelayに設定する。これにより、上記空燃比リーンディレイ制御が実行されるようになっている。なお、空燃比リーンディレイ制御実行中においても、上記下流側PID処理値sfbpidの算出が実行されるようになっている。
このようにして求められる下流側フィードバック補正値Vafsfb(即ち、下流側PID処理値sfbpid、又は、リーンディレイ補正値sfbdelay)は、後述するように制御用空燃比abyfsの取得に用いられる。
<上流側フィードバック補正値の算出>
制御用空燃比相当出力値算出手段A8は、空燃比センサ66の出力値Vabyfsに、下流側フィードバック補正値算出手段A7により求められた下流側フィードバック補正値Vafsfbを加えることで、制御用空燃比相当出力値(Vabyfs+Vafsfb)を求める。
テーブル変換手段A9は、制御用空燃比相当出力値算出手段A8により算出された制御用空燃比相当出力値(Vabyfs+Vafsfb)と、先に説明した図2にグラフにより示した空燃比センサ66の出力値Vabyfsと空燃比A/Fとの関係を規定したテーブルMapabyfsとに基づいて、制御用空燃比abyfsを求める。このように、制御用空燃比abyfsは、空燃比センサ66の出力値Vabyfsに対応する空燃比(検出空燃比)に対して下流側フィードバック補正値Vafsfbに相当する分だけ異なる空燃比(見かけ上の空燃比)である。
空燃比偏差算出手段A10は、下記(5)式に基づいて、テーブル変換手段A9により求められた制御用空燃比abyfsから上記上流側目標空燃比abyfrを減じることにより、空燃比偏差DAFを求める。この空燃比偏差DAFは、燃料供給量の過不足分を表す量となる。
DAF=abyfs−abyfr ・・・(5)
上流側フィードバック補正値算出手段A11は、空燃比偏差算出手段A10により算出された空燃比偏差DAFを比例・積分処理(PI処理)することで、下記(6)式に基づいて燃料供給量の過不足を補償するための上流側フィードバック補正値DFiを求める。
DFi=Gp・DAF+Gi・SDAF ・・・(6)
上記(6)式において、Gpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Giは予め設定された積分ゲイン(積分定数)である。SDAFは空燃比偏差DAFの時間積分値である。係る上流側フィードバック補正値DFiは、先に述べたように燃料噴射量算出手段A4により燃料噴射量Fiを求める際に使用される。
このように、本装置は、上流側目標空燃比abyfrと制御用空燃比abyfsとが一致するように空燃比センサ66の出力値Vabyfsに基づいて空燃比をフィードバック制御する。加えて、制御用空燃比abyfsは、上述したように空燃比センサ66による検出空燃比に対して、下流側フィードバック補正値Vafsfbに相当する分だけ異なる空燃比であるから、酸素濃度センサ67の出力値Voxsの下流側目標値Voxsrefからの出力偏差量DVoxsにも応じて変化する。
例えば、酸素濃度センサ67の出力値Voxsがリッチを示す値(略0.9(V)(最大値))に維持されているときには、上記出力偏差量DVoxs(=Voxsref-Voxs)は負の値となる。このため、下流側フィードバック補正値Vafsfb(=sfbpid)も負の値となり、制御用空燃比が目標空燃比(=理論空燃比)よりリッチ方向へ偏移した空燃比となり、空燃比偏差DAFが負の値となる。従って、上流側フィードバック補正値DFiが負の値となる。これにより燃料噴射量Fiは基本燃料噴射量Fbaseよりも小さくなって、触媒上流空燃比が理論空燃比よりリーン方向に偏移した空燃比に制御される。以下、触媒上流空燃比の理論空燃比よりリーン方向に偏移した空燃比への制御を「空燃比リーン制御」と称呼することもある。
一方、酸素濃度センサ67の出力値Voxsがリーンを示す値(略0.1(V)(最小値))に維持されているときには、上記出力偏差量DVoxs(=Voxsref-Voxs)は正の値となる。このため、下流側フィードバック補正値Vafsfb(=sfbpid)も正の値となり、制御用空燃比が目標空燃比(=理論空燃比)よりリーン方向へ偏移した空燃比となり、空燃比偏差DAFが正の値となる。従って、上流側フィードバック補正値DFiが正の値となる。これにより燃料噴射量Fiは基本燃料噴射量Fbaseよりも大きくなって、触媒上流空燃比が理論空燃比よりリッチ方向に偏移した空燃比に制御される。以下、触媒上流空燃比の理論空燃比よりリッチ方向に偏移した空燃比への制御を「空燃比リッチ制御」と称呼することもある。
(空燃比リーンディレイ制御の概要)
次に、本装置が行う上記空燃比リーンディレイ制御の概要について、発明の開示の欄で説明した図14に対応する図5に示したタイムチャートを参照しながら説明する。
上述のように空燃比のフィードバック制御が実行されると、酸素濃度センサ67の出力のリーンを示す値(略0.1(V))からリッチを示す値(略0.9(V))への反転前後において、上流側触媒53からCO,HCが流出する(図13を参照)。このCO,HCは下流側触媒54に流入し、下流側触媒54中のプラチナPt等の貴金属に吸着されることで、下流側触媒54の被毒が発生する。
下流側触媒54の被毒を十分に解消するためには、上記吸着されているCO,HCを下流側触媒54に流入するOを利用して酸化させればよい。従って、本装置は、下流側触媒54に積極的にOを供給する(即ち、上流側触媒53から流出するOの流出期間を長くすることで、下流側触媒54に供給されるOの総量を大きくする)観点から、上記「リッチからリーンへの反転」(時刻tAを参照)から上記リーンディレイ期間βにおいて、触媒上流空燃比を、理論空燃比よりリッチな空燃比に代えて、理論空燃比よりリーンな空燃比に制御する「空燃比リーンディレイ制御」を実行する。
具体的には、「リッチからリーンへの反転」前の空燃比リーン制御においては、触媒上流空燃比が理論空燃比よりリーンな空燃比に制御されるように、下流側フィードバック補正値Vafsfb(即ち、下流側PID処理値sfbpid)が負の値となるように算出される一方、「リッチからリーンへの反転」時刻tAが到来してから上記リーンディレイ期間βに亘って、下流側フィードバック補正値Vafsfbは、同時刻tA直前に算出されていた下流側PID処理値sfbpid1(<0)にリーン深さ係数γ(0<γ<1.0)が乗じられた値sfbpid1・γ(即ち、上記リーンディレイ補正値sfbdelay)に設定される(図5の実線を参照)。なお、上記値sfbpid1は、「リッチからリーンへの反転」前の空燃比リーン制御期間における下流側PID処理値の最小値となる。
従って、上記リーンディレイ期間βにおいて制御される触媒上流空燃比(前記第2空燃比に対応)の理論空燃比からのリーン方向への偏移の程度(以下、「リーン深さ」と称呼する。)は、上記時刻tAが到来したとき(即ち、下流側PID処理値sfbpidが上記値sfbpid1に算出されている場合)に制御されていた触媒上流空燃比(前記第1空燃比に対応)のリーン深さより小さい。
ここで、上述したように、「リッチからリーンへの反転」前の空燃比リーン制御における上記リーン深さが大きいほど、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSAの増大速度が増大することに伴い、NOx流出開始タイミングからO流出開始タイミングまでの期間であるO流出遅れ時間がより短くなる傾向がある。
本装置との比較対象として、リーンディレイ期間βにおいて制御される触媒上流空燃比のリーン深さが、上記時刻tAが到来したときに制御されていた触媒上流空燃比のリーン深さと等しい値に決定される装置を考える。
例えば、空燃比リーン制御、及び空燃比リーンディレイ制御における触媒上流空燃比のリーン深さがそれぞれ大きく、上記時刻tAが到来したときに対応する下流側フィードバック補正値Vafsfbが上記値sfbpid1と等しい値に算出され、リーンディレイ期間βにおける下流側フィードバック補正値Vafsfbが同値sfbpid1に決定される場合を考える(図5の1点鎖線を参照)。
この場合、O流出遅れ時間が短く(図5のδtO1を参照)、NOx流出開始タイミングtNから比較的早期にO流出開始タイミングtO1が到来する。また、リーンディレイ期間β中に上流側触媒53から流出する排ガス中のNOxの濃度、及びOの濃度は、それぞれ上記値sfbpid1に対応する大きい濃度N1’、及び大きい濃度O1’となる。従って、上流側触媒53から流出するOの流出期間が長く(図5の期間tO1〜tB1を参照)、下流側触媒54に供給されるOの総量が大きくなり得るものの、下流側触媒54に流入するNOxの総量が大きい。
他方、空燃比リーン制御、及び空燃比リーンディレイ制御における触媒上流空燃比のリーン深さがそれぞれ小さく、上記時刻tAが到来したときに対応する下流側フィードバック補正値Vafsfbが上記値sfbpid1・γと等しい値に算出され、リーンディレイ期間βにおける下流側フィードバック補正値Vafsfbが同値sfbpid1・γに決定される場合を考える(図5の破線を参照)。
この場合、O流出遅れ時間が長く(図5のδtO1’を参照)、NOx流出開始タイミングtNから大きく遅れてO流出開始タイミングtO1’が到来する。また、リーンディレイ期間β中の上流側触媒53から流出する排ガス中のNOxの濃度、及びOの濃度は、それぞれ上記値sfbpid1・γに対応する小さい濃度N1’、及び小さい濃度O1’となる。従って、下流側触媒54に流入するNOxの総量が小さくなるものの、上流側触媒53から流出するOの流出期間が短く(図5の期間tO1’〜tB1を参照)、下流側触媒54に供給されるOの総量が小さくなる。
これらに対し、本装置による空燃比リーン制御における触媒上流空燃比のリーン深さは大きいため、O流出遅れ時間が短く(図5のδtO1を参照)、NOx流出開始タイミングtNが到来してから比較的早期にO流出開始タイミングtO1が到来する。従って、上流側触媒53からOが流出する期間が長い(図5の実線、及び期間tO1〜tB1を参照)。
また、本装置による空燃比リーンディレイ制御における触媒上流空燃比のリーン深さは小さいため、上流側触媒53から流出する排ガス中のNOxの濃度、及びOの濃度は、上記値sfbpid1・γに対応する小さい濃度N1、及び濃度O1となる。以上により、下流側触媒54に流入するNOxの総量が過度に大きくなることが抑制されつつ、下流側触媒54に供給されるOの総量が大きくされ得る。
なお、本装置においては、1回の空燃比リーンディレイ制御により上流側触媒53から流出するNOx、及びOの総量が、原則的には、それぞれ値SUMN1、及び値SUMO1と等しい値となるように、リーンディレイ期間β、及びリーン深さ係数γが設定されるようになっている。
より具体的には、上記値SUMO1は、リーンディレイ期間β及びリーン深さ係数γがそれぞれ基準リーンディレイ期間β1及び基準リーン深さ係数γ1であって、上流側触媒53が吸蔵し得る酸素量の最大量である最大酸素吸蔵量Cmaxが、上流側触媒53の劣化の程度がゼロ(即ち、新品の状態)の場合であって、且つ、上流側触媒53の温度が酸素吸蔵機能が最も大きくなり得る温度と等しい場合に対応する基準最大酸素吸蔵量Cmax1である場合において、1回の空燃比リーンディレイ制御開始時において下流側触媒54中に吸着されているCO,HCの全てを酸化し得るOの量の最小値である。
また、上記値SUMN1は、リーンディレイ期間β及びリーン深さγがそれぞれ基準リーンディレイ期間β1及び基準リーン深さγ1であって、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが上記基準最大酸素吸蔵量Cmax1である場合であって、更に、下流側触媒54の酸素吸蔵量がゼロである場合(即ち、下流側触媒54でNOxが処理され得る余地が最大となる場合)において、1回の空燃比リーンディレイ制御において下流側触媒54にて処理され得るNOxの量の最大値である。
(リーンディレイ期間、及びリーン深さ係数の決定方法)
上述したように、本装置では、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが基準最大酸素吸蔵量Cmax1である場合、リーンディレイ期間β及びリーン深さ係数γが、上記基準リーンディレイ期間β1及び基準リーン深さ係数γ1にそれぞれ設定され、1回の空燃比リーンディレイ制御により上流側触媒53から流出するNOx、及びOの総量が、それぞれ値SUMN1、及び値SUMO1と等しい量となるようになっている。
更に、本装置は、上流側触媒53の劣化が進行すること等により、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが上記基準最大酸素吸蔵量Cmax1より小さくなった場合、最大酸素吸蔵量Cmaxの上記基準最大酸素吸蔵量Cmax1からの減少に応じて、上記リーンディレイ期間β及びリーン深さ係数γを、上記基準リーンディレイ期間β1及び基準リーン深さγ1とは異なる値に設定する。
上記基準最大酸素吸蔵量Cmax1であった上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが、同基準最大酸素吸蔵量Cmax1より小さい最大酸素吸蔵量Cmax2へ減少した場合におけるリーンディレイ期間β及びリーン深さ係数γの決定方法について、本装置が空燃比リーンディレイ制御を実行する際の各種変数の変化の一例を示したタイムチャートである図6を参照しながら説明する。
図6の実線は上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが基準最大酸素吸蔵量Cmax1である場合、図6の破線は上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが基準最大酸素吸蔵量Cmax1より小さい最大酸素吸蔵量Cmax2である場合に対応する各種変数の変化を示している。先ず、リーン深さ係数γが上記基準リーン深さ係数γ1であるとして、リーンディレイ期間βの決定方法について詳述する。
ここで、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxと上記O流出遅れ時間との関係について付言する。上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが小さいほど、上記NOx未処理区間δOSAが小さくなる傾向がある。従って、「リッチからリーンへの反転」前の空燃比リーン制御中における上記リーン深さが同一(即ち、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSAの増大速度が同一)である場合、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが小さいほど、上記O流出遅れ時間が短くなる。
即ち、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが上記基準最大酸素吸蔵量Cmax1から上記量Cmax2に減少すると、上記NOx未処理区間がδOSA1からδOSA2(<δOSA1)に減少する。従って、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが上記量Cmax2である場合に対応する上記O流出遅れ時間δtO2は、上記δOSA1とδOSA2との差に相当する時間δβだけ、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが上記基準最大酸素吸蔵量Cmax1である場合に対応する上記O流出遅れ時間δtO1より短くなる。即ち、O流出開始タイミングがtO1よりδβだけ早いtO2となる。
従って、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが上記基準最大酸素吸蔵量Cmax1から上記量Cmax2に減少すると、上記リーンディレイ期間βが上記基準リーンディレイ期間β1である場合において、上流側触媒53からOが流出する量が上記時間δβに相当する分だけ上記値SUMO1より大きくなる(図6の破線を参照)。
このことは、下流側触媒54に供給するOの量を上記値SUMO1にする観点から、上記リーンディレイ期間βを、上記基準リーンディレイ期間β1から上記時間δβだけ短くできる余地がある(即ち、リーンディレイ期間βの終期を上記基準リーンディレイ期間β1の終期tB1から上記時間δβだけ早くできる余地がある)ことを意味する。
他方、リーンディレイ期間βの終期を上記終期tB1から上記時間δβだけ早くできれば、下流側触媒54に流入するNOxの量を上記値SUMN1より時間δβに相当する分だけ小さくすることができる(図6の右下がり斜線部の面積を参照)。
以上のことから、本装置は、リーンディレイ期間βを、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが上記基準最大酸素吸蔵量Cmax1より小さくなった程度に応じた上記O流出遅れ時間の上記時間δO1からの短縮時間だけ、上記基準リーンディレイ期間β1より短い時間に決定する。
本例では、リーンディレイ期間βが、上記基準リーンディレイ期間β1に第1リーンディレイ期間補正係数Kβ1(≦1.0)が乗じられた値に決定されるようになっている。この第1リーンディレイ期間補正係数Kβ1は、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxと、同最大酸素吸蔵量Cmaxと上記第1リーンディレイ期間補正係数Kβ1との関係を規定する図7に示したテーブルMapKβ1(Cmax)とに基づいて決定される。
上記テーブルMapKβ1(Cmax)は、リーン深さ係数γが上記値「γ1」である場合において、リーンディレイ期間βが値「β1・Kβ1」に決定されることで、上流側触媒53から流出するOの量が上記値SUMO1と等しい値になるように適合・作成されたものである。即ち、上記テーブルMapKβ1(Cmax)によれば、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが小さいほど、第1リーンディレイ期間補正係数Kβ1がより小さく決定され、特に、同最大酸素吸蔵量Cmaxが上記基準最大酸素吸蔵量Cmax1と等しい量である場合、第1リーンディレイ期間補正係数Kβ1は「1.0」に決定される。
次に、リーン深さ係数γの決定方法について詳述する。上述のように上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが上記量Cmax2である場合、上記テーブルMapKβ1(Cmax)に基づいて、リーンディレイ期間βの終期が、基準リーンディレイ期間β1の終期tB1から上記時間δβだけ短い時刻tB2とされる。これにより、下流側触媒54に流入するNOxの量が上記値SUMN1より時間δβに相当する分だけ小さくなる(図6の右下がりの斜線の面積を参照)。
このことは、下流側触媒54に流入するNOxの量を上記値SUMN1にする観点から、上流側触媒53から流出する排ガス中のNOxの濃度を、上記基準リーン深さ係数γ1に対応する濃度N1から、図6のNOxの変化を示すタイムチャートにおける右上がり斜線部の面積が、上記右下がり斜線部の面積と等しくなる場合に対応する濃度N3まで大きくできる余地があることを意味する。
換言すれば、リーン深さ係数γを、上記基準リーン深さ係数γ1から上記濃度N3に対応する値まで大きくできる余地があることを意味する。
他方、リーン深さ係数γを上記基準リーン深さ係数γ1から上記濃度N3に対応する値まで大きくできれば、上流側触媒53から流出する排ガス中のOの濃度を、上記基準リーン深さ係数γ1に対応する濃度O1から、リーン深さ係数γが増大した分だけ大きい濃度O3まで大きくすることができる。即ち、下流側触媒54に供給されるOの量を、上記値SUMO1より図6の右上がり斜線部の面積に相当する分だけ大きくすることができる(図6の1点鎖線を参照)。
以上のことから、本装置は、リーン深さ係数γを、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが上記基準最大酸素吸蔵量Cmax1より小さくなった程度に応じた上記リーンディレイ期間βの上記基準リーンディレイ期間β1からの短縮時間に応じて、上記基準リーン深さ係数γ1より大きい値に決定する。
本例では、リーン深さ係数γが、上記基準リーン深さ係数γ1にリーン深さ補正係数Kγ(1.0≦Kγ<1/γ1)が乗じられた値に決定されるようになっている。このリーン深さ補正係数Kγは、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxと、同最大酸素吸蔵量Cmaxと上記リーン深さ補正係数Kγとの関係を規定する図8に示したテーブルMapKγ(Cmax)とに基づいて決定される。
上記テーブルMapKγ(Cmax)は、リーンディレイ期間βが上記値「β1・Kβ1」である場合において、リーン深さ係数γが上記値「γ1・Kγ」に決定されることで、上流側触媒53から流出するNOxの量が上記値SUMN1と等しい値になるように適合・作成されたものである。即ち、上記テーブルMapKγ(Cmax)によれば、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが小さいほど、リーン深さ補正係数Kγがより大きく決定され、特に、同最大酸素吸蔵量Cmaxが上記基準最大酸素吸蔵量Cmax1と等しい量である場合、リーン深さ補正係数Kγは「1.0」に決定される。
ところで、本装置においては、車両の運転者のアクセル81の操作によりアクセル操作量Accpが「0」となる場合等において、上記フューエルカット処理を実行するため、インジェクタ39に対して燃料供給を停止する指示が送られるようになっている。
フューエルカット処理の実行中において、理論空燃比よりリーン方向へ大きく偏移した空燃比のガスが下流側触媒54に流入することで下流側触媒54の酸素吸蔵量が大きい速度をもって増大していく。従って、フューエルカット処理の終了時点においては、下流側触媒54の酸素吸蔵量が最大酸素吸蔵量に近接しており、下流側触媒54に流入するNOxの処理をする余地がほとんどない場合が多い。
上記フューエルカット処理の終了時点以降、上述したフィードバック制御が実行されることにより、同終了時点から新たなフューエルカット処理が実行されることなく経過した時間が長いほど、下流側触媒54の酸素吸蔵量が減少していくことに伴い、下流側触媒54に流入するNOxを処理し得る余地がより大きくなる。
従って、過去において最も後に発生した上記フューエルカット処理の終了時点から上記リーンディレイ期間βの始期までの期間(即ち、上記反転時刻tAまでの期間)が短いほど、下流側触媒54に流入するNOxの処理をする余地がより小さいため、下流側触媒54に流入するNOxの量をより小さくする必要がある。このためには、上記終了時点から上記リーンディレイ期間βの始期までの期間が短いほど、上記リーンディレイ期間βをより短くすればよい(即ち、リーンディレイ期間βの終期をより早くすればよい)。
従って、本装置は、上記フューエルカット処理が実行された場合、フューエルカット処理の終了時点からの経過時間を計時するとともに、過去において最も後に発生した上記フューエルカット処理の終了時点から上記リーンディレイ期間βの始期までの期間であるFC後経過期間TFCが短いほど、上記リーンディレイ期間βをより短い時間に決定する。
本例では、上記基準リーンディレイ期間β1に、上記第1リーンディレイ期間補正係数Kβ1とは別に、更に第2リーンディレイ期間補正係数Kβ2(≦1.0)が乗じられるようになっている。この第2リーンディレイ期間補正係数Kβ2は、上記FC後経過期間TFCと、同FC後経過期間TFCと上記第2リーンディレイ期間補正係数Kβ2との関係を規定する図9に示したテーブルMapKβ2(TFC)とに基づいて決定される。
上記テーブルMapKβ2(TFC)は、リーン深さ係数γが上記値「γ1・Kγ」である場合において、リーンディレイ期間βが上記値「β1・Kβ1・Kβ2」に決定されることで、上流側触媒53から流出するNOxの量が下流側触媒54にて処理され得るNOxの量の範囲の最大値(≦SUMN1)と等しい値になるように適合・作成されたものである。即ち、上記テーブルMapKβ2(TFC)によれば、FC後経過期間TFCが短いほど、第2リーンディレイ期間補正係数Kβ2がより小さく決定され、特に、FC後経過期間TFCが「0」から基準リーンディレイ期間β1と等しい時間までの範囲内である場合、第2リーンディレイ期間補正係数Kβ2は「0」に決定される(即ち、リーンディレイ期間βが「0」に決定される)。また、FC後経過期間TFCが、フューエルカット処理の終了時点から下流側触媒54の酸素吸蔵量がゼロとなる場合に対応する時間までの期間TFC1以上である場合、第2リーンディレイ期間補正係数Kβ2は「1」に決定される。
また、下流側触媒温度THUFが、下流側触媒54が活性状態となる温度範囲内の下限温度より低いほど、下流側触媒54の最大酸素吸蔵量が減少することに伴い、下流側触媒54に流入するNOxを処理し得る余地がより小さくなる。従って、下流側触媒温度THUFが上記下限温度より低いほど、下流側触媒54に流入するNOxの量を小さくするために、リーンディレイ期間βを短くする必要がある。
他方、下流側触媒54の劣化が過度に進行しないOの流入量の範囲の上限量は、下流側触媒温度THUFが高いほど小さくなる傾向がある。従って、下流側触媒54の劣化の過度な進行を抑制するためには、下流側触媒温度THUFが高いほど、下流側触媒54に流入するOの量を小さくするために、リーンディレイ期間βを短くする必要がある。
以上のことから、本装置においては、上記値SUMN1と等しい量のNOxを処理し得る下流側触媒54温度範囲内であって、上記値SUMO1と等しい量のOが下流側触媒54に流入しても下流側触媒54の劣化が過度に進行しない下流側触媒54の温度範囲の上限温度が基準温度THUF1に設定される。そして、本装置は、下流側触媒温度THUFが上記基準温度THUF1から乖離するほど、上記リーンディレイ期間βをより短い時間に決定する。
本例では、上記基準リーンディレイ期間β1に、上記第1、第2リーンディレイ期間補正係数Kβ1,Kβ2とは別に、更に第3リーンディレイ期間補正係数Kβ3(≦1.0)が乗じられるようになっている。この第3リーンディレイ期間補正係数Kβ3は、下流側触媒温度THUFと、下流側触媒温度THUFと上記第3リーンディレイ期間補正係数Kβ3との関係を規定する図10に示したテーブルMapKβ3(THUF)とに基づいて決定されるようになっている。
上記テーブルMapKβ3(THUF)によれば、下流側触媒温度THUFが上記基準温度THUF1より低いほど、また上記基準温度THFU1より高いほど、第3リーンディレイ期間補正係数Kβ3がより小さく決定され、特に、下流側触媒温度THUFが、上記基準温度THUF1と等しい値である場合、第3リーンディレイ期間補正係数Kβ3は「1.0」に決定される。
このように、リーンディレイ期間βは、下記(7)式に基づいて基準リーンディレイ期間β1に第1、第2、第3リーンディレイ期間補正係数Kβ1,Kβ2,Kβ3が乗じられることにより求められ、リーン深さ係数γは、下記(8)式に基づいて基準リーン深さ係数γ1にリーン深さ補正係数Kγが乗じられることにより求められる。以上が、リーンディレイ期間β、及びリーン深さ係数γの決定方法である。
β=β1・Kβ1・Kβ2・Kβ3 ・・・(7)
γ=γ1・Kγ ・・・(8)
(実際の作動)
以下、このような処理を行う本装置の実際の作動のうち、下流側フィードバック補正値Vafsfbの算出について、図11、及び図12に示したフローチャートを参照しながら説明していく。
以下、説明の便宜上、「MapX(a1,a2,…)」は、a1,a2,…を引数とする値Xを求めるためのテーブルを表すものとする。また、引数の値がセンサの検出値である場合、現在値が使用される。
CPU71は、図11にフローチャートにより示した下流側フィードバック補正値Vafsfbの算出を行うルーチンを、各気筒のクランク角が各吸気上死点前の所定クランク角度(例えば、BTDC90°CA)となる毎に、繰り返し実行するようになっている。従って、任意の気筒のクランク角度が上記所定クランク角度になると、CPU71はステップ1100から処理を開始してステップ1105に進んでフィードバック条件が成立しているか否かを判定する。ここで、フィードバック条件は、本例では、冷却水温THWが、酸素濃度センサ67が活性状態となる場合に対応する冷却水温THWの温度範囲の下限温度以上であり、且つ、空燃比センサ66及び酸素濃度センサ67がそれぞれ正常であるときに成立する。
フィードバック条件が不成立である場合、CPU71はステップ1105にて「No」と判定し、直ちにステップ1195に進み本ルーチンを一旦終了する。
一方、フィードバック条件が成立している場合、CPU71はステップ1105にて「Yes」と判定してステップ1110に進み、目標空燃比(=理論空燃比)に相当する値である下流側目標値Voxsrefから現時点の酸素濃度センサ67の出力値Voxsを減じることにより、出力偏差量DVoxsを求める。
次に、CPU71はステップ1115に進んで、ステップ1115内に記載の式に基づいて出力偏差量の微分値DDVoxsを求める。ここにおいて、DVoxs1は前回の本ルーチン実行時において後述するステップ1130にて設定(更新)された出力偏差量DVoxsの前回値である。また、Δtは本ルーチンが前回実行された時点から今回実行された時点までの時間である。
次に、CPU71はステップ1120に進んで、ステップ1120内に記載の式に基づいて下流側PID処理値sfbpidを求める。ここにおいて、SDVoxsは出力偏差量DVoxsの積分値であり、後述するステップ1125にて更新される値である。
次いで、CPU71はステップ1125に進み、その時点における偏差積分値SDVoxsに、ステップ1110にて求められた出力偏差量DVoxsを加えて、新たな偏差積分値SDVoxsを求める。
続いて、CPU71はステップ1130に進み、出力偏差量DVoxsの前回値DVoxs1を上記ステップ1110にて求めた出力偏差量DVoxsに設定する。
次に、CPU71はステップ1135を経由して、図12にフローチャートにより示した空燃比リーンディレイ制御実行フラグF(以下、単に「フラグF」とも称呼することもある。)の設定を行うためのルーチン処理を、ステップ1200から開始する。上記フラグFは、「1」、又は「0」に設定されるフラグであって、「F=1」であるときに空燃比リーンディレイ制御が実行されるように、一方、「F=0」であるときに空燃比リーンディレイ制御が実行されない(即ち、通常の空燃比リーン制御、又は空燃比リッチ制御が実行される)ように下流側フィードバック補正値Vafsfbを設定するためのフラグである。
ステップ1200に進んだCPU71は、ステップ1205に進んで「F=0」であるか否かを判定する。先ず、「F=0」である場合について説明すると、CPU71はステップ1205にて「Yes」と判定してステップ1210に進み、酸素濃度センサ67の出力値Voxsが、リッチを示す値(略0.9(V)(最大値))からリーンを示す値(略0.1(V)(最小値))に反転したか否かを判定する。本例では、前回の本ルーチン実行時において検出された酸素濃度センサ67の出力値Voxsが0.1(V)より大きい所定の電圧であって、且つ、今回の本ルーチン実行時において検出された酸素濃度センサ67の出力値Voxsが略0.1(V)である場合、「リッチからリーンへの反転」が生じたとみなされるようになっている。
「リッチからリーンへの反転」が生じたとみなされていない場合、CPU71はステップ1210にて「No」と判定して、直ちにステップ1295を経由して図11のステップ1140に進む。従って、CPU71がステップ1210にて「No」と判定する限り、フラグFは「0」に維持される。
「リッチからリーンへの反転」が生じたとみなされた場合、CPU71はステップ1210にて「Yes」と判定してステップ1215に進み、フラグFを「0」から「1」に変更・設定する。
次に、CPU71はステップ1220に進んで、図示しない第1タイマにより計時される経過時間αを「0」にリセットする。即ち、リーンディレイ期間βの始期が設定される。
次いで、CPU71はステップ1225,1230,1235に順に進んで、上記テーブルMapKβ1(Cmax),MapKβ2(TFC),MapKβ3(THUF)に基づいて、第1、第2、第3リーンディレイ期間補正係数Kβ1,Kβ2,Kβ3を求める(図7、図9、及び図10を参照)。
なお、本例では、上流側触媒温度THSC、上記アクティブ空燃比制御等を利用して、所定のタイミング毎に、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxの更新、及びバックアップRAM74での記憶がなされるようになっている。この最大酸素吸蔵量Cmaxは、上流側触媒温度THSCが低いほど、また上流側触媒53の劣化の程度が大きいほど小さい。上記ステップ1225、及び後述するステップ1245においては、バックアップRAM74にて記憶されている最大酸素吸蔵量Cmaxの最新値が用いられるようになっている。
また、本例では、フューエルカット処理のための指示が実行されるようになっており、フューエルカット処理終了指示毎に図示しない第2タイマにより計時される経過時間がゼロにリセットされるようになっている。上記ステップ1230においては、現時点において第2タイマにより計時されている経過時間と等しい時間に設定されたFC後経過期間TFCが用いられるようになっている。
続いて、CPU71はステップ1240に進んで、ステップ1240内の式に基づいて、基準リーンディレイ期間β1に上記ステップ1225,1230,1235にて求められた第1、第2、第3リーンディレイ期間補正係数Kβ1,Kβ2,Kβ3を乗じることで、リーンディレイ期間βを決定する。
次に、CPU71はステップ1245に進んで、上記テーブルMapKγ(Cmax)に基づいて、リーン深さ補正係数Kγを求める(図8を参照)。
次いで、CPU71はステップ1250に進んで、ステップ1250内の式に基づいて、基準リーン深さ係数γ1に上記ステップ1245にて求められたリーン深さ補正係数Kγを乗じることで、リーン深さ係数γを決定する。
続いて、CPU71はステップ1255に進んで、ステップ1255内の式に基づいて、リーンディレイ補正値sfbdelayを求めた後、ステップ1295を経由して図11のステップ1140に進む。ここにおいて、γは今回の本ルーチン実行時において上記ステップ1250にて決定された今回値であり、sfbpid1は前回の本ルーチン実行時において後述するステップ1155にて設定(更新)された下流側PID処理値sfbpidの前回値である。
次に、「F=1」である場合について説明すると、CPU71はステップ1205にて「No」と判定してステップ1260に進み、上記第1タイマにより計時される経過時間αが、上記ステップ1240にて決定されたリーンディレイ期間βより長いか否かを判定する。
経過時間αがリーンディレイ期間β以下である場合、CPU71はステップ1260にて「No」と判定して、直ちにステップ1295を経由して図11のステップ1140に進む。従って、CPU71がステップ1260にて「No」と判定する限り、フラグFは「1」に維持される。
経過時間αがリーンディレイ期間βより長い場合、CPU71はステップ1260にて「Yes」と判定してステップ1265に進み、空燃比リーンディレイ制御実行フラグFを「1」から「0」に変更・設定した後、ステップ1295を経由して図11のステップ1140に進む。
このように、ステップ1135にてフラグFが設定された後、CPU71はステップ1140に進んで、「F=1」であるか否かを判定する。「F=1」である場合、CPU71はステップ1140にて「Yes」と判定してステップ1145に進み、下流側フィードバック補正値Vafsfbを上記ステップ1255にて求められたリーンディレイ補正値sfbdelayと等しい値に設定する(図6の時刻tA〜tB1(リーンディレイ期間β)を参照)。
一方、「F=0」である場合、CPU71はステップ1140にて「No」と判定してステップ1150に進み、下流側フィードバック補正値Vafsfbを上記ステップ1120にて求められた下流側PID処理値sfbpidと等しい値に設定する(図6の時刻tA以前、及び時刻tB1以降を参照)。ステップ1145、又はステップ1150にて設定された下流側フィードバック補正値Vafsfbは、制御用空燃比abyfsを求めるのに用いられる(図4のA8を参照)。
なお、「F=1」である場合であっても、本ルーチンの実行毎にステップ1120にて下流側PID処理値sfbpidが算出されるようになっている(図6のリーンディレイ期間βにおける細い点線を参照)。従って、リーンディレイ期間βの終期が到来した場合における下流側フィードバック補正値Vafsfb(即ち、下流側PID処理値sfbpid)は、同リーンディレイ期間β中に算出されていた下流側PID処理値sfbpid(の積分項Ki・SDVoxs)が考慮されて算出される。
そして、CPU71はステップ1155に進んで、下流側PID処理値sfbpidの前回値sfbpid1を上記ステップ1120にて求めた下流側PID処理値sfbpidに更新した後、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
以上、説明したように、本発明による内燃機関の空燃比制御装置の実施形態によれば、上流側触媒53よりも下流であって下流側触媒54よりも上流の排気通路に配設された起電力式の酸素濃度センサ67の出力がリッチを示す値に維持されているとき、及びリーンを示す値に維持されているときに、下流側フィードバック補正値Vafsfbが下流側PID処理値sfbpidに決定されることで、空燃比リーン制御、及び空燃比リッチ制御がそれぞれ実行され、酸素濃度センサ67の出力がリッチを示す値からリーンを示す値に反転してからリーンディレイ期間βにおいては、下流側フィードバック補正値Vafsfbが、下流側PID処理値sfbpidに代えて、同反転(直前)時において決定されていた下流側PID処理値sfbpid1にリーン深さ係数γ(0<γ<1.0)が乗じられた値であるリーンディレイ補正値sfbdelayに決定されることで、空燃比リーンディレイ制御が実行される。
これにより、リーンディレイ期間βの空燃比リーンディレイ制御により制御される触媒上流空燃比のリーン深さは、リーンディレイ期間βの始期が到来する前の空燃比リーン制御により制御される触媒上流空燃比のリーン深さよりも小さくなる。
ここで、空燃比リーン制御により制御される触媒上流空燃比のリーン深さが大きいほど、NOx流出開始タイミングからO流出開始タイミングまでの期間がより短くなる。また、空燃比リーンディレイ制御により制御される触媒上流空燃比のリーン深さが小さいほど、上流側触媒53から流出するNOxの濃度、及びOの濃度がより小さくなる。
従って、上述のように空燃比リーンディレイ制御が実行されることにより、Oが上流側触媒53から下流側触媒54に流入する期間が長くされ、且つ、同流入する排ガス中のNOxの濃度が小さくされ得る。この結果、下流側触媒54に供給されるOの量を下流側触媒54の被毒を解消するのに十分な量にしつつ、下流側触媒54に流入するNOxの量が過度に大きくなることを抑制することができる。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、酸素濃度センサ67よりも下流であって下流側触媒54よりも上流の排気通路に、吸蔵還元型NOx触媒が配設されてもよい。これにより、上流側触媒53から流出するガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンのときに同ガス中のNOxが吸収され、上流側触媒53から流出するガスの空燃比が理論空燃比のとき、又は、理論空燃比よりもリッチのときに、吸収されていたNOxが放出され還元される。
従って、下流側触媒54に流入するNOxを処理し得る余地の大きさにかかわらず、空燃比リーンディレイ制御において、リーンディレイ期間βを大きくする、及び/又は、リーン深さ係数γを大きくすることで、下流側触媒54に供給されるOの総量が大きくされ得る。
また、上述のように吸蔵還元型NOx触媒が配設される場合、酸素濃度センサ67の出力値Voxsのリーンを示す値(略0.1(V)(最小値))からリッチ(略0.9(V)(最大値))を示す値への反転から第2所定期間において、下流側フィードバック補正値Vafsfbが、下流側PID処理値sfbpidに代えて、同反転時(の直前)において決定されていた下流側PID処理値sfbpidと等しい値に決定する空燃比リッチディレイ制御が実行されるように構成されてもよい。
これにより、上記空燃比リッチディレイ制御が実行されない場合に比して、上流側触媒53から流出するCO,HCの量がより大きくされる。従って、上記空燃比リッチディレイ制御の実行中において、理論空燃比よりリッチな空燃比のガスを利用して吸蔵還元型NOx触媒中のNOxの還元を十分に行うことができ、同触媒のNOx吸蔵機能を十分に回復させることができる。なお、吸蔵還元型NOx触媒にてNOxが還元される一方、CO,HCは酸化されるから、空燃比リッチディレイ制御が実行されても下流側触媒54に流入するCO,HCの量が大きくなることが抑制され得、下流側触媒54の被毒の発生を抑制することができる。
上記吸蔵還元型NOx触媒としては、例えば、担体としてのアルミナAl等に、カリウムK,ナトリウムNa,リチウムLi,セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa,カルシウムCaのようなアルカリ土類金属、及びランタンLa、イットリウムYのような希土類金属から選ばれた少なくとも一つをプラチナPtとともに担持したものが用いられると好適である。
また、上記実施形態においては、「リッチからリーンへの反転」毎に空燃比リーンディレイ制御が実行されるように構成されているが、これに代えて、上記反転の回数が所定回数に達する毎にのみ空燃比リーンディレイ制御が実行されるように構成されてもよい。
また、上記リッチディレイ制御においても、「リーンからリッチへの反転」毎に空燃比リッチディレイ制御が実行されてもよいし、上記反転の回数が所定回数に達する毎にのみ空燃比リッチディレイ制御が実行されるように構成されてもよい。
また、上記実施形態においては、リーンディレイ期間βにおける下流側フィードバック補正値Vafsfbであるリーンディレイ補正値sfbdelayを、「リッチからリーンへの反転」(の直前)時において決定されていた下流側PID処理値sfbpid1にリーン深さ係数γ(0<γ<1.0)が乗じられた値に決定していたが、これに代えて、リーンディレイ期間βにおいて算出される下流側PID処理値sfbpidに負の値の係数が乗じられた値に決定してもよい。
また、上記実施形態においては、リーン深さ係数γを基準リーン深さ係数γ1にリーン深さ補正係数Kγが乗じられた値に決定しているが、これに代えて、リーン深さ係数γを基準リーン深さ係数γ1そのものに決定してもよい。
加えて、上記実施形態においては、リーンディレイ期間βを基準リーンディレイ期間β1に第1、第2、第3リーンディレイ期間補正係数Kβ1,Kβ2,Kβ3の3の補正係数が乗じられた値に決定しているが、これに代えて、上記3つの補正係数のうち1つ、又は2つの補正係数が乗じられた値に決定されてもよい。リーンディレイ期間βの決定に際し、第1リーンディレイ期間補正係数Kβ1が用いられない場合、リーン深さ係数γを基準リーン深さγ1そのものに決定することが好ましい。
なお、本発明に係る実施形態とは別に、上述のように吸蔵還元型NOx触媒が配設される場合、空燃比制御装置が、リーン深さ係数γを用いることなく空燃比リーンディレイ制御が実行されるように構成されてもよい。この場合、リーンディレイ補正値sfbdelayが、「リッチからリーンへの反転」(の直前)時において決定されていた下流側PID処理値sfbpid1と等しい値に決定される。これに加え、更に上記空燃比リッチディレイ制御が実行されるように構成されてもよい。これらによっても、下流側触媒54に供給されるOの量を下流側触媒54の被毒を解消するのに十分な量にしつつ、下流側触媒54に流入するNOxの量が過度に大きくなることを抑制することができる。
本発明の実施形態に係る空燃比制御装置を内燃機関に適用したシステム全体の概略構成図である。 図1に示した空燃比センサの出力電圧と空燃比との関係を示したグラフである。 図1に示した酸素濃度センサの出力電圧と空燃比との関係を示したグラフである。 図1に示した空燃比制御装置が空燃比フィードバック制御を実行する際の機能ブロック図である。 図1に示した空燃比制御装置が空燃比フィードバック制御を実行する際の各種変数の変化の一例を示したタイムチャートである。 図1に示した空燃比制御装置が決定するリーンディレイ期間、及びリーン深さ係数の決定方法を説明するための図である。 図1に示したCPUが参照する上流側触媒の最大酸素吸蔵量と第1リーンディレイ期間補正係数との関係を規定するテーブルを示したグラフである。 図1に示したCPUが参照する上流側触媒の最大酸素吸蔵量とリーン深さ補正係数との関係を規定するテーブルを示したグラフである。 図1に示したCPUが参照するフューエルカット処理終了時点からリーンディレイ期間の始期までの時間と第2リーンディレイ期間補正係数との関係を規定するテーブルを示したグラフである。 図1に示したCPUが参照する下流側触媒の温度と第3リーンディレイ期間補正係数との関係を規定するテーブルを示したグラフである。 図1に示したCPUが実行する下流側フィードバック補正値を算出するためのルーチンを示したフローチャートである。 図1に示したCPUが実行する空燃比リーンディレイ制御実行フラグを設定するためのルーチンを示したフローチャートである。 特許文献1に開示された空燃比制御装置が空燃比フィードバック制御を実行する際の各種変数等の変化の一例を示したタイムチャートである。 空燃比フィードバック制御を実行する空燃比制御装置がリーンディレイ制御を実行する際の各種変数等の変化の一例を示したタイムチャートである。
符号の説明
10…内燃機関、52…エキゾーストパイプ(排気管)、53…上流側触媒、54…下流側触媒、67…酸素濃度センサ、68S…上流側触媒温度センサ、68U…下流側触媒温度センサ、70…電気制御装置、71…CPU

Claims (7)

  1. 内燃機関の排気通路に配設された酸素吸蔵機能を有する第1触媒と、
    前記第1触媒よりも下流の前記排気通路に配設されて前記第1触媒から流出するガスの空燃比に応じた値を出力する起電力式の酸素濃度センサと、
    前記酸素濃度センサよりも下流の前記排気通路に配設された第2触媒と、
    を備えた内燃機関に適用され、
    前記酸素濃度センサの出力がリーンを示す値からリッチを示す値に反転した後同リッチを示す値に維持されているときに前記第1触媒に流入するガスの空燃比である触媒上流空燃比を理論空燃比よりリーンな空燃比である第1リーン空燃比に制御し、前記酸素濃度センサの出力がリッチを示す値からリーンを示す値に反転した後同リーンを示す値に維持されているときに前記触媒上流空燃比を前記理論空燃比よりリッチな空燃比に制御する空燃比制御手段と、
    前記酸素濃度センサの出力のリッチを示す値からリーンを示す値への反転から第1所定期間において、前記触媒上流空燃比を、前記理論空燃比よりリッチな空燃比に代えて、前記理論空燃比からのリーン方向の偏移の程度が前記第1リーン空燃比のものより小さい前記理論空燃比よりリーンな空燃比である第2リーン空燃比に制御する空燃比リーンディレイ制御手段と、
    を備えた内燃機関の空燃比制御装置。
  2. 請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置であって、
    前記第1触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど、前記第1所定期間をより短い時間に決定する手段を備えた内燃機関の空燃比制御装置。
  3. 請求項2に記載の内燃機関の空燃比制御装置であって、
    前記第1触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど、前記第2リーン空燃比の前記理論空燃比からのリーン方向の偏移の程度をより大きい程度に決定する手段を備えた内燃機関の空燃比制御装置。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置であって、
    前記第2触媒は、酸素吸蔵機能を有し、
    前記内燃機関の運転状態に応じて燃料噴射を禁止する処理を行う手段と、
    過去において最も後に発生した前記燃料噴射を禁止する処理の終了時点から前記第1所定期間の始期までの期間が短いほど、前記第1所定期間をより短い時間に決定する手段と、
    を備えた内燃機関の空燃比制御装置。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置であって、
    前記第2触媒は、酸素吸蔵機能を有し、
    前記第2触媒が活性状態となる前記第2触媒の温度範囲内の基準温度から前記第2触媒の温度が乖離するほど、前記第1所定期間をより短い時間に決定する手段を備えた内燃機関の空燃比制御装置。
  6. 請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の内燃機関の空燃比制御装置であって、
    前記内燃機関は、
    前記酸素濃度センサよりも下流であって前記第2触媒よりも上流の前記排気通路に配設されて、前記第1触媒から流出するガスの空燃比が前記理論空燃比よりもリーンのときに前記第1触媒から流出するガス中のNOxを吸収し、前記理論空燃比のとき、又は、前記理論空燃比よりもリッチのときに前記吸収したNOxを放出して還元する吸蔵還元型NOx触媒を備えた内燃機関の空燃比制御装置。
  7. 請求項6に記載の内燃機関の空燃比制御装置であって、
    前記酸素濃度センサの出力のリーンを示す値からリッチを示す値への反転から第2所定期間において、前記触媒上流空燃比を、前記第1リーン空燃比に代えて、前記理論空燃比よりリッチな空燃比に制御する空燃比リッチディレイ制御手段を備えた内燃機関の空燃比制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110939501A (zh) * 2018-09-21 2020-03-31 日本碍子株式会社 催化器劣化诊断系统及催化器劣化诊断方法

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