JP2009209322A - 複合微粒子とその製造方法及びそれを用いたインクジェット記録体 - Google Patents

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Abstract

【課題】多くの種類のインクに対し定着力が高く、それにより形成されたインクジェット記録体などが連続印字により印字直後に積層された状態となっても鮮明な画像が形成可能であり、銀塩写真調インクジェット記録体のインク受容層に好適に用いられうる複合微粒子の提供。
【解決手段】分子内にアミノ基とM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子を示す)を含む重合体と、前記Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体と、無機顔料が、複合化されてなる複合微粒子。
【選択図】なし

Description

本発明はインクジェット記録体のインク受容層の材料として有用な複合微粒子とその製造方法、及びそれを用いたインクジェット記録体に関する。さらに詳しくは、本発明が達成しようとする複合微粒子は、特にインクの定着能に優れ、それより形成されたインクジェント記録体などが連続印字により印字直後に積層された状態となっても鮮明な画像が形成可能であるため、銀塩写真調インクジェット記録体の製造に好適に用いられる。しかも、かかる複合微粒子は経時的な安定性に優れており、安定した品質のインクジェット記録体を製造しうるものである。
これまでにコンピューターなどの出力用として、ワイヤードット記録方式、感熱発色記録方式、溶融熱転写記録方式、昇華記録方式、電子写真方式、インクジェット記録方式などの種々の方式が開発されている。中でもインクジェット記録方式は、記録用シートとして普通紙を使用できること、ランニングコストが安価なこと、ハードウェアがコンパクトで安価なことから、パーソナルユーズに適した記録方式として認知され、プリンターの販売台数を急速に伸ばしてきた。その普及に伴ってハードウェアの改良も進み、フルカラー化や、高速化、高画質化が急速に進展したため、出力用途も単純なモノクロ文字出力から銀塩写真の代替えとなるデジタル画像出力までに拡大しつつあり、必然的に記録紙側に要求される品質も厳しくなってきた。
市販されているインクジェット記録紙の中でも、銀塩写真調のフルカラー画像を出力できるメディアとして、光沢紙の販売量が近年急速に増加している。光沢紙の製造においては如何にして「銀塩写真に近づける」かが重要な鍵とされ、「印字画質」だけでなく「得られた画質を長期間保持できる」ことも求められる。「印字画質」に関しては、プリンターの印刷高速化に伴いより厳しくなったインク吸収速度の改良要求や、光沢紙の低価格化による原材料費の制約の範囲内で、更なる向上を可能とする記録体側の材料開発が必要とされている。中でも、銀塩写真対比で大きく劣っていた「画像耐光性や耐オゾン性」に関しては、近年のインクの改良によりある程度の向上がなされたが、画像の定着性に関しては、未だ改善を要する側面がある。インクジェットプリンタのインクは、染料もしくは顔料色素を溶媒に溶解もしくは分散させているため、印字後の色素を記録紙に充分に定着させるためには、インク溶媒を気化などの手段により除去する必要があるが、簡便に複数の写真画像を出力しようとすると、プリンターの排出トレイ上で印字後の光沢紙が(インク溶媒が乾燥するまもなく)順次積層されるような状態となってしまうため、すみやかにインク溶媒を気化させるのは困難な状況が生じる。記録紙内にインク溶媒が閉じ込められた状態が続くと、定着が不十分な色素は、インク溶媒の拡散と共に受容層内を拡散してしまうため、印字画像の鮮明性低下や、にじみが生じがちである。特に、目視での判定が敏感となる肌色や、濃色ベタ部の均一性を過酷な出力条件下でも良好に保つためには、より強固なインク定着性が求められる。
鮮やかな出力画像を得て、且つそれを保持するためには、インク中に含まれる染料もしくは顔料である色素と反応性が高く、かつインク溶媒が残留した状態であっても安定な結合体を形成しうる「カチオン定着剤」を受容側のインクジェット記録体に含ませておくことが必要である。かかる定着剤はインクが印字されたらすみやかに結合し、不溶化し得ることが重要となる。現在、市販されているインクジェット記録体の多くで、この定着剤として水溶性のカチオン樹脂を使用することが一般的に行われている。例えば特開昭60−61887号公報(特許文献1参照)にも開示されているように、インクの定着能に優れることが古くから知られているポリアリルアミン類や、特開2004−122769号公報(特許文献2参照)に開示されている、染料インクの画像保存性が良好な5員環アミジン構造を含むカチオン樹脂等の「1級アミン構造を含む水溶性カチオン樹脂」が好適とされる。しかし、近年の高品質化したインクジェットプリンタ用インクは、様々な構造を有する各種染料もしくは顔料からなる着色成分を複数組み合わせて作られた混合物であるため、単一の定着剤でフルカラーの画像を定着させるのはかなり困難な状況となっている。単にカチオン樹脂を増量することで定着能向上を図っても、その効果はあまり期待出来ないだけでなく、毛管現象であるインク吸収を阻害する可能性が高い。更に、これらのカチオン樹脂は、吸湿しやすいためインク受容層中においても比較的運動しやすいこともあってか、高温高湿、光やオゾンといった外部環境の変化や刺激に対して比較的変質しやすく、画像保存性や白紙保存性の悪化要因ともなりうるため、添加量の設定には注意を要する。以上の背景から、カチオン樹脂以外の定着剤の開発が望まれた。
既存のカチオン樹脂以外の定着剤の代表例として、特開2000−309157号公報(特許文献3参照)記載のアルミニウムもしくは周期表4A族の元素を含む水溶性化合物があげられ、中でも塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物やチタン、ジルコニウム化合物が好適と例示されている。ただし、定着剤としてこれらを単独で使用するだけでは、インク定着能が不十分であるため、鮮明な画像を得るためにカチオン樹脂の併用が検討されている。しかしこの場合、カチオン樹脂由来の保存性悪化は避けられない。特開平4−7189号公報(特許文献4参照)には、ジルコニウム化合物として酸塩化ジルコニウム系活性無機ポリマーが提案されているが、これも同様に単独では十分な定着能を得ることは出来なかった。
より強固な遷移金属導入法として、特開2006−160539号公報(特許文献5参照)には、チタンやジルコニウムなどの遷移金属酸化物で被覆してなるシリカ微粒子が提案されている。これは実質的に、有機溶媒中で遷移金属アルコキシドや遷移金属アセチルアセトネートなどの遷移金属酸化物前駆体によりシリカ粉体を被覆する処理を意図したものであるが、微粒子のインク定着能はあまり良好ではなかった。
カチオン樹脂の使用量を低減しつつ定着能を確保するため、特開2001−10209号公報(特許文献6参照)にはシランカップリング剤を定着剤であるカチオン樹脂と併用することが提案されており、特にカチオン性の4級アンモニウム構造を有するシランカップリング剤を使うと好適であると明示されている。シランカップリング剤自体は特開昭62−178384号公報(特許文献7参照)にも記載されているようにインクジェット記録体に供する顔料の表面処理剤として古くから用いられている材料である。インク受容層の定着剤としてカチオン性シランカップリング剤を用いた場合、カチオン基がインク受容層の主成分である顔料の表面にカチオン樹脂よりも強固に結合もしくは吸着されるため、外部刺激に対する耐性が高まり、インク吸収性や画像保存性が向上することが期待される。しかし、このカチオン性シランカップリング剤をインク定着剤として単独で使用しても十分なインク定着能が得られなかったため、その品質は特に高温高湿環境下での画像の鮮明性が劣る傾向があった。
特開2006−110770号公報(特許文献8参照)には、このカチオン性シランカップリング剤の定着能不足を補うため、水溶性多価金属化合物を組み合わせることが提案されている。ここに示されているインクジェット記録材料は、シランカップリング剤存在下で粉砕・分散処理されたシリカ微粒子を主成分としたインク受容層が水溶性多価金属化合物を含有してなる。シランカップリング剤としてはカチオン性を有するものが、水溶性多価金属化合物としてはアルミニウム化合物もしくはジルコニウム化合物が好適とされ、水溶性多価金属化合物の添加時期は、塗布直前の添加が好ましいとされる。この改良により、カチオン性シランカップリング剤を単独で使用した場合に比べ、インク定着能にある程度の向上が確認されたが、水溶性多価金属化合物自体のインク受容層に対する結合力が不十分であったためか、画像耐水性の悪化がみられただけでなく、最も重要な通常環境での画質の劣化の指標とされる塗膜の光沢度や印字濃度の低下も生じたため更なる改良が必要であった。
特開昭60−61887号公報 請求項1 特開2004−122769号公報 請求項1 特開2000−309157号公報 請求項1、2 特開平4−7189号公報 請求項1 特開2006−160539号公報 請求項1,2 特開2001−10209号公報 請求項1、2 特開昭62−178384号公報 請求項1 特開2006−110770号公報 請求項1、3、4
一方、本研究者らはこれらの欠点を克服しうる新規インク定着剤として、アミノ基含有シランカップリング剤とジルコニウム化合物を重合してなるZr−O−Si結合を有する重合体を検討した。この材料は、無機顔料と複合微粒子化することで、より優れたインク定着能を示すものであるが、インクの種類によってはもう一段の定着能改善が必要とされた。更に、複合微粒子の品質に経時劣化が認められ、取り扱いによっては支障をきたすため、その安定化も望まれた。この複合微粒子化、略して複合化とは、上記の重合体を無機顔料の周囲の少なくとも一部に結合して備えることをいう。
本発明は従来のインク定着技術をさらに改良し、多くの種類のインクに対し定着力が高く、それにより形成されたインクジェット記録体などが連続印字により印字直後に積層された状態となっても鮮明な画像が形成可能であり、銀塩写真調インクジェット記録体のインク受容層に好適に用いられうる複合微粒子を提供しようとするものである。かつ該複合微粒子の経時的な安定性を高め、高品質のインクジェット記録体を安定して製造しうるようにすることである。併せて該複合微粒子の好ましい製造方法、及び該複合微粒子を用いたインクジェット記録体を開示しようとするものである。
本発明者らは、銀塩写真の代替えとなる光沢インクジェット記録体のインク定着剤として「アミノ基含有シランカップリング剤とジルコニウム化合物を予め溶媒中で適度に重合させ、両者がZr−O−Si結合を介して一体化したカチオン性の重合体を調製し、それを多孔質受容層となりうる平均粒子径1μm以下の無機顔料と併せ、必要に応じて機械的シェアを与えることで複合化し、分散液とした複合微粒子」を検討した。粒子化による影響がインクとの結合体の安定性を増大させたためか、インクの定着能が良好で画像の鮮明性も良好であることが判明した。
しかし、更なる検討を続けたところ、インクの種類によっては、もう一ランク上のインク定着能が望まれること、また複合微粒子分散液を保管しておくと、徐々に品質が劣化していくことが判明した。
複合微粒子分散液のpH変化や塗料化した際の粘度変化から、経時変化の原因は、主として上記重合体に含まれるジルコニウム化合物の加水分解の進行によるものと推定された。分散液の経時変化に関しては、複合微粒子化した後、塗料化及び塗工を続けて実施できれば概ね支障はないが、長期保管によりジルコニウム化合物の加水分解が過度に進行するとジルコニウムイオンがカチオン定着剤として機能できなくなるため、その進行を制御できる手法があることが望ましい。
そこで、上記重合体分散液にジルコニウムイオンとキレートを形成する能力のある低分子化合物を添加し、ジルコニウムイオンを保護することで加水分解を抑制することを試みたが、所望していたゾルの安定性向上効果は得られず、材料によっては、逆に塗膜の透明性低下やインク定着能悪化が生じるものもあった。そこで、ジルコニウムイオンとキレートを形成し得る親水性重合体を上記重合体分散液に添加した後、複合微粒子を調製したところ、意図した通りに適度にジルコニウムイオンが保護されたためか、経時変化の傾向は見られず、安定的にインク定着能を示す複合微粒子ゾルを得ることができた。このジルコニウムイオンに対する親水性重合体の配位によるキレート構造は、複合微粒子分散液中では安定した構造をとるが、インク受容層中ではジルコニウムイオンがカチオン成分としてインク中のアニオン色素成分と結合しうる適度な強度を有するものであると推測される。
また、この金属イオンとキレートを形成する構造を含む親水性重合体として、イオン定着能を有するポリアリルアミン等のカチオン樹脂を使用すると、複合微粒子ゾルの経時変化が抑制できるだけでなく、耐光性や耐オゾン性を高レベルに維持したまま、インク定着能も更に向上することが判明した。前述の通り、通常インク定着剤としてカチオン樹脂を使用した場合、耐光性や耐オゾン性が低下しやすいが、本発明のようにジルコニウムイオンなどとキレートを形成させた状態でカチオン樹脂を使用すると、カチオン樹脂の運動性がある程度抑制されるため、光やオゾンのなどの刺激に対して変質し難くなるのではないかと考えられる。
以上のように、本発明の複合微粒子は、インク定着剤として、有機のアミノ基と無機の金属カチオン、更にキレート能を有するカチオン樹脂と、複数のカチオンを組み合わせることで相乗効果が得られる条件が整っているため、検討の発端となったジルコニウム化合物だけでなく2価以上であれば他の金属化合物であっても、ジルコニウム化合物と同様に利用可能であることも確認された。中でも、得られるインクジェット記録体の品質としては、ジルコニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物が特に好ましいが、金属イオンの種類によって画像を形成する際のインクの発色が微妙に異なるため、その他の金属化合物も有効に活用できる。使用可能な金属イオンの種類が多様化することは、画像の色調調整を容易とする点からも非常に好ましい。
従って、本願は以下の発明を包含する:
(1)無機顔料と、分子内にアミノ基とM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子を示す)を含む重合体と、該Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体とを、該無機顔料の周囲の少なくとも一部に、それらの重合体を結合して備える、複合微粒子。
(2)前記分子内にアミノ基とM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子を示す)を含む重合体と、前記Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体との少なくとも一部が、互いに配位した状態である、(1)の複合微粒子。
(3)無機顔料と、分子内にアミノ基とM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子を示す)を含む重合体と、前記Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体とを、水性分散液中に共存させ、機械的シェアを与えて得られることを特徴とする、複合微粒子。
(4)分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体の重量平均分子量が500〜500,000である(1)〜(3)のいずれかに記載の複合微粒子。
(5)分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体が平均粒子径1〜50nmの超微粒子である(1)〜(4)のいずれかに記載の複合微粒子。
(6)前記Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体が、ポリアリルアミンであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の複合微粒子。
(7)前記Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体の重量平均分子量が、5,000〜50,000であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の複合微粒子。
(8)無機顔料が、平均粒子径1μm以下の気相法シリカであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の複合微粒子。
(9)前記Mがジルコニウム、アルミニウム、チタン及び亜鉛から成る群から選ばれる少なくとも一種の金属原子である、(1)〜(8)のいずれかに記載の複合粒子。
(10)分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体が、アミノ基含有シランカップリング剤と2価以上の金属化合物の重合により形成されたものであることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の複合微粒子。
(11)アミノ基含有シランカップリング剤が、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシランから成る群より選ばれる少なくとも一種もしくはその加水分解物及び重合体であることを特徴とする(10)に記載の複合微粒子。
(12)2価以上の金属化合物が、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物及び亜鉛化合物から成る群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする(10)又は(11)に記載の複合微粒子。
(13)無機顔料と、分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体と、親水性重合体の固形分比率が、無機顔料100質量部に対して、前記重合体が2〜20質量部、親水性重合体が0.5〜5質量部であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の複合微粒子。
(14)(1)〜(13)のいずれかに記載の複合微粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録体。
(15)水性溶媒中で、アミノ基含有シランカップリング剤と2価以上の金属化合物を重合して、粒子内にアミノ基とM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子を示す)を含む重合体の水性分散液を得、該水性分散液に、前記Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体と、無機顔料を加え、分散して複合化することを特徴とする複合微粒子の製造方法。
本発明の複合微粒子は、多くの種類のインクに対し定着能に優れ、かつ経時的な安定性に優れている。そのため、本発明の複合微粒子はインクジェット記録体のインク受容層の製造に好ましく使用することができ、該インクジェット記録体は連続印字により印字直後に積層された状態となっても鮮明な画像が形成可能であるため、光沢仕上げをすることにより銀塩写真代替として有用である。
(複合微粒子の調製)
本発明の複合微粒子は、分子内にアミノ基とM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子、好ましくはZr,Al,Ti,Znなどを示す)を含む重合体と、前記Mのイオンキレートを形成し得る親水性重合体と、無機顔料が複合化されてなる。以下に、複合微粒子の原料となる分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体と、親水性重合体、及び無機顔料の条件や調製方法について示す。
(分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体の調製)
複合微粒子製造に供する「分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体」は、構造としてはアミノ基とM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子、好ましくはZr,Al,Ti,Znなどを示す)が含まれていればよく、それぞれの分布状態や分子形状、及び調製法は特に限定するものではないが、好適な調製法の一例として、アミノ基含有シランカップリング剤と加水分解性を有する2価以上の金属化合物を溶媒中で重合させる方法があげられる。
アミノ基含有シランカップリング剤は、水を含む溶媒中に溶解すると加水分解によりシラノール基が生成し、一部のシラノール基同士が縮合してSi-O-Si結合を形成する。この時、加水分解性を有する2価以上の金属化合物が存在すると、一部のシラノール基は金属化合物の金属イオンとM−O−Si結合を介して結合する。シランカップリング剤は通常2個又は3個のシラノール生成基を有しており、Si-O-Si結合とM−O−Siの生成が進行する結果、通常三次元の重合体が生成する。この三次元重合体は超微粒子とみなすこともできる。
アミノ基含有シランカップリング剤の具体的な構造としては特に限定するものではないが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(CAS番号4369−14−6)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(CAS番号21142−29−0)、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(CAS番号1760−24−3)、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン(CAS番号5089−72−5)、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(CAS番号3069−29−2)、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(CAS番号3086−76−6)、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、等が例示でき、信越化学工業株式会社、GE東芝シリコーン株式会社、東レ・ダウコーニング株式会社等、各社からシランカップリング剤の名称で市販されている。中でも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシランは、アミノ基含有シランカップリング剤の中でもアミノ基1個あたりの分子量が小さいのでカチオン性が高く、且つシラノール基となるアルコキシル基も多いために重合反応性が高く、好適に利用される。
アミノ基含有シランカップリング剤は、まずアルコキシル基をシラノール基に変換するために、予め加水分解することが好ましい。シラノール生成基がメトキシ基の場合には加水分解速度が速いので予め加水分解する操作を省略することもできる。加水分解は、従来公知の方法、例えば、溶媒中で水と反応させ、必要に応じて酸やアルカリなどの触媒を添加する方法等により行うことができる。
加水分解を行う溶媒は、加水分解後のシランカップリング剤が均一に溶解することが可能であれば、特に種類は限定しないが、反応の必須成分でもある水が最も好適である。加水分解時のアミノ基含有シランカップリング剤の濃度は、低すぎると金属化合物との重合反応が進行しにくくなり、高すぎると金属化合物との反応前に、アミノ基含有シランカップリング剤単独で過度の重合が進行してしまうため、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜45質量%、最も好ましくは10〜40質量%が好適である。また、過度の重合物であるゲル状物の発生を抑制するために、アミノ基含有シランカップリング剤を溶媒に希釈する際は、溶媒を攪拌した状態で徐々に滴下すると良い。
加水分解時に酸を添加すると、アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解反応を促進しつつ、生成するシラノール基の安定性を高めて過度の重合を抑制する、などの効果が期待できる。酸の添加時期は、シランカップリング剤滴下前に予め溶媒に混合しておいても良いし、滴下後の溶液に後から混合してもよい。酸の種類は特に限定するものではないが、代表例としては、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、燐酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、フタル酸などが例示でき、他にも例えば「化学便覧 基礎編 改訂5版(社団法人日本化学会編、丸善株式会社発行)11章」に記載の各種、無機酸、有機酸が使用できる。
各種酸の中でも、複合微粒子を塗料化する際の増粘が少ないことから一価の酸が好適に利用される。また、分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体の分散液調製時の粗大粒子の生成が少なく、粒径制御が比較的容易であることから、カルボン酸が好適であり、中でも水酸基を有するヒドロキシカルボン酸が最も好適に利用できる。具体的にはα−乳酸、グリコール酸が価格、性能の面から最適な材料であるといえる。
アミノ基含有シランカップリング剤の滴下や酸添加を行うと希釈熱や反応熱が発生するため、シランカップリング剤同士の不適な重合が促進される恐れがある。そのため溶液の液温は、過度に上昇しないよう制御しておくのが好ましい。但し、金属化合物との反応性を保てる範囲内であれば、アミノ基含有シランカップリング剤同士の重合をある程度意図的に進行させておいても良い。
以上のようにして、アミノ基含有シランカップリング剤溶液の調製を行うが、代わりにもしくは混合して、市販されているアミノ基含有シランカップリング剤の加水分解溶液(例えば、商品名:KBP−90、信越化学工業株式会社製:32%水溶液)や、アミノ基含有シランカップリング剤の重合物溶液(例えば、サイラエースS−330、サイラエースS−320、チッソ株式会社製)等を使用しても良い。
一方、2価以上の金属原子である「M」の供給源として利用できる金属化合物としては、2価以上の金属化合物であれば特に制限なく利用できるが、中でも、インク定着能の観点からジルコニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物が好ましく利用できる。特にジルコニウム化合物は、インクジェット記録体の印字濃度、恒温高湿環境下で連続印字したときの色調が良好であり特に好ましい。
ジルコニウム化合物としては、塩化ジルコニウム(ZrCl4)、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・nH2O)、硫酸ジルコニウム(Zr(SO42・nH2O)、オキシ硫酸ジルコニウム(ZrOSO4・nH2O)、硝酸ジルコニウム(Zr(NO34・nH2O)、オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・nH2O)、二酢酸ジルコニウム(Zr(CH3COO)2)、四酢酸ジルコニウム(Zr(CH3COO)4)、オキシ酢酸ジルコニウム (ZrO(CH3COO)2)、炭酸ジルコニウムアンモニウム((NH42ZrO(CO32)等、各種ジルコニウム塩の他、ジルコニウムアルコキシド類等が例示される。但し、ジルコニウム化合物の中でもジルコニウムアルコキシド類は、その加水分解及び重合反応速度が非常に速いため、反応の制御が難しく、特にアルコキシル基の多いものほど急激な重合による粗大な水酸化ジルコニウムの沈殿が生成しやすい傾向があるため注意を要す。最も好ましい溶媒である水に対する溶解性や、化合物自身のpH、コスト、重合体化した際にインク定着能を担うカチオン性を呈する性質等を鑑みると、化学式中にZrOの単位を有しているジルコニウム塩、すなわちオキシジルコニウム塩が好ましく、中でもオキシ塩化ジルコニウム(別名:塩化ジルコニール、酸化塩化ジルコニウム)が最も好適である。このオキシ塩化ジルコニウムは、例えば、第一稀元素化学工業株式会社より製品名:酸塩化ジルコニウム、ジルコゾールZC、ジルコゾールZC−20として購入することができる。
ジルコニウム化合物は、溶液中で加水分解が進行し多核イオンを形成することが知られており(「無機化学」J.D.LEE著、東京化学同人、1982年、321ページ)、アミノ基含有シランカップリング剤と反応させる前にジルコニウム化合物の加水分解を意図的に行って多核イオンの含有量を高めてもよい。また、多核イオンの含有量を高めた市販のジルコニウム化合物(例えば、商品名:ジルコゾールZC−2、第一稀元素化学工業株式会社製)を利用しても良い。
これらはアミノ基含有シランカップリング剤と同様に、適当な溶媒に均一に溶解した後、微粒子調製に供される。溶解に好ましい溶媒、濃度は、前述のアミノ基含有シランカップリング剤と同様である。
一方、アルミニウム化合物としては、塩化アルミニウム、テトラクロロアルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩等)、臭化アルミニウム、テトラブロモアルミン酸塩(例えば、カリウム塩など)、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等)、フッ化アルミニウム、ヘキサフルオロアルミン酸(例えば、カリウム塩等)、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸珪酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム等の各種アルミニウム塩のほか、アルミニウムアルコキシド類等が例示される。また、ジルコニウム化合物と同様に、加水分解が進行し高塩基性塩の状態となっている高分子量品(例えば、多木化学株式会社製、ポリ塩化アルミニウム:商品名PAC、高塩基性塩化アルミニウム:商品名タキバイン、高塩基性乳酸アルミニウム:商品名タキセラム等)も好ましく用いることが出来る。
チタン化合物としては、四塩化チタン、硫酸チタン、塩基性乳酸チタン、乳酸チタンアンモニウム塩等、各種チタン塩のほか、チタンアルコキシド類等が、亜鉛化合物としては、塩化亜鉛、塩化亜鉛アンモニウム、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、などの各種亜鉛塩が例示される。
以上の金属化合物は、単独で使用しても、二種類以上を混合して使用しても良く、また、例示した化合物以外の金属化合物を利用しても良い。
以上の通りに調製したアミノ基含有シランカップリング剤溶液と金属化合物溶液を混合状態で重合させることで、重合体を調製する。両溶液を混合させる際の溶液pHが高すぎるとインクジェット記録体の品質低下につながる金属水酸化物の粗大粒子が析出しやすいため、溶液pHは常に7以下の酸性に保つことが好ましい。アミノ基含有シランカップリング剤の溶液pHは通常7以上であるため、酸を添加することはpH調整の観点からも望まれる。また、金属化合物水溶液もpHが高い場合は、混合前に酸を添加しても良い。好ましい混合方法は、酸性を示す金属化合物水溶液を攪拌しながら、酸性に調整したアミノ基含有シランカップリング剤または加水分解後のアミノ基含有シランカップリング剤水溶液を少しずつ添加する方法であり、金属水酸化物の析出を抑制しやすいため好適である。
重合体の重量平均分子量は限定するものではないが、重量平均分子量が500〜500,000の範囲が好ましく、より好ましくは500〜250,000であり、更に500〜50,000が最も好ましい。重量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によりポリエチレングリコール換算を測定することができる。重量平均分子量が500未満では、定着剤成分を重合体化することで得られるメリットである塗料の安定性向上や、画像保存性向上効果が十分に発現しなくなり、逆に重量平均分子量が大きすぎると、インク受容層の光沢低下や透明性低下による印字濃度低下を招くおそれがある。
前記したように、本発明の重合体は通常三次元の重合体であって、その場合超微粒子とみなすこともできる。超微粒子としての平均粒子径は1〜50nmが好ましく、より好ましくは1〜20nmであり、更に1〜5nmが最も好ましい。平均粒子径が1nm以下では、塗料の安定性向上や、画像保存性向上効果が十分に発現しなくなり、逆に平均粒子径が大きすぎると、インク受容層の光沢低下や透明性低下による印字濃度低下を招くだけでなく、複合微粒子化する際に無機顔料との結合力に支障をきたすおそれがある。但し、インク受容層の面質に支障を及ぼさない範囲であれば、若干量の粗大粒子が混入しても定着剤としての機能に影響はない。
ここで、平均粒子径とは市販の粒子径測定装置を用いて、動的光散乱法によって測定される粒子径(キュムラント法で求められる値)である。前述の超微粒子は粒子径が非常に小さいため、測定精度を確保するために測定可能下限レンジが1nm以下の装置を利用することが好ましい。
平均分子量や平均粒子径は、原料となるアミノ基含有シランカップリング剤と金属化合物の種類や比率によって最も影響を受けるが、前述の通り、重合時の溶液の混合順やpH、温度及び時間、もしくは攪拌条件等である程度制御することが可能である。
重合反応は溶液温度が高いほうが促進されるが、原料の反応性が比較的高いこと、且つ、得られる重合体のカチオン性を高くするためには金属イオンの加水分解を過度に進めない事が好ましいこと、等の理由から重合反応は比較的緩やかな条件で進行させることが好ましい。また、アミノ基の変性による溶液の黄変を回避するためにも、反応温度はあまり高くしない方が良く、短時間で重合を完了させたい場合を除いては、反応温度は5〜90℃、更に好ましくは10〜80℃、最も好ましくは20〜70℃が良い。即ち、ある程度の反応時間を確保できる場合は、各成分を十分に混合した後、特に加熱は行わず混合液を常温で保管(熟成)しておくだけでも、重合反応を緩やかに進行させることができる。中でも、加水分解速度が速く、反応しやすい材料(例えば、メトキシ型アミノ基含有シランカップリング剤)を用いる場合は、各材料を室温で数分混合しただけでも、処方によっては所望の重合体を得ることができる。
また、粗大な重合物の生成を抑制するため、溶液混合時から重合反応中は溶液を攪拌することが望ましいが、前述の常温熟成のように重合速度が穏やかな場合は、溶液混合時以外は、常時攪拌をしなくともよい。
意図したアミノ基含有シランカップリング剤と2価以上の金属化合物の重合により生成するM−O−Si結合の確認は、赤外吸収スペクトルの測定により実施した。
材料の種類、比率によってその割合は異なるが、本発明の重合体の主骨格には、Si−O−Si結合、M−O−Si結合、M−O−M結合が混在していると考えられる。通常、Si−O−Si結合を有する化合物の赤外吸収スペクトルは、縮合により環状構造が形成された場合はある程度のシフトは生じるものの、約1100cm-1近辺にSi−O−Si結合の伸縮振動由来の吸収を示す。そこに、2価以上の金属イオンが導入されると環状構造が歪むため、M−O−Si結合の伸縮振動の吸収ピークが、Si−O−Si結合とは異なる波長(1000cm-1付近)に現れる。例えば、参考文献「無機高分子I」(梶原鳴雪監修、1992年、産業図書株式会社発行)において、ポリジルコノシロキサンのZr−O−Si結合やポリチタノシロキサンのTi−O−Si結合を示す約1000cm-1のピークが、Si−O−Si結合ピークの近傍にあることを確認することができる。
アミノ基とM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子を示す)を含む重合体の原料となる、アミノ基含有シランカップリング剤と2価以上の金属化合物、双方の混合比は、両成分の種類、具体的にはアミノ基含有シランカップリング剤のアミノ基やアルコキシル基の数、金属化合物の種類などによって大きく異なるため、特に限定できるものではない。但し、金属化合物の混合比が多すぎると、両者の複合化が生じにくくなるためか、画像の定着能が悪化する傾向が見られる。また、どちらかが極端に少なすぎても、両者を併用する効果が得られないため好ましくない。具体的な混合比率としては、Zr化合物の例にとると、アミノ基含有シランカップリング剤1molに対して、Zr化合物を0.01〜5mol混合させるのが好ましく、より好ましくは0.1〜1molが好適である。
なお、分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体の構成成分としては、前述のアミノ基含有シランカップリング剤と2価以上の金属化合物及び酸のほかにも、必要に応じて各種材料を用いても良い。
(金属イオンとキレートを形成し得る親水性重合体)
本発明の「前記Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体」は、分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体に含まれるインク定着効果のあるMのイオンに配位し、過度の加水分解を抑制する効果がある。そのためMのイオンに配位させるために混合するタイミングは、アミノ基含有シランカップ剤と2価以上の金属化合物の重合が適度に進行してからが好ましく、例えば、重合促進のための加熱が終了した時点や、比較的反応性が穏やかな処方であれば無機顔料との複合化直前などが挙げられるが、分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体や親水性重合体の組成や混合比率によってその最適時期は異なるため、これに限定するものではない。従って、Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体の存在下でアミノ基含有シランカップリング剤と2価以上の金属化合物を重合させる方法をとることも可能である。
金属イオンとキレートを形成し得る親水性重合体としては、金属イオンに配位しやすい一定の間隔で電子供与性基を有する構造を含んでいれば良く、その構造の具体例として、β−ジケトン構造、ポリアミン構造、イミノジ酢酸構造、ザルコシン構造、エタノールアミノ酸構造、グリシン構造、キサントゲン酸構造、アミドキシム構造、アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、ホスホン酸構造、ホスフィン酸構造、リン酸構造、シッフ塩基構造、オキシム構造、ヒドロキサム構造、アミノポリカルボン酸構造、チオール構造、ポリチオアルコール構造、2−ピロリドン構造、および2−オキサゾリドン構造が例示できるが、これらに限定するものではない。
親水性重合体の好ましい分子量は、親水性重合体の種類や、配位させる分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体の組成、平均分子量または平均粒子径によって異なるため、特に限定するものではないが、低すぎると適度なキレート構造を保つのが難しく、高すぎると複合微粒子分散液の粘度上昇を招く。従って、特に限定するものではないが、重量平均分子量として1000〜40万、より好ましくは3000〜10万、最も好ましくは5000〜5万であると良い。
この金属イオンとキレートを形成し得る親水性重合体が、インク定着能を有するカチオン基を有していると、シランカップリング剤由来のアミノ基や金属イオンのカチオンとは異なるインク定着成分を導入することが出来るため、非常に好ましい。通常、カチオン樹脂をインク定着剤として用いると、耐光性や耐オゾン性の低下を招きがちだが、前述の通りキレート構造を形成させる状態でカチオン樹脂を添加すると、これら品質は悪化することなく、インク定着能だけが向上することが判明した。これは、キレート形成により、カチオン樹脂の運動が制限されるためだと推測される。中でも、ポリアリルアミン及びその構造を含む共重合体、もしくはその誘導体が好適に利用できる。
分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体と、配位させる親水性重合体の比率は、それぞれの種類によって最適値が異なるため特に限定できるものではないが、配位させる重合体が少なすぎるとその効果が不十分となり、多すぎるとインク定着能を阻害する可能性があるため、固形分比率で、分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体100部に対して親水性重合体が5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部、最も好ましくは20〜30質量部程度が適当と考えられる。
(無機顔料)
複合微粒子のもう一つの材料である無機顔料としては、平均粒子径1μm以下のものが好ましく、より好ましくは500nm以下の微細顔料を用いることにより、インク吸収性に優れ、透明性、光沢性にも優れる受容層が得られるが、これに限定するものではない。種類は限定されないが市販の顔料、例えばシリカ、アルミノシリケート、カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化錫、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミナ、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土等、一般塗工紙或いはインクジェット記録体の分野で公知の各種無機顔料が挙げられる。これらの微細顔料の中でも、特にシリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミナは細孔容積が大きく、インク吸収性に優れるので好適に用いられる。
高光沢、高透明性のインク受容層を得るためには、微細顔料として、平均粒子径3〜40nmの一次粒子が凝集して、平均粒子径500nm以下の二次粒子を形成している微細顔料を使用するのが好ましい。特に二次粒子の粒子径は、好ましくは8〜400nm、より好ましくは10〜300nmである。このような二次粒子は二次粒子内部に空隙があるので細孔容積が大きい。さらに二次粒子間の空隙もインク吸収に利用できるためインク吸収能力が高い。また、一次粒子は光の波長に比べて充分小さいので二次粒子を形成していない顔料と比較して光の散乱能力が小さく、インク受容層の透明性が高くなる利点がある。顔料の一次粒子径や二次粒子径が小さすぎるとインク吸収に寄与する空隙を形成し難くなるため、インク受容層のインク吸収性が劣るおそれがある。逆に、一次粒子径や二次粒子径が大きすぎるとインク受容層の透明性が低下し、高印字濃度を得にくいおそれがある。また、二次粒子径が大きすぎると、インク受容層の光沢が低下するだけでなく、表面のざらつきや、粉落ちの原因となるおそれがある。なお、本発明でいう顔料の一次粒子径はすべて電子顕微鏡(SEM及びTEM)で観察した粒子径(マーチン径)である(「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52参照)。また、二次粒子径は、動的光散乱法によって測定した粒子径である。
また、インク吸収能の高いインク受容層を得るためには、微細顔料の細孔容積は高い方が好ましいが、本発明に好適に用いられる微細顔料の細孔容積は、0.4〜2.5ml/gである。好ましくは0.4〜2.0ml/gであり、より好ましくは0.6〜1.9ml/g、最も好ましくは0.7〜1.8ml/gである。この細孔容積は、ガス吸着法による比表面積・細孔分布測定装置を用いて求めた値である。尚、本発明では細孔容積が細孔径100nm以下の細孔の全細孔容積である。
これらの微細顔料の製造方法は特に限定されないが、その手段の一つとして市販の顔料(数μm)に機械的手段で強い力を与えることにより粉砕、分散して得る方法が挙げられる。つまり、breaking down法(塊状原料を細分化する方法)によって得られるものである。機械的手段としては、高速回転式ホモジナイザー、圧力式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ロールミル、ボールミル、振動ミル、ビーズミル、サンドグラインダー、ジェットミル等の機械的手法が挙げられる。得られる微細顔料はコロイド状であっても、スラリー状であっても良い。その他の好ましい微細顔料の製造方法として、特開平5−32413号公報や特開平7−76161号公報などに開示されている金属アルコキシドの加水分解による方法が挙げられる。
前述の如き無機顔料の中でも、特にシリカは細孔容積が大きいので好ましい。シリカにはケイ酸アルカリ塩を原料とする湿式法シリカや、四塩化珪素などの揮発性珪素化合物を火炎中で分解する乾式法により製造される気相法シリカ、メソポーラスシリカなどがあるが、いずれも好ましい。気相法シリカは非常に嵩高い微粒子状シリカであり、容易に水性分散液とすることができ、インク受容層に用いるとインク吸収性、光沢度、塗膜透明度ともに非常に優れており、比表面積が異なるものが各種市販されている。そのため、本発明には平均粒子径1μm以下の気相法シリカが、最も好適に用いられる。水性分散液の平均粒子径は、分散液の製造方法により異なるが、およそ100nm〜900nmの範囲である。水性分散液を乾燥して窒素吸着法による比表面積と細孔容積を測定した場合には、およそ比表面積50m2/g〜400m2/g、細孔容積が0.6ml/g〜1.8ml/gの範囲である。
また、特開2001−354408号公報に記載されている「窒素吸着法による比表面積が300m2/g〜1000m2/gで、細孔容積が0.4ml/g〜2.0ml/gであるシリカ微粒子がコロイド状に分散した液をシード液とし、該シード液にアルカリを添加したのち、該シード液に対し活性ケイ酸水溶液及びアルコキシシランから選ばれる少なくとも一種類からなるフィード液を少量ずつ添加してシリカ微粒子を成長させることを特徴とする、窒素吸着法による比表面積が100m2/g〜400m2/g、平均二次粒子径が20nm〜300nm、かつ細孔容積が0.5ml/g〜2.0ml/gのシリカ微粒子がコロイド状に分散したシリカ微粒子分散液の製造方法」によって製造される微細シリカも、好ましく使用できる。
特開2001−354408号公報で開示されている活性ケイ酸の縮合による方法は、機械的手段によらずに直接、上記の粒子径や細孔容積を有する微細シリカを製造でき、かつ粒度分布が狭いので透明度や光沢が良好な塗工層となるため好ましく用いることができる。ここで、活性ケイ酸とは、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を水素型陽イオン交換樹脂でイオン交換処理して得られるpH4以下のケイ酸水溶液をさす。SiO2濃度として1〜6質量%が好ましく、より好ましくは2〜5質量%でかつpH2〜4である活性ケイ酸水溶液が望ましい。アルカリ金属ケイ酸塩としては、市販工業製品として入手できるものでよく、より好ましくはSiO2/M2O(但し、Mはアルカリ金属原子を表す)モル比として2〜4程度のナトリウム水ガラスを用いるのが好ましい。活性ケイ酸の縮合方法としては、熱水に活性ケイ酸水溶液を滴下するか、活性ケイ酸水溶液を加熱してシード粒子を生成させ、分散液が沈殿を生じる前、若しくはゲル化する前にアルカリを添加してシード粒子を安定化し、次いで該安定状態を保ちながら活性ケイ酸水溶液をシード粒子に含まれるSiO21モルに対してSiO2に換算して0.001〜0.2モル/分の速度で添加してシード粒子を構成する各一次粒子を成長させたものが好ましい。平均二次粒子径は1μm以下であり、好ましくは20nm〜800nm、最も好ましくは30nm〜700nmである。尚、この平均二次粒子径は動的光散乱法を採用した粒度計で測定し、キュムラント法で解析した値である。
(複合微粒子の調製方法・条件)
分子内にアミノ基とM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子を示す)を含む重合体と、前記Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体と、無機顔料を複合化する手段は特に限定するものではなく、それぞれの材料の特性によって細かな条件も異なるが、好適な一例として、各成分を混合して凝集・増粘したスラリーを、再度機械的に分散・粉砕し、凝集体の二次粒子径を所望の粒子径に調整する手法が挙げられる。又は分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体と、前述の親水性重合体とを含む水性溶媒中に強い機械的シェアを与えながら、無機顔料を徐々に添加・分散することでも達成できる。この手段を経ることにより、親水性重合体が配位した分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体が無機顔料の周囲を包みこんだ状態で安定化し、高度に安定化した複合微粒子分散液が得られる。親水性重合体が配位した分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体と無機顔料の結合はイオン結合、水素結合、共有結合が考えられるが、結合の種類は関係なく、親水性重合体が配位した分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体と無機顔料が一体として運動し、複合微粒子表面の電位(ゼータ電位)が全体としてプラスとなっていれば複合化は達成される。ゼータ電位が+5mV以上、好ましくは+10mV〜+60mVであるとインク定着能に優れる。
この効果を充分得るためには、親水性重合体や分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体の量が無機顔料に対して少なすぎると、無機顔料の周囲を安定的に取り囲むことが出来ないため、複合化後のスラリーや塗料の安定性が下がってしまう懸念がある。一方、逆に多すぎても、インク吸収性を阻害したり、耐光性や耐オゾン性などの品質を低下させる恐れがあるため不適である。具体的には、無機顔料100質量部に対して好ましい分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体の量は0.5〜30質量部、更に好ましくは、2〜20質量部、最も好ましくは5〜15質量部であり、同様に好ましい親水性重合体の量は0.3〜10質量部程度、更に好ましくは、0.5〜5質量部、最も好ましくは1〜3質量部であると適当であるが、あくまでも無機顔料もしくは分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体、親水性重合体の種類(組成)や分子量、形状によって最適量は異なるため、この範囲に限定されるものではない。
本発明の分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体は重合体化した効果のためか、水溶性ジルコニウム塩などに例示される水溶性多価金属化合物に比べ、インク受容層の主成分となる無機顔料と混ぜ合わせた際のショックが軽減されているものの、混合時にはある程度の凝集・増粘は生じる。この凝集・増粘した混合スラリーを再度分散・粉砕する手法としては、平均2次粒子径が1μm程度までは回転式ホモミキサーなどの弱い機械力で達成しうるが、平均2次粒子径を1μm以下に粉砕するにはより強い機械力を加えることが均一な複合微粒子が得られるので好ましく、そのための手法として圧力式分散方式が望ましい。好ましい具体例としては、原料粒子のスラリー状混合物に高圧をかけて狭いオリフィスを通過させることにより粉砕する方法であり、処理圧力は、好ましくは10〜350MPa、より好ましくは20〜300MPa、さらに好ましくは、30〜200MPaである。上記高圧粉砕により処理することで良好な分散あるいは粉砕が達成できる。この方式の装置を高圧力式ホモジナイザーと呼ぶ。さらに高圧でオリフィスを通過した高速のスラリー状混合物を対向衝突させたり、固定された壁に衝突させることにより分散、或いは粉砕する方式を用いると、より好ましい。対向衝突による方法は、分散液を加圧することによって入口側に導き、分散液を二つの通路に分岐してさらに流路をオリフィスにより狭めることによって流速を加速して対向衝突させ、それによって粒子を衝突させて分散・粉砕する。分散液を加速したり衝突させたりする部分を構成する材料としては、材料の摩耗を抑えるなどの理由からダイヤモンドが好ましく用いられる。
高圧力式ホモジナイザーとしては、マイクロフルイタイザー(マイクロフルイディックス社製)、アルティマイザー(株式会社スギノマシン製)、ホモゲナイザー(三和機械株式会社製)、ナノマイザー(吉田機械興業株式会社製)が用いられ、特に対向衝突型ホモジナイザーとしてマイクロフルイタイザー、ナノマイザ−が好ましい。このようにして複合化処理された複合微粒子は、一般に固形分濃度が5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%の水分散体(スラリーあるいはコロイド粒子)として得られる。
以上の通りに調製される複合微粒子はインクジェット記録体のインク受容層の材料として好適に利用できる。複合微粒子を適用するインクジェット記録体について、以下に示す。
(基材)
本発明の複合微粒子を含有するインクジェット記録体には、インク受容層となる塗工層を塗布できるものであれば、各種基材を使用することができる。例えば、上質紙、アート紙、コート紙、板紙、ダンボール、プラスチックフィルム、不織布、金属箔、ガラス等が例示できる。特に、王研式透気度が500秒/100ml未満の透気性を有する基材を用いた場合は、記録体の最表層を加熱した光沢ロールにより塗工層を乾燥する所謂キャスト処理が可能なため、高光沢の記録体を得ることができる。また、透気性基材は比較的比重が低いこともあり概して吸液性も高いものが多く、基材もインク吸収に寄与できるという点で好適ではあるが、塗工や印字の際の吸液により膨張するため、皺やボコツキが発生しやすい側面がある。その点で支障が出た場合は、下塗り層や裏面層の塗設が効果的である。また、これらを懸念する必要がないという点で、低透気性又は非透気性基材が好適に使用できる。
本発明において、低透気性又は非透気性の基材とは、王研式透気度が500秒/100ml以上、好ましくは800秒/100ml以上、より好ましくは1000秒/100ml以上であるような基材を意味する。このような、基材を用いると、基材自身への水蒸気や水分の浸透を防ぐことができ、コックリングなどが抑えられた写真調の質感を有するインクジェット記録体を簡便に得ることが出来る。
使用出来る基材としては、例えば、ポリエチレン樹脂を紙基材の両面に被覆した、所謂樹脂被覆紙、ポリプロピレンを延伸し、特殊加工を施した、ユポ(商品名:ユポ・コーポレーション社製)に代表される所謂合成紙、セロハン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PETなど)、ポリスチレンなどのフィルム、金属蒸着紙、透気度を調節した紙類などが挙げられる。中でも、樹脂被覆紙、合成紙、フィルムの使用が好ましい。
特に、酸化チタンを練り込んだポリエチレンを、紙表面に被覆した樹脂被覆紙は、仕上がった外観が写真印画紙と同等であるため、好ましく用いられる。ポリエチレン被覆層の厚みは、3〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。ポリエチレン被覆層の厚みが3μm未満の場合は、樹脂被覆時にポリエチレン樹脂の穴等の欠陥が多くなりやすく、厚みのコントロールに困難がある場合が多く、平滑性も得にくくなる。逆に50μmを超えると、コストが増加する割には、得られる効果が小さく、不経済である。また、後述する下塗層又はインク受容層の接着性を高めるため、被覆層表面にコロナ放電処理を施したり、ゼラチンなどのサブコート層を設けることが好ましい。
この樹脂被覆紙に用いる紙基材としては、木材パルプを主材料として製造されているものが使用される。木材パルプは、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を適宜使用することができ、これらのパルプは紙力や平滑性、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。叩解度は、特に限定しないが、一般に250〜550ml(CSF:JIS−P−8121)程度が好ましい範囲である。また、所謂ECF、TCFパルプ等の塩素フリーパルプも好ましく使用できる。また、必要に応じて、顔料を添加することができる。顔料には、タルク、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、シリカ、ゼオライト等が好ましく使用される。顔料の添加により、不透明性や平滑度を高めることができるが、過剰に添加すると、紙力が低下する場合があり、顔料の添加量は、対木材パルプ1〜20質量%程度が好ましい。
また、基材として、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の透明性が優れているプラスチックフィルムを用いると、バックプリントやOHPシート等の光透過性記録媒体として利用できるインクジェット記録体を作製することができる。本発明で得られるインク受容層は、高透明性であるため、これらの媒体に好適に利用できる。
基材の厚さは、プリンターの通紙性を考慮すると50〜500μmが好ましい。特に、吸水性基材の場合は、あまり基材が薄いと湿潤時の強度や寸法安定性の低下が懸念されるため、比較的厚めの100〜500μmが望ましい。
また、インクジェット記録体のカール抑制や、搬送性の向上のため、基材のインク受容層とは反対側に裏面層を設けることもできる。特に、透気性もしくは吸水性の高い基材を用いる場合は、手触り感を銀塩写真により近づけるためにも裏面層を塗設することが望ましい。裏面層の構成及びそれに伴う基材シート裏面の易接着処理等はその用途に応じて選択することができ、特に限定されるものではないが、塗工性、コストを鑑みると顔料と親水性樹脂を主成分とする裏面層を設けることが好適である。また、裏面層の代わりに樹脂被覆紙の樹脂被覆を裏面側にのみ設けた基材も好適に用いられる。但し、裏面層の吸水性が高すぎると、印刷後に積層した記録体が貼り付いたり、べたついたりするため好ましくない。
更に両面印刷を想定し、インク受容層を含む塗工層を両面に設けても良く、またラベルやシール用途に対応すべく、裏面に粘着加工を施しても良い。
(下塗り層の形成)
本発明の複合微粒子を含有するインクジェット記録体には、上記の基材とインク受容層の間に、顔料とバインダーを含有する下塗り層を形成してもよい。下塗り層には、基材の寸法安定性や、平滑性、色調を修正したり、インクジェットインク成分中の溶媒を速やかに吸収するなどの機能を付与することができる。インク受容層で定着できなかったインクジェットインク成分中の着色剤すなわち染料を定着させてもよい。特に吸水性基材を使用する場合は、前述の通り湿潤時の強度や寸法安定性の観点からも下塗り層を塗設する事が望ましい。
下塗り層に使用される顔料としては、コロイダルシリカ、無定形シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン等の透明又は白色顔料が例示される。後述の本発明の複合微粒子などのインク受容層や光沢層で使用する顔料も使用できる。これらの内で特に好ましい顔料は、無定形シリカである。
無定形シリカを使用する場合、無定形シリカは、平均一次粒子径3〜70nmで、且つ、平均二次粒子径20μm以下であることが好ましく、平均一次粒子径10〜40nmで、且つ、平均二次粒子径15μm以下のものがより好ましい。下塗り層に使用される無定形シリカの平均二次粒子径は、インク受容層に使用される無定形シリカの平均二次粒子径より大きいことが好ましい。下塗り層に使用される無定形シリカの平均二次粒子径が、インク受容層に使用される無定形シリカの平均二次粒子径より小さい場合は、インク吸収性が低下する場合がある。
下塗り層のバインダー樹脂としては、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白等の蛋白質類、澱粉、酸化澱粉、加工澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス等一般に塗工紙用として用いられている従来公知のバインダーが単独、あるいは数種類を組合せて用いられる。
下塗り層における顔料とバインダーの配合割合は、その種類にもよるが、一般に顔料100質量部に対しバインダー1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で調節される。
下塗り層にも、インク受容層から浸透してきたインクを捕らえ、染料を固着し、耐水性を付与し、記録濃度を向上させるために、必要に応じてインク定着剤であるカチオン性化合物を添加することができる。
添加するカチオン性化合物としては本発明の複合微粒子の原料である分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体が例示できるが、一般的なカチオン性樹脂であっても良い。但し、前述の通りカチオン性樹脂は定着以外の画像保存性を損なう恐れもあるため、使用量は最小限に抑制することが望ましい。
ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートの重合物、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体の重合物、ビニルアミン重合物又はその誘導体、アリルアミン重合物又はその誘導体、ジアリルアミン重合物、ジアリルメチルアミン重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルアミン−二酸化イオウ共重合、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−二酸化イオウ共重合物、アクリルアミド−ジアリルアミン共重合物、アクリルアミド−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合物、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カチオン樹脂、ジシアンジアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カチオン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、アクリロニトリルとN−ビニルホルムアミド共重合体の加水分解物、ポリビニルアミジン系樹脂等のカチオン樹脂が例示でき、単独又は数種類を組み合わせて使用しても良い。
インク定着能の観点からは、前述のポリアリルアミン(日東紡株式会社製PAA−15C)や、ハイモ株式会社製ハイマックスSC−700Mなどの5員環アミジン構造を含有する重合体、もしくはポリビニルアミンなどが好適である。
下塗り層を形成するための塗布液には、上記成分の他に、更に、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤、蛍光染料、着色剤等の各種助剤が適宜添加される。
下塗り層の塗布量は、0.5〜30g/m2程度であり、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター等、各種公知の塗工装置で形成できる。特に、エアナイフコーターは、幅広い塗料物性、塗布量に対応可能なため、好適に用いられる。また、ダイコーターやカーテンコーターは、塗布量の均一性に優れるため、特に高精細な記録を目的とする光沢タイプのインクジェット記録体には、好ましい塗工方法である。
(インク受容層の形成)
本発明の「無機顔料と、分子内にアミノ基とM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子を示す)を含む重合体と、該Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体とを、該無機顔料の周囲の少なくとも一部に、それら重合体を結合して備える複合微粒子」は、前述の下塗り層に使用しても良いが、インクジェット記録体の中でもインク吸収・定着の要となる多孔質インク受容層の主成分として使用することで、その性能を最大限に発揮する。
多孔質インク受容層を形成するその他材料に関し、下記に示す。
多孔質インク受容層は、微細顔料とその成膜に要するバインダー樹脂を必須成分として構成される。微細顔料としては、本発明の複合微粒子を始め、複合微粒子の原料として例示した無機顔料や、スチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメントなどの有機顔料や、一般塗工紙或いはインクジェット記録体の分野で公知の各種顔料を単独もしく混合して利用できる。但し、塗料安定性の観点から複合微粒子を単独で使用することが最も望ましく、他の顔料を混合する場合も、その添加量は複合微粒子の品質を妨げない範囲が良い。また、塗料調製前に各種顔料に前処理を行ってもよい。
本発明のインクジェット記録体のインク受容層のバインダー樹脂成分としては、特に限定するものではないが下塗り層の材料として例示した各種樹脂が単独もしくは数種類組み合わせて使用される。
中でも、主成分となる顔料との混和性、塗工適性、得られるインクジェット記録体の品質の観点からポリビニルアルコールもしくはその誘導体が最も好適に使用される。けん化度は特に限定するものではなく、70〜99.9mol%の範囲で適宜使用可能であるが、けん化度が低すぎると親水性が低下し、高すぎるとフィブリル化などのおそれもあるため、好ましくは75〜99.9%、より好ましくは78〜99.8%である。また、重合度としても200〜4500で適宜使用可能であるが、あまり低すぎると塗料粘度が低くなりすぎたり、ひび割れを抑制することが出来ないおそれがあり、高すぎると塗料粘度が高くなりすぎるので、好ましくは1000以上、より好ましくは1000〜4500である。
また、印字後の経時的な色調変化には、インク中に含まれる親水性高沸点溶剤との親和性の高い樹脂を単独で、又は混合して使用することも効果的である。インク中に含まれる親水性高沸点溶剤としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、2−ピロリドン、チオジグリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,5−ペンタンジオール等があり、これらの溶剤との親和性が高い樹脂としては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明に使用する複合微粒子は高いインク定着能を有するため、基本的には他のインク定着剤を併用する必要は無い。しかし、色調調整など定着能以外の意図を持って、複合微粒子の性能を妨げない範囲内で、カチオン性化合物として、下塗り層材料として例示した水溶性カチオン樹脂や、エマルジョンタイプのカチオン性樹脂、多価金属塩化合物などの各種カチオン性無機塩などの中から、単独又は数種類を組み合わせて必要に応じて配合してもよい。但し、その場合添加するカチオン性化合物の使用量は最小量とし、その添加手段は塗工層の不透明化を最大限に抑制するため、インク受容層を多層化したり、併用インク定着剤を別途積層塗布するなどの構成が望ましい。
本発明のインク受容層は多孔質、具体的には細孔容積が0.2〜2.0ml/gの範囲になるよう調節することが好ましい。微細顔料の細孔容積の選択により、また、親水性樹脂の添加量を適切に調節することによりこの範囲内に調節することができる。細孔容積が0.2ml/g未満の場合、塗布量を多くしないとインクを吸収できないのでインクジェット記録体の製造コストが高くなる。また、2.0ml/gを越える細孔容積ではインク受容層の機械的強度が低下し、インク受容層に傷がついたり、剥がれたり、割れたりしやすくなり好ましくない。尚、本発明の細孔容積は細孔径100nm以下の細孔の全細孔容積である。
本発明に用いる水性塗料の好適な固形分濃度は、塗料組成によって大きく異なるが、水性塗料が安定かつ塗工可能な範囲内で、より高濃度であることが好ましい。それは、水性塗料が高濃度である程、乾燥負荷も軽くなるためである。水性塗料の固形分濃度は、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜25質量%である。
主成分以外にも、水性塗料の塗工性を著しく悪化させることなく、かつインク吸収に必要な細孔を保ち、インク受容層の耐水性を大幅に低下させることのない範囲内であれば、インク受容層に他の成分を添加することもできる。その一例として、インクジェット記録体の白色度を高める効果のある蛍光増白剤や、ひび割れやすい多孔質受容層のひび割れを抑制する効果のある、硼酸及び/または硼酸塩などの硼素化合物が例示される。
硼酸としては、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸等が挙げられる。また、これらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩であってもよい。これらの中でも、オルトホウ酸と四ホウ酸二ナトリウムが好ましい。なお、ホウ酸のナトリウム塩は硼砂と呼ばれることも多いが、その組成は通常Na247・10H2Oである。
その添加手段は、前述の通り水性塗料に予め内添しておくだけでなく、基材もしくは下塗り層にインク受容層の塗工前に塗布するか、塗工面が乱れない範囲であればインク受容層の塗工後乾燥前の水性塗料塗布層に積層してもよく、特にこれらに限定するものではない。均一に混合するという点では水性塗料に内添する手法が好ましい。水性塗料への内添以外の方法で硼素化合物を添加する場合は、インク受容層に対する拡散を意図して硼素化合物を下塗り層に内添しておいたり、硼素化合物を含む溶液とインク受容層となる水性塗料をWet−on−Wetで積層塗布したり、積層・噴霧等の手法を使って硼素化合物を含む溶液を水性塗料に積層塗布してもよい。硼素化合物を溶解する溶媒の種類は特に限定するものではないが、コスト、ハンドリングの面から水が最も好ましい。
また、消泡剤を混合して塗工時の作業性を向上したり、基材の濡れ性を良くして均一なインク受容層を得るために界面活性剤を配合してもよい。本発明で好適に使用される高細孔容積の微細顔料系塗料は粘度の経時増粘やチキソ性増大が起きやすく、塗工適性があまり良くないことが多い。その場合、塗料に界面活性剤を一定量添加すると、塗工適性が良好となるため好適である。その添加量は特に規定するものではないが、塗料の主成分である微細顔料100質量部に対して、0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部が好適である。界面活性剤の添加量が少なすぎると前述の塗料適正改善効果が充分に得られないため不適となる。一方、添加量が多すぎると、塗工後の塗膜から過剰量の界面活性剤が滲みだすことによって生じるブロッキングや裏面への転移のトラブルが発生するため不適となる。
添加する界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤のいずれであってもよい。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル塩系等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、アミン塩系、4級アンモニウム塩系等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系、ポリエチレングリコール系(高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、高級脂肪族アミンおよび脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物)、多価アルコール系(グリセリンおよびペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アルカノールアミド等)等が挙げられる。
上記界面活性剤の中でも、インクジェットプリンタのインクとの親和性が高いことから、ノニオン系界面活性剤が好ましく、さらには、ノニオン系界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤は、分子中にアセチレン性三重結合を形成する互いに隣接した炭素原子に酸素原子が結合されているため、ノニオン性でありながら、非常に強い極性を有している。そのため、少量の添加でも表面活性効果が高く、支持体に対する水性塗液の濡れ性を向上させることができる。また、一般的に、界面活性剤は気泡形成性が強いため、泡立ちという問題を生ずるが、アセチレングリコール系界面活性剤は消泡性を有しており、泡立ちを抑制できる。その中でも、アルキニレングリコール化合物とエチレンオキサイドとの付加反応生成物が好ましい。
その他、インクジェット記録体としての品質向上を目的として各種添加剤を添加しても良い。具体的には色調調成のための着色染料又は顔料、光安定剤や紫外線吸収剤などの画像保存性向上剤などがこれに当たるが、これらに限定するものではない。特に、蛍光増白剤と併せて色調調整剤として水系塗料に青系の着色顔料を添加すると、相乗効果により記録体の白さが視覚的により強調されるため好適である。
これらの添加物の添加方法としては、予め複合微粒子ゾルに混合しておいてもよいし、塗料調製の途中で混合しておいてもよい。また、まず塗工層を形成してから添加物を含む溶液を、公知の塗工手段で上塗り、噴霧、含浸するなどの方法で、後から添加しても良い。
インク受容層となる水性塗料の塗工方法としては前述の公知の塗布装置、例えば、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーターなどを用いることができるが、これらに限らない。また、多層式スロットダイコーター、多層式スライドダイコーター、多層式カーテンコーター等などの同時多層塗工装置を用いて、多層塗工を実施しても良い。
塗布量は、乾燥後の質量として1〜60g/m2程度が好ましく、さらに好ましくは3〜50g/m2程度である。ここで1g/m2より少ないとインクの吸収が不十分となりやすく、60g/m2より多いとカールが発生しやすくなるし、コストもかさむので好ましくない。インク受容層は2層以上形成してもよい。2層以上有する場合、配色は異なっていてもよい。
なお、インク受容層となる塗工層にあらかじめ活性エネルギー線硬化性材料を混合しておき、乾燥前の塗工層に活性エネルギー線を照射することで塗工層をゲル化させ、乾燥中に生じやすい塗工層のひび割れを抑制してもよい。使用する活性エネルギー線としては、特に種類を限定するものではないが、α線、β線、γ線、X線、紫外線、電子線などが挙げられる。ただし取り扱いが容易で一般的に普及している紫外線及び電子線を使用するのが好ましい。紫外線は、光重合開始剤や活性基を有する特定の親水性樹脂を使用する必要があるが、照射設備が安価な点が好ましい。もしくは、水性塗料中に特に開始剤等を添加しなくても前述の如く汎用の親水性樹脂の多くでハイドロゲルを形成可能な電子線が最も好適に使用できる。また、インク受容層は、透気性基材を用いる場合、インク受容層が湿潤状態であるうちに、加熱した光沢ロールに圧接して乾燥するキャスト処理を施すことができる。
(光沢層の形成)
本発明のインクジェット記録体は、必要に応じて、微細顔料を主成分とする光沢層を形成してもよい。コストを重視したり、用途に対して必要十分の光沢が得られている場合は、光沢層を形成しなくとも良い。但し、写真印刷用の場合には光沢層を塗設した方が好ましい。光沢層の形成時期は、多孔質インク受容層の乾燥途中であっても、乾燥終了後であっても良い。又、インク受容層と同時多層塗工してもよい。
光沢層用塗布液は、微細顔料やバインダー樹脂、カチオン性化合物などの任意のその他成分を含有する。光沢層を形成するための塗布液は、これらの成分を適当に分散媒に分散させることにより調製される。
光沢層に使用される微細顔料としては、コロイダルシリカ、無定形シリカ、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン等の透明又は白色顔料が例示されるが、これに限定されるものではなく、有機顔料も使用できる。本発明の複合微粒子を用いても良い。これらの中で、コロイダルシリカ、アルミナ又は無定形シリカが、特に光沢性が向上するので好ましい。コロイダルシリカ又はアルミナを使用する場合、平均一次粒子径5〜100nmが好ましく、10〜80nmがより好ましい。さらに好ましくは20〜70nmである。平均粒子径が5nm未満の場合は、インク吸収性が低下する場合があり、平均粒子径が100nmを超えると、透明性が低下するため印字濃度が低下する傾向がある。
無定形シリカを使用する場合、好ましくは平均一次粒子径5〜100nm、より好ましくは5〜40nmのものを用いる。また、無定形シリカは、好ましくは、平均二次粒子径1μm以下、より好ましくは10〜700nmのものを用いる。
微細顔料の接着性を高めるために、バインダー樹脂成分を添加する場合、特に種類を限定するものではないが、前述の各種水溶性樹脂やエマルジョンタイプの親水性樹脂が好ましく使用される。エマルジョンタイプの親水性樹脂を使用する場合の平均粒子径は、20〜150nmの範囲が好ましく、20nm未満の場合は、インク吸収性が低下する場合があり、150nmを超える場合は、光沢度が低下する場合がある。これらのガラス転移温度は、50〜150℃の範囲が好ましい。ガラス転移温度が、50℃より低い場合は、乾燥時に光沢層の成膜が進みすぎ、光沢層の多孔性が低下し、インク吸収性が低下する場合がある。150℃より高い場合は、成膜が不足し、光沢や強度が不足する場合がある。
また、光沢層には、上記のほかにも、プリンターの給紙適性やブロッキングを防止するために有機、無機粗粒子や一般的に塗工紙の製造において使用される各種分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤、保存性改良剤等の各種助剤を適宜添加してもよい。
光沢層の塗布量は、乾燥質量として0.01〜10g/m2が好ましく、0.1〜5g/m2がより好ましく、0.3〜3g/m2が更に好ましい。塗布量が0.01g/m2未満の場合は、インク吸収性や記録濃度には有利であるが、十分な光沢層を形成することが困難なために、光沢度が低くなりやすい。また、塗布量が10g/m2を超えると、光沢度は得やすいが、インク吸収性や記録濃度が低下しやすい。 光沢層の厚みはインク受容層の細孔状態によっては大きく異なる。それ故に、光沢層の厚みを一概に規定することは困難であるが、好ましくは5nm〜5μm、より好ましくは10nm〜3μm、最も好ましくは20nm〜1μmである。塗工層表面に充分な光沢を得るためには、光沢層塗料が細孔を保持した状態でインク受容層表面を完全に被っていることが最も望ましく、そのために必要な光沢層の厚さは光沢層塗料に使用する微細顔料の直径に等しくなる。また、光沢層の厚さが5μmを超えると、インク吸収性や塗膜の強度に支障を来すおそれがあるため好ましくない。
光沢層は、インク受容層と同様の公知の塗布装置で製造することができる。インク受容層と同時に多層塗工してもよい。また、更に光沢性を高めるために、透気性基材の場合は、加熱した光沢ロールを用いて乾燥する方法(所謂キャスト処理)を、低透気性又は非透気性基材の場合は、WO2003/039881号公報等で開示されている加熱した光沢ロールとプレスロールのニップ部で圧力をかけながら塗工し、次工程で乾燥する方法を採用することができる。
光沢層を形成するための塗布液には、更に、形成された塗布液層の表面を光沢ロールからスムーズに安定して剥離させるために、離型剤を添加することができる。
離型剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸類、及びそれらのナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、アンモニウム等の塩類、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド及びメチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素類、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類、ロート油、レシチン等の油脂類や脂質類、含フッ素界面活性剤等の各種界面活性剤、四フッ化エチレンポリマーやエチレン−四フッ化エチレンポリマー等のフッ素系ポリマー等が例示される。
これらのうち、特に、脂肪族炭化水素又はその誘導体や変性物、脂肪酸又はその塩、脂質類が好ましく、中でも、脂肪族炭化水素としてはポリエチレンワックスが、脂肪酸としてはステアリン酸又はオレイン酸が、脂質としてはレシチンの使用がより好ましい。
光沢ロールの表面温度は、乾燥条件等の操業性、インク受容層への密着性、光沢層表面の光沢性から40〜130℃の範囲が好ましく、70〜120℃の範囲がより好ましく、80〜110℃の範囲が更に好ましい。光沢ロールの表面温度が、40℃未満の場合は、顔料の押し込み不足による塗膜強度が低下したり、光沢性が低下するおそれがあり、130℃を超える場合は、塗膜がひび割れるおそれがある。
なお、光沢層の微細顔料に代えて、平均粒子径1μmを超える顔料をマット化剤として用い、光沢を低くコントロールすることも可能である。
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%である。
実施例1
《処理液の調製》
プロペラ式攪拌羽を用いて300rpmで攪拌状態としたイオン交換水18.42gに、20%の乳酸水溶液32.73gを加えた後、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製アミノ基含有シランカップリング剤、品番:LS−1420)13.09gを滴下した。10分間攪拌した後、更に、乳酸アルミニウム(関東化学株式会社製、試薬)13.09gをイオン交換水74.18gに溶解した水溶液を加え、攪拌したまま50℃で2時間加熱し、酸性の重合体水性分散液を得た。この溶液に含まれる重合体の平均分子量は20,000、平均粒子径は3.5nmであり、Al−O−Si結合に相当する吸収ピークが存在することを赤外吸収スペクトル測定にて確認した。なお、平均分子量、平均粒子径および赤外吸収スペクトルは下記の通りに測定した。
次に、この重合体分散液75.76gにポリアリルアミン水溶液(日東紡株式会社製PAA−15C、平均分子量≒15000、固形分濃度15%)24.24gを攪拌しながら混合し、室温で24時間放置して処理液aを得た。
(重合体の重量平均分子量測定方法)
得られた重合体水分散液を軽く振り混ぜた後、30mlを試料としてデイスポーザブルシリンジに取り分け、孔径0.20μmのディスポーザブルメンブレンフィルターを接続して濾過した。途中フィルター詰まり生じるような粒子径の大きな試料については平均粒子径のみを指標とし、全量濾過できた試料についてのみゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にて、ポリエチレングリコール換算の重量平均分子量も測定した。GPCの測定は、東ソー株式会社製カラム:TSK−GELαシリーズ(α2500又は3000)に25℃で水系溶離液を用いて、検出器には示差屈折計を用いた。
(重合体の平均粒子径測定方法)
得られた重合体水性分散液を試料液とし、ファイバー光学動的光散乱光度計〔大塚電子社製、FDLS-3000、測定可能レンジ:0.5nm〜5μm〕を用いて、平均粒子径を測定した。平均粒子径はキュムラント法を用いた解析から算出される値を用いた。
(重合体の赤外吸収スペクトル測定)
各重合体分散液10gを105℃で熱風乾燥し、溶媒を蒸発乾固しガラス状残渣を得た。これを乳鉢で粉砕した微粉末を試料としてKBr錠剤を作成し、フ−リエ変換赤外分光装置(ニコレー社製、NEXUS670)にて波長400〜4000cm-1の範囲の赤外吸収スペクトルを測定した。得られたスペクトルからSi−O−Si結合の近傍の1000cm-1付近に現れるM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子を示す)に相当する吸収ピークの有無を確認した。
《複合微粒子ゾルの調製》
市販の高速分散機(プライミクス株式会社製、T.K.ホモディスパー)にて3000rpmで攪拌したイオン交換水360.4gに処理液a:49.5gを投入し、ついで市販の比表面積200m2/g気相法シリカ(商品名:レオロシオールQS−102、平均一次粒子径12nm、株式会社トクヤマ製)90.1gを徐々に投入した。この混合分散液にマイクロフルイタイザー(Microfluidics社製、型番:M110/EH)による粉砕分散処理を50MPaで1回施し、固形分濃度20%の複合微粒子ゾルAを調製した。得られた複合微粒子A’の細孔容積は1.5ml/g、平均二次粒子径は143nmであった。なお平均二次粒子径および細孔容積は下記のとおりに測定した。
(複合微粒子などの凝集性微粒子の平均二次粒子径測定方法)
微粒子の水性分散液100mlを500ml容のステンレス製カップに入れ、前述の高速分散機を用いて分散処理(3000rpm、5分間)し、水性分散液中の3次粒子を分散した。処理後の分散液を充分に蒸留水で希釈して試料液とし、動的光散乱法によるレーザー粒度計〔大塚電子社製、FPAR-1000、測定可能レンジ:3nm〜5μm〕を用いて、平均二次粒子径を測定した。平均二次粒子径はキュムラント法を用いた解析から算出される値を用いた。
(複合微粒子などの凝集性微粒子の細孔容積測定方法)
微粒子の分散液をそのまま105℃で乾燥し、窒素ガス吸着法比表面積・細孔分布測定装置〔Coulter社製SA3100plus型〕を用い、前処理として200℃で2時間真空脱気した後に測定した。細孔容積は細孔径100nm以下の全細孔容積の値(窒素相対圧0.9814)を使用した。
《塗工基材の調製》
CSF(JIS P−8121)が250mlまで叩解した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と、CSFが250mlまで叩解した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)とを、質量比2:8の割合で混合し、濃度0.5%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリー中に、パルプ絶乾質量に対し、カチオン化澱粉2.0%、アルキルケテンダイマー0.4%、アニオン化ポリアクリルアミド樹脂0.1%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂0.7%を添加し、十分に攪拌して分散させた。
上記組成のパルプスラリーを長網マシンで抄紙し、ドライヤー、サイズプレス、マシンカレンダーを通し、坪量180g/m2、密度1.0g/cm3の原紙を製造した。上記サイズプレス工程に用いたサイズプレス液は、カルボキシル変性ポリビニルアルコールと塩化ナトリウムとを2:1の質量比で混合し、これを水に加えて加熱溶解し、濃度5%に調製したもので、このサイズプレス液を紙の両面に、合計で25ml/m2塗布して、基材A(透気度:1000秒)を得た。
上記基材Aの原紙の両面に、コロナ放電処理した後、バンバリーミキサーで混合分散した下記のポリオレフィン樹脂組成物1を、基材Aのフェルト面側に、塗工量25g/m2となるようにして、またポリオレフィン樹脂組成物2を、基材Aのワイヤー側に、塗工量20g/m2となるように、T型ダイを有する溶融押出し機(溶融温度320℃)で塗布し、フェルト面側を鏡面のクーリングロール、ワイヤー面側を粗面のクーリングロールで冷却固化して、平滑度(王研式、J.TAPPI No.5B)が6000秒、不透明度(JIS P8138)が93%の樹脂を被覆した。その後、ポリオレフィン樹脂組成物1で樹脂被覆した側に再度コロナ放電処理した後、市販の写真用ゼラチン(宮城化学工業株式会社製、品名:P−487)の1%熱水溶液を乾燥質量で0.3g/m2になるように塗工し60℃で熱風乾燥して基材Bを得た。
ポリオレフィン樹脂組成物1
長鎖型低密度ポリエチレン樹脂(密度0.926g/cm3、メルトインデックス20g/10分)35部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm3、メルトインデックス2g/10分)50部、アナターゼ型二酸化チタン(商品名:A−220、石原産業社製)15部、ステアリン酸亜鉛0.1部、酸化防止剤(商品名:Irganox 1010、チバガイギー社製)0.03部、群青(商品名:青口群青NO.2000、第一化成社製)0.09部、蛍光増白剤(商品名:UVITEX OB、チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.3部を混合し、ポリオレフィン樹脂組成物1とした。
ポリオレフィン樹脂組成物2
高密度ポリエチレン樹脂(密度0.954g/cm3、メルトインデックス20g/10分)65部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm3、メルトインデックス2g/10分)35部を溶融混合し、ポリオレフィン樹脂組成物2とした。
《塗工》
前述の複合微粒子ゾルA60gにイオン交換水8.76g、ホウ酸0.48g、アセチレングリコール系界面活性剤の0.1%水溶液(商品名:オルフィンE1004、日信化学工業社製)6.00gを混合した後、部分けん化ポリビニルアルコール(商品名:PVA−224、重合度=2400、けん化度=約88%、クラレ社製)の9%水溶液24.00gを混合し、固形分濃度15%の塗料を調製した。
基材Bのポリオレフィン樹脂組成物1をラミネートした側に、上記塗料を乾燥質量で塗工量が24g/m2となるようにダイコーターで塗工し、110℃で10分間熱風乾燥してインクジェット記録体を得た。
実施例2
3−アミノプロピルトリメトキシシランの代わりにN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製アミノ基含有シランカップリング剤、品番:LS−2480)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、酸性の重合体水性分散液を得た。この溶液に含まれる重合体の平均分子量は25,000、平均粒子径は3.8nmであり、Al−O−Si結合に相当する吸収ピークが存在することを赤外吸収スペクトル測定にて確認した。
この重合体水性分散液を使用したこと以外は実施例1と同様にして、処理液b及び複合微粒子ゾルBを調製し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。得られた複合微粒子B’の細孔容積は1.5ml/g、平均二次粒子径は144nmであった。
実施例3
乳酸アルミニウムの代わりに乳酸亜鉛(関東化学株式会社製、試薬:乳酸亜鉛三水和物)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、酸性の重合体水性分散液を得た。この溶液に含まれる重合体の平均分子量は6,000、平均粒子径は2.4nmであり、Zn−O−Si結合に相当する吸収ピークが存在することを赤外吸収スペクトル測定にて確認した。
この重合体水性分散液を使用したこと以外は実施例1と同様にして、処理液c及び複合微粒子ゾルCを調製し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。得られた複合微粒子C’の細孔容積は1.4ml/g、平均二次粒子径は141nmであった。
実施例4
乳酸アルミニウム13.09gをイオン交換水74.18gに溶解した水溶液の代わりに酢酸ジルコニール(第一稀元素化学工業株式会社製 、化学式:ZrO(C2322、ZrO換算≒15%)87.27gを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、酸性の重合体水性分散液を得た。この溶液に含まれる重合体の平均分子量は78,000、粒子径は5.6nmであり、Zr−O−Si結合に相当する吸収ピークが存在することを赤外吸収スペクトル測定にて確認した。
この重合体水性分散液を使用したこと以外は実施例1と同様にして、処理液d及び複合微粒子ゾルDを調製し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。得られた複合微粒子D’の細孔容積は1.4ml/g、平均二次粒子径は154nmであった。
実施例5
乳酸アルミニウムの代わりにオキシ塩化ジルコニウム(関東化学株式会社製、試薬名:塩化酸化ジルコニウム八水和物、化学式:ZrOCl2・8H2O)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、酸性の重合体水性分散液を得た。この溶液に含まれる重合体の平均粒子径は4000、平均粒子径は2.2nmであり、Zr−O−Si結合に相当する吸収ピークが存在することを赤外吸収スペクトル測定にて確認した。
この重合体水性分散液を使用したこと以外は実施例1と同様にして、処理液e及び複合微粒子ゾルEを調製し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。得られた複合微粒子E’の細孔容積は1.5ml/g、平均二次粒子径は146nmであった。
実施例6
塗工基材として、基材Bの代わりに基材Aを用いたこと以外は実施例5と同様にしてインクジェット記録体を作成した。
実施例7
レオロシオールQS−102の代わりに、比表面積300m2/gの気相法シリカ(商品名:レオロシオールQS−30、平均一次粒子径7nm、株式会社トクヤマ製)を用いたこと以外は実施例5と同様にして複合微粒子ゾルFを調製し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。得られた複合微粒子F’の細孔容積は1.4ml/g、平均二次粒子径は143nmであった。
実施例8
市販ゲル法シリカ(商品名:サイロジェットP612、グレースデビソン社製)をイオン交換水に分散し、サンドグラインダーにより粉砕分散した後、前述のマイクロフルイタイザーによる粉砕分散処理を処理圧50MPaで10回繰り返して粉砕分散し、20%のシリカゾル水分散液を得た。このゾル450.5gに実施例5で調整した処理液e:90.1gを混合したスラリーを用い実施例1と同様にして分散処理を行って複合微粒子ゾルGを調製し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。得られた複合微粒子G’の細孔容積は1.1ml/g、平均二次粒子径は278nmであった。
実施例9
ポリアリルアミン水溶液(PAA−15C)24.24gの代わりに、同PAA―05(日東紡株式会社製、平均分子量≒5000、固形分濃度20%)18.18gをイオン交換水6.06gで希釈した水溶液を用いたこと以外は実施例5と同様にして処理液h及び複合微粒子ゾルHを調製し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。得られた複合微粒子H’の細孔容積は1.4ml/g、平均二次粒子径は146nmであった。
実施例10
ポリアリルアミン水溶液(PAA−15C)24.24gの代わりに、ゴーセファイマーZ−220(日本合成化学工業株式会社製、アセトアセチル化PVA)3.64gをイオン交換水20.6gに溶解させた水溶液を用いたこと以外は実施例5と同様にして、処理液j及び複合微粒子ゾルJを調製し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。得られた複合微粒子J’の細孔容積は1.3ml/g、平均二次粒子径は156nmであった。
実施例11
プロペラ式攪拌羽を用いて300rpmで攪拌状態としたイオン交換水18.42gに、20%の乳酸水溶液32.73gを加えた後、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン13.09gを滴下した。10分間攪拌した後、更に、オキシ塩化ジルコニウム13.09gをイオン交換水74.18gに溶解した水溶液を加え、続けてポリアリルアミン水溶液(PAA15C)48.48gを混合し、攪拌したまま50℃で2時間加熱し、ほぼ中性の処理液kを得た。
この処理液kを用いたこと以外は実施例5と同様にして複合微粒子ゾルKを調製し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。得られた複合微粒子K’の細孔容積は1.5ml/g、平均二次粒子径は141nmであった。
実施例12
前述の高速分散機にて3000rpmで攪拌したイオン交換水364.92gに20%乳酸水溶液8.11g、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン3.24g、オキシ塩化ジルコニウム3.24gをイオン交換水18.38gに希釈した水溶液、PAA−15C:12.01gを順次加えそのまま10分間攪拌した後、最後にレオロシールQS−102:90.09gを徐々に投入した。この混合分散液を実施例1と同様にして粉砕混合処理を施し、固形分濃度20%の微粒子ゾルMを調製した。得られた微粒子M’の細孔容積は1.3ml/g、平均二次粒子径は186nmであった。
また、レオロシールQS−102を投入する前の溶液に含まれる重合体m’に関し、重量平均分子量が2,900、平均粒子径が1.9nmであり、Zr−O−Si結合に相当する吸収ピークが存在することを赤外吸収スペクトル測定にて別途確認した。
複合微粒子ゾルAの代わりに微粒子ゾルMを用いたこと以外は実施例1と同様にして、塗料を調製し、インクジェット記録体を作成した。
比較例1
前述の高速分散機にて3000rpmで攪拌したイオン交換水382.61gに、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン8.70gを滴下して加えた。そこに8%塩酸水溶液21.74gを加え10分間攪拌した後、レオロシオールQS−102:88.89gを徐々に投入した。この混合分散液を実施例1と同様にして粉砕混合処理を施し、固形分濃度20%の微粒子ゾルNを調製した。得られた微粒子N’の細孔容積は1.4ml/g、平均二次粒子径は146nmであった。レオロシールQS−102を投入する前の溶液には金属(M)イオンとなる成分を添加していないため、微粒子N’にはM−O−Si結合は含まれていない。
複合化微粒子ゾルAの代わりに微粒子ゾルNを用いたこと以外は実施例1と同様にして、塗料を調製し、インクジェット記録体を作成した。
比較例2
イオン交換水364.0gに、実施例5で調整した(ポリアリルアミンを配位させる前の)重合体分散液:45.9gを投入し、ついでレオロシオールQS−102:90.1gを徐々に投入した。この混合分散液を実施例1と同様にして粉砕分散し、固形分濃度20%の複合微粒子ゾルPを調製し、その塗料からインクジェット記録体を作成した。得られた複合微粒子P’の細孔容積は1.5ml/g、平均二次粒子径は144nmであった。
比較例3
インクジェット記録体用塗料にPAA−15Cを1.2g添加したこと以外は比較例2と同様にして、インクジェット記録体を作成した。
(評価方法)
実施例及び比較例で得たインクジェット記録体を下記の方法で評価し、各記録体の作製条件を表1に、評価結果を表2に示した。
(塗膜光沢)
得られたインクジェット記録体の塗工表面を、村上色彩技術研究所の光沢度計(GM−26 PRO/AUTO)を用い、ISO 8254−1に基づいて測定した。
(印字濃度測定)
L判サイズ(89mm×127mm)に切り取った各試料に、23℃湿度50%の環境(ISO環境)でキャノン株式会社製インクジェットプリンタ:PIXUS−iP8600(染料インク搭載機)のスーパーフォトペーパー推奨設定モード(マッチングなし)設定で100%ブラックベタを印字し、ISO環境下で24時間乾燥させた。この印字部をマクベス反射濃度計(マクベス社製、RD−914)のブラック用フィルターを用いて測定した。表中に示した数字は5回測定の平均値である。
(高温高湿下での連続印字評価試験)
サンプルをL判サイズ(89mm×127mm)に切り取り、各2枚を30℃湿度80%の環境で24時間調湿後、キャノン株式会社製インクジェットプリンタ:PIXUS−iP4200のスーパーフォトペーパー推奨設定で、JIS−X9201「高精細カラーディジタル標準画像CMYK/SCID」画像識別番号:N1を2枚続けて印字した。印字後のサンプルは積層状態のまま直ちにL判サイズの厚さ5mmのガラス板2枚の間に挟んで、同環境で静置した。24時間後、1枚目に出力した印字サンプル(印字面に2枚目が積層されていたもの)を取り出して23度湿度50%環境中で2時間乾燥させた。比較用の通常画像として、23度湿度50%環境で調湿後、印字して積層せずに乾燥させた印字サンプルも作成した。同様にして、N1画像の代わりに「1cm2角の100%レッド、グリーン、ブルーを横につなげたパターンを間隔1mm、0.5mmあけて縦に3列並べた」パターン画像についても、積層及び通常印字サンプルを作成した。N1画像から主として色調を、パターン画像から主としてにじみを確認し、下記指標をもとに5段階に評価した。
《色調評価の指標》
5点:高温高湿の過酷な条件で連続印刷により積層された画像でも、通常画像と同等の鮮明な色調である。
4点:鮮明な通常画像と比較すれば色調は微妙に異なるが、単独で見れば積層画像も不自然さのない鮮明な色調である。
3点:通常画像は鮮明だが、積層画像は色が沈んでおり、単独でも不自然な印象がある。
2点:通常画像の鮮明性がやや劣り、積層画像は更に色が沈んで不自然な印象がある。
1点:通常画像の色調が明らかに不自然である。
《にじみ評価の指標》
5点:高温高湿の過酷な条件で連続印刷により積層された画像にも、にじみは無い。
4点:積層画像の印字境界部(ベタ部〜白紙、もしくはベタ部〜ベタ部)に若干のにじみはあるが問題ないレベルである。
3点:積層画像の印字境界部に、判別可能なにじみがある。
2点:積層画像は明確ににじんでいるが、通常画像にはにじみはない。
1点:通常画像にもにじみがある。
(複合微粒子ゾルの品質安定性評価)
複合微粒子ゾルの経時変化を確認するために、調製後14日室温で保存しておいた複合微粒子ゾルを用い、それぞれの実施例もしくは比較例と同様にしてインクジェット記録体を作成し、高温高湿下での連続印字評価試験を実施した。複合微粒子調製後に続けて作成したインクジェット記録体の状況と比較して、複合微粒子ゾルの品質安定性を下記指標をもとに3段階に評価した。
○:経時保管サンプルも、直後サンプルとほぼ同等の物性・品質を示した。
△:経時保管サンプルは、直後サンプルと比べ、塗料物性(粘度やpH)や印字評価結果がやや変化した。
×:経時保管サンプルは、直後サンプルに比べ印字評価結果が大幅に悪化した。
Figure 2009209322
表中、略称としてAPTMSは3−アミノプロピルトリメトキシシラン、AEAPTMSはN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランを示す。
Figure 2009209322
表1及び表2の実施例1〜12から明らかなように、本発明の複合微粒子からなるインクジェット記録体は、特にインクの定着能が良好なため、印字濃度が高く、且つ連続印刷により積層された状態のまま保持されても、通常環境と変わりない鮮明な画像を得られるものであった。インクジェットプリンタは現在、一般家庭を含め手軽な出力機器として広く普及しているため、高温高湿環境下で複数毎の写真調出力を行ない、積層状態のまま保管される状況は、充分に想定される環境である。この過酷な条件下でも、本発明の複合微粒子を用いたインクジェット記録体は、分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体のアミノ基を有するSi化合物の種類や(実施例1、2)、各種金属化合物(実施例2〜5)を換えても、もしくはMに配位させる重合体の分子量や種類、添加時期(実施例5、9、10、11)、更には無機顔料の種類(実施例7,8)を換えても、常に良好な品質のインクジェット記録体が得られた。また、インクジェット記録体の基材(実施例6)が異なっても良好な品質が確認された。前述の重合体の製造に反応性の高い材料を用いた場合は、特に重合促進のための加熱を行なわなくとも加熱品とほぼ同等の品質が得られたため、製造工程における工程負荷も最小限に抑制可能と考えられる(実施例12)。
更に、本件の複合微粒子は、調製後14日間経過した場合でも、良好な品質のインクジェット記録体を製造でき、経時の安定性が良好なものであることも確認された。
一方、比較例1に示したように、一般的手法であるアミノ基含有シランカップリング剤によるカチオン化処理を無機顔料に施しただけでは、インクの定着能が不十分なため良好な品質のインクジェット記録体は得られなかった。また、本発明で利用する「金属イオンとキレートを形成し得る親水性重合体」を用いずに、分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体と無機顔料のみで調製した複合微粒子の場合、前述のシランカップリング処理品と比べるとインク定着能が向上しているため画像の鮮明性は一定レベルの品質が得られたが、過酷な条件下で印字画像のにじみを完全に抑制するまでにはいたらず、加えて、複合微粒子ゾルの安定性が劣ることから調製後14日間経過したゾルを用いて調製したサンプルでは品質の悪化が見られた(比較例2)。また、その複合微粒子ゾルを用いて塗料調製の段階で前述の親水性重合体を添加した場合、系内の安定性低下により塗料が相分離するため塗膜が白濁し、光沢のみならず画質も著しく低下してしまった(比較例3)。

Claims (14)

  1. 無機顔料と、分子内にアミノ基とM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子を示す)を含む重合体と、該Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体とを、該無機顔料の周囲の少なくとも一部にそれらの重合体を結合して備える、複合微粒子。
  2. 前記分子内にアミノ基とM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子を示す)を含む重合体と、前記Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体との少なくとも一部が、互いに配位した状態である、請求項1記載の複合微粒子。
  3. 無機顔料と、分子内にアミノ基とM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子を示す)を含む重合体と、前記Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体とを、水性分散液中に共存させ、機械的シェアを与えて得られることを特徴とする、複合微粒子。
  4. 分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体の重量平均分子量が500〜500,000である請求項1〜3のいずれかに記載の複合微粒子。
  5. 分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体が平均粒子径1〜50nmの超微粒子である請求項1〜4のいずれかに記載の複合微粒子。
  6. 前記Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体が、ポリアリルアミンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合微粒子。
  7. 無機顔料が、平均粒子径1μm以下の気相法シリカであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合微粒子。
  8. 前記Mがジルコニウム、アルミニウム、チタン及び亜鉛から成る群から選ばれる少なくとも一種の金属原子である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合粒子。
  9. 分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体が、アミノ基含有シランカップリング剤と2価以上の金属化合物の重合により形成されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の複合微粒子。
  10. アミノ基含有シランカップリング剤が、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシランから成る群より選ばれる少なくとも一種もしくはその加水分解物及び重合体であることを特徴とする請求項9に記載の複合微粒子。
  11. 2価以上の金属化合物が、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物及び亜鉛化合物から成る群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項9又は10に記載の複合微粒子。
  12. 無機顔料と、分子内にアミノ基とM−O−Si結合を含む重合体と、親水性重合体の固形分比率が、無機顔料100質量部に対して、前記重合体が2〜20質量部、親水性重合体が0.5〜5質量部であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の複合微粒子。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の複合微粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録体。
  14. 水性溶媒中で、アミノ基含有シランカップリング剤と2価以上の金属化合物を重合して、粒子内にアミノ基とM−O−Si結合(Mは2価以上の金属原子を示す)を含む重合体の水性分散液を得、該水性分散液に、前記Mのイオンとキレートを形成し得る親水性重合体と、無機顔料を加え、分散して複合化することを特徴とする複合微粒子の製造方法。
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