JP2008262761A - 非水電解液一次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 放電が進行した状態で高温環境下に曝される用途に使用しても、放電特性の劣化が生じ難い非水電解液一次電池を提供する。
【解決手段】 二酸化マンガンを含有する正極、正極端子、リチウムまたはリチウム合金を含有する負極、負極端子、セパレータ、および環状スルトン誘導体を含有する非水電解液を備えており、正極端子と負極端子との間に耐熱樹脂製のパッキングが介在している非水電解液一次電池であって、非水電解液が、少なくともエチレンカーボネートを含む炭酸エステルと、エーテルとを溶媒として含有しており、かつ環状スルトン誘導体として、1,3−プロパンスルトンおよび/または1,4−ブタンスルトンを含有していることを特徴とする非水電解液一次電池により、上記課題を解決する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、非水電解液一次電池に関し、更に詳しくは、高温環境下で長期間使用しても特性劣化が生じ難い非水電解液一次電池に関するものである。
近年、非水電解液一次電池においては、放電の際に高温に曝されるような用途への適用も検討されている。
非水電解液一次電池としては、例えば、二酸化マンガンなどを正極活物質とし、リチウムやリチウム合金を負極に用いたものが、負荷特性などが良好であることが知られているが、このような電池は、高温で放置したり高温で使用したりすると、電解液の溶媒であるプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの炭酸エステルと正極活物質とが反応してCOなどのガスが発生し、それによって電池が膨れ、使用機器を損傷させたり、電極材料と集電部分との接触が不十分になって電池特性が低下し、信頼性を損なうという問題があった。
特に電池の封止を、汎用されているポリプロピレン製のパッキング(ガスケットと表現されることもある)ではなく、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルアルコキシエチレン共重合体や、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱樹脂で構成したパッキングを用いて行うことで、電池の耐熱性を高めた非水電解液一次電池では、パッキングのガス透過性が小さいため、電池内部で発生したガスがパッキングを通じて電池内部へ散逸することがあまりなく、電池内部に蓄積されたガスによって電池に膨れが生じるといった問題があった。
前記のような問題を解決すべく、特許文献1には、耐熱樹脂製のパッキングなどで封口した非水電解液電池において、環状スルトン誘導体を添加した非水電解液を使用する技術が提案されている。特許文献1に開示の非水電解液電池では、非水電解液中の環状スルトン誘導体が正極表面に皮膜を形成して、正極と非水電解液溶媒との反応を抑制することから、電池内でのガス発生を抑えることができる。
特開2005−216867号公報
ところで、例えば、自動車タイヤの圧力センサーの電源用途では、自動車の走行時に定期的に繰り返し(例えば、1分間に1回程度の頻度で)放電が要求され、自動車が停止していても定期的に繰り返し(例えば、数分間に1回程度の頻度で)放電が要求される。
特許文献1に開示の非水電解液電池を、前記の自動車タイヤの圧力センサーの電源用途のように、高温環境下に曝される用途に適用しても、ある程度の期間までは良好に機能し得る。
しかしながら、前記の自動車タイヤの圧力センサーの電源用途では、電池の使用期間が例えば5年以上など、非常に長期にわたるため、比較的放電が進行した状態でも高温環境下に曝されることとなるが、特許文献1に開示の非水電解液電池では、ある程度の期間を超えて使用を継続すると、放電特性が徐々に低下することがあり、このような点で、特許文献1に開示の非水電解液電池は未だ改善の余地を残している。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、放電が進行した状態で高温環境下に曝される用途に使用しても、放電特性の劣化が生じ難い非水電解液一次電池を提供することにある。
前記目的を達成し得た本発明の非水電解液一次電池は、二酸化マンガンを含有する正極、正極端子、リチウムまたはリチウム合金を含有する負極、負極端子、セパレータ、および環状スルトン誘導体を含有する非水電解液を備えており、前記正極端子と前記負極端子との間に耐熱樹脂製のパッキングが介在している電池であって、前記非水電解液が、少なくともエチレンカーボネートを含む炭酸エステルと、エーテルとを溶媒として含有しており、かつ前記環状スルトン誘導体として1,3−プロパンスルトンおよび/または1,4−ブタンスルトンを含有していることを特徴とするものである。
本発明によれば、放電が進行した状態で高温環境下に曝される用途に使用しても、放電特性の劣化が生じ難い非水電解液一次電池を提供することができる。よって、本発明の非水電解液一次電池は、自動車タイヤの圧力センサーの電源用途のように、放電が進行した状態で高温環境下に曝され、かつ使用期間が長期にわたるような用途に好ましく用いることができる。
例えば特許文献1に記載されているような、1,3−プロパンスルトンや1,4−ブタンスルトンといった環状スルトン誘導体を含有する非水電解液を使用した電池を、放電が進行した状態で高温環境下に曝される用途(例えば、自動車タイヤの圧力センサーの電源用途)に使用すると、ある程度の期間を超えて使用を継続した場合に、負極表面にマンガンの析出が見られ、また、電池内にガスが蓄積して電池膨れが生じることがある。
負極表面に析出するマンガンは、正極の二酸化マンガンに由来するものと考えられる。二酸化マンガンを正極活物質とする非水電解液一次電池では、放電時に二酸化マンガン中のMnが、下記の反応により4価から3価に変化する。
MnO(IV) + Li → MnOOLi(III)
前記反応により生成した3価のMn(III)は、更に2価のMn(II)と4価のMn(IV)とになるが、このうち2価のMn(II)は非水電解液に解けてイオン化しMn2+となる。このMn2+が負極表面に析出するマンガンの原因であると考えられ、このような負極表面に析出したマンガンが、電池の内部抵抗を上昇させ、放電特性低下を引き起こしているものと推測される。
また、Mn(II)の非水電解液への溶解により、正極表面に形成される環状スルトン誘導体由来の皮膜の安定性が損なわれていると考えられ、これにより、正極と非水電解液溶媒との反応が生じて電池内でのガス発生が進行し、発生したガスが正極−負極間距離の増大などを引き起こして、電池の内部抵抗を上昇させ、放電特性低下を引き起こしていると推測される。
前記のような電池の放電特性低下を引き起こす原因となっていると考えられる現象は、特に電池を放電が進行した状態で高温貯蔵した場合に、より顕著に生じていると考えられる。
本発明では、非水電解液にエチレンカーボネートに含有させているが、これにより、3価のMn(III)から2価のMn(II)が生成する反応を抑制することができる。そのため、電池を高温環境下に曝される条件下で長期にわたって使用しても、その間における正極からのMnの非水電解液中への溶解を抑制して、環状スルトン誘導体によって正極表面に形成される皮膜の安定性を高めて正極と非水電解液溶媒との反応を確実に抑制できるようにしてガス発生を抑え、また、負極表面へのマンガンの析出を防止することができる。本発明の非水電解液一次電池では、これらの作用によって、内部抵抗上昇を抑えて放電特性低下を抑制することができる。
なお、非水電解液溶媒にエチレンカーボネートを使用した場合には、正極との反応によってガスが非常に発生しやすいが、本発明の電池では、正極表面に形成される環状スルトン誘導体由来の皮膜によってエチレンカーボネートと正極との反応自体が抑制できるため、エチレンカーボネートの使用によるガス発生の問題も回避できる。
本発明の非水電解液一次電池に係る非水電解液には、溶媒として、炭酸エステルとエーテルとを併用する。このうち、炭酸エステルとしては、少なくともエチレンカーボネート(EC)を使用する必要があり、エチレンカーボネートのみでもよいが、その他の炭酸エステルを併用してもよい。ECと併用し得る炭酸エステルとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状炭酸エステル;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル;などが挙げられる。
なお、炭酸エステルとしては、沸点が120℃以上のもの、例えば、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状炭酸エステルが好ましい。この場合には、電池の耐熱性がより良好となる。ちなみに、ECも沸点が120℃以上である。
非水電解液溶媒に使用し得るエーテルの具体例としては、例えば、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラグライム(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)、メトキシエトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらの中でも、沸点が120℃のもの、例えば、ジエトキシエタン、ジグライムなどの鎖状エーテルが好ましい。この場合には、電池の耐熱性がより良好となる。
非水電解液中のECの量は、ECの使用による作用をより有効に発揮させる観点から、全溶媒中、0.5体積%以上とすることが好ましく、1体積%以上とすることがより好ましい。他方、非水電解液中のEC量が多すぎると、電池の低温特性が低下することがあるため、非水電解液中のECの量は、全溶媒中、10体積%以下とすることが好ましく、6体積%以下とすることがより好ましい。
また、非水電解液溶媒中の炭酸エステルとエーテルとの量比(混合比)は、体積比で、炭酸エステル:エーテル=30:70〜70:30とすることが好ましい。
本発明において、非水電解液に添加する環状スルトン誘導体は、1,3−プロパンスルトンおよび1,4−ブタンスルトンが挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いればよい。
環状スルトン誘導体の添加量は、それ自身(すなわち、添加する環状スルトン誘導体)も含めた全非水電解液中で、0.5質量%以上とすることが好ましく、1質量%以上とすることがより好ましい。前記の通り、環状スルトン誘導体の添加により、正極の表面に非水電解液の溶媒との反応を抑制できる皮膜が形成され、電池内部でのガスの発生が減少して電池の膨れが抑制されるようになるが、環状スルトン誘導体の添加量が前記下限値以上であれば、その効果が十分に発現するようになるからである。
なお、非水電解液中の環状スルトン誘導体の添加量が多くなると、電池の膨れを抑制する効果は増加するものの、電池の内部抵抗が増加する傾向にあり、これにより閉路電圧(CCV)が低下し、それに伴って容量が低下しやすくなることがある。そのため、環状スルトン誘導体の添加量は、全非水電解液中で5質量%以下とすることが好ましい。環状スルトン誘導体を添加量は、全非水電解液中で3質量%以下とすることがより好ましく、この場合には、電池の放電特性が特に良好となる。
非水電解液に溶解させる電解質としては、例えば、LiBF、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiClO、LiC2n+1SO(n≧1)[LiCFSO、LiCSOなど]、リチウムイミド塩[LiN(CFSO、LiN(CSOなど]、LiC(CFSO、LiCFCO、LiB10Cl10、低級脂肪酸カルボン酸リチウム、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウムなどが挙げられ、それらのうちの少なくとも1種が用いられる。これらの中でも、正極活物質として使用する二酸化マンガンとの共存性が良好であることから、LiClO、LiCFSO、LiCSOなどのLiC2n+1SO(n≧1)や、LiN(CFSO、LiN(CSOなどのリチウムイミド塩が好ましい。
非水電解液中における電解質の濃度は、特に限定されるものではないが、0.2〜2mol/lが好ましく、0.3〜1.5mol/lがより好ましい。
また、LiBF、LiPF、LiAsFおよびLiSbFよりなる群から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩からなるリチウム塩Aと、前記LiBF、LiPF、LiAsFおよびLiSbF以外のリチウム塩からなるリチウム塩Bとを併用することにより、放電が進行した電池においても、環状スルトン誘導体の添加効果が発現しやすくなり、そのような放電が進行した電池を貯蔵したときでもガス発生をより良好に抑制することができるようになる。前記のようにリチウム塩Aとリチウム塩Bとを併用する場合、リチウム塩Aの全電解質中での割合を2モル%以上とすることが好ましい。ただし、リチウム塩Aは、電池内に存在する微量の水分による分解を受けやすいため、リチウム塩Aの全電解質中での割合は20モル%以下にすることが好ましい。
電池の特性を総合的に判断すれば、リチウム塩Aとしては、LiBFまたはLiPFが好ましく、また、リチウム塩Bとしては、LiClO、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSOおよびLiN(CSOによりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
また、非水電解液には、例えば、無水メリト酸、無水マロン酸、無水マレイン酸、無水酪酸、無水プロピオン酸、無水プルビン酸、無水フタロン酸、無水フタル酸、無水ピロメリト酸、無水乳酸、無水ナフタル酸、無水トルイル酸、無水チオ安息香酸、無水ジフェン酸、無水シトラコン酸、無水ジグリコールアミド酸、無水酢酸、無水琥珀酸、無水桂皮酸、無水グルタン酸、無水グルタコン酸、無水吉草酸、無水イタコン酸、無水イソ酪酸、無水イソ吉草酸、無水安息香酸などの酸無水物を添加すると、環状スルトン誘導体の添加量を少なくしても、ガス発生を効果的に抑制することができる。その結果、環状スルトン誘導体の添加による電池の負荷特性の低下を低減することができる。
前記酸無水物の添加量は、環状スルトン誘導体の場合と同様に、それ自身(すなわち、添加する酸無水物)も含めた全非水電解液中で、0.5質量%以上とすることが好ましく、また、5質量%以下とすることが好ましい。なお、より良好な放電特性を得るためには、酸無水物の全非水電解液中での添加量も、3質量%以下とすることがより好ましい。
本発明において、非水電解液は、通常、液状のまま用いるが、ポリマーなどでゲル化してゲル状で用いてもよい。
本発明の非水電解液一次電池において、正極活物質には二酸化マンガンを使用する。この二酸化マンガンは非水電解液との反応性が高いため、本発明の効果が顕著に発現する。正極の作製にあたっては、通常、正極活物質である二酸化マンガンに加えて、導電助剤およびバインダーが用いられる。導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、鱗片状黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、繊維状炭素などが用いられ、バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンラバーなどが用いられる。
そして、正極の作製にあたっては、二酸化マンガンと導電助剤とバインダーとを混合して調製した正極合剤を加圧成形するか、もしくは正極合剤を水または有機溶剤に分散させて正極合剤含有ぺーストを調製し(この場合、バインダーは予め水または溶剤に溶解または分散させておき、それを正極活物質などと混合して正極合剤含有ペーストを調製してもよい)、その正極合剤含有ぺーストを金属箔、エキスパンドメタル、平織り金網などからなる集電体に塗布し、乾燥した後、加圧成形する方法が採用できる。ただし、正極の作製方法は、前記例示の方法のみに限られることなく、他の方法によってもよい。
負極は、リチウム(金属リチウム)またはリチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−ビスマス、リチウム−インジウム、リチウム−ガリウム、リチウム−インジウム−ガリウムなどのリチウム合金で構成されるが、それらのリチウムやリチウム合金を金属箔、金属網などからなる集電体に圧着して負極としてもよい。また、リチウムとリチウム合金とを併用して負極を構成してもよい。
セパレータとしては、微孔性樹脂フィルム、樹脂不織布のいずれも用いることができる。その材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィンの他、耐熱用として、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられる。また、前記材質の微孔性フィルムと不織布とを複数積層するか、または微孔性フィルム同士や不織布同士を複数積層することによって構成される複層構造のセパレータを用いることにより、高温環境下で使用する場合の信頼性をより高めることができる。
本発明の非水電解液一次電池は、前記正極、負極、非水電解液およびセパレータを主要構成要素とし、それらを金属缶やラミネートフィルムなどからなる電池容器内に収容し、その電池容器を密閉することによって構成される。
図1に、本発明の非水電解液一次電池の一例を示している。図1は、コイン形などの扁平形の非水電解液一次電池を示す縦断面模式図である。非水電解液一次電池1では、正極2は、ステンレス鋼などを素材とする正極缶5の内側に収容され、その上にセパレータ4を介して負極3が配置されている。また、負極3は負極缶6の内面に圧着されている。更に、電池内部には非水電解液(図示しない)が注入されている。
非水電解液一次電池1において、正極缶5は正極端子を兼ねており、負極缶6は負極端子を兼ねている。そして、正極缶5の開口部は、正極缶5の開口端部の内方への締め付けにより、負極缶6の周縁部に配設した耐熱樹脂製で環状のパッキング7を押圧して負極缶6の周縁部と正極缶5の開口端部の内周面とに圧接させて封口されている。すなわち、非水電解液一次電池1は、正極端子(正極缶5)と負極端子(負極缶6)との間に耐熱樹脂製のパッキング7が介在しており、このパッキング7によって封止されている。封止用のパッキングの材質を耐熱樹脂とすることにより、電池を高温雰囲気での使用に適するようにすることができる。
パッキングを構成するための耐熱樹脂としては、例えば、PFAなどのフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル(PEE)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルフォン(PES)、PPS、PEEKなどの、融点が240℃を超える耐熱樹脂が好ましい。
また、図2には、本発明の非水電解液一次電池の他の例を示している。図2は、筒形の非水電解液一次電池を示す縦断面模式図である。図1において、非水電解液一次電池10は、上方開口部を有する有底円筒状の外装缶11と、外装缶11内に装填された正極13と負極14とをセパレータ15を介して巻回してなる巻回電極体12と、非水電解液と、外装缶11の上方開口部を封止する電池蓋7を有している。言い換えれば、図2の非水電解液一次電池10は、外装缶20と外装缶20の上方開口部を封止する電池蓋16とで囲まれる空間内に、正極13と負極14とをセパレータ15を介して巻回してなる巻回電極体12や非水電解液といった発電要素を有するものである。外装缶11は、鉄(好ましくは、Niメッキなどのメッキを施した鉄板)やステンレス鋼などを素材とし、外装缶2の形状としては、円筒形や角筒形などの筒形が挙げられる。
外装缶11の上方開口部には電池蓋16が配されており、電池蓋16は、外装缶11の上方開口部の内周縁に溶接されることにより、外装缶11と電池蓋16とで密閉空間を形成している。外装缶と電池蓋との溶接は、例えばレーザー溶接法により行うことが好ましい。
電池蓋16には、その中央部に開設された開口に、耐熱樹脂製の絶縁パッキング17を介して装着された端子体18が設置されている。また、電池蓋16の下部にはポリプロピレンなどのポリオレフィンなどを素材とする絶縁板19が配置されており、該絶縁板19は、円盤状のベース部20の周縁に環状の側壁21を立設した上向きに開口する丸皿形状に形成されていて、ベース部20の中央にはガス通口22が開設されている。電池内圧が急激に上昇したときの対策として、電池蓋16または外装缶11の缶底11aには、薄肉部(ベント)を設けることができる。
正極13と端子体18の下面とは、正極リード体23で接続されており、端子体18は正極の電位を有している。また、負極14取り付けられた負極リード体24は、外装缶11の缶底11a内面に溶接されており、外装缶11および電池蓋16は負極の電位を有している。すなわち、図2の非水電解液一次電池10では、端子体18が正極端子であり、外装缶11および電池蓋16が負極端子を兼ねている。そして、電池蓋16と正極端子である端子体18と負極端子である電池蓋16との間に耐熱樹脂製のパッキング17が介在しており、これに加えて、外装缶11の上方開口部の内周縁と電池蓋16とが溶接されていることよって、電池10が封止されている。
パッキング17を構成する耐熱樹脂としては、図1に示した非水電解液一次電池におけるパッキング7を構成する耐熱樹脂として先に例示した各種樹脂が挙げられる。
なお、図2では、筒形の非水電解液一次電池として、外装缶11と電池蓋16とが溶接されて封止された電池の例を示したが、外装缶と電池蓋とを、その間に耐熱樹脂製のパッキングを介在させて封止する構造の電池としてもよい。この場合のパッキングを構成する耐熱樹脂も、図1に示した非水電解液一次電池におけるパッキング7を構成する耐熱樹脂として先に例示した各種樹脂が挙げられる。
本発明の非水電解液一次電池は、前述の通り、喩え放電が進行した状態で高温環境下に曝されるような状況が長期にわたる用途に使用しても、放電特性の劣化が生じ難いものである。よって、本発明の非水電解液一次電池は、このような特性を生かして、自動車タイヤの圧力センサーの電源用途や、その他の高温環境下での放電が要求される用途を始めとして、従来公知の非水電解液一次電池が適用されていた用途に好ましく用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
以下に示すようにして、正極の作製と非水電解液の調製を行い、これらと負極などを用いて非水電解液電池を作製した。
まず、正極は、正極活物質としての二酸化マンガンと導電助剤としてのカーボンブラックとバインダーとしてのポリテトラフルオロエチレンとを90:5:5の質量比率で混合して調製した正極合剤を加圧成形することによって作製した。
非水電解液としては、ECとプロピレンカーボネート(PC)と1,2−ジメトキシエタン(DME)との体積比2:19:19の混合溶媒にLiClOを0.5mol/l溶解させたものに、1,3−プロパンスルトンを非水電解液中での含有量が1.0質量%となるように添加したものを用いた。前記非水電解液の全溶媒中のECの量は、5体積%である。
負極にはリチウム箔を用い、セパレータには微孔性PPフィルムとPP不織布との積層体を用い、パッキングにはPPS製のものを用い、それらと前記の正極と非水電解液とを用いて、図1に示す構造で厚さ5mm、直径24mmのコイン形非水電解液一次電池を作製した。
ここで、図1に示す非水電解液一次電池1について説明すると、正極2はステンレス鋼製の正極缶5内に収容され、その上にセパレータ4を介して負極3が配置されている。負極3は前記のようにリチウム箔で構成され、ステンレス鋼製の負極缶6の内面に圧着されている。そして、その電池内部には非水電解液が0.5ml注入され、正極缶5の開口部は、正極缶5の開口端部の内方への締め付けにより、負極缶6の周縁部に配設したPPS製で環状のパッキング7を押圧して負極缶6の周縁部と正極缶5の開口端部の内周面とに圧接させて封口されている。
実施例2
非水電解液の溶媒を、ECとPCとDMEとの体積比10:45:45の混合溶媒(全溶媒中のECの量が10体積%)に変更した以外は、実施例1と同様にしてコイン形非水電解液一次電池を作製した。
実施例3
非水電解液の溶媒を、ECとPCとDMEとの体積比2:49:49の混合溶媒(全溶媒中のECの量が2体積%)に変更した以外は、実施例1と同様にしてコイン形非水電解液一次電池を作製した。
実施例4
非水電解液の溶媒を、ECとPCとDMEとの体積比2:99:99の混合溶媒(全溶媒中のECの量が1体積%)に変更した以外は、実施例1と同様にしてコイン形非水電解液一次電池を作製した。
比較例1
1,3−プロパンスルトンを添加しない以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製し、この非水電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコイン形非水電解液一次電池を作製した。
比較例2
非水電解液の溶媒を、PCとDMEとの体積比50:50の混合溶媒に変更した以外は、実施例1と同様にしてコイン形非水電解液一次電池を作製した。
実施例1〜4および比較例1〜2の非水電解液一次電池について、製造後放電していないもの、20℃の環境下、放電電流1mAで、放電深度40%まで放電したもの、および同環境下、同放電電流で、放電深度80%まで放電したものを、それぞれ5個用意した。これらの電池を80℃で60日間貯蔵し、その前後での内部抵抗を測定して、電池5個での平均値を求めた。これらの結果を表1に示す。
Figure 2008262761
表1の結果から明らかなように、実施例1〜4の非水電解液一次電池は、比較例1および2の電池に比べて、放電がある程度進んだ後における高温貯蔵時の内部抵抗の上昇を低く抑え得ることが確認できる。
なお、実施例1および比較例2の非水電解液一次電池のうち、前記条件で放電深度80%まで放電した後に前記条件で貯蔵したものについて、分解して負極表面に析出しているマンガン量を測定したところ、実施例1の電池では22μg、比較例2の電池では740μgであり、実施例1の電池では負極表面へのマンガンの析出を抑制できていることが確認された。すなわち、実施例の電池では、正極から非水電解液へのマンガンの溶出を抑制できており、これにより、正極表面における環状スルトン誘導体由来の皮膜の安定化による内部抵抗上昇抑制効果と、負極表面へのマンガンの析出抑制による内部抵抗上昇抑制効果とによって、前記の貯蔵試験後においても、放電特性の劣化を抑えることができているものと推定される。
したがって、本発明の非水電解液一次電池は、放電が進行した状態で高温環境下に曝され、このような状況が長期にわたる用途に適用した場合でも、放電特性の劣化が生じ難い電池であるといえる。
本発明の非水電解液一次電池の一例を示す縦断面模式図である。 本発明の非水電解液一次電池の他の例を示す縦断面模式図である。
符号の説明
1、10 非水電解液一次電池
2、13 正極
3、14 負極
4、15 セパレータ
5 正極缶
6 負極缶
7、17 耐熱樹脂製パッキング
16 電池蓋
18 端子体

Claims (5)

  1. 二酸化マンガンを含有する正極、正極端子、リチウムまたはリチウム合金を含有する負極、負極端子、セパレータ、および環状スルトン誘導体を含有する非水電解液を備えており、前記正極端子と前記負極端子との間に耐熱樹脂製のパッキングが介在している非水電解液一次電池であって、
    前記非水電解液が、少なくともエチレンカーボネートを含む炭酸エステルと、エーテルとを溶媒として含有しており、かつ前記環状スルトン誘導体として、1,3−プロパンスルトンおよび/または1,4−ブタンスルトンを含有していることを特徴とする非水電解液一次電池。
  2. 非水電解液の全溶媒中のエチレンカーボネートの量が、0.5〜10体積%である請求項1に記載の非水電解液一次電池。
  3. 非水電解液の含有する炭酸エステルおよびエーテルは、沸点が120℃以上である請求項1または2に記載の非水電解液一次電池。
  4. 耐熱樹脂製パッキングの融点が240℃を超える請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液一次電池。
  5. 非水電解液中の環状スルトン誘導体の添加量が、0.5〜5質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解液一次電池。
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