JP2008253997A - 消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法 - Google Patents

消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】短絡を伴う消耗電極交流アーク溶接におけるくびれ検出制御方法において、くびれ検出精度を向上させる。
【解決手段】短絡状態からアークが再発生する前兆現象である溶滴のくびれ現象を消耗電極・母材間の電圧値又は抵抗値の変化がくびれ検出基準値Vtnに達したことによって検出し、このくびれ現象を検出すると短絡負荷に通電する溶接電流Iwを急減させて低電流値Iaの状態でアークが再発生するように出力制御する消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法において、前記くびれ検出基準値Vtnを、電極プラス極性EP中は第1くびれ検出基準値Vtn1に設定し、電極マイナス極性EN中は前記第1くびれ検出基準値の絶対値とは異なった値の第2くびれ検出基準値Vtn2に設定する。
【選択図】図2

Description

本発明は、消耗電極交流アーク溶接において短絡期間中の溶滴のくびれ現象を検出して溶接電流を急減させて溶接品質を向上させるための消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法に関するものである。
図5は、短絡期間Tsとアーク期間Taとを繰り返す消耗電極アーク溶接における電流・電圧波形及び溶滴移行を示す図である。同図(A)は消耗電極(以下、溶接ワイヤ1という)を通電する溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接ワイヤ1・母材2間に印加する溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(C)〜(E)は溶滴1aの移行の様子を示す。以下、同図を参照して説明する。
時刻t1〜t3の短絡期間Ts中は溶接ワイヤ1先端の溶滴1aが母材2と短絡した状態にあり、同図(A)に示すように、溶接電流Iwは次第に増加し、同図(B)に示すように、溶接電圧Vwは短絡状態にあるために数V程度の低い値となる。同図(C)に示すように、時刻t1において溶滴1aが母材2と接触して短絡状態に入る。その後、同図(D)に示すように、溶滴1aを通電する溶接電流Iwによる電磁的ピンチ力によって溶滴1a上部にくびれ1bが発生する。そしてこのくびれ1bが急速に進行して、時刻t3において同図(E)に示すように、溶滴1aは溶接ワイヤ1から溶融池2aへと移行しアーク3が再発生する。
上記のくびれ現象が発生すると、数百μs程度の極短時間後に短絡が開放されてアーク3が再発生する。すなわち、このくびれ現象は短絡開放の前兆現象となる。くびれ1bが発生すると、溶接電流Iwの通電路がくびれ部分で狭くなるために、くびれ部分の抵抗値が増大する。この抵抗値の増大は、くびれが進行してくびれ部分がより狭くなるほど大きくなる。したがって、短絡期間Ts中において溶接ワイヤ1・母材2間の抵抗値の変化を検出することでくびれ現象の発生及び進行を検出することができる。この抵抗値の変化は、(溶接電圧Vw)/(溶接電流Iw)によって算出することができる。また、上述したように、くびれ発生時間は極短時間であるために、同図(A)に示すように、この期間中の溶接電流Iwの変化は小さい。このために、抵抗値の変化に代えて溶接電圧Vwの変化によってもくびれ現象の発生を検出することができる。具体的なくびれ検出方法としては、短絡期間Ts中の抵抗値又は溶接電圧値Vwの変化率(微分値)を算出し、この変化率が予め定めたくびれ検出基準値に達したことによってくびれ検出を行う方法がある。また、他の方法として、同図(B)に示すように、短絡期間Ts中のくびれ発生前の安定した短絡電圧値Vsからの電圧上昇値ΔVを算出し、時刻t2においてこの電圧上昇値ΔVが予め定めたくびれ検出基準値Vtnに達したことによってくびれ検出を行う方法がある。以下の説明では、くびれ検出方法が上記の電圧上昇値ΔVによる場合について説明するが、従来から種々提案されている他の方法であっても良い。時刻t3のアーク再発生の検出は、溶接電圧Vwが短絡/アーク判別値Vta以上になったことを判別して簡単に行うことができる。ちなみに、Vw<Vtaの期間が短絡期間Tsとなり、Vw≧Vtaの期間がアーク期間Taとなる。時刻t2〜t3のくびれ発生を検出してからアーク再発生までの時間を、以下くびれ検出期間Tnと呼ぶことにする。時刻t3においてアークが再発生すると、同図(A)に示すように、溶接電流Iwは急上昇した後になだらかに減少し、同図(B)に示すように、溶接電圧Vwは数十V程度のアーク電圧値になる。時刻t3〜t4のアーク期間Ta中は、溶接ワイヤ1先端が溶融されて溶滴1aが形成される。以後、時刻t1〜t4の期間の動作を繰り返す。
上述した短絡を伴う溶接では、時刻t3においてアーク3が再発生したときのアーク再発生時電流値Iaが大電流値であると、アーク3から溶融池2aへのアーク力が急峻に大きくなり、大量のスパッタが発生する。すなわち、アーク再発生時電流値Iaの値に略比例してスパッタ発生量が増加する。したがって、スパッタの発生を抑制するためには、このアーク再発生時電流値Iaを小さくする必要がある。このための方法として、上記のくびれ現象の発生を検出して溶接電流Iwを急減させてアーク再発生時電流値Iaを小さくするくびれ検出制御方法を付加した溶接電源が従来から種々提案されている。以下、この従来技術について説明する。
図6は、従来技術のくびれ検出制御方法を採用した溶接電源のブロック図である。溶接電源PSは、一般的な消耗電極アーク溶接用の溶接電源である。トランジスタTRは出力に直列に挿入され、それと並列に抵抗器Rが接続されている。電圧検出回路VDは、溶接電圧Vwを検出して、電圧検出信号Vdを出力する。くびれ検出回路NDは、この電圧検出信号Vdを入力として、短絡期間Ts中に上述した電圧上昇値ΔVが予め定めたくびれ検出基準値Vtnに達した時点でHighレベルにセットされ、上記の電圧検出信号Vdの値が予め定めた短絡/アーク判別値Vtaに達した時点でLowレベルにリセットされるくびれ検出信号Ndを出力する。すなわち、このくびれ検出信号Ndは、上述したくびれ検出期間Tnの間Highレベルになる。駆動回路DRは、このくびれ検出信号NdがLowレベルのとき(非くびれ検出時)は上記のトランジスタTRをオン状態にする駆動信号Drを出力する。したがって、上記のトランジスタTRは、上記のくびれ検出信号NdがHighレベルのとき(くびれ検出時)はオフ状態になる。
図7は、上記の溶接電源の各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接電流Iwを示し、同図(B)は溶接電圧Vwを示し、同図(C)はくびれ検出信号Ndを示し、同図(D)は駆動信号Drを示す。以下、同図を参照して説明する。
同図において、時刻t2〜t3のくびれ検出期間Tn以外の期間は、同図(C)に示すように、くびれ検出信号NdはLowレベルであるので、同図(D)に示すように、駆動信号DrはHighレベルになる。この結果、トランジスタTRはオン状態になるので、通常の消耗電極アーク溶接用の溶接電源と同一の動作となる。
時刻t2において、同図(B)に示すように、短絡期間Ts中に溶接電圧Vwが上昇して電圧上昇値ΔVが予め定めたくびれ検出基準値Vtn以上になったことを検出して溶滴にくびれが発生したと判別すると、同図(C)に示すように、くびれ検出信号NdがHighレベルになる。これに応動して、同図(D)に示すように、駆動信号DrはLowレベルになるので、トランジスタTRはオフ状態になる。この結果、抵抗器Rが溶接電流Iwの通電路に挿入される。この抵抗器Rの値は短絡負荷(数十mΩ)の10倍以上大きな値に設定されるために、同図(A)に示すように、溶接電源内の直流リアクトル及びケーブルのリアクトルに蓄積されたエネルギーが急放電されて溶接電流Iwは急激に減少する。時刻t3において、短絡が開放されてアークが再発生すると、同図(B)に示すように、溶接電圧Vwが予め定めた短絡/アーク判別値Vta以上になる。これを検出して、同図(C)に示すように、くびれ検出信号NdはLowレベルになり、同図(D)に示すように、駆動信号DrはHighレベルになる。この結果、トランジスタTRはオン状態になり、通常の消耗電極アーク溶接の制御となる。この動作によって、アーク再発生時(時刻t3)のアーク再発生時電流値Iaを小さくすることができ、スパッタの発生を抑制することができる。
上記の説明は、直流の消耗電極アーク溶接の場合であるが、短絡を伴う消耗電極交流アーク溶接においても同様である。以下、消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法について説明する。
図8は、消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法を示す電流・電圧波形図である。同図(A)は極性切換信号Spnを示し、同図(B)は溶接電流Iwを示し、同図(C)は溶接電圧Vwを示す。以下、同図を参照して説明する。
極性切換信号Spnは、同図(A)に示すように、予め定めた電極プラス極性期間Tepの間はHighレベルとなり、予め定めた電極マイナス極性期間Tenの間はLowレベルになる。溶接電源の出力極性は、この極性切換信号Spnに従って切り換わる。同図(B)及び同図(C)において、0A又は0Vから上が電極プラス極性EPを示し、下が電極マイナス極性ENを示す。また、溶接電流Iw及び溶接電圧Vwの値は、特に記載しない限り各々の極性における絶対値のことを表すものとする。
電極プラス極性期間Tep中の時刻t1において短絡が発生すると、同図(B)に示すように、溶接電流Iwが増加し、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwは数V程度の低い短絡電圧値Vsとなる。短絡期間Ts中に溶滴にくびれが発生すると、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwは増加して時刻t2において電圧上昇値ΔVがくびれ検出基準値Vtnに達する。これに応動して、同図(B)に示すように、溶接電流Iwは急減する。そして、時刻t3においてアークが再発生する。このアーク再発生時の電流値Iaが低い値であるので、スパッタの発生は非常に少なくなる。アーク期間Ta中は、同図(B)に示すように、溶接電流Iwは急上昇した後に緩やかに減少し、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwは数十Vのアーク電圧値となる。電極プラス極性期間Tepの間、上記の動作を繰り返す。電極プラス極性期間Tepは数百ms程度に設定されることが多いので、1期間中の短絡回数は数回から数十回程度である。
時刻t5において、同図(A)に示すように、極性切換信号SpnがLowレベルに変化すると、溶接電源の出力極性は電極マイナス極性ENにに切り換わる。時刻t5に短絡が発生して短絡期間Tsになると。上記と同様に、溶接電流Iwは増加し溶接電圧Vwは低い値の短絡電圧値Vsになる。溶滴にくびれが発生して時刻t6において、同図(C)に示すように、電圧上昇値ΔVが上記のくびれ検出基準値Vtnに達すると、同図(B)に示すように、溶接電流Iwは急減する。そして、時刻t7においてアークが再発生すると、同図(B)に示すように、溶接電流Iwは急上昇した後に緩やかに減少し、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwは数十Vのアーク電圧値になる。この場合も、時刻t7のアーク再発生時電流値Iaが低い値であるので、スパッタの発生は非常に少なくなる。電極マイナス極性期間Ten中、上記の動作を繰り返す。この電極マイナス極性期間Tenも数百ms程度に設定されるので、1期間の短絡回数は上記と同様に数回から数十回程度である。
上述したように、消耗電極交流アーク溶接においてもくびれ検出制御を行うことで、スパッタの発生を大幅に削減することができ高品質な溶接が可能となる。
上述したくびれ検出制御においては、的確にくびれ現象の発生を検出することが、スパッタを大幅に低減して高品質な溶接ができるかの要点となる。したがって、くびれ検出の感度(くびれ検出基準値Vtnの設定)を種々の溶接条件ごとに適正化する必要がある。溶接条件としては、被溶接物の材質、継手、溶接姿勢、ワイヤ突出し長さ、送給速度、溶接速度等多数の条件がある。これらの溶接条件ごとにくびれ検出基準値Vtnを適正化するために、従来技術では、図7に示すように、くびれ検出期間Tn又はアーク再発生時電流Iaをフィードバック制御して目標値になるようにくびれ検出基準値Vtnを自動調整する方法が使用されている。また、溶接電源のパネルにくびれ検出基準値Vtnの調整ツマミを設けたものもある。(従来技術の例としては、特許文献1、2を参照。)
特開2004−114088号公報 特開2006−28万1219号公報
上述した従来技術の消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法では、交流の溶接電圧Vwの絶対値を検出して溶接電源の定電圧制御及びくびれ検出制御に使用している。これは制御回路において直流信号とした方が処理が容易になるためである。したがって、消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法においても、溶接条件ごとのくびれ検出基準値Vtnは1つの値に設定されるのが通常である。このために、電極プラス極性期間Tep及び電極マイナス極性期間Ten共に同一のくびれ検出基準値Vtnに設定されていた。
しかし、電極プラス極性EPと電極マイナス極性ENとでは、溶滴の形成状態及びくびれの発生状態が大きく異なっている。この結果、くびれ検出感度であるくびれ検出基準値Vtnを電極プラス極性EPで適正化すると電極マイナス極性ENでは適正でない状態となり、その逆も同様である。また、上述したくびれ検出基準値Vtnの適正化方法を使用しても、溶接条件ごとには適正化されるが、極性ごとには適正化されない。このために。消耗電極交流アーク溶接においては、スパッタ発生量の削減効果が十分でない場合があった。
そこで、本発明は、消耗電極交流アーク溶接においてくびれ検出感度を適正化することができスパッタ発生量の削減効果を最大限発揮させることができる消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、第1の発明は、溶接電源の出力を電極プラス極性と電極マイナス極性とに交互に切り換えると共に前記両極性中は消耗電極と母材との間でアーク発生状態と短絡状態とを繰り返す消耗電極交流アーク溶接にあって、前記両極性中に短絡状態からアークが再発生する前兆現象である溶滴のくびれ現象を消耗電極・母材間の電圧値又は抵抗値の変化がくびれ検出基準値に達したことによって検出し、このくびれ現象を検出すると短絡負荷に通電する溶接電流を急減させて低電流値の状態でアークが再発生するように出力制御する消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法において、
前記くびれ検出基準値を、前記電極プラス極性中は第1くびれ検出基準値に設定し、前記電極マイナス極性中は前記第1くびれ検出基準値の絶対値とは異なった値の第2くびれ検出基準値に設定し、これら第1及び第2くびれ検出基準値は各々対応する極性での溶接状態が良好になるように設定されることを特徴とする消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法である。
第2の発明は、前記第1くびれ検出基準値の絶対値を前記第2くびれ検出基準値の絶対値よりも小さな値に設定する、ことを特徴とする第1の発明記載の消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法である。
第3の発明は、前記第2くびれ検出基準値は、前記第1くびれ検出基準値を入力とする予め定めた関数によって設定される、ことを特徴とする第1又は第2の発明記載の消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法である。
第4の発明は、極性が切り換わった時点から短絡発生が所定回数に達するまでの期間中は、前記くびれ検出基準値の絶対値を前記第1くびれ検出基準値の絶対値と前記第2くびれ検出基準値の絶対値との中間値に設定する、ことを特徴とする第1〜第3の発明のいずれか1項に記載の消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法である。
第5の発明は、前記くびれ検出時点からアークが再発生する時点までの期間であるくびれ検出期間を前記電極プラス極性中と前記電極マイナス極性中とに分けて検出し、
前記第1くびれ検出基準値は前記電極プラス極性中のくびれ検出期間が予め定めた第1くびれ検出期間設定値と等しくなるように自動設定され、
前記第2くびれ検出基準値は前記電極マイナス極性中のくびれ検出期間が予め定めた第2くびれ検出期間設定値と等しくなるように自動設定される、ことを特徴とする第1又は第4の発明記載の消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法である。
本発明によれば、各極性ごとにくびれ検出基準値を適正値に設定することによって、消耗電極交流アーク溶接におけるくびれ検出制御を安定化させることができる。このために、消耗電極交流アーク溶接において、スパッタ発生量を大幅に削減することができ、高品質溶接を行うことができる。
さらに、第3の発明によれば、第2くびれ検出基準値を、第1くびれ検出基準値を入力とする予め定めた関数によって設定することによって、上記の効果に加えて、溶接条件ごとの第2くびれ検出基準値の設定が容易になる。
さらに、第4の発明によれば、極性が切り換わった時点から短絡発生が所定回数に達するまでの期間中は、くびれ検出基準値の絶対値を第1くびれ検出基準値の絶対値と第2くびれ検出基準値の絶対値との中間値に設定することによって、極性切換時の過渡的な状態においてもくびれ検出制御を安定化することができる。このために、スパッタの削減効果がさらに大きくなる。
さらに、第5の発明によれば、第1くびれ検出基準値及び第2くびれ検出基準値をくびれ検出期間を利用して自動設定することによって常に適正値に設定することができるので、設定の手間を大幅に低減し、かつ,安定した低スパッタ制御性能を得ることができる.
以下に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法を搭載した溶接電源のブロック図である。以下、同図を参照して各回路について説明する。
インバータ回路INVは、3相200V等の商用電源を整流し、後述するパルス幅変調信号Pwmに従ってインバータ制御して高周波交流を出力する。高周波変圧器INTは、この高周波交流電圧を溶接に適した電圧に降圧する。2次整流器D2a〜D2dは、降圧された高周波交流を整流して、正及び負の直流電圧を出力する。リアクトルWLは、この直流電圧を平滑する。
電極プラス極性スイッチング素子PTR及び電極マイナス極性スイッチング素子NTRは、上記の正負出力を電極プラス極性EP又は電極マイナス極性ENに切り換える。電極プラス極性スイッチング素子PTRが導通状態になると溶接電源の出力は電極プラス極性EPとなり、他方、電極マイナス極性スイッチング素子NTRが導通状態になると電極マイナス極性ENとなる。
第1スイッチング素子TR1と第1抵抗器R1とを直列に接続した回路を上記の電極プラス極性スイッチング素子PTRに並列に接続し、さらに、第2スイッチング素子TR2と第2抵抗器R2とを直列に接続した回路を上記の電極マイナス極性スイッチング素子NTRに並列に接続する。
溶接ワイヤ1はワイヤ送給装置の送給ロール5の回転によって溶接トーチ4を通って送給されて、母材2との間にアーク3が発生し、アーク3には交流の溶接電圧Vw及び溶接電流Iwが供給される。
電圧検出回路VDは、交流の溶接電圧Vwを検出して絶対値に変換して電圧検出信号Vdを出力する。短絡判別回路SDは、この電圧検出信号Vdを入力として短絡判別信号Sdを出力する。くびれ検出基準値設定回路VTNは、この短絡判別信号Sd及び外部からの極性切換信号Spnを入力として、図2で後述するように、極性切換信号SpnがHighレベル(電極プラス極性EP)のときは予め定めた第1くびれ検出基準値Vtn1をくびれ検出基準値信号Vtnとして出力し、Lowレベル(電極マイナス極性EN)のときは予め定めた第2くびれ検出基準値Vtn2をくびれ検出基準値信号Vtnとして出力する。さらに、極性が切り換わった時点から上記の短絡判別信号Sdによって短絡の発生をカウントし、その値が所定回数に達するまでは第3くびれ検出基準値Vtn3を上記のくびれ検出基準値信号Vtnとして出力する。この第3くびれ検出基準値Vtn3は、第1くびれ検出基準値Vtn1と第2くびれ検出基準値Vtn2との中間値として設定され、例えば、Vtn3=(Vtn1+Vtn2)/2に設定する。くびれ検出回路NDは、溶接ワイヤ1と母材2との間が短絡状態からアーク状態へと移行する前兆である溶滴のくびれの発生を上述した電圧上昇値ΔVがこのくびれ検出基準値信号Vtnの値に達したことによって検出して、くびれ検出信号Ndを出力する。電極プラス極性スイッチング素子駆動回路EPDは、電源外部からの極性切換信号Spnが電極プラス極性に対応する設定信号(Highレベル)であり、かつ、上記のくびれ検出信号Ndが出力されていない期間(Lowレベルの期間)のみ上記の電極プラス極性スイッチング素子PTRを導通状態にする電極プラス極性スイッチング素子駆動信号Epdを出力する。電極マイナス極性スイッチング素子駆動回路ENDは、上記の極性切換信号Spnが電極マイナス極性に対応する設定信号(Lowレベル)であり、かつ、上記のくびれ検出信号Ndが出力されていない期間(Lowレベルの期間)のみ上記の電極マイナス極性スイッチング素子NTRを導通状態にする電極マイナス極性スイッチング素子駆動信号Endを出力する。
第1スイッチング素子駆動回路DV1は、上記の極性切換信号Spnが電極プラス極性に対応する設定信号(Highレベル)であり、かつ、上記のくびれ検出信号Ndが出力されている期間(Highレベルの期間)のみ上記の第1スイッチング素子TR1を導通状態にする第1スイッチング素子駆動信号Dv1を出力する。第2スイッチング素子駆動回路DV2は、上記の極性切換信号Spnが電極マイナス極性に対応する設定信号(Lowレベル)であり、かつ、上記のくびれ検出信号Ndが出力されている期間(Highレベルの期間)のみ上記の第2スイッチング素子TR2を導通状態にする第2スイッチング素子駆動信号Dv2を出力する。
したがって、極性切換信号SpnがHighレベル(電極プラス極性)のときは上記の電極プラス極性スイッチング素子PTRが導通状態になり、溶接電流IwはPTR→溶接ワイヤ1→母材2→リアクトルWLの経路で通電する。この状態でくびれ検出信号Ndが出力されると(Highレベル)、上記のインバータ回路INVの動作を停止すると共に、上記の電極プラス極性スイッチング素子PTRをオフ状態にし、他方、第1スイッチング素子TR1を導通状態にする。これによって、リアクトルWLに蓄積されていたエネルギーはR1→TR1→溶接ワイヤ1→母材2→リアクトルWLの経路で放電される。この放電の速度はリアクトルWLのインダクタンス値L[H]及び第1抵抗器R1の抵抗値R[Ω]によって(L/R)の値に略比例する。通常、第1抵抗器R1を挿入しない場合の電源内部抵抗値は0.01〜0.05Ω程度であり、他方、第1抵抗器R1の抵抗値R=0.5Ω程度を選択すると、放電速度(電流急減速度)は約10倍以上速くなる。極性切換信号SpnがLowレベル(電極マイナス極性)の場合も上記と同様にして電流を急減させている。
電流検出回路IDは、交流の溶接電流Iwを検出して絶対値に変換して電流検出信号Idを出力する。電圧設定回路VRは、所望値の電圧設定信号Vrを出力する。電流設定回路IRは、上記のくびれ検出信号Ndを入力として、短絡期間の溶接電流Iwを設定するための電流設定信号Irを出力する。こに電流設定信号Irは、上記のくびれ検出信号NdがHighレベル(くびれ検出期間Tn)中は数十Aの低電流値となる。電圧誤差増幅回路EVは、上記の電圧設定信号Vrと上記の電圧検出信号Vdとの誤差を増幅して電圧誤差増幅信号Evを出力する。電流誤差増幅回路EIは、上記の電流設定信号Irと上記の電流検出信号Idとの誤差を増幅して電流誤差増幅信号Eiを出力する。外部特性切換回路SCは、上記の短絡判別信号SdがLowレベル(アーク期間)のときはa側に切り換わり上記の電圧誤差増幅信号Evを誤差増幅信号Eaとして出力し、Highレベル(短絡期間)のときはb側に切り換わり上記の電流誤差増幅信号Eiを誤差増幅信号Eaとして出力する。これによって、アーク期間中は定電圧特性となり、短絡期間中は定電流特性となる。パルス幅変調回路PWMは、上記の誤差増幅信号Eaを入力として、上記のインバータ回路INVをパルス幅変調制御するためのパルス幅変調信号Pwmを出力する。
図2は、上述した図1の溶接電源装置における各信号のタイミングチャートである。同図(A)は極性切換信号Spnを示し、同図(B)は溶接電流IWを示し、同図(C)は溶接電圧Vwを示し、同図(D)は短絡判別信号Sdを示し、同図(E)はくびれ検出信号Ndを示し、同図(F)はくびれ検出基準値信号Vtnを示し、同図(G)は電極プラス極性スイッチング素子駆動信号Epdを示し、同図(H)は第1スイッチング素子駆動信号Dv1を示し、同図(I)は電極マイナス極性スイッチング素子駆動信号Endを示し、同図(J)は第2スイッチング素子駆動信号Dv2を示す。同図(F)に示す波形上の1〜3の数字は第1くびれ検出基準値Vtn1、第2くびれ検出基準値Vtn2及び第3くびれ検出基準値Vtn3を略記している。ここで、第3くびれ検出基準値Vtn3の値は、第1くびれ検出基準値Vtn1と第2くびれ検出基準値Vtn2との中間値であり、極性が切り換わってから1回目の短絡期間Tsのくびれ検出基準値信号Vtnの値はこの第3くびれ検出基準値Vtn3になる。2回目以降の短絡期間Tsのくびれ検出基準値信号Vtnの値は、各々の極性に対応した第1くびれ検出基準値Vtn1又は第2くびれ検出基準値Vtn2になる。以下、同図を参照して説明する。
(1)電極プラス極性期間Tep中の動作
時刻t1において、同図(A)に示すように、極性切換信号SpnがHighレベルに変化すると、これに応動して、同図(G)に示すように、電極プラス極性スイッチング素子駆動信号Epvが出力(Highレベル)されるので、電極プラス極性スイッチング素子PTRが導通状態になり、溶接電源の出力は電極プラス極性EPになる。このとき、同図(H)に示すように、第1スイッチング素子駆動信号Dv1はLowレベルであるので、第1スイッチング素子TR1はオフ状態にある。また、同図(D)に示すように、極性切換後1回目の短絡判別信号SdがHighレベルであるので、同図(F)に示すように、くびれ検出基準値信号Vtnの値は上記の第3くびれ検出基準値Vtn3になる。
時刻t2において、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwの電圧上昇値ΔVがくびれ検出基準値信号Vtnの値(現時点では第3くびれ検出基準値Vtn3)に達すると。同図(E)に示すように、くびれ検出信号NdがHighレベルになる。これに応動して、同図(G)に示すように、電極プラス極性スイッチング素子駆動信号EpvはLowレベルになるので、電極プラス極性スイッチング素子PTRはオフ状態になる。同時に、同図(H)に示すように、第1スイッチング素子駆動信号Dv1が出力(Highレベル)されるので、第1スイッチング素子TR1が導通状態になる。このために、図1で上述したように、電極プラス極性電流の通電路に第1抵抗器R1が挿入されるので、電極プラス極性電流は急減して低電流値になる。この状態で、時刻t3においてアークが再発生するので、スパッタ発生量は削減される。
時刻t3においてアークが再発生すると、同図(D)に示すように、短絡判別信号SdはLowレベル(アーク期間Ta)になる。これに応動して、同図(G)に示すように、電極プラス極性スイッチング素子駆動信号Epdが出力(Highレベル)されるので、電極プラス極性スイッチング素子PTRは導通状態になる。同時に、同図(H)に示すように、第1スイッチング素子駆動信号Dv1はLowレベルになるので、第1スイッチング素子TR1はオフ状態になる。同図(B)に示すように、溶接電流Iwはアークが再発生すると急上昇しその後は緩やかに減少する。また、時刻t3において、1回目の短絡が終了するので、同図(F)に示すように、くびれ検出基準値信号Vtnの値は上記の第1くびれ検出基準値Vtn1になり、時刻t5の電極プラス極性期間Tepが終了するまではこの値を維持する。上記の短絡期間Ts(時刻t1〜t3)中は、溶接電源は定電流制御になるために、図1で上述した電流設定信号Irによって設定される電流が通電する。そして、時刻t2〜t3のくびれ検出期間Tn中は、この電流設定信号Irの値は低い値になるので、溶接電流値Iwも低い値になる。他方、アーク期間Ta(時刻t3〜t4)中は、溶接電源は定電圧制御になる。
時刻t4〜t5の期間は、上記の動作を繰り返す。ただし、この期間中のくびれ検出基準値信号Vtnの値は、同図(F)に示すように、第1くびれ検出基準値Vtn1になる。
(2)電極マイナス極性期間Tenの動作
時刻t5において、同図(A)に示すように、極性切換信号SpnはLowレベルに変化すると、同図(G)に示すように、電極プラス極性スイッチング素子駆動信号EpvはLowレベルになるので電極プラス極性スイッチング素子PTRはオフ状態になり、同図(I)に示すように、電極マイナス極性スイッチング素子駆動信号Endが出力(Highレベル)されるので電極マイナス極性スイッチング素子NTRは導通状態になり、溶接電源の出力は電極マイナス極性ENに切り換わる。そして、1回目の短絡期間Ts(時刻t5〜t7)のくびれ検出基準値信号Vtnは、同図(F)に示すように、上記の第3くびれ検出基準値Vtn3になる。時刻t6において、同図(C)に示すように、溶接電圧Vwの上昇値ΔVが上記の第3くびれ検出基準値Vtn3に達すると、同図(F)に示すように、くびれ検出信号NdがHighレベルになる。これに応動して、同図(I)に示すように、電極マイナス極性スイッチング素子駆動信号EndはLowレベルになるので、電極マイナス極性スイッチング素子NTRはオフ状態になる。同時に、同図(J)に示すように、第2スイッチング素子駆動信号Dv2が出力(Highレベル)されるので、第2スイッチング素子TR2は導通状態になる。このために、電極マイナス極性電流の通電路に第2抵抗器R2が挿入されるので、電流は急減し低い値になる。この状態で、時刻t7においてアークが再発生すると、同図(D)に示すように、短絡判別信号SdはLowレベルになる。これに応動して、同図(I)に示すように、電極マイナス極性スイッチング素子駆動信号Endが出力されるので、電極マイナス極性スイッチング素子NTRは導通状態になる。同時に、同図(J)に示すように、第2スイッチング素子駆動信号Dv2はLowレベルになるので、第2スイッチング素子TR2はオフ状態になる。
時刻t7において1回目の短絡期間Tsが終了すると。同図(F)に示すように、くびれ検出基準値信号Vtnの値は上記の第2くびれ検出基準値Vtn2になり、時刻t9の電極マイナス極性期間Ten中維持される。したがって、2回目以降の短絡期間Tsにおけるくびれ検出基準値信号Vtnの値は上記の第2くびれ検出基準値Vtn2になる。時刻t8〜t9の期間の動作は、時刻t5〜t8の期間の動作と同一である。
図3は、各々の極性EP、ENにおけるくびれ検出基準値Vtnの適正値を例示する図である。同図の横軸は送給速度(cm/min)を示し、縦軸はくびれ検出基準値Vtnの適正値(V)を示す。同図は、鉄鋼材料の溶接ワイヤを使用して送給速度を変化させたときの各極性におけるくびれ検出基準値Vtnの適正値である。
同図から明らかなように、同一の溶接条件において、くびれ検出基準値Vtnの適正値は、電極プラス極性EPのときの方が電極マイナス極性ENのときよりも小さな値になる。くびれ検出基準値Vtnの値が小さいほど検出感度は高くなる。したがって、くびれ検出の感度は電極プラス極性EPの方が高く設定される。この理由は、送給速度が同一であれば、電極マイナス極性ENの方が平均電流は大きくなり溶滴サイズも大きくなる。さらには、電極マイナス極性EN時の溶滴移行は電極プラス極性EP時に比べて安定性が劣っている。これらの要因から、電極マイナス極性EN時は検出感度を低く設定する方が良い。
上述したように、電極マイナス極性EP時と電極マイナス極性EN時とではくびれの形成状態がことなるので、くびれ検出基準値Vtnは各々の極性に適した異なる値に設定する必要がある。そのときに、くびれ検出基準値Vtnは、電極プラス極性EP時の方が小さく(感度が低く)設定する。さらに、極性切換時点から短絡の発生が所定回数内であるときは、くびれ検出基準値Vtnを上記の電極プラス極性EP時のくびれ検出基準値と電極マイナス極性EN時のくびれ検出基準値の中間値に設定する。これは、極性切換時点から所定短絡回数まではくびれの形成状態が過渡的な状態にあるためである。すなわち、電極プラス極性EPから電極マイナス極性ENに切り換わった時点から所定短絡回数までは、くびれの形成状態が電極プラス極性EP時の形成状態から電極マイナス極性EN時の形成状態へと過渡的に変化するためである。
上述した実施の形態では、極性切換後1回目の短絡期間のみ第3くびれ検出基準値Vtn3を使用する場合について説明したが、1〜十数回の範囲で所定回数の短絡期間中使用しても良い。また、上述した図3において、第1くびれ検出基準値Vtn1が入力されたときに予め定めた関数によって第2くびれ検出基準値Vtn2を自動設定するようにしても良い。さらに、各極性ごとにくびれ検出期間Tn又はアーク再発生時電流値Iaが目標値になるようにくびれ検出基準値Vtn1、Vtn2を自動調整しても良い。さらに、電極プラス極性EPから電極マイナス極性ENで切り換えるときと、逆に電極マイナス極性ENから電極プラス極性EPへと切り換えるときとで、第3くびれ検出基準値Vtn3の値を異なる値に設定しても良い。さらに、極性切換後の所定短絡回数に代えて所定期間としても良い。本実施の形態では、消耗電極交流アーク溶接として、短絡移行溶接の場合を例示したが、短絡を伴うグロビュール移行溶接、短絡を伴うパルスアーク溶接、短絡を伴うスプレー移行溶接等にも適用することができる。
以下に、くびれ検出期間tnを利用して第1くびれ検出基準値Vtn1及び第2くびれ検出基準値Vtn2を適正値に自動設定する場合について説明する。図4は、図1で上述した溶接電源にこの自動設定機能を追加するための回路のブロック図である。同図は、図1に示す第1くびれ検出基準値Vtn1及び第2くびれ検出基準値Vtn2を自動設定するために追加される回路である。以下、同図を参照して説明する。
同図に示す回路は、図1で上述した極性切換信号Spn及びくびれ検出信号Ndを入力として、第1くびれ検出基準値信号Vtn1及び第2くびれ検出基準値信号Vtn2を出力する。くびれ検出期間検出回路TNDは、上記の極性切換信号Spn及びくびれ検出信号Ndを入力として、電極プラス極性EP中のくびれ検出期間の時間長さの移動平均値を算出し第1くびれ検出期間信号Tn1として出力し、さらに、電極マイナス極性EN中のくびれ検出期間の時間長さの移動平均値を算出し第2くびれ検出期間信号Tn2として出力する。ここで、上記のくびれ検出信号Ndは、くびれ検出期間の間Highレベルになる信号であるので、このHighレベルの期間を計測することによってくびれ検出期間を検出することができる。
第1くびれ検出期間設定回路TNR1は、予め定めた第1くびれ検出期間設定信号Tnr1を出力する。第1期間誤差増幅回路ET1は、上記の第1くびれ検出期間設定信号Tnr1と第1くびれ検出期間信号Tn1との誤差を増幅して、第1期間誤差増幅信号ΔT1を出力する。第1くびれ検出基準値設定回路VTN1は、この第1期間誤差増幅信号ΔT1を積分して、第1くびれ検出基準値信号Vtn1を出力する。
第2くびれ検出期間設定回路TNR2は、予め定めた第2くびれ検出期間設定信号Tnr2を出力する。第2期間誤差増幅回路ET2は、上記の第2くびれ検出期間設定信号Tnr2と第2くびれ検出期間信号Tn2との誤差を増幅して、第2期間誤差増幅信号ΔT2を出力する。第2くびれ検出基準値設定回路VTN2は、この第2期間誤差増幅信号ΔT2を積分して、第2くびれ検出基準値信号Vtn2を出力する。
上記において、くびれ検出基準値が適正値に設定されているときは、くびれ検出期間も所定値に略収束する。このくびれ検出期間の収束値は極性によって異なっている。電極プラス極性EPのときのくびれ検出期間の目標値(第1くびれ検出期間設定信号Tnr1)を設定し、電極プラス極性EP中のくびれ検出期間(第1くびれ検出期間信号Tn1)がこの目標値と等しくなるように第1くびれ検出基準値信号Vtn1を自動設定する。同様に、電極マイナス極性ENのときのくびれ検出期間の目標値(第2くびれ検出期間設定信号Tnr2)を設定し、電極マイナス極性EN中のくびれ検出期間(第2くびれ検出期間信号Tn2うに第2くびれ検出基準値信号Vtn2を自動設定する。
上述した実施の形態によれば、各極性ごとにくびれ検出基準値を適正値に設定することによって、消耗電極交流アーク溶接におけるくびれ検出制御を安定化させることができる。このために、消耗電極交流アーク溶接において、スパッタ発生量を大幅に削減することができ、高品質溶接を行うことができる。
さらに、第2くびれ検出基準値を、第1くびれ検出基準値を入力とする予め定めた関数によって設定することによって、上記の効果に加えて、溶接条件ごとの第2くびれ検出基準値の設定が容易になる。
さらに、極性が切り換わった時点から短絡発生が所定回数に達するまでの期間中は、くびれ検出基準値の絶対値を第1くびれ検出基準値の絶対値と第2くびれ検出基準値の絶対値との中間値に設定することによって、極性切換時の過渡的な状態においてもくびれ検出制御を安定化することができる。このために、スパッタの削減効果がさらに大きくなる。
さらに、第1くびれ検出基準値及び第2くびれ検出基準値をくびれ検出期間を利用して自動設定することによって常に適正値に設定することができるので、設定の手間を大幅に低減し、かつ,安定した低スパッタ制御性能を得ることができる.
本発明の実施の形態に係る消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法を搭載した溶接電源のブロック図である。 図1の各信号のタイミングチャートである。 電極プラス極性EP及び電極マイナス極性ENにおけるくびれ検出基準値の適正値を示す図である。 本発明の実施の形態に係る第1くびれ検出基準値Vtn1及び第2くびれ検出基準値Vtn2を自動設定するために図1に追加される回路のブロック図である。 従来技術における消耗電極アーク溶接の電流・電圧波形及び溶滴移行状態を示す図である。 従来技術におけるくびれ検出制御を搭載した溶接電源のブロック図である。 図6の各信号のタイミングチャートである。 従来技術における消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法を示す電流・電圧波形図である。
符号の説明
1 溶接ワイヤ
1a 溶滴
1b くびれ
2 母材
2a 溶融池
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
D2a〜D2d 2次整流器
DR 駆動回路
Dr 駆動信号
DV1 第1スイッチング素子駆動回路
Dv1 第1スイッチング素子駆動信号
DV2 第2スイッチング素子駆動回路
Dv2 第2スイッチング素子駆動信号
Ea 誤差増幅信号
EI 電流誤差増幅回路
Ei 電流誤差増幅信号
EN 電極マイナス極性
END 電極マイナス極性スイッチング素子駆動回路
End 電極マイナス極性スイッチング素子駆動信号
EP 電極プラス極性
EPD 電極プラス極性スイッチング素子駆動回路
Epd 電極プラス極性スイッチング素子駆動信号
ET1 第1期間誤差増幅回路
ET2 第2期間誤差増幅回路
EV 電圧誤差増幅回路
Ev 電圧誤差増幅信号
Ia アーク再発生時電流
ID 電流検出回路
Id 電流検出信号
INT 高周波変圧器
INV インバータ回路
IR 電流設定回路
Ir 電流設定信号
Iw 溶接電流
ND くびれ検出回路
Nd くびれ検出信号
NTR 電極マイナス極性スイッチング素子
PS 溶接電源
PTR 電極プラス極性スイッチング素子
PWM パルス幅変調回路
Pwm パルス幅変調信号
R 抵抗器
R1 第1抵抗器
R2 第2抵抗器
SC 外部特性切換回路
SD 短絡判別回路
Sd 短絡判別信号
Spn 極性切換信号
Ta アーク期間
Ten 電極マイナス極性期間
Tep 電極プラス極性期間
Tn くびれ検出期間
Tn1 第1くびれ検出期間信号
Tn2 第2くびれ検出期間信号
TND くびれ検出期間検出回路
TNR1 第1くびれ検出期間設定回路
Tnr1 第1くびれ検出期間設定信号
TNR2 第2くびれ検出期間設定回路
Tnr2 第2くびれ検出期間設定信号
TR トランジスタ
TR1 第1スイッチング素子
TR2 第2スイッチング素子
Ts 短絡期間
VD 電圧検出回路
Vd 電圧検出信号
VR 電圧設定回路
Vr 電圧設定信号
Vs 短絡電圧値
Vta 短絡/アーク判別値
VTN くびれ検出基準値設定回路
Vtn くびれ検出基準値(信号)
VTN1 第1くびれ検出基準値設定回路
Vtn1 第1くびれ検出基準値(信号)
VTN2 第2くびれ検出基準値設定回路
Vtn2 第2くびれ検出基準値(信号)
Vtn3 第3くびれ検出基準値
Vw 溶接電圧
WL リアクトル
ΔT1 第1期間誤差増幅信号
ΔT2 第2期間誤差増幅信号
ΔV 電圧上昇値

Claims (5)

  1. 溶接電源の出力を電極プラス極性と電極マイナス極性とに交互に切り換えると共に前記両極性中は消耗電極と母材との間でアーク発生状態と短絡状態とを繰り返す消耗電極交流アーク溶接にあって、前記両極性中に短絡状態からアークが再発生する前兆現象である溶滴のくびれ現象を消耗電極・母材間の電圧値又は抵抗値の変化がくびれ検出基準値に達したことによって検出し、このくびれ現象を検出すると短絡負荷に通電する溶接電流を急減させて低電流値の状態でアークが再発生するように出力制御する消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法において、
    前記くびれ検出基準値を、前記電極プラス極性中は第1くびれ検出基準値に設定し、前記電極マイナス極性中は前記第1くびれ検出基準値の絶対値とは異なった値の第2くびれ検出基準値に設定し、これら第1及び第2くびれ検出基準値は各々対応する極性での溶接状態が良好になるように設定されることを特徴とする消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法。
  2. 前記第1くびれ検出基準値の絶対値を前記第2くびれ検出基準値の絶対値よりも小さな値に設定する、ことを特徴とする請求項1記載の消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法。
  3. 前記第2くびれ検出基準値は、前記第1くびれ検出基準値を入力とする予め定めた関数によって設定される、ことを特徴とする請求項1又は2記載の消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法。
  4. 極性が切り換わった時点から短絡発生が所定回数に達するまでの期間中は、前記くびれ検出基準値の絶対値を前記第1くびれ検出基準値の絶対値と前記第2くびれ検出基準値の絶対値との中間値に設定する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法。
  5. 前記くびれ検出時点からアークが再発生する時点までの期間であるくびれ検出期間を前記電極プラス極性中と前記電極マイナス極性中とに分けて検出し、
    前記第1くびれ検出基準値は前記電極プラス極性中のくびれ検出期間が予め定めた第1くびれ検出期間設定値と等しくなるように自動設定され、
    前記第2くびれ検出基準値は前記電極マイナス極性中のくびれ検出期間が予め定めた第2くびれ検出期間設定値と等しくなるように自動設定される、ことを特徴とする請求項1又は4記載の消耗電極交流アーク溶接のくびれ検出制御方法。
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