JP2008248184A - ポリ乳酸組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、耐熱性の改善されたポリ乳酸組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明は、L−乳酸単位90モル%以上を含有するポリ乳酸(B)およびD−乳酸単位90モル%以上を含有するポリ乳酸(C)単位を含有し、以下の各項を満足する組成物(A)である。
(a)重量平均分子量が7万〜50万。
(b)スズ含有化合物とリン含有化合物とを、スズ原子濃度が1〜500ppm、リン原子濃度が1〜100ppm、スズ/リンの原子数比が0.2〜5の範囲にあるように含有する。
(c)示差走査熱量計による測定で、190℃未満の融解ピークの結晶融解エンタルピーを△Hmh、190℃以上の結晶融解ピークの結晶融解エンタルピーを△Hmscとするとき、下記式(1)で規定されるステレオ化度(S)が80%以上あること。
S=△Hmsc/(△Hmh+△Hmsc)×100 (1)
【選択図】なし

Description

本発明は、工業的に使用が許容される物性を有するポリ乳酸組成物に関する。更に詳しくは、耐熱性、熱金属接触耐久性の改善された成形品に好適な組成物に関する。
近年、地球環境保護の目的から、自然環境下で分解される生分解性ポリマーが注目され、世界中で研究されている。生分解性ポリマーとしては、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、脂肪族ポリエステルおよびポリ乳酸等が知られている。これらは溶融成形が可能であり、汎用性ポリマー、繊維用ポリマーとして期待されている。
ポリ乳酸のような生分解性ポリマーは透明性が高く強靭であるが、水の存在下では容易に加水分解でき、さらに廃棄後には環境を汚染することなく分解するので、環境負荷の少ない環境にやさしいポリマーとしてよく知られている。
中でもポリ乳酸は、原料である乳酸あるいはラクチドを天然物から製造することが可能であり、単なる生分解性ポリマーとしてではなく、地球環境に配慮した汎用性ポリマーとして利用が検討されつつある。
ポリ乳酸はL−およびまたはD−乳酸の直接脱水縮合法、L−およびまたはD−ラクチドの溶融開環重合法、ポリ乳酸オリゴマーの固相重合法などにより製造されるが、ポリ乳酸の品質および生産効率の点からL−およびまたはD−ラクチドの溶融開環重合法、なかでも工業的には、スズなどの特定金属含有触媒を使用する溶融開環重合法が注目されている。
しかしポリ乳酸の融点は、150〜170℃の範囲にあり、ポリエチレンテレフタレートやナイロンのごとく衣料用繊維として用いるにはアイロン掛けが低温にかぎられ、産業用繊維として使用される場合ではゴム資材や樹脂コート布巾など製造温度が150℃程度の高温にさらされる用途には適さないなどの問題もあった。また、ポリ乳酸はクロロホルムなど一般的な有機溶媒に簡単に溶解するため、オイルなど有機溶剤などと接触する用途に用いることは問題である場合が多い。
一方、L−乳酸単位のみからなるポリ−L−乳酸(以下PLLAと略称することがある。)とD−乳酸単位のみからなるポリ−D−乳酸(以下PDLAと略称することがある。)を溶液あるいは溶融状態で混合することにより、ステレオコンプレックスポリ乳酸が形成されることが知られている(特許文献1および非特許文献1)。
このステレオコンプレックスポリ乳酸は、PLLAやPDLAに比べて、高融点、高結晶性を示すなど興味深い現象が発見されているが、ステレオコンプレックスポリ乳酸相はPLLAやPDLAとの平衡混合相であり、成形品中の平衡状態で存在するPLLAおよびまたはPDLA結晶相が成形品の耐熱性、とりわけ熱金属との接触時、融解緩和し成形品の熱変形を引き起こす問題が依然解決されないで残ったままである。
さらにステレオコンプレックスポリ乳酸の成形品の強度などの機械的物性にはPLLAおよびPDLAの重量平均分子量が高いほど実用的強度を得るために好ましいが、他方、重量平均分子量が高いとステレオコンプレックスの生成が困難になると共に、組成物の成形もまた困難となる。これらの課題に対し、両立を図る提案はいまだなされていない。
またポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの汎用樹脂組成物の熱安定性、溶融安定性に関しては組成物に含有される特定元素、低分子量不純物の存在がポリマーの耐熱性に大きな影響を与えることは良く知られているが、ステレオコンプレックスポリ乳酸に関しては、ステレオコンプレックスポリ乳酸のステレオ化度の影響についてはいくつかの示差が存在するが、ステレオコンプレックスポリ乳酸中の特定元素濃度、存在原子数比および低分子量化合物の耐熱性におよぼす影響についてはほとんど検討されておらず、耐熱性についての解決が図られているとはいえない。
特開昭63−241024号公報 Macromolecules,24,5651(1991)
本発明の目的は、耐熱性の改善されたポリ乳酸組成物を提供することにある。本発明の目的は、特に、成形加工時の溶融安定性に優れ、アイロン等の熱金属との接触に実用上、耐え得るポリ乳酸組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、L−乳酸単位を90モル%以上含有するポリ乳酸(B)およびD−乳酸単位を90モル%以上含有するポリ乳酸(C)単位を含有し、以下の各項を満足する組成物(A)。
(a)重量平均分子量が7万〜50万。
(b)スズ含有化合物とリン含有化合物とを、スズ原子濃度が1〜500ppm、リン原子濃度が1〜100ppm、スズ/リンの原子数比が0.2〜5の範囲にあるように含有する。
(c)示差走査熱量計による測定で、190℃未満の融解ピークの結晶融解エンタルピーを△Hmh、190℃以上の結晶融解ピークの結晶融解エンタルピーを△Hmscとするとき、下記式(1)で規定されるステレオ化度(S)が80%以上あること。
S=△Hmsc/(△Hmh+△Hmsc)×100 (1)
本発明は、組成物(A)からなる成形品を包含する。
本発明の組成物(A)は、溶融成形時の熱安定性に優れる。特に、アイロン等の熱金属との接触に実用上、耐えることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<組成物(A)>
本発明の組成物(A)は、ポリ乳酸(C)およびポリ乳酸(D)を含有する。
(ポリ乳酸(C))
本発明に用いるポリ乳酸(B)は、L−乳酸単位を90モル%以上、好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%含有する。他の単位は、D−乳酸単位、乳酸以外の単位はである。他の単位の含有量は0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
ポリ乳酸(B)は、結晶性を有し、その融点が好ましくは150〜190℃、より好ましくは160〜190℃である。これらの範囲に入る融点を有していれば、ポリ乳酸(B)より組成物(A)を形成した場合に,より高融点のステレオコンプレックス結晶を形成し且つ結晶化度を上げることが出来る。
ポリ乳酸(B)は、その重量平均分子量が、好ましくは7万〜50万、より好ましくは8万〜30万、さらに好ましくは9万〜25万、とりわけ好ましくは10万〜20万である。成形品の機械的物性の点よりは重量平均分子量は高いほうが好ましいが、成形性の点からは分子量の低いほうが好ましい。機械的物性と成形性バランスの観点より適宜分子量範囲を選択することが好ましい。かかる重量平均分子量のポリ乳酸(B)を使用することにより組成物(A)およびその成形品を工業的に効率よく製造することが可能となり、組成物(A)およびその成形品の色相、湿熱性などの向上に関し本発明の目的に合致させることが出来る。
ポリ乳酸(B)には、その結晶性を損なわない範囲で所望により、L―乳酸以外の共重合成分を含有させることができる。共重合成分としては、特に限定するものではないが、例えば、D−乳酸、グリコール酸、カプロラクトン、ブチロラクトン、プロピオラクトンなどのヒドロキシカルボン酸類、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−プロパンジオール、1,5−プロパンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、炭素数が2〜30の脂肪族ジオール類、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、炭素数2〜30の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキノンなど芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸などから選ばれる1種以上のモノマーを選ぶことが出来る。
(ポリ乳酸(C))
本発明に用いるポリ乳酸(C)は、L−乳酸単位を90モル%以上、好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%含有する。他の単位は、D−乳酸単位、乳酸以外の単位はである。他の単位の含有量は0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
ポリ乳酸(C)は、結晶性を有し、その融点が好ましくは150〜190℃、より好ましくは160〜190℃である。これらの範囲に入る融点を有していれば、ポリ乳酸(C)より組成物(A)を形成した場合に,より高融点のステレオコンプレックス結晶を形成し且つ結晶化度を上げることが出来る。
ポリ乳酸(C)は、その重量平均分子量が、好ましくは7万〜50万、より好ましくは8万〜30万、さらに好ましくは9万〜25万、とりわけ好ましくは10万〜20万である。成形品の機械的物性の点よりは重量平均分子量は高いほうが好ましいが、成形性の点からは分子量の低いほうが好ましい。機械的物性と成形性バランスの観点より適宜分子量範囲を選択することが好ましい。かかる重量平均分子量のポリ乳酸(C)を使用することにより組成物(A)およびその成形品を工業的に効率よく製造することが可能となり、組成物(A)およびその成形品の色相、湿熱性などの向上に関し本発明の目的に合致させることが出来る。
ポリ乳酸(C)には、その結晶性を損なわない範囲で所望により、L―乳酸以外の共重合成分を含有させることができる。共重合成分としては、特に限定するものではないが、例えば、D−乳酸、グリコール酸、カプロラクトン、ブチロラクトン、プロピオラクトンなどのヒドロキシカルボン酸類、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−プロパンジオール、1,5−プロパンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、炭素数が2〜30の脂肪族ジオール類、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、炭素数2〜30の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキノンなど芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸などから選ばれる1種以上のモノマーを選ぶことが出来る。
ポリ乳酸(B)、(C)成分を製造する方法は特別に限定されるものではなく、従来公知の方法が好適に使用できる。例えばL−またはD−乳酸を直接脱水縮合する方法、L−またはD−乳酸オリゴマーを固相重合する方法、L−またはD−乳酸を一度脱水環化してラクチドとした後、溶融開環重合する方法などが例示される。なかでも直接脱水縮合方法あるいはラクチド類の溶融開環重合法により得られるポリ乳酸が品質、生産効率の点より好ましく、中でもラクチド類の触媒を使用する溶融開環重合法が本発明の目的に最も合致し、好ましく選択される。
これらの製造法において使用する触媒は、ポリ乳酸(B)、(C)成分が前述した所定の特性を有するように重合させることが出来るものであれば、いずれも用いることができる。即ち、ラクチドの溶融開環重合触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属類、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモンなどの脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート等がよく知られている。これらの内、スズ、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、チタン、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウムおよび稀土類元素より選択される少なくとも一種を含有する触媒であることが好ましい。
かかる金属含有触媒としては、従来公知であり以下の化合物が例示される。すなわち、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズ、スズメトキシド、スズエトキシド、スズブトキシド、酸化アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムーイミン錯体四塩化チタン、チタン酸エチル、チタン酸ブチル、チタン酸グリコール、チタンテトラブトキシド、塩化亜鉛、酸化亜鉛、ジエチル亜鉛、三酸化アンチモン、三臭化アンチモン、酢酸アンチモン、酸化カルシウム、酸化ゲルマニウム、酸化マンガン、炭酸マンガン、酢酸マンガン、酸化マグネシウム、イットリウムアルコキシドなどが例示される。
触媒活性、副反応の少なさおよび組成物(A)および該組成物成形品の耐湿熱耐久性を考慮すると、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズなどのスズ含有化合物およびアルミニウムーイミン錯体四塩化チタン、チタン酸エチル、チタン酸ブチル、チタン酸グリコール、チタンテトラブトキシドなどのチタン含有化合物が好ましい物として挙げられる。これらを特定金属触媒と以下総称することがある。さらに好ましくは以下のものが例示される。
即ち、ジエトキシスズ、ジノニルオキシスズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、塩化スズ、チタン酸エチル、チタン酸ブチル、チタン酸グリコール、などがさらに好ましい物として例示される。
触媒の使用量はラクチド1Kgあたり0.42×10−4〜840×10−4モルでありさらに反応性、得られるポリラクチド類の色調、安定性、組成物(A)および該組成物成形品の耐湿熱性を考慮すると1.68×10−4〜42.1×10−4モル、特に好ましくは2.53×10−4〜16.8×10−4モル使用される。
ポリ乳酸(B)、(C)は、その重合触媒を従来公知の方法、例えば、溶媒で洗浄除去するか、触媒活性を失活、不活性化しておくのが組成物(A)およびその成形品の溶融安定性、湿熱安定性のため好ましい。
金属含有触媒の存在下、溶融開環重合されたポリ乳酸の触媒失活に使用される失活剤としては以下の化合物が例示される。すなわちイミン系化合物、リンオキソ酸、リンオキソ酸エステルおよび下記式(3)で表される有機リンオキソ酸化合物群から選択される、少なくとも1種を含有し、特定金属含有触媒の金属元素1当量あたり0.3〜20当量添加された樹脂である。
−P(=O)(OH)(OX2−n (3)
(式中mは、0または1、nは1または2、XおよびXは各々独立に炭素数1〜20の置換基を有していても良い炭化水素基を表す。)
イミン系化合物は、その構造中にイミノ基を有し、且つ金属系重合触媒に配位し得るフェノー四座のキレート配位子である。本発明のイミン系化合物は従来の触媒失活剤の様なブレンステッド酸や塩基ではないため、ポリ乳酸樹脂組成物の耐加水分解性を悪化させることなく熱安定性を向上させることが可能である。かかるイミン系化合物としてはN,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(サリチリデン)プロパンジアミン、N,N−ビス(サリチリデン)−cis−シクロヘキサンジアミン、N,N’−ビス(サリチリデン)−trans−シクロヘキサンジアミン、N,N’−ビス(サリチリデン)−o−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(サリチリデン)−m−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(サリチリデン)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(2−シアノベンジリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−シアノベンジリデン)プロパンジアミン、N,N’−ビス(2−シアノベンジリデン)−cis−シクロヘキサンジアミン、N,N’−ビス(2−シアノベンジリデン)−trans−シクロヘキサンジアミ、N,N’−ビス(2−シアノベンジリデン)−o−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(2−シアノベンジリデン)−m−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(2−シアノベンジリデン)−p−フェニレンジアミン、N−メチルイミノメチルフェノール、N−エチルイミノメチルフェノール、N−イソプロピルイミノメチルフェノール、N−t−ブチルイミノメチルフェノール等が挙げられるが、特に好ましくはN,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(サリチリデン)プロパンジアミンである。
リンオキソ酸としては、例えばジヒドリドオキソリン(I)酸、ジヒドリドテトラオキソ二リン(II,II)酸、ヒドリドトリオキソリン(III)酸、ジヒドリドペンタオキソ二リン(III)酸、ヒドリドペンタオキソ二(II,IV)酸、ドデカオキソ六リン(III)III、ヒドリドオクタオキソ三リン(III,IV,IV)酸、オクタオキソ三リン(IV,III,IV)酸、ヒドリドヘキサオキソ二リン(III,V)酸、ヘキサオキソ二リン(IV)酸、デカオキソ四リン(IV)酸、ヘンデカオキソ四リン(IV)酸、エネアオキソ三リン(V,IV,IV)酸等の酸価数5以下の低酸化数リン酸、式 xHO.yPで表され、x/y=3のオルトリン酸、2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸およびこれらの混合物、x/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸、1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部をのこした網目構造を有するウルトラリン酸、およびこれらの酸の一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステル、完全エスエテルが例示される。触媒失活能から酸あるいは酸性エステル類が好適に使用される。
リンオキソ酸のエスエテルを形成するアルコール類に関しては特に制限はないが、
一価アルコールとしては炭素数1〜22個の置換基を有していてもよい下記式で表されるアルコール類が好ましく使用される。
Y−OH
(式中、Yは炭素数1〜22の置換基を有していても良い炭化水素基を表す。)
アルコール類として、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デカノール、ドデカノール、ベンジルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ヘキシルアルコール、フェノール、ヘキサデシルアルコールなどが挙げられる。
多価アルコールとしては炭素数2〜22個の置換基を有していても良い下記式で表される多価のアルコール類、糖アルコール類などが挙げられる。
X(−OH)a
(式中、Xは炭素数2〜22個の置換基を有していても良い炭化水素基、aは2〜6の整数を表す。)
多価のアルコール類として、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ポリエチレングコール、ポリプロピレングリコール、myo−イノシトール、D−,L−イノシトール、scyllo−イノシトールなどノイノシトール類、シクリトールなどが挙げられる。
失活剤として好ましくは、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスフィン酸、リン酸ジブチル、リン酸ジノニル、N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、N、N’−ビス(サリチリデン)プロパンジアミンが例示され、なかでもリン酸、亜リン酸、ピロリン酸が特に好ましい。
これらの失活剤は単独で使用しても良いし場合によっては、複数併用することもできる。これらの失活剤は、特定金属含有触媒の金属元素1当量あたり0.3〜20当量、さらに好ましくは、0.5〜15当量、より好ましくは0.5〜10等量、特に好ましくは0.6〜7当量使用される。失活剤の使用量が少なすぎると触媒金属の活性を十分低下させることができないしまた過剰に使用すると失活剤が樹脂の分解を引き起こす可能性があり好ましくない。
(組成物(A))
本発明の組成物(A)は、重量平均分子量が7万〜50万の範囲にある。かかる分子量範囲の組成物(A)は成形性に優れ、かつ機械的物性の良好な成形品を与えることができる。成形品の耐熱性、機械的物性を高めるためには分子量は高いほうが好ましいが、成形性の観点からは分子量は低いほうが好ましい。機械的物性、耐熱性と成形性を両立させる観点から、重量平均分子量は好ましくは8万〜30万、より好ましくは9万〜25万、特に好ましくは10万〜20万である。
本発明の組成物(A)のスズ化合物含有量は、スズ原子として1〜500ppm、好ましくは12〜400ppm、さらに好ましくは15〜200ppm、とりわけ好ましくは20〜100ppmである。組成物(A)のリン化合物の含有量は、リン原子として1〜100ppm、好ましくは2〜80ppm、さらに好ましくは5〜70ppm、とりわけ好ましくは7〜50ppmである。
かかるスズ原子濃度、リン原子濃度、原子数比を満たすと、耐熱性、即ち溶融成形時の熱安定性に優れた組成物(A)となる。また成形品の耐熱性、即ち熱金属耐久性が良好となる。
スズおよびリン原子濃度が上記範囲外であるとき、組成物(A)およびその成形品の耐熱性、色調などが低下する。スズおよびリン原子濃度が上記範囲未満であると、重量平均分子量不足のために組成物(A)の成形性が不良となり、耐熱安定性の向上効果が見られない。他方、スズおよびリン原子濃度が上記範囲を超得た場合、組成物(A)および成形品製造時、樹脂の熱分解、とりわけ溶融成形時の熱分解が顕著となり、色調悪化、発泡が顕著となり商品として利用するのに問題が発生する場合が多発するようになる。
組成物(A)中のスズ原子数/リン原子数の比は、0.2〜5、好ましくは0.25〜4、さらに好ましくは0.3〜3である。原子数比が0.2未満であると、スズおよびリン化合物の共存による耐熱性良化がほとんど認められないか実用的に有用な範囲外となってしまう。さらに加えて組成物(A)およびその製造時に樹脂の熱分解が顕著となり工業的にこれらの製品を製造することが困難になることがある。これらのスズおよびリン化合物は、ポリ乳酸(B)、(C)または組成物(A)に添加してもよいが、ポリ乳酸(B)、(C)製造時に、触媒あるいは触媒失活剤として上記範囲を満足する様に適用するのが好適である。
本発明の組成物(A)中、分子量が150以下の化合物の含有量は、0.001〜0.2重量%であることが好ましい。
ここで、分子量が150以下の化合物としては、例えばD−ラクチド、L−ラクチド、L−乳酸、D−乳酸、蟻酸、ピルビン酸、ピルビンアルデヒド、酢酸、水を例示することができる。これらの化合物の全含有量が、組成物(A)の重量を基準として0.2重量%を超えると、得られる組成物(A)および該組成物の耐熱性が劣るものとなる。
また0.001重量%未満にしてもそれにより得られる効果は、それを実現するための費用に比較して大きくなく工業的意味は大きいとは言いがたい。これらの低分子化合物の含有量は0.001〜0.1重量%、さらに好ましくは0.002〜0.05重量%、特に好ましくは0.002〜0.01重量%の範囲である。
これらの低分子化合物は、ポリ乳酸(B)、ポリ乳酸(C)および組成物(A)の製造時、外部より混入する場合もあるし樹脂分解により内部より発生する場合もある。従って、ポリ乳酸(B)、ポリ乳酸(C)および組成物(A)の中のこれらの低分子化合物は適宜、減少手段をとり減少させておくのが好ましい。
例えばD−ラクチド、L−ラクチド、L−乳酸、D−乳酸は、ポリ乳酸(B)、ポリ乳酸(C)製造時、減少処理、例えば水或いは不活性ガスなどの助剤を使用する或いは使用しない脱揮処理、真空脱揮処理などにより減少させることが可能であり、また減少させておくことが好ましい。
また前述した、スズ原子数とリン原子数の存在比を前述範囲内に収めることは、組成物(A)およびその成形品の製造時、これらの低分子化合物が発生するのを抑制する効果も認められ,この点よりもスズ原子数とリン原子数の存在比を前述範囲内に収めることは好ましい。また水は、成形加工前、通常の熱乾燥処理によって容易に減少させることができるし、その様にして減少させるのが簡便で好ましい。
本発明の組成物(A)は、示差走査熱量計(DSC)測定において190℃未満の結晶融解ピークの結晶融解エンタルピーを△Hmh、195℃以上の結晶融解ピークの結晶融解エンタルピーを△Hmscとする時、下記式(1)で規定されるステレオ化度(S)が80%以上である。
S=△Hmsc/(△Hmh+△Hmsc)×100 (1)
組成物(A)のステレオ化度(S)は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは、実質的に190℃以下の結晶融解ピークが観測されないステレオ化度100%となる時である。かかる高いステレオ化度(S)を有する組成物(A)より、高い耐熱性を発揮する組成物(A)成形品を得ることができる。
かかるステレオ化度、結晶性を実現するため、組成物(A)および該組成物成形品には三斜晶系の無機核剤(D)およびまたはリン酸エステル金属塩(E)より選択される少なくとも1種の核剤を適用することが好ましい。
かかる無機粒子(D)としては例えば、ワラストナイト(wollasutonite)、ゾノトライト(xonotollite)、硼酸石、炭酸水素マグネシウムカリウム、メタ珪酸カルシウム(α)、メタ珪酸カルシウム(β)メタ珪酸マンガン、硫酸カルシウム、硫酸セリウム(III)、リン酸亜鉛、リン酸二水素亜鉛、リン酸二水素カルシウム、アルミノ珪酸アルミニウム、アルミノ珪酸カリウムなどが例示される。これらのうち、ステレオ化度の向上、透明性向上の観点よりワラストナイト、硫酸カルシウム、メタ珪酸カルシウムが、なかでもワラストナイト、メタ珪酸カルシウム(α)などが好ましいものとして挙げられる。
本発明で使用するリン酸エステル金属塩(E)として好ましいものとして、式(4)、(5)で表される芳香族有機リン酸エステル金属塩が挙げられる。芳香族有機リン酸エステル金属塩は1種類のものあるいは複数種類のもの或いは各種剤を含有するものを併用することもできる。
Figure 2008248184
(式中、Rは、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。)
Figure 2008248184
(式中R、RおよびRは、各々独立に水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基を表しMはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。)
式(4)においてRは、水素原子、または炭素数1〜4個のアルキル基を表す。Rで表される炭素原子数1〜4個のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル,iso−ブチル、などが例示される。R、Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜12個のアルキル基を表す。炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル,iso−ブチル、tet−ブチル、アミル、tet−アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、iso−オクチル、tet−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、iso−ノニル、デシル、iso−デシル、tet−デシル、ウンデシル、ドデシル、tet−ドデシル基などが挙げられる。Mは、Na、K、Liなどのアルカリ金属原子、Mg,Ca等のアルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表す。pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子の時は0を、Mがアルミニウム原子のときは1または2を表す。式(4)で表されるリン酸エステル金属塩のうち好ましいものとしては、例えばRが水素原子、R、Rがともにtet−ブチル基のものが挙げられる。
式(5)においてR、R、R6は各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基を表す。R、R、Rで表される炭素数1〜12のアルキル基としてはメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル,iso−ブチル、tet−ブチル、アミル、tet−アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、iso−オクチル、tet−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、iso−ノニル、デシル、iso−デシル、tet−デシル、ウンデシル、ドデシル、tet−ドデシルなどが挙げられる。MはNa、K、Liなどのアルカリ金属原子、Mg,Ca等のアルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表す。pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子の時は0を、Mがアルミニウム原子のときは1または2を表す。式(5)で表されるリン酸エステル金属塩のうち好ましいものとしては、例えば、例えばR、Rがメチル基、Rがtet−ブチル基のものが挙げられる。
リン酸エステル金属塩のうち市販されているもの、例えば旭電気化学工業(株)製の商品名、アデカスタブNA−10,NA−11,Na−21,NA−30、NA−35なども本発明のリン酸エステル金属塩として所望の目的に有効に使用できる。これらのうち、リン酸エステルアルミニウム塩と有機助剤を含有するNa−21が成形品の透明性の点から好ましい物として例示される。中でも粉砕、分級して得た平均粒径5μm以下の微細粒子状のNa−21が好適である。
かかる結晶核剤(D)、(E)の使用量は組成物(A)100重量部あたり、0.01〜5重量部の範囲である。0.01重量部より少量であると所望の効果がほとんど認められないか、実用に供するにはあまりに小さいものでしかない。また5重量部より多量に使用すると成形品形成時、熱分解を起こしたり、劣化着色が起きたりする場合があり好ましくない。従って好ましくは0.05〜4重量部の範囲が特に好ましくは0.1〜3重量部の範囲が選択される。かかる量比の結晶核剤を使用することにより、本発明の組成物(A)のステレオ化度を80%以上、さらには実質的に100%にすることが出来る。
また本発明に使用される結晶核剤は、粒径ができるだけ小さいもの、特に10μm超の大型粒子の含有割合の少ないものが成形品の透明性の観点から好ましいが、実用上は0.01〜10μmのものが好適に使用される。さらに好ましくは0.05〜7μmのものが選択される。10μm超の大型粒子の含有割合が20%を超えるものは、ポリ乳酸組成物成形品のヘーズが高くても許容される場合は好ましく使用することが可能である。
かかる特定粒径の結晶核剤は、ボールミル、サンドミル、ハンマーククラッシャー、アトマイザーにより、市販の結晶核剤を粉砕し、各種分級機により分級することにより容易に得ることができる。結晶核剤の粒径を0.01μmより小さくすることは工業的に困難であり、また透明性の観点よりは、実用上それほど小さくする必要もない。しかし粒径が10μmより大きい或いは大きいものの含有割合が高いと、組成物成形品のヘーズが高まる問題が大きくなるので、用途を選択して使用することが好ましくない。
本発明の組成物(A)およびその成形品は、カルボキシ末端基濃度が0.1〜30当量/トンであることが好ましい。さらに好ましくは0.1〜20当量/トン、より好ましくは0.2〜10当量/トン、特に好ましくは0.3〜5当量/トンの範囲である。
組成物(A)およびその成形品のカルボキシ基濃度を0.1〜30当量/トンとするには、ポリ乳酸(B)、(C)製造時、固相重合によりカルボキシ基濃度の減少したポリ乳酸を製造することも好ましい実施態様であるが、本発明においては、カルボキシ基封止剤を適用するのが好ましい。両者を併用することも好ましい態様のひとつである。
カルボキシ基封止剤はポリ乳酸のカルボキシ末端基を封止するのみでなく、ポリ乳酸や各種添加剤の分解反応で生成するカルボキシ基やラクチド、乳酸、ギ酸、ピルビン酸などの低分子化合物のカルボキシ基を封止し樹脂を安定化することができる利点ももたらす。さらに、上記酸性低分子化合物がポリ乳酸を分解して生成する水酸基末端、あるいは樹脂組成物中に侵入する水分を封止できるため、組成物(A)およびその成形品の湿熱条件下での耐久性(以下湿熱耐久性と略称することがある。)を向上させる効果もまた有する。
かかるカルボキシ基封止剤としては、従来公知のカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、イソシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物を使用することが好ましく、なかでもカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物が好ましい。
本発明で使用するカルボジイミド化合物は、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有し、好ましくはイソシアネート基を0.1〜5重量%含有し、カルボジイミド当量が200〜500の化合物が好ましい。カルボジイミド化合物中にイソシアネート基が少量存在すると、イソシアネート化合物併用の効果が現れるのみならず、カルボジイミド基とイソシアネート基がより緊密に存在することにより、湿熱耐久性の向上に一層効果が発揮される。
本発明で使用するカルボジイミド化合物としては、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カーボジイミド、2,6,2’,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドが好ましい。またこれらのうち工業的に入手可能なジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドの使用も好適である。
さらに上記ポリカルボジイミド化合物として市販のポリカルボジイミド化合物は、別途合成する必要もなく好適に使用することができる。かかる市販のポリカルボジイミド化合物としては例えば日清紡(株)よりカーボジライトの商品名で販売されているカーボジライトLA−1、あるいはHMV−8CAなどを例示することができる。
本発明で用いることのできるエポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリジジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、グリシジルアミド化合物、脂環式エポキシ化合物を好ましく使用することができる。かかる剤を配合することで、機械的特性、成形性、耐熱性、耐久性に優れたポリ乳酸樹脂組成物および成形品を得ることができる。
上記カルボキシ基封止剤は1種または2種以上の化合物を適宜選択して使用することができる。
本発明の組成物(A)は、用途に応じてカルボキシル基末端や、酸性低分子化合物の封止を行えばよい。具体的にはカルボキシ基末端や、酸性低分子化合物の封止により組成物(A)中のカルボキシ基濃度を0.1〜30当量/トンとすることが好ましい。カルボキシ基濃度をこの範囲にすることにより、組成物(A)およびその成形品の耐湿熱性を本発明の目的に合致させることができる。また、組成物(A)の溶融成形加工時の安定性、耐加水分解性の観点から、カルボキシ基末端は、好ましくは0.1〜20当量/トン、より好ましくは0.2〜10当量/トン、さらに好ましくは0.3〜5当量/トンである。
組成物(A)中のカルボキシ基濃度は、組成物(A)を適当な溶媒に溶かしカルボキシ基炭素とメチン炭素またはメチル基炭素の13CNMRを測定することにより測定することができる。
カルボキシ基封止剤の使用量は組成物(A)100重量部あたり0.01〜10重量部が好ましく、0.03〜5重量部がさらに好ましい。この範囲を超えて多量に適用するとカルボキシ濃度を低下させる効果は大きいが組成物(A)およびその成形品の色相を悪化させる懸念が大きくなり好ましくない。また0.01%未満の使用量であるとその効果はほとんど認められず工業的な意義は小さい。
本発明においてはさらに封止反応触媒を使用してもよい。該反応触媒とはカルボキシ基封止剤とポリマー末端や、酸性低分子化合物のカルボキシ基との反応を促進する効果のある化合物であり、少量の添加で反応を促進する能力のある化合物が好ましい。
このような化合物としては例えばアルカリ(土類)金属化合物、第3級アミン、イミダゾール化合物、第4級アンモニウム塩、ホスフィン化合物、ホスホニウム化合物、リン酸エステル、有機酸、ルイス酸、などが挙げられる。これらは1種または2種以上併用することもできる。なかでもアルカリ金属化合物、アルカル土類金属化合物、リン酸エステルを使用するのが好ましい。
例えばステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸メグネシウムが好ましいものとして例示される。反応触媒の添加量は特に限定されてものではないが、組成物(A)100重量部あたり、好ましくは0.001〜1重量部、より好ましくは0.005〜0.5重量部、さらに好ましくは0.01〜0.1重量部である。
(組成物(A)の製造)
本発明の組成物(A)は、ポリ乳酸(B)とポリ乳酸(C)とを重量比で10/90〜90/10の範囲で220〜300℃で溶融混練することにより得ることができる。
ポリ乳酸(B)とポリ乳酸(C)との重量混合比は、組成物(A)のステレオ化度を高くするためには、好ましくは30/70〜70/30、さらに好ましくは40/60〜60/40である。
溶融混練温度は、ポリ乳酸の溶融時の安定性およびステレオ化度の向上の観点より、好ましくは、230〜300℃、より好ましくは240〜280℃、さらに好ましくは245〜275℃の範囲である。
かかる混合比、温度で溶融混練することにより組成物(A)のステレオ化度を80%以上にすることができる。組成物(A)のステレオ化度は、好ましくは90%〜100%、より好ましくは95%〜100%、さらに好ましくは97%〜100%、特に好ましくは100%である。
溶融混練法は、従来公知のバッチ式或いは連続式の溶融混合装置を用いて行なうことができる。例えば、溶融攪拌槽、一軸、二軸の押出し機、ニーダー、無軸籠型攪拌槽(フィニッシャー)、住友重機製バイボラック、三菱重工業製N−SCR、日立製作所製めがね翼、格子翼あるいはケニックス式攪拌機、あるいはズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合装置などを使用できるが、生産性、ポリ乳酸の品質とりわけ色調の点でセルフクリーニング式の重合装置である無軸籠型攪拌槽、N−SCR、2軸押し出しルーダーなどが好適に使用される。
組成物(A)はそのまま溶融成形することも可能であるが、一度固化しペレット化した後、成形加工することも好ましい実施例態様のひとつである。ペレットの形状は、ペレットを各種成形方法で成形するに好適な形状を有するもの、具体的にはペレット長は1〜7mm程度、長径3〜5mm程度、短径1〜4mm程度のものが好ましい。またかかるペレット形状は、ばらつきの少ないものが好ましい。
本発明の組成物(A)には所望により、本発明の趣旨に反しない範囲においてポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、軟質熱可塑性樹脂、耐衝撃改良剤、結晶化促進剤、結晶化核剤、静電密着法による製膜性改良剤、可塑剤、潤滑剤、有機、無機の滑剤、有機、無機充填剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤,熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、抗菌抗カビ剤、有機、無機系の染料、顔料を含む着色剤などの、1種あるいは2種以上を含有させることができる。
本発明の組成物(A)、上記添加剤を適用するには、ポリ乳酸重合開始より成形前の間の段階で剤を配合することができる。重合開始から終了までの間に剤を添加する場合、通常の剤投入法を使用することで剤含有ポリ乳酸を製造することができる。また剤をポリ乳酸に添加するには、従来公知の各種方法を好適に使用することができる。例えば、ポリ乳酸とリン酸エステル金属塩をタンブラー、V型ブレンンダー、スーパーミキサー、ナウタミキサーバンバリーミキサー、混練ロール、1軸または2軸の押出機等で混合する方法が適宜用いられる。
<成形品>
本発明は、組成物(A)からなる成形品を包含する。
本発明の成形品は、以下の各項を満足することが好ましい。
(a)重量平均分子量が7万〜50万であること。
(b)スズ含有化合物とリン含有化合物とを、スズ原子濃度が1〜500ppm、リン原子濃度が1〜100ppm、スズ/リンの原子数比が0.2〜5の範囲にあるように含有する。
(c)示差走査熱量計(DSC)による測定で、実質的にステレオコンプレックス結晶の単一融解ピークを示し、
(d)X線広角散乱測定による下記式(2)で表されるステレオ化率(Sc率)が30%以上あること。
Sc率=ΣISCi/(ΣISCi+IHM)×100 (2)
(ここで ΣISCi=ISC1+ISC2+ISC3
(e)分子量が150以下の化合物の含有量が0.001〜0.2重量%であること。
本発明の成形品は、広角X線回折図形において、赤道方向の回折強度プロファイルを求め、ここで2θ=12.0°、20.7°、24.0°付近に現れるステレオコンプレックス結晶に由来する各回折ピークの積分強度の総和ΣISCiと2θ=16.5°付近に現れるホモ結晶に由来する回折ピークの積分強度IHMから、下記式(2)で表されるステレオ化率(Sc率)が30%以上であることが好ましい。即ち、組成物(A)はステレオコンプレックス相とホモ相の平衡混合物とよりなることは前述した通りであるが、ホモ相結晶の存在は成形品の耐熱性を低下させる原因のひとつであり、ステレオ化率はさらに好ましくは35%〜100%、特に好ましくは40%〜100%である。
Sc率=ΣISCi/(ΣISCi+IHM)×100 (2)
(ここで ΣISCi=ISC1+ISC2+ISC3
成形品として、パソコン、ワープロ、ファクス、コピー機、プリンター等のOA機器のハウジングおよびシャーシ、CD−ROMのトレー、ターンテーブル、ピックアップシャーシ、各種ギア等のOA内部部品、テレビ、ビデオ、電気洗濯機、電気乾燥機、電気掃除機等の家庭電器製品のハウジングや部品、電気鋸、電動ドリル等の電動工具、望遠鏡鏡筒、顕微鏡鏡筒、カメラボディ、カメラハウジング、カメラ鏡筒等の光学機器部品、ドアーハンドル、ピラー、バンパー、計器パネル等の自動車用部品などが挙げられる。特に機械的強度、耐薬品性、湿熱疲労性などが要求される自動車部品(アウタードアハンドル、インナードアハンドルなど)や機械部品(電動工具カバーなど)などの射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品などが挙げられる。
またボトルなどブロー成形品、包装用フルム、コンデンサー用フィルム(例えば肉厚3μm以下のフィルム)、プリンターリボン用フィルム(例えば肉厚5μm程度のフィルム)、感熱孔版印刷用フィルム、磁気記録フィルム(例えばQICテープ用:コンピューター記録用フィルム1/4インチテープ)、モングレアフィルム、偏光板の保護フィルム、反射防止フィルムや防眩フィルム等などのフィルム、シート、不織布、繊維、捲縮糸、これらの繊維よりの布、他の材料との複合体、農業用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品またはその他の成形品などが挙げられる。成形は常法により行うことができる。繊維であることが特に好ましい。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものではない。
なお、実施例中の各値は以下の方法により求めた。
(1)重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn):
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた。
GPC測定器は、以下のものを用い、クロロホルム溶離液を使用、カラム温度40℃、流速1.0ml/minで流し、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノール含有クロロホルム)の資料10μlを注入した。
検出器:示差屈折計 (株)島津製作所製 RID−6A
ポンプ:(株)島津製作所製 LC−9A
カラム:(株)東ソーTSKgelG3000HXL,TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcokumnHXL−Lを直列に接続した。
(2)結晶融点、結晶融解熱(△Hmh、△Hmsc)およびステレオ化度(S):
パーキンエルマー(株)製DCS7示差走査熱量計(DSC)により測定した。即ち、試料10mgを窒素雰囲気下、1st RUNにて昇温速度20℃/分で、30℃から250℃に昇温し、結晶融解温度(Tmh),(Tmsc)、結晶融融解熱を(△Hmh)(△Hmsc)を測定した。
ステレオ化度(S)は、ポリ乳酸の190℃未満の低温相結晶融解熱(△Hmh)、190℃以上の高温相結晶融解熱(△Hmsc)より下記式(1)により求めた。
S=△Hmsc/(△Hmh+△Hmsc)×100 (1)
(3)ステレオ化率(Sc化率)
理化学電気社製ROTA FLEX RU200B型X線回折装置用いて透過法により以下条件でX線回折図形をイメージングプレートに記録した。得られたX線回折図形において赤道方向の回折強度プロファイルを求め、ここで2θ=12.0°、20.7°、24.0°付近に現れるステレオコンプレックス結晶に由来する各回折ピークの積分強度の総和ΣISCiと2θ=16.5°付近に現れるホモ結晶に由来する回折ピークの積分強度IHMから下記式(2)に従いステレオ化率(Sc化率)を求めた。尚、ΣISCiならびにIHMは、赤道方向の回折強度プロファイルにおいてバックグランドや非晶による散漫散乱を差し引くことによって見積もった。
X線源 Cu−Kα線(コンフォーカル ミラー)
出力 45kV×70mA
スリット 1mmΦ−0.8mmΦ
カメラ長 120mm
積算時間 10分
サンプル 長さ3cm、35mg
Sc化率=ΣISCi/(ΣISCi+IHM)×100 (2)
(ここで、ΣISCi=ISC1+ISC2+ISC3、ISCi(i=1〜3)は、それぞれ2θ=12.0°、20.7°、24.0°付近の各回折ピークの積分強度である。)
(4)溶融安定性(%):
試料を窒素雰囲気下、260℃、10分間保持後の還元粘度の保持率を測定した。ポリ乳酸樹脂(A)を溶融成形するとき、溶融安定性が80%以上であれば通常の溶融押しが問題なくでき、溶融安定性合格と判断した。
(5)還元粘度(ηsp/c)の測定:
試料1.2mgを〔テトラクロロ得たン/フェノール=(6/4)wt混合溶媒〕100mlに溶解、35℃でウベローデ粘度管を使用して測定した。
(6)湿熱安定性(%):
試料を80℃、90%RHで11時間保持し、還元粘度(ηsp/c)の保持率(%)を測定、湿熱安定性とし耐久性のパラメーターとした。該パラメーターが80%以上であれば、ポリ乳酸樹脂成形品を通常の湿熱条件下で安定的に使用でき耐久性合格と判定した。また90%以上であれば特別に良好と判断した。
(7)ペレット色相:
組成物(A)のペレットの色相を、日本電色(株)製Z−1001DP色差計により、カラーL/b値を測定した。カラーb値が大きいほど色相が悪いことを示す。カラーb値が10超のペレットは商業用途に不適と判断し、成形品としての評価はしなかった。
(8)成形性
厚さ3mmのASTM測定用の成形片を住友重機(株)製 ネオマットN150/75射出成形機によりシリンダー温度260℃、金型温度100℃、成形サイクル150秒で100ショット成形し、最終10ショットの成形品のゆがみ、黒色異物の有無を目視判定した。ゆがみ、黒色異物が認められないランは合格(OK)、明白なゆがみ、黒色異物の認められるランは不合格(NG)とした。微小な異物、微細なゆがみの見られるランは保留(△)とした。
成形性不良の組成物(A)は工業的に使用不可と判断した。
(9)ポリ乳酸中のスズ原子、リン原子含有量、およびポリ乳酸中のスズ、リンのg原子数測定法
ICPにより求めた。
(10)ポリ乳酸中の分子量150以下の化合物の含有量測定法
GPCにより求めた。
(11)ポリ乳酸のCOOH末端基濃度測定法
精秤した試料をo−クレゾール調整液に加えた後、80℃を限度として加熱溶解し0.02規定のKOHメタノール溶液にて滴定することにより求めた。
(12)熱金属接触耐熱性(耐アイロン性)評価
繊維においては、テストする繊維にて10cm角の布巾を作成し表面温度170℃に調整したアイロンで30秒アイロン掛けをおこない、布巾形状、風合いの変化より耐熱性を判定した。
合格: ○ 単糸の融着もなく処理前の布巾の形状、風合いを良好に保つ。
不合格: × 単糸の融着あるいは処理前の布巾の熱変形、ごわごわした風合いへの変化がみられた。
成形品では成形性評価で作成したASTM評価ダンベルを○○度で結晶化させた試料を上記アイロン金属と30秒接触させ、変形度合いを目視、判定した。ひずみの発生した試料をNGと判定した。
(合成例1−1)実施例1用ポリL−乳酸の合成
真空配管、窒素ガス配管、触媒、L−ラクチド溶液添加配管、アルコール開始剤添加配管を具備したフルゾーン翼具備縦型攪拌槽(40L)を窒素置換後、L−ラクチド30Kg、ステアリルアルコール0.90kg(0.030モル/kg)、オクチル酸スズ6.14g(5.05×10−4モル/1Kg)を仕込み、窒素圧106.4kPaの雰囲気下、150℃に昇温した。内容物が溶解した時点で、攪拌を開始し、内温をさらに190℃に昇温した。内温が180℃を超えると反応が始まるので冷却を開始し、内温を185℃〜190℃に保持し1時間反応を継続した。さらに攪拌しつつ、窒素圧106.4kPa、内温200℃〜210℃で、1時間反応を行なった後、リン系失活剤を添加し10分間攪拌を継続した。攪拌を停止し、さらに20分間静置して気泡除去を行なった後、内圧を窒素圧で2から3気圧に昇圧しプレポリマーをチップカッターに押し出し、重量平均分子量12万、分子量分散1.8のプレポリマーをペレット化した。
さらに、ペレットを押出機で溶解させ無軸籠型反応装置に15kg/時間で投入し1.03kPaに減圧し残留するラクチドを低減処理し、それを再度チップ化しポリL−乳酸を得た。得られたポリL−乳酸は、重量平均分子量12万、分子量分散1.8、カルボキシ基濃度30当量/トン、分子量150以下の化合物の含有量0.05重量%であった。
(合成例1−2)実施例1用ポリL−乳酸の合成
D−ラクチドを使用する以外は合成例1と同じ操作を繰り返し、重量平均分子量12万、分子量分散1.8、カルボキシ基濃度32当量/トン、分子量150以下の化合物の含有量0.03重量%のポリD−乳酸を得た。
(合成例2−1)比較例2用ポリL−乳酸の合成
開始剤ステアリルアルコール、オクチル酸スズ使用量を各々表1中に記載の量、内温200℃〜210℃での反応時間を0.75時間に変更した以外は、合成例1−1と同じ操作を繰り返し、ポリL−乳酸を得た。得られたポリL−乳酸は、重量平均分子量13.3万、分子量分散1.9、カルボキシ基濃度32当量/トン、分子量150以下の化合物の含有量0.031重量%であった。
(合成例2−2)比較例2用ポリD−乳酸の合成
D−ラクチドを使用する以外は合成例2−1と同じ操作を繰り返し、重量平均分子量13.5万、分子量分散1.9、カルボキシ基濃度32当量/トン、分子量150以下の化合物の含有量0.032重量%のポリD−乳酸を得た。
(合成例3−1)比較例3用ポリL−乳酸の合成
開始剤ステアリルアルコール、オクチル酸スズ使用量を各々表中記載の量に、また内温200℃〜210℃での反応時間を3時間に変更して実施した以外は合成例1−1と同じ操作を繰り返し、重量平均分子量7万、分子量分散1.3、カルボキシ基濃度32当量/トン、分子量150以下の化合物の含有量0.031重量%のポリL−乳酸を得た。
(合成例3−2)比較例3用ポリD−乳酸の合成
D−ラクチドを使用する以外は合成例3−1と同じ操作を繰り返し、重量平均分子量6.5万、分子量分散1.4、カルボキシ基濃度33当量/トン、分子量150以下の化合物の含有量0.033重量%のポリD−乳酸を得た。
(合成例4−1)比較例4用ポリL−乳酸の合成
リン系失活剤のみを表中の値に変更する以外は合成例1−1と同じ操作を繰り返し、
重量平均分子量11.6万、分子量分散1.7、カルボキシ基濃度34当量/トン、分子量150以下の化合物の含有量0.31重量%のポリL−乳酸を得た。
(合成例4−2)比較例4用ポリD−乳酸の合成
D−ラクチドを使用する以外は合成例4−1と同じ操作を繰り返し、重量平均分子量11.5万、分子量分散1.7、カルボキシ基濃度33当量/トン、分子量150以下の化合物の含有量0.33重量%をポリD−乳酸を得た。
(合成例5−1)実施例2用ポリL−乳酸の合成
ラクチド低減処理の減圧度を3kPaに変更した以外は、合成例1−1と同じ操作を繰り返し、重量平均分子量12.1万、分子量分散1.8、カルボキシ基濃度30当量/トン、分子量150以下の化合物の含有量0.31重量%のポリL−乳酸を得た。
(合成例5−2)実施例2用ポリD−乳酸の合成
D−ラクチドを使用する以外は合成例5−1と同じ操作を繰り返し、重量平均分子量12.1万、分子量分散1.8、カルボキシ基濃度32当量/トン、分子量150以下の化合物の含有量0.33重量%のポリD−乳酸を得た。
(合成例6−1)比較例5用ポリL−乳酸の合成
リン系失活剤のみを表中の値に変更した以外は、合成例1−1と同じ操作を繰り返し、重量平均分子量12.3万、分子量分散1.7、カルボキシ基濃度34当量/トン、分子量150以下の化合物の含有量0.03重量%のポリL−乳酸を製造した。
(合成例6−2)比較例5用ポリD−乳酸の合成
D−ラクチドを使用する以外は合成例6−1と同じ操作を繰り返し、重量平均分子量12.5万、分子量分散1.7、カルボキシ基濃度32当量/トン、分子量150以下の化合物の含有量0.03重量%のポリD−乳酸を得た。
(合成例7−1)比較例6用ポリL−乳酸の合成
重合開始剤、触媒、リン系失活剤の量を各々表中の値に変更した以外は合成例1−1と同じ操作を繰り返し、重量平均分子量10.5万、分子量分散1.6、カルボキシ基濃度32当量/トン、分子量150以下の化合物の含有量0.03重量%のポリL−乳酸を得た。
(合成例7−1)比較例6用ポリL−乳酸の合成
D−ラクチドを使用する以外は合成例7−1と同じ操作を繰り返し、重量平均分子量10.2万、分子量分散1.6、カルボキシ基濃度32当量/トン、分子量150以下の化合物の含有量0.032重量%のポリD−乳酸を得た。
[実施例1]
合成例1−1で製造したポリL−乳酸、合成例1−2で製造したポリD−乳酸の、重量比1/1混合物を120℃で5時間乾燥後、二軸混練機でシリンダー温度260℃、滞留時間5分で溶融混練、チップカッターでペレット化し、組成物(A)のペレットを製造した。組成物(A)の物性測定結果を表1中に示す。組成物(A)の溶融安定性は89%、耐熱性、成形性、色相は良好であった。
[実施例2]
合成例5−1で製造したポリL−乳酸、合成例5−2で製造したポリD−乳酸を使用し、実施例1と同様にして組成物(A)を製造した。結果を表1に示す。得られた組成物(A)の低分子化合物含有量は0.3重量%であった。ステレオ化度89、ポリマー色相、カラーb値は8と黄色味が強かったが商品化限界レベルであった。
[実施例3]
合成例1−1で製造したポリL−乳酸、合成例1−2で製造したポリD−乳酸の、重量比1/1混合物を120℃で5時間乾燥後、カルボキシ基封止剤として、日清紡(株)製カーボジライトLA−1をポリL−乳酸、ポリD−乳酸混合物に対し、0.3重量%添加し、二軸混練機でシリンダー温度260℃、滞留時間5分で溶融混練、チップカッターでペレット化し組成物(A)ペレットを作成した。組成物(A)の物性測定結果を表1中に示す。組成物(A)の溶融安定性は91%、耐熱性、成形性、色相も良好であった。
[比較例1]
実施例1においてポリL−乳酸、ポリD−乳酸の重量比1/1混合物の二軸混練機で混練する際、シリンダー温度220℃、滞留時間5分で溶融混練し、チップカッターで切断しペレットを得た。ペレットの成形性はNGであり、ペレットは工業的使用には不向きと判定した。得られた結果を表1に記載する。
[比較例2]
合成例2−1で製造したポリL−乳酸、合成例2−2で製造したポリD−乳酸の、重量比1/1混合物を120℃で5時間乾燥後、カルボキシ基封止剤として、日清紡(株)製カーボジライトLA−1を混合物に対し、0.3重量%添加し、二軸混練機でシリンダー温度260℃、滞留時間5分で溶融混練、チップカッターでペレット化しペレットを作成した。得られた結果を表1中に記載する。得られたペレットのカラーb値は11、溶融安定性は65と不良であり、工業的使用は不可能と判断した。
[比較例3]
合成例3−1で製造したポリL−乳酸、合成例3−2で製造したポリD−乳酸を使用し、実施例1と同様にしてペレットを製造した。結果を表1に示す。得られたペレットのスズ原子含有濃度は4ppm、重量平均分子量は6.5万であり成形性不可のレベルであり、成形品の製造は不可能で商品化不能と判断した。
[比較例4]
合成例4−1で製造したポリL−乳酸、合成例4−2で製造したポリD−乳酸を使用し、実施例1と同様にしてペレットを製造した。結果を表1に示す。得られたペレットのリン原子含有濃度は150ppm、重量平均分子量は11.3万であり、溶融安定性は74、成形性NGで、工業的使用は不可レベルであった。
[比較例5]
合成例6−1で製造したポリL−乳酸、合成例6−2で製造したポリD−乳酸を使用し、実施例1と同様にしてペレットを製造した。結果を表1に示す。得られたペレットのリン原子含有濃度は0.5ppm、スズ/リン原子数比は30であった。重量平均分子量は12万であり、湿熱安定性は65、溶融安定性70で、不可レベルであった。
[比較例6]
合成例7−1で製造したポリL−乳酸、合成例7−2で製造したポリD−乳酸を使用し、実施例1と同様にしてペレットを製造した。結果を表1に示す。得られたペレットの重量平均分子量は10.1、スズ原子含有濃度は11ppm、リン原子濃度は62ppm、スズ/P原子数比は0.02であった。湿熱安定性は77、溶融安定性は75、成形性NGであった。
[実施例4]
実施例1で製造した組成物(A)ペレットを120℃で5時間減圧乾燥した。このチップを、1軸ルーダー付溶融紡糸機を用い240℃で溶融し、0.25Φの吐出孔を36ホールもつ口金から40g/分で吐出させた。吐出直後のパック下の温度は180℃、紡糸筒により冷却した後集束し、油剤を付加して、500m/分の速度で未延伸糸を巻き取った。この結晶化率0%の未延伸糸を予熱90℃で4.9倍に延伸し、引き続き140℃で熱セットを行い、160dtex/36filのポリ乳酸繊維を得た。得られた延伸糸は、示差走査熱量計(DSC)測定において、ポリL−乳酸およびポリD―乳酸からなるステレオコンプレックス結晶の単一融解ピークを示し、融点が224℃であった。また、広角X線回折測定でのステレオ化率45%、繊維の強度は4.6cN/dtex、伸度35%であり、実用上十分な強度を保有していた。また耐アイロン性は良好で合格であった。
Figure 2008248184

Claims (5)

  1. L−乳酸単位を90モル%以上含有するポリ乳酸(B)およびD−乳酸単位を90モル%以上含有するポリ乳酸(C)単位を含有し、以下の各項を満足する組成物(A)。
    (a)重量平均分子量が7万〜50万。
    (b)スズ含有化合物とリン含有化合物とを、スズ原子濃度が1〜500ppm、リン原子濃度が1〜100ppm、スズ/リンの原子数比が0.2〜5の範囲にあるように含有する。
    (c)示差走査熱量計による測定で、190℃未満の融解ピークの結晶融解エンタルピーを△Hmh、190℃以上の結晶融解ピークの結晶融解エンタルピーを△Hmscとするとき、下記式(1)で規定されるステレオ化度(S)が80%以上あること。
    S=△Hmsc/(△Hmh+△Hmsc)×100 (1)
  2. 分子量が150以下の化合物の含有量が、0.001〜0.2重量%である請求項1記載の組成物。
  3. 請求項1または2記載の組成物からなる成形品
  4. 以下の各項を満足する請求項3記載の成形品。
    (a)重量平均分子量が7万〜50万であること。
    (b)スズ含有化合物とリン含有化合物とを、スズ原子濃度が1〜500ppm、リン原子濃度が1〜100ppm、スズ/リンの原子数比が0.2〜5の範囲にあるように含有する。
    (c)示差走査熱量計(DSC)による測定で、実質的にステレオコンプレックス結晶の単一融解ピークを示し、
    (d)X線広角散乱測定による下記式(2)で表されるステレオ化率(Sc率)が30%以上あること。
    Sc率=ΣISCi/(ΣISCi+IHM)×100 (2)
    (ここで、ΣISCi=ISC1+ISC2+ISC3
    (e)分子量が150以下の化合物の含有量が0.001〜0.2重量%であること。
  5. 繊維である請求項3または4記載の成形品。
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