JP4048932B2 - 希土類錯体含有薄膜を用いたレーザー発振装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の励起光を照射することにより蛍光を発する希土類錯体を含有する透明マトリックスから成る薄膜を用いて作製したレーザー発振装置に関する。
なお、本発明は光導波路、光増幅器、光波長変換器、光演算素子などにも利用することが可能である。
【0002】
【従来の技術】
本発明者らは、+3価の希土類イオン錯体を含有する組成物が優れた発光特性を有することを見出し、これを利用した光機能材料や発光装置の発明を行った(特願2001-272547号参照)。+3価の希土類イオン錯体のうち、+3価のランタノイドイオン錯体を用いた場合には、+3価のランタノイドイオンがf-f遷移をする際に増幅発光が生じ、特に優れた性能を示すことから、+3価のランタノイドイオン錯体を含有するポリマーファイバーレーザーや液体レーザー、プラスチック薄膜レーザー等を作製することができると考えられる。
実際、希土類錯体の優れた発光特性を利用して、過去に+3価のランタノイドイオン錯体を用いてレーザー発振が試みられている(非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】
「アプライドフィジックスレターズ」(「Applied Physics Letters」)、アメリカ、第5巻、1964年、pp.173-174
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
非特許文献1の研究報告においては、1700Jと非常に大きなエネルギーを与えることにより+3価のランタノイドイオン錯体はレーザー発振したことが確認されている。しかし1700Jというエネルギーは大きすぎ、この研究に用いた+3価のランタノイドイオン錯体を利用したレーザー発振装置を作製することは非現実的である。
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、希土類錯体含有薄膜を用いた、低エネルギー光でレーザー発振するレーザー発振装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明に係るレーザー発振装置は、基板、および該基板上に線状に塗布載置され、所定の励起光を照射することにより蛍光を発する+3価の非対称型希土類イオン錯体を透明マトリックス中に導入した薄膜を備え、前記透明マトリックスは、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、シロキサンポリマー、これらのハロゲン化物もしくは重水素化物、またはこれらを二以上混合した樹脂であって、前記蛍光を前記薄膜の線状パターン中で増幅させて前記線状パターンの端面から出射させるものであって、上記非対称型希土類イオン錯体が一般式(2)
【化4】
(式中、Lnは希土類原子を表す。nは1または2であり、mは1、2、3または4である。Phはフェニル基を表す。Xは同一または異なる水素基、重水素基、ハロゲン基、C 1 〜C 20 の基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基のいずれかを表す。Yは同一または異なるC 1 〜C 20 の基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基のいずれかを表す。
Zは水素基、重水素基、ハロゲン基、C 1 〜C 20 の基のいずれかを表す。)で表されることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
レーザー発振のしきい値の大きさは分子構造によって決まる。しきい値ΔNthは式ΔNth=ΔN0/(1+2BρsT)によって表されるため、しきい値を小さくするには、定常状態におけるエネルギー密度ρsを大きくすればよい。ここでΔN0は励起エネルギー、Bはアインシュタイン係数、Tは反転分布の緩和時間を表す。エネルギー密度ρsを大きくするには発光量子収率を高くすればよいが、これらは錯体の構造を一般式(1)
【化5】
または一般式(2)
【化6】
のような非対称構造にすることで解決できる。
【0007】
ここで非対称型構造とは、全体の構造が非対称となるような配位子を選択した錯体構造をいい、錯体の構造を非対称とするとf-f遷移が許容遷移となることから発光速度が大きくなる。
【0008】
また、金属錯体構造を低振動型構造として、分子振動が小さくなるように分子設計し、励起された電子の分子振動による失活を抑制することにより、発光量子収率を高めた構造とすることが、より好ましい。金属錯体構造を低振動型構造とすることにより、アインシュタイン係数Bを大きくすることができるため、しきい値ΔNthをより小さくすることができるからである。
【0009】
一般式(1)および一般式(2)において、Lnは希土類原子を表す。nは1または2であり、mは1、2、3または4である。Xは同一または異なる水素基、重水素基、ハロゲン基(F,Cl,Br,I)、C1〜C20の基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基を示す。Yは同一または異なるC1〜C20の基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基を表す。Zは水素基または重水素基を表す。
【0010】
C1〜C20の基としては;
* 直鎖又は分枝を有するアルキル基(CnH2n+1;n=1〜20)、およびパーフルオロアルキル基(CnF2n+1;n=1〜20)、パークロロアルキル基(CnCl2n+1;n=1〜20)などの直鎖又は分枝を有するパーハロゲン化アルキル基;
【0011】
* 直鎖又は分枝を有するアルケニル基(ビニル基、アリル基、ブテニル基)、およびパーフルオロアルケニル基(パーフルオロビニル基、パーフルオロアリル基、パーフルオロブテニル基)、パークロロアルケニル基などの直鎖又は分枝を有するパーハロゲン化アルケニル基;シクロアルキル基(CnH2n-1;n=3〜20)、およびパーフルオロシクロアルキル基(CnF2n-1;n=3〜20)、パークロロアルキル基(CnCl2n-1;n=3〜20)などの直鎖又は分枝を有するパーハロゲン化アルキル基;シクロアルケニル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、およびパーフルオロシクロアルケニル基、パークロロアルケニル基などのパーハロゲン化アルキル基;
【0012】
* フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の芳香族基、およびパーフルオロフェニル基、パーフルオロナフチル基、パーフルオロビフェニル基、パークロロフェニル基、パークロロナフチル基、パークロロビフェニル基などのパーハロゲン化芳香族基;
【0013】
* ピリジル基等のヘテロ芳香族基、およびパーフルオロピリジル基等のパーハロゲン化ヘテロ芳香族基;
【0014】
* ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、およびパーフルオロベンジル基などのパーハロゲン化アラルキル基;
【0015】
等を挙げることができる。
【0016】
XおよびYで示されるC1〜C20の基は、必要に応じて重水素基、ハロゲン基(F,Cl,Br,I)、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基などの置換基で置換されていてもよい。
【0017】
また、C1〜C20の基の任意の位置のC-C単結合の間に-O-、-COO-、-CO-を一個または複数個介在させて、エーテル、エステル、ケトン構造としてもよい。
【0018】
XおよびYがアルケニル基である一般式(1)および(2)の希土類錯体を、必要に応じてエチレン、プロピレンなどのオレフィンおよびハロゲン化オレフィン重合させて高分子希土類錯体としてもよい。
【0019】
Lnで表される希土類元素としては、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luなどのランタン系列元素が挙げられ、好ましくはEu,Tb,Yb,Nd,Erが挙げられる。
【0020】
nは1または2であるが、好ましくは2である。
mは1〜4のいずれかであるが、好ましくは3である。
【0021】
一般式(1)および(2)で表される錯体と重水素化剤を重水素置換反応させることにより、Zが重水素基Dである重水素化錯体が得られる。用いられる重水素化剤は、重水素を含むプロトン性化合物、具体的には、重水、重水素化メタノール、重水素化エタノールなどの重水素化アルコール、重塩化水素、重水素化アルカリなどが挙げられる。反応を促進させるためにトリメチルアミン、トリエチルアミンなどの塩基剤や添加剤を加えてもよい。重水素置換反応は一般式(1)および(2)で表される錯体と重水素化剤を混合することにより得られる。
【0022】
例えば、一般式(1)のうち、XがH、YがCF3、ZがHである、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)ユーロピウム(III)ビス(トリフェニルホスフィンオキサイド)錯体を重水素化した錯体は、高い蛍光量子収率および大きな発光速度を示す。これは、ヘキサフルオロアセチルアセトナート配位子により金属錯体が低振動型構造となるため、高い発光量子収率が達成されるものである。また、ヘキサフルオロアセチルアセトナート配位子およびフォスフィンオキサイド配位子により非対称構造(スクエアアンチプリズム構造)がつくられ、これによって大きい発光速度が達成される。
【0023】
希土類錯体を導入する樹脂または無機材料は、励起光が十分透過するようなものであればよく、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、シロキサンポリマー、ゾル−ゲル法により作製されるガラスや無機−有機ハイブリッド材料などを用いることができる。
【0024】
シロキサンポリマーのうち、一般式(3)
【化7】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は同一または異なるアリール基、水素基、脂肪族アルキル基、トリアルキルシリル基、重水素基、重水素化アルキル基、フッ素基、フルオロアルキル基、または不飽和結合を有する官能基である。k、l、m、nはいずれも0以上の整数で、2k+(3/2)l+m+(1/2)nは自然数であって、ポリマーの重量平均分子量は50以上である。分子末端基は同一または異なるアリール基、水素基、脂肪族アルキル基、水酸基、トリアルキルシリル基、重水素基、重水素化アルキル基、フッ素基、フルオロアルキル基、または不飽和結合を有する官能基である。)で表されるポリシルセスキオキサンである場合、樹脂がネットワーク構造を形成する。このため、直鎖状のシロキサンポリマーより耐熱性が高いため、デバイス作製時に高温プロセスを必要とするような用途に好適である。ポリシルセスキオキサンが、一般式(4)
【化8】
(式中、R1、R2は同一または異なるアリール基、水素基、脂肪族アルキル基、水酸基、重水素基、重水素化アルキル基、フッ素基、フルオロアルキル基、または不飽和結合を有する官能基である。R3、R4、R5、R6は同一または異なる水素基、アリール基、脂肪族アルキル基、トリアルキルシリル基、水酸基、重水素基、重水素化アルキル基、フッ素基、フルオロアルキル基、または不飽和結合を有する官能基である。nは整数でポリマーの重量平均分子量は50以上である。)で表される梯子状のポリシルセスキオキサンである場合、梯子構造により剛直な構造が形成されて、特に耐熱性が高くなるため、高温プロセス用途に好適である。
【0025】
本発明のレーザー発振装置を用いてレーザー発振させる方法は2つ考えられる。一つは基板上に載置した薄膜に、励起光を線状に照射する手段を用いて励起光を照射する方法である。もう一つは、薄膜を線状の導波路形状に成形することにより、励起光を薄膜中に閉じこめる方法である。
また、レーザー発振装置として使用するためには、光を増幅させるために反射鏡を希土類錯体含有薄膜の端面に設ける等の構成をとる必要がある。
【0026】
励起光を線状に照射する方法としては、例えばシリンドリカルレンズ22および凹レンズ23を用いて、励起光24を板状に絞った状態で、ガラスやシリコンなどの基板20上に載置した希土類錯体含有薄膜上に照射する。希土類錯体が励起されることにより発せられた蛍光は薄膜21の励起光を照射した線状の部分に閉じこめられることから、これをレーザー発振装置として使用することができる(図1,図2)。
【0027】
また、希土類錯体含有薄膜をパターニングして導波路を作製すれば、励起光を線状に絞らずとも励起光は導波路中に閉じこめられ、希土類錯体含有薄膜をレーザー発振装置として用いることができる。なお、励起光の照射形状は、必ずしも図1および図2のような直線状である必要はなく、光の全反射条件を満たす範囲内でわん曲していてもよい。
【0028】
通常、パターン形成にはフォトレジストを使用し、薄膜上にフォトレジストを塗布して該レジストを所定の形状にパターニングした後、薄膜に対して所定の試薬で処理を行ったり、ドライエッチングを行うことにより、薄膜のパターニングを行う。しかし、マトリックスとして感光性を有する樹脂を用いた場合は、フォトリソグラフィーによる薄膜への直接パターニングが可能であって、パターン形成の工程を減らすことができる。
このように薄膜をパターニングすることにより、希土類錯体含有薄膜をレーザー発振装置以外にも、発光性コアを有する光導波路として使用したり、光増幅器や光演算素子、光波長変換器として使用することができる。
【0029】
希土類錯体の励起手段としては、LED、重水素もしくはキセノンもしくはハロゲンランプ、レーザー等を用いることができる。例えばEu(III)錯体の場合は、所定の配位子を配位させることにより465nm付近にEu3+のf-f遷移に対応する吸収帯を有するため、そのような波長光を発する励起手段を用いることにより、Eu(III)錯体を励起しレーザー発振させることができる。
なお、希土類錯体をレーザー発振させる際の光の損失を少なくするために、希土類錯体含有薄膜の周囲にコアよりも屈折率の小さい樹脂組成物または金属から成るクラッド層を設けるのが好ましい。
【0030】
以上のような構造を有するレーザー発振装置とした場合、+3価の希土類イオン錯体に限らず、蛍光を発する希土類イオン錯体を用いれば、発せられた蛍光が十分増幅されて、レーザー発振させることが可能であると考えられる。
【0031】
【発明の効果】
この発明によれば、希土類イオンが励起されて発せられた蛍光が励起光を照射した線状の部分に閉じこめられる。希土類錯体が非対称構造となるように配位子を選択することにより小さいエネルギー光でもレーザー発振するようになる。
【0032】
【実施例】
Eu(III)錯体(トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)ユーロピウム(III)ビス(トリフェニルフォスフィンオキサイド)錯体)(以下「Eu(HFA-H)3(TPPO)2」)を含有するマトリックスから成る薄膜によるレーザー発振を行った例を以下に示す。
【0033】
薄膜はEu(HFA-H)3(TPPO)2とポリスチレンを混合した組成物から成り、Eu(HFA-H)3(TPPO)2は特許文献1に記載の方法により合成することができる。Eu(HFA-H)3(TPPO)2は1Hおよび19F NMR、IRスペクトル、元素分析、X線構造解析により同定した。
【0034】
ポリスチレンビーズ13mgを5mlのシクロヘキサノンに溶解した後、1g(0.18mmol)のEu(HFA-H)3(TPPO)2を加え、Eu(HFA-H)3(TPPO)2を90.6重量%含有するポリスチレン樹脂溶液とした。これをガラス基板上にスピンコートし、ユーロピウム(III)錯体含有薄膜を形成した。触針式段差計(DEKTAK;Solan社製)により膜厚の測定を行ったところ、1.71μmであった。薄膜とガラス基板の屈折率をエリプソメーター(EC-101;ニーク社製)で測定したところ、それぞれ1.527と1.519であった。この屈折率の違いによりマイクロキャビティ効果が生じ薄膜中でのEu(III)錯体の発光が可能となっている。
【0035】
薄膜上に設けられた光導波路に、シリンドリカルレンズ(f=200mm)と凹レンズ(f=100mm)を使用してナノ秒Nd:YAGレーザー(502DNS;BM industries社製, 10Hz, FWHM 9ns)の3倍波(355nm)を線状に導入して、Eu(HFA-H)3(TPPO)2を励起した。
発光の様子を図1に示すが、ガラス基板の縁の部分(エッジA)から赤色の発光が観察され、ガラス基板上にも発光線(ラインB)が観察された。薄膜上の照射および発光線以外の箇所に現れた散乱光Cはガラス基板上に現れた発光の線に比べてずっと弱いものであった。発光スペクトルは回折格子(SP-150;Acton社製)およびCCDカメラ(C5809;浜松ホトニクス社製)を備えたフォトニックマルチチャンネルアナライザー(C5967;浜松ホトニクス社製)でも観察することができた。
【0036】
エッジAにおける発光スペクトルを図3に示すが、ピークは580、590、615、650、700nmに現れ、これらはそれぞれf-f遷移の5D0→7F0、5D0→7F1、5D0→7F2、5D0→7F3、5D0→7F4に対応するものである。615nmの最も強い発光は、電気双極子遷移によるものである。
【0037】
Eu(HFA-H)3(TPPO)2のポリマーマトリックス中での量子収率は75±6%であって、発光速度は1.1×10-3s-1であった。この値はNd:YAGと同程度の値であって、これは、錯体構造を非対称型かつ低振動型にすることにより達成されたものである。
【0038】
エッジAからの発光は、ディテクター(フォトマルチプライアー R928;浜松フォトニクス社製)の正面に設置したローカット光フィルター(L-39;東芝ガラス社製, λ>365nm)およびモノクロメーター(H20 Vis;Jobin Yvon社製)によりフィルタリングした。フォトマルチプライアーは励起パルスに同調したデジタルオシロスコープ(TDS540;ソニーテクトロニクス社製)でモニタリングした。
【0039】
Eu(HFA-H)3(TPPO)2含有薄膜のエッジAにおける発光減衰を図4に示す。最も弱い励起光強度である0.01mJのときのエッジAからの発光寿命は0.650msで、この値は散乱光Cの発光寿命(0.660ms)とほぼ一致する。0.1mJより大きい励起光強度の場合の発光減衰は、通常成分(0.650ms)と速い成分(0.083ms)から成る。励起光強度を強くするにつれて速い成分が増えることが、0.01mJのときの発光減衰のグラフと比較することによりわかる。
なお、この速い成分はエッジAおよびラインBから観察された。
【0040】
励起光強度が10mJの時のエッジA、ラインB、散乱光Cの発光減衰を示すグラフを図5に示すが、散乱光Cの減衰形は図4における0.01mJの時のエッジAからの発光減衰とほぼ同じ軌跡を描いた。
これらの観察から、マイクロキャビティ効果により速い成分が生じ、これはEu(III)錯体からの増幅自発発光によるものであることがわかる。
【0041】
励起光強度とエッジAにおけるEu(HFA-H)3(TPPO)2含有薄膜の全発光強度に対する増幅自発発光成分の割合の関係を図6に示すが、増幅自発発光成分の割合は励起光強度が大きくなるにつれて増加している。また、このグラフより、レーザー発振のしきい値は0.05mJ程度であることがわかる。
【0042】
Eu(HFA-H)3(TPPO)2を用いれば、弱い励起光でレーザー発振することがわかったが、ランタノイド元素はきわめてよく似た化学的・物理的性質を有することから、ユーロピウム以外のランタノイド錯体を用いても、同様の現象が生じると考えられる。
【0043】
希土類含有薄膜上に有機エレクトロルミネッセンス(以下「有機EL」)膜を積層すると、電子入力により有機ELが発光する(光変換される)ため、この発光を励起光とするレーザー発振装置を作製することが可能である。
【0044】
透明マトリックスに感光性をもたせて感光性マトリックスとすれば、フォトマスクを使用して膜のパターニングが可能であり、導波路レーザー等を容易に作製することができる。シリコン基板上に導波路レーザーを作製すれば、光コンピュータのデバイスとして使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 励起光を入射したEu(HFA-H)3(TPPO)2含有薄膜の発光図
【図2】 希土類錯体含有薄膜に励起光を照射する一実施例
【図3】 Eu(HFA-H)3(TPPO)2含有薄膜のエッジAにおける発光スペクトル
【図4】 Eu(HFA-H)3(TPPO)2含有薄膜のエッジAにおける発光減衰図
【図5】 励起光強度10mJのときの、エッジA、ラインB、散乱光Cの発光減衰図
【図6】 励起光強度とエッジAにおけるEu(HFA-H)3(TPPO)2含有薄膜の増幅自発発光成分の割合の関係図
【符号の説明】
10…エッジA
11…ラインB
12…散乱光C
20…基板
21…希土類錯体含有薄膜
24…励起光
Claims (6)
- 基板、および該基板上に線状に塗布載置され、
所定の励起光を照射することにより蛍光を発する+3価の非対称型希土類イオン錯体を透明マトリックス中に導入した薄膜を備え、
前記透明マトリックスは、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、シロキサンポリマー、これらのハロゲン化物もしくは重水素化物、またはこれらを二以上混合した樹脂であって、前記蛍光を前記薄膜の線状パターン中で増幅させて前記線状パターンの端面から出射させるものであって、
上記非対称型希土類イオン錯体が一般式(1)
Zは水素基、重水素基、ハロゲン基、C1〜C20の基のいずれかを表す。)で表されることを特徴とするレーザー発振装置。 - 非対称型希土類イオン錯体中の希土類イオンがEu3+,Tb3+,Yb3+,Nd3+,Er3+のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載のレーザー発振装置。
- シロキサンポリマーは、一般式(2)
- シロキサンポリマーは、ポリシルセスキオキサンであって、一般式(3)
- 薄膜の組成物中に非対称型希土類イオン錯体を0.1〜99.9重量%含有することを特徴とする、請求項1あるいは2に記載のレーザー発振装置。
- 非対称型希土類イオン錯体を含有する薄膜上に有機エレクトロルミネッセンス膜を積層したことを特徴とする請求項1あるいは2に記載のレーザー発振装置。
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