JP2008280295A - テトラベンズアントラセン系化合物、それを用いた半導体装置及び電界効果トランジスタ - Google Patents

テトラベンズアントラセン系化合物、それを用いた半導体装置及び電界効果トランジスタ Download PDF

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朋彦 森
Yoshihiro Kikuzawa
良弘 菊澤
Hisato Takeuchi
久人 竹内
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Abstract

【課題】熱に対して安定で、有機溶媒に可溶である新規なテトラベンズアントラセン系化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるテトラベンズアントラセン系化合物である。
Figure 2008280295

(式中、A〜A18のうち、A及びA18は互いに独立して水素原子、直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、A〜A、A10〜A17のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、テトラベンズアントラセン系化合物、それを用いた半導体装置及び電界効果トランジスタに関する。
有機化合物を含む半導体層を備えた半導体装置は、アモルファスシリコンやポリシリコン等の無機物半導体層を備えた従来の半導体装置と比較して、軽量、柔軟性や低コスト化が期待でき,近年盛んに研究されている。すでにディスプレイ媒体である有機ELは製品化されており、これに駆動媒体である有機トランジスタを組み込めば、曲面ディスプレイやフレキシブルディスプレイに応用できる。
従来研究されている有機半導体材料には、ポリフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリチオフェン、オリゴチオフェン等の共役系高分子や、アントラセン、テトラセン、ペンタセン等のアセン系(ベンゼン環が線状に繋がっているタイプの)縮合多環芳香族化合物(以下、「ポリアセン化合物」と称する。)等が挙げられる。
一方、テトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンは、アントラセンのπ共役平面を拡張した化合物の1種で、多数の合成手法、研究報告例がある。例えば、特許文献1には、テトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンの9位と18位に置換基が導入された例が、特許文献2には、9,18−ジフェニルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンが、非特許文献1には、置換基としてアルコキシ基が導入されたテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンが報告されている。また、非特許文献2には、構造計算のモデルとして2,11−ジメチルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンが記載されている。
特表2005−519486号公報 英国特許出願公開第852981号明細書 M.C.アルタル(Artal)ら,「ジャーナル・オブ・マテリアルズ・ケミストリ(Journal of Materials Chemistry)」,2001年,11巻,p.2801−2807 C.L.ヒルトン(Hilton)ら,「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(Journal of the American Chemical Society)」,2006年,128巻,46号,p.14824
無置換のテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンは有機溶媒への溶解性が悪く、有機素子等として利用する場合その作成法が限られてくる。曲面ディスプレイやフレキシブルディスプレイの更なる低コスト化を目指すためには、溶液での素子化が容易な材料の開発が望まれている。また素子の透明性が高い材料も、有機素子等の新規用途を拡張するために開発が望まれている。
一方、置換基が導入されたテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンの報告例は少ない。
本発明は、熱に対して安定で、有機溶媒に可溶である新規なテトラベンズアントラセン系化合物である。
また、本発明は、熱に対して安定であるp型の有機半導体層を備えた半導体装置である。
さらに、本発明は、熱に対して安定であり、透明性が高く、高いキャリア移動度を有する電界効果トランジスタである。
本発明は、下記一般式(1)で示される化合物であるテトラベンズアントラセン系化合物である。
Figure 2008280295

(式中、A〜A18のうち、A及びA18は互いに独立して水素原子、直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、A〜A、A10〜A17のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子である。)
また、前記テトラベンズアントラセン系化合物において、A〜Aのうち少なくとも1つ、A〜Aのうち少なくとも1つ、A10〜A13のうち少なくとも1つ、A14〜A17のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
また、前記テトラベンズアントラセン系化合物において、A及びAのうち少なくとも1つ、A及びAのうち少なくとも1つ、A11及びA12のうち少なくとも1つ、A15及びA16のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
また、前記テトラベンズアントラセン系化合物において、A〜Aのうち少なくとも1つ、A〜Aのうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
また、前記テトラベンズアントラセン系化合物において、A及びAのうち少なくとも1つ、A及びAのうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
また、前記テトラベンズアントラセン系化合物において、A〜Aのうち少なくとも1つ、A14〜A17のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
また、前記テトラベンズアントラセン系化合物において、A及びAのうち少なくとも1つ、A15及びA16のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
また、前記テトラベンズアントラセン系化合物において、A〜Aのうち少なくとも1つ、A10〜A13のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
また、前記テトラベンズアントラセン系化合物において、A及びAのうち少なくとも1つ、A11及びA12のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることが好ましい。
また、前記テトラベンズアントラセン系化合物において、前記炭素数が1〜12であることが好ましい。
また、前記テトラベンズアントラセン系化合物において、前記炭素数が4〜8であることが好ましい。
また、本発明は、有機半導体層を有する半導体装置であって、前記有機半導体層は、前記テトラベンズアントラセン系化合物を含む。
さらに、本発明は、有機半導体層を有する電界効果トランジスタであって、前記有機半導体層は、前記テトラベンズアントラセン系化合物を含む。
本発明では、テトラベンズアントラセン骨格の特定の位置に特定の置換基を導入することにより、熱に対して安定で、有機溶媒に可溶である新規なテトラベンズアントラセン系化合物を提供することができる。
また、本発明は、その新規なテトラベンズアントラセン系化合物を用いることにより、熱に対して安定であるp型の有機半導体層を備えた半導体装置を提供することができる。
さらに、本発明は、その新規なテトラベンズアントラセン系化合物を用いることにより、熱に対して安定であり、透明性が高く、高いキャリア移動度を有する電界効果トランジスタを提供することができる。
本発明の実施形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
<テトラベンズアントラセン系化合物>
本実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物は、下記一般式(1)で示される。
Figure 2008280295

(式中、A〜A18のうち、A及びA18は互いに独立して水素原子、直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、A〜A、A10〜A17のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子である。)
ここで、上記脂肪族基(以下、上記直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基を「脂肪族基B」と呼ぶ場合がある。)は、テトラベンズアントラセン系化合物の有機溶媒に対する溶解性を向上させるような、炭素数1〜18である直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族あるいは飽和または不飽和の環脂肪族の置換基であればよい。
直鎖状の炭素数1〜18の飽和脂肪族基としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル基、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカンなどから選択できる。
分岐状の炭素数1〜18の飽和脂肪族基としては、直鎖状の飽和脂肪族基の水素原子を任意の直鎖状または分岐状の飽和脂肪族基あるいは飽和環脂肪族基で置換した置換基などから選択でき、例えば、iso−プロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、iso−ペンチル、neo−ペンチル、tert−ペンチル基などから選択できる。
直鎖状の炭素数1〜18の不飽和脂肪族基としては、エチニル、ビニル、アリル、1−プロペニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1,3−ブタジエニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1,3−ペンタジエニル、1,4−ペンタジエニル、2,4−ペンタジエニル、1,3−ペンタジエチニル、1,4−ペンタジエチニル2,4−ペンタジエチニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル、1,3−ヘキサジエニル、2,4−ヘキサジエニル、1,4−ヘキサジエニル、1,5−ヘキサジエニル、2,5−ヘキサジエニル。3,5−ヘキサジエニル、1,3,5−ヘキサトリエニル、1,3−ヘキサジエチニル、2,4−ヘキサジエチニル、1,4−ヘキサジエチニル、1,5−ヘキサジエチニル、2,5−ヘキサジエチニル、3,5−ヘキサジエチニル、1,3,5−ヘキサトリエチニル基などから選択できる。
分岐状の炭素数1〜18の不飽和脂肪族基としては、分岐状の飽和脂肪族基の任意の炭素−炭素結合を炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合に置換した置換基などから選択でき、例えば、2−メチルブタ−2−エン−1−イル、2−メチルブタ−1,3−ジエン−1−イル、3−メチルブタ−2−エン−1−イル、3−メチルブタ−3−エン−1−イルなどから選択できる。
炭素数1〜18の飽和環脂肪族基としては、シクロプロパニル、シクロブタニル、シクロペンタニル、シクロヘキサニル基などから選択できる。
炭素数1〜18の不飽和環脂肪族基としては、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル基などから選択できる。
上記脂肪族基Bにおいて、炭素数は1〜18であれば良い。導電性部位であるテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンのπ共役平面での自己集合を阻害しないよう、炭素数は1〜12であることが好ましく、1〜8であることがより好ましい。また、有機溶媒への溶解性を向上するよう、炭素数は4以上が好ましい。すなわち最も好ましい脂肪族基Bの炭素数は4〜8である。
脂肪族基Bは、導電性部位であるテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンのπ共役平面での自己集合を阻害しないよう立体的影響の少ない置換基が良い。すなわち好ましい脂肪族基Bは飽和または不飽和の直鎖状脂肪族基である。有機溶媒への溶解性をより向上するよう、飽和の直鎖状脂肪族基であればより好ましい。
テトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンに導入される脂肪族基Bの数は最大18であるが、導電性部位であるテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンのπ共役平面での自己集合を阻害しないよう、8つ以下が好ましく、有機溶媒への溶解性を向上するよう2つ以上であることが好ましい。
テトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンに導入される脂肪族基Bの位置は、A〜A18のうち、A及びA18以外のA〜A、A10〜A17のうち少なくとも1つに脂肪族基Bが導入されていれば特定されない。
例えば、脂肪族基Bの位置は、A〜Aのうち少なくとも1つ、A〜Aのうち少なくとも1つ、A10〜A13のうち少なくとも1つ、A14〜A17のうち少なくとも1つであり、残りが水素原子であることが好ましい。
また、脂肪族基Bの位置は、A〜Aのうち少なくとも1つ、A〜Aのうち少なくとも1つであり、残りが水素原子であることが好ましい。または、脂肪族基Bの位置は、A〜Aのうち少なくとも1つ、A14〜A17のうち少なくとも1つであり、残りが水素原子であることが好ましい。または、脂肪族基Bの位置は、A〜Aのうち少なくとも1つ、A10〜A13のうち少なくとも1つであり、残りが水素原子であることが好ましい。
テトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンのπ共役平面がゆがまないよう、A,A,A,A,A,A10,A13,A14,A17,A18は水素原子であることが好ましい。また、合成の容易を鑑みて対称性の良い位置に同種の脂肪族基Bが導入されているのが好ましい。
すなわち、脂肪族基Bの位置は、A及びAのうち少なくとも1つ、A及びAのうち少なくとも1つ、A11及びA12のうち少なくとも1つ、A15及びA16のうち少なくとも1つであり、残りが水素原子であることが好ましい。
また、脂肪族基Bの位置は、A及びAのうち少なくとも1つ、A及びAのうち少なくとも1つであり、残りが水素原子であることが好ましい。または、脂肪族基Bの位置は、A及びAのうち少なくとも1つ、A15及びA16のうち少なくとも1つであり、残りが水素原子であることが好ましい。または、脂肪族基Bの位置は、A及びAのうち少なくとも1つ、A11及びA12のうち少なくとも1つであり、残りが水素原子であることが好ましい。
以上のことより、脂肪族基Bの好ましい導入位置は、例えばA,A,A,A,A11,A12,A15,A16であり、A,A,A11,A16であり、A,A,A12,A15であり、A,A,A12,A15であり、A,A,A12,A16であり、A,A,A,Aであり、A,A,A15,A16であり、A,A,A11,A12であり、A,Aであり、A,Aであり、A,Aであり、A,A11であり、A,A12であり、A,A16である。
また、異なる2種類以上の脂肪族基Bを導入する場合は、前記組み合わせで位置番号の重ならない組み合わせ(例えば、A,A,A11,A16で1種、A,A,A12,A1で1種)で導入すればよい。
以上のテトラベンズアントラセン系化合物で、例えば、半導体素子等を真空蒸着により形成するには分子量が2000以下の化合物が好ましく、1000以下の化合物がより好ましい。分子量が2000を超えると、融点が高くなり真空蒸着による成膜が行いにくくなる傾向にある。ただし、スピンコート等の溶液法により本化合物の薄膜を作製する場合には、使用する溶媒に対して十分な溶解性を有していればよく分子量の制限は特にない。
上記式(1)で示される化合物の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
Figure 2008280295
Figure 2008280295
Figure 2008280295
Figure 2008280295
Figure 2008280295
Figure 2008280295
Figure 2008280295
上記一般式(1)で示される化合物は、例えば、以下のような経路で合成することができる。
まず、例えば下記反応式(I)〜(III)により、テトラベンズアントラセン誘導体の前駆体を合成する。その後、下記反応式(IV)により本実施形態に係るテトラベンズアントラセン誘導体を得ることができる。また、下記反応式(V)のように、他の手法により合成したテトラベンズアントラセン誘導体に置換基を導入して本実施形態に係るテトラベンズアントラセン誘導体を得てもよい。
(反応式(I))
化合物(i)と化合物(ii)とを下記反応条件Aで反応させ、テトラベンズアントラセン誘導体の前駆体である1,2,4,5−テトラフェニルベンゼン誘導体化合物(iii)を合成する。
Figure 2008280295
(反応式(II))
または、化合物(iv)と化合物(v)とを下記反応条件Aで反応させ、テトラベンズアントラセン誘導体の前駆体であるキンケフェニル誘導体化合物(vi)を合成する。
Figure 2008280295
(反応式(III))
または、化合物(vii)と化合物(v)とを下記反応条件Aで反応させ、テトラベンズアントラセン誘導体の前駆体であるキンケフェニル誘導体化合物(viii)を合成する。
Figure 2008280295
ここで、上記各反応に用いられる化合物(ii)または化合物(v)は、1種類でも2種類以上でも良いが、得られる化合物が一義的に定まり、精製が容易であるため、1種類であることが好ましい。
反応条件Aとは、一般的なクロスカップリングビアリール合成条件である。クロスカップリングビアリール合成は、Suzuki反応、Kharasch反応、Negishi反応、Stille反応、Grignard反応、Ullmann反応などが利用でき、更に他の金属(例としてPd、Cu、Ti、Sn、Ni、Pt)や金属錯体(例としてPd(PPh、Pd(OAc)、Pd(dba)、Pd(PPhCl、Pd(dppf)Cl、Pd/C、Ni(PPhCl、Ni(PPh、Ni(dppp)Cl、Ni(dppe)Cl、Ni(acac))触媒、官能基W、塩基(例としてNaCO、KCO、CsCO、Ba(OH)などの無機塩基や、NEt、NH(i−Pr)、NHEt、NHMe、NMe、DBU、DMAP、ピリジンなどの有機塩基)や溶媒(例としてトルエン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、水、ジメチルホルムアミドなど)やPPh、P(o−Tol)、P(t−Bu)、PEtを用い、室温または加熱することで合成してもよい。またクロスカップリングビアリール合成反応の収率向上や反応位置選択性を図るために、官能基Wを他の官能基に変換する反応を取り入れても良い。これらの官能基変換としては、臭化物からホウ酸への変換が例としてあるが、これに限定しない。なお、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Prはプロピル基を、Buはブチル基を、Phはフェニル基を、Tolはトリル基をそれぞれ表す。
(反応式(IV))
次に、得られた化合物(iii),(vi),(viii)を下記反応条件Bで反応させ、テトラベンズアントラセン誘導体(ix)を合成する。得られる化合物が一義的に定まり、精製が容易であることから、反応式(I)を利用して、化合物(iii)を用いることが、反応式(II),(III)及び化合物(vi),(viii)を用いることよりも好ましい。
Figure 2008280295
(反応式(V))
または、他の手法により合成したテトラベンズアントラセン誘導体化合物(x)に前記反応条件Aまたは別の手法により置換基を導入してテトラベンズアントラセン誘導体(ix)を合成しても良い。
Figure 2008280295
反応条件Bとは、脱離する2つの置換基Yが1つまたは2つとも官能基Wならば、前記反応条件Aを利用することができる。また、脱離する2つの置換基Yが2つとも水素原子ならば、以下のプロトン脱離を伴う環化反応を利用することができる。例えば、化合物(iii),(vi),(viii)に、塩化メチレン、トルエン、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,3,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,3,4−テトラクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、1,2,3,6−テトラクロロベンゼン、ペンタクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、二硫化炭素などの溶媒中、塩化鉄(III)、塩化アルミニウム、塩化銅、ビストリフルオロアセトキシヨージドベンゼンなどの触媒1種類または2種類以上を、直接またはニトロメタンなどの溶液として添加し、室温または加熱条件下で反応させることにより合成することができる。
反応式(I)〜(V)において、X〜X18は、前記式(1)においてA〜A18で定義される置換基である。W〜W10は、Cl、Br、I等のハロゲン基、OSOCF、OSOF、OSOMe等のスルホン酸基、B(OH)、B(OMe)等のホウ酸基、Li(リチオ基)、MgBr、MgCl、ZnBr、ZnCl、SnBu、SnMe、SnPh、CuI等の金属塩基、または下記置換基等の官能基を示す。
Figure 2008280295
また、Y〜Y11は、それぞれ独立して水素原子またはW〜W10で定義された置換基である。Z〜Z18は、それぞれ独立してX〜X18またはW〜W10で定義された置換基である。
また、いずれの反応においても、原料、中間体の結合の仕方によって位置異性体が生じることもあり、生成物がそれらの混合物となることもある。
このように、出発原料として使用する化合物の置換基を適宜選択することにより、上記(1)で示される各種テトラベンズアントラセン誘導体化合物の置換基の種類、置換基の位置を任意に変えることができる。
本実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物は、骨格にテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンが用いられ、熱に対して高い安定性を有している。既知の無置換のテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンでは透明性の高いp型有機電界効果トランジスタを作製できる。これに置換基を導入した新規の上記式(1)で表される化合物は有機溶媒に可溶であり、無置換のテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンと同じく透明性の高い有機半導体装置、特に高いキャリア移動度を示す透明性の高いp型有機電界効果トランジスタを作製できる。また、有機溶媒に可溶なため、印刷法やインクジェット法を利用した安価な有機素子製作への応用が期待できる。
なお、本実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物が溶解可能な有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,3,4−テトラクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、1,2,3,5−テトラクロロベンゼン、ペンタクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。
<有機半導体材料薄膜>
本実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物を使用して、真空蒸着法、印刷法やインクジェット法等の周知の成膜方法により基板上に有機半導体薄膜が形成される。真空蒸着法等を使用する場合には、本実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物の融点は、100℃〜600℃であることが好ましい。
有機半導体材料は、薄膜状態で隣りあう分子同士が良好に重なり合っていると、有機半導体膜が高いキャリア移動度を示すと考えられる。キャリア、すなわち電子あるいは正孔が分子間を移動していく際には各分子のπ電子軌道間の相互作用が重要であるが、隣りあう分子同士が良好に重なり合っていると各分子のπ電子軌道間の相互作用が良好に働き、キャリアが高速で移動しやすいと考えられるためである。
本実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物は、導電性部位であるテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンのπ共役平面での自己集合により、有機半導体薄膜としたときに高いキャリア移動度が得られると考えられる。
<半導体装置>
本実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物は、熱的安定性が高く、光や酸素等により酸化されにくい安定した構造を有する。したがって、このテトラベンズアントラセン系化合物を使用した薄膜を有する半導体装置としても安定性の高いものが得られる。
本実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物を含む有機半導体層を有する半導体装置としては、例えば、ダイオード、トランジスタ、電界効果トランジスタ、静電誘導トランジスタ(SIT)、抵抗、コンデンサ;これらの半導体素子を用いたメモリやICタグ;あるいはフォトダイオード、発光ダイオード、発光トランジスタ、ガスセンサ、バイオセンサ、血液センサ、免疫センサ、人工網膜、味覚センサ等が挙げられる。少なくとも本実施形態に係る有機半導体材料は、電界効果トランジスタに採用することで優れた機能を発揮することができる。
以下、電界効果トランジスタ(FET)を例として、本実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物の利用方法を示すが、他の半導体装置にも同様に適用することができる。図1には、本実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物を使用した電界効果トランジスタの構成の一例を示す。電界効果トランジスタ1は、基板10、ゲート電極12、ゲート絶縁層14、有機半導体膜16、ソース電極18、ドレイン電極20を備える。
基板10としては、シリコン、ガラス、石英、またはセラミック等の材料、さらにはプラスチック材料などを用いることができる。基板10として、プラスチック基板等を使用すれば、曲げることが可能な柔軟なディスプレイ、センサ、曲面を有するディスプレイ、センサ等に応用することができる。
ゲート電極12は、アルミニウム、金、白金、クロム、タングステン、タンタル、ニッケル、銅、銀、マグネシウム、カルシウム等の金属、あるいはそれらの合金、およびポリシリコン、アモルファスシリコン、グラファイト、錫添加酸化インジウム、酸化亜鉛、導電性ポリマ等の材料を1種類または多種類用い、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、RFスパッタ法または印刷法等の周知の成膜方法により形成される。ゲート電極12としては、電子を注入し易い点等から、アルミニウムであることが好ましい。また、ゲート電極12の膜厚は、通常5nm〜3μmの範囲であり、30nm〜1μmの範囲であることが好ましい。
成膜後、所望の形状になるよう必要に応じてパターニングを行う。パターニング方法としては例えば、フォトリソグラフィ法、印刷法等の周知のパターニング方法を使用することができる。また、レーザや電子線等のエネルギ線を照射して直接パターンを形成してもよい。
ゲート絶縁層14は、SiO、Si、SiON、Al、Ta、アモルファスシリコン、ポリイミド樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、ポリパラキシリレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等の材料を用い、ゲート電極12と同様の周知の成膜方法、パターニング方法により形成される。また、ゲート絶縁層14の膜厚は、例えば、通常10nm〜3μmの範囲であり、50nm〜1μmの範囲であることが好ましい。
有機半導体膜16は、上記テトラベンズアントラセン系化合物を1種類または多種類用いて、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、レーザ蒸着法等のドライ成膜法;スピンコート法、ディップ法、インクジェット印刷やスクリーン印刷等の印刷法等のウェット成膜法、等の公知の方法により形成される。ドライ成膜法は、成膜性が良く均一な膜が得られやすいという利点がある。また、ウェット成膜法は、比較的安価な設備で、大面積の薄膜を形成しやすいという利点がある。本実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物は有機溶媒に可溶なため、印刷法やインクジェット法等のウェット成膜法を利用することができる。また、有機半導体膜16の膜厚は、例えば、通常5nm〜300nmの範囲であり、10nm〜60nmの範囲であることが好ましい。
また、有機半導体膜16中での上記テトラベンズアントラセン系化合物の配向性を向上させるために、有機半導体膜16を成膜後、加熱してアニールすることが好ましい。加熱温度としては、上記テトラベンズアントラセン系化合物が分解しない程度の温度が好ましい。また、プラスチック基板等の場合、基板10が変形しない程度の温度であれば特に制限はないが、例えば、50℃〜150℃であり、80℃〜120℃であることが好ましい。加熱時間としては、例えば、1分〜10時間であればよい。
さらに、ソース電極18及びドレイン電極20は、アルミニウム、金、白金、クロム、タングステン、タンタル、ニッケル、銅、銀、マグネシウム、カルシウム等の金属あるいはそれらの合金、またはポリシリコン、アモルファスシリコン、グラファイト、錫添加酸化インジウム、酸化亜鉛、導電性ポリマ等の材料を用い、ゲート電極12と同様の周知の成膜方法、パターニング方法により形成される。また、ソース電極18及びドレイン電極20の膜厚は、例えば、通常5nm〜3μmの範囲であり、30nm〜1μmの範囲であることが好ましい。
本実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物は安定性が高いため、ゲート電極12、ゲート絶縁層14、ソース電極18、ドレイン電極20用の材料として、各種材料を使用することができる。
また、本実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物を使用した電界効果トランジスタの構成の別の例を図2に示す。
本実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物を含む有機半導体層を有する電界効果トランジスタ(FET)は、例えば、ディスプレイを構成する画素のスイッチング用トランジスタ、信号ドライバ回路素子、メモリ回路素子、信号処理回路素子等として好適に使用できる。ディスプレイの例としては、液晶ディスプレイ、分散型液晶ディスプレイ、電気泳動型ディスプレイ、粒子回転型表示素子、エレクトロクロミックディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、電子ペーパ等が挙げられる。また、前述したようにプラスチック基板を使用すれば、曲げることのできるディスプレイ、センサ等に好適に応用することができる。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンの合成>
(1)1,2,4,5−テトラキス(4−ヘキシルフェニル)ベンゼンの合成
臭化亜鉛(10.89g,48.4mmol)をテトラヒドロフラン(24mL)に懸濁させ、窒素雰囲気に置換後、氷浴下、ヘキシルマグネシウムブロミドのジエチルエーテル溶液(2.0M,24.0mL,48.0mmol)を滴下した。反応懸濁液を−78℃に冷却して15分間撹拌し、ジクロロ[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(98mg,0.12mmol)と1,2,4,5−テトラキス(4−ヨードフェニル)ベンゼン(5.32g,6.00mmol)のテトラヒドロフラン(36mL)懸濁液を添加した。窒素雰囲気下、室温で24時間撹拌し、更に70℃で2時間加熱した後、氷浴下、塩酸(4M,66mL,264mmol)を滴下した。塩化メチレンを加えて有機層を分取し、無水硫酸ナトリウムによる乾燥処理後、山善社製中圧分取液体クロマトグラフYFLC−AI−560(送液量:20mL/min,メルク社シリカゲル60をMM−2020−150に詰めて使用,展開溶媒:ヘキサン→ヘキサン+塩化メチレン5%)にて精製した。白色結晶として、1,2,4,5−テトラキス(4−ヘキシルフェニル)ベンゼンが収量4.09g(収率95%)で得られた。同定はH及び13C−NMRとMALDI−TOF−MSにより行った。
H−NMR(CDCl):7.50(s,Ar,2H),7.12(d,Ar,8H,J=8.1Hz),7.03(d,Ar,8H,J=8.1Hz),2.57(t,CH,8H,J=7.6Hz),1.60(m,CH,8H),1.26−1.34(m,CH,24H),0.88(t,CH,12H,J=6.7Hz)
13C−NMR(CDCl):141.1,139.3,138.4,132.9,129.7,127.9,35.6,31.7,31.3,28.9,22.6,14.1
MALDI−TOF−MS(DPBD):m/z=718.53,Calcd 718.55
Figure 2008280295
(2)3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンの合成
トリフルオロスルホン酸銅(II)(16.59g,45.9mmol),塩化アルミニウム(6.53g,49.0mmol)を二硫化炭素(500mL)に懸濁させ、窒素雰囲気下に置換後、1,2,4,5−テトラキス(4−ヘキシルフェニル)ベンゼン(1.01g,1.40mmol)を添加した。反応混合液を24時間室温で撹拌し、メタノ−ル(100mL)を加えて反応を終結させた。生じた固体は濾別してメタノ−ルと水で洗浄した後、クロロホルム溶液にして、希塩酸で洗浄し、無水硫酸ナトリウムによる乾燥処理後、山善社製中圧分取液体クロマトグラフYFLC−AI−560(送液量:20mL/min,メルク社シリカゲル60をMM−2020−150に詰めて使用,展開溶媒:ヘキサン+クロロホルム10%→30% →50% →クロロホルム100%)にて精製した。白色結晶として、3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンが収量0.161g(収率16.1%)で得られた。同定はH及び13C−NMRとMALDI−TOF−MSにより行った。
H−NMR(CDCl):9.79(s,Ar,2H),8.83(d,Ar,4H,J=8.0Hz),8.44(s,Ar,4H),7.55(d,Ar,4H,J=8.0Hz),2.90(t,CH,8H,J=7.7Hz),1.81(m,CH,8H,J=7.7Hz),1.48(m,CH,8H),1.35−1.42(m,CH,16H),0.92(t,CH,12H,J=7.0Hz)
13C−NMR(CDCl):142.0,130.1,128.4,128.1,128.0,123.1,122.9,117.0,36.4,31.8,31.8,29.2,22.7,14.2
MALDI−TOF−MS(DPBD):m/z=714.50(M),657.35([M−C),643.41([M−C11),Calcd 714.52,657.45,643.43
Figure 2008280295
このようにして合成した3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセン1mgを、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トルエン、1,2,4−トリクロロベンゼン各1mLに対して添加したところ、均一な溶液となった。また、3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセン1mgを、1,4−ジオキサン、ヘキサン、ジメトキシエタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン各1mLに対して添加し、加熱したところ、均一な溶液となった。無置換のテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンは、同様の条件で上記有機溶媒に不溶であった。3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンは、テトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンの3,6,12,15位をn−ヘキシル基で置換した化合物で、このヘキシル基が有機溶媒への溶解性を向上させていることが分かった。
コーニング社製ガラス基板1737をUVオゾン処理後、オクタドデシルトリメトキシシランで表面処理した基板を用い、1mLの1,2,4−トリクロロベンゼンまたは四塩化炭素に3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセン5mgを溶解させた溶液で、スピンコート法(1000rpm、60秒)で成膜したところ、良好な薄膜を形成することができた。
図3に合成した3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセン(4H−TBA)の透過率を示す。可視光領域である400〜700nmにおいて、無置換のテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセン(TBA)は従来材料であるペンタセンよりも高い透過率を示しているが、置換基を導入しても、この透過率は維持または良好になっているのが分かる。なお、透過率は石英基板に真空蒸着法で成膜した膜(膜厚20nm)について島津製作所製分光光度計UV−3600を使用して測定した。
図4に合成した3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンのTG−DTA測定結果を示す。無置換のテトラベンズアントラセン(実線)に比べ、3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセン(点線)が40℃程度熱安定性が向上し、良好な熱安定性を有することが分かる。これより3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンがテトラベンズアントラセン骨格特有の熱安定性を保持していることが分かる。なお、TG−DTA測定は、熱重量/示差熱分析装置(リガク製、THERMO PLUS型)を使用して、サンプル量4.4mg、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで行った。
(実施例2)
実施例1で合成した3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンを使用して、図2に示すような積層構造の薄膜トランジスタを作製した。基板にはSbを高濃度でドーピングし、抵抗率が0.02Ωcm以下のSiウェハを用いた。熱酸化SiO膜(膜厚300nm)を絶縁体膜として使用した。絶縁体容量は10nF/cmであった。3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンを使用して、真空蒸着法により室温(20℃)において20nmの厚さで有機半導体膜を成膜した。最上部に、メカニカルマスクを通して、ソースならびにドレイン電極となるAl(100nm)を蒸着した。チャンネル長は5mm、チャンネル幅は0.2mmとした。最後に、Si基板の裏面にゲート電極となるAl(膜厚:100nm)を蒸着し、サンプルとした。
作製した薄膜トランジスタについて、半導体パラメータアナライザ装置(ヒューレットパッカード製、4145B型)により、ドレイン電圧を+50Vとして、ゲート電圧が−50V〜+100Vの範囲で、ドレイン電流Iを測定した。
図5に図2で示した素子の電気特性の測定結果を示す。この素子は負のゲート電圧(V)に対してドレイン電流(I)が生じるp型半導体の特性を有していた。また、図5の横軸はドレイン電圧(VDS)、縦軸はドレイン電流(I)である。ドレイン電流の変化曲線は、低いドレイン電圧の線形領域と高い電圧での飽和領域を有していた。これよりこの素子の移動度は0.05cm/Vsと導出され、高いキャリア移動度を有することが分かった。
なお、電界効果移動度(μ)は、ドレイン電流Iを表わす下式(A)を用いて算出した。
=(W/2L)μCi(Vg−Vt) (A)
ここで、LおよびWはゲート長およびゲート幅である。また、Ciは絶縁層の単位面積当たりの容量である。Vgはゲート電圧であり、Vtはしきい値電圧である。
本発明の実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物を使用した電界効果トランジスタの構成の一例を示す図である。 本発明の実施形態に係るテトラベンズアントラセン系化合物を使用した電界効果トランジスタの構成の別の例を示す図である。 本発明の実施例1で製造した3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンの透過率を示す図である。 本発明の実施例1で合成した3,6,12,15−テトラヘキシルテトラベンズ[a,c,h,j]アントラセンのTG−DTA測定結果を示す図である。 本発明の実施例2で製造した薄膜トランジスタのドレイン電圧(VDS)に対するドレイン電流(I)の関係を示す図である。
符号の説明
1 電界効果トランジスタ、10 基板、12 ゲート電極、14 ゲート絶縁層、16 有機半導体膜、18 ソース電極、20 ドレイン電極。

Claims (13)

  1. 下記一般式(1)で示される化合物であることを特徴とするテトラベンズアントラセン系化合物。
    Figure 2008280295

    (式中、A〜A18のうち、A及びA18は互いに独立して水素原子、直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、A〜A、A10〜A17のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子である。)
  2. 請求項1に記載のテトラベンズアントラセン系化合物であって、
    〜Aのうち少なくとも1つ、A〜Aのうち少なくとも1つ、A10〜A13のうち少なくとも1つ、A14〜A17のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることを特徴とするテトラベンズアントラセン系化合物。
  3. 請求項1に記載のテトラベンズアントラセン系化合物であって、
    及びAのうち少なくとも1つ、A及びAのうち少なくとも1つ、A11及びA12のうち少なくとも1つ、A15及びA16のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることを特徴とするテトラベンズアントラセン系化合物。
  4. 請求項1に記載のテトラベンズアントラセン系化合物であって、
    〜Aのうち少なくとも1つ、A〜Aのうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることを特徴とするテトラベンズアントラセン系化合物。
  5. 請求項1に記載のテトラベンズアントラセン系化合物であって、
    及びAのうち少なくとも1つ、A及びAのうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることを特徴とするテトラベンズアントラセン系化合物。
  6. 請求項1に記載のテトラベンズアントラセン系化合物であって、
    〜Aのうち少なくとも1つ、A14〜A17のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることを特徴とするテトラベンズアントラセン系化合物。
  7. 請求項1に記載のテトラベンズアントラセン系化合物であって、
    及びAのうち少なくとも1つ、A15及びA16のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることを特徴とするテトラベンズアントラセン系化合物。
  8. 請求項1に記載のテトラベンズアントラセン系化合物であって、
    〜Aのうち少なくとも1つ、A10〜A13のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることを特徴とするテトラベンズアントラセン系化合物。
  9. 請求項1に記載のテトラベンズアントラセン系化合物であって、
    及びAのうち少なくとも1つ、A11及びA12のうち少なくとも1つがそれぞれ独立して直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜18の飽和または不飽和の脂肪族基であり、残りが水素原子であることを特徴とするテトラベンズアントラセン系化合物。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のテトラベンズアントラセン系化合物であって、
    前記炭素数が1〜12であることを特徴とするテトラベンズアントラセン系化合物。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のテトラベンズアントラセン系化合物であって、
    前記炭素数が4〜8であることを特徴とするテトラベンズアントラセン系化合物。
  12. 有機半導体層を有する半導体装置であって、
    前記有機半導体層は、請求項1〜11のいずれか1項に記載のテトラベンズアントラセン系化合物を含むことを特徴とする半導体装置。
  13. 有機半導体層を有する電界効果トランジスタであって、
    前記有機半導体層は、請求項1〜11のいずれか1項に記載のテトラベンズアントラセン系化合物を含むことを特徴とする電界効果トランジスタ。
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KR101733651B1 (ko) 2013-11-22 2017-05-08 제일모직 주식회사 화합물, 이를 포함하는 유기 광전자 소자 및 표시장치

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