JP2008242444A - 液晶配向剤および液晶表示素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】液晶配向剤は、(a)2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物に代表される特定の化合物を含むテトラカルボン酸二無水物と1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−オクタデシルスクシンイミドに代表される特定の化合物を含むジアミンとの反応によって得られる重合体および/またはそのイミド化重合体、(b)2−ピロリドン、N−メチルコハク酸イミドおよびN−メチルグルタル酸イミドからなる群より選択される少なくとも1種、ならびに溶媒を含有し、固形分濃度が1〜10重量%であり、粘度が5〜12mPa・sであり、そして水分含有量が0.01〜0.5重量%である。
液晶表示素子は、上記液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する。
【選択図】なし
Description
これらのほか、透明導電膜上に突起を形成して液晶の配向方向を制御する、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)方式と呼ばれる垂直配向型液晶表示素子が提案されている(特許文献1および非特許文献1参照。)。MVA方式の液晶表示素子は、視野角、コントラストなどに優れ、液晶配向膜の形成においてラビング処理を行わなくてよいなど、製造工程の面でも優れている。
上記TN、STNおよびMVA方式に好適な液晶配向膜としては、液晶表示素子の残像消去時間が短いなどの電気特性が要求されている。さらに、それら液晶配向膜の形成に用いられる配向剤としては、インクジェット印刷またはオフセット印刷において優れた印刷性を有することが要求される。
(a)下記式(1)および(2)
のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むジアミンとの反応によって得られる重合体および/またはそのイミド化重合体、
(b)2−ピロリドン、N−メチルコハク酸イミドおよびN−メチルグルタル酸イミドよりなる群から選択される少なくとも1種、ならびに
溶媒を含有し、
固形分濃度が1〜10重量%であり、粘度が5〜12mPa・sであり、そして水分含有量が0.01〜0.5重量%である液晶配向剤によって達成される。
本発明によれば、本発明の上記目的は第2に、上記の液晶配向剤から得られた液晶配向膜を具備する液晶表示素子によって達成される。
本発明の液晶配向剤は、(a)成分として、上記式(1)および(2)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むテトラカルボン酸二無水物と、上記式(3)〜(6)のぞれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むジアミンとの反応によって得られる重合体(以下、「特定ポリアミック酸」という。)および/またはそのイミド化重合体(以下、これらをまとめて「(a)重合体」という)を含有する。以下、本発明の液晶配向剤に含有される(a)重合体を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物およびジアミンについて説明する。
特定ポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物は、上記式(1)で表される2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および上記式(2)で表される5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「特定テトラカルボン酸二無水物」という。)を含有してなる。
特定ポリアミック酸の合成に際しては、テトラカルボン酸二無水物として、上記特定テトラカルボン酸二無水物のみを使用してもよく、あるいは特定テトラカルボン酸二無水物と他のテトラカルボン酸二無水物とを併用してもよい。ここで使用できる他のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂環式テトラカルボン酸二無水物(ただし、特定テトラカルボン酸二無水物を除く。)、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
で表される化合物などを挙げることができる。
上記脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アンヒドロトリメリテート)、下記式(7)〜(10)
これらの他のテトラカルボン酸二無水物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
上記他のテトラカルボン酸二無水物のうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物としては1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボニル−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−ジ無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、上記式(I)で表される化合物のうち下記式(11)〜(13)
他のテトラカルボン酸二無水物のうち、好ましい脂肪族テトラカルボン酸二無水物または芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物または1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
他のテトラカルボン酸二無水物としては、脂環式テトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。
特定ポリアミック酸の合成に際して特定テトラカルボン酸二無水物と他のテトラカルボン酸二無水物とを併用する場合、特定テトラカルボン酸二無水物の使用割合が全テトラカルボン酸二無水物に対して50モル%以上であることが好ましい。
特定ポリアミック酸の合成に用いられるジアミンは、上記式(3)〜(6)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「特定ジアミン」という。)を含んでなる。
上記式(3)〜(6)において、R1〜R4で表される炭素数1〜40の線状のアルキル基としては、例えばn−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基など;
分枝状アルキル基としては、例えば1−メチルヘキシル基、1−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、1−エチルオクチル基、2−エチルオクチル基、3−エチルオクチル基、1,2−ジメチルヘキシル基、1,2−ジエチルヘキシル基、1,2−ジメチルオクチル基、1,2−ジエチルオクチル基、1−メチルデシル基、1−エチルデシル基、2−メチルデシル基、2−エチルデシル基など;
環状のアルキル基としては、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロデカン、ノルボルネン、ビシクロオクタン、ビシクロウンデカン、アダマンタンなどの環状アルカンから水素原子を1個除去して得られる基、ステロイド骨格を有する環状アルキル基を、それぞれ挙げることができる。上記ステロイド骨格を有する環状アルキル基としては、コレスタノールなどのステロイド化合物から水酸基を除去して得られる基を挙げることができる。
R1〜R4で表される炭素数4〜40の線状、分枝状もしくは環状のアルケニル基としては、上記で例示したアルキル基の有する炭素−炭素結合のうちの1つ以上が二重結合となった基を挙げることができる。このうち、ステロイド骨格を有する環状のアルケニル基としては、例えばコレステロール、ラノステロール、デスモステロールなどのステロイド化合物から水酸基を除去して得られる基などを挙げることができる。
特定ジアミンとしては、上記式(3)〜(6)における基R1〜R4がステロイド骨格を有する環状アルキル基または環状アルケニル基であるジアミン、あるいは、
上記式(3)で表され、且つR1が炭素数1〜20の線状、分枝状もしくは環状のアルキル基または炭素数4〜20の線状、分枝状もしくは環状のアルケニル基であるジアミンが好ましい。
特定ポリアミック酸の合成に際して使用されるジアミンとしては、上記特定ジアミンのみを使用してもよく、あるいは特定ジアミンと他のジアミンとを併用してもよい。ここで使用できる他のジアミンとしては、例えば芳香族ジアミン、脂肪族または脂環式ジアミン、分子内に2つの1級アミノ基および該1級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。
上記ジアミノオルガノシロキサンとしては、例えば下記式(15)
で表される化合物などを、それぞれ挙げることができる。
これら他のジアミンは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
で表される化合物および下記式(Q−2)
で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のジアミンを使用してもよい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
上記式(Q−1)におけるR10および上記式(Q−2)におけるR11で表される炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価または2価の有機基としては、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロデカンなどのシクロアルカン由来の脂環式骨格を有する基;コレステロール、コレスタノールなどのステロイド骨格を有する基;ノルボルネン、アダマンタンなどの有橋脂環式骨格を有する基などが挙げられる。これらの中で、特に好ましくはステロイド骨格を有する基である。上記脂環式骨格を有する有機基は、その有する水素原子の一部または全部がハロゲン原子、好ましくはフッ素原子や、フルオロアルキル基、好ましくはトリフルオロメチル基で置換されていてもよい。
上記式(Q−1)におけるR10で表される炭素数6〜20のフッ素原子を有する基としては、例えば、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などの炭素数6〜20の直鎖状アルキル基;シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの炭素数6〜20の脂環式炭化水素基;フェニル基、ビフェニル基などの炭素数6〜20の芳香族炭化水素基などの有機基における水素原子の一部または全部を、フッ素原子またはトリフルオロメチル基などのフルオロアルキル基で置換した基が挙げられる。
上記式(Q−1)におけるX1および上記式(Q−2)におけるX2は、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−S−またはアリーレン基であるが、アリーレン基としては、例えばフェニレン基、トリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。X1およびX2としては、特に−O−、−COO−、−OCO−で表される基が好ましい。
これらのうち、特に好ましいものとしては、上記式(16)、(17)、(22)、(23)または(26)で表される化合物が挙げられる。
特定ポリアミック酸の合成に際して特定ジアミンと他のジアミンとを併用する場合、特定ジアミンの使用割合が全ジアミンに対して1モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは5モル%以上である。
次に、本発明の液晶配向剤が含有することのできる特定ポリアミック酸の合成方法について説明する。
特定ポリアミック酸は、上記特定テトラカルボン酸二無水物および場合により他のテトラカルボン酸二無水物と、特定ジアミンおよび場合により他のジアミンとを、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度条件下で、好ましくは0.5〜72時間反応させることにより合成することができる。
特定ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.5〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.2当量となる割合である。
ここで、有機溶媒としては、合成される特定ポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えば1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ヘキシルオキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドなどのアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を例示することができる。また、有機溶媒の使用量(α)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量(β)の反応溶液の全量(α+β)に対する割合(モノマー濃度)が0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
有機溶媒および貧溶媒を併用する場合、貧溶媒の使用割合は、有機溶媒および貧溶媒の合計量に対して好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下であり、さらに10重量%以下であることが好ましい。
以上のようにして、特定ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれる特定ポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離した特定ポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。特定ポリアミック酸の単離は、上記反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥する方法、あるいは、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法により行うことができる。また、この特定ポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、次いで貧溶媒で析出させる方法、あるいは、エバポレーターで減圧留去する工程を1回または数回行う方法により、特定ポリアミック酸を精製することができる。
次に、本発明の液晶配向剤が含有することのできる特定ポリアミック酸のイミド化重合体の合成方法について説明する。
特定ポリアミック酸のイミド化重合体は、上記特定ポリアミック酸の有するアミック酸構造のうちの一部または全部を脱水閉環することにより合成することができる。本発明に用いることのできるイミド化重合体は、特定ポリアミック酸のアミック酸構造のすべてが脱水閉環された完全イミド化体であってもよく、あるいはアミック酸構造の数とイミド環の数との合計に対するイミド環の数の割合(以下、「イミド化率」ともいう)が100%未満の、部分的に脱水閉環されたものであってもよい。特定ポリアミック酸のイミド化重合体のイミド化率は、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上である。イミド化率が40モル%以上のイミド化重合体を用いることによって、得られる液晶配向膜残の像消去時間をより短くすることが可能となる。このイミド化率は、重合体の1H−NMRから下記数式(1)により求めることができる。
イミド化率(%)=(1−A1/A2×α)×100 (1)
(数式(1)中、A1はNH基のプロトンに由来する化学シフト10ppm付近のピーク面積であり、A2は芳香族プロトンに由来する化学シフト7〜8ppm付近のピーク面積であり、αはイミド化反応前のポリアミック酸におけるNH基のプロトン1個に対する芳香族プロトンの個数の割合である。)
上記(i)の特定ポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるイミド化重合体の分子量が低下することがある。反応時間は、好ましくは1〜120時間であり、より好ましくは2〜30時間である。
一方、上記(ii)の特定ポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、所望するイミド化率によるが、特定ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01〜20モルとするのが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとするのが好ましい。イミド化率は上記の脱水剤、脱水閉環剤の使用量が多いほど高くすることができる。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、特定ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは0.5〜30時間であり、より好ましくは2〜10時間である
本発明で用いられる(a)重合体、すなわち特定ポリアミック酸またはそのイミド化重合体は、分子量が調節された末端修飾型のものであってもよい。末端修飾型の重合体を用いることにより、本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性などを改善することができる。このような末端修飾型の重合体は、特定ポリアミック酸を合成する際に、酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などの分子量調節剤を反応系に添加することにより合成することができる。ここで、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを挙げることができる。モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができる。モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを挙げることができる。
分子量調節剤は、特定ポリアミック酸を合成する際に使用するテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計100重量部に対して好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下の範囲で用いられる。
以上のようにして得られる特定ポリアミック酸またはそのイミド化重合体は、濃度10重量%の溶液としたときに、20〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、30〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。
上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
本発明の液晶配向剤においては、本発明の効果を損なわない限り、上記(a)重合体の一部をその他のポリアミック酸およびそのイミド化重合体からなる群から選択される少なくとも一種(以下、「他の重合体」という。)で置き換えることができる。
上記他の重合体は、特定ポリアミック酸以外のポリアミック酸またはそのイミド化重合体であれば特に限定されるものではないが、上述の他のテトラカルボン酸二無水物と他のジアミンとの反応によって得られる重合体またはそのイミド化重合体であることが好ましい。ここで使用される他のテトラカルボン酸二無水物としては、脂環族テトラカルボン酸二無水物または芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、特に1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物またはピロメリット酸二無水物が好ましい。ここで使用される他のジアミンとしては、芳香族ジアミンが好ましく、特に4,4−ジアミノジフェニルメタンが好ましい。
かかる他の重合体の合成は、特定テトラカルボン酸二無水物および特定ジアミンの代わりに他のテトラカルボン酸二無水物および他のジアミンを用いて、特定ポリアミック酸およびそのイミド化重合体の合成と同様にして行うことができる。
本発明の液晶配向剤が他の重合体を含有するものである場合、他の重合体の使用割合としては、特定ポリアミック酸およびそのイミド化重合体ならびに他の重合体の合計量に対して好ましくは80重量%以下であり、より好ましくは60重量%以下である。
本発明の液晶配向剤は、(b)成分として、2−ピロリドン、N−メチルコハク酸イミドおよびN−メチルグルタル酸イミドよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。(b)成分は、本発明の液晶配向剤に良好な印刷性を付与し、得られる液晶配向膜の電気特性を向上するために添加される。
本発明の液晶配向剤における(b)成分の含有量は、液晶配向剤の総重量に対して好ましくは0.001〜1重量%であり、より好ましくは0.001〜0.1重量%である。
本発明の液晶配向剤は、上記の(a)成分および(b)成分ならびに後述する溶媒を必須成分として含有するが、本発明の効果を損なわない範囲においてその他の添加剤を含有していてもよい。かかるその他の添加剤としては、例えば(c)官能性シラン化合物、(d)エポキシ化合物などを挙げることができる。
上記(c)官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
これら(c)官能性シラン化合物や(d)エポキシ化合物の配合割合は、全重合体100重量部に対して、それぞれ好ましくは40重量部以下、より好ましくは0.1〜30重量部である。
本発明の液晶配向剤が含有する溶媒としては、有機溶媒が好ましく、特定ポリアミック酸の合成反応に用いられるものとして例示した溶媒を挙げることができる。また、特定ポリアミック酸の合成反応の際に併用することができるものとして例示した貧溶媒も適宜選択して併用することができる。
本発明の液晶配向剤に使用される特に好ましい有機溶媒としては、例えば1−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジメチルカルビトール、ジエチルカルビトール、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ヘキシルオキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、トリエチレングリコールジメチルエーテル、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを挙げることができる。
これら溶媒は1種のみを用いることができ、または2種以上を混合して用いることができる。
本発明の液晶配向剤は、その含有する溶媒の一部にメチルカルビトール、ジメチルカルビトール、エチルカルビトール、ジエチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクタムおよびエチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)からなる群から選択される少なくとも1種(以下、「特定溶媒」という。)を含有することが、良好な印刷性を示すことから特に好ましい。特定溶媒としては、メチルカルビトール、ジメチルカルビトール、エチルカルビトール、ジエチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブアセテートおよびトリエチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
本発明の液晶配向剤が含有する溶媒のうち上記特定溶媒の占める割合としては、全溶媒中の1重量%以上であることが好ましく、5〜50重量%であることがより好ましい。
本発明の液晶配向剤は、上記(a)重合体、(b)成分および溶媒を必須成分とし、任意的にその他の添加剤を含有するが、好ましくは液晶配向剤のうちの溶媒以外の成分が溶媒に溶解して含有された溶液状態として調製される。
本発明の液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤中の溶媒以外の成分の合計重量を液晶配向剤の総重量で除した値)は、粘性、揮発性などを考慮して、1〜10重量%の範囲で選択される。本発明の液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができず、一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができず、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる場合があり、好ましくない。本発明の液晶配向剤は、その粘度が5〜12mPa・sである。
また、本発明の液晶配向剤は、水分含有量が0.01〜0.5重量%である。この範囲の水分含有量とすることにより、液晶配向剤の印刷性を極めて良好なものとすることができる。通常の知識および技術を有する当業者が水分含有量以外に関する本明細書の記載にしたがって液晶配向剤を調製した場合、液晶配向剤中の水分含有量は上記範囲を下回るものとなるのが通常である。したがって、液晶配向剤中の水分含有量を上記範囲内とするには、液晶配向剤の調製のいずれかの段階において液晶配向剤に適量の水を添加することにより実現することができる。
さらに、本発明の液晶配向剤は、その表面張力が25〜40dyn/cmの範囲内にあることが好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは0℃〜200℃であり、より好ましくは20℃〜60℃である。
本発明の液晶表示素子は、上記の如くして得られた本発明の液晶配向剤から得られた液晶配向膜を具備することを特徴とする。
本発明の液晶表示素子は、例えば次の工程(1)〜(3)により製造することができる。
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤をオフセット印刷法、スピンコート法、インクジェット印刷法などの適宜の塗布方法により塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。本発明の液晶配向剤に適用する塗布方法としては、インクジェット印刷法が好ましい。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In2O3−SnO2)からなるITO膜などを用いることができ、これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチングによる方法や透明導電膜形成の際に予めマスクを用いる方法などが用いられる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板の該表面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布しておいてもよい。液晶配向剤塗布後の加熱温度は好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。加熱時間は好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。なお、本発明の液晶配向剤は塗布後に有機溶媒を除去することによって液晶配向膜となる塗膜を形成するが、本発明の液晶配向剤がアミック酸構造を有する重合体を含有するものである場合には、さらに加熱することによってアミック酸構造の脱水閉環を進行させ、よりイミド化された塗膜とすることもできる。
形成される塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
以下の実施例、比較例において調製した液晶配向剤の評価は、以下の方法によった。
[印刷性評価]
各実施例または比較例で調製した液晶配向剤のそれぞれを、−15℃の冷凍庫で7日間保管した後、室温まで昇温し、JET−CM連続式インクジェットプリンター(紀州技研工業(株)製)を用いて、厚さ1mmのガラス基板の片面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上へ溶媒除去後の膜厚が60nmとなる液量で10分間連続して塗布を実施した。10分間連続塗布した後、さらに塗布を継続して得られた配向膜塗布基板をホットプレート上80℃で1分間プレベークを実施し、その後クリーンオーブン内、窒素雰囲気下200℃で60分間加熱した後、液晶配向膜の周辺部、中央部を20倍の顕微鏡にて観察した。塗布ムラのない場合を「優良」、ピンホールや塗布ムラ(膜厚ムラ、スジムラ等)がわずかに観測された場合を「良」、ピンホールや塗布ムラが顕著に観測された場合は「不良」と判断した。
片面に厚さ約1mmのパターニングされたITO電極が形成されたガラス基板を用い、また、液晶配向剤として各実施例または比較例で得られた液晶配向剤をそのまま使用したほかは上記[印刷性評価]と同様にして膜厚約0.06μmの塗膜を有するガラス基板を一対(2枚)作成した。
次に、一対の透明電極/透明基板の上記液晶配向膜塗布基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、液晶注入口を残して直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間に、ネマティック型液晶(ネガ型、メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止し、基板の外側の両面に偏光板を張り合わせ、液晶表示素子を作製した。
この液晶表示素子に対して室温において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、16.7ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から16.7ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製VHR−1を使用した。
図1に示したようなパターンを有するITO膜を片面に有するガラス基板を使用したほかは上記[電圧保持率の評価]におけるのと同様にして液晶表示素子を作製した。
この液晶表示素子につき、電極Aに直流電圧6.0V、電極Bに直流電圧0.5Vを室温にて24時間印加した。電圧除去後、電極AおよびBにそれぞれ直流電圧0.1〜5.0Vを0.1V刻みに印加し、それぞれの電圧における電極AおよびBの輝度差により焼き付き特性を判断した。すなわち、輝度差が大きい場合に焼き付き特性が悪いと判断した。焼き付きが全く見られないもの(両電極間に輝度差が観察されなかったもの)は「○」、焼きつきが弱く発生しているもの(両電極間の輝度差が中程度のもの)は「△」とした。
<特定ジアミンの合成例>
合成例A−1(1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−オクタデシルスクシンイミドの合成)
窒素ガスで置換した300mL三口フラスコ中に3,5−ジニトロアニリン 12.81g(0.07mol)および酢酸70mLを加え、窒素ガスを流通しながら攪拌して固形物を溶解させた。ここに、オクタデシルコハク酸無水物24.64g(0.07mol)を加え窒素下で20h還流して反応させた。反応液を室温まで冷却した後、メタノール70mLを加えて一晩静置した。析出した固形分を濾別し、メタノールで洗浄した後に乾燥し、1−(3,5−ジニトロフェニル)−3−オクタデシルスクシンイミド30g(収率83%)を得た。
次に、窒素ガスで置換した500mLフラスコに、上記で合成した1−(3,5−ジニトロフェニル)−3−オクタデシルスクシンイミド30g(0.058mol)、エタノール100mL、テトラヒドロフラン(THF)100mLおよび還元触媒パラジウム炭素(Pd/C)25gを加えて70℃で1時間攪拌した。ここにヒドラジン一水和物42.5mL(43.75g)を加え6時間加熱還流し反応させた。Pd/Cを濾別し、濾液をロータリーエバポレーターにて濃縮した。得られた粗生成物をN−メチル−2−ピロリドン中で加熱溶解した後冷却して再結晶し、目的生成物である1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−オクタデシルスクシンイミド14.6g(0.032mol、収率55%)を得た。
オクタデシルコハク酸無水物24.64g(0.07mol)の代わりに、ドデシルコハク酸無水物18.76g(0.07mol)を用いたほかは、合成例A−1と同様にして、1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−ドデシルスクシンイミド11g(0.030mol、収率51%)を得た。
窒素置換した2,000mL三口フラスコにジメチルマレイン酸無水物31.5g(0.25mol)、N−ブロモスクシンイミド89.0g(0.5mol)、過酸化ベンゾイル1.0g(4.15mmol)および四塩化炭素1,500mLを加え、5h加熱還流した。反応液を室温まで冷却し、室温で一晩静置した後、濾過した。濾液を水で洗浄した後、有機層をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた油状の粗生成物を高真空下で蒸留し(120〜125℃/2mmHg)、中間体である3−ブロモメチル−4−メチルマレイン酸無水物20.0g(0.1mol、収率39%)を得た。
次に、アルゴンガスで置換した2,000mL三口フラスコに、上記で得られた3−ブロモメチル−4−メチルマレイン酸無水物16.4g(80mmol)、ヨウ化銅1.52g(8.0mmol)、ジエチルエーテル400mLおよびHMPA(ヘキサメチルリン酸トリアミド)160mLを加えた後、アルゴンガス流通下−5〜0℃に冷却した。この混合液を攪拌しながら、別途準備したヘキサデシルマグネシウムブロマイド400mmolをジエチルエーテル400mLに溶解した溶液を、約20分かけて滴下した。混合液を室温に戻し、さらに8h攪拌した。その後、混合液をジエチルエーテル600mLで希釈し、次いで4N−硫酸600mLを加えて溶液を酸性にした。分離した水層をジエチルエーテル600mLにてさらに洗浄し、有機層を合わせた。有機層を水で洗浄して硫酸ナトリウムで脱水した後、ロータリーエバポレーターで溶液を濃縮して油状の粗生成物を得た。この粗生成物を、展開溶剤として石油エーテル/酢酸エチル(19:1)混合溶液を用いシリカゲルカラムにて精製し、3−ヘプタデシル−4−メチル無水マレイン酸14.0g(0.04mol 収率50%)を得た。
次に、窒素ガス置換された300mLフラスコに1−(3,5−ジニトロフェニル)−3−ヘプタデシル−4−メチルマレイミド13.4g(0.026mol)、エタノール50mL、THF50mLおよび還元触媒Pd/C 12.5gを加え70℃で1時間攪拌した。次いでヒドラジン一水和物19mL(19.6g)を加え6時間加熱還流し反応させた。Pd/Cを濾別し、濾液をロータリーエバポレーターにて濃縮した。得られた粗生成物をN−メチル−2−ピロリドンで加熱溶解して冷却することにより再結晶し、目的生成物である1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−ヘプタデシル−4−メチルマレイミド6.6g(0.015mol 収率56%)を得た。
窒素置換した300mL三口フラスコに3,5−ジニトロアニリン12.81g(0.07mol)および酢酸70mLを加えた後、窒素ガスを流通しながら攪拌して固形物を溶解させた。ここに、合成例A−3の中間体と同様にして合成した3−(ブロモメチル)−4−メチルマレイン酸無水物14.35g(0.07mol)を加え窒素下で20h還流し反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後、メタノール70mLを加えて一晩静置した。固形分を濾別し、メタノールで洗浄した後乾燥し、1−(3,5−ジニトロフェニル)−3−ブロモメチル−4−メチルマレイミド18.9g(0.051mol 収率73%)を得た。
次に、窒素置換した500mL三口フラスコに1−(3,5−ジニトロフェニル)−3−ブロモメチル−4−メチルマレイミド18.1g(0.049mol)、1−ヘキサデカノールナトリウム塩12.9g(0.049mol)およびジメチルスルホキシド100mLを加えた後、100℃で10h攪拌し反応させた。反応液を室温まで冷却した後、メタノール70mLを加えて一晩静置した。固形分を濾別し、メタノールで洗浄した後乾燥し、1−(3,5−ジニトロフェニル)−3−ヘキサデカノキシメチル−4−メチルマレイミド20.8g(0.039mol 収率80%)を得た。
次に、窒素ガス置換した300mLフラスコに1−(3,5−ジニトロフェニル)−3−ヘキサデカノキシメチル−4−メチルマレイミド13.8g(0.026mol)、エタノール50mL、THF50mLおよび還元触媒Pd/C 12.5gを加え70℃で1時間攪拌した。その後ヒドラジン一水和物19mL(19.6g)を加え6時間加熱還流し反応させた。Pd/Cを濾別し、濾液をロータリーエバポレーターにて濃縮した。得られた粗生成物をN−メチル−2−ピロリドンで加熱溶解して冷却することにより再結晶し、目的生成物である1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−ヘキサデカノキシメチル−4−メチルマレイミド8.2g(0.018mol 収率67%)を得た。
合成例P−1〜P−8
N−メチルピロリドンに、表1に示す組成でジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物をこの順で加えてモノマー濃度20重量%の溶液とし、60℃で4時間反応させてポリアミック酸(A−1)〜(A−8)を含有する溶液を得た。得られた各ポリアミック酸溶液に、溶液中のアミック酸単位の総量に対して3.0倍モルのピリジンおよび3.0倍モルの無水酢酸をそれぞれ加えた後、110℃に加熱して4時間脱水閉環反応を行った。得られた溶液をジエチルエーテルで再沈殿して、回収、減圧乾燥することにより、イミド化重合体である(B−1)〜(B−8)を得た。これらイミド化重合体のイミド化率を表1に示した。
合成例P−9およびP−10
ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物として表1に記載のものを使用したほかは、合成例P−1〜P−8と同様にしてポリアミック酸(A−9)および(A−10)を得た。なお、合成例P−9およびP−10においては、ポリアミック酸の脱水閉環反応は行わなかった。
<ジアミン>
特定ジアミンA:1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−オクタデシルスクシンイミド
特定ジアミンB:1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−ドデシルスクシンイミド
特定ジアミンC:1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−ヘプタデシル−4−メチルマレイミド
特定ジアミンD:1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−ヘキサデカノキシメチル−4−メチルマレイミド
ジアミン1:4,4−ジアミノジフェニルメタン
<テトラカルボン酸二無水物>
T−1:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
T−2:5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物
T−3:ピロメリット酸二無水物
T−4:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
合成例b−1(N−メチルグルタル酸イミドの合成例)
メチルグルタル酸イミドを、下記反応式
シリカゲル乾燥管を付けた容量200mLの三口フラスコに、グルタル酸イミド1.0g(8.84mmol)、ヨウ化メチル1.51g(10.6mmol)、炭酸カリウム1.47g(10.6mmol)および脱水アセトン20mLを加えて加熱還流を行った。16時間後室温まで冷却し、ヨウ化メチル0.6g(4.42mmol)および炭酸カリウム0.61g(4.42mmol)を追加した後、さらに7.5時間加熱還流を行った。反応液を0℃まで冷却し、炭酸カリウムを濾別して除去した後に、減圧乾燥することでN−メチルグルタル酸イミド1.10g(8.65mmol、収率98%)を得た。
合成例P−1で得たイミド化重合体B−1および合成例P−9で得たポリアミック酸A−9(重量比50:50)を、γ―ブチロラクトン/N−メチル−2−ピロリドン/ブチルセロソルブ混合溶液(重量比40:30:30)に溶解して、固形分濃度3.5重量%の溶液を調製した。これら溶液にそれぞれ(b)成分として2−ピロリドン(市販品)を、全液晶配向剤の重量に対して0.005重量%となるように加え、さらに水分含有量が全液晶配向剤の重量に対して0.3重量%となるように加えた。続いて孔径0.2μmのフィルターを用いて濾過し、本発明の液晶配向剤を調製した。得られた液晶配向剤の粘度を表2に示した。
これらの液晶配向剤を用いて上述した方法に従って、印刷性、電圧保持率および焼き付きの評価を行った。結果を表5に示した。
(a)成分(重合体)および(b)成分の種類ならびに得られた液晶配向剤の固形分濃度および水分含有量を表2に記載のとおりとしたほかは実施例1と同様にして液晶配向剤をそれぞれ調製した。各液晶配向剤の粘度を表2に示した。
また、これらの液晶配向剤を用いて上述した方法に従って行った評価の結果を表5に示した。
なお、(b)成分のうちN−メチルグルタル酸イミドは、上記合成例b−1で合成したものを使用した。
溶媒としてγ―ブチロラクトン/N−メチル−2−ピロリドン/ブチルセロソルブ/表3に示した特定溶媒の混合溶媒(重量比40/30/15/15)を用いたほかは実施例2と同様にして、液晶配向剤をそれぞれ調製した。各液晶配向剤の粘度を表3に示した。
また、これらの液晶配向剤を用いて上述した方法に従って行った評価の結果を表5に示した。
(a)成分(重合体)の種類ならびに得られた液晶配向剤の固形分濃度および水分含有量を表4に記載のとおりとし、(b)成分を使用しなかったほかは実施例1と同様にして、液晶配向剤をそれぞれ調製した。各液晶配向剤の粘度を表4に示した。
また、これらの配向剤を用いて上述した方法に従って行った評価の結果を表5に示した。
Claims (3)
- (a)下記式(1)および(2)
のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むジアミンとの反応によって得られる重合体および/またはそのイミド化重合体、
(b)2−ピロリドン、N−メチルコハク酸イミドおよびN−メチルグルタル酸イミドよりなる群から選択される少なくとも1種、ならびに
溶媒を含有し、
固形分濃度が1〜10重量%であり、粘度が5〜12mPa・sであり、そして水分含有量が0.01〜0.5重量%であることを特徴とする、液晶配向剤。 - 溶媒が、メチルカルビトール、ジメチルカルビトール、エチルカルビトール、ジエチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブアセテートおよびトリエチレングリコールジメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
- 請求項1または2に記載の液晶配向剤から得られた液晶配向膜を具備することを特徴とする、液晶表示素子。
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