JP2008255047A - 強発光性希土類錯体 - Google Patents

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Abstract

【課題】発光特性が優れ、シャープな発光スペクトルを示す強発光性希土類錯体を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される強発光性希土類錯体。
Figure 2008255047

【選択図】なし

Description

本発明は、所定の励起光を照射することにより蛍光を発する希土類錯体に関する。
本発明者らは、+3価の希土類イオン錯体を含有する組成物が優れた発光特性を有することを見出している。この中でもランタノイド(III)錯体が、特に優れた発光特性を示す。これは、ランタノイドイオンがf−f遷移をする際に増幅発光が生じるためであると思われる(非特許文献1参照)。
このようにランタノイド(III)錯体は特に優れた発光特性を示すため、ランタノイド(III)錯体のうち、更にレーザー発振条件を備えた錯体を用いれば、ポリマーファイバーレーザーや液体レーザー、プラスチック薄膜レーザー等を作製することも可能であると考えられる。実際、過去にランタノイド(III)錯体を用いてレーザー発振が試みられている(非特許文献2参照)。
非特許文献2においては、1700Jという非常に大きなエネルギーを与えることによりランタノイド(III)錯体がレーザー発振したことが確認されている。しかし1700Jというしきい値エネルギーは工業的には過大であり、この研究に用いられたランタノイド(III)錯体を利用してレーザー発振装置を作製することは非現実的である。現実的に使用可能なレーザー発振装置を作製するためには、しきい値エネルギーの小さい錯体を用いる必要がある。
ここで、しきい値ΔNthは式(a)によって表される。
Figure 2008255047
式(a)においてΔNは励起エネルギー、Bはアインシュタイン係数、ρはエネルギー密度、Tは反転分布の緩和時間を表す。このため、しきい値を小さくするには、定常状態におけるエネルギー密度ρsを大きくしなければならない。ρsを大きくするには発光量子収率を高くしなければならない。
更に、より性能の高いレーザーを作製するためには、レーザーの性能を表す誘導放出断面積σpの値を大きくする必要がある。ここで、σpは式(b)で表される。
Figure 2008255047
式(b)において、A(bJ’:aJ)は準位間の自然放出係数、cは光速、λpは発振するレーザーのピーク波長、nは媒体の屈折率、△λeffは有効半値幅である。有効半値幅とは、ピーク強度の半分の強度におけるスペクトル幅のことを示す。この式から、性能の高いレーザーを作製するには、小さな△λeff値及びシャープなピークを有する希土類錯体を用いなければならないことがわかる。
レーザー発振に好適な希土類錯体とするためには、上記の通り、発光量子収率を高くする必要がある。発光速度と発光量子収率の関係は
[発光速度]=[発光量子収率]/[発光寿命]
で表されるが、錯体の構造を非対称とするとf−f遷移が許容遷移となり発光速度が大きくなる。従って、錯体構造を非対称構造にすることにより発光量子収率を高めることができる。ここで非対称型構造とは、錯体全体の構造が非対称形をとるように配位子を選択した錯体構造をいう。
また、錯体構造を低振動型構造として、分子振動が小さくなるように分子設計し、分子振動により励起された電子が失活することを抑制して、発光量子収率を高めた構造とすることが好ましい。錯体構造を低振動型構造とすることにより、アインシュタイン係数Bを大きくすることができ、しきい値ΔNthをより小さくすることができるからである。
このような条件を満たす希土類錯体として、例えば特許文献1ではトリフェニルホスフィンオキサイドを配位子として持つ希土類錯体が開示されているが、発光強度や樹脂との相溶性などの点で克服すべき課題が残されていた。
特開2003−81986号公報 長谷川靖哉、「有機媒体中で光らないネオジウムをどのように光らせるか?」、「化学と工業」、2000年、第53巻、第2号、126−130頁 「アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters、1964年、第5巻、173−174頁
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、従来の希土類錯体よりも発光特性が優れ、シャープな発光スペクトルを示す強発光性希土類錯体を提供することにある。
本願発明者らは上記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の構造を有する希土類錯体が、発光特性が優れ、シャープな発光スペクトルを示すことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、
[1] 下記一般式(1)で表される強発光性希土類錯体である。
Figure 2008255047
(式中、Lnは希土類原子を表す。a、bおよびcはそれぞれ3以下の正の整数または0であるが、全てが同時に0ではない。R〜R18はそれぞれ同一または異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。また、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR10、R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18が互いに結合して環構造を形成していても良い。nは1〜5の整数である。YおよびYは同一または異なる炭素数1〜20の炭化水素基、アミノ基、水酸基、ニトロ基、スルホン酸基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基またはメルカプト基のいずれかを表す。Zは水素原子または重水素原子を表す。)
[2] 基板上に載置された、上記[1]の強発光性希土類錯体を透明マトリックス中に導入した薄膜から成るレーザー発振部と、該レーザー発振部に対して励起光を照射する照射手段とを備えることを特徴とするレーザー発振装置である。
[3] 上記[1]の強発光性希土類錯体を混入させた、樹脂、透明無機材料または透明有機−無機ハイブリッド材料のいずれかからなることを特徴とする光機能材料である。
[4] 上記[1]の強発光性希土類錯体を含有する成形体と、励起光源とを備えることを特徴とする発光装置である。
本発明によれば、従来の希土類錯体よりも発光特性が優れ、シャープな発光スペクトルを示す強発光性希土類錯体が提供される。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の強発光性希土類錯体は一般式(1)で表される。
Figure 2008255047
一般式(1)において、Lnは希土類原子を表す。より具体的には、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuを表す。これらの希土類原子のうち、Eu、Tb、Yb、Nd、Er、Sm、DyまたはCeが好ましく、Euがより好ましい。
一般式(1)において、a、bおよびcはそれぞれ3以下の正の整数または0であるが、すべてが同時に0ではない。a、bおよびcは、好ましくは2以下の正の整数であり、a、bおよびcの好ましい組み合わせとしては、a、bおよびcのうちの一つが2で他の三つが1である組み合わせ、およびa、bおよびcのすべてが1である組み合わせが挙げられ、特に好ましい組み合わせは、a、bおよびcのすべてが1である組み合わせである。
一般式(1)において、R〜R18は同一または異なる炭素数1〜10の炭化水素基である。また、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR10、R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18が互いに結合して環構造を形成していても良い。
〜R18の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、2−ブチル基、n−ペンチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1ないし10個のアルキル基、例えばシクロヘキシル基等の炭素数3ないし10個のシクロアルキル基、例えばビニル基、プロペニル基等の炭素数2ないし10個のアルケニル基、例えばシクロヘキセニル基等の炭素数3ないし10個のシクロアルケニル基、例えばフェニル基、ナフチル基、エチルフェニル基等の炭素数6ないし10個の置換または無置換のアリール基等が挙げられる。
また、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR10、R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18が互いに結合して環構造を形成する場合の2価の置換基としては、例えばエチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の炭素数2ないし10個のアルキレン基、例えばシクロヘキシレン基等の炭素数3ないし10個のシクロアルキレン基、例えばビニレン基等の炭素数2ないし10個のアルケニレン基、例えばシクロヘキセニレン基等の炭素数3ないし10個のシクロアルケニレン基、例えばフェニルエチレン基等の炭素数8ないし10個のアラルキレン基等が挙げられる。
同一窒素原子上の2個の炭化水素基が環構造を形成しない場合、これらの炭化水素基のうち、好ましくは炭素数1ないし10のアルキル基であり、より好ましくはメチル基またはエチル基であり、さらに好ましくはメチル基である。また、同一窒素原子上の2個の炭化水素基が互いに結合して環構造を形成する場合、該窒素原子に結合する2価の置換基のうち、好ましくは炭素数2ないし8個のアルキレン基であり、より好ましくはテトラメチレン基またはペンタメチレン基である。
一般式(1)において、nは希土類金属に配位するホスフィンオキサイド化合物の数を表し、1〜5の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。
一般式(1)において、YおよびYは同一または異なる炭素数1〜20の炭化水素基、アミノ基、水酸基、ニトロ基、スルホン酸基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基またはメルカプト基のいずれかを表す。このうち炭素数1〜20の炭化水素基は、その水素原子の一部または全部がハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子またはケイ素原子を含む置換基で置換されていても良い。
およびYで表される基のうち、炭素数1〜20の炭化水素基としては、具体的には、例えばメチル基、エチル基、2−ブチル基、n−ペンチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基等の直鎖または分枝を有する炭素数1〜20のアルキル基、例えばシクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素数3〜20のシクロアルキル基、例えばビニル基、アリル基、ブテニル基などの直鎖または分枝を有する炭素数2〜20のアルケニル基、例えばシクロヘキセニル基などの炭素数3〜20のシクロアルケニル基、例えばフェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基、ビフェニル基などの炭素数6〜20のアリール基、例えばベンジル基、フェネチル基などの炭素数7〜20のアラルキル基、例えばトリフルオロメチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、パークロロ−n−ブチル基、パーフルオロフェニル基などのハロゲン原子が置換した炭素数1〜20の炭化水素基、例えばヒドロキシメチル基、メトキシエチル基、2−カルボメトキシエチル基、2−オキシプロピル基などの酸素原子を含む置換基を有する炭素数1〜20の炭化水素基、例えばアミノメチル基、N,N−ジメチルアミノメチル基、3−シアノブチル基、2−ニトロプロピル基、ジアゾメチル基などの窒素原子を含む置換基を有する炭素数1〜20の炭化水素基、例えばメルカプトメチル基、スルホン酸メチル基などのイオウ原子を含む置換基を有する炭素数1〜20の炭化水素基、例えばホスホン酸メチル基などのリン原子を含む置換基を有する炭素数1〜20の炭化水素基、例えばトリメチルシリルメチル基などのケイ素原子を含む置換基を有する炭素数1〜20の炭化水素基などが挙げられる。さらにはこれらの炭化水素基の水素原子の一部または全部が重水素原子で置換されていても良い。
およびYで表される基のうち、アミノ基としては、具体的には、アミノ基(−NH基)をはじめとし、例えばメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのアルキルアミノ基、例えばジフェニルアミノ基などのアリールアミノ基が挙げられる。
およびYで表される基のうち、シリル基としては、具体的には、シリル基(−SiH基)をはじめとし、例えばトリメチルシリル基などのアルキルシリル基、例えばトリフェニルシリル基などのアリールシリル基などが挙げられる。
これらのYおよびYで表される基のうち、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、ハロゲン原子が置換した炭素数1〜20の炭化水素基がより好ましく、ハロゲン原子が置換した炭素数1〜20のアルキル基がさらに好ましい。
一般式(1)におけるZは水素原子または重水素原子を表す。Zは重水素原子であることが好ましい。Zが重水素原子である重水素化錯体は、一般式(1)におけるZが水素原子である錯体と重水素化剤とを混合して重水素置換反応することにより得られる。用いられる重水素化剤は、重水素を含むプロトン性化合物、具体的には、重水、重水素化メタノール、重水素化エタノールなどの重水素化アルコール、重塩化水素、重水素化アルカリなどが挙げられる。重水素化反応を促進させるために、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの塩基剤や添加剤を反応溶液に加えてもよい。このように重水素置換をすることで、C−H結合の振動による電子の失活が抑制され、より発光量子収率の高い錯体が得られる。
本発明の強発光性希土類錯体は、Yがアルケニル基である一般式(1)の希土類錯体を必要に応じて重合させて高分子錯体とすることもできる。
一般式(1)で表される希土類錯体、特にLnがEu、Tb、Yb、Nd、Er、Sm、DyまたはCeのいずれかである錯体は、鋭い発光スペクトルを示す。このような錯体はレーザー発振条件を備えており、この錯体を樹脂や無機材料等の透明マトリックスに導入することにより形成した薄膜は、レーザー発振装置などに適用することができる。
一般式(1)で表される希土類錯体は、例えば、特開2003−81986号公報に記載されているように、希土類錯体の水和物を製造した後、この水和物と下記一般式(2)のホスフィンオキシド類とを反応させることにより得ることができる。
Figure 2008255047
(式中、R1〜R18,a,b,cは前記一般式(1)中と同様の意味を示す。)
一般式(2)で表されるホスフィンオキシド類は、イミノホスホラン類とオキシ三塩化リンとを反応させることで得られ、例えば、特開2000−355595号公報に記載される方法が、高収率で高純度のホスフィンオキシド類を得るのに有利である。
本発明に係る強発光性希土類錯体を用いたレーザー発振装置は、基板上に載置された、本発明の希土類錯体を透明マトリックス中に導入した薄膜から成るレーザー発振部と、該レーザー発振部に対して励起光を照射する光照射手段等を備えるものとする。希土類錯体含有薄膜を用いたレーザー発振装置については、例えば特開2004−179296号公報に記載の装置と同様の構成をとることができる。具体的には、例えば、基板上に載置した薄膜の両端に反射鏡を設け、光照射手段を用いて励起光を線状に照射することにより、その線状の部分において励起光を発生・増幅させてレーザー発振を行う。或いは、線状の導波路形状に成形した薄膜に光照射手段により励起光を照射して、発振光をその導波路内において増幅させてレーザー発振を行うようにしてもよい。
希土類錯体を導入する透明マトリックスは、励起光が十分透過するような透明性を有するものであればよく、透明樹脂、透明無機材料または透明有機−無機ハイブリッド材料が好ましい。透明樹脂としてはポリイミド、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、シロキサンポリマー、これらのハロゲン化物もしくは重水素化物、これらを二種以上混合した樹脂が好ましい。透明無機材料としては、ゾル−ゲル法により作製されるガラスが好ましい。なお、透明マトリックスとして感光性を有する樹脂を用いた場合は、フォトリソグラフィーにより薄膜へ直接パターニングすることが可能であって、パターン形成の工程を減らすことができる。
光照射手段としては、LED、重水素もしくはキセノンもしくはハロゲンランプ、レーザー等を用いる。例えばユーロピウム(Eu)錯体では、350nm付近に錯体の配位子に由来する吸収帯を、395nm付近及び465nm付近等にEu3+のf−f遷移に対応する吸収帯を有するため、そのような波長光を発する励起手段を用いることによりユーロピウム錯体を励起し、レーザー発振させることができる。
一般式(1)で表される本発明の希土類錯体は、透明マトリックス、特に透明樹脂に対する相溶性が非常に高い。例えば、化学式(3)で表されるユーロピウム(Eu)錯体は高濃度でアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等に混入させることが可能である。
Figure 2008255047
なお、一般式(1)の置換基R〜R18およびY、Yの種類を変えることにより、透明マトリックスに対する相溶性を適宜変化させることが可能である。このように高濃度の錯体をマトリックス中に混入させることができるということは、即ち、より高強度の発光を容易に得ることができるということを意味するため、本発明の希土類錯体はレーザー材料として非常に有用である。
なお、本発明に係る希土類錯体を樹脂又は透明無機材料又は透明有機−無機ハイブリッド材料のいずれかに混入させたものは、外部からの励起光により発光する発光体等の光機能材料として用いることができる。
また、本発明に係る希土類錯体を混入したマトリックスを用いて所定の形状の成形体を作製し、これをLED等の励起光源と組み合わせて、発光装置等を作製することも可能である。なお、このような用途においては、マトリックスは透明である必要はなく、半透明のものを使用することも可能である。
以下の実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例および比較例中、ヘキサフルオロアセチルアセトナト基はhfa、トリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスフィンオキシドはPZO、トリフェニルホスフィンオキサイドはTPPOと略記する。
Eu(hfa)(HO)錯体およびEu(hfa)(TPPO)錯体は特開2003−81986号公報の実施例に記載の方法に従って合成した。
(実施例1)Eu(hfa)(PZO)錯体(下記化合物(3))の合成
Figure 2008255047
Eu(hfa)(HO)錯体 0.49g(0.62mmol)のメタノール溶液にPZO 0.72g(1.2mmol)のメタノール溶液を滴下して加えた後、2時間室温で攪拌した。反応中に徐々に白色沈殿が生成した。反応終了後、白色沈殿をろ過、洗浄した後、室温で一昼夜乾燥してEu(hfa)(PZO)錯体を白色固体として得た。
この白色固体の元素分析値は、C:29.18%、H:4.50%、N:12.30%であり、Eu(hfa)(PZO)錯体の計算値であるC:29.26%、H:4.17%、N:12.41%と良く一致した。
(実施例2および比較例1−2)
Eu(hfa)(PZO)錯体(実施例2)、Eu(hfa)(HO)錯体(比較例1)およびEu(hfa)(TPPO)(比較例2)のTHF中における発光スペクトルを測定した。測定はHITACHI F−4500を用いた。錯体濃度は全て2×10−5Mで測定した。
3種の錯体の発光スペクトルの測定結果を図1に示す。すべて、Eu(III)に特徴的な4f−4f遷移に由来するバンドが見られ、615nm付近()に極大を示すスペクトルが得られた。本発明の錯体であるEu(hfa)(PZO)錯体では、従来技術であるEu(hfa)(HO)錯体やEu(hfa)(TPPO)錯体に比べ、励起光である320nmの光吸収が小さいにもかかわらず(図2参照)、615nmの発光強度が約40%以上増大した。
また得られたEu(hfa)(PZO)錯体粉末は、ブラックライト照射(longer wavelength)による励起だけでなく、紫色LED光照射(例えば380nm)や青色LED光照射(例えば430nm)によっても赤色発光を示す。
本発明の強発光性希土類錯体をマトリックス中に導入することにより、レーザー発振装置、光機能材料、発光装置等に使用することができる。
本発明および従来技術になるEu(III)錯体の発光スペクトルを示す図である。 本発明および従来技術になるEu(III)錯体の吸収スペクトルを示す図である。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で表される強発光性希土類錯体。
    Figure 2008255047
    (式中、Lnは希土類原子を表す。a、bおよびcはそれぞれ3以下の正の整数または0であるが、全てが同時に0ではない。R〜R18はそれぞれ同一または異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。また、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR10、R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18が互いに結合して環構造を形成していても良い。nは1〜5の整数である。YおよびYは同一または異なる炭素数1〜20の炭化水素基、アミノ基、水酸基、ニトロ基、スルホン酸基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基またはメルカプト基のいずれかを表す。Zは水素原子または重水素原子を表す。)
  2. 一般式(1)中のLnが、Eu、Tb、Yb、Nd、Er、Sm、DyまたはCeのいずれかである請求項1記載の強発光性希土類錯体。
  3. 一般式(1)中のR〜R18がすべてメチル基である請求項1または2記載の強発光性希土類錯体。
  4. 一般式(1)中のa、bおよびcがすべて1である請求項1ないし3のいずれか1項記載の強発光性希土類錯体。
  5. 基板上に載置された、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の強発光性希土類錯体を透明マトリックス中に導入した薄膜から成るレーザー発振部と、該レーザー発振部に対して励起光を照射する照射手段とを備えることを特徴とするレーザー発振装置。
  6. 透明マトリックスが、透明樹脂、透明無機材料または透明有機−無機ハイブリッド材料のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載のレーザー発振装置。
  7. 透明樹脂が、ポリイミド、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、シロキサンポリマー、これらのハロゲン化物もしくは重水素化物、またはこれらを二種以上混合した樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載のレーザー発振装置。
  8. 請求項1ないし4のいずれか1項記載の強発光性希土類錯体を混入させた、樹脂、透明無機材料または透明有機−無機ハイブリッド材料のいずれかからなることを特徴とする光機能材料。
  9. 請求項1ないし4のいずれか1項記載の強発光性希土類錯体を含有する成形体と、励起光源とを備えることを特徴とする発光装置。
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