JP2010100774A - ポリ乳酸組成物およびその成形品。 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、100重量部の重量平均分子量10万〜50万のポリ乳酸(A成分)および0.01〜5重量部の塩基性酸化物(B成分)を含有し、カラーb*値が3以下で、かつ下記式(i)
H(%)=η1/η0×100(%) (i)
(但し、η0は初期還元粘度、η1は80℃、95%RH雰囲気下、72時間後の還元粘度)
で表される還元粘度の保持率(H)が70%以上の組成物である。
【選択図】なし
Description
しかしながらポリ乳酸は、結晶融解温度が約155℃と低いため耐熱性に限界があり、また湿度により分解されやすいため耐湿熱安定性に限界があり、さらに結晶化速度が遅いため、結晶化させて成形品として用いるにも成形性にも限界があった。
ポリ乳酸の成形性を改良するため、結晶化核剤等の結晶化を促進する剤を添加する方法(特許文献1)や、有機、無機フィラーを添加する方法(特許文献2)が検討されている。これらの方法は、結晶化速度自体の向上にはある程度の改良は見られるが、耐熱性、耐湿熱安定性の問題は依然未解決であり、問題の本質的解決には程遠いのが実情である。
しかしながらステレオコンプレックスポリ乳酸の形成は容易ではなく、とりわけPLLAやPDLAの重量平均分子量が15万を超えるとその困難さはいっそう顕著となる(特許文献3)。
即ちステレオコンプレックスポリ乳酸は、通常、単一相を示すことはなく、PLLAおよびPDLA相(以下ホモ相と呼ぶことがある。)と、ポリ乳酸ステレオコンプレックス相(以下コンプレックス相と呼ぶことがある。)の混合相組成物となる。この混合組成物において、コンプレックス相の割合が少ないとステレオコンプレックスポリ乳酸本来の耐熱性を発揮することが困難である。また、ステレオコンプレックスポリ乳酸もポリ乳酸ホモポリマーと同様、脂肪族ポリエステルの特徴として、湿度により加水分解を受けやすい欠点を有しており、この問題は依然未解決のまま残っている。
しかしこれらの提案では樹脂中に練りこまれたカルボジイミド化合物は、溶融成形時、熱分解して樹脂の色相を悪化させることがある。また、カルボジイミド化合物は%オーダーと比較的多量に樹脂に配合されるため、成形品の色相を顕著に悪化することがある。例えば上記文献によると、カルボジイミドを添加しない場合のポリ乳酸延伸糸のカラーb*値は1.7であるのに対し、カルボジイミドを添加した場合、3.5程度と極端に悪化して、本発明者らの知見では、商品としての利用が問題になるレベルとなっている。
カルボジイミド化合物は溶融成形時、熱分解して成形品が着色するとともに悪臭を発生して作業環境を悪化させる問題があることもまた明らかとなり、作業環境悪化の問題は早急な解決がまたれている。
(1)100重量部の重量平均分子量10万〜50万のポリ乳酸(A成分)および0.01〜5重量部の塩基性酸化物(B成分)を含有し、カラーb*値が3以下で、かつ下記式(i)
H(%)=η1/η0×100(%) (i)
(但し、η0は初期還元粘度、η1は80℃、95%RH雰囲気下、72時間後の還元粘度)
で表される還元粘度の保持率(H)が70%以上である組成物、
(2)塩基性酸化物(B成分)が、アルカリ土類金属の酸化物である前項1に記載の組成物、
(3)ポリ乳酸(A成分)の酸性基濃度1当量あたり、B成分を0.5〜5当量含有する前項1または2に記載の組成物(但し、酸性基濃度は試料を精製o−クレゾールに窒素気流下溶解し、ブロモクレゾールブルーを指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定した値である。)、
(4)ポリ乳酸(A成分)が、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを含む前項1〜3のいずれか一項に記載の組成物、
(5)ポリ乳酸(A成分)100重量部あたり、0.001〜5重量部のリン酸エステル金属塩を含む前項4に記載の組成物、
(6)示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃以上のステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解ピークを示す前項4または5に記載の組成物、
(7)下記式(ii)で規定されるステレオ化度(S)が90〜100%である前項4〜6のいずれかに記載の組成物、
S=〔ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)〕×100 (ii)
(但し、ΔHmsは、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー、ΔHmhは、ポリ乳酸ホモ相結晶の融解エンタルピーを表す。)
(8)前項1〜7のいずれかに記載の組成物よりなる成形品、
(9)フィルム、繊維、繊維構造物および射出成形品からなる群より選らばれる前項8に記載の成形品、
(10)重量平均分子量10万〜50万のポリ乳酸(A成分)と塩基性酸化物(B成分)とを溶融混練することからなる前項1記載の組成物の製造方法、
である。
本発明において塩基性酸化物(B成分)とは、酸と反応して塩を形成する酸化物をいう。例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属および低原子価状態の遷移金属の酸化物であり、具体的には酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化銀(I)、酸化クロム(II)、酸化マンガン(II)、酸化鉄(II)、Bi2O3、ハイドロタルサイトなどが例示される。なかでも酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、ハイドロタルサイトなどが好適である。
塩基性酸化物は、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、ボリア、珪酸カルシウム、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、粘土鉱物およびその他の触媒化学において触媒担体として使用される不活性担体上に担持して使用することもできる。
B成分の含有量は、ポリ乳酸(A成分)の酸性基濃度1当量あたり、0.5〜5当量であることが好ましい。但し、酸性基濃度はポリ乳酸(A成分)を精製o−クレゾールに窒素気流下溶解、ブロモクレゾールブルーを指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定した値である。
本発明において、ポリ乳酸(A成分)は、L−またはD−乳酸の直接重縮合、L−、D−またはメソラクチドの溶融開環重合、またはこれら手法などにより得られた比較的低分子量オリゴマーの固相重合によるポリL−乳酸、ポリD−乳酸またはこれらの成分がランダムあるいはブロック共重合されたポリ乳酸、さらにはこれらのポリ乳酸の混合物を意味する。
ポリ乳酸(A成分)は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを含むことが好ましい。ポリ乳酸(A成分)は、DSC測定により190℃以上に結晶融解ピークを有するコンプレックス相ポリ乳酸を含むことが好ましい。
ポリ乳酸(A成分)がホモ相ポリ乳酸であるとき、示差走査熱量計(DSC)測定で、150〜190℃の間に結晶融解ピーク(Tmh)を有し、該結晶融解熱(△Hmsc)が10J/g以上であることが好ましい。かかる結晶融点および結晶融解熱の範囲を満たすことにより耐熱性を高めることができる。
S=〔ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)〕×100 (ii)
(但し、ΔHmsは、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー、ΔHmhは、ポリ乳酸ホモ相結晶の融解エンタルピーを表す。)
さらにコンプレックス相を含むポリ乳酸(A成分)は、結晶性を有していることが好ましく、広角X線回折(XRD)測定による回折ピークの強度比によって、下記式(iii)で定義されるステレオ化率(Sc)が50%以上を有することがより好ましい。
Sc(%)=〔ΣISCi/(ΣISCi+IHM)〕×100 (iii)
ここで、ΣISCi=ISC1+ISC2+ISC3、ISCi(i=1〜3)はそれぞれ2θ=12.0°,20.7°,24.0°付近の各回折ピークの積分強度、IHMは2θ=16.5°付近に現れるホモ相結晶に由来する回折ピークの積分強度IHMを表す。
さらに同様の観点より、ポリ乳酸(A成分)の結晶化度、とりわけXRD測定による結晶化度は、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは5〜60%、さらに好ましくは7〜50%、特に好ましくは10〜45%の範囲である。
さらに同様の観点より、コンプレックス相ポリ乳酸の結晶融点は、好ましくは190〜250℃、より好ましくは200〜230℃の範囲であるコンプレックス相ポリ乳酸のDSC測定による結晶融解エンタルピーは、好ましくは20J/g以上、より好ましくは20〜80J/g、さらに好ましくは30〜80J/gの範囲である。コンプレックス相ポリ乳酸の結晶融点が190℃未満であると、耐熱性が悪くなる。また250℃を超えると、250℃以上の高温において成形することが必要となり、樹脂の熱分解を抑制することが困難となる場合がある。
ステレオ化度、ステレオ化率、上述の各種結晶性のパラメーターを好適に満たすため、ポリ乳酸(A成分)において、ポリD−乳酸とポリL−乳酸の重量比は90/10〜10/90であることが好ましい。より好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは30/70〜70/30、とりわけ好ましくは40/60〜60/40の範囲であり、理論的には1/1にできるだけ近い方が好ましい。
共重合単位は、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
ポリL−乳酸およびポリD−乳酸は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、L−またはD−ラクチドを金属含有触媒の存在下、開環重合することにより製造することができる。また金属含有触媒を含有する低分子量のポリ乳酸を、所望により結晶化させた後、あるいは結晶化させることなく、減圧下または常圧から加圧化、不活性ガス気流の存在下、あるいは非存在下、固相重合させ製造することもできる。さらに有機溶媒の存在または非存在下、乳酸を脱水縮合させる直接重合法により製造することができる。
重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスルトールなどを好適に用いることができる。
固相重合法で使用するポリ乳酸プレポリマーは、予め結晶化させることが、樹脂ペレット融着防止の面から好ましい実施形態と言える。プレポリマーは固定された縦型或いは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中、プレポリマーのガラス転移温度から融点未満の温度範囲で、固体状態で重合される。
なかでもスズ、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、チタン、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウムおよび稀土類元素より選択される少なくとも一種の金属を含有する脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラートが好ましい。
触媒活性、副反応の少なさからスズ化合物、具体的には塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズ等のスズ含有化合物が好ましい触媒として例示でされる。なかでも、スズ(II)化合物、具体的にはジエトキシスズ、ジノニルオキシスズ、ミリスチン酸スズ(II)、オクチル酸スズ(II)、ステアリン酸スズ(II)、塩化スズ(II)などが好適に例示される。
触媒の使用量は、ラクチド1Kg当たり0.42×10−4〜100×10−4(モル)でありさらに反応性、得られるポリラクチド類の色調、安定性を考慮すると1.68×10−4〜42.1×10−4(モル)、特に好ましくは2.53×10−4〜16.8×10−4(モル)モル使用される。
溶融開環重合された直後のポリL−および/またはポリD−乳酸は通常1〜5重量%のラクチドを含有するが、ポリL−および/またはポリD−乳酸重合終了の時点からポリ乳酸(A成分)成形までの間の任意の段階において、従来公知のラクチド減量法により、即ち一軸あるいは多軸押出機での真空脱揮法、あるいは重合装置内での高真空処理等を単独であるいは組み合わせて実施することにラクチドを好適な範囲に低減することができる。
ラクチド含有量は少ないほど、樹脂の溶融安定性、耐湿熱安定性は向上するが、樹脂溶融粘度を低下させる利点もあり、所望の目的に合致した含有量にするのが合理的、経済的である。即ち、実用的な溶融安定性が達成される1〜1000wtppmに設定するのが合理的である。さらに好ましくは1〜700wtppm、より好ましくは2〜500wtppm、特に好ましくは5〜100wtppmの範囲が選択される。
ポリ乳酸(A成分)成分がかかる範囲のラクチド含有量を有することにより、本発明成形品の溶融成形時の樹脂の安定性を向上せしめ、成形品の製造を効率よく実施できる利点および成形品の耐湿熱安定性、低ガス性を高めることが出来る。
溶融混練の方法は特に限定されるものではないが、従来公知のバッチ式或いは連続式の溶融混合装置が好適に使用される。たとえば、溶融攪拌槽、一軸、二軸の押出し機、ニーダー、無軸籠型攪拌槽(フィニッシャー)、住友重機製バイボラック、三菱重工業製N−SCR,日立製作所製めがね翼、格子翼あるいはケニックス式攪拌機、あるいはズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合装置などを使用できるが、生産性、ポリ乳酸の品質とりわけ色調の点でセルフクリーニング式の重合装置である無軸籠型攪拌槽、N−SCR、2軸押し出しルーダーなどが好適に使用される。
1. 例えば、ステレオ化促進剤として下記式(2)または(3)で表されるリン酸エステル金属塩を添加する手法が挙げられる。
式(2)または(3)で表されるリン酸エステル金属塩のM1、M2は、Na、K、Al、Mg、Ca、Liが好ましく、特に、K、Na、Al、LiなかでもLi、Alが最も好適に用いることができる。なかでもADEKA(株)製の商品名、アデカスタブNA−10、NA−11、NA−21、NA−30、NA−35、NA−71等が好適な剤として例示される。
リン酸エステル金属塩の含有量は、ポリ乳酸(A成分)100重量部あたり、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.005〜1重量部、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部、特に好ましくは0.02〜0.3重量部である。少なすぎる場合には、ステレオ化度を向上する効果が小さく、多すぎるとコンプレックス相結晶融点を低下させるので好ましくない。
2. また、ステレオ化助剤[(エポキシ基、オキサゾリン基、オキサジン基、イソシアネート基、ケテン基およびカルボジイミド基)(以下特定官能基と略称することがある)の群より選択される官能基を分子中に少なくとも1個有する化合物]の添加する手法が挙げられる。ステレオ化助剤とは、特定官能基がポリ乳酸(A成分)の分子末端と反応して、部分的にポリL−乳酸ユニットとポリD−乳酸ユニットとを連結し、ステレオコンプレックス相形成を促進させているものと本発明者が推察する剤である。
即ちステレオ化助剤のうち、オキサジン基、イソシアネート基およびカルボジイミド基を含有する剤は、コンプレックス相形成時、剤の熱分解のため悪臭による作業環境悪化、ポリ乳酸(A成分)の色調悪化を引き起こす危険性が大きいため、使用に関しては別途作業環境を整備することが好ましく、使用する場合には、コンプレックス相の高度の形成に重点を置く場合に限定し、可能な限り少量に抑制して使用することが好ましい。
ステレオ化助剤の使用量は、ポリ乳酸(A成分)に対し、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0〜0.5重量%、さらに好ましくは0〜0.3重量%、特に好ましくは0〜0.1重量%の範囲である。
即ち、上記(1)の手法は単独で、適用することができるが、コンプレックス相形成により重点をおく場合、(2)の手法と組み合わせて適用する手法が好ましく選択される。
グリシジルアミン化合物の例としては例えば、テトラグリシジルアミンジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、トリグリシジルイソシアヌレート、などが挙げられる。
その他のエポキシ化合物としてエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化鯨油などのエポキシ変性脂肪酸グリセリド、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などを用いることができる。
上記オキサゾリン化合物のなかでは2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)や2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)および本発明の特定オキサゾリン樹脂が好ましいものとして選択される。
さらに上記した化合物をモノマー単位として含むポリオキサジン化合物とりわけ上記官能基をペンダント基として側鎖に保有するポリオキサジン化合物なども好適な剤として挙げられる。
特定官能基を有するステレオ化助剤として用いることのできるモノイソシアネート化合物としてはたとえばフェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどが挙げられる。
これらのイソシアネート化合物のなかでは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニルイソシアネートなどの芳香族イソシアネートが好ましい。
具体的化合物としてはジフェニルケテン、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ケテン、ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)ケテン、ジシクロヘキシルケテンなどを例示することができる。
これらのケテン化合物のなかではジフェニルケテン、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ケテン、ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)ケテンなどの芳香族ケテンが好ましい。
上記ステレオ化助剤、末端封止剤として使用できる剤は1種または2種以上の化合物を適宜選択して使用することができる。ステレオ化助剤によりコンプレックス相の形成を促進するとともにカルボキシル基末端や、酸性低分子化合物の一部の封止を行うことは、好適な実施態様の一つとして例示される。
所望により、本発明の組成物には、ポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂を含有させることができる。かかる熱可塑性樹脂としては、たとえばポリ乳酸樹脂以外のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、芳香族および脂肪族のポリケトン樹脂、フッソ樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑性澱粉樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ACS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、MS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエーテルイミド樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。なかでもポリアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂以外のポリエステル樹脂例えばポリエチレンテレフタレート(PET),ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を配合することが好ましい。
かかる熱可塑性樹脂の含有量は、ポリ乳酸(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.5〜200重量部、より好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは3〜70重量部、さらにより好ましくは5〜50重量部である。これらの樹脂を配合することで優れた特性を有する組成物、成形品を得ることができる。
本発明の組成物には、安定剤を含有することが好ましい。安定剤としては通常の熱可塑性樹脂の安定剤に使用されるものを用いることができる。例えば酸化防止剤、光安定剤等を挙げることができる。これらの剤を配合することで機械的特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等を挙げることができる。
本発明組成物において、有機若しくは無機の結晶化促進剤を含有することができる。結晶化促進剤を含有することで、リン酸エステル金属塩の作用を一層増強することができ、機械的特性、耐熱性、および成形性に優れた成形品を得ることができる。
即ち結晶化促進剤の適用により、ポリ乳酸(A成分)の成形性、結晶性が向上し、通常の射出成形においても十分に結晶化し耐熱性、耐湿熱安定性に優れた成形品を得ることができる。加えて、成形品を製造する製造時間を大幅に短縮でき、その経済的効果は大きい。
これらの無機系の結晶化核剤は組成物中での分散性およびその効果を高めるために、各種分散助剤で処理され、一次粒子径が0.01〜0.5μm程度の高度に分散状態にあるものが好ましい。
これらのなかでタルク、および有機カルボン酸金属塩から選択された少なくとも1種が好ましく使用される。本発明で使用する結晶化核剤は1種のみでもよく、2種以上を併用しても良い。
結晶化促進剤の含有量は、ポリ乳酸(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.05〜20重量部である。
本発明においては有機若しくは無機の充填剤を含有することができる。充填剤成分を含有することで、機械的特性、耐熱性、および金型成形性に優れた成形品を得ることができる。
また木材として、松、杉、檜、もみ等の針葉樹材、ブナ、シイ、ユーカリ等の広葉樹材等が好ましい。
紙粉は成形性の観点から接着剤、取り分け紙を加工する際に通常使用される酢酸ビニル樹脂系エマルジョンやアクリル樹脂系エマルジョン等のエマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリアミド系接着剤等のホットメルト接着剤等を含むものが好ましく例示される。
本発明の組成物は、無機充填剤を含有することが好ましい。無機充填剤合により、機械特性、耐熱性、成形性の優れた組成物を得ることができる。本発明で使用する無機充填剤としては、通常の熱可塑性樹脂の強化に用いられる繊維状、板状、粉末状のものを用いることができる。
かかる充填剤はエチレン/酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆または収束処理されていてもよく、またアミノシランやエポキシシラン等のカップリング剤で処理されていても良い。
無機充填剤の配合量は、ポリ乳酸(A成分)100重量部に対し、好ましくは0.1〜200重量部、より好ましくは0.5〜100重量部、さらに好ましくは1〜50重量部、特に好ましくは1〜30重量部、最も好ましくは1〜20重量部である。
本発明組成物においては離型剤を配合することが好ましい。本発明において使用する離型剤は通常の熱可塑性樹脂に用いられるものを使用することができる。
離型剤として具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、パラフィン、低分子量のポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸部分鹸化エステル、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変性シリコーン等を挙げることができる。これらを配合することで機械特性、成形性、耐熱性に優れたポリ乳酸成形品を得ることができる。
オキシ脂肪酸としては1,2−オキシステリン酸、等が挙げられる。パラフィンとしては炭素数18以上のものが好ましく、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等が挙げられる。
低分子量のポリオレフィンとしては例えば分子量5000以下のものが好ましく、具体的にはポリエチレンワックス、マレイン酸変性ポリエチレンワックス、酸化タイプポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。脂肪酸アミドとしては炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。
脂肪酸部分鹸化エステルとしてはモンタン酸部分鹸化エステル等が挙げられる。脂肪酸低級アルコールエステルとしてはステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、アジピン酸エステル、ベヘン酸エステル、アラキドン酸エステル、モンタン酸エステル、イソステアリン酸エステル等が挙げられる。
脂肪酸多価アルコールエステルとしては、グリセロールトリステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールモノステアレート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスルトールトリステアレート、ペンタエリスルトールジミリステート、ペンタエリスルトールものステアレート、ペンタエリスルトールアジペートステアレート、ソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。脂肪酸ポリグリコールエステルとしてはポリエチレングリコール脂肪酸エステルやポリプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
そのうち脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、が好ましく、脂肪酸部分鹸化エステル、アルキレンビス脂肪酸アミドがより好ましい。なかでもモンタン酸エステル、モンタン酸部分鹸化エステル、ポリエチレンワックッス、酸価ポリエチレンワックス、ソルビタン脂肪酸エステル、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましく、特にモンタン酸部分鹸化エステル、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
離型剤は、1種類で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。離型剤の含有量は、ポリ乳酸100重量部に対し、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.03〜2重量部である。
本発明で使用される帯電防止剤として、(β−ラウラミドプロピオニル)トリメチルアンモニウムスルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの第4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系化合物、アルキルホスフェート系化合物等が挙げられる。
本発明において帯電防止剤は1種類で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。帯電防止剤の含有量は、ポリ乳酸(A成分)100重量部に対し、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
本発明で使用する可塑剤としては一般に公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびエポキシ系可塑剤、等が挙げられる。
グルセリン系可塑剤として、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノモンタネート等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤として、リン酸トリブチル、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
エポキシ系可塑剤として、エポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリド、およびビスフェノールAとエピクロルヒドリンを原料とするエポキシ樹脂が挙げられる。
可塑剤として、特にポリエステル系可塑剤およびポリアルキレン系可塑剤から選択された少なくとも1種よりなるものが好ましく使用でき、1種のみでも良くまた2種以上を併用することもできる。
可塑剤の含有量は、ポリ乳酸(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。本発明においては結晶化核剤と可塑剤を各々単独で使用してもよいし、両者を併用して使用することがさらに好ましい。
本発明で使用する耐衝撃改良剤とは熱可塑性樹脂の耐衝撃性改良に用いることができるものであり、特に制限はない。例えば以下の耐衝撃改良剤の中から選択される少なくとも1種を用いることができる。
さらに上記具体例に挙げた各種の(共)重合体はランンダム共重合体、ブロック共重合体およびブロック共重合体等のいずれであっても、本発明の耐衝撃改良剤として用いることができる。
耐衝撃改良剤は、ポリ乳酸(A成分)100重量部に対して、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部、さらに好ましくは10〜20重量部である。
また本発明においては、本発明の趣旨に反しない範囲において、フェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含有させても良い。また本発明においては、本発明の趣旨に反しない範囲において、臭素系、リン系、シリコーン系、アンチモン化合物等の難燃剤を含有させても良い。また有機、無機系の染料、顔料を含む着色剤、例えば、二酸化チタン等の酸化物、アルミナホワイト等の水酸化物、硫化亜鉛等の硫化物、紺青等のフェロシアン化物、ジンククロメート等のクロム酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、群青等の珪酸塩、マンガンバイオレット等のリン酸塩、カーボンブラック等の炭素、ブロンズ粉やアルミニウム粉等の金属着色剤等を含有させても良い。また、ナフトールグリーンB等のニトロソ系、ナフトールイエローS等のニトロ系、ナフトールレッド、クロモフタルイエローどのアゾ系、フタロシアニンブルーやファストスカイブルー等のフタロシアニン系、インダントロンブルー等の縮合多環系着色剤等、グラファイト、フッソ樹脂等の摺動性改良剤等の添加剤を含有させても良い。これらの添加剤は単独であるいは2種以上を併用することもできる。
本発明の組成物は、重量平均分子量10万〜50万のポリ乳酸(A成分)と塩基性酸化物(B成分)とを溶融混練することにより製造することができる。
ポリL−乳酸、ポリD−乳酸および塩基性酸化物(B成分)を、溶融混練することが好ましい。
混合、混練には、タンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、1軸または2軸の押出機等を用いることができる。得られる組成物は、そのままで、または溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、成形することができる。
ペレットの形状は、たとえば、真球状、ダイス状、直線状、曲線状、断面の形状は、丸、楕円、扁平、三角、四角以上の多角形および星形などいずれの形状であっても良いが、ペレットをさらに各種成形方法で成形するに好適な形状を有するのが好ましい。具体的にはペレット長は1〜7mm、長径3〜5mm、短径1〜4mmのものが好ましい。またかかる形状はばらつきのないものが好ましい。
本発明の組成物の還元粘度の保持率(H)は、70%以上、好ましくは70〜90%未満、より好ましくは90%〜95%未満、さらに好ましくは95%〜100%である。還元粘度の保持率(H)は、下記式(i)
H(%)=η1/η0×100(%) (i)
で表される(但し、η0は初期還元粘度、η1は80℃、95%RH雰囲気下、72時間後の還元粘度)。
本発明の組成物は、示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃以上のステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解ピークを示すことが好ましい。
本発明の組成物のステレオ化度(S)は、好ましくは90〜100%、より好ましくは93〜100%、さらに好ましくは95〜100%、特に好ましくは100%である。ステレオ化度(S)は、下記式(ii)で定義される(但し、ΔHmsは、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー、ΔHmhは、ポリ乳酸ホモ相結晶の融解エンタルピーを表す。)。
S=〔ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)〕×100 (ii)
本発明の組成物よりなる溶融成形品は、射出成形品、押し出し成形品、真空、圧空成形品およびブロー成形品等であり、具体的には、ペレット、繊維および布、他の材料との複合体である繊維構造体、フィルム、シート、シート不織布など圧縮成形品などを包含する。
本発明のペレットは、その溶融成形法は何ら限定されず、公知のペレット製造法により製造されたものが好適に使用できる。即ち、ストランド、あるいは板状におしだされたポリ乳酸(A成分)組成物を、樹脂が完全に固化した後、あるいは完全には固化されないで、いまだ溶融状態にあるとき、空気中、あるいは水中でカッティングする等の手法が従来公知であるが、本発明においてはいずれも好適に適用できる。
本発明の射出成形品は、従来公知の成形法が何ら限定なく適用できるが、射出成形時、成形品の結晶化、成形サイクルを上げる観点から、金型温度は好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。しかし、成形品の変形を防ぐ意味において、金型温度は、好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
またこれらの成形品は、各種ハウジング、歯車、ギア等の電気.電子部品、建築部材、土木部材、農業資材、自動車部品(内装、外装部品等)および日用部品などを挙げることができる。
本発明のポリ乳酸繊維および繊維構造体は通常の溶融紡糸およびその後の後加工により得られた材料を好適に使用することができる。
即ち、ポリ乳酸(A成分)はエクストルーダー型やプレッシャーメルター型の溶融押出し機で溶融された後、ギアポンプにより計量され、パック内で濾過された後、口金に設けられたノズルからモノフィラメンント、マルチフィラメント等として吐出される。
口金の形状、口金数は特に制限されるものではなく、円形、異形、中実、中空等のいずれも採用することができる。吐出された糸は直ちに冷却・固化された後集束され、油剤を付与されて巻き取られる。巻き取り速度は特に限定されるものではないがステレオコンプレックス結晶が形成され易くなることより300m/分〜5000m/分の範囲がこのましい。
延伸は1段延伸でも、2段以上の多段延伸でも良く、高強度の繊維を作製する観点から、延伸倍率は3倍以上が好ましく、さらには4倍以上が好ましい。好ましくは3〜10倍が選択される。しかし、延伸倍率が高すぎると繊維が失透し白化し繊維の強度が低下したり破断伸度が小さくなりすぎ繊維用途としては小さくなり過ぎたりして好ましくない。
延伸の予熱方法としては、ロールの昇温のほか、平板状あるいはピン状の接触式加熱ヒータ、非接触式熱板、熱媒浴などが挙げられるが、通常用いられる方法を用いればよい。
延伸に引き続き、巻き取り前には170℃以上、ポリ乳酸(A成分)の融点より低い温度で、熱処理が行われることが好ましい。熱処理にはホットローラーのほか、接触式加熱ヒータ、非接触式熱板など任意の方法を採用することができる。延伸温度はポリ乳酸ガラス温度から170℃、好ましくは70℃〜140℃、特に好ましくは80〜130℃の範囲が選択される。延伸後、テンション下、170℃〜220℃で熱固定することにより、高いステレオ化率、低い熱収縮性を有するとともに強度3.5cN/dTex以上のポリ乳酸繊維をえることができる。
具体的には縫い糸、刺繍糸、紐類などの糸形態製品、織物、編み物、不織布、フェルト、等の布帛、シャツ、ブルゾン、パンツ、コート、セーター、ユニホームなどの外衣、下着、パンスト、靴下、裏地、芯地、スポーツ衣料、婦人衣料やフォーマルウエアなどの高付加価値衣料製品、カップ、パッド等の衣料製品、カーテン、カーペット、椅子張り、マット、家具、鞄、家具張り、壁材、各種のベルトやスリング等の生活資材用製品、さらに帆布、ベルト、ネット、ロープ、重布、袋類、フェルト、フィルター等の産業資材製品、車両内装製品、人工皮革製品などの各種繊維製品を含む。
混用される他の繊維たとえば、綿、麻、レーヨン、テンセルなどのセルロース繊維、ウール、絹、アセテート、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリオレフィン、ポリウレタンなどを上げることができる。
また、本発明のフィルム、シートは従来公知の方法により成形されたものである。
例えばフィルム、シートにおいては、押し出し成形、キャスト成形等の成形手法を用いることができる。即ち、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸フィルムを押し出し、さらに延伸、熱処理して成形することができる。このとき、未延伸のフィルムはシートとしてそのまま実用に供することもできる。フィルム化に際し、事前にポリ乳酸(A成分)および前述した各種成分を溶融混錬した材料を用いることもできれば、押し出し成形時に溶融混錬を経て成形することができる。未延伸フィルムを押し出し時、溶融樹脂にスルホン酸四級ホスホニウム塩などの静電密着剤を配合し表面欠陥の少ない未延伸フィルムを得ることができる。
また、ポリ乳酸(A成分)成分および添加剤成分を共通溶媒、例えばクロロホルム、二塩化メチレン等の溶媒を用いて、溶解、キャスト、乾燥固化することにより未延伸フィルムをキャスト成形もすることができる。
本発明のフィルム、シートは単一の形態である以外、他種類のフィルム、シートと混用することもできる。混用の態様としては、他種材料からなるフィルム、シートとの各種組み合わせ、例えば、積層、ラミネートなどのほか、他種形態たとえば射出成形品、繊維構造体などとの組み合わせが例示できる。
本願発明および実施例で用いた評価法をまず説明する。
ポリマーの重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した。
GPC測定機器は、
検出器;示差屈折計島津RID−6A
カラム;東ソ−TSKgelG3000HXL、TSKgelG4000HXL,
TSKgelG5000HXLとTSKguardcokumnHXL−Lを直列に接続したもの、
あるいは東ソ−TSKgelG2000HXL、TSKgelG3000HXLとTSKguardcokumnHXL−Lを直列に接続したものを使用した。
クロロホルムを溶離液とし温度40℃、流速1.0ml/minにて、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入し測定した。
(2)ラクチド含有量:
試料をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、C13法NMRにより定量した。
(3)特定官能基含有化合物の含有量:
ニコレ(株)製、MAGJA−750、フーリエ変換赤外分光光度計によりポリ乳酸特性吸収と特定官能基の特性吸収の比較により、含有量を測定した。
(4)酸性基濃度:
試料を精製o−クレゾールに窒素気流下溶解、ブロモクレゾールブルーを指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定した。
(5)ステレオ化度〔S(%)〕,結晶融解温度などのDSC測定:
DSC(TAインストルメント社製,TA−2920)を用いて試料を、第一サイクルにおいて、窒素気流下、10℃/分で250℃まで昇温し、ガラス転移温度(Tg)、コンプレックス相ポリ乳酸結晶融解温度(Tm*)およびコンプレックス相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHms)およびホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHmh)を測定した。
また結晶化開始温度(Tc*)、結晶化温度(Tc)は上記測定試料を急速冷却し、さらに引き続き、同じ条件で第二サイクル測定を行い測定した。ステレオ化度は上記測定で得られたコンプレックス相およびホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピーより、下記式(ii)により求めた値である。
S=[ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)]×100 (ii)
(但し、ΔHmsはコンプレックス相結晶の融解エンタルピー、ΔHmhはホモ相ポリ乳酸結晶の融解エンタルピー)
(6)ステレオ化率〔Sc(%)〕:
理化学電気社製ROTA FLEX RU200B型X線回折装置にて、赤道方向の回折強度プロファイルを求め、2θ=12.0°,20.7°,24.0°付近に現れるコンプレックス相結晶に由来する回折ピークの積分強度の総和ΣISCiと2θ=16.5°付近に現れるホモ相結晶に由来する回折ピークの積分強度IHMから下式(iii)に従いステレオ化率(Sc率)を求めた。
測定条件
X線源 Cu−Kα線(コンフォーカル ミラー)
出力 45kV×70mA
スリット 1mmΦ−0.8mmΦ
カメラ長 120mm
積算時間 10分
Sc(%)=〔ΣISCi/(ΣISCi+IHM)〕×100 (iii)
(7)フィルム厚み(μm):
アンリツ(株)製マイクロメーター;K−402B型試料台にフィルムを乗せ、触針を押し当て、同社製インジケーター;KG3001にて厚み(μm)データとした。
(9)耐湿熱安定性(%):
試料をプレッシャークッカーにて、80℃、95%RH、72時間保持し、下記式(i)で表される還元粘度(ηsp/c)の保持率(%)を求め、耐湿熱安定性のパラメーターとした。
H(%)=η1/η0×100(%) (i)
但し、η0は初期還元粘度、η1は80℃、95%RH雰囲気下、72時間後の還元粘度を表す。
該パラメーターが70%以上であれば、ポリ乳酸組成物を通常の湿熱条件下で安定的に使用でき耐久性合格と判定した。耐加水分解安定性は70〜90%未満であるとき合格、90%〜95%未満であるとき優秀合格、95%〜100%のとき、とりわけ優秀合格と判断される。還元粘度は還元粘度(ηsp/c)の測定は試料1.2mgを〔テトラクロロエタン/フェノール=(6/4)wt混合溶媒〕100mlに溶解、35℃でウベローデ粘度管を使用して測定した。
(10)色相:
試料の色相は日本電色(株)製Z−1001DP色差計によりカラーb*値を測定した。
Lラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、攪拌翼のついた反応機にて、180℃で2時間反応し、オクチル酸スズに対し触媒失活剤として、1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを除去し、チップ化し、ポリL−乳酸を得た。得られたL−乳酸の重量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)55℃、融点は175℃、カルボキシル基含有量は14eq/ton、ラクチド含有は350wtppmであった。
製造例1−1のL−ラクチドをD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度100%)に変更し、他は同じ条件で重合を行い、ポリD−乳酸を得た。得られたポリD−乳酸の重量平均分子量は15.1万、ガラス転移点(Tg)55℃、融点は175℃、カルボキシル基含有量は15eq/ton、ラクチド含有量は450wtppmであった。結果をまとめて表1中に記載する。
製造例1で得られたポリ乳酸100重量部と表1中に記載の種類、量の、結晶化核剤、塩基性酸化物を混合し、110℃、5時間乾燥した後、2軸混練装置の第一供給口より、シリンダー温度230℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練して、水槽中にストランドを押し出し、チップカッターにてチップ化してポリ乳酸(A成分)樹脂;A1〜A5を得た。得られた樹脂の耐湿熱安定性、ペレット色相としてカラーb*値をまとめて表1に記載する。また作業環境として、ルーダー押出口での悪臭を作業者の嗅覚で判定した。ここにおいて塩基性酸化物は平均粒径3μmであり、径20μm超の粗大粒子の割合は5重量%未満の剤を使用した。
作業環境;○は悪臭がほとんどなし。×は悪臭が強く作業性に問題ありを意味する。
なお各実施例において、ラクチド含有量は50〜60ppm、酸性基濃度は1eq/ton以下で良好なレベルであった。
表1中の組成のポリ乳酸(CA1〜CA3)を実施例と同様にして但しカルボジイミド化合物は第二供給口より供給して組成物を製造した。結果を表1中にまとめて記載する。各比較例においてラクチド含有量は50〜60ppm、酸性基濃度は比較例1,2においては1eq/ton以下で良好なレベルであったが比較例3においては20であった。カルボジイミド化合物を適用した比較例1,2においてはペレット色相、作業環境に問題があることが容易に理解される。また対策を採らない比較例においては、耐湿熱安定性に問題があることが理解される。
製造例1で得られたポリL−乳酸とポリD−乳酸各50重量部および塩基性酸化物および結晶化核剤を表2中の組成にて実施例3と同様にしてポリ乳酸A6〜A10を製造した。得られた樹脂の耐湿熱安定性、ペレット色相としてカラーb*値をまとめて表3に記載する。ここにおいて塩基性酸化物は平均粒径3μmであり、径20μm超の粗大粒子の割合は5重量%未満の剤を使用した。また作業環境は、ルーダー押出し口での悪臭の強さを作業者の官能テストにより判定した。
作業環境;○は悪臭がほとんどなし。×は悪臭が強く作業性に問題ありを意味する。
なお各実施例において、ラクチド含有量は50〜60ppm、酸性基濃度は1eq/ton以下で良好なレベルであった。
表2中の組成のポリ乳酸(CA4〜CA6)を実施例4と同様にして但しカルボジイミド化合物は第二供給口より供給して組成物を製造した。結果を表2中にまとめて記載する。各比較例においてラクチド含有量は50〜60ppm、酸性基濃度は比較例1,2においては1eq/ton以下で良好なレベルであったが比較例6においては20であった。
カルボジイミド化合物を適用した比較例4,5においてはペレット色相、作業環境に問題があることが容易に理解される。また対策を採らない比較例6においては、耐湿熱安定性に問題があることが理解される。
実施例7のポリ乳酸(A7)を1軸ルーダー付溶融紡糸機を用い、240℃で溶融し、0.25Φの吐出孔を36ホールもつ口金から40g/分で吐出させた。吐出直後のパック下の温度は180℃、紡糸筒により冷却した後集束し、油剤を付与して、500m/分の速度で未延伸糸を巻き取った。このSc化率0%、ステレオ化度95%の未延伸糸を予熱90℃で4.9倍に延伸し、引き続き140℃で熱セットを行い、160dtex/36filのポリ乳酸繊維を得た。繊維は問題なく良好に紡糸、延伸、熱固定することができた。
得られた延伸糸は、示差走査熱量計(DSC)測定において、ポリL−乳酸およびポリD―乳酸からなるステレオコンプレックス結晶の単一融解ピークを示し、融点が223℃であった。また、広角X線回折測定でのSc化率45%、繊維の強度は4.1cN/dtex、伸度35%であり、繊維のカラーb*値は1.2で実用上十分な強度を保有していた。
比較例5のポリ乳酸(CA5)を1軸ルーダー付溶融紡糸機を用い実施例7と同様にして、160dtex/36filのポリ乳酸繊維を得た。得られた延伸糸は、示差走査熱量計(DSC)測定において、ポリL−乳酸およびポリD―乳酸からなるステレオコンプレックス結晶の単一融解ピークを示し、融点が222℃であった。また、広角X線回折測定でのSc化率45%、繊維の強度は4.6cN/dtex、伸度35%であり実用上十分な強度を保有していたが繊維の色相、b*は3.8と不良であり、さらに紡糸装置周辺には悪臭が強く、このままでは製造に問題があることわかった。
実施例10のポリ乳酸(A10)100重量部あたり、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム0.5重量部をヘンシェルミキサーで混合後、110℃で5時間乾燥した後、2軸押出機にてシリンダー温度、230℃で溶融混練し、ダイ温度、220℃でフィルム状に溶融押し出し、白金コート線状電極を用い、静電キャスト法によって鏡面冷却ドラム表面に密着、固化させた。
未延伸フィルムは、延伸温度100℃で、縦方向に2.0倍、横方向に2.3倍延伸、さらに145℃で熱固定を行い、厚さ約50μmの2軸延伸フィルムとした。これらのフィルムは、問題なく良好に製膜、延伸、熱固定することができた。
得られたフィルムの破断強度(MD/TDは59/59MPa,破断伸度(MD/TD)81/73%、全光線光透過率はいずれも90%以上、さらに90℃、5時間熱処理した後においても90%以上と良好であった。
比較例5のポリ乳酸(CA5)を使用して、実施例8と同様にしてフィルム化したところ、ダイ周辺で悪臭が強く工業生産には問題ありと判断した。
Claims (10)
- 100重量部の重量平均分子量10万〜50万のポリ乳酸(A成分)および0.01〜5重量部の塩基性酸化物(B成分)を含有し、カラーb*値が3以下で、かつ下記式(i)
H(%)=η1/η0×100(%) (i)
(但し、η0は初期還元粘度、η1は80℃、95%RH雰囲気下、72時間後の還元粘度)
で表される還元粘度の保持率(H)が70%以上である組成物。 - 塩基性酸化物(B成分)が、アルカリ土類金属の酸化物である請求項1に記載の組成物。
- ポリ乳酸(A成分)の酸性基濃度1当量あたり、B成分を0.5〜5当量含有する請求項1または2に記載の組成物。
(但し、酸性基濃度はポリ乳酸(A成分)を精製o−クレゾールに窒素気流下溶解し、ブロモクレゾールブルーを指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定した値である。) - ポリ乳酸(A成分)が、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
- ポリ乳酸(A成分)100重量部あたり、0.001〜5重量部のリン酸エステル金属塩を含む請求項4記載の組成物。
- 示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃以上のステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解ピークを示す請求項4または5に記載の組成物。
- 下記式(ii)で規定されるステレオ化度(S)が90〜100%である請求項4〜6のいずれか一項に記載の組成物。
S=〔ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)〕×100 (ii)
(但し、ΔHmsは、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー、ΔHmhは、ポリ乳酸ホモ相結晶の融解エンタルピーを表す。) - 請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物よりなる成形品。
- フィルム、繊維、繊維構造体および射出成形品からなる群より選ばれる請求項8に記載の成形品。
- 重量平均分子量10万〜50万のポリ乳酸(A成分)と塩基性酸化物(B成分)とを溶融混練することからなる請求項1記載の組成物の製造方法。
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