JP2008271920A - 乾燥澱粉麺様食品及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】お湯を注ぐだけで簡便に湯戻し復元でき、喫食時にちゅるちゅるとしたトコロテン様食感とグミ風のグミゼリー様食感を具備した新規な食感を有する乾燥澱粉麺様食品を提供する。
【解決手段】
主原料として、緑豆澱粉及びいも類澱粉並びに糖類又はデキストリンを使用し、これに加水し、攪拌しつつ加熱糊化する。その後、糊化された澱粉をシート状に展開後に、冷却して糊化されたシート状澱粉ゲルを形成させ、これを裁断・熱風乾燥する。
【選択図】なし

Description

本発明は、約5分程度以内の短時間で湯戻し復元でき、トコロテン様食感とグミゼリー様食感を備えた乾燥澱粉麺様食品及びその製造方法に関するものである。
従来まで、種々の乾燥された澱粉麺食品が開示されている。例えば、伝統的なものとしては、鍋料理に利用される春雨や葛きりがある。これらの乾燥澱粉麺食品は、お湯で茹でる等の処理を行い、復元後に調味・喫食するものであり、トコロテン様食感(麺状のつるつるとした食感であり、かつ弾力感のある食感)を有するものであるが、ぼそぼそした切断しやすい食感も有するものである。
また、これら以外に独自の製法による煮込みに対する耐性を改良した乾燥澱粉麺食品も開示されている(特許文献1、2)。
また、近年の消費者の嗜好の多様化に伴い、菓子の分野において、ゼラチンを主剤として製造されるグミ風のくにゅくにゅとしたグミゼリー様食感が好まれるようになってきている(例えば、特許文献3)。これは澱粉を糊化した後、乾燥を行わず、菓子としてそのまま喫食するものである。
一方、麺様の食品として長期保存可能な春雨やくずきり等の乾燥澱粉麺食品の分野においては、復元後においてこのようなグミ風のくにゅくにゅとした食感(グミゼリー様食感)を具備したものは従来、無かった。
更に、春雨や葛きりのような従来までの乾燥澱粉麺食品は、一般には鍋等で加水及び加熱しつつ湯戻してから喫食するものが多く、その調理に手間を要し、即座の喫食には不便であった。この不便を解消するために、簡便に湯戻しして調理できる即席春雨及びその製造方法(特許文献4)が開示されている。しかし、この即席春雨は、従来の伝統的な春雨の食感を復元することを目的としたものであり、澱粉麺食品に新規なグミゼリー様食感を付与したものではない。
特公昭39−27465 特開平2−295445 特開平5−137513 特開2006−141278
本発明者等は、上記事情に鑑み、春雨や葛きり等が有するトコロテン様食感を有すると共に、くにゅくにゅしたグミゼリー様食感をも有し、かつ、お湯をかけるだけで短時間で湯戻し復元して喫食できる、従来にない新規な食感を有する乾燥澱粉麺様食品及びその製造方法を提供することを目的とした。
本発明者らは種々の澱粉原料と添加物を試験し、上記のトコロテン様食感とグミゼリー様食感の両方を具備する乾燥澱粉麺様食品の研究を行った。その結果、緑豆澱粉及びいも類澱粉を含有する澱粉原料の一定配合量に水を加えて糊化した後、シート状に広げ、冷却・裁断した後に熱風乾燥した乾燥澱粉麺様食品が、注湯しその復元後において、トコロテン様食感と所要のグミゼリー様食感とを呈することを見出した。
本発明者等の目的を達成するためには、これらの食感を有するとともに、お湯をかけるだけで短時間で復元することが必要である。また、所望のグミゼリー様食感を呈するためには、復元後における澱粉食品において所定以上の厚みが必要になる。したがって、復元性を向上させることができれば澱粉食品の厚みも増すことができ、これによってグミゼリー様食感をより一層強化向上させることができることになる。
そこで、本発明者らは、更に種々の添加物を検討した結果、澱粉に対して一定量の糖類及び/又はデキストリンを含有させることで、注湯後短時間で湯戻しできかつその復元性を向上させ得ることを見出した。そして、これによって復元後状態において製品厚みを持たせることができ、製品のグミゼリー様食感の強化向上を実現することが可能になり、本発明を完成するに至った。
すなわち、請求項1記載の発明は、
熱湯を注加することで湯戻しして喫食する乾燥澱粉麺様食品であって、以下の工程、すなわち;
A)澱粉及び水、並びに糖類及び/又はデキストリン、を混合し、当該総重量に対して澱
粉を約8〜15重量%、糖類及び/又はデキストリンを約1〜8重量%含む澱粉スラリ
ーを調製する工程、
B)前記調製後の澱粉スラリーを攪拌しながら加熱して糊化する工程、
C)前記糊化後の澱粉スラリーを板状体上にシート状に広げ、次いでこれを冷却し、固形
化する工程、
D)前記糊化澱粉シートを所定形状に裁断する工程、
E)前記糊化澱粉シート裁断物を熱風乾燥する工程、
の各工程を順次実施し、かつ、前記A工程における澱粉が緑豆澱粉及びいも類澱粉を含有することを特徴とする乾燥澱粉麺様食品の製造方法、
である。
請求項1記載の発明の製造方法により製造された乾燥澱粉麺様食品は、注湯し約5分程度以内の短時間保持するだけで湯戻りし喫食可能な状態(復元)となる。また、喫食時に呈する食感は、従来の澱粉麺食品が有しているトコロテン様食感だけでなく、従来までの澱粉麺様食品では表現することのできなかったグミゼリー様食感を兼備したものである。
また、請求項2記載の発明は、
澱粉に糖類及び/又はデキストリンを混合したものを主原料とし、これに加水加熱して糊化した澱粉食品であって、当該澱粉が緑豆澱粉及びいも類澱粉を含有し、かつ、糊化前の重量において澱粉を約8〜15重量%、糖類及び/又はデキストリンを約1〜8重量%含有することを特徴とする澱粉食品、
である。
更にまた、請求項3記載の発明は、
前記請求項2に記載した澱粉食品を、所定形状に裁断し、次いでこれを乾燥後重量に対し水分含量が約5〜9重量%となるまで熱風乾燥したことを特徴とする乾燥澱粉麺様食品、
である。
次いで、請求項4記載の発明は、
熱湯を注加することで復元し喫食する糊化された乾燥澱粉麺様食品であって、
緑豆澱粉及びいも類澱粉を含有した澱粉、並びに、糖類及び/又はデキストリンを必須の構成成分とし、澱粉を約40〜89重量%、糖類及び/又はデキストリンを約5〜48重量%、水分を約5〜9重量%含有することを特徴とする乾燥澱粉麺様食品、
である。
本発明によれば、注湯及び保持するだけで簡単に湯戻し復元でき、従来の澱粉麺食品が有しているトコロテン様食感と従来の乾燥澱粉麺食品では得られなかったグミゼリー様食感とを兼備する新規な食感を有する乾燥澱粉麺様食品を製造し提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の開示の範囲に限定的に解釈されるものではない。
─使用する澱粉の種類─
本発明は澱粉を主原料とするが、まず、緑豆澱粉を必須として使用する。緑豆澱粉は豆類澱粉の一種であるが、一般に豆類澱粉は、糊化後の冷却時において固いゲルを形成し易い特性を有している。このため、本発明の乾燥澱粉麺様食品の製造には豆類澱粉を使うことが有効となる。また、豆類澱粉のうちでも、特に緑豆澱粉を使用すると、復元後の喫食時においてトコロテン様食感とともに、特有のグミゼリー様食感を発現させることができる。
緑豆澱粉の一定量を他の豆類澱粉に置き換えることもできる。この場合、えんどう豆澱粉・小豆澱粉等の種々の豆類澱粉を使用することができる。
本発明においては、緑豆澱粉又は豆類澱粉以外の澱粉も使用する。原料澱粉として緑豆澱粉のみで製造すると、糊化後にシート状に広げた後において、澱粉ゲルが冷却後において固くなりすぎ、その後の裁断の工程に支障をきたす。また、乾燥終了後の製品において湯戻しした場合、ゲル強度が大であるため、却ってトコロテン様食感の発現が不充分となるおそれがある。
他方、緑豆澱粉を含めた豆類澱粉以外の澱粉のみ、例えば、馬鈴薯澱粉やコーンスターチ等で製造すると、糊化後にシート状に広げた澱粉ゲルが冷却後においても崩れ易く、また、製造完了後の製品において、煮崩れを生じたり、湯戻し後におけるトコロテン様食感とグミゼリー様食感が十分に得られないという問題がある。
このため、本発明では、緑豆澱粉を一定量以上含む豆類澱粉と、豆類澱粉以外の澱粉を一定量配合することが必要となる。豆類澱粉以外の澱粉としては、特にいも類澱粉を使用することが必要である。いも類澱粉を用いた場合には、これ以外の澱粉に比べてグミゼリー様食感において良好な食感を発現させることができるためである。本発明においていも類澱粉とは、馬鈴薯澱粉・甘藷澱粉等の常用される通常公知のものを指し、これらいも類澱粉のいずれも選択し、使用することができる。
いも類澱粉の一定量を豆類澱粉・いも類澱粉以外の他の澱粉に置き換えることもできる。この場合においては、コーンスターチ・小麦澱粉・米澱粉等の穀類澱粉、クズ澱粉のような食用野草類澱粉、ヤシ澱粉のような幹茎澱粉等の澱粉を幅広く用いることができる。また、上記の各種澱粉は、エーテル化、アセチル化等の化工澱粉であっても使用が可能である。
また、トコロテン様食感とグミゼリー様食感について、食感の微妙な差異を反映させるためには、各澱粉の配合量を加減調整することで所望の食感を調整することができる。
─各種澱粉の配合量─
澱粉の配合量については、まず、請求項1記載の発明のA工程における澱粉スラリーを調製する際には、スラリー総重量に対して澱粉を約8〜15重量%含有するように調製する。この含有量の範囲は、春雨やクズきりなどの従来の乾燥澱粉麺食品の製造方法と比較すると、澱粉濃度が低く、この点が本発明の特徴である。本発明においては、このように低濃度の条件であるため、スラリー全体を一旦糊化した後に加工することができる。
この際に使用する各種澱粉の配合範囲としては、澱粉の総配合量に対して、基本的に、緑豆澱粉を約20〜80重量%、好ましくは約40〜60重量%の範囲で含有させる。
アレンジ配合として緑豆澱粉の一部を他の豆類澱粉に置換する場合には、当該他の豆類澱粉の配合量は、緑豆澱粉配合量に対し最大でそれと同量若しくは同量以下とする。
いも類澱粉については、澱粉の総配合量のうち前記緑豆澱粉ないし豆類澱粉の配合量を控除した残余の範囲内で配合量を設定できる。すなわち、いも類澱粉の配合量は澱粉の総重量に対し約80〜20重量%、好ましくは約60〜40重量%である。
また、前記の如く、いも類澱粉の一部を豆類澱粉・いも類澱粉以外の澱粉、例えばコーンスターチ・小麦澱粉・米澱粉等の穀類澱粉、クズ澱粉のような食用野草類澱粉、ヤシ澱粉のような幹茎澱粉等に置換することができ、この場合、当該置換澱粉の配合量は、いも類澱粉配合量に対し最大でその同量若しくは同量以下とする。
─糖類及び/又はデキストリン─
本発明は、原料として糖類及び/又はデキストリンを併用して使用する。糖類及び/又はデキストリンを含有させることにより、請求項1記載の製造方法によって得られる乾燥澱粉麺様食品を熱湯で復元する際に、迅速に水分を吸収させ復元性を向上させることができる。また、当該使用によって復元後における乾燥澱粉麺様食品の厚みを増加させることができる。
さらに、糖類及び/又はデキストリンを澱粉スラリーに配合しておくと、攪拌しつつ加熱して糊化する際に粘度上昇を抑制するという効果があるため、糊化工程の作業性を向上させることができるという利点がある。使用する糖類としては、ブドウ糖、果糖等の単糖類、乳糖、ショ糖、麦芽糖等の二糖類及びソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコールを用いることができる。使用する糖類は、その甘みの種類や甘味度によって適宜選択することができるが、甘みを強く付与したい場合には、例えば、ショ糖や果糖を選択すればよいし、甘みを抑えたい場合には、例えば、乳糖を選択すればよい。尚、乳糖の使用は、後の工程である熱風乾燥において当該澱粉食品中間品を載置する網等へのくっつきを防止し、乾燥後において製品回収を容易にするという利点もある。
また、デキストリンとしては、分解度DE(dextrose equivalent)8〜40のものが好ましい、特にDE10〜12のものが好適である。本発明においては、このように種々の糖類又はデキストリンを各々単独で又は複数の組合せで、更には糖類及びデキストリンの両者を併用して利用することができるが、これらの糖類及び/又はデキストリンを選択する基準としては、本発明の乾燥澱粉麺様食品の使用の用途と食味への影響を考慮すればよい。
糖類及び/又はデキストリンの含有量については、請求項1記載の発明のA工程である澱粉スラリーの調製において、澱粉スラリーの総重量に対して糖類及び/又はデキストリンを約1〜8重量%含有するように配合し調製する。
この含有範囲に関して、1重量%以下であると最終製品の復元性に対する効果が弱くなり、一方、8重量%を越えると食味に対する悪影響が強くなるため配合不適となる。また、この範囲内であれば、添加糖類の甘みを抑制することができるとともに、迅速な湯戻りを実現することができる。
また、上記の含有量とすることで、請求項1記載の発明のC工程における糊化後の澱粉スラリーをシート状に広げる工程において、澱粉シートの厚みとして、4〜6mm程度までを確保することができ、この程度の厚みから製造した製品でも復元時には熱湯で短時間(5分以内)で湯戻し可能とすることができる。
─その他の添加物─
本発明は、澱粉、糖類又はデキストリン、水を混合して澱粉スラリーを調製するが、これら以外にも種々の添加物を加えることができる。例えば、必要に応じて、食塩、抗酸化剤、アミノ酸、香辛料等の添加物を加えることができる。
まず、食塩(塩化ナトリウム)の場合、食塩は澱粉スラリーに含有させておくと、糖類と同様に、攪拌しつつ加熱する際の粘度上昇を抑制することができるため作業性が向上する。
食塩の配合量としては、澱粉スラリーの総重量に対して約0.1〜3.0重量%が好ましい。3.0重量%を超えると塩味が強くなり食味上の悪影響が生じる。
抗酸化物を添加する場合、原料澱粉中に微量含まれる油脂の劣化による異臭発生の防止等をすることができる。澱粉中に含まれている油脂量は澱粉の種類によって異なるが、具体的に、抗酸化剤としてトコフェロールを添加する場合、原料澱粉に含まれる油脂重量の約200ppm程度の添加をすればよい。また、抗酸化作用を有する重合リン酸塩なども添加可能である。その他の添加物としては、アミノ酸、ペプチド又はタンパク系の素材、さらに、コショウ、ターメリック、唐辛子等の香辛料や各種エキス等、食品に通常使用できる添加物は全て添加することが可能である。
─水─
澱粉スラリーを調製するに際して、水の添加量は、調製後の澱粉スラリーの水分含量が約75〜91重量%程度となるように加水する。この点、従来一般の春雨等の製造方法では、糊化する前の澱粉スラリーが47重量%程度の水分含量であるので、本発明での澱粉スラリーの水分含量は比較的に大きく、本発明の特徴の一つである。
加水量が少ないと濃厚な澱粉スラリーとなるため、本発明の澱粉麺様食品では、復元後に固い食感となり、本発明の目的であるグミゼリー様食感を十分に再現できない。一方、加水量が多いと、ゲル強度が弱くなるため、糊化後の冷却で澱粉ゲルを固形化する際に十分な固さを保持することができず、所定形状への裁断が困難となって、作業性に支障を生じる。
澱粉スラリーを調製する方法としては、種々の方法を実施できるが、例えば、単純に澱粉及び糖類及び/又はデキストリンの混合物に加水する方法、澱粉と水を混合し澱粉スラリー状態にしてから糖類及び/又はデキストリンを混合する方法、あるいは糖類及び/又はデキストリンと水との溶液に澱粉を混合する方法が一般的である。これらの混合の順序は、特に限定されない。加水温度は、使用澱粉の糊化温度以下であることが望ましい。加水が澱粉の糊化温度以上であると、澱粉との接触時に澱粉の表面が糊化することで、当該澱粉がダマ状の小粒状体となり、粉体全体の円滑な溶解とスラリー化が阻害される場合があるためである。
─糊化─
請求項1記載の発明においては、澱粉の糊化を行う。通常、糊化方法としては、澱粉スラリーを攪拌しつつ加熱していく方法が一般的である。具体的には、加熱式のニーダー等を用いて上記澱粉スラリーを混和しつつ加熱して糊化する。加熱温度及び加熱時間は、澱粉が糊化する程度の温度及び時間を基準として設定するが、糊化温度は澱粉の種類によって異なるため、使用各原料澱粉の種類と配合量に応じて適宜調整すればよい。通常、澱粉スラリーを約65℃〜90℃程度になるまで攪拌しつつ加熱することで充分に糊化させることができる。
─シート状に広げる工程─
糊化後の澱粉スラリーをシート状に広げるためには、従来公知の種々の方法を用いることができる。例えば、糊化後の澱粉スラリーを板状体の平板上に展開してシート状に広げることができる。尚、本発明においては澱粉スラリーの粘度が小さいため、シート状にする際に特に圧力をかける必要はない。このため、板状体上でへら等でシート状に広げることも可能である。また、連続的に製造するのであれば、スリットから澱粉スラリーを押し出しつつシート状に成形し、これをコンベヤ上に連続的に展開し延伸させる方法も可能である。シートの厚みついては、種々の厚みを必要に応じて適宜設定し調製することができるが、製品喫食時のグミゼリー様食感を表現するためには乾燥前のゲル状澱粉糊化シート(以下、「澱粉ゲル」と記載する。)の厚みが約3.0mm〜6.0mm程度であることが好ましいので、そのようになるように、澱粉ゲルの厚みを決定づけるシート状展開時の厚みを調整する。
─冷却─
糊化後の澱粉スラリーをシート状に広げた後に冷却する。これは雰囲気温度の冷却によって澱粉スラリーを保形性を有する程度にまでゲル化させる。本発明における冷却とは、強制的冷却だけでなく、室内で放置する放冷や冷蔵庫等に保持する冷蔵も含む。冷却においては、澱粉ゲルの温度が概ね30℃程度になるまで冷却する。
前記冷却後において、保形性を有する澱粉ゲルを得ることができるが、当該澱粉ゲルを続いて所定形状に裁断することによって、澱粉ゲルの裁断物を製造する。当該裁断物は、すでに糊化されているためそのまま糊化澱粉食品として喫食することもできる。この場合には、醤油やソース等の種々の味付けしてから商品として提供することも可能である。この澱粉ゲルの組成は、製造過程で多少の水分が揮発する場合もあるが、その組成として概ね、澱粉を約8〜15重量%、糖類及び/又はデキストリンを約1〜8重量%含有する。
当該澱粉ゲルは請求項2記載の発明における澱粉食品を構成するものである。
─裁断─
澱粉ゲルは所定形状に裁断するが、裁断は機械的に裁断するほか、種々のカッターでの切断あるいは、型抜装置により裁断することができる。裁断においては、細長の麺状に裁断する他、型抜き等して、円形、長方形、星型、花形等の種々の形状とすることができる。したがって、形状そのものは麺線状以外のものも可能であり、いわゆる従来の澱粉麺とは必ずしも類似しない。また、裁断の幅、長さや厚みを調整することで、本発明の目的であるトコロテン様食感とグミゼリー様食感の発現のいずれかをより強調することも可能である。
─熱風乾燥─
熱風乾燥は、通常の熱風乾燥の方式を使用できる。熱風乾燥機としては、箱型、トンネル型や、スパイラル方式の種々のタイプを利用することができる。乾燥条件としては、乾燥温度は、約70℃から90℃程度の熱風により行うのが好適である。また、乾燥時間は約80℃程度であれば、概ね約3時間程度行う。乾燥後製品の最終水分含量が概ね約5〜9重量%程度になるまで熱風乾燥をすることが必要である。熱風乾燥後は、室温に置くことで、常温程度の品温に戻す。本発明における熱風乾燥後の乾燥澱粉麺様食品の組成は、総重量に対して澱粉を約40〜89重量%、糖類又はデキストリンを約5〜48重量%、水分を約5〜9重量%含有するものとなる。当該乾燥澱粉麺様食品は、請求項3ないし4記載の発明における乾燥澱粉麺様食品を構成するものである。
─湯戻し及び喫食形態─
本発明による乾燥澱粉麺様食品は、熱湯を注加して湯戻しするだけで、喫食することができる。従って鍋等での加熱調理は必要とされない。約5分程度以内に復元され喫食することができる。また、喫食形態としては、即席麺と同様の汁なしタイプとして、湯戻し後にお湯を捨ててから、ソース等に絡ませて喫食する方法、湯戻しする際にスープ等を入れてから注湯し、3分〜5分程度の一定時間保持することで、カップ麺と同様の形態で喫食する方法等を採用できる。また、使用する糖の種類を選択することで、菓子風に味付することができ、従来にない湯戻しして喫食することのできる乾燥澱粉麺様菓子とすることもできる。
尚、特定の型に注いで固めた後に、型から抜いたものを乾燥することで、そのままでも喫食できる種々形状の乾燥澱粉麺様食品を調製することもできる。
─本発明の製品形態─
本発明の乾燥澱粉麺様食品は、種々の製品形態で利用することができる。一般的には、耐熱性のプラスチック製又は紙製のカップに収納した状態で、長期保存可能な商品として流通させることができる。
また、特定の型に注いで固めた後に、型から抜いたものを乾燥することで、種々の形の乾燥澱粉麺様食品を調製することができる。
以下に本発明の試験例及び実施例について記載するが、本発明は実施例に開示されたものに限定されるものではない。
試験例1:使用澱粉の種類
まず、主原料として、各種澱粉を試験し、本発明発明の目的であるトコロテン様食感と、グミゼリー様食感を得られるかどうかを試験した。各種の澱粉(市販品、松谷化学工業株式会社製、以下同様)を単体又はその混合物について、それぞれ各50gと水450gを混合して、澱粉スラリーを調製し、これを攪拌しつつ80℃まで加熱して、約1分間保持して糊化した。
本糊化後の澱粉スラリーを、2mmスリットの成型器具で板状体に広げ、縦400mm×横200mm×厚さ2mmとなるよう、シート状に澱粉ゲルを成型した。
その後、澱粉ゲルが20℃になるまで冷却した。冷却後の澱粉ゲルをカッターによって、短冊状(縦3cm×横2cm×厚さ2mm)に切断した。切断後の各澱粉ゲル切片の重量は約2.3gであった。各澱粉ゲル切片を金網に載置し、熱風乾燥機で熱風温度80℃、4時間の熱風乾燥を行い、乾燥澱粉麺様食品を得た。熱風乾燥後の当該乾燥物の重量は、一片あたり平均0.25gであった。本製法により得られた熱風乾燥後の乾燥澱粉麺様食品を使って、食感等についての官能検査及び作業性評価を行った。
官能検査に際しては、当該乾燥澱粉麺様食品を各10片(2.5g)採取して、丼状の容器に入れ、熱湯を200ml注ぎ、蓋を施し3分経過後に、お湯を排湯し喫食して官能評価を行った。食感等の官能評価は、×:悪い、△:やや悪い、○:良好、◎:最良の4段階で評価した。ここで、検査項目の内容及び評価方法については表1示す通りである。
また、作業性の評価は、×:悪い、△:やや悪い、○:良好、◎:最良の4段階で評価した。検査項目の内容及び評価方法については表2示す通りである。
各試験区の配合(重量%)を表3に、また、官能検査及び作業性検査の評価結果を表4に示す。
Figure 2008271920
Figure 2008271920
Figure 2008271920
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官能評価より、本発明の目的とするトコロテン様食感とグミゼリー様食感の両方の食感を得るためには、緑豆澱粉を使用することが必要である。
但し、緑豆澱粉のみで製造した場合、トコロテン様食感が最良ではなく、また、冷却後の澱粉ゲルが固くなりすぎるという問題がある。そこで、緑豆澱粉をベースとして、これに他の澱粉を添加することが望ましいことが判明した。また、試験区6及び7に示すように他の澱粉としては、馬鈴薯澱粉又は甘藷澱粉が好ましいことが判明した。
また、試験例1では、澱粉のみを原料としているため、3分間での復元性を確保するためには、乾燥前の澱粉ゲルの厚さを2mmより大きくはできなかった。
試験例2:使用澱粉の濃度
緑豆澱粉が必須となることがわかったため、次に緑豆澱粉と他の澱粉の割合を変更させて、適切な配合量を検討した。
澱粉濃度としては、10重量%となるように設定し、緑豆澱粉とその他の澱粉として馬鈴薯澱粉を用いてこれらを表3の記載のように、割合(重量%)を変えて、官能評価と作業性評価を行った。具体的な製造方法は、原料の配合物・配合比率以外は試験例1に記載のものと同様とした。
糊化後の澱粉スラリーは、これを板状体に広げ、縦400mm×横200mm×厚さ2mmとなるように、シート状に成型した。冷却後の澱粉ゲルをカッターによって、一片当たり縦3cm×横2cmに切断した。切断後の各澱粉ゲルの平均重量は2.3gであった。各試験区の配合(重量%)を表5に、官能検査及び作業性の評価結果を表6に示す。尚、官能検査及び作業性評価の内容及び方法については試験例1と同様とする(以下の試験例及び実施例においても同様とする)。
Figure 2008271920
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表6の結果から、トコロテン様食感とグミゼリー様食感を両方を維持するためには、試験区2〜5に示すように原料澱粉としては、緑豆澱粉とその他の澱粉(馬鈴薯澱粉)をそれぞれ、全澱粉量に対して20〜80重量%(馬鈴薯澱粉が80〜20重量%)の原料澱粉を用いればよいことが判明した。また、試験区3及び4に示すように冷却後の澱粉ゲルの状態も考慮すると、緑豆澱粉が40〜60重量%(馬鈴薯澱粉が60〜40重量%)であることが好ましいことが判明した。
試験例3:その他の配合物
表6から、原料として澱粉のみを使用するものでは、3分間の湯戻しで復元性を確保するためには、乾燥前のシートの厚さを2mmより大きくはできないため、当然に湯戻し後においても、グミゼリー様食感を得るには不充分となる。
喫食時のグミゼリー様食感を呈するためには、復元後も十分な厚みを確保する必要がある。そこで、その他の配合物を配合することで、復元性を向上させて乾燥前の澱粉シートの厚み及び復元後の澱粉食品の厚みを増加させることを検討した。
具体的には、原料澱粉としては、緑豆澱粉と馬鈴薯澱粉を1:1の割合で混合したものを用いて、これが澱粉スラリーの総重量に対して10重量%となるようにして、これに糖類(ブドウ糖)又は塩類(塩化ナトリウム)を添加し試料を調製し、評価を行った。具体的な製造方法は、原料の配合物・配合比率以外は試験例1に記載のものと同様とした。但し、澱粉シートの厚さは、厚さ4mmで行った。各試験区の配合(重量%)を表7に、官能検査及び作業性の評価結果を表8に示す。
Figure 2008271920
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添加物を検討した結果、糖類(ブドウ糖)や塩類(塩化ナトリウム)を添加することで、乾燥前の澱粉シートの厚みが4mm程度でも乾燥澱粉麺様食品の湯戻し後の復元性を十分に発現することが判明した。試験区2及び3に示すように糖類を添加することで復元後の厚み及び復元性が改良されることができることが判明した。一方、試験区4及び5に示すように塩化ナトリウムを用いると、復元性は改良される一方、塩味のため食味に影響を与えることも判明した。
実施例1:糖類の差異
本実施例では、使用する糖類の種類による官能等評価と作業性評価を行い、その作用効果を示す。使用する澱粉については、緑豆澱粉と馬鈴薯澱粉を1:1の重量比で水に対して10重量%となるように設定した。添加する糖の種類は、単糖類のブドウ糖、二糖類のショ糖・乳糖、糖アルコールのマルチトールとした。また、糖類以外としてデキストリンも使用した。各種糖類及びデキストリンは市販のものを使用した。尚、デキストリンについては、DEが11のものを用いた(以後の実施例でも同様とする)。
本実施例における乾燥澱粉麺様食品の製造方法は、原料の配合物とその配合比率以外は試験例1に示したものと同様とした。各実施区の配合(重量%)を表9に示す。また、官能検査及び作業性の評価結果を表10に示す。
表10の結果から、単糖類、二糖類、多糖類の種類による差はさほど見られなかったが、二糖類ではショ糖を用いた場合において、湯戻し後の食味がやや甘くなるという傾向がみられた。本実施によって得られた乾燥澱粉麺様食品は、いずれの実施区においても良好なトコロテン様食感とグミゼリー様食感を兼備している。
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実施例2:デキストリンの含有量の変更
本実施例において、デキストリンの添加できる量の範囲を調べた。本実施例における乾燥澱粉麺様食品の製造方法は原料の配合物・配合比率以外は試験例1に示したものと同様とした。尚、澱粉シートの厚さは4mmとした。各実施区の配合(重量%)を表11に、官能及び作業性の評価結果を表12に示す。官能検査及び作業性の評価の内容については試験例1と同様とする。
デキストリンの添加量が8重量%程度になるとやや甘みが感じられる。また、比較例1に示すように9重量%以上になると、澱粉ゲルがやや崩れ易い。よって、試験した全原料に対して1〜8重量%の糖類濃度の範囲内が好適である。さらに、実施例b〜gに示すように澱粉ゲルの状態、復元性及び味を考慮すると2〜7重量%がより好ましい。
本実施によって得られた乾燥澱粉麺様食品は、いずれの実施区においても良好なトコロテン様食感とグミゼリー様食感を兼備している。
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実施例3:澱粉濃度の作用効果
本実施例においては澱粉スラリーにおいて澱粉濃度の大小による作用効果を示す。使用する澱粉は、緑豆澱粉といも類澱粉(甘藷澱粉)を1:1の配合の混合澱粉を用い、また、糖は乳糖を用いた。本実施例における乾燥澱粉麺様食品の製造方法は、原料の配合物とその配合比率以外は試験例1と同様にした。各実施区の配合(重量%)を表13に、官能検査及び作業性の評価結果を表14に示す。
尚、官能検査及び作業性の評価の内容については試験例1と同様とする。
比較例2及び3に示すように澱粉スラリーに占める澱粉濃度が6重量%以下では、澱粉濃度が薄いため澱粉ゲルが崩れやすく、作業性を十分に確保できなかった。また、比較例4及び5に示すように澱粉濃度が16重量%以上では澱粉濃度が高いため、糊化の過程で粘度が上昇して攪拌の際の抵抗が大きくなるとともに、当該糊化澱粉スラリーをシート状に広げる工程において作業性に問題が生じた。当該実施結果及び表13から、澱粉の濃度としては、8〜15重量%程度が適当であることが判明した。
本実施によって得られた乾燥澱粉麺様食品は、いずれの実施区においても良好なトコロテン様食感とグミゼリー様食感を兼備している。
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実施例4:豆類澱粉の置換
本実施例において、緑豆澱粉の全部又は一部を他の豆類澱粉に置換した場合の作用効果の差異を示す。
本実施例における乾燥澱粉麺様食品の製造方法は、原料の配合物とその配合比率以外は試験例1に示したものと同様とした。
各実施区の配合を表15に、官能検査及び作業性の評価結果を表16に示す。
緑豆澱粉以外の豆澱粉のみを用いた場合においては、グミゼリー様食感と冷却後のゲル状態がやや劣る。また、実施例r及びsに示すように緑豆澱粉の一部を他の豆澱粉に置き換えた場合については緑豆澱粉を少なくとも50重量%を含むことで、目的のトコロテン様食感とグミゼリー様食感を得られる。本実施における乾燥澱粉麺様食品は、いずれの実施区においても良好なトコロテン様食感とグミゼリー様食感を兼備している。
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実施例5:いも類澱粉の一部置換
本実施例において、いも類澱粉の一部を豆類澱粉・いも類澱粉以外の澱粉に置換した場合の作用効果の差異を示す。本実施例における乾燥澱粉麺様食品の製造方法は原料の配合物・配合比率以外は試験例1に示したものと同様とした。各実施区の配合を表17に、官能検査及び作業性の評価結果を表18に示す。
実施区2及び3に示すようにいも類澱粉である甘藷澱粉の一部を穀類澱粉であるコーンスターチ又は小麦澱粉に各々50重量%を置換した場合においても、トコロテン様食感、グミゼリー様食感を具備した製品を得ることができ、それらの食感はともに良好である。また、これらの置換によっても作業性に問題は生じない。
このように、いも類澱粉が少なくとも50重量%を含むことで、穀類澱粉等の他の澱粉に置換できる。本実施例における乾燥澱粉麺様食品は、いずれの実施区においても良好なトコロテン様食感とグミゼリー様食感を兼備している。
Figure 2008271920
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本発明の乾燥澱粉麺様食品は、短時間で十分な復元性を有しており、従来の乾燥澱粉麺食品の有するトコロテン様食感と従来までの乾燥澱粉麺食品では得られなかったグミ風のグミゼリー様食感とを具備した新規な食品であり、本発明はこの新規食品とその製造方法とを提供することができる。
本発明を利用することで、即席食品の分野に新たな澱粉麺様食品の一分野を提供でき、食品製造業界の一層の発展を図ることができる。

Claims (4)

  1. 熱湯を注加することで湯戻しして喫食する乾燥澱粉麺様食品であって、以下の工程、すなわち;
    A)澱粉及び水、並びに糖類及び/又はデキストリン、を混合し、当該総重量に対して澱 粉を約8〜15重量%、糖類及び/又はデキストリンを約1〜8重量%含む澱粉スラリ
    ーを調製する工程、
    B)前記調製後の澱粉スラリーを攪拌しながら加熱して糊化する工程、
    C)前記糊化後の澱粉スラリーを板状体上にシート状に広げ、次いでこれを冷却し、固形
    化する工程、
    D)前記糊化澱粉シートを所定形状に裁断する工程、
    E)前記糊化澱粉シート裁断物を熱風乾燥する工程、
    の各工程を順次実施し、かつ、前記A工程における澱粉が緑豆澱粉及びいも類澱粉を含有することを特徴とする乾燥澱粉麺様食品の製造方法。
  2. 澱粉に糖類及び/又はデキストリンを混合したものを主原料とし、これに加水加熱して糊化した澱粉食品であって、当該澱粉が緑豆澱粉及びいも類澱粉を含有し、かつ、糊化前の重量において澱粉を約8〜15重量%、糖類及び/又はデキストリンを約1〜8重量%含有することを特徴とする澱粉食品。
  3. 前記請求項2に記載した澱粉食品を、所定形状に裁断し、次いでこれを乾燥後重量に対し水分含量が約5〜9重量%となるまで熱風乾燥したことを特徴とする乾燥澱粉麺様食品。
  4. 熱湯を注加することで復元し喫食する糊化された乾燥澱粉麺様食品であって、
    緑豆澱粉及びいも類澱粉を含有した澱粉、並びに糖類及び/又はデキストリンを必須の構成成分とし、澱粉を約40〜89重量%、糖類及び/又はデキストリンを約5〜48重量%、水分を約5〜9重量%含有することを特徴とする乾燥澱粉麺様食品。
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