JP2008261474A - スラストワッシャ - Google Patents

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Abstract

【課題】構成の簡易化を図ることができ、かつ低フリクションを実現可能とするスラストワッシャを提供する。
【解決手段】回転軸のスラスト荷重を受ける樹脂製のスラストワッシャ10において、摺動面F側に内径側から外径側に連通する溝20が備えられ、該溝20の両側面のうちの一方の側面21における表面側の端縁には、溝20内に供給される潤滑油を摺動部に送り出すための曲面部分21aが設けられており、該曲面部分21aの周方向断面における曲率半径Rが、1mmよりも大きく13mm以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、スラスト荷重を受ける樹脂製のスラストワッシャに関するものである。
自動車用のオートマチックトランスミッション(トルコン内部)やCVTなど、回転軸を備えた各種の装置においては、回転軸の摺動抵抗を低減させるために、各種スラスト軸受が用いられている。スラスト軸受で多く利用されているものとしては、金属製のニードルベアリングを挙げることができる。かかるニードルベアリングは、品質的には優れているものの、軸方向の省スペース化には限度があり、また、材料費や製造コストが高いという欠点がある。
そこで、ニードルベアリングの代替品として、材料費が安く、加工性に優れ、かつ軽量化も可能な樹脂製のスラストワッシャが用いられることがある。
しかし、樹脂製のスラストワッシャは、金属製のニードルベアリングに比べて、フリクションや摩耗に対する耐性が劣る。そのため、摺動部に潤滑膜(通常、油膜)を常に確保できるようにすることが重要な設計要素となっている。油膜を確保するために、テーパランドやレイリーステップを設けることが知られているが、これらは、特に小型の軸受において、高精度の加工(金型の加工など)技術を要し、コスト的にも問題がある。そのため、樹脂製のスラストワッシャによって、軽量化と低コスト化を図りつつ、低フリクションを実現するのは難しかった。
なお、関連する技術としては、特許文献1に開示されたものがある。
国際公開番号WO2002/077473号公報
本発明の目的は、構成の簡易化を図ることができ、かつ低フリクションを実現可能とするスラストワッシャを提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、本発明は、
回転軸のスラスト荷重を受ける樹脂製のスラストワッシャにおいて、
摺動面側に内径側から外径側に連通する溝が備えられ、
該溝の両側面のうちの少なくとも一方の側面における表面側の端縁には、溝内に供給される油を摺動部に送り出すための曲面部分が設けられており、
該曲面部分の周方向断面における曲率半径が、1mmよりも大きく13mm以下であることを特徴とする。
本発明によれば、溝内に供給される油が曲面部分から摺動部に送り出されるので、摺動部に油膜を形成させることができる。そして、曲面部分の周方向断面における曲率半径が、1mmよりも大きく13mm以下であることで、油は効率的に摺動部に送り出される。また、油膜を形成させるための構造としては、溝の側面の端縁に曲面部分を設け、この曲面部分の周方向断面における曲率半径を、1mmよりも大きく13mm以下の範囲で設定するたけで良いので、構成の簡易化を図ることができる。
また、前記溝は周方向に一定の間隔で複数設けられており、スラストワッシャの径方向の幅をLとし、隣り合う溝と溝との間におけるスラストワッシャの径方向の幅の中心を通る弧の長さをBとした場合に、
0.44<L÷B<0.64
を満たすとよい。
これにより、より一層摺動抵抗を低減させることができる。
前記曲率半径が5mmであると好適である。
以上説明したように、本発明によれば、構成の簡易化を図ることができ、かつ低フリクションを実現できる。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
(実施例1)
図1〜図4を参照して、本発明の実施例1に係るスラストワッシャについて説明する。図1は本発明の実施例1に係るスラストワッシャの斜視図である。図2は本発明の実施例1に係るスラストワッシャの断面図の一部である。なお、図2は図1中のAA断面に相当する。図3は本発明の実施例1に係るスラストワッシャを評価する試験装置の概略構成図である。図4はスラストワッシャの評価結果(曲率半径が異なる複数のサンプルの評価結果)を示すストライベック線図である。
<スラストワッシャ>
特に、図1及び図2を参照して、本発明の実施例1に係るスラストワッシャの構成について説明する。本実施例に係るスラストワッシャ10は、省スペース化,軽量化及びコスト低減を目的として、樹脂材(例えば、フェノールやポリエーテルエーテルケトン)により構成されている。このスラストワッシャ10は、その平面形状が内周及び外周共に円形の環状の板状部材である。また、このスラストワッシャ10は、公知の樹脂成形技術によって成形される。
このスラストワッシャ10は、回転軸の軸方向の端部側に備えられ、スラスト荷重を受けながら、回転軸の端面(または回転軸の端部側に設けられた部材表面)あるいはスラストワッシャ10を介して回転軸とは反対側に設けられた部材表面に対して摺動する。このとき、摺動相手の部材が回転する場合もあるし、スラストワッシャ10自体が回転する場合もあるし、両者が回転する場合もある。本実施例では、一例として、固定かつ静止状態にあるスラストワッシャ10に対して、回転する回転板110が摺動する場合を例にして説明する。なお、回転板110は金属(例えばS45C)により構成されている。
スラストワッシャ10の摺動面F側には、内径側から外径側に連通する複数の溝20が設けられている(図1に示す例では、5個の溝20が等配に設けられている)。なお、スラストワッシャ10は、周囲が潤滑油(例えばATF)に満たされた状態で用いられ、これらの溝20は、潤滑油を他部品に供給するための流路、および発生するキャビテーションを吸収する空間として利用される。
そして、溝20の両側面のうちの一方の側面21における表面側の端縁には、溝20内に供給される潤滑油を摺動部(表面側)に送り出すための曲面部分21aが設けられている。ここで、「一方」とは、回転板110の回転方向(図2中、矢印X方向)の先端方向側である。なお、他方の側面22における表面側の端縁には、曲面部などを設けなくても良い。ただし、金型成形によって成形する場合には、角の部分に曲面(いわゆるR)が形成されるのが一般的である。また、回転板110が両方向に回転するような場合には、他方の側面22にも、一方の側面21の場合と同様に、その表面側の端縁に曲面部分を設ける構成を採用し得る。
このように、側面21における表面側の端縁に曲面部分21aを設けることにより、スラストワッシャ10と回転板110が摺動すると、溝20内に供給される潤滑油の一部は、楔作用によって摺動部に送り出される。これにより、スラストワッシャ10と回転板110との間には油膜が形成される。
<曲面部分の詳細>
上記の通り、側面21における表面側の端縁に曲面部分21aを設けることにより、摺動部に潤滑油の一部を送り出すことができ、スラストワッシャ10と回転板110との間に油膜を形成させることができる。そして、背景技術の中で説明したように、樹脂製のスラストワッシャ10を用いる場合には、摺動部に油膜を常に確保できるようにすることが重要である。そのため、溝20内の潤滑油を摺動部に積極的に送り出すことができるように設計することが必要である。
ここで、油膜の形成し易さ(摺動部への潤滑油の送り出し易さということもできる)を決定付ける要素としては、各部品の材質や形状や寸法など各種の要素が考えられ得る。しかしながら、これを決定付ける要素は、基本的には表面形状(摺動面の形状)であり、各部品の材質や表面付近を除く部分の寸法や形状はあまり関与していない。そして、本願発明者は、誠意検討し、かつ、各種の実験や測定を重ねた結果、側面21における表面側の端縁に曲面部分21aを設ける構成(アークランドモデル)を採用した場合には、曲面部分21aの周方向断面における曲率半径R(図2中のR)が、油膜の形成し易さを左右する極めて重要な要素であることを突き止めた。
以下、複数の曲率半径Rのサンプルを用いて評価試験を行った結果と、評価試験の方法(装置)について、特に、図3及び図4を参照して説明する。
図3は評価に用いた試験装置の概略を示したものである。試験装置100は、ケース120と、余分な潤滑油Lを溜めておくタンク130と、潤滑油Lを循環させるためのポンプ140と、循環させる潤滑油Lの流量を調節する調節機構150と、スラストワッシャ10に対してスラスト荷重を与える押圧部材160とを備えている。
ケース120は、その内部に油溜りが設けられており、この油溜りの中に不図示のモータによって回転する回転板110が設けられている。また、油溜りの中には、回転板110と摺動する位置に、評価対象であるスラストワッシャ10を取り付ける機構が設けられている。ここで、スラストワッシャ10は、固定かつ静止した状態となるように取り付けられる。また、不図示のエアシリンダにより、押圧部材160によってスラストワッシャ10に与えるスラスト荷重を調節できるように構成されている。
以上の構成により、ポンプ140を駆動させると、潤滑油Lが、ケース120とタンク130との間で循環する。このとき、潤滑油Lは図3中矢印S方向に流れる。また、潤滑油Lは、スラストワッシャ10に設けられた溝20内を、内径側から外径側へと流れる。
そして、潤滑油Lを循環させた状態で、かつ押圧部材160によってスラストワッシャ10に所定のスラスト荷重をかけた状態で、回転板110を回転させる。その際にスラストワッシャ10に作用するトルクを、不図示のトルクメータで測定することによって、摩擦係数を算出することが可能となる。
そして、曲率半径Rが1mm,5mm,13mm,25mm,50.5mmの5種類のサンプル(スラストワッシャ10)について、スラスト荷重を1000Nで一定にした状態で、かつ、潤滑油(ATF)の流量を4L/minで一定にした状態で、評価試験を行った。なお、評価試験においては、回転板110の回転数を段階的に増加させて、スラストワッシャ10に作用するトルクを各段階で測定した。また、トルクの測定は、トルクおよび摺動部近傍の温度が一定値に安定したときに行うようにした。
図4は評価結果を示すストライベック線図である。ストライベック線図においては、横軸が軸受特性数で、縦軸が摩擦係数である。なお、軸受特性数は、(粘度)×(摺動速度)÷(面圧)で与えられる。また、ストライベック線図においては、摩擦係数が最も小さくなるポイントがGcポイントであり、混合潤滑から流体潤滑に移行するポイントとなる。つまり、このGcポイントよりもグラフ中左側が混合潤滑領域となり、Gcポイントよりもグラフ中右側が流体潤滑領域となる。
このGcポイントの軸受特性数が小さければ小さいほど、より低速回転のうちに流体潤滑領域に移行することができることになるため、摺動性が良いと言える。ここで、流体潤滑領域において摩擦係数が低いほど、摺動性が良いという考え方もある。しかしながら、ストライベック線図からも分かるように、これらの両特性が共に良い曲率半径は一致していない。本評価においては、耐久性の観点からGcポイントの軸受特性数を評価の基準とした。
図4のストライベック線図から曲率半径Rが5mmのスラストワッシャ10のGcポイントの軸受特性数が最も小さく、また、そのときの摩擦係数が最も小さいことが分かる。
以上のことから、曲率半径Rを、1mmよりも大きく13mm以下の範囲で設定すると良く、特に、5mm付近に設定するとより好適であるという結果を導き出した。
なお、回転板110を逆方向に回転させた場合には、Gcポイントがなく、明りょうな流体潤滑領域が認められないことも分かった。これにより、曲面部分21aが動的な流体圧力発生に効果があることも確認できた。
<本実施例の優れた点>
本実施例に係るスラストワッシャ10によれば、溝20内に供給される潤滑油Lが、溝20の側面21における表面側の端縁に設けられた曲面部分21aから摺動部に送り出されるので、摺動部に油膜を形成させることができる。
そして、曲面部分21aの周方向断面における曲率半径Rが、1mmよりも大きく13mm以下(特に5mm付近が好適)であることで、潤滑油Lは効率的に摺動部に送り出される。これにより、低フリクションを実現できる。そして、上述したとおり、曲率半径Rをこの範囲に設定することで、Gcポイントの軸受特性数を小さくすることができる。従って、低速回転のうちから流体潤滑領域に移行させることができ、摺動摩耗を抑制することができる。
また、油膜を形成させるための構造としては、溝20の側面21の端縁に曲面部分21aを設け、この曲面部分21aの周方向断面における曲率半径Rを、1mmよりも大きく
13mm以下の範囲で設定するたけで良いので、構成の簡易化を図ることができる。従って、スラストワッシャ10を成形するための金型も高精度に加工する必要がなく、コストを低く抑えることができる。
(実施例2)
図5を参照して本発明の実施例2に係るスラストワッシャについて説明する。本実施例では、上記実施例1に係るスラストワッシャにおいて、更に摺動性を高めるべく、(L÷B)の値(以下、L/B値と称する)の最適化を図ったものである。ここで、図1に示すように、Lはスラストワッシャ10における径方向の幅であり、Bは隣り合う溝20と溝20との間(ただし、端縁に設けた曲面部分は除く)におけるスラストワッシャ10の径方向の幅の中心を通る弧の長さである。
本実施例では、L/B値が異なる複数のスラストワッシャについて、評価を行った。より具体的には、溝20を実施例1で説明したものと同様に等配(一定間隔)に複数設ける構成を採用し、かつ、溝20の本数を変えたものを用いることによって、L/B値が異なる複数のスラストワッシャについて評価を行った。サンプルは、溝の本数が3本,5本,7本,9本,12本,15本(L/B値は、それぞれ0.26,0.44,0.64,0.85,1.19,1.57)の6種類のスラストワッシャとした。なお、曲率半径Rについては、実施例1で最も結果の良かった5mmとした。
評価試験の方法や装置については上記実施例1で説明した通りである。図5はスラストワッシャの評価結果(L/B値が異なる複数のサンプルの評価結果)を示すストライベック線図である。
図5に示す評価結果から、L/B値が0.44(溝本数5本)と0.64(溝本数7本)のサンプルが、最もGcポイントが低いことが分かる。そして、これらのGcポイントにはあまり差がないことから、L/B値は、0.44〜0.64に設定すると良いという結果を導き出した。
以上のことから、上記実施例1で説明した点も踏まえて、スラストワッシャ10において、溝20の一方の側面21における表面側の端縁に設ける曲面部分21aの曲率半径Rを1mmよりも大きく13mm以下の範囲、特に5mmに設定し、かつL/B値を0.44〜0.64に設定することによって、摺動性を効果的に良くすることができることが分かる。
図1は本発明の実施例1に係るスラストワッシャの斜視図である。 図2は本発明の実施例1に係るスラストワッシャの断面図の一部である。 図3は本発明の実施例1に係るスラストワッシャを評価する試験装置の概略構成図である。 図4はスラストワッシャの評価結果を示すストライベック線図である。 図5はスラストワッシャの評価結果を示すストライベック線図である。
符号の説明
10 スラストワッシャ
20 溝
21 側面
21a 曲面部分
22 側面
100 試験装置
110 回転板
120 ケース
130 タンク
140 ポンプ
150 調節機構
160 押圧部材
F 摺動面
L 潤滑油
R 曲率半径

Claims (3)

  1. 回転軸のスラスト荷重を受ける樹脂製のスラストワッシャにおいて、
    摺動面側に内径側から外径側に連通する溝が備えられ、
    該溝の両側面のうちの少なくとも一方の側面における表面側の端縁には、溝内に供給される油を摺動部に送り出すための曲面部分が設けられており、
    該曲面部分の周方向断面における曲率半径が、1mmよりも大きく13mm以下であることを特徴とするスラストワッシャ。
  2. 前記溝は周方向に一定の間隔で複数設けられており、スラストワッシャの径方向の幅をLとし、隣り合う溝と溝との間におけるスラストワッシャの径方向の幅の中心を通る弧の長さをBとした場合に、
    0.44<L÷B<0.64
    を満たすことを特徴とする請求項1に記載のスラストワッシャ。
  3. 前記曲率半径が5mmであることを特徴とする請求項2に記載のスラストワッシャ。
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