JP2008267563A - スプリングクラッチ - Google Patents

Abstract

【課題】コイルスプリングが疲労によって折損するのを防止することができるようにした耐久性に優れたスプリングクラッチを提供することである。
【解決手段】プーリ１にテーパ状内面８を形成し、そのテーパ状内面８の小径端部に円筒状のコイルスプリング９の一端部を弾性接触する。コイルスプリング９の他端部をプーリハブ２に嵌合されて回り止めされ、かつ、軸方向に移動自在に支持されたピストン１０に連結する。ピストン１０の軸方向の他端部側に摩擦クラッチ２０を設ける。プーリ１の一方向への回転時に、コイルスプリング９を拡径させ、かつ、軸力を発生させ、その軸力によりピストン１０を軸方向に移動させ、そのピストン１０により摩擦クラッチ２０を押圧して摩擦クラッチ２０を係合状態とし、その摩擦クラッチ２０からプーリ１の回転をプーリハブ２に伝達して、コイルスプリング９に応力が集中するのを防止し、耐久性の向上を図る。
【選択図】図１

Description

この発明は、入力部材と出力部材間に組込まれたコイルスプリングによって入力部材の一方向の回転を出力部材に伝達すると共に、出力部材の回転速度が入力部材の回転速度を上回った場合に入力部材から出力部材への回転伝達を遮断するスプリングクラッチに関するものである。

一般に、エンジンのクランク軸の回転をベルト伝動装置によってエンジン補機の回転軸に伝えるようにした補機駆動装置においては、エンジンを急減速した場合、エンジン補機の回転軸に取付けられたプーリも同様に急減速しようとする。このとき、エンジン補機がオルタネータの場合、そのオルタネータの回転軸は慣性力が大きいため、エンジンが急減速されても回転軸は急減速されることはなく、その回転軸上に取付けられたプーリは一定の速度で回り続けようとする。

この場合、クランク軸上のプーリとオルタネータの回転軸上のプーリ間に大きな回転速度差が生じ、ベルトの張力が増大して破損し易くなる。

また、クランク軸は１回転中において角速度が変化しており、その角速度変動に起因してプーリとベルトの間で滑りを生じ、その滑りによってベルトが摩耗し、耐久性が低下することになる。

特許文献１には、そのような不都合を解消することができるようにしたクラッチプーリ装置が提案されている。

上記特許文献１に記載されたクラッチプーリ装置においては、プーリとその内側に組込まれたプーリハブとの間に断面が角形の線材からなるコイルスプリングを組込み、そのコイルスプリングの外周をプーリの内周に形成された円筒形のクラッチ面に弾性接触し、コイルスプリングの一端のコイル部端末をプーリハブに係止し、上記プーリの一方向への回転時にコイルスプリングを拡径させてクラッチ面に対する係合力を強め、そのコイルスプリングを介してプーリの回転をプーリハブに伝達するようにしている。

また、プーリハブの回転速度がプーリの回転速度を上回った場合に、コイルスプリングを縮径させ、プーリのクラッチ面とコイルスプリングの接触部で滑りを生じさせてプーリをフリー回転させるようにしている。
特開２００３−３２２１７４号公報

ところで、上記特許文献１に記載されたクラッチプーリ装置においては、プーリハブの端部に形成されたうず巻き溝内にコイルスプリングの一方の端末部を挿入して係止する構造であるため、うず巻き溝の入口部より外側においてコイル部の外周とプーリの内周に形成されたクラッチ面間に隙間が形成される。

このため、トルク伝達時のコイルスプリングの変形モードは、コイルスプリングの前記うず巻き溝の入口部と対応する位置に折れ曲がり部が形成されることになり、その折れ曲がり部にトルク入力時の応力が集中することになる。

したがって、伝達トルクが繰り返し負荷された場合に、上記折れ曲がり部が疲労によって折損するおそれがあり、耐久性を向上させるうえにおいて改善すべき点が残されていた。

この発明の課題は、コイルスプリングが疲労によって折損するのを防止することができるようにした耐久性に優れたスプリングクラッチを提供することである。

上記の課題を解決するため、第１の発明においては、入力部材とその内側に組込まれた出力部材とを相対的に回転自在に支持し、前記入力部材にテーパ状内面を形成し、そのテーパ状内面の小径端部に円筒状のコイルスプリングの一端部を弾性接触し、コイルスプリングの他端部を前記出力部材に嵌合されて回り止めされ、かつ、軸方向に移動自在に支持されたピストンに連結し、そのピストンの軸方向の他端部側に、前記コイルスプリングの拡径時の軸力によって軸方向に移動されるピストンの押圧作用により摩擦係合して入力部材の回転をピストンに伝達する摩擦クラッチを設けた構成を採用したのである。

また、第２の発明においては、入力部材とその内側に組込まれた出力部材とを相対的に回転自在に支持し、前記入力部材に円筒状内面を形成し、その円筒状内面に円錐形コイルスプリングの大径端部を弾性接触し、コイルスプリングの小径端部を前記出力部材に嵌合されて回り止めされ、かつ、軸方向に移動自在に支持されたピストンに連結し、そのピストンの軸方向の他端部側に、前記コイルスプリングの拡径時の軸力によって軸方向に移動されるピストンの押圧作用により摩擦係合して入力部材の回転をピストンに伝達する摩擦クラッチを設けた構成を採用したのである。

上記の構成からなる第１の発明および第２の発明において、入力部材が一方向に回転すると、その入力部材との接触部から負荷される回転トルクによりコイルスプリングが拡径し、その拡径により入力部材の内面に強く接触し、入力部材の回転はコイルスプリングに伝達されると共に、そのコイルスプリングからプーリ内径面の傾斜角により発生する軸力がピストンに伝達される。

また、コイルスプリングの軸力により、ピストンに軸力が負荷され、そのピストンが軸方向に移動して摩擦クラッチを押圧する。その押圧により摩擦クラッチが係合状態となり、入力部材の回転は摩擦クラッチを介して出力部材に伝達されて、出力部材が入力部材と同方向に回転する。

入力部材から出力部材への回転伝達状態において、出力部材の回転速度が入力部材の回転速度を上回ると、コイルスプリングが縮径すると共に収縮し、入力部材とコイルスプリングの接触部で滑りが生じる。

また、コイルスプリングの収縮によりピストンが摩擦クラッチから離反する方向に移動して摩擦クラッチの押圧を解除する。このため、摩擦クラッチは係合解除状態となり、入力部材はフリー回転し、入力部材から出力部材への回転伝達が遮断される。

ここで、摩擦クラッチとして、入力部材の内面に固定された内向きフランジ付きの摩擦ホイールと、その摩擦ホイール内に組み込まれて摩擦ホイールに回り止めされ、かつ、軸方向に移動可能に支持された複数のアウター側摩擦プレートと、隣接するアウター側摩擦プレート間に一枚ずつ組み込まれて出力部材に回り止めされ、かつ、軸方向に移動自在に支持された複数のインナー側摩擦プレートとからなる多板クラッチを採用することにより、摩擦プレートの枚数によりトルク容量を可変とすることができるため、設計の自由度を向上させることができる。

上記のように、第１および第２の発明に係るスプリングクラッチにおいては、入力部材が一方向に回転すると、コイルスプリングが拡径し、かつ、軸力を発生し、その軸力によりピストンから摩擦クラッチに軸力が負荷されて摩擦クラッチが摩擦係合し、入力部材の回転はコイルスプリングおよび摩擦クラッチの双方からピストンを介して出力部材に伝達されるため、コイルスプリングに応力が集中して破損するというようなことはなく、耐久性に優れたスプリングクラッチを得ることができる。

以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図１乃至図５はこの発明に係るスプリングクラッチの第１の実施の形態を示す。図１に示すように、入力部材としてのプーリ１の内側には出力部材としてのプーリハブ２が組込まれている。

プーリハブ２の一端部外周には、プーリ１の一端部に形成された円筒状内面３を回転自在に支持するすべり軸受４が取付けられている。一方、プーリ１の他端部に形成された円筒状内面５にはリング６が固定され、そのリング６内に圧入された転がり軸受７と上記すべり軸受４によってプーリ１とプーリハブ２が相対的に回転自在とされている。

プーリ１には、すべり軸受４側を小径端とするテーパ状内面８が形成され、そのテーパ状内面８の内側にコイルスプリング９が組み込まれている。

図２および図５に示すように、コイルスプリング９は円筒状をなし、その一端部がテーパ状内面８の小径端部に弾性接触している。また、コイルスプリング９の他端部には軸方向に延びる連結片９ａが形成されている。

プーリハブ２の外側にはピストン１０が嵌合されている。図１および図４に示すように、ピストン１０の内周には軸方向に延びる複数の回り止め溝１１が周方向に等間隔に設けられ、各回り止め溝１１内にプーリハブ２の外周に形成された突出部１２が嵌合されてピストン１０はプーリハブ２に回り止めされ、かつ、軸方向に移動自在とされている。

また、ピストン１０の外周には、図２および図４に示すように、コイルスプリング９の端部を受けるフランジ１３が形成され、そのフランジ１３に形成された軸方向の孔１４にコイルスプリング９の他端部に形成された上記連結片９ａが係合されている。

図２および図５に示すように、ピストン１０とプーリ１の他端部内周に固定されたリング６との間には、ピストン１０の押圧作用により摩擦係合して、プーリ１の回転をピストン１０に伝達する摩擦クラッチ２０が組み込まれている。

摩擦クラッチ２０は、プーリ１の円筒状内面５に圧入された摩擦ホイール２１と、その摩擦ホイール２１内に組込まれた複数のアウター側摩擦プレート２２および複数のインナー側摩擦プレート２３とからなる。

摩擦ホイール２１の前記リング６側の端部には内向きのフランジ２４が形成されている。また、摩擦ホイール２１の内周には軸方向に延びる複数の突条２５が周方向の等間隔に設けられている。

アウター側摩擦プレート２２の外周には摩擦ホイール２１の内周の突条２５が嵌合する複数の切欠部２６が形成され、その切欠部２６と突条２５の嵌合によってアウター側摩擦プレート２２は摩擦ホイール２１に対して回り止めされ、かつ、軸方向に移動自在とされている。

インナー側摩擦プレート２３の内周にはプーリハブ２の外周に形成された前記突出部１２が嵌合される切欠部２７が設けられ、その切欠部２７と突出部１２の嵌合によってインナー側摩擦プレート２３はプーリハブ２に対して回り止めされ、かつ、軸方向に移動自在とされている。このインナー側摩擦プレート２３とアウター側摩擦プレート２２は軸方向に交互の配置とされている。

上記の構成から成るスプリングクラッチにおいて、エンジン補機としてのオルタネータの駆動に際しては、そのオルタネータの回転軸にプーリハブ２を取付けて回り止めし、プーリ１とクランク軸上のプーリ間にかけ渡されたベルトを介してクランク軸の回転をプーリ１に伝達する。

上記のような使用状態において、クランク軸の回転がプーリ１に伝達され、そのプーリ１が図４の矢印で示す方向に回転すると、コイルスプリング９がテーパ状内面８との接触により拡径し、その拡径によりテーパ状内面８に強く接触し、プーリ１の回転はコイルスプリング９に伝達されると共に、そのコイルスプリング９からテーパ角度による軸力が発生しピストン１０に伝達される。

また、コイルスプリング９の伸張により、ピストン１０に軸力が負荷され、そのピストン１０が軸方向に移動して摩擦クラッチ２０を押圧する。その押圧によりアウター側摩擦プレート２２とインナー側摩擦プレート２３が密着して、摩擦クラッチ２０は係合状態となり、プーリ１の回転は上記摩擦クラッチ２０を介してプーリハブ２に伝達される。

このように、プーリ１が図４の矢印で示す方向に回転すると、プーリ１の回転はコイルスプリング９からピストン１０に伝達される。このとき、ピストン１０とプーリハブ２は回り止め溝１１と突出部１２の嵌合により回り止めされているため、ピストン１０の回転はプーリハブ２に伝達され、プーリハブ２はプーリ１と同方向に回転する。

プーリ１からプーリハブ２への回転伝達状態において、プーリハブ２の回転速度がプーリ１の回転速度を上回ると、コイルスプリング９が縮径すると共に収縮し、テーパ状内面８とコイルスプリング９の接触部で滑りが生じる。

また、コイルスプリング９の収縮により摩擦クラッチ２０は押圧が解除されて係合解除状態となり、プーリ１からプーリハブ２への回転トルクの伝達が遮断され、プーリ１はフリー回転し、プーリ１からプーリハブ２への回転伝達が遮断される。

上記のように、プーリ１が一方向に回転すると、コイルスプリング９が拡径し、かつ、軸力が発生し、その軸力によりピストン１０から摩擦クラッチ２０に軸力が負荷されて摩擦クラッチ２０が摩擦係合し、プーリ１の回転はコイルスプリング９からピストン１０を介してプーリハブ２に伝達されると共に、摩擦クラッチ２０を介してもプーリハブ２に伝達されるため、コイルスプリング９に応力が集中するようなことはない。

このため、回転トルクの伝達と遮断が繰り返し行われても、コイルスプリング９が疲労によって破損すようなことはなく、耐久性に優れたスプリングクラッチを得ることができる。

第１の実施の形態で示すように、摩擦クラッチ２０として、複数のアウター側摩擦プレート２２と複数のインナー側摩擦プレート２３とを軸方向に交互に配置した多板クラッチを採用することにより、摩擦プレート２２、２３の枚数によりトルク容量を可変とすることができ、設計の自由度を向上させることができる。

図６は、この発明に係るスプリングクラッチの第２の実施の形態を示す。この実施の形態では、プーリ１に円筒状内面３０を形成し、その円筒状内面３０の内側に組み込んだコイルスプリング３１を円錐形としてその大径端部を円筒状内面３０に弾性接触し、かつ、小径端部に設けられた連結片３１ａをピストン１０のフランジ１３に形成された孔１４に係合し、上記プーリ１の他端部内周に形成された環状突出部３２の内周に転がり軸受７を組み込んだ点において図１に示すスプリングクラッチと相違している。

このため、図１に示すスプリングクラッチと同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。

上記の構成からなるスプリングクラッチにおいて、プーリ１が一方向に回転すると、コイルスプリング３１がプーリ１の円筒状内面３０に対する大径端部の接触によって拡径し、かつ軸力を発生し、その軸力によってコイルスプリング３１の大径端部が円筒状内面３０に強く接触し、プーリ１の回転はコイルスプリング３１に伝達されると共に、そのコイルスプリング３１からピストン１０に伝達される。

また、コイルスプリング３１の軸力により、ピストン１０に軸力が負荷され、そのピストン１０が軸方向に移動して摩擦クラッチ２０を押圧する。その押圧により摩擦クラッチ２０が係合状態となり、プーリ１の回転は摩擦クラッチ２０を介してプーリハブ２に伝達されて、プーリハブ２がプーリ１と同方向に回転する。

このように、第２の実施の形態で示すスプリングクラッチにおいても、プーリ１が一方向に回転すると、コイルスプリング９が拡径し、かつ、軸力を発生し、その軸力によりピストン１０から摩擦クラッチ２０に軸力が負荷されて摩擦クラッチ２０が摩擦係合し、プーリ１の回転はコイルスプリング９および摩擦クラッチ２０の双方からプーリハブ２に伝達されるため、コイルスプリング９に応力が集中するようなことはなく、コイルスプリング９の破損防止に効果を挙げることができる。

この発明に係るスプリングクラッチの第１の実施の形態を示す縦断正面図 図１の一部分を拡大して示す断面図 図１のIII−III線に沿った断面図 図１のIV−IV線に沿った断面図 プーリハブ、コイルスプリング、ピストンおよび摩擦クラッチを示す分解斜視図 この発明に係るスプリングクラッチの第２の実施の形態を示す縦断正面図

符号の説明

１ プーリ(入力部材)
２ プーリハブ(出力部材)
８ テーパ状内面
９ コイルスプリング
１０ ピストン
２０ 摩擦クラッチ
２１ 摩擦ホイール
２２ アウター側摩擦プレート
２３ インナー側摩擦プレート
３０ 円筒状内面
３１ コイルスプリング

Claims (3)

1. 入力部材とその内側に組込まれた出力部材とを相対的に回転自在に支持し、前記入力部材にテーパ状内面を形成し、そのテーパ状内面の小径端部に円筒状のコイルスプリングの一端部を弾性接触し、コイルスプリングの他端部を前記出力部材に嵌合されて回り止めされ、かつ、軸方向に移動自在に支持されたピストンに連結し、そのピストンの軸方向の他端部側に、前記コイルスプリングの拡径時の軸力によって軸方向に移動されるピストンの押圧作用により摩擦係合して入力部材の回転をピストンに伝達する摩擦クラッチを設けたスプリングクラッチ。
2. 入力部材とその内側に組込まれた出力部材とを相対的に回転自在に支持し、前記入力部材に円筒状内面を形成し、その円筒状内面に円錐形コイルスプリングの大径端部を弾性接触し、コイルスプリングの小径端部を前記出力部材に嵌合されて回り止めされ、かつ、軸方向に移動自在に支持されたピストンに連結し、そのピストンの軸方向の他端部側に、前記コイルスプリングの拡径時の軸力によって軸方向に移動されるピストンの押圧作用により摩擦係合して入力部材の回転をピストンに伝達する摩擦クラッチを設けたスプリングクラッチ。
3. 前記摩擦クラッチが、入力部材の内面に固定された内向きフランジ付きの摩擦ホイールと、その摩擦ホイール内に組み込まれて摩擦ホイールに回り止めされ、かつ、軸方向に移動可能に支持された複数のアウター側摩擦プレートと、隣接するアウター側摩擦プレート間に一枚ずつ組み込まれて出力部材に回り止めされ、かつ、軸方向に移動自在に支持された複数のインナー側摩擦プレートとからなる請求項１又は２に記載のスプリングクラッチ。

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