以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1及び図2は、本発明の一実施形態にかかる紙幣処理装置1の外観構成を示す斜視図であり、図1は、通路形成部40と紙幣収納部20とを本体部2に装着した状態を示す図で、図2は、通路形成部40と紙幣収納部20の一部とを本体部2から前面方向に露出させた状態を示す図である。また、図3及び図4は、紙幣処理装置1の内部構成を示す概略断面図であり、図3は、図1のA−A部分の概略断面図で、図4は、図1のB−B部分の概略断面図である。紙幣処理装置1は、パチンコ台などの遊技台の台間に設置される台間機(図示せず)に取り付けられるものである。紙幣処理装置1は、略矩形の箱型に形成された本体部2と、本体部2の前面2aに配置された紙幣を挿入する紙幣挿入口4と、本体部2内に配置された紙幣収納部20と、紙幣収納部20に連結された通路形成部40とを備えており、本体部2と通路形成部40との間で紙幣挿入口4から紙幣収納部20に通じる紙幣通路5が形成されている。紙幣処理装置1は、紙幣挿入口4を台間機のフロントパネルに露出させて、本体部2の前面2aより後側の部分を台間機の内部に挿入して取り付けられる。なお、以下の説明では、前側又は前というときは、本体部2の前面2a側を指し、後側又は後というときは、本体部2の前面2aに対する後側を指す。
本体部2は、縦長の略長方形状に形成された前面2aと、一対の側面2b,2cとを備え、前面2aから後側に向かう方向を長手方向とする略直方体形状に形成されている。本体部2には、紙幣収納部20と通路形成部40とを装着する装着部3が形成されている。装着部3は、本体部2の前面2aから後側に向かって横長の略直方体形状に切り込まれた凹部からなる。装着部3は、本体部2の前面2aと、本体部2の側面2bとに開放されている。
図5は、紙幣収納部20を示す斜視図である。図1及び図5に示すように、紙幣収納部20は、装着部3の後部に装着される2面が開口したボックスからなる。すなわち、紙幣収納部20は、紙幣の外形に沿う横長の略長方形の箱型に形成されていて、その内部に紙幣が積層されて収納されるようになっている。紙幣収納部20は、本体部2の側面2bに対応する側に側壁面20bを有し、前端部20aと本体部2側の面とでその内部が開放されている。
紙幣収納部20には、収納された紙幣を保持する紙幣保持片(紙幣保持部)21が設けられている。紙幣保持片21は、紙幣収納部20の後端から本体部2側に突出する一の片21aと、一の片21aの先端から前側に延伸する他の片21bとが一体に形成されてなる。一の片21aは、紙幣収納部20に収納された紙幣の後端辺を保持し、他の片21bは、当該紙幣の本体部2側の面を保持する。また、紙幣収納部20の上下面の後端近傍には、上下に突出する突起23が形成されている。また、紙幣収納部20の上下面の前端近傍には、下記する回動機構27を構成する軸部26が形成されている。また、紙幣収納部20には、紙幣収納部20を開く際に操作する操作部20cが設けられている。操作部20cは、紙幣収納部20の側面に形成された開口部からなる。
次に、本体部2に対して紙幣収納部20を通路形成部40と共に該本体部2の前面の方向に移動させるスライド機構300について説明する。スライド機構300は、本体部2の側に設けられたアーム部材30と、該アーム部材30に係合するように紙幣収納部20の側に設けられた突起23と、その他これらに関連する各種の部材で構成される。図1及び図3に示すように、装着部3内の紙幣収納部20の上下には、一対のアーム部材30が設置されている。両アーム部材30は互いに対称な形状で、長手方向が前後方向に配置される棒状の部材である。アーム部材30には、図3に示すように、長手方向に沿うスリット状の溝部31が形成されている。溝部31の前側の部分は、上下に開口した貫通穴31aとなっている。また、図1に示すように、アーム部材30の後端の側面には、アーム部材30を操作するための突起状の操作部32が設けられている。また、図3に示すように、アーム部材30の後端の上面又は下面には、円柱状の突起34が形成されている。
装着部3内の各アーム部材30の上下には、コイルバネ35がそれぞれ設置されている。各コイルバネ35は、本体部2とアーム部材30との間に架けられている。アーム部材30は、コイルバネ35によって前側に付勢されている。また、図3に示すように、装着部3の上下面には、円柱状の突起9が形成されている。突起9は、アーム部材30の貫通穴31aに挿入される。これにより、アーム部材30は、突起9が貫通穴31a内を移動する範囲で、装着部3内を前後にスライド移動する。一方、アーム部材30の溝部31には、紙幣収納部20の突起23が挿入される。これにより、紙幣収納部20は、突起23が溝部31内を移動する範囲で、本体部2に対して(装着部3内を)前後にスライド移動する。通路形成部40は紙幣収納部20に連結されているため、紙幣収納部20に伴って通路形成部40が本体部2に対して(装着部3内を)前後にスライド移動する。
図6は、本体部2に設けられた挿入部37を示す図で、図1のE−E部分の概略断面図である。同図に示すように、本体部2の装着部3には、アーム部材30の突起34を挿入させる挿入部37が形成されている。挿入部37は、装着部3の後部の上下面に形成されている。挿入部37は、本体部2の側面2bから掘り込まれた入口部37aと、入口部37aの底部から前側に向かって直線状に延伸する係止部37bとを有する略L字型の凹部からなる。また、入口部37aの前側の内面は、側面2bから遠ざかるにつれて後側に傾斜する傾斜面37cになっている。
アーム部材30の突起34が、挿入部37の係止部37bに挿入されることで、アーム部材30の後端部が、本体部2の側面2bから離れる方向へ移動しないようになる。通路形成部40と紙幣収納部20とを前後に移動させるときは、アーム部材30が前後に移動する範囲で、突起34が係止部37b内だけを前後に移動し、入口部37aまでは後退しない。したがって、紙幣収納部20と通路形成部40とが装着部3に装着されているときや、これらが装着部3から前側に取り出されているときは、突起34が挿入部37から抜け出ることはない。
また、図3に示すように、本体部2と通路形成部40及び紙幣収納部20との間には、通路形成部40を装着部3内でロックする第1ロック機構81と、紙幣収納部20を装着部3内でロックする第2ロック機構85とからなるロック機構が設けられている。このロック機構によって、コイルバネ35の付勢力で装着部3から本体部2の前面の方向に移動しようとする通路形成部40と紙幣収納部20とが装着部3内でロックされる。換言すれば、スライド機構300にあっては、このロックが解除されたとき、本体部2に対して紙幣収納部20を通路形成部40と共に該本体部2の前面2aの方向に移動させることとなる。なお、ロック機構の構成及び動作は下記で詳細に説明する。
図7は、通路形成部40を示す図で、同図(a)は、通路形成部40の左側面を概略断面図にて示す図であり、同図(b)は、通路形成部40の概略右側面図である。また、図8は、紙幣回収の際に本体部2から前面方向に適量突出するように移動された通路形成部40と紙幣収納部20の一部とを示す斜視図である。通路形成部40は、本体部2の装着部3の前部に装着される略矩形の箱型の部材である。通路形成部40は、装着部3に装着された際に、その前面が本体部2の前面2a及び紙幣挿入口4の一部をなすようになっている。また、その際、本体部2側を向く通路形成面41が、紙幣通路5の一方の面を形成するようになっている。
通路形成部40は、紙幣収納部20の前端部20aに回動機構27で回動自在に連結されている。回動機構27は、図8に示すように、紙幣収納部20の軸部26と、通路形成部40に形成されて該軸部26に回転自在に係合する係合片42とで構成されている。回動機構27は、通路形成部40を紙幣収納部20に対して左右に回動させるようになっている。また、係合片42と紙幣収納部20との間には、コイルバネ25が架けられている。コイルバネ25の付勢力で、通常時は、図8(a)に示すように、通路形成部40が紙幣収納部20とほぼ平行になっていて、通路形成部40で紙幣収納部20の前端部20aがほぼ塞がれている。一方、図8(b)に示すように、通路形成部40を回動させると、紙幣収納部20の前端部20aが開放されるようになっている。
図9は、本体部2の一方の側面(装着部3が形成された側面)2bを示す側面図で、装着部3から紙幣収納部20と通路形成部40とを取り外した状態を示す図である。また、図10は、本体部2の他方の側面2cを示す側面図である。図9に示すように、装着部3の側面(底面)に相当する本体部2の側面部分は、紙幣通路5の面を形成する通路形成面3aになっている。通路形成面3aの前部には、紙幣通路5に沿って紙幣を搬送する一対の搬送ベルト11と、搬送ベルト11がそれぞれ懸架された一対の駆動プーリ12a及び従動プーリ12bが設置されている。図10に示すように、駆動プーリ12aには、シャフト13aと該シャフト13aに固定されたローラ13bとで回転を伝達する回転伝達機構13が接続されており、回転伝達機構13を介してモータ14の駆動力が駆動プーリ12aに伝達されて駆動プーリ12aが回転し、搬送ベルト11が送られるようになっている。
また、図9に示すように、装着部3の前部の上下面には、紙幣識別用のセンサー光を投光する複数の投光口51が設けられている。また、各投光口51に対応する位置には、投光口51へセンサー光を照射する発光素子52が設置されている。また、装着部3の前部の通路形成面3aには、投光口51から投光されたセンサー光を受光する受光素子53が設置されている。受光素子53は、紙幣通路5の幅方向と前後方向の複数の個所に配置されている。後述するように、投光口51から投光されたセンサー光は、受光素子53に受光されるように、通路形成部40内の導光部材58によって方向転換される。また、通路形成面3aには、紙幣識別用の磁気ヘッド54が設置されている。磁気ヘッド54は、紙幣通路5の左右両側近傍に一対設置されている。また、通路形成面3aには、紙幣通路5を通る紙幣の引き抜きを防止する引き抜き防止シャッター72が設置されている。引き抜き防止シャッター72の構成及び動作については、下記で詳細に説明する。
一方、図7(b)に示すように、通路形成部40の通路形成面41には、複数の従動ローラ61が設置されている。各従動ローラ61は、通路形成部40が装着部3に装着された際に、各搬送ベルト11に対向する位置に配置されている。また、通路形成面41には、一対のローラ55が設置されている。各ローラ55は、通路形成部40が装着部3に装着された際に、各磁気ヘッド54に対向する位置に配置されている。ローラ55は、紙幣通路5を通る紙幣を磁気ヘッド54に圧接させるものである。また、通路形成面41には、引き抜き防止シャッター72の先端が挿入される溝部62が形成されている。
また、通路形成部40の上下面には、本体部2の投光口51から投光された光が導入される導入口56が設けられ、通路形成面41には、導入口56から導入された光が導出される導出口57が設けられている。そして図7(a)に示すように、通路形成部40内には、導光部材58が設置されている。導光部材58は、導入口56から導入された光を導出口57へ導くための部材で、導入口56から導出口57に通じている。導光部材58は、透明又は半透明の合成樹脂製の部材からなる。各導光部材58は、各導入口56から上方又は下方に延伸し、その先で通路形成面41の方へ直角に屈曲して、各導出口57に至っている。
本体部2に設けられた発光素子52及び受光素子53と、通路形成部40に設けられた導光部材58とで、紙幣通路5を通る紙幣の有無、及び紙幣の表面の濃淡を検知する光センサーが構成されている。この光センサーでは、発光素子52から照射されたセンサー光が、通路形成部40の導入口56から導光部材58を介して導出口57へ導かれる。導出口57から出たセンサー光は、紙幣通路5を通る紙幣の面と直交する方向に紙幣通路5を横断して、受光素子53で受光される。一方、上記の磁気ヘッド54とローラ55とで、紙幣通路5を通る紙幣による磁気の変化を検出する磁気センサーが構成されている。上記の光センサーと磁気センサーとで、紙幣挿入口4からの紙幣の挿入、及び挿入された紙幣の正偽を判別する紙幣識別手段が構成されている。
また、図4に示すように、本体部2と通路形成部40との間に形成された紙幣通路5は、紙幣収納部20の入口である投入紙幣一時保留用のスペース200に略直線状に通じている。紙幣(投入紙幣)は紙幣通路5を通過する過程で正貨と判定されると、該紙幣の後端が紙幣通路5の搬送ベルト11と従動ローラ61との間で挟み込まれた状態で搬送停止される。この状態では、投入紙幣の大部分が投入紙幣一時保留用のスペース200内に入り込んでおり、後述するように該投入紙幣の両側縁が一対の紙幣案内ドラム101のスリット101aの間で保持され、その状態で一時保留される。この状態から投入紙幣を挿入口4に向けて返却する場合は、搬送ベルト11の回転方向を逆向きに駆動して投入紙幣一時保留用のスペース200にある紙幣を返却する。一方、投入紙幣の受け入れが確定すると、後述するように、一対の紙幣案内ドラム101の回転により、一時保留用スペース200で一時保留されていた紙幣が紙幣収納部20の方に(紙幣の面に垂直な方向に)押しやられ、該紙幣収納部20内に収納される(紙幣束Wの上に集積される)。なお、公知のように、紙幣(投入紙幣)が紙幣通路5を通過する過程で偽貨と判定されると、搬送ベルト11の回転方向を逆向きに駆動して紙幣挿入口4に向けて返却する。
ここで、紙幣通路5を通る紙幣の引き抜きを防止するシャッター機構70について説明する。図11は、シャッター機構70の構成及び動作を説明するための図で、(a),(c),(e)は各種の動作状態における図10のC−C部分の概略断面図、(b),(d),(f)はそれに対応する図10のD−D部分の概略断面図である。シャッター機構70は、図10及び図11に示すように、本体部2に回転自在に取り付けられたシャフト71と、シャフト71に固定された引き抜き防止シャッター72と、シャフト71を回転させるシャッターレバー73と、シャッターレバー73を移動させるシャッターソレノイド75を備えている。シャフト71は、通路形成面3aの裏面に設置され、その軸方向が前後方向に対して直交する上下方向に配置されている。引き抜き防止シャッター72は、シャフト71の周面から突出する突出片からなる。この引き抜き防止シャッター72は、通路形成面3aに設けた開口部15から紙幣通路5内に出没するようになっている。シャフト71は、図示しないコイルバネ(ねじりコイルバネ)などの付勢手段で、引き抜き防止シャッター72が紙幣通路5内に突出する方向に回転するように付勢されている。また、シャフト71の端部近傍には、シャッターレバー73を当接させる当接部71aが設けられている。
シャッターレバー73は、図11に示すように、その長手方向が前後方向に沿うように延びた細長い平板状の部材である。シャッターレバー73は、前後に移動可能に設置されている。また、シャッターレバー73には、長手方向の側方に突出する突出部73bが形成されている。突出部73bは、シャッターソレノイド75の可動芯に接続されている。したがって、シャッターソレノイド75によってシャッターレバー73は前後に移動される。また、シャッターソレノイド75と突出部73bとの間には、コイルバネ76が設置されている。コイルバネ76によって、シャッターレバー73はシャフト71から離れる方向に付勢される。また、シャッターレバー73の一方の端部73aは、シャフト71の当接部71aに当接するようになっている。一方、シャッターレバー73の他方の端部73cは、図9及び図10に示すように、本体部2に設けた開口部16から装着部3に突出している。このシャッターレバー73の端部73cに、装着部3内で移動するアーム部材30が当接するようになっている。
次に、シャッター機構70の動作について説明する。まず、図11(a)及び(b)に示す待機状態では、引き抜き防止シャッター72が、紙幣通路5に突出して紙幣通路5を閉鎖している。このとき、シャッターソレノイド75が作動しておらず、シャッターレバー73はコイルバネ76によってシャフト71から離れるように付勢されていて、シャフト71の当接部71aを押していない。この状態で、シャッターソレノイド75を作動させると、図11(c)及び(d)に示すように、シャッターレバー73がシャフト71に近づく方向に引かれ、シャッターレバー73の端部73aがシャフト71の当接部71aを押圧する。これにより、シャフト71が同図に示す時計回りに回転し、引き抜き防止シャッター72が紙幣通路5から退避する。シャッターソレノイド75のオン・オフ制御は、搬送ベルト11の駆動及び紙幣識別動作に連動させて行うのがよい。すなわち、挿入口4に紙幣が挿入されたことで搬送ベルト11の紙幣取込駆動が開始されたら、シャッターソレノイド75を作動して引き抜き防止シャッター72を紙幣通路5から退避させ、投入紙幣が正貨と判別された瞬間にシャッターソレノイド75をオフにして引き抜き防止シャッター72を紙幣通路5に突出させる。また、一時保留用スペース200に一時保留されていた紙幣を返却するために搬送ベルト11の返却駆動が開始されたら、シャッターソレノイド75を作動して引き抜き防止シャッター72を紙幣通路5から退避させる。
また、シャッターソレノイド75が作動しなくても、図11(e)及び(f)に示すように、アーム部材30が装着部3内で前側に移動すると、アーム部材30がシャッターレバー73に当接してこれを押圧する。すると、シャッターレバー73がシャフト71に近づく方向に移動し、シャッターレバー73の端部73aがシャフト71の当接部71aを押圧する。これにより、シャフト71が同図に示す時計回りに回転し、引き抜き防止シャッター72が紙幣通路5から退避する。なお、アーム部材30が装着部3内で前側に移動している間は、アーム部材30によって常にシャッターレバー73が前側に押されているので、引き抜き防止シャッター72が紙幣通路5から退避した状態が維持される。
次に、紙幣収納部20と通路形成部40とを装着部3内でロックするロック機構及びそのロックを解除するロック解除機構について説明する。図12は、ロック機構とロック解除機構とを示す図で、本体部2の側面2cの部分拡大図である。同図に示すように、ロック機構は、通路形成部40をロックする第1ロック機構81と、紙幣収納部20をロックする第2ロック機構85とからなる。第1ロック機構81は、本体部2に回転自在に取り付けられた第1ロック部材82を備えている。第1ロック部材82は、軸方向が前後方向に沿うように配置されたシャフト83の外周に、回転自在に取り付けられている。第1ロック部材82の周面には、小突起からなる第1ロック爪82aが形成されている。第1ロック爪82aは、第1ロック部材82の回動によって、装着部3の下面の開口部17(図9参照)から装着部3内に突出するようになっている。また、第1ロック部材82の周面の他の位置には、下記するロック解除レバー91の軸部91aを当接させる当接部82bが設けられている。
第2ロック機構85は、本体部2に回転自在に取り付けられた第2ロック部材86を備えている。第2ロック部材86は、第1ロック部材82よりも後側の位置に設置されている。第2ロック部材86は、第1ロック部材82を取り付けているシャフト83の後方の外周に回転自在に取り付けられている。第2ロック部材86の周面には、小突起からなる第2ロック爪86aが形成されている。第2ロック爪86aは、第2ロック部材86の回転によって、装着部3の下面の開口部18(図9参照)から装着部3に突出するようになっている。また、第2ロック部材86の周面の他の位置には、下記するロック解除レバー91をリンク係合(回転自在に係合)させるリンク係合部86bが設けられている。
第1ロック部材82は、シャフト83の外周に取り付けられたコイルバネ(ねじりコイルバネ)84によって、第1ロック爪82aが開口部17から突出するように付勢されている。一方、第2ロック部材86は、下記するロック解除レバー91を付勢するコイルバネ92の付勢力で、第2ロック爪86aが開口部18から突出するように付勢されている。
図13は、紙幣収納部20の一部と通路形成部40とを下側から見た斜視図である。同図に示すように、通路形成部40の下面には、第1ロック爪82aを係合させる第1係合部88が設けられている。第1係合部88は、通路形成部40の下面を略矩形状に窪ませた凹部からなる。一方、紙幣収納部20の下面には、第2ロック爪86aを係合させる第2係合部89が設けられている。第2係合部89は、紙幣収納部20の下面を略矩形状に窪ませた凹部からなる。第2係合部89の本体部2側の側面は切り欠かれている。なお、第1係合部88の本体部2側の側面は切り欠かれていない。
次に、ロック解除機構90について説明する。ロック解除機構90は、図12に示すように、第1ロック部材82と第2ロック部材86とを回動させるロック解除レバー(ロック解除部材)91と、ロック解除レバー91を移動させるロック解除ソレノイド93と、ロック解除レバー91を付勢するコイルバネ92とを備えている。ロック解除レバー91は、その長手方向が上下方向に配置された略棒状の部材で、上端が第2ロック部材86のリンク係合部86bにリンク係合されている。また、上端の側面には、円柱状の軸部91aが形成されている。軸部91aは、第1ロック部材82の当接部82bに当接するようになっている。一方、ロック解除レバー91には、下端部から長手方向に対して直角に突出する突出部91bが形成されている。この突出部91bに、ロック解除ソレノイド93の可動芯が接続されている。したがって、ロック解除ソレノイド93によって、ロック解除レバー91は上下に移動される。また、突出部91bとロック解除ソレノイド93との間には、コイルバネ92が介在している。コイルバネ92によって、ロック解除レバー91は下方に付勢されている。
図14は、第1ロック機構81を前後方向から見た部分拡大断面図であり、図15は、第2ロック機構85を前後方向から見た部分拡大断面図である。これらの図を用いて第1ロック機構81と第2ロック機構85とロック解除機構90の動作について説明する。まず、図14に示す第1ロック機構81では、通路形成部40が装着部3に装着されているとき、図14(a)に示すように、第1ロック爪82aが第1係合部88に係合して通路形成部40がロックされている。ロック解除ソレノイド93が作動していない時は、ロック解除レバー91がコイルバネ92で下方に付勢されているので、ロック解除レバー91の軸部91aが第1ロック部材82を押圧しない。したがって、通路形成部40のロックが維持される。その状態でロック解除ソレノイド93が作動すると、図14(b)に示すように、ロック解除レバー91が上方に移動され、第1ロック部材82の当接部82bが軸部91aで押圧されて、第1ロック部材82が同図に示す時計回りに回転される。これにより、第1ロック爪82aと第1係合部88との係合が外れ、第1ロック機構81のロックが解除される。
図15に示す第2ロック機構85では、紙幣収納部20が装着部3に装着されているとき、図15(a)に示すように、第2ロック爪86aが第2係合部89に係合して紙幣収納部20がロックされている。ロック解除ソレノイド93が作動していない時は、ロック解除レバー91がコイルバネ92によって下方に付勢されているので、紙幣収納部20のロックが維持される。その状態でロック解除ソレノイド93が作動すると、図15(b)に示すように、ロック解除レバー91が上方に移動され、第2ロック部材86が同図に示す時計回りに回転される。これにより、第2ロック爪86aと第2係合部89との係合が外れ、第2ロック機構85のロックが解除される。
上記のように、ロック解除ソレノイド93が作動していない時は、第1ロック部材82は、コイルバネ84の付勢力で通路形成部40をロックし、第2ロック部材86は、コイルバネ92の付勢力で紙幣収納部20をロックしている。一方、ロック解除ソレノイド93が作動すると、ロック解除レバー91によって、第1ロック部材82と第2ロック部材86とが同時に回動される。これにより、第1ロック機構81のロックと第2ロック機構85のロックとが同時に解除される。
また、第1ロック機構81は、第1ロック部材82とコイルバネ84とによって通路形成部40をロックし、第2ロック機構85は、第2ロック部材86とコイルバネ92とによって紙幣収納部20をロックしている。このように、第1ロック機構81と第2ロック機構85とは、互いに独立の機構によってそれぞれ通路形成部40と紙幣収納部20とをロックしている。加えて、ロック解除レバー91は、第2ロック部材86に対しては、回転自在に接続されているが、第1ロック部材82に対しては、ロック解除時に当接するだけで、接続されていない。これらにより、万一、紙幣収納部20内の紙幣を盗む目的などで、本体部2の前面2aから工具等の異物が挿入され、この異物で、紙幣挿入口4に近い第1ロック部材82が強制的に回動されて、そのロックが解除された場合でも、第1ロック部材82の回動によっては、第2ロック部材86は回動せず、また、ロック解除レバー91も移動しないので、第2ロック機構85のロックは解除されずに済む。したがって、たとえ第1ロック機構81のロックが不正に解除されても、それだけでは第2ロック機構85のロックは解除されないので、紙幣収納部20が装着部3から簡単に取り出されることを防止できる。よって、紙幣収納部20に収納された紙幣の防盗性が向上する。
また、通路形成部40をロックする第1ロック機構81と、紙幣収納部20をロックする第2ロック機構85の二段のロック機構を設けたことで、通路形成部40を装着部3に装着した際に、通路形成部40の本体部2に対する位置決めの精度が高くなるという効果が望める。特に、紙幣処理装置1の紙幣識別手段である光センサーは、発光素子52及び受光素子53が本体部2に設けられており、導光部材58は通路形成部40に設けられているため、通路形成部40の本体部2に対する位置決めが正確になされていないと、センサー光の光軸がずれてしまい、発光素子52から出たセンサー光が受光素子53で正確に受光されず、光センサーによる紙幣の正確な検知に影響が出るおそれがある。そのため、装着部3に装着された通路形成部40の位置決めの精度を高くする必要がある。この点、紙幣処理装置1では、紙幣収納部20と通路形成部40とをコイルバネ35で前側に付勢していると共に、第1ロック機構81と第2ロック機構85の二段のロック機構で、通路形成部40と紙幣収納部20とを別々にロックしているので、これらによって、通路形成部40の位置決めの精度が高くなる。
ここで、紙幣処理装置1において、紙幣収納部20内に収納された紙幣束を回収するために、本体部2から通路形成部40と紙幣収納部20ののとを部分的に引き出す(スライド移動する)際の動作について説明する。図16及び図17は、この動作を説明するための図である。まず先の図3に示すように、通路形成部40と紙幣収納部20とが装着部3に装着されているときは、紙幣収納部20の突起23がアーム部材30の溝部31の後端部に当接している。一方、アーム部材30は、コイルバネ35の付勢力で前側に付勢されているので、紙幣収納部20がアーム部材30によって前側に押された状態になっている。また、その一方で、第1ロック機構81で通路形成部40がロックされ、第2ロック機構85で紙幣収納部20がロックされている。これらによって、紙幣収納部20と通路形成部40とは、装着部3内で前後の移動がロックされて停止している。
この状態で、ロック解除ソレノイド93を作動させてロック解除レバー91を移動させ、第1ロック機構81と第2ロック機構85のロックを同時に解除すると、コイルバネ35の付勢力で前側に移動するアーム部材30が、紙幣収納部20の突起23を押すことで、図16に示すように、通路形成部40と紙幣収納部20とが、装着部3から前側にスライド移動する。アーム部材30は、装着部3の前面に当接する位置まで前側にスライド移動して、その位置で停止する。本体部2の前面2aから出た通路形成部40を手でさらに前側に引き出せば、紙幣収納部20と通路形成部40とが前側にスライド移動する。図17に示すように、紙幣収納部20の突起23と本体部2の突起9とが当接する位置で、紙幣収納部20と通路形成部40とが停止する。こうして、紙幣収納部20の前側の部分と通路形成部40とが、本体部2の前面2aから部分的に引き出され(前面方向に露出され)、移動を終了する。
一方、通路形成部40と紙幣収納部20とが前側に移動を開始するときに、装着部3内で前側に移動するアーム部材30が、装着部3の前面に当接する前に、シャッターレバー73の端部73cに当接してこれを押圧する。これにより、シャッターレバー73が前側に移動する。移動するシャッターレバー73がシャフト71を回転させることで、引き抜き防止シャッター72が回動して、紙幣通路5の断面から退避する。したがって、通路形成部40と紙幣収納部20とが装着部3から取り出される際に、引き抜き防止シャッター72が紙幣通路5から退避するので、通路形成部40や紙幣収納部20、あるいは紙幣収納部20に収納されている紙幣などに、引き抜き防止シャッター72が引っ掛かるおそれがなく、通路形成部40と紙幣収納部20との取り出しがスムーズに行なわれる。また、引き抜き防止シャッター72が、通路形成部40などに接触してシャッター機構70が故障することを防止できる。
さらに、通路形成部40と紙幣収納部20とが装着部3から移動する間は、コイルバネ35によってアーム部材30が常に前側に付勢されているので、シャッターレバー73が前側へ押された状態が維持されて、引き抜き防止シャッター72が紙幣通路5から退避した状態が維持される。したがって、通路形成部40と紙幣収納部20とを装着部3から前方に移動する間や、これらを装着部3へ戻すときにも、通路形成部40や紙幣収納部20に引き抜き防止シャッター72が接触するおそれがない。
装着部3から本体部2の前面方向に通路形成部40と紙幣収納部20とを移動し終えたら、図8(b)に示すように、通路形成部40を回動させることで、紙幣収納部20の前端部20aを開く(前端部20aの開口を露出させる)ことができる。これにより、紙幣収納部20に収納されている紙幣Wを前方に向かって真直ぐに取り出すことができるので、紙幣の取り出しが容易に行なえる。また、紙幣の回収作業を紙幣処理装置1の前方のスペースだけで行えるようになる。
また、移動後の通路形成部40と紙幣収納部20とを本体部2に戻すには、通路形成部40と紙幣収納部20とを本体部2の前面2aから押し込む。すると、紙幣収納部20の突起23がアーム部材30の溝部31の後端部に当接し、アーム部材30が押されて後側へ移動する。通路形成部40と紙幣収納部20とが装着部3に完全に装着される位置で、第1ロック機構81と第2ロック機構85とがロックされる。これにより、通路形成部40と紙幣収納部20とが装着部3に装着される。
次に、紙幣通路5の紙幣を紙幣収納部20へ収納する紙幣収納機構について説明する。紙幣収納機構は、図9に示すように、本体部2の装着部3内に設置された一対の紙幣案内ドラム101と、紙幣押圧プレート110とを備えている。紙幣案内ドラム101は、通路形成面3aの上部及び下部にそれぞれ配置されている。紙幣案内ドラム101は、その回転軸が前後方向に延びるように配置された中空円筒状の部材で、中心軸を中心に回転自在に設置されている。紙幣案内ドラム101の側面には、図4に示すように、軸方向に沿って直線状のスリット101aが形成されている。前述のように、紙幣挿入口4から挿入された紙幣(投入紙幣)は、紙幣通路5を通過し、更に直線的に進行して一対の紙幣案内ドラム101の両スリット101aの間に侵入し、該スリット101aに案内されて投入紙幣一時保留用のスペース200内に投入紙幣の大部分が入り込んだ状態で搬送ベルト11の駆動が停止され、該スペース200内にて投入紙幣が一時保留される。このとき、投入紙幣の後端が紙幣通路5の搬送ベルト11と従動ローラ61とで挟み込まれていて、搬送ベルト11を逆駆動することで投入紙幣の返却が可能である。
また、本体部2には、図10に示すように、紙幣案内ドラム101を回転させるモータ102と、モータの回転を伝達する回転伝達機構(図示せず)が設置されている。モータ102による回転が、回転伝達機構で両紙幣案内ドラム101に伝達されることで、両紙幣案内ドラム101は、互いに同位相で逆方向に回転するようになっている。また、紙幣押圧プレート110は、両紙幣案内ドラム101の間であって、紙幣案内ドラム101の長手方向の中間部付近に設置されている板状の部材である。この紙幣押圧プレート110は、紙幣案内ドラム101の回転に連動してその面が紙幣収納部20に近づく方向に移動するように構成されている。投入紙幣の受け入れが確定すると、一対の紙幣案内ドラム101を前述のように互いに逆方向に回転させ、かつ紙幣押圧プレート110の押し込み動作を行わせることで、一時保留用スペース200で一時保留されていた紙幣を紙幣収納部20の方に(紙幣の面に垂直な方向に)押しやり、該紙幣収納部20内に収納する(紙幣束Wの上に集積する)。このとき、搬送ベルト11を順方向に駆動して、投入紙幣の後端が紙幣通路5の搬送ベルト11と従動ローラ61との間に挟み込まれていた状態を解除するとよい。
なお、この紙幣収納機構には、さらに、紙幣収納部20に収納された紙幣が一時保留用スペース200の方へ戻ることを防止する逆戻り防止機構を設けることも可能である。この逆戻り防止機構としては、図示及び詳細な説明は省略するが、例えば、通路形成部40の後部から紙幣収納部20の前端部20aに突出する逆戻り防止片を備えることができる。
次に、紙幣処理装置1における、紙幣挿入口4に紙幣が挿入された際の紙幣の処理動作について説明する。紙幣挿入口4に紙幣が挿入されると、紙幣通路5の最前部の光センサーによって紙幣の挿入が検出される。するとシャッターソレノイド75が作動し、引き抜き防止シャッター72が紙幣通路5から退避して、紙幣通路5が開放される。また、紙幣の挿入の検知に基づいて、モータ14が駆動されて搬送ベルト11が順方向に送られる。これにより、紙幣挿入口4に挿入された紙幣が搬送ベルト11と従動ローラ61で把持されて、紙幣通路5を前側から後側に搬送されていく。紙幣が紙幣通路5を通る際に、紙幣識別手段によって紙幣の正偽が判別される。
紙幣識別手段によって紙幣が正貨と判断されると、この正貨と判断された紙幣は前述のように一時保留用スペース200で一時保持される。一方、紙幣が偽貨と判断されると、搬送ベルト11の送り方向が逆転されて、紙幣が紙幣挿入口4へ戻されて返却される。なお、投入紙幣が正貨と判断され、かつ、適宜の光センサーで紙幣の後端が引き抜き防止シャッター72を通過したことが確認されると、シャッターソレノイド75が停止され、引き抜き防止シャッター72が紙幣通路5に突出して紙幣通路5が閉鎖される。
前述のように、一時保留用スペース200で一時保留している投入紙幣の受け入れが確定すると、紙幣案内ドラム101が回転され、各紙幣案内ドラム101の各スリット101aで両側縁が保持された紙幣は、該紙幣案内ドラム101の回転により紙幣面に垂直な方向に、すなわち紙幣収納部20内へ押される。また、その際、紙幣案内ドラム101の回転に連動して、紙幣押圧プレート110が紙幣収納部20の方へ移動し、紙幣をその面に垂直な方向にすなわち紙幣収納部20の内部へ押し出す。これらによって、紙幣が紙幣収納部20に収納される。紙幣が紙幣案内ドラム101と紙幣押圧プレート110で紙幣収納部20へ押し出された後、紙幣案内ドラム101が更に回転して、最初に紙幣を受け入れる初期位置に戻る。そのとき紙幣押圧プレート110も初期位置に戻る。これにより、紙幣収納機構が次の紙幣を受け入れ可能な状態になる。
次に、遊技機に設置されている状態から台間機を引き出して、更に、紙幣処理装置1の本体部2から紙幣収納部20の一部を取り外して該紙幣収納部20の内部を開くことができるようにした構成及び動作について説明する。この動作は、例えば紙幣収納部20の奥に紙幣が詰まった場合など、故障対策時に実行する。図18は、本体部2において紙幣収納部20の内部を開いた状態を示す側面図で、本体部2の下面側から紙幣収納部20と通路形成部40とを見た図である。なお、同図では、コイルバネ35の図示は省略している。同図に示すように、紙幣収納部20は、回動機構27を支点に、本体部2の側面2bから側方に回動されることで、その内部が開かれるようになっている。このとき、通路形成部40は装着部3に装着されたままで、紙幣収納部20だけが回動される。
図19は、紙幣収納部20の内部が開かれる際のアーム部材30の動作を説明するための図である。なお、同図では、本体部2の一部とアーム部材30とだけを図示し、他の部分は図示を省略している。紙幣収納部20が装着部3に装着されているときは、同図(a)に示すように、アーム部材30の突起34が、挿入部37の係止部37b内に配置されている。その状態から、両アーム部材30の操作部32を操作することで、両アーム部材30を後側に引き下げる。すると、同図(b)に示すように、アーム部材30の突起34が係止部37b内を後側に移動して、入口部37aに抜け出る。その状態で、紙幣収納部20の操作部20cを持ち、紙幣収納部20を回動させてその後端部を装着部3から引き出す。すると、同図(c)に示すように、アーム部材30の突起34が、挿入部37の入口部37aから抜け出る。こうして、図18に示すように、アーム部材30と紙幣収納部20とが、本体部2の側面2bから側方へ回動する。これにより、紙幣収納部20の内部が開かれる。また、紙幣収納部20の回動によって、紙幣収納部20の入口スペースである一時保留用スペース200も開かれる。
また、紙幣収納部20と通路形成部40とが装着部3に装着されているときは、通路形成部40が第1ロック機構81でロックされ、紙幣収納部20が第2ロック機構85でロックされている。この状態で、紙幣収納部20を回動させて開くが、紙幣収納部20の第2係合部89は、その本体部2側の側面が切り欠かれているため、第2ロック爪86aを第2係合部89に係合させたまま、紙幣収納部20を回動させれば、第2ロック爪86aが第2係合部89から抜け出る。したがって、ロック解除機構90によるロック解除操作を行わずに、紙幣収納部20を回動させることができる。なおこのとき、第1ロック爪82aは第1係合部88に係合したままなので、紙幣収納部20を回動させても、通路形成部40や紙幣収納部20の前後方向の位置がずれることはない。
前述のように、紙幣収納部20の内部や紙幣通路5で紙幣が引っ掛かったり詰まったりするトラブルが発生した場合、台間機を引き出した上で、上記の手順によって、紙幣収納部20の内部を開く。これにより、紙幣収納部20の内部や紙幣通路5の紙幣を簡単に取り除くことができる。したがって、トラブルの際の復旧作業が容易かつ迅速に行えるようになる。また、紙幣収納部20の内部や紙幣通路5のメンテナンスが容易に行えるようになる。
特に、紙幣収納部20の内部や一時保留用スペース200は、本体部2の前面2aから離れているため、本体部2の前面2aから紙幣通路5を通して工具等を挿入しても届きにくい。そのため、従来の紙幣処理装置のように紙幣収納部を簡単に開くことができない構造であると、これらの部分でトラブルが発生した場合、その復旧作業に手間と時間がかかる。しかしながら、本実施形態の紙幣処理装置1では、紙幣収納部20を回動させるだけで、紙幣収納部20の内部や一時保留用スペース200を開くことができるので、これらの部分でトラブルが発生した場合でも、その復旧作業を容易且つ迅速に行えるようになる。
また、紙幣収納部20の後端部には、紙幣収納部20に収納された紙幣を保持する紙幣保持片21が形成されている。したがって、紙幣収納部20の後端部を開くときに、紙幣保持片21で紙幣収納部20内の紙幣が抱えられるので、紙幣収納部20の紙幣が本体部2内に残らずに済む。これにより、紙幣処理装置1のメンテナンスがさらに行い易くなる。特に、紙幣保持片21は、紙幣収納部20に収納された紙幣の後端辺を保持する一の片21aと、該紙幣の本体部2側の面を保持する他の片21bとを備えてなるので、紙幣収納部20の後側が開かれる際に、収納されている紙幣の後側の部分が抱えられて本体部2から取り出される。よって、本体部2内に紙幣が残りにくいので、紙幣処理装置1のメンテナンスがさらに行い易くなる。
一方、紙幣収納部20を装着部3へ戻すには、図19(c)に示す状態から、アーム部材30を本体部2の方へ回動させる。すると、アーム部材30の突起34が挿入部37の傾斜面37cに当接する。アーム部材30をさらに本体部2側へ回動させると、突起34が傾斜面37cで押されることで、アーム部材30がコイルバネ35の付勢力に抗して後側に移動する。これにより、突起34が傾斜面37cを乗り越えて係止部37bに挿入される。こうして、紙幣収納部20が装着部3に装着される。
なお、紙幣処理装置1では、紙幣の回収作業のときは、紙幣収納部20の紙幣を本体部2の前面2aから取り出すようになっているので、上記の紙幣収納部20の内部を開く操作は、紙幣収納部20や紙幣通路5でトラブルが発生した場合や、紙幣収納部20や紙幣通路5のメンテナンスをするときだけに行うものである。したがって、紙幣処理装置1の本体部2を台間機から出し入れする作業は、頻繁に行う必要がない。
以上説明したように、本実施形態の紙幣処理装置1では、本体部2の側面2bから紙幣収納部20の内部を開くことができるように構成したので、紙幣収納部20や紙幣一時保留用スペース200で紙幣が引っ掛かったり詰まったりするトラブルが発生した場合に、紙幣収納部20や紙幣一時保留用スペース200の紙幣を簡単に取り除くことができる。したがって、トラブルの際の復旧作業を容易かつ迅速に行なえるようになる。
また、紙幣処理装置1では、紙幣収納部20は、装着部3から本体部2の前方にスライド移動することで、その前端部20aが本体部2の前面2aから取り出されると共に、装着部3から本体部2の側方に回動することで、その内部が開かれるようになっている。これにより、簡単な構造で、紙幣の回収の際は、本体部2の前面2aから紙幣を取り出すことができ、紙幣処理装置1のメンテナンスの際は、紙幣収納部20を本体部2の側方に開くことができるようになる。
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書、図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態の紙幣処理装置1が備える紙幣収納部20の構成は一例であり、本発明の紙幣処理装置が備える紙幣収納部は、収納された紙幣を本体部の前面から取り出して回収できると共に、本体部の側面からその内部を開くことができるように構成したものであれば、上記以外の構成とすることも可能である。
また、上記実施形態で示す紙幣収納部20をスライド移動させる機構や、紙幣収納部20を回動させる機構は一例であり、本発明の紙幣処理装置が備える紙幣収納部をスライド移動さる機構や回動させる機構としては、上記実施形態で示す機構以外の機構を採用することも可能である。また、上記実施形態で示す紙幣保持部の具体的な形状は一例であり、本発明の紙幣処理装置が備える紙幣保持部は、上記の紙幣保持片21とは異なる他の形状であってもよい。