JP2008259169A - 印刷結果の予測 - Google Patents

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Abstract

【課題】少ない印刷/測定によって正確に印刷結果を予測する。
【解決手段】インク量空間に生成された格子点から選択された少数の第1代表点についてのみカラーパッチの印刷と分光反射率R(λ)の測定を行う。その際に、インク量空間において偏りが生じないように第1代表点とする格子点を選択するようにする。その後、第1代表点を学習データCD1として構築したニューラルネットワークNNRにより、第2代表点の分光反射率R(λ)を予測する。これにより、セル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルによる分光反射率R(λ)の予測に十分なノード(第1代表点+第2代表点)の分光反射率R(λ)を得る。
【選択図】図4

Description

本発明は印刷結果の予測に関し、特にインクを記録媒体に付着させることにより印刷される印刷結果の予測に関する。
従来、印刷装置が印刷可能な色の一部についてのみ印刷と測色を行い、その測定結果に基づいて印刷装置が印刷可能な色全体についての測定結果を予測することが行われている。例えば、セル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルに基づいて、任意のインク量での分光反射率を予測する手法が提案されている。かかる構成においては、インク量空間を分光反射率が既知のノード(インク量(被覆率)空間において均等に分布する格子点)によって囲まれた複数のセルに分割し、セルを構成する各ノードの分光反射率に基づいてセル内の任意のインク量の分光反射率を予測する。インク量空間において比較的近い位置に存在するノードの分光反射率に基づいて任意のインク量の分光反射率を予測することができるため、良好な予測精度を実現することができる。
国際公開WO2005/043884号のパンフレット
近年、家庭用プリンタの高画質化にともなって使用できるインクの種類が増加しており、上述したセル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルにおけるインク量空間も多次元化することとなっている。それにとともに、上述したノードの個数は、インク種の増加に応じてべき乗的に増加することとなっている。また、良好な予測精度を確保するためにインク量空間におけるノードの密度を減少させることもできないため、大量のノードについてカラーパッチを印刷/測色(分光反射率の測定)をしなければならなくなっていた。大量のカラーパッチを印刷/測色するには、膨大な時間を要するため、例えば変換プロファイルの作成等の作業に要する期間が長期化するという問題があった。さらに、印刷後の経過時間によってインクの状態が変動するため、長期間にわたる測色においては経過時間の差に起因する測定ノイズが避けられないという問題も生じていた。
上記課題を解決するために、本発明は、少ない印刷/測定によって正確に印刷結果を予測することを目的とする。
上記目的を達成するために、記録媒体上に付着させる複数の種類のインクについてのインク量を軸としたインク量空間から複数の代表的な座標を設定し、これらを第1代表点とする。その際に、インク量空間において複数の格子点を生成するとともに、当該格子点のなかから複数のものを上記インク量空間において偏りがないように選択する。そして、選択された上記格子点を第1代表点として設定する。上記第1代表点に対応するインク量セットにて実際に印刷を行い、その印刷結果を測定する。そして、上記インク量空間において上記第1代表点とは異なる他の代表的な座標を第2代表点として設定する。さらに、上記第2代表点に対応するインク量セットにて印刷した印刷結果を上記測定による測定結果に基づいて予測する。すなわち、上記第1代表点についての測定結果に基づいて、上記第2代表点のインク量セットにて印刷を行った場合の測定結果を予測する。以上により、上記第1代表点と上記第2代表点に対応するインク量セットにて印刷を行った場合の測定結果が得られたことになり、これらに基づいて任意のインク量セットにて印刷した印刷結果を予測することができる。
上記第2代表点に対応するインク量セットにて印刷を行った場合の測定結果が予測により得られるため、上記第2代表点に対応するインク量セットにて実際に印刷を行い、その印刷結果を測定する必要はない。従って、上記インクの種類が増加した場合でも、実際に印刷/測定を要する上記第1代表点の数の増加を抑えることができ、印刷結果の予測するための作業を効率化させることができる。
上記格子点のなかから複数のものを上記インク量空間において偏りがないように選択するための具体的手法として、上記インク量空間において過去に上記第1代表点として選択した上記格子点の付近の上記格子点が選択されないように制限するようにしてもよい。このようにすれば、特定の領域の格子点が集中的に選択されることが防止でき、偏りを防止することができる。
上記インク量空間において過去に上記第1代表点として選択した上記格子点の付近の上記格子点が選択されないように制限するための具体的手法として、上記インク量空間において過去に上記第1代表点として選択した上記格子点を最大のポテンシャルとしたポテンシャル分布を生成し、上記インク量空間においてポテンシャルが小さい上記格子点を選択するようにしてもよい。過去に上記第1代表点として選択した上記格子点やその周囲の上記格子点についてポテンシャルを大きくなるため、これらの格子点が選択されることを制限することができる。
また、上記ポテンシャル分布の具体例として、過去に上記第1代表点として選択した上記格子点を最大のポテンシャルとして線形的または正規分布状に周囲のポテンシャルが低くなる上記ポテンシャル分布を生成してもよい。このようにすることにより、過去に上記第1代表点として選択した上記格子点に近い上記格子点ほど選択されにくくなるように制限することができる。
過去に複数の上記格子点が上記第1代表点として選択された場合、複数の上記格子点を最大のポテンシャルとしたポテンシャル分布がインク量空間に存在することとなり、同一の上記格子点において複数のポテンシャル分布が重なることとなる。このような場合において、複数のポテンシャル分布が重なった格子点のポテンシャルを、重なったポテンシャル分布によるポテンシャルの和としてもよいし、重なったポテンシャル分布によるポテンシャルのうち大きいものとしてもよい。前者によれば複数のポテンシャル分布の重なり具合も選択されにくさに反映させることができるし、後者によれば処理を簡易化させることができる。
上記第2代表点に対応するインク量セットにて印刷した印刷結果を予測するときの予測手法と、任意のインク量セットにて印刷した印刷結果を予測するときの予測手法を互いに異ならせることが望ましい。各予測の段階に応じて好適な予測手法が適用できるからである。例えば、上記第2代表点に対応するインク量セットで印刷した場合の印刷結果を予測する段階においては、任意のインク量セットにて印刷した印刷結果を予測する段階よりも予測精度の高い予測手法を適用するようにしてもよい。上記第2代表点に対応するインク量セットで印刷した場合の印刷結果を予測した予測結果は、任意のインク量セットにて印刷した印刷結果を予測する際に使用されるため、より高い精度が要求されるからである。むろん、逆に任意のインク量セットにて印刷した印刷結果を予測する段階において、上記第2代表点に対応するインク量セットで印刷した場合の印刷結果を予測する段階よりも予測精度の高い予測手法を適用することも可能である。
具体的な予測手法の一例として、上記第2代表点に対応するインク量セットで印刷した場合の印刷結果を予測する段階において、上記測定による測定結果によって学習を行ったニューラルネットワークを用いるものを使用してもよい。ニューラルネットワークによれば、上記第2代表点を含む任意のインク量セットを入力することにより、当該インク量セットに対応する印刷結果を予測結果として出力することができる。
さらに、以上説明した印刷結果の予測手法を利用してルックアップテーブルを作成することも可能である。すなわち、本発明の予測手法を用いて所望の光源下の色を特定し、当該色と対応するインク量セットとの対応関係を規定したルックアップテーブルを作成することができる。この場合も、ルックアップテーブルの作成に要する作業を軽減することができる。なお、インク量セットと色との対応関係を規定したルックアップテーブルを使用して、さらに別の変換プロファイルを作成するようにしもよい。例えば、入力機器のソースICCプロファイルと結合させることにより、デバイスリンクプロファイルを作成するようにしてもよい。
なお、本発明の技術的思想は、方法のみならず、当該方法を実行するコンピュータ等のハードウェアや当該コンピュータにおける処理手順を規定したプログラムにおいても具現化することができることはいうまでもない。また、本発明の方法は、単体として存在するものに限られず、ある方法の一部として組み込まれる場合もある。例えば、本発明の手法により印刷結果を予測する方法を一部に組み入れた印刷制御方法や画像処理方法においても本発明が実現できることはいうまでもない。
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.各種コンバータおよびその準備:
A−1.分光プリンティングモデルコンバータ:
A−2.色コンバータ:
A−3.粒状性コンバータ:
A−4.ニューラルネットワークの学習:
B.ルックアップテーブルの作成:
C.まとめおよび変形例:
A.各種コンバータおよびその準備
A−1.分光プリンティングモデルコンバータ
図1は、本発明の第1実施形態としての印刷結果予測装置の構成を示すブロック図である。同図において、印刷結果予測装置はコンピュータ10のハードウェアおよびソフトウェアによって実現されている。具体的には、コンピュータ10が備えるCPU12が、ハードディスクトライブ(HDD)11等に記憶されたプログラムデータ11aを読み込み、当該プログラムデータ11aをRAM13上に展開しながらプログラムデータ11aにしたがった演算を実行させる。そして、当該演算によって本発明の印刷装置としてのプリンタ20や分光反射率計30やスキャナ40といった外部機器を所定のインターフェースを介して制御することにより、本発明の印刷結果予測装置を構成する各種手段を実現する。
プリンタ20はインク搭載部21を備えており、インク搭載部21が複数の種類のインクのインクカートリッジ22a,22b・・・を搭載する。インクカートリッジ22a,22b・・・は本発明の色材容器に相当する。プリンタ20はインクカートリッジ22a,22b・・・から供給される複数の種類のインクを記録媒体としての印刷用紙に吐出することにより、印刷用紙上に印刷画像を形成する。具体的には、インク搭載部21を備えたキャリッジを主走査させ、紙送りローラによって副走査を行いながら、キャリッジに形成されたノズルからインクを吐出することが可能であり、各インク色を組み合わせて多数の色を形成し、これにより印刷用紙上に印刷画像を形成する。本実施形態におけるプリンタはインクジェット方式のプリンタであるが、インクジェット方式の他にも種々のプリンタに対して本発明を適用可能である。
印刷結果予測装置は、大きく分光プリンティングモデルコンバータRCと色コンバータCCと粒状性コンバータGCとから構成されており、分光プリンティングモデルコンバータRCはさらに準備部RC1と変換部RC2とから構成されている。準備部RC1は、変換部RC2が分光プリンティングモデルを使用して任意のインク量セットにてプリンタ20が印刷をしたときの分光反射率を予測することができるように、インク量空間における一部の代表点に対応するインク量セットの分光反射率を用意する処理を実行する。この処理を実行するために、準備部RC1は、インク量空間において第1代表点を設定する第1設定部RC1aと、第1代表点に対応するインク量セットにて印刷を行ったパッチの分光反射率を分光反射率計30に測定させる測定部RC1bと、インク量空間において第1代表点とは異なる他の代表的な座標を第2代表点として設定する第2設定部RC1cと、第2代表点に対応するインク量セットにて印刷したときの分光反射率を測定部RC1bによる測定結果に基づいて予測する第1予測部RCdとから構成されている。以下、準備部RC1を構成する各部RCa1〜RC1dの詳細を、これらが実行する処理の流れとともに説明する。
図2は、準備部RC1が実行する分光プリンティングモデルコンバータ準備処理の流れを示している。ステップS100においては、第1設定部RC1aが分光プリンティングモデルコンバータRCの準備を行うインクセットを設定する。ここでは、一例としてC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)lc(ライトシアン)lm(ライトマゼンタ)のインクセットが設定されたものとして以下説明する。ここで設定されるインクセットは、例えばプリンタ20のインク搭載部21に搭載可能なインクカートリッジ22a,22b・・・の組み合わせに基づいて設定される。インクセットが設定されると、ステップS110にて第1設定部RC1aが第1代表点をインク量空間から設定する(第1代表点選択処理)。ここではインクセットとしてCMYKlclmが設定されているため、CMYKlclmをそれぞれ軸とした6次元のインク量空間から第1代表点が設定される。続くステップS120においては、第2設定部RC1cが第2代表点をインク量空間から設定する。ここでも、CMYKlclmのインク量空間から第2代表点が設定される。
図3は、ステップS100〜S120の処理を模式的に示している。同図においては、図の簡略化のためインク量空間におけるCM面(YKlclmのインク量が、ある一定の値の面)を示し、縦軸をCインクのインク量軸、横軸をMインクのインク量軸としている。同図において、CMのインク量軸に平行な格子が形成されており、この格子の交点(格子点:代表的な座標)がステップS110にて第1代表点の候補とされる。図示されないが、他のインク(YKlclm)のインク量の軸についても同様に平行な格子が形成されており、インク量空間全体の格子点が第1代表点の候補とされる。従って、第1代表点の候補とされる格子点の数は各インク量軸に平行な格子の数をすべて積算した数となる。
各格子間の距離を均一とするようにしてもよいが、本実施形態においては不均一としている。本実施形態では、各インクについての1次色グラデーションのカラーパッチを印刷し、各インクの発色特性を予め調査しておくことにより、各格子間の距離が最適なものに設定されている。例えば、インクの発色の変動が急峻であったり、非線形性が強いインク量領域について、格子間の距離を狭めておくことにより後述する分光反射率R(λ)の予測精度を向上させることができる。図3の例では、インク量が小さい領域ほど格子間の距離が狭まるように設定されている。なお、本明細書においてインク量セットとは、各インクのインク量の組み合わせを意味しており、インク量空間において一の座標を特定することにより、一のインク量セットを特定することができる。各インクCMYKlclmのインク量はdc,dm,dy,dk,dlc,dlmと表すものとする。インク量セットは(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)のベクトルで表すことができる。
図3において、CMのインク量の合計がある程度大きくなる位置に有効領域と無効領域との境界線LLが示されている。この境界線LLは、YKlclmのインク量dy,dk,dlc,dlmがある一定の値であるときにおいて、プリンタ20が印刷用紙に付着可能なCMインク量dc,dmの組み合わせの上限を意味する。例えば、印刷用紙上にてインクにじみが生じない領域を有効領域として定義し、その有効領域の外縁を境界線LLによって規定している。プリンタ20に対して有効領域の内側のみのインク量セットを使用させれば、インクにじみの影響を受けることなく印刷結果を精度よく制御することが可能となる。境界線LLは、印刷結果を予測する対象のプリンタ20のハードウェアやインク物性や印刷用紙の表面物性や印刷環境に応じて定めることができる。インク量空間における有効領域は、実際にプリンタ20が再現可能な色再現ガマットに対応する。ステップS110においては、第1設定部RC1aが第1代表点選択処理を実行し、上述した格子点のなかから第1代表点として設定するものを選択する処理を実行する。
図4は、第1代表点選択処理(ステップS110)の流れを示している。ステップS111においては、境界線LLから大きく外側に外れた格子点を第1代表点として選択する候補から除外する。例えば、無効領域にある格子点であって、かつ、当該格子点によって囲まれた単位格子内に境界線LLが通過しない格子点を第1代表点の候補から除外する。実際にプリンタ20にて使用する可能性のないインク量セットについて印刷結果を予測する必要がないからである。さらに、ステップS112において、第1設定部RC1aは、すべての格子点のうち、有効領域の外側であり、かつ、有効領域の外縁(境界線LL)の付近の格子点をすべて第1代表点として選択する。次のステップS113においては、すべての格子点のうちインク量の軸上のものをすべて第1代表点として選択する。図3の例では、CMインク量平面においてdc=0またはdm=0を満足する格子点がすべて第1代表点として選択される。
以上の処理においては、インク量空間内の格子点に以下の4種類の属性を生じさせることとなる。(図3では、各格子点の位置を示す○内に属性の番号を示している。)
属性1:有効領域外にあって除外される格子点
属性2:有効領域外の第1代表点
属性3:インク量の軸上の第1代表点
属性4:属性1〜3以外の格子点
次に、ステップS111にて除外された格子点(属性1)、および、ステップS112で第1代表点として選択された格子点(属性2)、および、ステップS113で第1代表点として選択された格子点(属性3)を除いた残りの格子点(属性4)のなかから、所定個数の格子点を第1代表点として選択する処理を実行する。ステップS114においては、残りの格子点(属性4)のなかから第1代表点として選択する格子点(属性4a)の個数、および、残りの格子点(属性4)のなかから第1代表点として選択しない格子点(属性4b)の個数を設定する。ここでは、残りの格子点(属性4)のなかから第1代表点として選択しない格子点(属性4b)の個数と、残りの格子点(属性4)のなかから第1代表点として選択する格子点(属性4a)とステップS113で第1代表点として選択されたインク量の軸上の格子点(属性3)の合計の個数との比率が約3:1となるように各個数を設定する。
ステップS115においては整数カウンタnに初期値0をセットするとともに、各座標がポテンシャルの値を有するインク量空間を生成し、各座標におけるポテンシャルを0に初期化する。ステップS116においては、残りの格子点(属性4)のなかからポテンシャルが最も小さいものを選択し、第1代表点(属性4a)として設定する(ポテンシャル法)。このとき最小のポテンシャルを有する格子点が複数存在する場合には、該当する格子点のうち一つをランダムに選択する。最初の段階では、インク量空間のすべての座標のポテンシャルが0とされているため、各格子点が有するポテンシャルもすべて0となり、残りの格子点(属性4)のなかから一つの格子点がランダムに選択され、第1代表点(属性4a)として設定されることとなる。ステップS117においては、ステップS116において第1代表点(属性4a)として設定した格子点を最大のポテンシャルとしたポテンシャル分布を、ステップS115にて初期化したインク量空間において生成する。
図5(A),図5(B),図5(C)は、インク量空間において生成したポテンシャル分布を示している。図5(A),図5(B),図5(C)では、他のインク量dm,dy,dk,dlc,dlmを一定とした状態のポテンシャルの大きさ(縦軸)を各Cインク量dc(横軸)について示している。なお、ポテンシャル分布そのものは連続的に生成されているが、格子点はインク量空間において不連続に存在するため、各格子点が有するポテンシャルも不連続となる。図5(A)においては、第1代表点(属性4a)として設定した格子点(G1で図示。)を最大のポテンシャルとして周囲に線形的に量が減少していくポテンシャル分布が生成されている。図5(B)においては、第1代表点(属性4a)として設定した格子点G1を最大のポテンシャルとした正規(ガウス)分布状のポテンシャル分布が生成されている。図5(C)においては、第1代表点(属性4a)として設定した格子点G1が有するポテンシャルと同じ大きさのポテンシャルが所定の範囲に広がるポテンシャル分布が生成されている。
図5(A),図5(B),図5(C)において、最大のポテンシャルを有する格子点G1に隣接する格子点G2,G3,G4を示している。ここでは、格子点G4のみが格子点G1から十分に離れており、格子点G4のみがポテンシャルが0となっている。このように、各格子点が存在する位置に応じて各格子点が異なるポテンシャルを有することとなる。本発明では、図5(A),図5(B),図5(C)のいずれの態様のポテンシャル分布を採用してもよい。さらに、ポテンシャル分布の形状を決定づけるパラメータ(図5(A)の傾き、図5(B)の標準偏差、図5(C)の影響範囲等)も、第1代表点として選択する格子点(属性4a)の個数等に応じて種々のものを採用することができる。以上のようにポテンシャル分布を生成すると、ステップS119において整数カウンタnに1をインクリメントする。ステップS119においては、整数カウンタnが、ステップS113にて設定した第1代表点として選択する格子点(属性4a)の個数よりも小さいか否かを判定する。そして、整数カウンタnの方が小さい場合には、ステップS116に戻り、ステップS116以降の処理を繰り返し実行する。
次に実行するステップS116においても、ポテンシャルが最も小さいものが選択されることとなる。従って、ステップS117においてポテンシャルが加算された領域に属する格子点は選択されないように制限することとなる。図5(A),図5(B),図5(C)の例では、ポテンシャルが0のままとなっている格子点G4が選択されることとなる。このようにすることにより、過去に選択された格子点の付近の格子点が選択され、第1代表点として設定されることが防止できる。以上の処理をステップS113にて設定した個数まで第1代表点が選択されるまで繰り返して行うことにより、インク量空間において偏りがないように第1代表点を選択していくことができる。なお、本実施形態ではインク量空間のすべての座標におけるポテンシャルを予め0に初期化したが、すでにステップS113にて選択されたインク量軸上の属性3の各格子点を中心としたポテンシャル分布を初期の段階で生成してもよい。このようにすることにより、インク量の軸まわりに第1代表点が偏ることを防止するようにしてもよい。また、複数回にわたってステップS117を実行することにより、インク量空間には複数の格子点を最大のポテンシャルとした複数のポテンシャル分布が蓄積されることとなる。すると、インク量空間の単一の座標において複数のポテンシャル分布が重なることとなる。
図6(A),図6(B),図6(C)は、ポテンシャル分布が重なった様子を示している。図6(A)では、ある格子点G5において格子点G6,G7を最大のポテンシャルとしたポテンシャル分布P1,P2が重なっている様子が示されており、図6(B),図6(C)はそれぞれ異なる手法で格子点G5が有するポテンシャルの大きさを決定している。図6(B)においては、格子点G5におけるポテンシャル分布P1,P2のうち大きい方のポテンシャルの大きさを採用することとしている。一方、図6(C)においては、格子点G5におけるポテンシャル分布P1,P2の大きさを加算した値を格子点G5のポテンシャルの大きさとしている。本発明においては、いずれの手法によってポテンシャル分布が重なる部分のポテンシャルの大きさを決定してもよい。前者の手法によれば処理を簡易にすることができるし、後者の手法によれば近隣のポテンシャル分布によるポテンシャルの蓄積を格子点の選択に反映させることができる。
以上説明した第1代表点選択処理によれば、有効領域内から偏りなく第1代表点(属性4a)を選択することができるとともに、インク量の軸上の格子点(属性3)については必ず第1代表点として選択されるようにすることができる。ステップS120においては、第2設定部RC1cがステップS110にて第1代表点として選択されず、かつ、有効領域内にある格子点(属性4b)の格子点を第2代表点として設定する。最終的に有効領域では第1代表点が間引かれた状態で分布することとなるため、有効領域の内部よりも有効領域の外縁付近の方が第1代表点の分布密度が高くなる。
以上のようにして各代表点が設定されると、ステップS130にて測定部RC1bが第1代表点のインク量セットを取得し、当該インク量セットのカラーパッチを印刷する。なお、本明細書においてカラーパッチとは、有彩色のパッチに限らず、無彩色のパッチも含む広い意味を有している。カラーパッチを印刷するにあたっては、第1代表点のインク量セットの画素で所定領域が充填された画像データを生成し、当該画像データに対してハーフトーン処理やマイクロウィーブ処理を順次行うことにより印刷データを生成し、当該印刷データに基づいてプリンタ20の各部が駆動することによってカラーパッチを印刷する。カラーパッチは第1代表点の数だけ印刷され、例えば各カラーパッチがグラデーションをなすように配列されたカラーチャートとして印刷される。むろん、インク搭載部21にはCMYKlclmインクを保持するインクカートリッジ22a,22b・・・が搭載されているものとする。
また、各カラーパッチの印刷においては各第1代表点に対応したインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)にほぼ比例した吐出量のインクが吐出され、印刷用紙上に付着させられると考えて差し支えない。従って、本明細書においては、ハーフトーン処理やマイクロウィーブ処理を行う前のインク量dc,dm,dy,dk,dlc,dlmを実際に印刷用紙に付着させられるインク吐出量と区別せず扱うこととする。カラーパッチを印刷する印刷用紙は、後述するルックアップテーブルを作成する対象の印刷用紙である。印刷用紙によって、第1代表点や第2代表点の設定個数や設定比率を変えるのが望ましい。例えば、顔料インク用のフォトマット紙においては通常の写真用紙によりもインク量に対する色の変化が急激であるため、第1代表点や第2代表点の設定個数を多く(高い密度で)設定することが望ましい。
測定部RC1bは、すべてのカラーパッチの印刷が完了し、規定の乾燥時間が完了したことを確認すると、ステップS140において、分光反射率計30によって各カラーパッチの分光反射率を測定する。各カラーパッチに対して複数の可視波長の光を照射し、各可視波長における反射率を測定する。測定部RC1bは、測定によって得られた分光反射率を格納したデータを分光反射率データDとしてHDD11に記憶させる。
図7(A)は、分光反射率データDの内容を示している。同図において、インク量セットで表される各第1代表点について各波長に対する反射率が記憶されている。また、各第1代表点は上述した属性2,3,4aを有しており、当該属性2,3,4aも識別可能に記憶されている。ステップS150においては、第1予測部RCdが分光反射率データDから属性3,4aに該当する分光反射率のデータを抽出し、抽出したデータを後述するニューラルネットワークの学習用データCD1とする。分光反射率データDにおいてはインク量セットと分光反射率との対応関係が特定されており、この対応関係を学習用データCD1として使用することができる。ステップS160においては、第1予測部RC1dが学習用データCD1を使用してニューラルネットワークの学習を行う。ニューラルネットワークの学習についてはA−4節において詳細に説明する。
図8は、ステップS160にて学習させたニューラルネットワークNNRを示している。同図において、各インクのインク量dc,dm,dy,dk,dlc,dlmがニューラルネットワークNNRの入力層に入力可能となっており、出力層では各波長における反射率、すなわち分光反射率R(λ)を出力することが可能となっている。ステップS170においては、ステップS120にて第2代表点として設定されたインク量セットを、第1予測部RC1dがニューラルネットワークNNRの入力層に入力し、各第2代表点についての分光反射率R(λ)を算出する。すべての第2代表点についての分光反射率R(λ)が算出できると、ステップS180にて第1予測部RC1dが分光反射率データDに第2代表点とその分光反射率R(λ)との対応関係を追記する。図7(B)は、追記後の分光反射率データDを示している。同図に示すように、第1代表点と第2代表点の双方についての分光反射率R(λ)との対応関係が記述されている。
以上の分光反射率データDによれば、図3において示した属性1を除くすべての格子点に対応するインク量セットとそれに対応する分光反射率R(λ)が準備できたこととなる。なお、有効領域外の第1代表点である属性2をニューラルネットワークNNRの学習データCD1として使用しなかったのは、例えばインクにじみ等によって分光反射率R(λ)が不規則に変化する可能性があり、学習データCD1としてのノイズ要因となることを防止するためである。逆に、有効領域外縁周辺についてはすべての格子点を第1代表点として設定して、カラーパッチを実際に測定しており、ニューラルネットワークNNRによる予測値を使用していない。予測が困難な領域については、後に行う予測において実測値に頼った方が精度の低下を抑制することができるからである。一方、有効領域の内部においては、インク量セットの変動に対する分光反射率R(λ)の挙動が安定していると考えることができるため、有効領域の内部の第1代表点と実測の分光反射率R(λ)との対応関係を学習データCD1として使用し、それによって学習させたニューラルネットワークNNRによる予測値を第2代表点の分光反射率R(λ)として採用している。
さらに、上述したポテンシャル法によって、有効領域の内部の格子点のうちニューラルネットワークNNRの学習に使用する第1代表点(属性4a)を偏りなく選択するようにしているため、有効領域内において学習データCD1が極端に少ない領域が生じるのが防止できる。従って、有効領域の全体について一様な予測精度を実現することができる。また、ステップS113おいて、学習データCD1に組み込まれる第1代表点として、インク量の軸上の格子点(属性3)が優先的に選択されるようにしているため、各インク量の単独の変動に応じた分光反射率R(λ)の変動を確実に学習データCD1に盛り込むことができる。各インク量の単独の変動に応じた分光反射率R(λ)の変動は、複数インクの混色による分光反射率R(λ)の予測の基礎をなすものであるため、ニューラルネットワークNNRを精度よく学習させることができる。また、各インクのインク量の全領域から抜けなく学習データCD1を得ることができるため、一部のインク量領域の予測精度が極端に劣化することが防止できる。
分光反射率データDが準備できると変換部RC2による任意の分光反射率R(λ)の予測が可能となる。なお、変換部RC2および変換部RC2を実行するハードウェアが本発明の第2予測部に相当する。本実施形態においては、変換部RC2が分光プリンティングモデルとしてセル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデル(Cellular Yule-Nielsen Spectral Neugebauer Model)を使用して任意のインク量セットで印刷したときの分光反射率R(λ)の予測を行う。以下では、セル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデル(Cellular Yule-Nielsen Spectral Neugebauer Model)を説明する。このモデルは、よく知られた分光ノイゲバウアモデルとユール・ニールセンモデルとに基づいている。なお、以下の説明では、説明の簡略化のためCMYの3種類のインクを用いた場合のモデルについて説明するが、同様のモデルを本実施形態のCMYKlclmをはじめとする任意のインクセットを用いたモデルに拡張することは容易である。また、セル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルについては、Color Res Appl 25, 4-19, 2000およびR Balasubramanian, Optimization of the spectral Neugebauer model for printer characterization, J. Electronic Imaging 8(2), 156-166 (1999)を参照。
図9は、分光ノイゲバウアモデルを示す図である。分光ノイゲバウアモデルでは、任意のインク量セット(dc,dm,dy)で印刷したときの印刷物の分光反射率R(λ)は、以下の(1)式で与えられる。
Figure 2008259169
ここで、aiはi番目の領域の面積率であり、Ri(λ)はi番目の領域の分光反射率である。添え字iは、インクの無い領域(w)と、シアンインクのみの領域(c)と、マゼンタインクのみの領域(m)と、イエローインクのみの領域(y)と、マゼンタインクとイエローインクが吐出される領域(r)と、イエローインクとシアンインクが吐出される領域(g)と、シアンインクとマゼンタインクが吐出される領域(b)と、CMYの3つのインクが吐出される領域(k)をそれぞれ意味している。また、fc,fm,fyは、CMY各インクを1種類のみ吐出したときにそのインクで覆われる面積の割合(「インク被覆率(Ink area coverage)」と呼ぶ)である。
インク被覆率fc,fm,fyは、図9(B)に示すマーレイ・デービスモデルで与えられる。マーレイ・デービスモデルでは、例えばシアンインクのインク被覆率fcは、シアンのインク量dcの非線形関数であり、例えば1次元ルックアップテーブルによってインク量dcをインク被覆率fcに換算することができる。インク被覆率fc,fm,fyがインク量dc,dm,dyの非線形関数となる理由は、単位面積に少量のインクが吐出された場合にはインクが十分に広がるが、多量のインクが吐出された場合にはインクが重なり合うためにインクで覆われる面積があまり増加しないためである。他の種類のMYインクについても同様である。
分光反射率に関するユール・ニールセンモデルを適用すると、上記(1)式は以下の(2a)式または(2b)式に書き換えられる。
Figure 2008259169
ここで、nは1以上の所定の係数であり、例えばn=10に設定することができる。(2a)式および(2b)式は、ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデル(Yule-Nielsen Spectral Neugebauer Model)を表す式である。
本実施形態で採用するセル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデル(Cellular Yule-Nielsen Spectral Neugebauer Model)は、上述したユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルのインク量空間を複数のセルに分割したものである。
図10(A)は、セル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルにおけるセル分割の例を示している。ここでは、説明の簡略化のために、CMインクのインク量dc,dmの2つの軸を含む2次元インク量空間でのセル分割を描いている。なお、インク被覆率fc,fmは上述したマーレイ・デービスモデルにてインク量dc,dmと一意の関係にあるため、インク被覆率fc,fmを示す軸と考えることもできる。白丸は、セル分割のグリッド点(「ノード」と呼ぶ)であり、2次元のインク量(被覆率)空間が9つのセルC1〜C9に分割されている。各ノードに対応するインク量セット(dc,dm)は、第1代表点および第2代表点に対応するインク量セットとされている。すなわち、上述した分光反射率データDを参照することにより、各ノードの分光反射率R(λ)を得ることができる。従って、各ノードの分光反射率R(λ)00,R(λ)10,R(λ)20・・・R(λ)33は、分光反射率データDから取得することができる。
実際には、セル分割もCMYKlclmの6次元インク量空間で行うとともに、各ノードの座標も6次元のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)によって表される。そして、各ノードのインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)に対応する第1代表点または第2代表点の分光反射率R(λ)が分光反射率データDから取得されることとなる。また、第1代表点に対応するノードについては実測の分光反射率R(λ)が取得されるが、第2代表点に対応するノードはニューラルネットワークNNRによる予測値が分光反射率R(λ)として取得される。また、第1代表点および第2代表点は、もともとインク量空間において格子点上に存在する座標から設定されているため、インク量空間において直交セルC1〜C6を形成することができる。
図10(B)は、セル分割モデルにて使用するインク被覆率fcとインク量dcとの関係を示している。ここでは、1種類のインクのインク量の範囲0〜dcmaxも3つの区間に分割されており、各区間毎に0から1まで単調に増加する非線形の曲線によってセル分割モデルにて使用する仮想的なインク被覆率fcが求められる。他のインクについても同様にインク被覆率fm,fyが求められる。
図10(C)は、図10(A)の中央のセルC5内にある任意のインク量セット(dc,dm)にて印刷を行った場合の分光反射率R(λ)の算出方法を示している。インク量セット(dc,dm)にて印刷を行った場合の分光反射率R(λ)は、以下の(3)式で与えられる。
Figure 2008259169
ここで、(3)式におけるインク被覆率fc,fmは図10(B)のグラフで与えられる値である。また、セルC5を囲む4つのノードに対応する分光反射率R(λ)11,(λ)12,(λ)21,(λ)22は分光反射率データDを参照することにより取得することができる。これにより、(3)式の右辺を構成するすべての値を確定することができ、その計算結果として任意のインク量セット(dc,dm)にて印刷を行った場合の分光反射率R(λ)を算出することができる。波長λを可視光域にて順次シフトさせていくことにより、可視光領域における分光反射率R(λ)を得ることができる。インク量空間を複数のセルに分割すれば、分割しない場合に比べてサンプルの分光反射率R(λ)をより精度良く算出することができる。このように、本実施形態においては分光反射率データDを参照しつつ変換部RC2が印刷結果としての分光反射率R(λ)を予測する。
分光反射率R(λ)の予測は各分割セルにて行われるが、各セルの頂点を構成するノードは第1代表点である場合も第2代表点である場合も考えられる。しかし、有効領域の外縁付近については第1代表点の分布密度を有効領域の内部よりも高くしているため、ガマットの外縁付近については実際に測色した分光反射率R(λ)によって精度よく予測することができる。一方、第1代表点の分布密度が低くなる有効領域の内部ではインクの挙動が安定するため、ニューラルネットワークNNRにて正確に分光反射率R(λ)が予測されている。従って、ニューラルネットワークNNRにて予測された分光反射率R(λ)を使用して、さらにセル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルにより分光反射率R(λ)を予測したとしても精度が大きく低下することはない。印刷結果予測装置としての分光プリンティングコンバータRCは、単体として使用することにより、任意のインク量セットにて印刷をしたときの分光反射率R(λ)を精度よく予測することができるが、さらに他のコンバータを併用したり、予測した分光反射率R(λ)を利用したりすることにより、作業性のよいルックアップテーブルを作成することができる。以下、他のコンバータについて説明する。
A−2.色コンバータ
図11は、本発明の色特定手段としての色コンバータCCが分光反射率R(λ)に基づいて色を特定する処理を模式的に示している。同図において、分光プリンティングコンバータRCが予測した分光反射率R(λ)の各波長λにおいて所望の光源のスペクトルを乗算することにより、印刷物からの反射光のスペクトルを予測する。さらに、反射光のスペクトルに対して所望の観察条件での感度関数x(λ),y(λ),z(λ)を畳み込み、正規化をすることにより、三刺激値XYZを算出する。本実施形態においては、特に示さない限りCIE1931 2°観測者の観察条件で三刺激値XYZを算出するものとする。光源としては、CIE標準のD50光やD65光やF系光やA系光などを入力することができる。さらに、色コンバータCCは、三刺激値XYZにCIE標準の変換式を適用することにより、CIELAB表色系のL***値を算出する。このように、分光プリンティングコンバータRCと色コンバータCCを順次使用することにより任意のインク量セットにて印刷を行った場合のL***値を得ることができる。
さらに、色コンバータCCは、三刺激値XYZに対して色順応変換を行うことが可能となっている。例えば、D50光にて算出した三刺激値XYZにCIECAT02に基づく色順応変換式を適用することにより、例えばD50光の下での色の見えを、D65光の対応色で表現したL***値に変換することができる。なお、CIECAT02については、例えば"The CIECAM02 Color Appearance Model", Nathan Moroney et al., IS&T/SID Tenth Color Imaging Conference, pp.23-27, および、"The performance of CIECAM02", Changjun Li et al., IS&T/SID Tenth Color Imaging Conference, pp.28-31に記載されている。ただし、色順応変換としては、フォン・クリースの色順応予測式などの他の任意の色順応変換を用いることも可能である。この色順応変換によって得られたL***値をCVL1→Lsと表記するものとする。この下付き文字「L1→Ls」は、光源L1の下での色の見えを、標準光源Lsの対応色で表現したL***値であることを意味している。色コンバータCCは、少なくとも2以上の比較用光源L1,L2の下での見えを、標準光源Lsの対応色で表現した色彩値CVL1→Ls,CVL2→Lsを求めるとともに、これらに基づいて色恒常性指数CIIを算出する。色恒常性指数CIIは、例えば下記の式(4)によって算出することができる。
Figure 2008259169
色恒常性指数CIIについては、Billmeyer and Saltzman's Principles of Color Technology, 3rd edition, John Wiley & Sons, Inc, 2000, p.129,p. 213-215を参照。なお、(4)式の右辺は、CIE1994年色差式において、明度と彩度の係数kL,kCの値を2に設定し、色相の係数kHの値を1に設定した色差ΔE*94(2:2)に相当する。CIE1994年色差式では、(4)式の右辺の分母の係数SL,Sc,SHは以下の(5)式で与えられる。
Figure 2008259169
なお、色恒常性指数CIIの算出に使用する色差式としては、他の式を用いることも可能である。色恒常性指数CIIは、あるカラーパッチを第1と第2の異なる観察条件下で観察したときの色の見えの差として定義されている。従って、印刷したときに色恒常性指数CIIが小さくなるインク量セットは、異なる観察条件での色の見えの差が小さいという点で好ましい。また、色彩値CVL1→Ls,CVL2→Lsは、同一の標準観察条件におけるそれぞれの対応色の測色値なので、それらの色差である色恒常性指数CIIは色の見えの違いをかなり正確に表現する値となる。次に、粒状性コンバータGCおよびその準備について説明する。
A−3.粒状性コンバータ
図12は、粒状性コンバータGC準備処理の流れを示している。同図において、ステップS200においては、粒状性評価用インク量セットを多数(N個)準備する。粒状性評価用インク量セットは、インク量空間に均等に存在する格子点上のものを準備してもよいし、実際に粒状性評価用インク量セットにて印刷を行った場合の測色色空間において均等に存在するものを準備してもよい。さらに、無彩色や記憶色等の特定の色域において重点的に準備するようにし、粒状性低下の要求が比較的大きい色域の粒状性の予測を正確に行うようにしてもよい。粒状性評価用インク量セットが準備できるとステップS210にて粒状性評価用インク量セットに基づいてカラーパッチをプリンタ20にて印刷させる。ここにおけるカラーパッチの印刷は、上述した分光プリンティングモデルコンバータ準備処理のステップS130と同様の手順で行うことができる。ただし、分光プリンティングモデルコンバータ準備処理にてカラーパッチが印刷される第1代表点と粒状性評価用インク量セットは異なるインク量セットであるため、個別にカラーパッチを印刷する必要がある。むろん、第1代表点と粒状性評価用インク量セットとが共通する部分については、カラーパッチを共用することも可能である。
ステップS215においては、カラーパッチをスキャナ40によってスキャンする。ここでは、プリンタがカラーパッチを印刷したときの解像度よりも高解像度でスキャンを行う。このようにすることにより、各カラーパッチにおけるインクドットの分布状態を詳細に把握することが可能な画像データを得ることができる。ステップS220においては、スキャンした画像データを印刷媒体上における明度L*分布の画像データL(x,y)に変換する(x,yは印刷媒体上における横および縦の座標を意味し、x,yで特定される画素をサブ画素と表記するものとする。)。次のステップS225から粒状性指数GIを算出する処理を開始する。粒状性指数GIは、ある印刷物を観察者が視認したときに、その観察者が感じる粒状感(あるいはノイズの程度)であり、粒状性指数GIが小さい程、観察者が感じる粒状感は小さくなる。本実施例では、粒状性指数GIが以下の(6)式で定義されるものとする。
Figure 2008259169
GIについては、例えば、Makoto Fujino,Image Quality Evaluation of Inkjet Prints, Japan Hardcopy '99, p.291-294を参照。なお、(6)式のaLは明度補正項、WS(u)は画像のウイナースペクトラム、VTFは視覚の空間周波数特性、uは空間周波数である。
図13は実際に粒状性指数GIを算出する様子を説明している。本実施形態において、粒状性指数GIは印刷画像の粒状性を画像の明度の空間周波数(cycle/mm)特性で評価する。そのために、まず図13の左端に示す明度のサブ画素平面における空間分布L(x,y)に対してFFT(Fast Fourier Transformation)を実施する(ステップS230)。図13においては得られた空間周波数のスペクトルをS(u,v)として示している。なお、スペクトルS(u,v)は実部Re(u,v)と虚部Im(u,v)とからなり、S(u,v)=Re(u,v)+jIm(u,v)である。このスペクトルS(u,v)は上述したウイナースペクトラムに相当する。
ここで、(u,v)は(x,y)の逆空間の次元を持つが、本実施例において(x,y)は座標として定義され、実際の長さの次元に対応させるにはスキャナ40のスキャン解像度等を考慮しなければならない。従って、S(u,v)を空間周波数の次元で評価する場合も次元の変換が必要である。そこで、まず、座標(u,v)に対応した空間周波数の大きさf(u,v)を算出する。すなわち、主走査方向の最低周波数euはX解像度/25.4,副走査方向の最低周波数evはY解像度/25.4と定義される。なお、X解像度,Y解像度はスキャナ40がスキャンした際の解像度である。なお、ここでは1インチを25.4mmとしている。各走査方向の最低周波数eu,evが算出されれば、任意の座標(u,v)における空間周波数の大きさf(u,v)は((eu・u)2+(ev・v)2))1/2として算出することが可能になる。
一方、人間の目は、空間周波数の大きさf(u,v)に応じて明度に対する感度が異なり、当該視覚の空間周波数特性は、例えば、図13の中央下部に示すVTF(f)のような特性である。この図13におけるVTF(f)はVTF(f)=5.05×exp(−0.138・d・π・f/180)×(1−exp(−0.1・d・π・f/180))である。なお、ここでdは印刷物と目の距離でありfは上記空間周波数の大きさである。このfは上述した(u,v)の関数として表現されているので、視覚の空間周波数特性VTFは(u,v)の関数VTF(u,v)とすることができる。
上述のスペクトルS(u,v)に対してこのVTF(u,v)を乗じれば、視覚の空間周波数特性を考慮した状態でスペクトルS(u,v)を評価することができる。また、この評価を積分すればサブ画素平面全体について空間周波数を評価することができる。そこで、本実施例においては、ステップS235〜S255の処理で積分までの処理を行っており、まず、(u,v)を双方とも“0”に初期化し(ステップS235)、ある座標(u,v)での空間周波数f(u,v)を算出する(ステップS240)。また、この空間周波数fにおけるVTFを算出する(ステップS245)。
VTFが得られたら、当該VTFの2乗とスペクトルS(u,v)の2乗とを乗じ、積分結果を代入するための変数Powとの和を算出する(ステップS250)。すなわち、スペクトルS(u,v)は実部Re(u,v)と虚部Im(u,v)とを含むので、その大きさを評価するため、まず、VTFの2乗とスペクトルS(u,v)の2乗とによって積分を行う。そして、座標(u,v)のすべてについて以上の処理を実施したか否かを判別し(ステップS255)、全座標(u,v)について処理を終了したと判別されなければ、未処理の座標(u,v)を抽出してステップS240以降の処理を繰り返す。なお、VTFは図13に示すように空間周波数の大きさが大きくなると急激に小さくなってほぼ”0”となるので、座標(u,v)の値域を予め所定の値以下に制限することにより必要充分な範囲で計算を行うことができる。
積分が終了したら、Pow1/2/全画素数を算出する(ステップS260)。すなわち、変数Powの平方根によって上記スペクトルS(u,v)の大きさの次元に戻すとともに、全画素数で除して規格化する。この規格化により、入力画像の画素数に依存しない客観的な指数(図12のInt)を算出している。本実施形態においては、さらに、印刷物全体の明度による影響を考慮した補正を行って粒状性指数GIとしている。すなわち、本実施形態においては、空間周波数のスペクトルが同じであっても印刷物全体が明るい場合と暗い場合とでは人間の目に異なった印象を与え、全体が明るい方が粒状性を感じやすいものとして補正を行う。このため、まず、全画素について明度L(x,y)を足し合わせ、全画素で除することにより、画像全体の明度の平均Aveを算出する(ステップS265)。
そして、画像全体の明るさによる補正係数a(L)をa(L)=((Ave+16)/116)0.8と定義し、この補正係数a(L)を算出(ステップS270)するとともに上記Intに乗じて粒状性指数GIとする(ステップS275)。なお、補正係数a(L)は、上述した明度補正項aLに相当する。以上の処理によって上記の(6)式を具体的に演算したこととなる。補正係数としては、明度の平均によって係数の値が増減する関数であればよく、他にも種々の関数を採用可能である。むろん、粒状性指数GIを評価する成分は明度成分に限られず、色相、彩度成分を考慮して空間周波数を評価してもよいし、色彩値として、明度成分,赤−緑成分,黄−青成分を算出し、それぞれをフーリエ変換した後、各色成分ごとに予め定義された視覚の空間周波数特性を乗じて粒状性指数GIを算出してもよい。
以上説明したステップS205〜S275の処理によって、粒状性評価用インク量セットに応じて実際に印刷したカラーパッチの粒状性が粒状性指数GIとして定量化できたこととなる。ステップS280においては、各粒状性評価用インク量セットと粒状性指数GIとの対応関係をHDD11に学習データCD2として記憶する。ステップS290においては、任意のインク量セットにて印刷を行った場合の粒状性指数GIを予測するニューラルネットワークNNGを学習データCD2による学習によって作成する処理を行う。ここにおけるニューラルネットワークNNGの学習についてもA−4節において詳細に説明する。
図14は、ステップS290にて学習させたニューラルネットワークNNGを示している。同図において、各インクのインク量dc,dm,dy,dk,dlc,dlmがニューラルネットワークNNGの入力層に入力可能となっており、出力層では粒状生成数GIを出力することが可能となっている。このような、ニューラルネットワークNNGが準備できれば、任意のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を粒状生成数GIにコンバートすることができる。次に、ニューラルネットワークNNRおよびニューラルネットワークNNGの学習について説明する。ニューラルネットワークNNRとニューラルネットワークNNGは、出力層が異なるものの、学習手法としてほぼ同様のものを適用することができるため、ここではニューラルネットワークNNGを例に挙げて説明する。
A−4.ニューラルネットワークの学習:
図15は粒状性のニューラルネットワーク(NNG)作成処理(図12のステップS290)の流れを示している。ステップS300においては、ニューラルネットワークNNGの構造を決定する各パラメータの初期設定を行う。ニューラルネットワークNNGは、入力層が任意のインク量セットに相当するインク量ベクトルdj=(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm),(j=1〜6=C,M,Y,K,lc,lm)となる。一般に、ニューラルネットワークの入力値および出力値は所定の値域に正規化されるため、入力値としてのインク量ベクトルdj=(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)も正規化しておくことが望ましい。出力層は粒状性指数GIであり、粒状性指数GIも所定の値域で正規化されて出力される。
本実施例のニューラルネットワークNNGは3層構造であり、1層の中間層が設定され、その中間層を構成する中間ユニットの数を任意に設定することができる。中間ユニットUi(i=1〜I)と表記するものとすると、ステップS300では中間ユニットUiの全数I(例えば、I=23,18。)が設定される。一般に、教師信号の数(学習データCD2におけるインク量セットと粒状性指数GIとの対応関係の数)に比して中間ユニットUiの数が多いとオーバーフィッティングの傾向が強く、教師信号の数に比して中間ユニットUiの数が少ないとアンダーフィッティングの傾向が強くなるため、図12のステップS200にて設定した粒状性評価用インク量セットの個数Nを勘案して適度な中間ユニット(パーセプトロン)Uiの全数Iを設定することが望ましい。
各中間ユニットUiの値は下記(7)式によって表わされるものとする。
Figure 2008259169
上記の(7)式において各中間ユニットUiは各インク量Ijに対して固有の重みW1 ijを有しており、この重みW1 ijによって各インク量Ijを重みづけて線形結合することにより得られる。また、各中間ユニットUiは固有のバイアスb1 iを有しており、同バイアスb1 iが各インク量Ijの線形結合に加算される。ステップS300では、すべての重みW1 ijとバイアスb1 iが初期設定される。初期段階では重みW1 ijとバイアスb1 iはどのように決めてもよく、例えば0を度数平均とした正規分布状に重みW1 ijとバイアスb1 iを分散させてもよい。
最終的に得られる粒状性指数GIは下記の(8)式によって表されるものとする。
Figure 2008259169
上記の(8)式において粒状性指数GIは各中間ユニットUiに対して固有の重みW2 iを有しており、この重みW2 iによって各中間ユニットUiからの出力値Ziを重みづけて線形結合することにより得られる。同様にバイアスb2が加えられる。ステップS310では、各重みW2 iとバイアスb2が初期設定される。なお、中間ユニットUiと出力値Ziとの関係は下記の(9)式の伝達関数で表すことができる。
Figure 2008259169
伝達関数は微分可能な単調増加連続関数であればよく、線形関数も適用することができる。本実施形態では、出力に非線形性を持たせるために非線形のハイパボリックタンジェント関数を設定する。むろん、同質の関数としてシグモイド関数を使用することもできる。ステップS300では、すべての重みW2 iとバイアスb2も初期設定される。重みW2 iとバイアスb2についても初期段階ではどのように決めてもよく、ここでも0を度数平均とした正規分布状に重みW2 iとバイアスb2を分散させてもよい。以上のようにして各パラメータを初期設定することにより、ニューラルネットワークNNGの構造の概要が決定されたこととなる。ただし、各パラメータは適当に設定しただけであるため、これらを学習データCD2によって学習させ最適化させる必要がある。
そこで、ステップS310においては各パラメータの最適化を行う。ここでは、誤差逆伝搬(error back propagation)法によって各パラメータW1 ij,b1 i,W2 i,b2の最適化を行う。誤差逆伝搬法では、学習データCD2における入力(粒状性評価用インク量セット)に対する出力(粒状性指数GI)と、学習中のニューラルネットワークNNGに粒状性評価用インク量セットを入力したときに出力される粒状性指数GINNとの誤差を順次前段階の層に伝搬させることにより、各層のパラメータを順次決定していく。
一方、分光反射率R(λ)の予測を行うニューラルネットワークNNRの学習においては、学習データCD1における入力(属性3,4aの第1代表点に対応するインク量セット)に対する出力(分光反射率R(λ))と、学習中のニューラルネットワークNNRに属性3,4aの第1代表点に対応するインク量セットを入力したときに出力される分光反射率RNN(λ)との誤差を順次前段階の層に伝搬させることにより、各層のパラメータを順次決定していく。
最適化の基本的な方針としては、上述の誤差を極小化させるようにパラメータW1 ij,b1 i,W2 i,b2を修正することにより、ニューラルネットワークNNGにて予測した粒状性指数GINNが学習データCD2に規定された粒状性指数GIに近い値となるようにする。ところが、この方針に徹すると、学習データCD2に規定された粒状性指数GIがノイズを含む場合、ノイズについてもニューラルネットワークNNGの出力にて再現されてしまう。すなわち、オーバーフィッティングとなってしまう。そこで、オーバーフィッティングを抑止するために下記の(10)式の評価関数Eを用意する。
Figure 2008259169
そして、最適化対象のパラメータpを変動させつつ評価関数Eをパラメータpによって偏微分することにより同評価関数Eの勾配を求め、その勾配の絶対値が最も小さくなるパラメータpの値を最適化後のパラメータpとする(勾配法)。これにより、最適化対象のパラメータpの変動において最も評価関数Eが小さくなるパラメータpを特定することができる。なお、パラメータW1 ij,b1 i,W2 i,b2のうち最適化対象のパラメータをパラメータpと表記するものとし、最適化対象のパラメータpは出力から近い順に順次設定される。一通りすべてのパラメータW1 ij,b1 i,W2 i,b2が最適化されると、同様の処理を所定回数または評価関数Eが所定の閾値を下回るまで繰り返す。これにより、パラメータW1 ij,b1 i,W2 i,b2間の交互作用も反映させつつ、評価関数Eを徐々に小さく収束させていくことができる。
ところで、EDは、粒状性指数GINN,GIの誤差を評価するための誤差関数であり、下記の(11)式によって表される。
Figure 2008259169
すなわち、すべての粒状性評価用インク量セット(nは粒状性評価用インク量セット番号であり、n=1〜Nとする。)についての粒状性指数GINN,GIの2乗誤差によって誤差関数EDが表される。誤差関数EDが含まれる評価関数Eを最小化させることにより、ガマットを網羅するあらゆるインク量セットについてカラーパッチの実評価により得られた学習データCD2の粒状性指数GIとニューラルネットワークNNGにて予測する粒状性指数GINNとのずれを最小化させることができる。なお、所定回数最適化を繰り返しても評価関数Eが所望する閾値を下回らない場合には、中間ユニットUiの数Iを増加させて、フィッティング能力を向上させてもよい。逆に、異常に少ない最適化回数でも評価関数Eが所望する閾値を下回った場合には、中間ユニットUiの数Iを減少させて、フィッティング能力を抑制してもよい。
一方、EWはニューラルネットワークNNGにて予測した粒状性指数GINNが実評価に基づく学習データCD2の粒状性指数GIにオーバーフィッティングすることを抑止するための抑止関数であり、下記の(12)式によって表される。
Figure 2008259169
上記(12)式においては最適化対象のパラメータpsの2乗和によって抑止関数EWが表される。なお、添え字s(s=1〜S)は同種のパラメータpの数を意味し、例えば重みW2 iが最適化対象のパラメータpとされた場合には、i(i=1〜I)がs(s=1〜S)に相当する。上記(12)式によれば、抑止関数EWを含む評価関数Eを最小化させることにより、パラメータpsを0に拘束させることができる。NNにおいて重みW1 ij,W2 iの絶対値が大きくなると、出力される粒状性指数GINNの変動曲線の屈曲が急峻となる。このような場合、ノイズを含む異常な教師信号(学習データCD2の粒状性指数GI)の影響を受けている可能性が高い。従って、抑止関数EWによって重みW1 ij,W2 iを0に拘束させることにより、粒状性指数GINNの屈曲を平滑化し、ノイズを含む学習データCD2の粒状性指数GIに起因するオーバーフィッティングを抑止することができる。
ここで、上記の(10)式においてα,βは評価関数Eにおける誤差関数EDと抑止関数EWとの重みを調整する係数(ハイパーパラメータ)であると捉えることができる。ハイパーパラメータα,βは下記の(13)式と(14)式で与えられる。
Figure 2008259169
Figure 2008259169
なお、上記(13)式と上記(14)式におけるγは下記(15)式によって表される。
Figure 2008259169
なお、上記の(15)式のλsは、誤差関数EDを最適化対象のパラメータpsで2次微分したS行×S列のヘシアン行列(hessian matrix)の固有値である。この固有値λsはパラメータpsに関する誤差関数EDの傾き変動を反映させたものであるということができる。誤差関数EDの傾き変動が大きい場合に、ハイパーパラメータαが大きくなり、抑止関数EWの寄与が大きくされる。反対に、誤差関数EDの傾き変動が小さい場合に、ハイパーパラメータβが大きくなり、誤差関数EDの寄与が大きくされる。
すなわち、ニューラルネットワークNNGにて予測した粒状性指数GINNが実評価による学習データCD2の粒状性指数GIに対して急激に追従できたり、追従できなかったりする場合には、その周辺の学習データCD2の粒状性指数GIが異常(ノイズの影響大)である可能性が高く、その場合には抑止関数EWの重みを増加させる。これにより、異常な粒状性指数GIに対して無理にフィッティングすることが防止でき、平滑性の高いニューラルネットワークNNGの出力を得ることができる。なお、ハイパーパラメータα,βはある程度パラメータの最適化が進んだところで、更新させることが望ましい。
以上のようにして各パラメータW1 ij,b1 i,W2 i,b2,Iが設定できると、ニューラルネットワークNNGの構造が確定し粒状性コンバータGCの準備が完了することとなる。一方、分光反射率R(λ)を予測するニューラルネットワークNNRについても同様に構造を最適化させていくことができる。ただし、ニューラルネットワークNNRの出力は各波長の分光反射率R(λ)によって構成されるため、各波長についての誤差を平均したもの等を誤差逆伝搬させることとなる。これにより、各波長に関する分光反射率R(λ)の予測が全体的に精度よく行われるようにニューラルネットワークNNRを構築することができる。
B.ルックアップテーブルの作成
以上においては、印刷結果予測装置としての各種コンバータRC,CC,GCおよびその準備について説明したが、以下においては各種コンバータRC,CC,GCを利用してルックアップテーブルを作成すし、当該作成したルックアップテーブルを用いて色変換を実行するルックアップテーブル作成装置および印刷制御装置について説明する。なお、本明細書においてルックアップテーブルをLUTとして略記する場合もある。
図16は、本発明のルックアップテーブル作成装置が具体的に実現されるコンピュータ110の構成を示している。同図において、コンピュータ110はHDD111とCPU112とRAM113等のハードウェア資源を有しており、これらにおいてプログラムデータ111aに準じた処理が実行可能となっている。コンピュータ110では、各コンバータRC,CC,GCが利用可能となっている。ここでは、各コンバータRC,CC,GCを使用することができればよく、上述した各コンバータRC,CC,GCを準備するための手段までも具備する必要はない。分光プリンティングモデルコンバータRCであれば、セル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルによる予測アルゴリズムと、当該モデルにおいて使用する各ノードの分光反射率R(λ)を与える分光反射率データDが変換部RC2(第2変換手段)にて使用可能であればよい。粒状性コンバータGCであれば、ニューラルネットワークNNGが使用可能であればよい。むろん、コンピュータ10とコンピュータ110が同一のコンピュータとし、各コンバータRC,CC,GCの準備と利用を一貫して行ようにしてもよい。
コンピュータ110においては各コンバータRC,CC,GCのほかにLUT作成部LMが実行されており、LUT作成部LMがLUTを作成する手段を具体的に実現する。LUT作成部LMは、初期LUT生成部LM1と評価関数設定部LM2と平滑程度算出部LM3と最適化部LM4とLUT生成部LM5とから構成されている。以下、各モジュールLM1〜LM4が実行するプロファイル作成処理の詳細をフローに基づいて説明する。
図17は、プロファイル作成処理の流れを示している。ステップS400においては、初期のインクプロファイルIPを作成する。なお、インクプロファイルIPは、絶対色空間であるCIELAB色空間(L***)とインク量空間であるCMYKlclm空間(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)との対応関係を複数の代表的な格子点について規定したLUTである。初期のインクプロファイルIPの作成においては、例えば上述した有効領域のなかから173組のランダムなインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を生成する。この173組のインク量セットは、本発明のLUT用インク量セットの初期値であり、後述する処理によって最適化されていく。なお、初期のLUT用インク量セットは、最終的に最適化されるため、初期の段階においてどのように生成してもよい。
次に、ステップS410にて、評価関数設定部LM2が評価関数を設定する。すなわち、後述する最適化の指針を設定する。インクプロファイルIPは、絶対色空間であるCIELAB色空間とインク量空間との対応関係を有限数の格子点について規定するものであるため、将来的に補間処理によって格子点以外の対応関係が予測されることとなる。一般に、各色空間で整然と並んでいる格子点の方がその間に位置する色を補間演算によって算出する際に空間の局所的位置によって補間精度を大きく変動させることなく補間を行うことができる。従って、本実施形態における最適化の指針として格子点配置をCIELAB色空間にて平滑化する指標を採用することで、インクプロファイルIPの作成時および作成後の色変換時に高精度に補間演算を実施することが可能になる。この結果、トーンジャンプの発生を抑え、滑らかに階調が変化する印刷物を得ることが可能なインクプロファイルIPを作成することが可能になる。
また、インクプロファイルIPにおいては、できるだけ広い色再現性を実現するためにプリンタ20が当該インクセット(CMYKlclm)にて再現可能な色再現ガマットの全体について格子点が分布すべきである。従って、本実施形態における最適化の指針として色再現ガマットをCIELAB色空間にて確保する指標を採用することで、広い色再現性を実現可能なインクプロファイルIPを実現することができる。以上の指針によって、格子点のCIELAB色空間における最適な分布を指定することができる。
ところが、CIELAB色空間において最適な格子点を定めたとしても、インクプロファイルIPにて当該格子点に対応するインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を一意に定めることができない。インクプロファイルIPは、絶対色空間であるCIELAB色空間とインク量空間であるCMYKlclm空間との対応関係を規定したものであるが、CIELAB色空間とCMYKlclm空間の対応関係は一義的な関係にあるものではないからである。すなわち、CIELAB色空間にて一のL***値を定めたとしても、ある光源下で当該L***値が再現可能な印刷結果を実現するインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を一意に定めることはできない。例えば、KインクとCMYインクは分版可能な関係にあるため、ある光源において分版比率を変更しても同一のL***を再現することができる。CインクとlcインクやMインクとlmインクの関係についても同様である。
従って、CIELAB色空間において最適な格子点を定めると同時に、当該格子点に対応するインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)も最適化させていく必要がある。例えば、KインクとCMYインクとの分版比率はCIELAB色空間におけるL***値を定めても一意に定めることができないが、ハイライト領域において濃いKインクを発生させると粒状性が目立つこととなる。従って、粒状性の改善を最適化の指針とすれば、ハイライト領域のL***値に対してはdk=0となるインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)に最適化させることができる。逆に、KインクとCMYインクとの分版比率はCIELAB色空間におけるL***値を定めても一意に定めることができないが、分光反射率がフラットでないCMYインクによるコンポジットグレーを多用すれば、色の光源依存性が問題となる。そのため、色恒常性の改善を最適化の指針としても、インクプロファイルIPの格子点を最適化すべきである。さらに、インク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)の大きさを全体的に小さくする指針を適用すれば、インクのランニングコストの面で最適なインクプロファイルIPを作成することができる。
以上のように、最適なインクプロファイルIPを作成するためには様々な要素を考慮して格子点の最適化を行なうのが好ましく、すべての要素を考慮して最適な分版規則を設定することは困難である。従って、本実施形態では、これらの要素を同時に評価することが可能な評価関数Epを上述した指針に基づいて設定する(ステップS410)。具体的には、下記の式(16)により評価関数Epを設定する。また、評価関数Epを算出する際に使用する光源も設定する。
Figure 2008259169
上記の(16)式において、評価関数Epは5個の項をw1〜w4の重み係数によって加算した値であり、各項がそれぞれ上述した格子点を選択する指針に基づいて設定されている。(16)式の第1項は、上述した粒状性コンバータGC(ニューラルネットワークNNG)によって得られる粒状性指数GIを最大値で除算することによって正規化し、所定の重み係数w1を乗算したものとなっている。なお、ψはインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を表し、評価関数Epの添え字p(p=1〜173)は注目する格子点の識別符号を示している。粒状性指数GIは小さい方が良好な画質となるため、(16)式の第1項が小さくなるほど最適であるといえる。
(16)式の第2項は、色コンバータCCによって得られる色恒常性指数CIIを最大値で除算することによって正規化し、所定の重み係数w2を乗算したものとなっている。色恒常性指数CIIは、任意のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を分光プリンティングモデルコンバータRCに入力することにより得られる分光反射率R(λ)をさらに色コンバータCCによって変換することにより得られるものであり、ψの関数であるということができる。(16)式の第3項は、平滑程度算出部LM3によって得られる平滑程度評価指数SIを最大値で除算することによって正規化し、所定の重み係数w3を乗算したものとなっている。色恒常性指数CIIは小さい方が良好な画質となるため、(16)式の第2項が小さくなるほど最適であるといえる。なお、色コンバータCCが色恒常性指数CIIを算出する光源はステップS410にて設定されている。例えば、比較用の光源L1,L2をD50光,F11光として標準光源LsをD65光と設定されている。
図18は、平滑程度評価指数SIを模式的に説明している。同図において、○はCIELAB空間における複数の格子点の位置を示し、●は当該格子点のうち注目する格子点(評価関数Epの算出対象の格子点)を示している。注目する格子点の位置ベクトルをLpとし、当該格子点に隣接する6個の格子点の位置ベクトルをL a1〜L a6とすると、平滑程度評価指数SIは下記の式(17)によって表される。
Figure 2008259169
平滑程度評価指数SIは、注目する格子点から互いに逆向きのベクトルの距離が等しく、方向が正反対に近いほど値が小さくなるようにしてある。
図18(B)に示すように、隣接する格子点を結ぶ線(ベクトルL a1〜ベクトルLp〜ベクトルL a2が示す格子点を通る線等)が直線に近く、また格子点が均等に配置されるほどCIELAB色空間における格子点の配置が平滑化される傾向にあるので、式(17)に示す平滑程度評価指数SIが小さくなればなるほど、平滑程度が高くなるということができる。CIELAB色空間におけるL***値は、インク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を分光プリンティングモデルコンバータRCと色コンバータCCによって順次変換することにより得ることができる。色コンバータCCがL***値を算出する光源はステップS410にて標準光源Lsとして設定されたD65光を使用する。従って、上記の(17)式においてCIELAB色空間における位置ベクトルで特定される平滑程度評価指数SIはψの関数であるということができる。平滑程度評価指数SIは小さい方が高い補間精度が期待できるため、(16)式の第3項が小さくなるほど最適であるといえる。次に、(16)式の第4項は、注目する格子点の位置ベクトルLpと特定の色に近いか否かを示している。
図19は、プリンタ20の色再現ガマットをCIELAB色空間において示している。同図に示すように、プリンタ20の色再現ガマットは予めプリンタ20のハードウェア仕様やインクセットによって定められており、この範囲において色を再現することができる。従って、インクプロファイルIPの格子点をCIELAB色空間において色再現ガマットの全体に存在させる必要がある。そのために、一部の格子点については、色再現ガマットの外面上や稜線上や頂点に拘束する必要がある。色再現ガマットの外面上や稜線上や頂点が満たす色と格子点の色差ΔEを(16)式の第4項として加えて最適化を行うことによって、色再現ガマット全体に格子点を存在させることができる。なお、(16)式の第4項も、CIELAB色空間における位置ベクトルで特定されるため、ψの関数であるということができる。色再現ガマットの最外色と同じ色を示す格子点が含まれるほど、最大限広い色再現性を実現することができるため、(16)式の第4項が小さくなるほど最適であるといえる。
(16)式の第5項は、インク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)の合計値を正規化したものである。これにより、インクのトータルの消費量を加味した評価関数Epにより格子点の最適化を行うことができる。(16)式の第5項も、インク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)に依存し、ψの関数であるということができる。なお、(16)式におけるTDutyは記録媒体に付着可能なインク量の制限に対応した値である。インク量は少ないほどランニングコストが良好となるため、(16)式の第5項が小さくなるほど最適であるといえる。
以上説明したように評価関数Epを構成するすべての項は、インク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)の関数によって表されているとともに、小さくなるほど格子点が最適となる。従って、ステップS400においては、適当に初期の格子点を定めたに過ぎないため、各格子点に注目して評価関数Epを算出しても、評価関数Epは小さい値とならない。従って、ステップS420においては評価関数Epを極小化させるように最適化部LM4が各格子点の最適化を行う。どの項を重視して最適化を行うかは、上述した重み係数w1〜w5によって決定づけられる。従って、インクプロファイルIPの作成にあたり、どの項目を重視すべきかを設定し、それに基づいて重み係数w1〜w5を設定するのが望ましい。例えば、画質を犠牲にしてでもランニングコストのよいインクプロファイルIPを作成したいのであれば重み係数w5を大きく設定すべきである。また、色再現ガマットの外面に位置すべき格子点に対しては重み係数w4を大きくして、外面への拘束を強めるのが望ましい。
具体的にステップS420においては、各格子点について評価関数Epを極小化させるインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を順次算出していく。例えば、インク量空間における初期のインク量セットの位置から局所的にインク量セットを移動させ、その際に評価関数Epを極小化させるインク量セットを各格子点について算出していく。これにより、インク量空間における格子点の位置が評価関数Epを極小化させる方向に修正されたこととなる。さらに、修正後の位置から同様に局所的にインク量セットを移動させ、その際に評価関数Epを極小化させるインク量セットを各格子点について算出していく。以上のような処理を繰り返し(例えば200回)実行することにより、最終的には各格子点についての評価関数Epが極めて小さくなる格子点に最適化することができる。なお、以上の処理を規定回数行うことをもって格子点の最適化を完了させてもよいし、評価関数Epの値が所定の閾値を下回ることをもって格子点の最適化を完了させてもよい。
この最適化処理においては順次更新されるインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)について評価関数Epを算出することが必要となるが、その際に、上述した各コンバータRC,CC,GCおよび平滑程度算出部LM3を利用することによって、逐次、各インク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)に対応する分光反射率R(λ)や粒状性指数GIや色恒常性指数CIIや平滑程度評価指数SIが算出されることとなる。以上の最適化によれば、評価関数Epによって粒状性や色恒常性やランニングコストに優れるインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)の格子点が得られると同時に、当該格子点のCIELAB色空間における分布も最適なものとなる。式(16)の第3項および第4項にてCIELAB色空間における評価も評価関数Epの一部に取り入れているからである。本実施形態では、CIELAB色空間における格子点の最適化とインク量空間における格子点の最適化を同時に行うことができるため、処理の効率がよい。なお、本実施形態において、特開2006−197080号公報に開示された格子点の最適化の手法を適用することもできる。この場合、インク量空間にて評価関数Epを0とする方向の仮想的な力を各格子点に作用させ、当該力によってインク量空間における格子点の位置を定常状態に収束させればよい。
以上のようにして各格子点が最適化されると、ステップS430にて最適化された格子点のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)に対応したL***値を分光プリンティングモデルコンバータRCおよび色コンバータCC(D65光)によって算出する。そして、互いに対応するL***値とインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)との対応関係を記述したインクプロファイルIPをLUT生成部LM5が作成する。
ステップS440においては、インクプロファイルIPに基づいて色変換プロファイルCPを作成する。色変換プロファイルCPは、例えばsRGB色空間で各画素の色が表された画像データをプリンタ20におけるインク量空間の画像データに変換するLUTである。sRGB色空間はCIE標準に基づいてCIELAB色空間との対応関係(sRGBプロファイルSP)が定められているため、インクプロファイルIPに規定された各格子点のL***値によってsRGB色空間のRGB値とインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)との対応関係を特定し、LUT化することができる。その際に、補間処理が行われるが上述した最適化によってインクプロファイルIPが規定する格子点のCIELAB色空間における分布が平滑化されているため、高い補間精度を実現することができる。sRGBプロファイルSPについても上述した平滑程度評価指数SIによる最適化を行っておくことが望ましい(特開2006−197080号公報、参照。)。なお、CIELAB色空間におけるsRGB色空間のガマットとプリンタ20の色再現ガマットが異なるため、適宜ガマットマッピングが行われる。なお、ここではインクプロファイルIPにさらに別の絶対色空間であるsRGB色空間を結合するものを例に挙げたが、入力デバイスに依存した機器依存のソース色空間と、インクプロファイルIPとを結合させたデバイスリンクプロファイルを作成するようにしてもよい。色変換プロファイルCPが作成できると、以降は色変換部CMが色変換プロファイルCPを参照して、sRGB色空間で各画素の色が表された印刷画像データをインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)の画像データに変換することができる。さらに、インク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)の画像データに対してハーフトーン処理やマイクロウィーブ処理を順次実行することより、印刷データを生成することができる。生成した印刷データをプリンタ120に出力することにより、上記印刷画像データに基づく印刷を実行させることができる。
C.まとめと変形例:
A節において説明したように、本発明においては、インク量空間において偏りなく選択された少数の第1代表点についてのみカラーパッチの印刷と分光反射率R(λ)の測定を行う。その後、第1代表点のうち安定性のよい一部、および、インク量の軸上のものを学習データCD1として構築したニューラルネットワークNNRにより、第2代表点の分光反射率R(λ)を予測する。これにより、セル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルによる分光反射率R(λ)の予測に十分なノード(第1代表点+第2代表点)の分光反射率R(λ)を得ることができる。少数の第1代表点についてのみカラーパッチの印刷と分光反射率R(λ)の測定を行うため、印刷/測定の作業性を向上させることができ、効率よい印刷結果の予測やLUTの作成を実現することができる。また、学習データCD1とする第1代表点はインク量空間において偏りなく選択されているため、予測精度の悪い領域が生じるのが防止できる。さらに、学習データCD1とする第1代表点としてインク量の軸上の格子点が選択されているため、良好な予測結果を確保することができる。
以上においては、分光反射率を予測するものを例示したが、本発明の各手段によって他の印刷結果を予測することも可能である。例えば、印刷結果としての色を予測するようにしてもよい。第1代表点の分光反射率R(λ)が得られたら、所望の光源下の色を色コンバータCCによって特定し、特定した色を学習データとしてニューラルネットワークを作成する。そして、当該ニューラルネットワークにより第2代表点の色を特定し、第1代表点と第2代表点と色との対応関係を規定したLUTを作成し、さらにLUTによる補間予測(第2予測手段)によって任意のインク量セットに対応する色を予測することも可能である。また、本実施形態では粒状性指数GIをニューラルネットワークNNGのみによって予測するようにしたが、粒状性指数GIを2段階の予測によって予測するようにし、実際に印刷/スキャンする粒状性評価用インク量セットの個数を減少させることも可能である。むろん、色恒常性CIIを本発明の手法によって予測することも可能である。
また、各予測段階における予測手法もニューラルネットワークやセル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルに限られるものではない。むろん、分光反射率R(λ)を予測するのに際し、まずセル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルによって第2代表点の分光反射率R(λ)を予測し、その後、任意のインク量セットに対応する分光反射率R(λ)を第1代表点と第2代表点の分光反射率R(λ)に基づいて予測するようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態では、プリンタ20に接続されたコンピュータ10にて印刷結果を予測するものとしたが、プリンタ20や他の機器にて印刷結果を予測するようにしてもよい。プリンタ20が自己の印刷結果を予測することができれば、プリンタ20が単体でプリンタ20の使用状況に応じた色変換プロファイル等を作成することができる。また、上述した実施形態のように、各コンバータCR,CC,CGを準備したコンピュータ10と、色変換プロファイルCPを作成するコンピュータ110とが異なる場合、コンピュータ10にて準備した分光反射率データDを例えばインターネットを通じて分光反射率の測定環境のないコンピュータ110やプリンタに配信するようにしてもよい。これにより、コンピュータ10にて準備した分光反射率データDを受信した一般ユーザーが使用するコンピュータ110やプリンタが色変換プロファイルCPを作成することができる。
さらに、色変換プロファイルCPを作成する際に設定する評価関数Epはあくまでも一例であり、他の評価関数Epを使用することも可能である。例えば、平滑程度評価指数SIのみを有する評価関数Epを使用してもよい。さらに、画質を評価する指標として粒状性指数GIの色恒常性指数CII以外の他の画質を評価する指標を組み入れてもよい。また、国際公開WO2005/043884号のパンフレットのように、画質の最適化と、格子点の配置の平滑化を別の段階で行うようにしてもよい。この場合においても、分光プリンティングモデルコンバータRCを用いて任意のインク量セットで印刷したときの分光反射率R(λ)の予測が行われるため本発明を適用することができる。
印刷に使用するインクセットも上述したCMYKlclmに限られるものではない。例えばO(オレンジ)インクやR(レッド)インクやV(バイオレット)インクやG(グリーン)インクやlk,llk(ライトブラック)インクやDY(ダークイエロー)インク等で印刷を行う場合の分光反射率R(λ)を本発明の手法によって予測することも可能である。これらのインクはそれぞれ固有の分光反射率特定を有しているため、インク量セットに応じた分光反射率R(λ)の予測を行うことができる。また、多くのインクの種類を使用する印刷においては、分光反射率R(λ)の予測に必要なセル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルのノード数が乗数的に増加するため、本発明の効果は大きいものとなる。
本発明の印刷結果予測装置の構成を示すブロック図である。 分光プリンティングモデルコンバータ準備処理のフローチャートである。 第1代表点と第2代表点を設定する様子を説明する図である。 第1代表点設定処理の流れを説明するフローチャートである。 ポテンシャル分布の例を説明する図である。 ポテンシャル分布の例を説明する図である。 分光反射率データを示す図である。 ニューラルネットワークNNRを説明する図である。 分光ノイゲバウアモデルを示す図である。 セル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルを示す図である。 分光反射率から色を特定する様子を示す図である。 粒状性コンバータ準備処理のフローチャートである。 粒状性指数GIを算出する処理を示す図である。 ニューラルネットワークNNGを説明する図である。 ニューラルネットワーク作成処理のフローチャートである。 ルックアップテーブル作成装置の構成を示すブロック図である。 プロファイル作成処理のフローチャートである。 平滑程度評価指数を説明する図である。 プリンタの色再現ガマットを示すグラフである。
符号の説明
10,110…コンピュータ、11,111…HDD,12,112…CPU,20…プリンタ、30…分光反射率計、40…スキャナ、RC…分光プリンティングコンバータ、CC…色コンバータ、GC…粒状性コンバータ、D…分光反射率データ、CD1,CD2…学習データ。

Claims (11)

  1. 複数の種類のインクを記録媒体上に付着させて形成される印刷結果を予測する印刷結果予測方法であって、
    複数の種類のインクについてのインク量を軸としたインク量空間において複数の格子点を生成するとともに、当該格子点のなかから複数のものを上記インク量空間において偏りがないように選択し、それらを第1代表点として設定し、
    上記第1代表点に対応するインク量セットにて印刷を行い、その印刷結果を測定し、
    上記インク量空間において上記第1代表点とは異なる他の代表的な座標を第2代表点として設定し、
    上記第2代表点に対応するインク量セットにて印刷した印刷結果を上記測定による測定結果に基づいて予測し、
    任意のインク量セットにて印刷した印刷結果を、上記測定結果、および、上記予測による予測結果に基づいて予測することを特徴とする印刷結果予測方法。
  2. 上記第1設定手段は、上記インク量空間において過去に上記第1代表点として選択した上記格子点の付近の上記格子点が選択されないように制限することを特徴とする請求項1に記載の印刷結果予測方法。
  3. 上記第1設定手段は、上記インク量空間において過去に上記第1代表点として選択した上記格子点を最大のポテンシャルとしたポテンシャル分布を生成するとともに、上記インク量空間においてポテンシャルが小さい上記格子点を選択することを特徴とする請求項2に記載の印刷結果予測方法。
  4. 上記ポテンシャル分布では、過去に上記第1代表点として選択した上記格子点を最大のポテンシャルとして線形的または正規分布状に周囲のポテンシャルが低くなることを特徴とする請求項3に記載の印刷結果予測方法。
  5. 過去に上記第1代表点として選択した複数の上記格子点を最大のポテンシャルとしたポテンシャル分布が同一の上記格子点において重複するとき、重複したポテンシャル分布によるポテンシャルの和が当該格子点のポテンシャルとされることを特徴とする請求項3から請求項4のいずれか一項に記載の印刷結果予測方法。
  6. 過去に上記第1代表点として選択した複数の上記格子点を最大のポテンシャルとしたポテンシャル分布が同一の上記格子点において重複するとき、重複したポテンシャル分布によるポテンシャルのうち大きいものが当該格子点のポテンシャルとされることを特徴とする請求項3から請求項4のいずれか一項に記載の印刷結果予測方法。
  7. 上記第2代表点に対応するインク量セットにて印刷した印刷結果を予測するときの予測手法と、任意のインク量セットにて印刷した印刷結果を予測するときの予測手法は互いに異なることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷結果予測方法。
  8. 上記第2代表点に対応するインク量セットにて印刷した印刷結果を予測するときの予測手法は、上記測定結果によって学習を行ったニューラルネットワークを用いるものであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の印刷結果予測方法。
  9. 複数の種類のインクについてのインク量を軸としたインク量空間における代表的なインク量セットとそのインク量セットにて印刷を行った場合の色との対応関係を規定したルックアップテーブルを作成するルックアップテーブル作成方法であって、
    複数の種類のインクについてのインク量を軸としたインク量空間において複数の格子点を生成するとともに、当該格子点のなかから複数のものを上記インク量空間において偏りがないように選択し、それらを第1代表点として設定し、当該第1代表点に対応するインク量セットにて印刷したときの分光反射率を測定し、上記インク量空間において上記第1代表点とは異なる他の代表的な座標である第2代表点に対応するインク量セットにて印刷したときの分光反射率を、上記測定によって得られた分光反射率に基づいて予測し、さらに任意のインク量セットにて印刷した分光反射率を、上記測定によって得られた分光反射率、および、上記予測によって得られた分光反射率に基づいて予測し、当該予測した分光反射率に対して所望の光源を照射したときの色を予測する色予測方法を使用して、
    上記インク量空間において生成した複数の代表的なLUT用インク量セットにて印刷して所望の光源を照射したときの色を予測し、当該予測した色と上記LUT用インク量セットとの対応関係を規定したルックアップテーブルを作成することを特徴とするルックアップテーブル作成方法。
  10. 請求項9に記載の上記ルックアップテーブル作成方法によって作成されることを特徴とするルックアップテーブル。
  11. 請求項9に記載の上記ルックアップテーブル作成方法によって作成されたルックアップテーブルを用いて印刷画像データの色変換を実行することを特徴とする印刷制御装置。
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