JP2008266872A - ポリプロピレン繊維 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなり、単繊維繊度が0.1〜3dtexおよび繊維強度が7cN/dtex以上であり、繊維軸に沿って交互に位置する大径の隆起部A1〜A4と小径の非隆起部B1〜B4からなる、平均間隔が6.5〜20μmで平均高さh1〜h4が0.35〜1μmの凹凸を有するポリプロピレン繊維。
【選択図】図1
Description
なかでも、特許文献2には、延伸前後に電離性放射線を照射して、50〜50000デニール、特に3000〜12000デニールのモノフィラメントを得る技術が記載されているが、この手法を単繊維繊度が10dtex以下、特に3dtex以下のポリプロピレン繊維に実施した場合には、強度低下、毛羽の多発、形状ムラなどが激しく、工程通過性、品質、品位のいずれにおいても問題を抱えることになる。
さらに、ポリプロピレン未延伸糸を、3.0〜5.0kg/cm2(温度133〜151℃)の加圧飽和水蒸気により1段で延伸して延伸糸を製造する方法が知られている(特許文献6)。しかしながら、この方法により得られるポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)は、繊維表面における凹凸の形成が不十分で、凹凸の間隔および高さが小さく、繊維が十分な保水性を有しておらず、マトリックスとの親和性が十分ではない。
例えば、リサイクル性および強度に優れるシートとして、ポリプロピレン繊維で補強したポリオレフィンシートが知られており、この繊維補強シートの製造にあたっては、生産性の向上およびポリプロピレン繊維とポリオレフィンシート基材との間の接着性の向上などの点から、ポリオレフィンをできるだけ高温で溶融してポリオレフィン基材とポリプロピレン繊維の接着を行う必要がある。しかしながら、ポリプロピレン繊維の耐熱性が不十分で、繊維補強シートの製造時にポリオレフィンを高温で溶融することができないため、生産速度を十分に高くすることができず、更にはポリプロピレン繊維とポリオレフィン基材との間の接着が不十分になり、生産性の低下、得られる繊維補強ポリオレフィンシートの強度不足などを招いていた。
また、ポリプロピレン繊維製の布帛をフィルターとして用いることが行われており、当該フィルターは高温環境下で用いられることもあることから、耐熱性の向上が求められている。
しかしながら、このポリプロピレン繊維は、吸熱ピーク形状が、ブロードなダブル形状またはシングル形状であって、結晶が不均一であるため、耐熱性が未だ十分に高いとはいえない。
さらに、本発明の目的は、高保水性および高強度という特性と併せて、耐熱性にも優れるポリプロピレン繊維を提供することである。
さらに、本発明者は、前記したポリプロピレン繊維において、その走査示差熱量測定(DSC)による吸熱・融解特性を特定のものにすることで、ポリプロピレン繊維の結晶構造が均一になり、前記した高保水性および高強度という特性と併せて、高い耐熱性がポリプロピレン繊維に付与されることを見出して、本発明を完成した。
(1) アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなる単繊維繊度が0.1〜3dtexおよび繊維強度が7cN/dtex以上のポリプロピレン繊維であって、表面に、大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有していることを特徴とするポリプロピレン繊維である。
そして、本発明は、
(2) 保水率が10%以上である前記(1)のポリプロピレン繊維である。
(3) 走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上である前記(1)または(2)のポリプロピレン繊維である。
本発明のポリプロピレン繊維は、表面に、大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に位置してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有していることにより、10%以上の高い保水率を有している。
前記した特定の凹凸構造を有する本発明のポリプロピレン繊維のうちで、走査示差熱量測定(DSC)における吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、その融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるという特性を更に備える本発明のポリプロピレン繊維は、保水性に優れると共に、結晶性が高く、均一な結晶構造を有し、耐熱性にも優れている。
本発明のポリプロピレン繊維は、前記した優れた特性を活かして、短繊維、長繊維、繊維束などの形態で、または織編物、不織布、網状体、紙などの繊維構造体の形態にして、種々の用途に有効に使用することができる。
本発明のポリプロピレン繊維は、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)(以下単に「IPF」ということがある)が94%以上のポリプロピレンよりなっていることが必要あり、IPFが95〜99%のポリプロピレンよりなっていることが好ましく、IPFが96〜99%のポリプロピレンよりなっていることがより好ましい。
ポリプロピレンのIPFが94%未満であると、均一な結晶構造を有するポリプロピレン繊維が得られにくくなり、ポリプロピレン繊維の強度が低下し、また耐熱性の点でも不十分になり易い。一方、IPFが99%を超えるポリプロピレンは工業的には量産が困難であるため、コスト面などから実用性が低い。
また、本発明のポリプロピレン繊維は、ポリプロピレン繊維を構成するプロピレン系重合体全体でのIPFが前記した値を満たすものであれば、2種類以上のプロピレン単独重合体および/またはプロピレン共重合体が、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型などの形態で複合または混合してなる複合紡糸繊維または混合紡糸繊維であってもよく、さらにポリプロピレンと他の重合体が芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型などの形態で複合した複合繊維を製造してもよい。
したがって、本発明において、本発明のポリプロピレン繊維を形成する「ポリプロピレン」とは、プロピレン単独重合体、プロピレン共重合体、前記した単独重合体および/または共重合体の2種以上の混合物或いは複合物の総称を意味する。
本発明のポリプロピレン繊維は、繊度(単繊維繊度)が、0.2〜2.5dtexであることが好ましく、0.3〜2.4dtexであることがより好ましい。
ここで、本明細書におけるポリプロピレン繊維の繊維強度(単繊維繊度強度)は、以下の実施例に記載した方法で測定した繊維強度をいう。
本発明のポリプロピレン繊維は、前記した繊維強度を有することにより、各種用途に有効に使用することができる。ポリプロピレン繊維の繊維強度が7cN/dtex未満であると、ポリプロピレン繊維を用いて強度に優れる各種製品を製造することが困難になったり、所定の強度を得るためにポリプロピレン繊維を多量に使用することが必要になり、ポリプロピレン繊維が本来有する軽量であるという特性を活かせなくなる。
例えば、ポリプロピレン繊維の繊維強度が7cN/dtex未満であると、セメントなどの様々なマトリックスの補強に用いた際に、十分な補強効果を発揮し得ない馬合があり、またロープの製造に使用する際にもポリエステル(PET)やナイロン製のロープに比べて強度が弱くなり、実用に耐えられない可能性がある。一方、繊維強度が13cN/dtexを超えるポリプロピレン繊維は、その製造に当たって、量産性の低い条件を採用する必要があるため、実用面で難がある。
ここで、本明細書における「ポリプロピレン繊維が、表面に、大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に位置してなる凹凸を有する」とは、図1の模式図に示すように、ポリプロピレン繊維が長さ方向に沿って均一の径を有しておらず、径の大きな隆起部(凸部)(図1におけるA1,A2,A3,A4,・・・・)と、それよりも径の小さな非隆起部(凹部)(図1におけるB1,B2,B3,B4,・・・・・)が、繊維軸(繊維の長さ方向)に沿って交互に形成されていて、繊維表面が凹凸をなしていること意味する。
そして、本明細書における前記「平均間隔」とは、繊維軸に沿って形成された多数の凹凸(隆起部と非隆起部)のうち、隣り合う2つの隆起部(凸部)の間の間隔(距離)(図1におけるA1−A2,A2−A3,A3−A4,・・・の長さ)の平均値を意味する。
また、前記「平均高さ」は、繊維軸に沿って形成された多数の凹凸(隆起部と非隆起部)のうち、隣り合う2つの非隆起部(凹部)の最小径部分を結ぶ仮想直線(図1におけるB1とB2を結ぶ直線,B2とB3を結ぶ直線,B3とB4を結ぶ直線,・・・)への、当該隣り合う2つの非隆起部(凹部)の間にある隆起部(凸部)の頂点からの垂線の長さ(図1におけるh1,h2,h3,h4,・・・)の平均値を意味する。
ポリプロピレン繊維の繊維軸に沿って形成された前記凹凸の平均間隔および平均高さは、ポリプロピレン繊維を走査型電子顕微鏡などを用いて撮影した写真から求めることができ、本明細書における凹凸の前記平均間隔および平均高さは以下の実施例に記載する方法で求められる値をいう。
前記した凹凸の平均間隔が6.5μm未満であると、および/または平均高さが0.35μm未満であると、繊維表面の凹凸が微細になり過ぎて、保水性が低下する。一方、凹凸の平均間隔が20μmを超えるかおよび/または平均高さが1μmを超えるポリプロピレン繊維は、ポリプロピレン繊維の製造速度を大幅に低下しないと製造できず、またIPFが100%に近いポリプロピレンを使用する必要があるため、実用性に乏しい。
本発明のポリプロピレン繊維では、繊維軸方向に沿って形成された凹凸の平均間隔が6.6〜20μm、特に6.8〜20μmであることが好ましく、平均高さが0.40〜1μm、特に0.45〜1μmであることが好ましい。
本発明のポリプロピレン繊維は、保水率が10.5%以上であることが好ましく、11〜50%であることがより好ましく、12〜50%であることが更に好ましい。保水率が50%を超えるポリプロピレン繊維は、繊維表面の凹凸を極めて大きなものとしなければならず、現実には、生産性よく製造することが困難である。
なお、本明細書におけるポリプロピレン繊維の保水率は、以下に実施例に記載する方法で測定した保水率をいう。
ここで、本発明におけるDSC測定による前記した「吸熱ピーク形状」および「融解エンタルピー変化量(△H)」は、以下の実施例に記載する方法で行ったDSC測定による吸熱ピーク形状および融解エンタルピー変化量(△H)をいう。
それに対して、本発明のポリプロピレン繊維のうちで、DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有する幅の狭い(シャープな)シングル形状をなしていて、且つ融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるポリプロピレン繊維は、結晶性が高く、均一な結晶構造をなしており、耐熱性に優れている。
まず、図2は、ポリプロピレン繊維におけるDSC測定による吸熱ピーク形状を模式的に示した図である。
図2において、(a)は、唯一の吸熱ピーク(シングルピーク)を有し、当該シングルピークはシャープでしかも大きなピークをなし、大きな融解エンタルピー変化量(△H)を有する本発明に含まれる本発明のポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線の代表例を示したものである。
一方、図2において、(b)は従来のポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線の一例であって、2つの吸熱ピーク(ダブルピーク)を有し、ピークの幅(半価幅)は大きく、融解エンタルピー変化量(△H)は小さい。
また、図2において、(c)は従来のポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線の他の例であり、吸熱ピークは1個(シングルピーク)ではあるが、融解エンタルピー変化量(△H)は小さい。
次に、図3は、DSC曲線にピーク形状がシングルピークである場合を例に挙げて、ポリプロピレン繊維のDSC測定による吸熱ピークにおける半価幅の求め方を示した図である。
図3において、吸熱ピーク(シングルピーク)の頂点Xから温度軸に下ろした垂線と、吸熱ピークのベースラインとの交点をYとしたときに、線分X−Yを二等分する点をMとし、Mを通り温度軸に平行な直線と吸熱曲線との交点をそれぞれN1およびN2としたときに、線分N1−N2の長さ(温度幅)が本明細書でいう「半価幅(℃)」に相当する。
そして、吸熱ピーク曲線において、吸熱ピークのベースライン(図3を参照)と、当該ベースラインよりも上の吸熱ピーク曲線によって包囲される部分の面積が、本明細書における「融解エンタルピー変化量(△H)」に相当する。
それに対して、本発明のポリプロピレン繊維のうち、「DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上である」という特定のDSC特性を備えるポリプロピレン繊維は、DSC測定時の昇温速度1〜50℃/分の範囲では、昇温速度が異なっても、その吸熱ピーク曲線は1個の吸熱ピークのみを有する、シャープで大きなシングルピーク形状をなし、高い融解エンタルピー変化量(△H)を有している。そのことは、本発明のポリプロピレン繊維のうち、前記したDSC特性を有するポリプロピレン繊維が、均一で高い結晶性を有し、その結果として、高い耐熱性を備えていることを裏付けている。
ポリプロピレン繊維の融解エンタルピー変化量(△H)が高いほど、耐熱性が高くなるが、165J/gを超えるポリプロピレン繊維は、製造速度を大幅に低下しないと製造が困難であり、またIPFが100%に近いポリプロピレンを用いて製造することが必要であるため、工業的には実効性が低い。
かかる点から、本発明のポリプロピレン繊維は、融解エンタルピー変化量(△H)が125〜165J/gであることが好ましく、130〜165J/gであることがより好ましく、135〜165J/gであることが更に好ましく、140〜165J/gであることが一層好ましい。
なお、前延伸における前記した延伸倍率は、前延伸工程から排出された直後の糸の糸長を前延伸工程に導入された糸(未延伸糸)の糸長で除した値をいい、また後延伸における前記した延伸倍率は、後延伸工程から排出された直後の糸の糸長を後延伸工程に導入された糸の糸長で除した値をいう。
また、ポリプロピレンの溶融紡糸速度をA(m/分)とし、前記した前延伸および後延伸を行った後の総延伸倍率をB(倍)としたときに、A×Bの値が、3000〜17000(m・倍/分)、特に3500〜15000(m・倍/分)の範囲になるようにして、ポリプロピレンの溶融紡糸と前記した前延伸および後延伸を行うと、本発明のポリプロピレン繊維を円滑に得ることができる。
ここで、前記した変形速度とは、後延伸での延伸倍率(倍)を後延伸に要した時間(分)(熱風炉で後延伸する場合は糸が熱風路内にあった時間、延伸プレートで後延伸する場合は糸が延伸プレートに接触していた時間)で除した値をいい、後延伸を多段で行った場合は、後延伸での最終延伸倍率(合計延伸倍率)を後延伸に要した延伸処理時間の合計で除した値をいう。
また、後延伸を行う際の延伸張力は、1.0〜2.5cN/dtexであることが好ましく、1.1〜2.5cN/dtexがより好ましく、1.3〜2.5cN/dtexが更に好ましい。ここで、後延伸における前記延伸張力は、後延伸における最終段の延伸を行った直後の糸の張力を、張力計を用いて測定する。
また、本発明のポリプロピレン繊維は、織編物、不織布、網状物、紙などの繊維構造体として使用することができる。また、本発明のポリプロピレン繊維または当該繊維を用いた繊維構造体を、繊維補強プラスチック成形体、繊維補強ゴム成形体、繊維補強水硬性物質成形体(コンクリート、モルタル、スレート、瓦など)などにおける繊維補強材として用いることができる。また、本発明のポリプロピレン繊維は、耐熱性に優れるため、コード、ロープに使用することができ、当該コード、ロープを用いて、耐摩耗性および軽量性に優れるスリングロープ、漁網、養生ネット、ゴルフボールネットなどを製造することができる。
本発明のポリプロピレン繊維を用いて得られる不織布や紙は、耐熱性および耐薬品性に優れるため、工業用フィルターなどとして有効に使用することができる。
本発明のポリプロピレン繊維を、ポリオレフィンなどの重合体シートの補強用に用いる場合には、ポリプロピレン繊維を織編物にして用いるよりも、一方向プリプレグ状にして用いると、ポリプロピレン繊維の強度利用率を高くすることができる。
そして、それにより得られるポリプロピレン繊維補強オレフィン系重合体成形体は、軽量性、リサイクル性に優れているため、自動車部品、電気・電子部品、衛生用品、その他の用途に広く用いることができる。
コンクリートやモルタル用原料へのポリプロピレン繊維の混合は、例えば、パンミキサー、アイリッヒミキサー、傾動式ミキサー、強制二軸ミキサー、オムニミキサー、ホバートミキサー、ハンドミキサーなどの各種ミキサーを用いて行うことができる。その際の原料としては、水硬性材料、骨材、フィラー、ポリプロピレン繊維、それ以外の補強用繊維、その他の混和剤などを挙げることができる。前記水硬性材料としては、普通ポルトランドセメント、早強セメント、中庸セメント、高炉セメント、シリカフューム、フライアッシュなどの1種または2種以上を使用することができる。前記骨材としては、砂利、砕砂、川砂、海砂、山砂、粉末珪砂、各種軽量骨材などを、またフィラーとしては炭酸カルシウム、カオリンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、前記したその他の混和剤としては、減水剤、増粘剤、起泡剤、膨張剤、収縮低減剤などを挙げることができる。
コンクリートまたはモルタル用の原材料の混合方法、添加順序、撹拌時間などは特に制限されず、適宜調整することができる。また、コンクリートまたはモルタルを形成させる際の成形方法としては、流し込み成形、振動成形、遠心成形、サクション成形、押出成形、プレス成形などの従来から用いられている成形方法を採用することができる。また、養生方法も特に制限されず、例えば、気中養生、水中養生、湿布養生、オートクレーブ養生、それらの2つ以上の組み合わせる方法などを採用することができる。
スレートを製造する際の原料スラリーを調製する際の添加順序、撹拌時間などは適宜調整することができる。また、スレートを製造する際の養生方法も特に制限されず、コンクリートやモルタル成形体の場合と同様に、例えば、気中養生、水中養生、湿布養生、オートクレーブ養生、それらの2つ以上の組み合わせる方法などを採用することができる。
超伝導核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製「Lambda500」)を使用して、非特許文献1に記載されている「13C−NMRスペクトル法」に従ってポリプロピレンのIPFを求めた。具体的には、ポリプロピレン中における、13C−NMRスペクトルにおいてプロピレン単量体単位が5個連続してアイソタクチック結合したプロピレン単位(アイソタクチックペンタッド単位)の含有割合(分率)(%)を求めてIPFとした。その際に、13C−NMRスペクトルにおけるピークの帰属に関しては、非特許文献2に記載されている方法に従って決定した。
荷重張力計測器(日本電産シンポ社製「DTMX−5B」)を使用して、延伸炉(熱風炉)から出た直後の糸、または延伸プレートから離れた直後の糸の張力を測定して延伸張力(cN/dtex)とした。
ポリプロピレン繊維を、温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下に5日間放置して調湿した後、調湿したポリプロピレン繊維(単繊維)の一定長(900mm)を採取し、その質量を測定して繊度を算出した。同じ調湿ポリプロピレン繊維について、前記と同じ測定操作を10回行い、その平均値を採ってポリプロピレン繊維の繊度(単繊維繊度)とした。なお、繊維が細くて一定試長の質量測定により繊度が測定できない場合は、同じ調湿繊維について、繊度測定装置(Textechno製「VIBROMAT M」)を使用して繊度を測定した。
ポリプロピレン繊維を温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下に5日間放置して調湿した後、ポリプロピレン繊維(単繊維)を長さ60mmに切断して試料とし、当該試料(長さ60mmのポリプロピレン単繊維)の両端を把持して(両端から10mmまで把持)、繊維強度測定装置(Textechno製「FAFEGRAPH M」)を使用して、温度20℃、相対湿度65%の環境下で、引張速度60mm/分で伸張して、切断時の応力を測定し、その値をポリプロピレン単繊維の繊度で除して繊維強度(cN/dtex)を求めた。なお同じポリプロピレン繊維(単繊維)について同じ操作を10回行って繊維強度を求め、その平均値を採ってポリプロピレン繊維(ポリプロピレン単繊維)の繊維強度とした。
走査型電子顕微鏡(HITACHI製「S−510」)を使用して、ポリプロピレン繊維(単繊維)を、繊維軸に対して垂直方向から1000倍の倍率で写真撮影し、得られた写真について、図1に基づいて先に説明した方法にしたがって、繊維表面の凹凸の平均間隔および平均高さを求めた。平均間隔および平均高さの算出に当たっては、10本のポリプロピレン繊維(単繊維)について、1本の繊維につき、5箇所(各測定箇所の間隔10cm)ずつを選んでその箇所での凹凸の間隔および高さを測定し(延べ50箇所)、その平均値を採って、凹凸の平均間隔(μm)および平均高さ(μm)とした。
ポリプロピレン繊維1gを105℃で5時間乾燥させた後、質量(M1)を測定する。その乾燥ポリプロピレン繊維をイオン交換水30ml中に浸漬して、20℃で10分間静置した後、取り出して露出状態(他の材料で包まずに)のまま卓上遠心機(KOKUSAN社製「H−27F」)に入れて、温度20℃の温度で、3000rpmの回転速度で5分間遠心脱水し、その質量(M2)を測定し、下記の数式(1)から保水率(%)を求めた。
ポリプロピレン繊維の保水率(%)={(M2−M1)/M1}×100 (1)
ポリプロピレン繊維を温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下に5日間放置して調湿した後、長さ1mmに切断し、その5mgを量り採ってアルミパン(容量100μL)(METTLER TOLEDO社製「No.51119872」)に入れ、アルミパンカバー(METTLER TOLEDO社製「No.51119871」)を用いてシールし、走査示差熱量測定器(TA Instuments社製「DSC2010」)を使用して、窒素雰囲気中で、昇温速度10℃/分で測定した1st runのDSC曲線から、吸熱ピークの半価幅(℃)および融解エンタルピー変化量(△H)(J/g)を、図2および図3(特に図3)を参照して前述した方法で求めた。
(i) 以下の実施例または比較例で得られたポリプロピレン繊維を束ねて1000dtexのマルチフィラメント糸にし、そのマルチフィラメント糸を用いて、基布密度が経30本/25.4mmおよび緯30本/25.4mmの平織生地を作製した。
(ii) 上記(i)で得られた平織生地から試験片(幅×長さ=3.5cm×8.5cm)を切り出し、試験片を1800rpmで回転しているローラー(材質:桜木)に1134g(2.5ポンド)の荷重で押し当て、試験開始から試験片の溶融が始まるまでの時間の長さを測定した。測定に当たっては、摩擦音が大きくなった瞬間を試験片の溶融開始時点とした。同じ試料(平織生地)について同じ試験を3回行って、平均値を採って、摩擦防融性の指標とした。試験片が摩擦により溶融を開始するまでの時間が長いほど、耐熱性に優れていることを示す。
(1) ポリプロピレン[プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF=97%、MFR=18g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を溶融紡糸装置の押出機に投入して240℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度245℃の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から22.3g/分の量で吐出し、800m/分の引き取り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取り、室温で保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=63dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=153.5℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張力1.18cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=48.0dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅9.5℃のシングルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は128J/gであった。また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)を走査型電子顕微鏡(HITACHI製「S−510」)を使用して写真撮影(倍率1000倍)したところ、図4に示すとおりであった。
(1) 実施例1の(1)において、未延伸糸の引き取り速度を3000m/分に変えた以外は実施例1の(1)と同じ操作を行って、ポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=214dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で3.1倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=69dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=155.3℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.8倍/分および延伸張力1.34cN/dtexの条件下に、3段で1.5倍に後延伸して、総延伸倍率が4.7倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=46dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅8.8℃のシングルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は133J/gであった。また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレンを溶融紡糸装置の押出機に投入して240℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度245℃の紡糸口金[孔数48個(十字形孔)、孔径0.2mm]から20.2g/分の量で吐出し、800m/分の引き取り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=436dtex/48フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度138℃の熱風炉に導入して、2段で3.9倍に前延伸してポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=112dtex/48フィラメント、吸熱開始温度=155.2℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度2.1倍/分および延伸張力1.12cN/dtexの条件下に、1段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が5.1倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=86dtex/48フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅9.6℃のシングルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は128J/gであった。また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) ポリプロピレン[プライムポリマー社製「ZS1337A」、IPF=96%、MFR=20g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度135℃の熱風炉に導入して、2段で4.8倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造しボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=60dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=152.0℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.6倍/分および延伸張力1.33cN/dtexの条件下に、3段で1.8倍に後延伸して、総延伸倍率が8.6倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=50dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅9.1℃のシングルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は129J/gであった。また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) ポリプロピレン[IPF=98%、MFR=16g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った(未延伸糸の総繊度=293dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造しボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=64dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=156.4℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度178℃の熱風炉に導入して、変形速度2.8倍/分および延伸張力1.54cN/dtexの条件下に、4段で2.2倍に後延伸して、総延伸倍率が10.1倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=29dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅8.0℃のシングルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は148J/gであった。また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) ポリプロピレン[IPF=98%、MFR=16g/10分(230℃、荷重2.16kg)]およびポリプロピレン[プライムポリマー社製「Y3002G」、IPF=93%、MFR=30g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を1:1の質量比で混合した混合物(混合物のIPF=95.5%)を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=63dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=152.5℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度171℃の熱風炉に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張力1.18cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=48.0dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅9.7℃のシングルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は126J/gであった。また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) 溶融紡糸装置の紡糸ヘッドに芯鞘型複合繊維製造用の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]を取り付け、ポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y3002G」、IPF=93%)を芯成分およびポリプロピレン[IPF=98%、MFR=16g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を鞘成分として用いて、芯成分:鞘成分=1:2の質量比で、240℃で溶融混練し、紡糸口金(口金温度245℃)から22.3g/分の量で吐出し、800m/分の引き取り速度でボビンに巻き取って芯鞘型のポリプロピレン未延伸糸を製造して、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=287dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造しボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=62dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=152.2℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度171℃の熱風炉に導入して、変形速度1.8倍/分および延伸張力1.18cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=48.0dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅9.0℃のシングルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は129J/gであった。また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレンを用いて実施例1の(1)と同じ条件を採用してポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、1段で4.6倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=63dtex/24フィラメント)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱プレートに接触させて、変形速度13.8倍/分および延伸張力1.43cN/dtexの条件下に、1段で1.6倍に後延伸して(熱プレートへの接触時間=15秒)、総延伸倍率が7.4倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=39dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅8.6℃のシングルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は133J/gであった。また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレンを用いて実施例1の(1)と同じ条件を採用してポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、実施例1の(2)と同じ条件を採用して前延伸を行って、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取った。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度180℃の熱風炉に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張力1.06cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=50dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅9.6℃のシングルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は126J/gであった。また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレンを用いて実施例1の(1)と同じ条件を採用してポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、実施例1の(2)と同じ条件を採用して前延伸を行って、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取った。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、実施例1の(3)と同じ条件を採用してポリプロピレン延伸糸を製造し、ボビンに巻き取った。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸をボビンから巻き出して、温度168℃の熱風炉に導入して、2%収縮させてポリプロピレン糸を製造した。
(5) 上記(4)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅9.4℃のシングルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は135J/gであった。また、上記(4)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) 溶融紡糸装置の紡糸ヘッドに芯鞘型複合繊維製造用の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]を取り付け、ポリエチレン(三菱化成製「HJ490」、MFR=20g/10分)を芯成分およびポリプロピレン[IPF=98%、MFR=16g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を鞘成分として用いて、芯成分:鞘成分=1:1の質量比で、240℃で溶融混練し、紡糸口金(口金温度245℃)から22.3g/分の量で吐出し、800m/分の引き取り速度でボビンに巻き取って芯鞘型のポリプロピレン未延伸糸を製造して室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=282dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸してポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=61dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=148.7℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張力1.24cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=47dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊維(a−11)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅11.8℃のダブルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は120J/gであった。また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) ポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y3002G」、IPF=93%)を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸してポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温に保存し(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=63dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=151.8℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度171℃の熱風炉に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張力0.96cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=48dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅12.2℃のダブルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は118J/gであった。また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)は、繊維表面に凹凸を有しておらず、その他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
実施例1の(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定を行ったところ、DSCピーク形状は半価幅15.3℃のダブルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は110J/gであった。
このポリプロピレン前延伸糸(ポリプロピレン繊維)は、繊維表面に凹凸を有しておらず、その他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF=97%)を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度143℃の熱風炉に導入して、1段で6.9倍に延伸して、ポリプロピレン延伸糸(総繊度=42dtex/24フィラメント)を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅14.0℃のダブルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は115J/gであった。また、上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) ポリプロピレン[プライムポリマー社製「ZS1337A」、IPF=96%、MFR=20g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を溶融紡糸装置の押出機に投入して300℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度320℃の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から22.3g/分の量で吐出し、600m/分の引き取り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の「総繊度=304dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度90℃の加熱ロールにより1段で1.5倍に前延伸した後、ボビンに巻き取って室温に保存し(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=203dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=150.8℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度138℃の熱風炉に導入して、1段で4.9倍に後延伸して、総延伸倍率が7.4倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=40.8dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅11.6℃のダブルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は118J/gであった。また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレン[プライムポリマー社製「Y2000Gv」、IPF=97%、MFR=18g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を溶融紡糸装置の押出機に投入して255℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度260℃の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から35.4g/分の量で吐出し、600m/分の引き取り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の「総繊度=635dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度145℃のスチーム槽により1段で11.5倍に延伸して、ポリプロピレン延伸糸(総繊度=55.2dtex/24フィラメント)を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅16.1℃のダブルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は114J/gであった。また、上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF=97%)を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度90℃の熱水槽に導入して、1段で3.7倍に前延伸した後、巻き取らずに引き続いて温度138℃の熱風炉に導入して1.2倍に後延伸して、総延伸倍率が4.4倍の延伸糸(総繊度=65dtex/24フィラメント)を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅20.7℃のダブルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は99J/gであった。また、上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF=97%)を溶融紡糸装置の押出機に投入して270℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度295℃の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から9.5g/分の量で吐出し、1500m/分で引き取ってポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取り、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=65dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度130℃の熱風炉に導入して、1段で1.5倍に延伸して、ポリプロピレン延伸糸(総繊度=44dtex/24フィラメント)を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅9.8℃のシングルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は75J/gであった。また、上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF=97%)を溶融紡糸装置の押出機に投入して230℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度300℃の紡糸口金[孔数30個(円形孔)、孔径0.8mm]から20g/分の量で吐出し、300m/分で引き取ってポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=535dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度110℃の熱ローラーで、1段で3.7倍に延伸して、ポリプロピレン延伸糸(総繊度=145dtex/24フィラメント)を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸の両端を固定した後、165℃のエアーオーブン中に30分間入れて熱処理を施した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のDSCピーク形状は半価幅9.8℃のシングルピークであり、融解エンタルピー変化量(△H)は82J/gであった。また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)のその他の物性は下記の表1に示すとおりであった。
しかも、実施例1〜10のポリプロピレン繊維は、前記した特性に加えて、DSCによる吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるという特性をも備えていることにより、耐熱性にも優れている。
これに対して、比較例1、2および6〜8のポリプロピレン繊維は、繊維表面に凹凸を有していないために、保水率が10%未満と低い。
また、比較例3〜5のポリプロピレン繊維は、繊維表面に凹凸を有しているが、凹凸の平均間隔が6.5μmよりも小さく、且つ平均高さが0.35μmよりも低いことにより、いずれも保水率が10%未満(8.5%、9.0%および4.8%)と低い。
Claims (3)
- アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなる単繊維繊度が0.1〜3dtexおよび繊維強度が7cN/dtex以上のポリプロピレン繊維であって、表面に、大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有していることを特徴とするポリプロピレン繊維。
- 保水率が10%以上である請求項1に記載のポリプロピレン繊維。
- 走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上である請求項1または2に記載のポリプロピレン繊維。
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