JP2008280521A - 非石綿系摩擦材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非石綿系摩擦材は、金属繊維から成る骨材繊維と、有機繊維と、結合材を含有する。骨材繊維を構成する金属繊維は、85〜145Hvの硬さ、400〜600N/mm2の引張強さ、20〜49%の伸びを有し、融点が1450℃以上である。高温摩擦後にこの摩擦材の表面から200μm以浅に形成される摩擦劣化相に含まれる骨材繊維の繊維径が、この高温摩擦前の100〜20%の大きさを有する。
80Hv以下の硬さ、150〜400N/mm2の引張強さ、10%以上の伸びを有し、融点が700〜1100℃の金属繊維から成る高温潤滑性繊維を含む。骨材繊維及び/又は高温潤滑性繊維から成る金属繊維分の骨材機能値が30以上で、その硬さ機能値が10以下である。
【選択図】なし
Description
また、このような摩擦材において、孔系と累積気孔率を調整して耐フェード性を向上するとともに相手攻撃性を低下させたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、上記従来の摩擦材にあっては、500℃を超える高温域での摩擦係数低下が必ずしも小さいといえず、また、500℃以下における摩擦係数の安定性も十分とはいえなかった。更には、高温域での摩耗特性、特に相手攻撃性などについても更なる改善余地があった。
高温摩擦後にこの非石綿系摩擦材の表面から200μm以浅に形成される摩擦劣化層に含まれる上記骨材繊維の繊維径が、この高温摩擦前の100〜20%の大きさを有することを特徴とする。
上述の如く、本発明の非石綿系摩擦材は、骨材繊維と、有機繊維と、結合材を含有するものであり、この骨材繊維は、85〜145Hvの硬さ、400〜600N/mm2の引張強さ、20〜49%の伸びを有し、融点が1450℃以上の金属繊維から成る。
なお、この骨材繊維の繊維径及び繊維長は、特に限定されるものではないが、30〜100μmφ×1〜5mmとすることが好ましい。
チタン合金、及びニッケル合金の特徴は、85〜350Hvの硬さ、300〜1000N/mm2の引張強さ、10〜50%の伸びを有することである。
結合材は、各種成分を相互に結合させる機能を有し、例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、及びフラン樹脂を挙げることができる。
かかる高温潤滑性繊維の配合により、高温域での相手攻撃性を有意に低減させることができる。
この「骨格機能値」は、ともに金属繊維である骨材繊維及び高温潤滑性繊維の少なくとも一方から成る金属繊維分の室温における引張強さ(N/mm2)とこれら金属繊維分の含有量(vol%)との積を、100で除した値を示す。
例えば、金属繊維分が骨材繊維から成り、骨材繊維量が20vol%で、その骨材繊維の引張強さ(室温)が300N/mm2の場合、骨材機能値は、20×300÷100で60となる。
骨材機能値が30未満では、500℃以上の高温下で骨材繊維が摩擦材を保持できなくなるとともに、摩擦劣化層に存在する骨材繊維の繊維径が高温摩擦前の20%未満の大きさになり、摩擦材の骨格を維持できず、高温での摩擦係数の低下が起こることがある。
この「硬さ機能値」は、ともに金属繊維である骨材繊維及び/又は高温潤滑性繊維から成る金属繊維分の室温におけるビッカース硬さ(Hv)とこれら金属繊維分の含有量(vol%)との積を、100で除した値を示す。
例えば、金属繊維分が骨材繊維から成り、骨材繊維量が20vol%で、その骨材繊維の硬さが90Hvの場合、硬さ機能値は、20×90÷100で18となる。
骨材機能値が10を超えると、金属繊維の硬さが大きく、総量も多くなることから相手攻撃性が増大するとともに、その金属繊維が摩耗分として脱落することにより、ローターと摩擦材の間に介在することで、摩擦材の摩耗も悪化することがある。
骨材繊維が5質量%未満では、高温下での摩擦係数の低下を抑制することができず、40質量%を超えると、高温下での摩擦係数の低下を抑制することは可能であるが、相手攻撃性増大し、ローター摩耗と摩擦材の摩耗が増大するとともに、異音や鳴きが発生し易くなる。
また、高温潤滑性繊維が5質量%未満では、潤滑性繊維の機能を果たすことができなくなることがあり、異音や鳴きが発生し易く、また、高温下での潤滑性能が低下することで、骨材繊維及び研削材によるローター摩耗が増大することがある。20質量%を超えると、潤滑性能が過剰となり高温下での摩擦係数の保持を阻害することがある。
無機繊維としては、ロックウールやガラス繊維などを例示でき、有機充填材としては、ゴムやダストなど、充填材としては、硫酸バリウムやマイカ、酸化カルシウムなど、潤滑材としては、黒鉛やカーボン、金属硫化物など、研削材としてはジルコニアやアルミナ、マイカなどを例示できる。
即ち、高温摩擦後においても、上記骨材繊維の繊維径は余り小さくならず、このことからも、上記骨材繊維が骨格形成材としての機能を十分に果たし、当該非石綿系摩擦材の高温域での摩擦係数低下を十分に抑制していることが分かる。
即ち、高温摩擦後においても、上記骨材繊維の繊維量を余り減少させず、このことからも、上記骨材繊維が骨格形成材としての機能を十分に果たし、当該非石綿系摩擦材の高温域での摩擦係数低下を十分に抑制していることが分かる。
また、ニッケル(Ni)及びニッケル合金も使用可能であり、例えば、50μmの繊維径を有するニッケル(Ni)では、高温摩擦後の繊維径は10μm程度への低減に留まる。なお、摩擦劣化相も摩擦材表面から200μm以浅程度の範囲である。但し、ニッケルを骨材繊維として用いた場合、骨材機能としての効果は高いが、ニッケルと硫化物の関係から、硫化物と合せて使用しないほうが好ましい。
骨材繊維の配合量が5質量%未満では、骨格を維持できなくなり、高温摩擦時の骨格形成機能を果たす事ができなくなることがある。また、40質量%を超えると異音や鳴きが発生し易く、また摩耗も多くなることがある。
また、高温潤滑性繊維の配合量が5質量%未満では、潤滑性繊維の機能を果たす事ができなくなることがあり、異音や鳴きが発生し易く、また摩耗も多くなることがある。また、20質量%を超えると、高温摩擦時の骨格形成機能を阻害し、高温時の摩擦係数が低下することがある。
本発明の非石綿系摩擦材は、上述の各種成分を均一に混合した後、予備成形し、次いで金型内に裏金及び予備成形体を挿入した後、加熱加圧成形法で成形した後、熱処理を行うことにより製造することや、均一に混合した後、金型内に混合粉と裏金を挿入した後、加熱加圧成形法で成形すること、又は加熱加圧成形法で成形した後、熱処理を行うことにより製造することができる。
なお、表1において、チタン28質量%、14質量%及び7質量%はそれぞれ10vol%、5vol%及び2.5vol%、ニッケル28質量%は10vol%、銅14質量%及び7質量%はそれぞれ5vol%及び2.5vol%、ステンレス28質量%は10vol%、スチール28質量%は10vol%に相当し、その他使用している摩擦材成分の使用量、密度と摩擦材の重量、密度の関係から測定することができる。
(1)フェード時の摩擦係数変化
各例の摩擦材を1/5サイズブレーキダイナモスケール試験機を用いて、下記の試験条件に供した。具体的には、すり合わせ1→すり合わせ2→本試験の順で処理し、本試験での摩擦係数を測定し、得られた結果を表2に示した。
制動前温度:120℃
制動初速度:60km/h
制動終速度: 0km/h
減速度 :0.3G
制動回数 :200回
制動前温度:80℃
制動初速度:130km/h
制動終速度: 0km/h
減速度 :0.6G
制動回数 :10回
制動前温度:60℃
制動初速度:144km/h
制動終速度: 80km/h
減速度 :0.5G
制動間隔 :22秒
制動回数 :摩擦材が700℃に到達するまで実施
JASO C406:2000に準拠したテストピース試験を行った後、各例の摩擦材の摩耗量を測定した。得られた結果を表3に示す。
実施例1、実施例2、実施例3及び比較例3の摩擦材について、それぞれ以下の試験条件下でフェード処理を行った後、その断面を光学顕微鏡で観察した。これらの光学顕微鏡写真をそれぞれ、図1、図2、図3及び図4に示す。
ねずみ鋳鉄製のロータを用い、実施例1の摩擦材をパッドとして試験を行った。速度144km/hから80km/hに減速させた。初期温度は60゜、減速度は0.5Gとした。
実施例1の摩擦材では、温度が700℃のとき、制動回数は6回で、摩擦係数μは0.30であった。また、ロータ厚さ減は、0.041mm、パッド厚さ減は1.40mmとなった。
実施例2の摩擦材では、温度が700℃のとき、制動回数は8回で、摩擦係数μは0.19であった。また、ロータ厚さ減は0.038mm、パッド厚さ減は1.33mmとなった。
実施例3の摩擦材では、温度は700℃のとき、制動回数は7回で、摩擦係数μは0.23であった。また、ロータ厚さ減は0.028mm、パッド厚さ減は0.87mmとなった。
一方、比較例3の摩擦材では、温度は700℃のとき、制動回数は9回で、摩擦係数μは0.17であった。また、ロータ厚さ減は0.031mm、パッド厚さ減は0.79mmとなった。
また、実施例1、実施例2、実施例3及び比較例3の摩擦材について、それぞれ上記の試験条件下でフェード処理を行った後、その摩擦材表面の金属成分分析、及び蛍光X線ライン分析を実施し、摩擦材表面の金属量、金属繊維量の維持率について分析した。
これらの分析結果をそれぞれ表4及び表5に示す。表4は、摩擦材に使用している金属全体の成分量に対する、使用している金属繊維成分量の維持率を示す。但し、粉末や繊維以外の成分として含まれる成分も検出している場合がある。表5は、限りなく繊維に近いと考えられる物を測定したときの維持率を示す。
それぞれの金属成分において、ピーク値が高いものが表面で検出された成分であり、主に金属繊維である。但し、評価後に鉄の検出値が高いのは、摩耗によるロータ成分が付着したものが検出された結果である。これらの金属繊維を定量値にしたものが表4及び5である。
これは、劣化層にローターの摩耗粉成分である鉄が含まれ、その鉄成分を検出したことで評価前に検出された金属成分量が減少した実施例1、2に対し、高温潤滑繊維である銅が高温で劣化し、劣化層に含まれ、その銅成分も検出した為に増加したものと考えられる。
Claims (7)
- 85〜145Hvの硬さ、400〜600N/mm2の引張強さ、20〜49%の伸びを有し、融点が1450℃以上の金属繊維から成る骨材繊維と、有機繊維と、結合材を含有する非石綿系摩擦材であって、
高温摩擦後にこの非石綿系摩擦材の表面から200μm以浅に形成される摩擦劣化層に含まれる上記骨材繊維の繊維径が、この高温摩擦前の100〜20%の大きさを有することを特徴とする非石綿系摩擦材。 - 更に、80Hv以下の硬さ、150〜400N/mm2の引張強さ、10%以上の伸びを有し、融点が700〜1100℃の金属繊維から成る高温潤滑性繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載の非石綿系摩擦材。
- 上記骨材繊維、又は上記骨材繊維及び上記高温潤滑性繊維から成る金属繊維分の骨材機能値が30以上であり、且つその硬さ機能値が10以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非石綿系摩擦材。
- 上記金属繊維分が10〜60質量%の割合で含まれ、このうち上記骨材繊維が5〜40質量%分、上記高温潤滑性繊維が5〜20質量%分を占めることを特徴とする請求項3に記載の非石綿系摩擦材。
- 上記摩擦劣化層に含まれる上記骨材繊維の繊維量が、上記高温摩擦前の量の80〜100質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の非石綿系摩擦材。
- 上記骨材繊維を5〜40質量%の割合で含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の非石綿系摩擦材。
- 上記高温潤滑性繊維を5〜20質量%の割合で含むことを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つの項に記載の非石綿系摩擦材。
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