JP2008254432A - 複合微粒子とそれを用いたインクジェット記録体 - Google Patents

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Abstract

【課題】インクの定着能を改善し、高温高湿下でも画像の鮮明性が良好で、且つ耐オゾン性も良好な銀塩写真調光沢インクジェット記録体向け材料の提供。
【解決手段】基材に顔料を含有するインク受容層を設けたインクジェット記録体であって、該顔料が、平均粒子径が1μm以下の無機顔料表面に、アミノ基を有するシランカップリング剤とジルコニウム化合物とを重合させて得られる、分子内にアミノ基とZr−O−Si結合を含む重合体ゾルを結合させた複合微粒子であるインクジェット記録体を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、特にインクの定着能が良好なため、高温高湿下においても画像の鮮明性が良好で、且つ耐オゾン性も良好な銀塩写真調光沢インクジェット記録体向け材料として有用な複合微粒子に関する。
これまでにコンピューターなどの出力用として、ワイヤードット記録方式、感熱発色記録方式、溶融熱転写記録方式、昇華記録方式、電子写真方式、インクジェット記録方式などの種々の方式が開発されている。中でもインクジェット記録方式は、記録用シートとして普通紙を使用できること、ランニングコストが安価なこと、ハードウェアがコンパクトで安価なことから、パーソナルユーズに適した記録方式として認知され、プリンターの販売台数を急速に伸ばしてきた。その普及に伴ってハードウェアの改良も進み、フルカラー化や、高速化、高画質化が急速に進展したため、出力用途も単純なモノクロ文字出力から銀塩写真の代替えとなるデジタル画像出力までに拡大しつつあり、必然的に記録紙側に要求される品質も厳しくなってきた。
市販されているインクジェット記録紙の中でも、銀塩写真調のフルカラー画像を出力できるメディアとして、光沢紙の販売量が近年急速に増加している。光沢紙の製造においては如何にして「銀塩写真に近づける」かが重要な鍵とされ、「印字画質」だけでなく「得られた画質を長期間保持できる」ことも求められる。「印字画質」に関しては、プリンターの印刷高速化に伴いより厳しくなったインク吸収速度の改良要求や、光沢紙の低価格化による原材料費の制約の範囲内で、更なる向上を可能とする記録体側の材料開発が必要とされている。特に、汎用化した光沢紙の使用状況として想定される「プリンターの排出トレイ上で印字後の光沢紙が(インク溶媒が乾燥するまもなく)順次積層されるような状態」となっても、鮮明な画像が得られ保持できることが望ましい。
更に、銀塩写真対比で大きく劣っていた「画像耐光性や耐オゾン性」に関しても、近年のインクの改良によりある程度向上したものの、もう一段の向上が望まれている。インクジェット光沢紙は室内で保管されるものが大半であると思われるため、密閉度の高い室内環境における画像劣化に大きな影響のあるオゾンに対する耐性は重要な品質といえる。
鮮やかな出力画像を得て、且つそれを保持するためには、インク中に含まれる染料もしくは顔料と反応性が高く、かつ安定な結合体を形成しうる「カチオン定着剤」を受容側のインクジェット記録体に含ませておくことが重要となる。現在、市販されているインクジェット記録体の多くで、この定着剤として水溶性のカチオン樹脂を使用することが一般的に行われている。例えば特開昭60−61887号公報(特許文献1参照)にも開示されているように、インクの定着能に優れることが古くから知られているポリアリルアミン類や、特開2004−122769号公報(特許文献2参照)に開示されている、染料インクの画像保存性が良好な5員環アミジン構造を含むカチオン樹脂等の「1級アミン構造を含む水溶性カチオン樹脂」が好適とされる。しかし、近年の高品質化したインクジェットプリンタ用インクは、様々な構造を有する各種染料もしくは顔料からなる着色成分を複数組み合わせて作られた混合物であるため、単一の定着剤でフルカラーの画像を定着させるのはかなり困難な状況となっている。単にカチオン樹脂を増量することで定着能向上を図っても、その効果はあまり期待出来ないだけでなく、毛管現象であるインク吸収を阻害する可能性が高い。また、これらのカチオン樹脂は、吸湿しやすく、膨潤状態で運動しやすいこともあってか、高温高湿、光やオゾンといった外部環境の変化や刺激に対して比較的変質しやすく、画像保存性や白紙保存性の悪化要因ともなりうるため、添加量の設定には注意を要する。以上の背景から、カチオン樹脂以外の定着剤の開発が望まれた。
既存のカチオン樹脂以外の定着剤の代表例として、特開2000−309157号公報(特許文献3参照)記載のアルミニウムもしくは周期表4A族の元素を含む水溶性化合物があげられ、中でも塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物やチタン、ジルコニウム化合物が好適と例示されている。ただし、定着剤としてこれらを単独で使用するだけでは、インク定着能が不十分であるため、鮮明な画像を得るためにカチオン樹脂の併用が検討されている。しかしこの場合、カチオン樹脂由来の保存性悪化は避けられない。特開平4−7189号公報(特許文献4参照)には、ジルコニウム化合物として酸塩化ジルコニウム系活性無機ポリマーが提案されているが、これも同様に単独では十分な定着能を得ることは出来なかった。
より強固な遷移金属導入法として、特開2006−160539号公報(特許文献5参照)には、チタンやジルコニウムなどの遷移金属酸化物で被覆してなるシリカ微粒子が提案されている。これは実質的に、有機溶媒中で遷移金属アルコキシドや遷移金属アセチルアセトネートなどの遷移金属酸化物前駆体によりシリカ粉体を被覆する処理を意図したものであるが、微粒子のインク定着能はあまり良好ではなかった。
カチオン樹脂の使用量を低減しつつ定着能を確保するため、特開2001−10209号公報(特許文献6参照)にはシランカップリング剤を定着剤であるカチオン樹脂と併用することが提案されており、特にカチオン性の4級アンモニウム構造を有するシランカップリング剤を使うと好適であると明示されている。シランカップリング剤自体は特開昭62−178384号公報(特許文献7参照)にも記載されているようにインクジェット記録体に供する顔料の表面処理剤として古くから用いられている材料である。インク受容層の定着剤としてカチオン性シランカップリング剤を用いた場合、カチオン基がインク受容層の主成分である顔料の表面にカチオン樹脂よりも強固に結合もしくは吸着されているため、外部刺激に対する耐性が高まり、インク吸収性や画像保存性が向上することが期待される。しかし、このカチオン性シランカップリング剤をインク定着剤として単独で使用しても十分なインク定着能が得られなかったため、その品質は特に高温高湿環境下での画像の鮮明性が劣る傾向があった。
特開2006−110770号公報(特許文献8参照)には、このカチオン性シランカップリング剤の定着能不足を補うため、水溶性多価金属化合物を組み合わせることが提案されている。ここに示されているインクジェット記録材料は、シランカップリング剤存在下で粉砕・分散処理されたシリカ微粒子を主成分としたインク受容層が水溶性多価金属化合物を含有してなる。シランカップリング剤としてはカチオン性を有するものが、水溶性多価金属化合物としてはアルミニウム化合物もしくはジルコニウム化合物が好適とされ、水溶性多価金属化合物の添加時期は、塗布直前の添加が好ましいとされる。この改良により、カチオン性シランカップリング剤を単独で使用した場合に比べ、インク定着能にある程度の向上が確認されたが、水溶性多価金属化合物自体のインク受容層に対する結合力が不十分であったためか、画像耐水性の悪化がみられただけでなく、最も重要である通常環境での画質劣化につながる塗膜の光沢や印字濃度の低下も生じたため更なる改良が必要であった。
特開昭60−61887号公報 請求項1 特開2004−122769号公報 請求項1 特開2000−309157号公報 請求項1、2 特開平4−7189号公報 請求項1 特開2006−160539号公報 請求項1,2 特開2001−10209号公報 請求項1、2 特開昭62−178384号公報 請求項1 特開2006−110770号公報 請求項1、3、4
本発明は、特にインクの定着能を改善し、高温高湿下でも画像の鮮明性が良好で、且つ耐オゾン性も良好な銀塩写真調光沢インクジェット記録体向け材料を提供することである。
本発明者らは、銀塩写真の代替えとなる光沢インクジェット記録体のインク定着剤としてカチオン性を有するアミノ基含有シランカップリング剤を使用した場合に生じるインク定着能不足を補うため、それに組み合わせる材料として、ジルコニウム化合物に着目し、両者の併用時に生じる問題の改良に取り組んだ。
まずはアミノ基含有シランカップリング剤と水溶性ジルコニウム化合物を共存させた水溶液に、微細顔料を加え、機械的シェアを与えて混合分散することで複合化させることを試みたが、系の不安定化の影響によるものか混合分散時の機械的負荷が大きく、かつ塗料には増粘、塗膜には異物や泡由来の欠陥が発生するなど、良好な結果は得られなかった。
そこで、反応性の高いアミノ基含有シランカップリング剤とジルコニウム化合物を予め溶媒中で適度に重合させ、両者がZr−O−Si結合を介して一体化したカチオン性の重合体を調製し、それを多孔質受容層となりうる平均粒子径1μm以下の無機顔料と複合化することで、分散液として安定性の高い複合微粒子を合成することを試みた。すなわち、複合微粒子とは、上記の重合体が無機顔料の周囲の少なくとも一部に結合して構成されるものである。前述の重合体は、溶媒中で安定に存在するものであり、重合体化したことによる影響のためか、水溶性ジルコニウム化合物などに例示される水溶性多価金属化合物に比べ、インク受容層の主成分となる無機顔料と混ぜ合わせた際のショックや得られるインクジェット記録体の画像鮮明性が大幅に改良されたものである。この重合体を無機顔料と共に水中に分散し、必要に応じて機械的シェアを与えることで、その表面電位(ゼータ電位)はプラスを示す複合微粒子が得られた。この複合微粒子では、重合体が無機顔料の少なくとも一部に結合して被覆層を形成することにより無機顔料同士の過度の凝集が抑制されたため、塗料の増粘や塗膜の白濁等の凝集によって生じるトラブルが抑制され、高印字濃度の鮮明な画像を得ることが出来た。更に、複合化により高まったインク定着能による影響のためか、高温高湿環境下における熱湿にじみや耐オゾン性も良好であった。
従って、本願は以下の発明を包含する:
(1)平均粒子径1μm以下の無機顔料と、分子内にアミノ基とZr−O−Si結合を含む重合体とを、該無機顔料の周囲の少なくとも一部に該重合体を結合して備える複合微粒子。
(2)平均粒子径1μm以下の無機顔料と、分子内にアミノ基とZr−O−Si結合を含む重合体を水性分散液中に共存させ、機械的シェアを与えて得られることを特徴とする複合微粒子。
(3)重合体の重量平均分子量が500〜500,000である(1)又は(2)に記載の複合微粒子。
(4)重合体が平均粒子径1〜50nmの超微粒子である(1)〜(3)のいずれかに記載の複合微粒子。
(5)無機顔料が、シリカであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の複合微粒子。
(6)シリカが、気相法シリカであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の複合微粒子。
(7)複合微粒子が、無機顔料と重合体が共存する水性分散液に、機械的シェアを与えることで無機顔料と重合体を複合化されたものであることを特徴とする(1)、(3)〜(6)のいずれかに記載の複合微粒子。
(8)無機顔料と重合体の固形分比率が、無機顔料100質量部に対して、重合体2〜20質量部であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の複合微粒子。
(9)重合体が、アミノ基含有シランカップリング剤とジルコニウム化合物の重合により形成されたものであることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の複合微粒子。
(10)重合体となるアミノ基含有シランカップリング剤が、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシランから成る群より選ばれる少なくとも一種、その加水分解物並びに/またはその重合体であることを特徴とする(9)に記載の複合微粒子。
(11)ジルコニウム化合物が、オキシ塩化ジルコニウムまたはその重合体であることを特徴とする(9)又は(10)に記載の複合微粒子。
(12)重合体が、ヒドロキシカルボン酸を含む水性溶媒中で重合により形成されたものであることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の複合微粒子。
(13)重合体となるアミノ基含有シランカップリング剤とジルコニウム化合物の比率が、アミノ基含有シランカップリング剤1molに対して、ジルコニウム化合物が0.1〜1molであることを特徴とする(9)〜(12)のいずれかに記載の複合微粒子。
(14)重合体の平均粒子径が1〜5nmであることを特徴とする(4)〜(13)のいずれかに記載の複合微粒子。
(15)(1)〜(14)のいずれかに記載の複合微粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録体。
(16)平均粒子径1μm以下の無機顔料と、分子内にアミノ基とZr−O−Si結合を含む重合体を水性分散体液中に共存させ、機械的シェアを与えることを含む、複合微粒子の製造方法。
本発明の複合微粒子は、特にインクの定着能が良好なため、高温高湿下でも画像の鮮明性が良好で、且つ耐オゾン性も良好な銀塩写真調光沢インクジェット記録体向け材料として好適に用いうる。
(複合微粒子の調製)
本発明の複合微粒子は、平均粒子径1μm以下の無機顔料が「分子内にアミノ基とZr−O−Si結合を含む重合体」と複合化されてなる。複合化とは、無機顔料の周囲の少なくとも一部にその重合体を結合している状態である。より好ましくは、無機顔料の周囲に被覆層を形成した状態である。以下に、複合微粒子の原料となる重合体と無機顔料、及びその調製方法や条件について示す。
(粒子内にアミノ基とZr−O−Si結合を含む重合体の調製)
複合微粒子に供する「分子内にアミノ基とZr−O−Si結合を含む重合体」は、構造としてはアミノ基とZr−O−Si結合が含まれていればよく、それぞれの分布状態や分子形状、及び調製法は特に限定するものではないが、好適な調製法の一例として、アミノ基含有シランカップリング剤をジルコニウム化合物の存在下溶媒中で重合させる方法があげられる。
アミノ基含有シランカップリング剤は、水を含む溶媒中に溶解すると加水分解によりシラノール基が生成し、一部のシラノール基同士が縮合してSi-O-Si結合を形成する。このときジルコニウム化合物が存在すると、一部のシラノール基はジルコニウム化合物とZr−O−Si結合を介して結合する。シランカップリング剤は通常2個又は3個のシラノール生成基を有しており、Si-O-Si結合とZr−O−Siの生成が進行する結果、通常三次元の重合体が生成する。この三次元重合体は超微粒子とみなすこともできる。
アミノ基含有シランカップリング剤の具体的な構造としては特に限定するものではないが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(CAS番号4369−14−6)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(CAS番号21142−29−0)、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(CAS番号1760−24−3)、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン(CAS番号5089−72−5)、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(CAS番号3069−29−2)、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(CAS番号3086−76−6)、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、等が例示でき、信越化学工業株式会社、GE東芝シリコーン株式会社、東レ・ダウコーニング株式会社等、各社からシランカップリング剤の名称で市販されている。中でも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシランは、アミノ基含有シランカップリング剤の中でもアミノ基1個あたりの分子量が小さいのでカチオン性が高く、且つシラノール基となるアルコキシル基も多いために重合反応性が高く、好適に利用される。
アミノ基含有シランカップリング剤は、まずアルコキシル基をシラノール基に変換するために、予め加水分解することが好ましい。シラノール生成基がメトキシ基の場合には加水分解速度が速いので予め加水分解する操作を省略することもできる。加水分解は、従来公知の方法、例えば、溶媒中で水と反応させ、必要に応じて酸やアルカリなどの触媒を添加する方法等により行うことができる。
加水分解を行う溶媒は、加水分解後のシランカップリング剤が均一に溶解することが可能であれば、特に種類は限定しないが、反応の必須成分でもある水が最も好適である。加水分解時のアミノ基含有シランカップリング剤の濃度は、低すぎるとジルコニウム化合物との重合反応が進行しにくくなり、高すぎるとジルコニウム化合物との反応前に、アミノ基含有シランカップリング剤単独で過度の重合が進行してしまうため、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜45質量%、最も好ましくは10〜40質量%が好適である。また、過度の重合物であるゲル状物の発生を抑制するために、アミノ基含有シランカップリング剤を溶媒に希釈する際は、溶媒を攪拌した状態で徐々に滴下すると良い。
加水分解時に酸を添加すると、アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解反応を促進しつつ、生成するシラノール基の安定性を高めて過度の重合を抑制する、などの効果が期待できる。酸の添加時期は、シランカップリング剤滴下前に予め溶媒に混合しておいても良いし、滴下後の溶液に後から混合してもよい。酸の種類は特に限定するものではないが、代表例としては、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、燐酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、フタル酸などが例示でき、他にも例えば「化学便覧 基礎編 改訂5版(社団法人日本化学会編、丸善株式会社発行)11章」に記載の各種、無機酸、有機酸が使用できる。
各種酸の中でも、重合体から調製する複合微粒子を塗料化する際の増粘が少ないことから一価の酸が好適に利用される。また、重合体分散液調製時の粗大粒子の生成が少なく、粒径制御が比較的容易であることから、カルボン酸が好適であり、中でも水酸基を有するヒドロキシカルボン酸が最も好適に利用できる。具体的にはα−乳酸、グリコール酸が価格、性能の面から最適な材料であるといえる。
アミノ基含有シランカップリング剤の滴下や酸添加を行うと希釈熱や反応熱が発生するため、シランカップリング剤同士の不適な重合が促進される恐れがある。そのため溶液の液温は、過度に上昇しないよう制御しておくのが好ましい。但し、ジルコニウム化合物との反応性を保てる範囲内であれば、アミノ基含有シランカップリング剤同士の重合をある程度意図的に進行させておいても良い。
以上のようにして、アミノ基含有シランカップリング剤溶液の調製を行うが、代わりにもしくは混合して、市販されているアミノ基含有シランカップリング剤の加水分解溶液(例えば、商品名:KBP−90、信越化学工業株式会社製:32%水溶液)や、アミノ基含有シランカップリング剤の重合物溶液(例えば、サイラエースS−330、サイラエースS−320、チッソ株式会社製)等を使用しても良い。
一方、「Zr」の供給源として利用できるジルコニウム化合物としては、特に種類を限定するものではないが、塩化ジルコニウム(ZrCl4)、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・nH2O)、硫酸ジルコニウム(Zr(SO42・nH2O)、オキシ硫酸ジルコニウム(ZrOSO4・nH2O)、硝酸ジルコニウム(Zr(NO34・nH2O)、オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・nH2O)、酢酸ジルコニウム(Zr(CH3COO))、二酢酸ジルコニウム(Zr(CH3COO)2)、四酢酸ジルコニウム(Zr(CH3COO)4)、オキシ酢酸ジルコニウム (ZrO(CH3COO)2)、炭酸ジルコニウムアンモニウム((NH42ZrO(CO32)等、各種ジルコニウム塩の他、各種ジルコニウムアルコキシド等が例示される。但し、ジルコニウム化合物の中でもジルコニウムアルコキシドは、その加水分解及び重合反応速度が非常に速いため、反応の制御が難しく、特にアルコキシル基の多いものほど急激な重合による粗大な水酸化ジルコニウムの沈殿が生成しやすい傾向があるため注意を要す。最も好ましい溶媒である水に対する溶解性や、化合物自身のpH、コストを鑑みると、化学式中にZrOの単位を有しているジルコニウム塩、すなわちオキシジルコニウム塩が好ましく、中でもオキシ塩化ジルコニウム(別名:塩化ジルコニル、酸化塩化ジルコニウム)が最も好適である。このオキシ塩化ジルコニウムは、例えば、第一稀元素化学工業株式会社より製品名:酸塩化ジルコニウム、ジルコゾールZC、ジルコゾールZC−20として購入することができる。
ジルコニウム化合物は、溶液中で加水分解が進行し多核イオンを形成することが知られており(「無機化学」J.D.LEE著、東京化学同人、1982年、321ページ)、アミノ基含有シランカップリング剤と反応させる前にジルコニウム化合物の加水分解を意図的に行って多核イオンの含有量を高めてもよい。また、多核イオンの含有量を高めた市販のジルコニウム化合物(例えば、商品名:ジルコゾールZC−2、第一稀元素化学工業株式会社製)を利用しても良い。
これらはアミノ基含有シランカップリング剤と同様に、適当な溶媒に均一に溶解した後、重合体調製に供される。溶解に好ましい溶媒、濃度は、前述のアミノ基含有シランカップリング剤と同様である。
各種ジルコニウム化合物として、2種類以上の化合物を混合使用しても良い。
以上の通りに調製したアミノ基含有シランカップリング剤溶液とジルコニウム化合物溶液を混合状態で重合させることで、重合体を調製する。両溶液を混合させる際の溶液pHが高すぎるとインクジェット記録体の品質低下につながる水酸化ジルコニウムの粗大粒子が析出しやすいため、溶液pHは常に7以下の酸性に保つことが好ましい。アミノ基含有シランカップリング剤の溶液pHは通常7以上であるため、酸を添加することはpH調整の観点からも望まれる。また、ジルコニウム化合物水溶液もpHが高い場合は、混合前に酸を添加しても良い。好ましい混合方法は、酸性を示すジルコニウム化合物水溶液を攪拌しながら、酸性に調整したアミノ基含有シランカップリング剤または加水分解後のアミノ基含有シランカップリング剤水溶液を少しずつ添加する方法であり、水酸化ジルコニウムの析出を抑制しやすいため好適である。
重合体の重量平均分子量は限定するものではないが、重量平均分子量が500〜500,000の範囲が好ましく、より好ましくは500〜250,000であり、更に500〜50,000が最も好ましい。重量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によりポリエチレングリコール換算を測定することができる。重量平均分子量が500未満では、定着剤成分を重合体化することで得られるメリットである塗料の安定性向上や、画像保存性向上効果が十分に発現しなくなり、逆に重量平均分子量が大きすぎると、インク受容層の光沢低下や透明性低下による印字濃度低下を招くおそれがある。
前記したように、本発明の重合体は通常三次元の重合体であって、その場合超微粒子とみなすこともできる。超微粒子としての平均粒子径は1〜50nmが好ましく、より好ましくは1〜20nmであり、更に1〜5nmが最も好ましい。平均粒子径が1nm以下では、定着剤成分を重合体化することで得られるメリットである塗料の安定性向上や、画像保存性向上効果が十分に発現しなくなり、逆に平均粒子径が大きすぎると、インク受容層の光沢低下や透明性低下による印字濃度低下を招くだけでなく、複合微粒子化する際に無機顔料との結合力に支障をきたすおそれがある。但し、インク受容層の面質に支障を及ぼさない範囲であれば、若干量の粗大粒子が混入しても定着剤としての機能に影響はない。
ここで、平均粒子径とは市販の粒子径測定装置を用いて、動的光散乱法によって測定される粒子径(キュムラント法で求められる値)である。前述の超微粒子は粒子径が非常に小さいため、測定精度を確保するために測定可能下限レンジが1nm以下の装置を利用することが好ましい。
平均分子量や平均粒子径は、原料となるアミノ基含有シランカップリング剤とジルコニウム化合物の種類や比率によって最も影響を受けるが、前述の通り、重合時の溶液の混合順やpH、温度及び時間、もしくは攪拌条件等である程度制御することが可能である。
重合反応は溶液温度が高いほうが促進されるが、原料の反応性が比較的高いこと、且つ、得られる重合体がインク受容層の主成分である無機顔料に強固に結合するためにある程度の反応基が重合体に残存していた方が好ましいこと、等の理由から重合反応は比較的緩やかな条件で進行させることが好ましい。また、アミノ基の変性による溶液の黄変を回避するためにも、反応温度はあまり高くしない方が良く、短時間で重合を完了させたい場合を除いては、反応温度は5〜90℃、更に好ましくは10〜80℃、最も好ましくは20〜70℃が良い。即ち、ある程度の反応時間を確保できる場合は、各成分を十分に混合した後、特に加熱は行わず混合液を常温で保管(熟成)しておくだけでも、重合反応を緩やかに進行させることができる。中でも、加水分解速度が速く、反応しやすい材料(例えば、メトキシ型アミノ基含有シランカップリング剤)を用いる場合は、各材料を室温で数分混合しただけでも、処方によっては所望の重合体を得ることができる。
また、粗大な重合物の生成を抑制するため、溶液混合時から重合反応中は溶液を攪拌することが望ましいが、前述の常温熟成のように重合速度が穏やかな場合は、溶液混合時以外は、常時攪拌をしなくともよい。
分子内にアミノ基とZr−O−Si結合を含む重合体の原料となる、アミノ基含有シランカップリング剤とジルコニウム化合物、双方の混合比は、両成分の種類、具体的にはアミノ基含有シランカップリング剤のアミノ基やアルコキシル基の数、ジルコニウム塩の対イオンの種類などによって大きく異なるため、特に限定できるものではない。但し、ジルコニウム化合物の混合比が多すぎると、両者の複合化が生じにくくなるためか、画像の定着能が悪化する傾向が見られる。また、どちらかが極端に少なすぎても、両者を併用する効果が得られないため好ましくない。具体的な混合比率としては、アミノ基含有シランカップリング剤1molに対して、ジルコニウム化合物を0.01〜5mol混合させるのが好ましく、より好ましくは0.1〜1molが好適である。
意図したアミノ基含有シランカップリング剤とジルコニウム化合物の結合の生成は、赤外吸収スペクトルのZr−O−Si結合を示す約1000cm-1近辺のピークから確認することができる(参考文献「無機高分子I」梶原鳴雪監修、1992年、産業図書株式会社発行)。
なお、重合体の構成成分としては、前述のアミノ基含有シランカップリング剤とジルコニウム化合物及び酸のほかにも、必要に応じて各種材料を用いることができる。例えば、重合体の平均分子量や平均粒子径、反応性および親水性に影響を及ぼす、各種シランカップリング剤やジルコニウム以外の金属化合物等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
(平均粒子径1μm以下の無機顔料)
複合微粒子に供する無機顔料としては、平均粒子径1μm以下のものを選択する。より好ましくは500nm以下の微細顔料を用いることにより、インク吸収性に優れ、透明性、光沢性にも優れる受容層が得られるが、これに限定するものではない。種類は限定されないが市販の顔料、例えばシリカ、アルミノシリケート、カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化錫、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミナ、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土等、一般塗工紙或いはインクジェット記録体の分野で公知の各種無機顔料が挙げられる。これらの微細顔料の中でも、特にシリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミナは細孔容積が大きく、インク吸収性に優れるので好適に用いられる。
高光沢、高透明性のインク受容層を得るためには、微細顔料として、平均粒子径3〜40nmの一次粒子が凝集して、平均粒子径500nm以下の二次粒子を形成している微細顔料を使用するのが好ましい。特に二次粒子の粒子径は、好ましくは8〜400nm、より好ましくは10〜300nmである。このような二次粒子は二次粒子内部に空隙があるので細孔容積が大きい。さらに二次粒子間の空隙もインク吸収に利用できるためインク吸収能力が高い。また、一次粒子は光の波長に比べて充分小さいので二次粒子を形成していない顔料と比較して光の散乱能力が小さく、インク受容層の透明性が高くなる利点がある。顔料の一次粒子径や二次粒子径が小さすぎるとインク吸収に寄与する空隙を形成し難くなるため、インク受容層のインク吸収性が劣るおそれがある。逆に、一次粒子径や二次粒子径が大きすぎるとインク受容層の透明性が低下し、高印字濃度を得にくいおそれがある。また、二次粒子径が大きすぎると、インク受容層の光沢が低下するだけでなく、表面のざらつきや、粉落ちの原因となるおそれがある。なお、本発明でいう顔料の一次粒子径はすべて電子顕微鏡(SEM及びTEM)で観察した粒子径(マーチン径)である(「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52参照)。また、二次粒子径は、動的光散乱法によって測定した粒子径である。
また、インク吸収能の高いインク受容層を得るためには、微細顔料の細孔容積は高い方が好ましいが、本発明に好適に用いられる微細顔料の細孔容積は、0.4〜2.5ml/gである。好ましくは0.4〜2.0ml/gであり、より好ましくは0.6〜1.9ml/g、最も好ましくは0.7〜1.8ml/gである。この細孔容積は、ガス吸着法による比表面積・細孔分布測定装置を用いて求めた値である。尚、本発明では細孔容積が細孔径100nm以下の細孔の全細孔容積である。
これらの微細顔料の製造方法は特に限定されないが、その手段の一つとして市販の顔料(数μm)に機械的手段で強い力を与えることにより粉砕、分散して得る方法が挙げられる。つまり、breaking down法(塊状原料を細分化する方法)によって得られるものである。機械的手段としては、高速回転式ホモジナイザー、圧力式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ロールミル、ボールミル、振動ミル、ビーズミル、サンドグラインダー、ジェットミル等の機械的手法が挙げられる。得られる微細顔料はコロイド状であっても、スラリー状であっても良い。その他の好ましい微細顔料の製造方法として、特開平5−32413号公報や特開平7−76161号公報などに開示されている金属アルコキシドの加水分解による方法が挙げられる。
前述の如き無機顔料の中でも、特にシリカは細孔容積が大きいので好ましい。シリカにはケイ酸アルカリ塩を原料とする湿式法シリカや、四塩化珪素などの揮発性珪素化合物を火炎中で分解する乾式法シリカ、メソポーラスシリカなどがあるが、いずれも好ましい。乾式法シリカは非常に嵩高い微粒子状シリカであり、容易に水分散液とすることができ、インク受容層に用いるとインク吸収性、光沢度、塗膜透明度ともに非常に優れている。比表面積が異なるものが各種市販されている。水分散液の平均粒子径は、分散液の製造方法により異なるが、およそ100nm〜900nmの範囲である。水分散液を乾燥して窒素吸着法による比表面積と細孔容積を測定した場合には、およそ比表面積50m2/g〜400m2/g、細孔容積が0.6ml/g〜1.8ml/gの範囲である。
また、特開2001−354408号公報に記載されている「窒素吸着法による比表面積が300m2/g〜1000m2/gで、細孔容積が0.4ml/g〜2.0ml/gであるシリカ微粒子がコロイド状に分散した液をシード液とし、該シード液にアルカリを添加したのち、該シード液に対し活性ケイ酸水溶液及びアルコキシシランから選ばれる少なくとも一種類からなるフィード液を少量ずつ添加してシリカ微粒子を成長させることを特徴とする、窒素吸着法による比表面積が100m2/g〜400m2/g、平均二次粒子径が20nm〜300nm、かつ細孔容積が0.5ml/g〜2.0ml/gのシリカ微粒子がコロイド状に分散したシリカ微粒子分散液の製造方法」によって製造される微細シリカも、好ましく使用できる。
特開2001−354408号公報で開示されている活性ケイ酸の縮合による方法は、機械的手段によらずに直接、上記の粒子径や細孔容積を有する微細シリカを製造でき、かつ粒度分布が狭いので透明度や光沢が良好な塗工層となるため好ましく用いることができる。ここで、活性ケイ酸とは、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を水素型陽イオン交換樹脂でイオン交換処理して得られるpH4以下のケイ酸水溶液をさす。SiO2濃度として1〜6質量%が好ましく、より好ましくは2〜5質量%でかつpH2〜4である活性ケイ酸水溶液が望ましい。アルカリ金属ケイ酸塩としては、市販工業製品として入手できるものでよく、より好ましくはSiO2/M2O(但し、Mはアルカリ金属原子を表す)モル比として2〜4程度のナトリウム水ガラスを用いるのが好ましい。活性ケイ酸の縮合方法としては、熱水に活性ケイ酸水溶液を滴下するか、活性ケイ酸水溶液を加熱してシード粒子を生成させ、分散液が沈殿を生じる前、若しくはゲル化する前にアルカリを添加してシード粒子を安定化し、次いで該安定状態を保ちながら活性ケイ酸水溶液をシード粒子に含まれるSiO21モルに対してSiO2に換算して0.001〜0.2モル/分の速度で添加してシード粒子を構成する各一次粒子を成長させたものが好ましい。平均二次粒子径は1μm以下であり、好ましくは20nm〜800nm、最も好ましくは30nm〜700nmである。尚、この平均二次粒子径は動的光散乱法を採用した粒度計で測定し、キュムラント法で解析した値である。
(複合微粒子の調製方法・条件)
無機顔料と重合体の複合化手段は特に限定するものではなく、それぞれの材料の特性によって細かな条件も異なるが、好適な一例として、両者を混合して凝集・増粘したスラリーを、再度機械的に分散・粉砕し、凝集体の二次粒子径を所望の粒子径に調整する手法が挙げられる。また分子内にアミノ基とZr−O−Si結合を含む重合体を含む水分散液に強い機械的シェアを与えながら無機顔料を徐々に添加・分散することでも達成できる。この手段を経ることにより、前述の重合体は無機顔料の周囲を比較的安定した状態で被覆するため、電荷の異なる成分が混在した状態でも複合微粒子分散液は高度に安定化される。重合体と無機顔料の結合はイオン結合、水素結合、共有結合が考えられるが、結合の種類は関係なく、重合体と無機顔料が一体として運動し、複合微粒子表面の電位(ゼータ電位)が全体としてプラスとなっていれば複合化は達成される。ゼータ電位が+5mV以上、好ましくは+10mV〜+60mVであるとインク定着能に優れる。この効果を充分得るためには、複合化に使用する重合体の量が無機顔料に対して少なすぎると、無機顔料の周囲を安定的に取り囲むことが出来ないため、複合化後のスラリーや塗料の安定性が下がってしまう懸念がある。一方、逆に重合体が多すぎても、インク吸収性を阻害するため不適である。具体的には、無機顔料100質量部に対して重合体が0.5〜30質量部程度、更に好ましくは、2〜20質量部、最も好ましくは5〜15質量部であることが適当であるが、あくまでも無機顔料もしくは重合体の種類(組成)や分子量、形状によって最適量は異なるため、この範囲に限定されるものではない。
本発明の重合体は重合体化した効果のためか、水溶性ジルコニウム化合物などに例示される水溶性多価金属化合物に比べ、インク受容層の主成分となる無機顔料と混ぜ合わせた際のショックが軽減されているが、混合時にはある程度の凝集・増粘は生じる。この凝集・増粘した無機顔料と重合体の混合スラリーを再度分散・粉砕する手法としては、平均2次粒子径が1μm程度までは回転式ホモミキサーなどの弱い機械力で達成しうるが、平均2次粒子径を1μm以下に粉砕するにはより強い機械力を加えることが均一な複合微粒子が得られるので好ましく、そのための手法として圧力式分散方式が望ましい。好ましい具体例としては、原料粒子のスラリー状混合物に高圧をかけて狭いオリフィスを通過させることにより粉砕する方法であり、処理圧力は、好ましくは10〜350MPa、より好ましくは20〜300MPa、さらに好ましくは、30〜200MPaである。上記高圧粉砕により処理することで良好な分散あるいは粉砕が達成できる。この方式の装置を高圧力式ホモジナイザーと呼ぶ。さらに高圧でオリフィスを通過した高速のスラリー状混合物を対向衝突させたり、固定された壁に衝突させることにより分散、或いは粉砕する方式を用いると、より好ましい。対向衝突による方法は、分散液を加圧することによって入口側に導き、分散液を二つの通路に分岐してさらに流路をオリフィスにより狭めることによって流速を加速して対向衝突させ、それによって粒子を衝突させて粉砕する。分散液を加速したり衝突させたりする部分を構成する材料としては、材料の摩耗を抑えるなどの理由からダイヤモンドが好ましく用いられる。
高圧力式ホモジナイザーとしては、マイクロフルイタイザー(マイクロフルイディックス社製)、アルティマイザー(株式会社スギノマシン製)、ホモゲナイザー(三和機械株式会社製)、ナノマイザー(吉田機械興業株式会社製)が用いられ、特に対向衝突型ホモジナイザーとしてマイクロフルイタイザー、ナノマイザ−が好ましい。このようにして複合化処理された微細顔料は、一般に固形分濃度が5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%の水分散体(スラリーあるいはコロイド粒子)として得られる。
以上の通りに調製される複合微粒子はインクジェット記録体の材料として好適に利用される。複合微粒子を適用するインクジェット記録体について、以下に示す。
(基材)
本発明の複合微粒子を含有するインクジェット記録体には、インク受容層となる塗工層を塗布できるものであれば、各種基材を使用することができる。例えば、上質紙、アート紙、コート紙、板紙、ダンボール、プラスチックフィルム、不織布、金属箔、ガラス等が例示できる。特に、王研式透気度が500秒/100ml未満の透気性を有する基材を用いた場合は、記録体の最表層を加熱した光沢ロールにより塗工層を乾燥する所謂キャスト処理が可能なため、高光沢の記録体を得ることができる。また、透気性基材は比較的比重が低いこともあり概して吸液性も高いものが多く、基材もインク吸収に寄与できるという点で好適ではあるが、塗工や印字の際の吸液により膨張するため、皺やボコツキが発生しやすい側面がある。その点で支障が出た場合は、下塗り層や裏面層の塗設が効果的である。また、これらを懸念する必要がないという点で、低透気性又は非透気性基材が好適に使用できる。
本発明において、低透気性又は非透気性の基材とは、王研式透気度が500秒/100ml以上、好ましくは800秒/100ml以上、より好ましくは1000秒/100ml以上であるような基材を意味する。このような、基材を用いると、基材自身への水蒸気や水分の浸透を防ぐことができ、コックリングなどが抑えられた写真調の質感を有するインクジェット記録体を簡便に得ることが出来る。
使用出来る基材としては、例えば、ポリエチレン樹脂を紙基材の両面に被覆した、所謂樹脂被覆紙、ポリプロピレンを延伸し、特殊加工を施した、ユポ(商品名:ユポ・コーポレーション社製)に代表される所謂合成紙、セロハン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PETなど)、ポリスチレンなどのフィルム、金属蒸着紙、透気度を調節した紙類などが挙げられる。中でも、樹脂被覆紙、合成紙、フィルムの使用が好ましい。
特に、酸化チタンを練り込んだポリエチレンを、紙表面に被覆した樹脂被覆紙は、仕上がった外観が写真印画紙と同等であるため、好ましく用いられる。ポリエチレン被覆層の厚みは、3〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。ポリエチレン被覆層の厚みが3μm未満の場合は、樹脂被覆時にポリエチレン樹脂の穴等の欠陥が多くなりやすく、厚みのコントロールに困難がある場合が多く、平滑性も得にくくなる。逆に50μmを超えると、コストが増加する割には、得られる効果が小さく、不経済である。また、後述する下塗層又はインク受容層の接着性を高めるため、被覆層表面にコロナ放電処理を施したり、ゼラチンなどのサブコート層を設けることが好ましい。
この樹脂被覆紙に用いる紙基材としては、木材パルプを主材料として製造されているものが使用される。木材パルプは、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を適宜使用することができ、これらのパルプは紙力や平滑性、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。叩解度は、特に限定しないが、一般に250〜550ml(CSF:JIS−P−8121)程度が好ましい範囲である。また、所謂ECF、TCFパルプ等の塩素フリーパルプも好ましく使用できる。また、必要に応じて、顔料を添加することができる。顔料には、タルク、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、シリカ、ゼオライト等が好ましく使用される。顔料の添加により、不透明性や平滑度を高めることができるが、過剰に添加すると、紙力が低下する場合があり、顔料の添加量は、対木材パルプ1〜20質量%程度が好ましい。
また、基材として、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の透明性が優れているプラスチックフィルムを用いると、バックプリントやOHPシート等の光透過性記録媒体として利用できるインクジェット記録体を作製することができる。本発明で得られるインク受容層は、高透明性であるため、これらの媒体に好適に利用できる。
基材の厚さは、プリンターの通紙性を考慮すると50〜500μmが好ましい。特に、吸水性基材の場合は、あまり基材が薄いと湿潤時の強度や寸法安定性の低下が懸念されるため、比較的厚めの100〜500μmが望ましい。
また、インクジェット記録体のカール抑制や、搬送性の向上のため、基材のインク受容層とは反対側に裏面層を設けることもできる。特に、透気性もしくは吸水性の高い基材を用いる場合は、手触り感を銀塩写真により近づけるためにも裏面層を塗設することが望ましい。裏面層の構成及びそれに伴う基材シート裏面の易接着処理等はその用途に応じて選択することができ、特に限定されるものではないが、塗工性、コストを鑑みると顔料と親水性樹脂を主成分とする裏面層を設けることが好適である。但し、裏面層の吸水性が高すぎると、印刷後に積層した記録体が貼り付いたり、べたついたりするため好ましくない。また、裏面層の代わりに樹脂被覆紙の樹脂被覆を裏面側にのみ設けた基材も好適に用いられる。
更に両面印刷を想定し、インク受容層を含む塗工層を両面に設けても良く、またラベルやシール用途に対応すべく、裏面に粘着加工を施しても良い。
(下塗り層の形成)
本発明の複合微粒子を含有するインクジェット記録体には、上記の基材とインク受容層の間に、顔料とバインダーを含有する下塗り層を形成してもよい。下塗り層には、基材の寸法安定性や、平滑性、色調を修正したり、インクジェットインク成分中の溶媒を速やかに吸収するなどの機能を付与することができる。インク受容層で定着できなかったインクジェットインク成分中の着色剤すなわち染料を定着させてもよい。特に吸水性基材を使用する場合は、前述の通り湿潤時の強度や寸法安定性の観点からも下塗り層を塗設する事が望ましい。
下塗り層に使用される顔料としては、コロイダルシリカ、無定形シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン等の透明又は白色顔料が例示される。後述の本発明の複合微粒子などのインク受容層や光沢層で使用する顔料も使用できる。これらの内で特に好ましい顔料は、無定形シリカである。
無定形シリカを使用する場合、無定形シリカは、平均一次粒子径3〜70nmで、且つ、平均二次粒子径20μm以下であることが好ましく、平均一次粒子径10〜40nmで、且つ、平均二次粒子径15μm以下のものがより好ましい。下塗り層に使用される無定形シリカの平均二次粒子径は、インク受容層に使用される無定形シリカの平均二次粒子径より大きいことが好ましい。下塗り層に使用される無定形シリカの平均二次粒子径が、インク受容層に使用される無定形シリカの平均二次粒子径より小さい場合は、インク吸収性が低下する場合がある。
下塗り層のバインダー樹脂としては、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白等の蛋白質類、澱粉、酸化澱粉、加工澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス等一般に塗工紙用として用いられている従来公知のバインダーが単独、あるいは数種類を組合せて用いられる。
下塗り層における顔料とバインダーの配合割合は、その種類にもよるが、一般に顔料100質量部に対しバインダー1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で調節される。
下塗り層にも、インク受容層から浸透してきたインクを捕らえ、染料を固着し、耐水性を付与し、記録濃度を向上させるために、必要に応じてインク定着剤であるカチオン性化合物を添加することができる。
添加するカチオン性化合物としては本発明の複合微粒子の原料である重合体が例示できるが、一般的なカチオン性樹脂であっても良い。但し、前述の通りカチオン性樹脂は定着以外の画像保存性を損なう恐れもあるため、使用量は最小限に抑制することが望ましい。
ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートの重合物、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体の重合物、ビニルアミン重合物又はその誘導体、アリルアミン重合物又はその誘導体、ジアリルアミン重合物、ジアリルメチルアミン重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルアミン−二酸化イオウ共重合、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−二酸化イオウ共重合物、アクリルアミド−ジアリルアミン共重合物、アクリルアミド−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合物、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カチオン樹脂、ジシアンジアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カチオン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、アクリロニトリルとN−ビニルホルムアミド共重合体の加水分解物、ポリビニルアミジン系樹脂等のカチオン樹脂が例示でき、単独又は数種類を組み合わせて使用しても良い。
下塗り層を形成するための塗布液には、上記成分の他に、更に、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤、蛍光染料、着色剤等の各種助剤が適宜添加される。
下塗り層の塗布量は、0.5〜30g/m2程度であり、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター等、各種公知の塗工装置で形成できる。特に、エアーナイフコーターは、幅広い塗料物性、塗布量に対応可能なため、好適に用いられる。また、ダイコーターやカーテンコーターは、塗布量の均一性に優れるため、特に高精細な記録を目的とする光沢タイプのインクジェット記録体には、好ましい塗工方法である。
(インク受容層の形成)
本発明の「平均粒子径1μm以下の無機顔料が、分子内にアミノ基とZr−O−Si結合を含む重合体と複合化されてなる複合微粒子」は、前述の下塗り層に使用しても良いが、インクジェット記録体の中でもインク吸収・定着の要となる多孔質インク受容層の主成分として使用することで、その性能を最大限に発揮する。
多孔質インク受容層を形成するその他材料に関し、下記に示す。
多孔質インク受容層は、微細顔料とその成膜に要するバインダー樹脂を必須成分として構成される。微細顔料としては、本発明の複合微粒子を始め、複合微粒子の原料として例示した無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメントなどの有機顔料などの一般塗工紙或いはインクジェット記録体の分野で公知の各種顔料を単独もしく混合して利用できる。但し、塗料安定性の観点から複合微粒子を単独で使用することが最も望ましく、他の顔料を混合する場合も、その添加量は複合微粒子の品質を妨げない範囲が良い。また、塗料調製前に各種顔料に前処理を行ってもよい。
本発明のインクジェット記録体のインク受容層のバインダー樹脂成分としては、特に限定するものではないが下塗り層の材料として例示した各種樹脂が単独もしくは数種類組み合わせて使用される。
中でも、主成分となる顔料との混和性、塗工適性、得られるインクジェット記録体の品質の観点からポリビニルアルコールもしくはその誘導体が最も好適に使用される。けん化度は特に限定するものではなく、70〜99.9mol%の範囲で適宜使用可能であるが、けん化度が低すぎると親水性が低下し、高すぎるとフィブリル化などのおそれもあるため、好ましくは75〜99.9%、より好ましくは78〜99.8%である。また、重合度としても200〜4500で適宜使用可能であるが、あまり低すぎると塗料粘度が低くなりすぎたり、ひび割れを抑制することが出来ないおそれがあり、高すぎると塗料粘度が高くなりすぎるので、好ましくは1000以上、より好ましくは1000〜4500である。
また、印字後の経時的な色調変化には、インク中に含まれる親水性高沸点溶剤との親和性の高い樹脂を単独で、又は混合して使用することも効果的である。インク中に含まれる親水性高沸点溶剤としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、2−ピロリドン、チオジグリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,5−ペンタンジオール等があり、これらの溶剤との親和性が高い樹脂としては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明に使用する複合微粒子は高いインク定着能を有するため、基本的には他のインク定着剤を併用する必要は無い。ただし、色調調整など定着能以外の意図も加味し、複合微粒子の性能を大きく妨げない範囲内で、水溶性カチオン樹脂、もしくはエマルジョンタイプのカチオン性樹脂、多価金属塩化合物などの各種カチオン性無機塩などの中から、単独又は数種類を組み合わせて必要に応じて配合してもよい。その場合、併用するインク定着剤の使用量は最小量とし、その添加手段は塗工層の不透明化を最大限に抑制するため、インク受容層を多層化したり、併用インク定着剤を別途積層塗布するなどの構成が望ましい。
水溶性カチオン樹脂を併用する場合は比較的少量で効果のある1級アミン構造を有するカチオン樹脂が好適である。1級アミン構造を有する水溶性カチオン樹脂の具体例として市販品の一例をあげると、日東紡株式会社製PAA−10Cなどのアリルアミン重合体、ハイモ株式会社製ハイマックスSC−700Mなどの5員環アミジン構造を含有する重合体など、もしくはポリビニルアミンなどが例示できるが、これらに限定するものではなく、分子中に1級アミン構造を含有していれば、特に高分子の形状や共重合単位も限定されない。但し、これらカチオン樹脂は比較的黄変性が高く、高温高湿下で変色する可能性も高いため添加量の設定には特に注意を要す。
また、分子量として好適なのは、重量平均分子量として3000〜40万であるが、好ましくは5000〜35万、より好ましくは1万〜20万である。分子量が低いと塗料粘度があまり上昇しないため都合がよいが、反面インク受容層の吸収速度が比較的遅くなる傾向のため、両者のバランスをとる必要がある。
本発明のインク受容層は多孔質、具体的には細孔容積が0.2〜2.0ml/gの範囲になるよう調節することが好ましい。微細顔料の細孔容積の選択により、また、親水性樹脂の添加量を適切に調節することによりこの範囲内に調節することができる。細孔容積が0.2ml/g未満の場合、塗布量を多くしないとインクを吸収できないのでインクジェット記録体の製造コストが高くなる。また、2.0ml/gを越える細孔容積ではインク受容層の機械的強度が低下し、インク受容層に傷がついたり、剥がれたり、割れたりしやすくなり好ましくない。尚、本発明の細孔容積は細孔径100nm以下の細孔の全細孔容積である。
本発明に用いる水性塗料の好適な固形分濃度は、塗料組成によって大きく異なるが、水性塗料が安定かつ塗工可能な範囲内で、より高濃度であることが好ましい。それは、水性塗料が高濃度である程、乾燥負荷も軽くなるためである。水性塗料の固形分濃度は、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜25質量%である。
主成分以外にも、水性塗料の塗工性を著しく悪化させることなく、かつインク吸収に必要な細孔を保ち、インク受容層の耐水性を大幅に低下させることのない範囲内であれば、インク受容層に他の成分を添加することもできる。その一例として、インクジェット記録体の白色度を高める効果のある蛍光増白剤や、ひび割れやすい多孔質受容層のひび割れを抑制する効果のある、硼酸及び/または硼酸塩などの硼素化合物が例示される。
硼酸としては、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸等が挙げられる。また、これらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩であってもよい。これらの中でも、オルトホウ酸と四ホウ酸二ナトリウムが好ましい。なお、ホウ酸のナトリウム塩は硼砂と呼ばれることも多いが、その組成は通常Na247・10H2Oである。
その添加手段は、前述の通り水性塗料に予め内添しておくだけでなく、基材もしくは下塗り層にインク受容層の塗工前に塗布するか、塗工面が乱れない範囲であればインク受容層の塗工後乾燥前の水性塗料塗布層に積層してもよく、特にこれらに限定するものではない。均一に混合するという点では水性塗料に内添する手法が好ましい。水性塗料への内添以外の方法で硼素化合物を添加する場合は、インク受容層に対する拡散を意図して硼素化合物を下塗り層に内添しておいたり、硼素化合物を含む溶液とインク受容層となる水性塗料をWet−on−Wetで積層塗布したり、積層・噴霧等の手法を使って硼素化合物を含む溶液を水性塗料に積層塗布してもよい。硼素化合物を溶解する溶媒の種類は特に限定するものではないが、コスト、ハンドリングの面から水が最も好ましい。
また、消泡剤を混合して塗工時の作業性を向上したり、基材の濡れ性を良くして均一なインク受容層を得るために界面活性剤を配合してもよい。本発明で好適に使用される高細孔容積の微細顔料系塗料は粘度の経時増粘やチキソ性増大が起きやすく、塗工適性があまり良くないことが多い。その場合、塗料に界面活性剤を一定量添加すると、塗工適性が良好となるため好適である。その添加量は特に規定するものではないが、塗料の主成分である微細顔料100質量部に対して、0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部が好適である。界面活性剤の添加量が少なすぎると前述の塗料適正改善効果が充分に得られないため不適となる。一方、添加量が多すぎると、塗工後の塗膜から過剰量の界面活性剤が滲みだすことによって生じるブロッキングや裏面への転移のトラブルが発生するため不適となる。
添加する界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤のいずれであってもよい。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル塩系等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、アミン塩系、4級アンモニウム塩系等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系、ポリエチレングリコール系(高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、高級脂肪族アミンおよび脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物)、多価アルコール系(グリセリンおよびペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アルカノールアミド等)等が挙げられる。
上記界面活性剤の中でも、インクジェットプリンタのインクとの親和性が高いことから、ノニオン系界面活性剤が好ましく、さらには、ノニオン系界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤は、分子中にアセチレン性三重結合を形成する互いに隣接した炭素原子に酸素原子が結合されているため、ノニオン性でありながら、非常に強い極性を有している。そのため、少量の添加でも表面活性効果が高く、支持体に対する水性塗液の濡れ性を向上させることができる。また、一般的に、界面活性剤は気泡形成性が強いため、泡立ちという問題を生ずるが、アセチレングリコール系界面活性剤は消泡性を有しており、泡立ちを抑制できる。その中でも、アルキニレングリコール化合物とエチレンオキサイドとの付加反応生成物が好ましい。
その他、インクジェット記録体としての品質向上を目的として各種添加剤を添加しても良い。具体的には色調調成のための着色染料又は顔料、光安定剤や紫外線吸収剤などの画像保存性向上剤などがこれに当たるが、これらに限定するものではない。特に、蛍光増白剤と併せて色調調整剤として水系塗料に青系の着色顔料を添加すると、相乗効果により記録体の白さが視覚的により強調されるため好適である。
これらの添加物の添加方法としては、予め微細顔料と混合しておいてもよいし、塗料調製時に混合しておいてもよい。また、まず塗工層を形成してから添加物を含む溶液を、公知の塗工手段で上塗り、噴霧、含浸するなどの方法で、後から添加しても良い。また、本発明の複合微粒子の原料として利用した「分子内にアミノ基とZr−O−Si結合を含む重合体」を、分散液の状態で形成後のインク受容層に積層塗布してもよい。
インク受容層となる水性塗料の塗工方法としては前述の公知の塗布装置、例えば、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーターなどを用いることができるが、これらに限らない。また、多層式スロットダイコーター、多層式スライドダイコーター、多層式カーテンコーター等などの同時多層塗工装置を用いて、多層塗工を実施しても良い。
塗布量は、乾燥後の質量として1〜60g/m2程度が好ましく、さらに好ましくは3〜50g/m2程度である。ここで1g/m2より少ないとインクの吸収が不十分となりやすく、60g/m2より多いとカールが発生しやすくなるし、コストもかさむので好ましくない。インク受容層は2層以上形成してもよい。2層以上有する場合、配色は異なっていてもよい。
なお、インク受容層となる塗工層にあらかじめ活性エネルギー線硬化性材料を混合しておき、乾燥前の塗工層に活性エネルギー線を照射することで塗工層をゲル化させ、乾燥中に生じやすい塗工層のひび割れを抑制してもよい。使用する活性エネルギー線としては、特に種類を限定するものではないが、α線、β線、γ線、X線、紫外線、電子線などが挙げられる。ただし取り扱いが容易で一般的に普及している紫外線及び電子線を使用するのが好ましい。紫外線は、光重合開始剤や活性基を有する特定の親水性樹脂を使用する必要があるが、照射設備が安価な点が好ましい。もしくは、水性塗料中に特に開始剤等を添加しなくても前述の如く汎用の親水性樹脂の多くでハイドロゲルを形成可能な電子線が最も好適に使用できる。また、インク受容層は、透気性基材を用いる場合、インク受容層が湿潤状態であるうちに、加熱した光沢ロールに圧接して乾燥するキャスト処理を施すことができる。
(光沢層の形成)
本発明のインクジェット記録体は、必要に応じて、微細顔料を主成分とする光沢層を形成してもよい。コストを重視したり、用途に対して必要十分の光沢が得られている場合は、光沢層を形成しなくとも良い。但し、写真印刷用の場合には光沢層を塗設した方が好ましい。光沢層の形成時期は、多孔質インク受容層の乾燥途中であっても、乾燥終了後であっても良い。又、インク受容層と同時多層塗工してもよい。
光沢層用塗布液は、微細顔料やバインダー樹脂、カチオン性化合物などの任意のその他成分を含有する。光沢層を形成するための塗布液は、これらの成分を適当に分散媒に分散させることにより調製される。
光沢層に使用される微細顔料としては、コロイダルシリカ、無定形シリカ、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン等の透明又は白色顔料が例示されるが、これに限定されるものではなく、有機顔料も使用できる。本発明の複合微粒子を用いても良い。これらの中で、コロイダルシリカ、アルミナ又は無定形シリカが、特に光沢性が向上するので好ましい。コロイダルシリカ又はアルミナを使用する場合、平均一次粒子径5〜100nmが好ましく、10〜80nmがより好ましい。さらに好ましくは20〜70nmである。平均粒子径が5nm未満の場合は、インク吸収性が低下する場合があり、平均粒子径が100nmを超えると、透明性が低下するため印字濃度が低下する傾向がある。
無定形シリカを使用する場合、好ましくは平均一次粒子径5〜100nm、より好ましくは5〜40nmのものを用いる。また、無定形シリカは、好ましくは、平均二次粒子径1μm以下、より好ましくは10〜700nmのものを用いる。
微細顔料の接着性を高めるためにバインダー樹脂成分を添加する場合、特に種類を限定するものではないが、前述の各種水溶性樹脂やエマルジョンタイプの親水性樹脂が好ましく使用される。エマルジョンタイプの親水性樹脂を使用する場合の平均粒子径は、20〜150nmの範囲が好ましく、20nm未満の場合は、インク吸収性が低下する場合があり、150nmを超える場合は、光沢度が低下する場合がある。これらのガラス転移温度は、50〜150℃の範囲が好ましい。ガラス転移温度が、50℃より低い場合は、乾燥時に光沢層の成膜が進みすぎ、光沢層の多孔性が低下し、インク吸収性が低下する場合がある。150℃より高い場合は、成膜が不足し、光沢や強度が不足する場合がある。
また、光沢層には、上記のほかにも、プリンターの給紙適性やブロッキングを防止するために有機、無機粗粒子や一般的に塗工紙の製造において使用される各種分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤、保存性改良剤等の各種助剤を適宜添加してもよい。
光沢層の塗布量は、乾燥質量として0.01〜10g/m2が好ましく、0.1〜5g/m2がより好ましく、0.3〜3g/m2が更に好ましい。塗布量が0.01g/m2未満の場合は、インク吸収性や記録濃度には有利であるが、十分な光沢層を形成することが困難なために、光沢度が低くなりやすい。また、塗布量が10g/m2を超えると、光沢度は得やすいが、インク吸収性や記録濃度が低下しやすい。
光沢層の厚みはインク受容層の細孔状態によっては大きく異なる。それ故に、光沢層の厚みを一概に規定することは困難であるが、好ましくは5nm〜5μm、より好ましくは10nm〜3μm、最も好ましくは20nm〜1μmである。塗工層表面に充分な光沢を得るためには、光沢層塗料が細孔を保持した状態でインク受容層表面を完全に被っていることが最も望ましく、そのために必要な光沢層の厚さは光沢層塗料に使用する微細顔料の直径に等しくなる。また、光沢層の厚さが5μmを超えると、インク吸収性や塗膜の強度に支障を来すおそれがあるため好ましくない。
光沢層は、インク受容層と同様の公知の塗布装置で製造することができる。インク受容層と同時に多層塗工してもよい。また、更に光沢性を高めるために、透気性基材の場合は、加熱した光沢ロールを用いて乾燥する方法(所謂キャスト処理)を、低透気性又は非透気性基材の場合は、WO2003/039881号公報等で開示されている加熱した光沢ロールとプレスロールのニップ部で圧力をかけながら塗工し、次工程で乾燥する方法を採用することができる。
光沢層を形成するための塗布液には、更に、形成された塗布液層の表面を光沢ロールからスムーズに安定して剥離させるために、離型剤を添加することができる。
離型剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸類、及びそれらのナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、アンモニウム等の塩類、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド及びメチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素類、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類、ロート油、レシチン等の油脂類や脂質類、含フッ素界面活性剤等の各種界面活性剤、四フッ化エチレンポリマーやエチレン−四フッ化エチレンポリマー等のフッ素系ポリマー等が例示される。
これらのうち、特に、脂肪族炭化水素又はその誘導体や変性物、脂肪酸又はその塩、脂質類が好ましく、中でも、脂肪族炭化水素としてはポリエチレンワックスが、脂肪酸としてはステアリン酸又はオレイン酸が、脂質としてはレシチンの使用がより好ましい。
光沢ロールの表面温度は、乾燥条件等の操業性、インク受容層への密着性、光沢層表面の光沢性から40〜130℃の範囲が好ましく、70〜120℃の範囲がより好ましく、80〜110℃の範囲が更に好ましい。光沢ロールの表面温度が、40℃未満の場合は、顔料の押し込み不足による塗膜強度が低下したり、光沢性が低下するおそれがあり、130℃を超える場合は、塗膜がひび割れるおそれがある。
なお、光沢層の微細顔料に代えて、平均粒子径1μmを超える顔料をマット化剤として用い、光沢を低くコントロールすることも可能である。
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%である。
実施例1
《重合体分散液aの調製》
プロペラ式攪拌羽を用いて300rpmで攪拌状態としたイオン交換水42.67gに、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製アミノ基含有シランカップリング剤、品番:LS−1420)10.67gを滴下して加えた。そこに20%の乳酸水溶液22.22gを加えて、10分間攪拌した後、更に、オキシ塩化ジルコニウム八水和物(関東化学株式会社製、試薬名:塩化酸化ジルコニウム八水和物、化学式:ZrOCl2・8H2O)7.18gをイオン交換水28.37gに溶解した水溶液を加え、攪拌したまま50℃で2時間加熱し、pH=3.8の酸性の重合体分散液aを得た。溶液に含まれる重合体a’に関し、重量平均分子量が3,000、平均粒子径が2.0nmであり、995cm-1にZr−O−Si結合に相当する吸収ピークが存在することを赤外吸収スペクトル測定にて確認した。なお、重量平均分子量、平均粒子径および赤外吸収スペクトルは下記のとおりに測定した。
(重合体の重量平均分子量測定方法)
得られた重合体水分散液を軽く振り混ぜた後、30mlを試料としてデイスポーザブルシリンジに取り分け、孔径0.20μmのディスポーザブルメンブレンフィルターを接続して濾過した。途中フィルター詰まり生じるような粒子径の大きな試料については平均粒子径のみを指標とし、全量濾過できた試料についてのみゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にて、ポリエチレングリコール換算の重量平均分子量も測定した。GPCの測定は、東ソー株式会社製カラム:TSK−GELαシリーズ(α2500又は3000)に25℃で水系溶離液を用いて、検出器には示差屈折計を用いた。
(重合体の平均粒子径測定方法)
得られた重合体水分散液を試料液とし、ファイバー光学動的光散乱光度計〔大塚電子社製、FDLS-3000、測定可能レンジ:0.5nm〜5μm〕を用いて、平均粒子径を測定した。平均粒子径はキュムラント法を用いた解析から算出される値を用いた。
(重合体の赤外吸収スペクトル測定)
各重合体分散液10gを105℃で熱風乾燥し、溶媒を蒸発乾固しガラス状残渣を得た。これを乳鉢で粉砕した微粉末を試料としてKBr錠剤を作成し、フ−リエ変換赤外分光装置(ニコレー社製、NEXUS670)にて波長400〜4000cm-1の範囲の赤外吸収スペクトルを測定した。得られたスペクトルから1000cm-1付近に現れるZr−O−Si結合に相当する吸収ピークの有無を確認した。
《複合微粒子ゾルAの調製》
市販の高速分散機(プライミクス株式会社製、T.K.ホモディスパー)にて3000rpmで攪拌したイオン交換水355.56gに、重合体分散液a:55.56gを投入し、ついで市販の比表面積200m2/g気相法シリカ(商品名:レオロシオールQS−102、平均一次粒子径12nm、株式会社トクヤマ製)88.89gを徐々に投入した。この混合分散液にマイクロフルイタイザー(Microfluidics社製、型番:M110/EH)による粉砕分散処理を50MPaで1回施し、固形分濃度20%の複合微粒子ゾルAを調製した。得られた複合微粒子A’の細孔容積は1.5ml/g、平均二次粒子径は139nmであった。なお平均二次粒子径および細孔容積は下記のとおりに測定した。
(複合微粒子などの凝集性微粒子の平均二次粒子径測定方法)
複合微粒子の水分散液100mlを500ml容のステンレス製カップに入れ、前述の高速分散機を用いて分散処理(3000rpm、5分間)し、水分散液中の3次粒子を分散した。処理後の分散液を充分に蒸留水で希釈して試料液とし、動的光散乱法によるレーザー粒度計〔大塚電子社製、FPAR-1000、測定可能レンジ:3nm〜5μm〕を用いて、平均二次粒子径を測定した。平均二次粒子径はキュムラント法を用いた解析から算出される値を用いた。
(複合微粒子などの凝集性微粒子の細孔容積測定方法)
複合微粒子の分散液をそのまま105℃で乾燥し、窒素ガス吸着法比表面積・細孔分布測定装置〔Coulter社製SA3100plus型〕を用い、前処理として200℃で2時間真空脱気した後に測定した。細孔容積は細孔径100nm以下の全細孔容積の値(窒素相対圧0.9814)を使用した。
《塗工基材の調製》
CSF(JIS P−8121)が250mlまで叩解した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と、CSFが250mlまで叩解した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)とを、質量比2:8の割合で混合し、濃度0.5%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリー中に、パルプ絶乾質量に対し、カチオン化澱粉2.0%、アルキルケテンダイマー0.4%、アニオン化ポリアクリルアミド樹脂0.1%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂0.7%を添加し、十分に攪拌して分散させた。
上記組成のパルプスラリーを長網マシンで抄紙し、ドライヤー、サイズプレス、マシンカレンダーを通し、坪量180g/m2、密度1.0g/cm3の原紙を製造した。上記サイズプレス工程に用いたサイズプレス液は、カルボキシル変性ポリビニルアルコールと塩化ナトリウムとを2:1の質量比で混合し、これを水に加えて加熱溶解し、濃度5%に調製したもので、このサイズプレス液を紙の両面に、合計で25ml/m2塗布して、基材A(透気度:1000秒)を得た。
上記基材Aの原紙の両面に、コロナ放電処理した後、バンバリーミキサーで混合分散した下記のポリオレフィン樹脂組成物1を、基材Aのフェルト面側に、塗工量25g/m2となるようにして、またポリオレフィン樹脂組成物2を、基材Aのワイヤー側に、塗工量20g/m2となるように、T型ダイを有する溶融押出し機(溶融温度320℃)で塗布し、フェルト面側を鏡面のクーリングロール、ワイヤー面側を粗面のクーリングロールで冷却固化して、平滑度(王研式、J.TAPPI No.5B)が6000秒、不透明度(JIS P8138)が93%の樹脂被覆を施した。その後、ポリオレフィン樹脂組成物1で樹脂被覆した側に再度コロナ放電処理した後、市販の写真用ゼラチン(宮城化学工業株式会社製、品名:P−487)の1%熱水溶液を乾燥質量で0.3g/m2になるように塗工し60℃で熱風乾燥して基材Bを得た。
ポリオレフィン樹脂組成物1
長鎖型低密度ポリエチレン樹脂(密度0.926g/cm3、メルトインデックス20g/10分)35部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm3、メルトインデックス2g/10分)50部、アナターゼ型二酸化チタン(商品名:A−220、石原産業社製)15部、ステアリン酸亜鉛0.1部、酸化防止剤(商品名:Irganox 1010、チバガイギー社製)0.03部、群青(商品名:青口群青NO.2000、第一化成社製)0.09部、蛍光増白剤(商品名:UVITEX OB、チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.3部を混合し、ポリオレフィン樹脂組成物1とした。
ポリオレフィン樹脂組成物2
高密度ポリエチレン樹脂(密度0.954g/cm3、メルトインデックス20g/10分)65部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm3、メルトインデックス2g/10分)35部を溶融混合し、ポリオレフィン樹脂組成物2とした。
《塗工》
前述の複合微粒子ゾルA60gにイオン交換水8.76g、ホウ酸0.48g、アセチレングリコール系界面活性剤の0.1%水溶液(商品名:オルフィンE1004、日信化学工業社製)6.00gを混合した後、部分けん化ポリビニルアルコール(商品名:PVA−224、重合度=2400、けん化度=約88%、クラレ社製)の9%水溶液24.00gを混合し、固形分濃度15%の塗料を調製した。
基材Bのポリオレフィン樹脂組成物1をラミネートした側に、上記塗料を乾燥質量で塗工量が24g/m2となるようにダイコーターで塗工し、110℃で10分間熱風乾燥してインクジェット記録体を得た。
実施例2
プロペラ式攪拌羽を用いて300rpmで攪拌状態としたイオン交換水35.56gに、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製アミノ基含有シランカップリング剤、品番:LS−2480)8.89gを滴下して加えた。そこに20%の乳酸水溶液22.22gを加え、10分間攪拌した後、更に、前述のオキシ塩化ジルコニウム八水和物8.98gをイオン交換水35.47gに溶解した水溶液を加え、攪拌したまま50℃で2時間加熱し、pH=4.0の酸性の重合体分散液bを得た。溶液に含まれる重合体b’に関し、重量平均分子量が4,000、平均粒子径が2.2nmであり、1001cm-1にZr−O−Si結合に相当する吸収ピークが存在することを赤外吸収スペクトル測定にて確認した。
重合体分散液aの代わりに重合体分散液bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、複合微粒子ゾルBを調整し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。
得られた複合微粒子B’の細孔容積は1.5ml/g、平均二次粒子径は140nmであった。
実施例3
重合体分散液の調製時の50℃2時間の加熱を行わず、室温(23℃)で密封して72時間静置したこと以外は実施例2と同様にして、pH=4.0の酸性の重合体分散液cを得た。溶液に含まれる重合体c’に関し、重量平均分子量が3,900、平均粒子径が2.1nmであり、994cm-1にZr−O−Si結合に相当する吸収ピークが存在することを赤外吸収スペクトル測定にて確認した。
重合体分散液aの代わりに重合体分散液cを用いたこと以外は実施例1と同様にして、複合微粒子ゾルCを調整し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。
得られた複合微粒子C’の細孔容積は1.5ml/g、平均二次粒子径は138nmであった。
実施例4
オキシ塩化ジルコニウム八水和物8.98gをイオン交換水35.47gに溶解した水溶液の代わりに、第一稀元素化学工業株式会社製 ジルコゾールZC−2(化学式:ZrO(OH)Cl・nH2O)9.72gをイオン交換水34.73gで希釈した水溶液を用いたこと以外は重合体分散液bと同様にして、pH=4.8の酸性の重合体分散液dを得た。溶液に含まれる重合体d’に関し、重量平均分子量が7,000、平均粒子径が2.5nmであり、999cm-1にZr−O−Si結合に相当する吸収ピークが存在することを赤外吸収スペクトル測定にて確認した。
重合体分散液aの代わりに重合体分散液dを用いたこと以外は実施例1と同様にして、複合微粒子ゾルDを調整し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。
得られた複合微粒子D’の細孔容積は1.5ml/g、平均二次粒子径は144nmであった。
実施例5
オキシ塩化ジルコニウム八水和物8.98gをイオン交換水35.47gに溶解した水溶液の代わりに、第一稀元素化学工業株式会社製 ジルコゾールZN(化学式:ZrO(NO32・nH2O)13.45gをイオン交換水31.00gで希釈した水溶液を用いたこと以外は重合体分散液bと同様にして、pH=4.3の酸性の重合体分散液eを得た。溶液に含まれる重合体e’に関し、重量平均分子量が16,000、平均粒子径が3.3nmであり、998cm-1にZr−O−Si結合に相当する吸収ピークが存在することを赤外吸収スペクトル測定にて確認した。
重合体分散液aの代わりに重合体分散液eを用いたこと以外は実施例1と同様にして、複合微粒子ゾルEを調整し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。
得られた複合微粒子E’の細孔容積は1.4ml/g、平均二次粒子径は141nmであった。
実施例6
20%乳酸水溶液の代わりに6%塩酸水溶液(関東化学株式会社製、試薬)を用いたこと以外は重合体分散液bと同様にして、pH=4.1の酸性の重合体分散液fを得た。溶液に含まれる重合体f’に関し、重量平均分子量が10,000、平均粒子径が2.9nmであり、1004cm-1にZr−O−Si結合に相当する吸収ピークが存在することを赤外吸収スペクトル測定にて確認した。
重合体分散液aの代わりに重合体分散液fを用いたこと以外は実施例1と同様にして、複合微粒子ゾルFを調整し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。
得られた複合微粒子F’の細孔容積は1.4ml/g、平均二次粒子径は137nmであった。
実施例7
レオロシオールQS−102の代わりに、比表面積300m2/gの気相法シリカ(商品名:レオロシオールQS−30、平均一次粒子径7nm、株式会社トクヤマ製)を用いたこと以外は実施例2と同様にして複合微粒子ゾルB−2を調製し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。
得られた複合微粒子B−2’の細孔容積は1.4ml/g、平均二次粒子径は149nmであった。
実施例8
基材Bのポリオレフィン樹脂組成物1をラミネートした側に、下記に処方を示す下層用塗料を乾燥質量で塗工量が10g/m2となるようにダイコーターで塗工し、110℃で10分間熱風乾燥した。
(下層用塗料処方)固形分濃度16%
市販ゲル法シリカ(商品名:サイロジェット703A、平均1次粒子径:12nm、平均2次粒子径:約300nm、20%水分散液、グレースデビソン社製):100g
完全けん化ポリビニルアルコール〔商品名:PVA−145、重合度=4500、けん化度=99%以上、クラレ社製〕の8%水溶液:37.5g
オルフィンE1004の0.1%水溶液:0.15g
希釈水:6.10g
次いで、下層塗布基材に、ロッドバーコーターで硼砂2%水溶液100gと前述のオルフィンE1004の0.1%水溶液3gを混合攪拌した水溶液を溶液量として20g/m2塗工し、乾燥せずにその上から下記処方の上層用塗料を乾燥質量で塗工量が15g/m2となるようにダイコーターで塗工した後、110℃で10分間熱風乾燥してインクジェット記録体を得た。
(上層用塗料処方)固形分濃度10%
複合微粒子ゾルB:100g
PVA−145の8%水溶液:37.5g
オルフィンE1004の0.1%水溶液:0.15g
希釈水:92.35g
実施例9
レオロシオールQS−102の代わりに、市販ゲル法シリカ(商品名:サイロジェットP612、平均1次粒子径:12nm、平均2次粒子径:約300nm、グレースデビソン社製)を用いたこと以外は実施例2と同様にして複合微粒子ゾルB−3を調製した。
得られた複合微粒子B−3’の細孔容積は1.1ml/g、平均二次粒子径は305nmであった。
次いで、3000rpmで攪拌したイオン交換水880gにカチオン樹脂であるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:ユニセンスCP−103、センカ社製)の10%水溶液を89g添加攪拌し、ついで前述のレオロシールQS−102:111gを徐々に添加後、この混合分散液を実施例1と同様の条件でマイクロフルイタイザー処理を行い、固形分濃度12%のカチオンゾルPを製造した。このゾルに含まれる微粒子P’の細孔容積は1.3ml/g、平均二次粒子径は268nmであった。
下層用塗料のサイロジェット703Aの代わりに複合微粒子ゾルB−3を、上層用塗料の複合微粒子ゾルB代わりにカチオンゾルPを用いたこと以外は実施例8と同様にして、インクジェット記録体を作成した。
実施例10
塗工基材として、基材Bの代わりに基材Aを用いたこと以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録体を作成した。
実施例11
前述の高速分散機にて3000rpmで攪拌したイオン交換水373.33gに、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン4.44gを滴下して加えた。そこに20%乳酸水溶液11.11gを加え10分間攪拌した後、更に、オキシ塩化ジルコニウム八水和物4.44gをイオン交換水17.78gに溶解した水溶液を加えた後そのまま10分間攪拌してから、続けて、前述のレオロシールQS−102:88.89gを徐々に投入した。この混合分散液を実施例1と同様にして粉砕混合処理を施し、固形分濃度20%の微粒子ゾルGを調製した。得られた微粒子G’の細孔容積は1.5ml/g、平均二次粒子径は150nmであった。
また、レオロシールQS−102を投入する前の溶液に含まれる重合体g’に関し、重量平均分子量が2,900、平均粒子径が1.9nmであり、999cm-1にZr−O−Si結合に相当する吸収ピークが存在することを赤外吸収スペクトル測定にて別途確認した。
複合微粒子ゾルAの代わりに微粒子ゾルGを用いたこと以外は実施例1と同様にして、塗料を調製し、インクジェット記録体を作成した。
比較例1
前述の高速分散機にて3000rpmで攪拌したイオン交換水382.61gに、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン8.70gを滴下して加えた。そこに8%塩酸水溶液21.74gを加え10分間攪拌した後、前述のレオロシールQS−102:88.89gを徐々に投入した。この混合分散液を実施例1と同様にして粉砕混合処理を施し、固形分濃度20%の微粒子ゾルHを調製した。得られた微粒子H’の細孔容積は1.4ml/g、平均二次粒子径は146nmであった。レオロシールQS−102を投入する前の溶液にはZr成分を添加していないため微粒子H’にはZr−O−Si結合は含まれていない。
複合微粒子ゾルAの代わりに微粒子ゾルHを用いたこと以外は実施例1と同様にして、塗料を調製し、インクジェット記録体を作成した。
比較例2
前述の高速分散機にて3000rpmで攪拌したイオン交換水400.03gに、オキシ塩化ジルコニウム八水和物9.09gを加え、溶解させた後、前述のレオロシールQS−102:90.91gを徐々に投入した。この混合分散液を実施例1と同様にして粉砕混合処理を施し、固形分濃度20%の微粒子ゾルJを調製した。得られた微粒子J’の細孔容積は1.5ml/g、平均二次粒子径は143nmであった。レオロシールQS−102を投入する前の溶液にはSi成分を添加していないため微粒子J’にはZr−O−Si結合は含まれていない。
複合微粒子ゾルAの代わりに微粒子ゾルJを用いたこと以外は実施例1と同様にして、塗料を調製したが、塗料がゲル化してしまったため塗工が困難であった。
比較例3
プロペラ式攪拌羽を用いて300rpmで攪拌状態としたイオン交換水35.56gに、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン8.89gを滴下して加えた。そこに20%の乳酸水溶液22.22gを加え、10分間攪拌した溶液を、攪拌したまま50℃2時間加熱し、pH=7.5の処理液kを得た。この処理液中の粒子k’の粒子径測定を試みたが下限以下で測定不能であり、赤外吸収スペクトルを測定したが、1000cm-1付近にZr−O−Si結合に相当する吸収ピークは存在しなかった。
一方、オキシ塩化ジルコニウム八水和物8.98gをイオン交換水35.47gに溶解した水溶液も、攪拌しながら50℃で2時間加熱し、pH=0.6の処理液mを得た。この処理液mの粒子m’の平均粒子径を測定したところ0.7nmであった。赤外吸収スペクトルを測定したところ1000cm-1付近にZr−O−Si結合に相当する吸収ピークは存在しなかった。
前述の高速分散機にて3000rpmで攪拌したイオン交換水373.33gに、処理液k:15.56gを加え10分間攪拌した後、前述のレオロシールQS−102:88.89gを徐々に投入した。この混合分散液を実施例1と同様にして粉砕混合処理を施し、固形分濃度20%の微粒子ゾルKを調製した。得られた微粒子K’の細孔容積は1.5ml/g、平均二次粒子径は141nmであった。
複合微粒子ゾルAの代わりに、微粒子ゾルK:57.33gと処理液m:2.67gを塗料調製時に混合して用いたこと以外は実施例1と同様にして塗料を調製し、インクジェット記録体を作成した。
比較例4
前述の高速分散機にて3000rpmで攪拌したイオン交換水373.33gに、比較例4で用いた処理液m:22.22gを加え10分間攪拌した後、前述のレオロシールQS−102:88.89gを徐々に投入した。この混合分散液を実施例1と同様にして粉砕混合処理を施し、固形分濃度20%の微粒子ゾルMを調製した。得られた微粒子M’の細孔容積は1.4ml/g、平均二次粒子径は145nmであった。
複合微粒子ゾルAの代わりに、微粒子ゾルM:58.13gと処理液k:1.87gを塗料調製時に混合したこと以外は実施例1と同様にして塗料を調製しようとしたが、塗料が調製途中でゲル化してしまったため塗工が困難であった。
比較例5
複合微粒子ゾルAの代わりに、カチオンゾルPを用いたこと以外は実施例1と同様にして塗料を調製し、インクジェット記録体を作成した。
比較例6
塗料に用いるカチオンゾルPの固形分100部に対し2部に相当する重合体分散液bを添加したこと以外は比較例5と同様にして塗料を調製し、インクジェット記録体を作成した。
比較例7
塗料に用いるカチオンゾルPの代わりに、マイクロフルイタイザーにより実施例1と同じ粉砕条件で分散処理したレオロシールQS−102の20%水分散液を用いたこと以外は比較例6と同様にして塗料を調製し、インクジェット記録体を作成した。
比較例8
比較例7で得たインクジェット記録体に、重合体分散液bを4倍量のイオン交換水にて希釈した溶液を、溶液として20g/m2塗工し、110℃で5分間熱風乾燥してインクジェット記録体を作成した。
(評価方法)
実施例及び比較例で得たインクジェット記録体を下記の方法で評価し、各記録体の作製条件を表1に、評価結果を表2に示した。
(塗膜光沢)
得られたインクジェット記録体の塗工表面を、村上色彩技術研究所の光沢度計(GM−26 PRO/AUTO)を用い、ISO 8254−1に基づいて測定した。
(印字濃度測定)
L判サイズ(89mm×127mm)に切り取った各試料に、23℃湿度50%の環境(ISO環境)でセイコーエプソン社製インクジェットプリンタPM−G820(染料インク搭載機)のEPSON写真用紙推奨モード設定で100%ブラックベタを印字し、ISO環境下で24時間乾燥させた。この印字部をマクベス反射濃度計(マクベス社製、RD−914)のブラック用フィルタを用いて測定した。表中に示した数字は5回測定の平均値である。
(耐オゾン性)
印字濃度測定と同じ印字条件で、ブラックの70%ベタおよびISO−400の画像(「高精細カラーディジタル標準画像データ ISO/JIS−SCID」、画像名:ポートレート、財団法人 日本規格協会発行)を、各試料につき2枚ずつ印字し、1枚をオゾンフェードメーター(スガ試験機製)にてオゾン濃度:40ppm、温度:24℃、湿度:60%の条件で5時間曝露処理した。処理後、ISO環境で保管しておいた未処理画像と共に、下記指標をもとに残存率、画質を5段階に評価した。
[残存率]
処理品、未処理品の70%ブラックベタ部の印字濃度を測定し、残存率を計算した。
残存率(%)=処理品の印字濃度/未処理品の印字濃度×100
[耐オゾン画質]
ポートレート画像の処理前後の色相変化を下記の基準で評価をおこなった。
5点:処理画像全体に退色が少なく、色のバランスも良好。
4点:処理画像単独では特に違和感はないが、未処理画像と比較すると退色の痕跡がわかる。
3点:処理画像に単独でも、退色の痕跡がわかる。
2点:処理画像全体が退色している
1点:処理画像の退色傾向がインクによって異なるため、色バランスが悪い。
(高温高湿下における画像の耐熱湿にじみ評価)
L判サイズ(89mm×127mm)に切り取った各記録体を30℃、湿度80%の環境で前述のPM−G820のEPSON写真用紙推奨・L判縁無し設定によりJIS−X9204「高精細カラーディジタル標準画像XYZ/SCID」画像識別番号:N1の画像を印字した。印字後直ちに、その上にL判サイズの厚さ5mmのガラス板を重ねて密封静置した。24時間後、1枚目に出力した記録体を取り出してISO環境中で2時間乾燥させてから、ISO環境にて同印字設定で印字後、積層せずに24時間乾燥させた通常画像と共に、下記指標をもとに画質を5段階に評価した。
5点:密封画像にもにじみは無く、色調も通常画像とほぼ同じで鮮明である。
4点:密封画像にもにじみは無い。通常画像と比較すると色調が微妙に異なるが、不自然さはなく差違は比較しないと判別できない程度である。
3点:密封画像に若干のにじみがある。通常画像と比較すると色調が異なる。
2点:密封画像ににじみがひどく、色調も色が沈んで不自然な印象がある。
1点:密封画像はにじみが激しく画像が破綻している。通常画像も鮮明性に欠ける。
Figure 2008254432
表中、略称としてAPTMSは3−アミノプロピルトリメトキシシラン、AEAPTMSはN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランを示す。
Figure 2008254432
表1及び表2の実施例1〜11から明らかなように、本発明の複合微粒子を使用したインクジェット記録体は、特にインクの定着能が良好なため、印字濃度が高く、高温高湿下でも鮮明な画像を保持でき、且つ耐オゾン性も良好であった。複合微粒子の原料である、重合体の成分(実施例1、2、4〜6)や無機顔料の種類(実施例7、9)を変えても良好な品質が得られた。また、前述の重合体の製造に反応性の高い材料を用いた場合は、特に重合促進のための加熱を行なわなくとも加熱品とほぼ同等の品質が得られるため、製造工程における工程負荷も最小限に抑制可能と考えられる(実施例3、11)。更に、インクジェット記録体の構成(実施例8、9)や基材(実施例10)が異なっても高品質のインクジェット記録体が得られることが確認された。
一方、比較例1、2に示したように、本発明の重合体の原料成分であるアミノ基含有シランカップリング剤やジルコニウム化合物を単独で無機顔料と混合分散した場合は、インク定着能不足や塗料のゲル化が生じ、本発明のようなインクジェット記録体を得ることはできなかった。また、各成分をそれぞれ単独で重合させて無機顔料と混合分散した後、残りにカチオン成分を塗料調製時に添加した場合も、塗料の著しい相分離や添加ショックによるゲル化が生じたため、同様に不適な結果となった(比較例3、4)。
なお、本発明の「分子内にアミノ基とZr−O−Si結合を含む重合体」を添加せずに、カチオン樹脂のみを定着剤としたインクジェット記録体の品質は、本発明の記録体に比べ劣るものであった(比較例5)。更に、このインク受容層の塗料や、カチオン樹脂も添加していないアニオン性の塗料に、本発明の複合微粒子の原料である重合体を添加したり(比較例6、7)、積層塗布した(比較例8)場合も、本発明の複合微粒子からなるインクジェット記録体に相当する品質は得られなかった。

Claims (11)

  1. 平均粒子径1μm以下の無機顔料と、分子内にアミノ基とZr−O−Si結合を含む重合体とを、該無機顔料の周囲の少なくとも一部に該重合体を結合して備える複合微粒子。
  2. 平均粒子径1μm以下の無機顔料と、分子内にアミノ基とZr−O−Si結合を含む重合体を水性分散体液中に共存させ、機械的シェアを与えて得られることを特徴とする複合微粒子。
  3. 重合体の重量平均分子量が500〜500,000である請求項1又は2に記載の複合微粒子。
  4. 重合体が平均粒子径1〜50nmの超微粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の複合微粒子。
  5. 無機顔料と重合体の固形分比率が、無機顔料100質量部に対して、重合体2〜20質量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合微粒子。
  6. 重合体が、アミノ基含有シランカップリング剤とジルコニウム化合物の重合により形成されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合微粒子。
  7. 重合体となるアミノ基含有シランカップリング剤が、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも一種、その加水分解物並びに/またはその重合体であることを特徴とする請求項6に記載の複合微粒子。
  8. ジルコニウム化合物が、オキシ塩化ジルコニウムまたはその重合体であることを特徴とする請求項6又は7に記載の複合微粒子。
  9. 重合体が、ヒドロキシカルボン酸を含む水性溶媒中で重合により形成されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の複合微粒子。
  10. 重合体となるアミノ基含有シランカップリング剤とジルコニウム化合物の比率が、アミノ基含有シランカップリング剤1molに対して、ジルコニウム化合物が0.1〜1molであることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の複合微粒子。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の複合微粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録体。
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