JP2008240021A - ラインパイプ用ベンド管の製造方法およびラインパイプ用ベンド管 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.009%以下、Mn:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Ti:0.01〜0.2%、V:0.01〜0.10%、Al:0.001〜0.1%、N:0.1%以下、Ni:4.0〜8.0%、Cr:9.0〜15.0%、Mo:1.5〜7.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなる鋼管を準備する。準備された鋼管を曲げ加工してベンド管とする。ベンド管を950℃未満の焼入れ温度で焼入れする。焼入れされたベント管を焼戻しする。
【選択図】なし
Description
ラインパイプ用ベンド管はマルテンサイト系ステンレス鋼からなり、その化学組成は以下のとおりである。以降、元素に関する%は質量%を意味する。
炭素(C)は、溶接施工時に溶接熱影響部(HAZ)の硬度を上昇し、鋼の靭性及び耐食性を低下する。したがって、C含有量はなるべく少ない方が好ましい。そこで、C含有量は0.009%とする。
マンガン(Mn)が鋼の強度を向上する。しかしながら、Mnを過剰に含有すれば、靭性が低下する。したがって、Mn含有量は1.0%以下である。好ましいMn含有量は0.2%以上である。
Si:1.0%以下
珪素(Si)は、鋼を脱酸する。しかしながら、Si含有量が1.0%を超えると、鋼の靭性が低下する。したがって、Si含有量は1.0%以下である。好ましいSi含有量は0.05%以上である。
P:0.04%以下
燐(P)は不純物である。Pは、鋼の靭性を低下する。したがって、P含有量はなるべく少ない方が好ましい。そこで、P含有量は0.04%以下とする。
硫黄(S)は不純物である。Sは、鋼の熱間加工性を低下する。したがって、S含有量はなるべく少ない方が好ましい。そこで、S含有量は0.005%以下とする。
V:0.01〜0.10%
チタン(Ti)及びバナジウム(V)は、鋼中のNやCと炭窒化物を形成することで、溶接施工時の溶接熱影響部の硬度上昇を抑制する。しかしながら、これらの元素を過剰に含有すれば、その効果が飽和する。さらに、Ni等の元素と化合物を形成して、硬度を上昇する。したがって、Ti含有量は0.01〜0.2%とし、V含有量は0.01〜0.10%とする。好ましいTi含有量は0.05〜0.15%であり、好ましいV含有量は、0.02〜0.10%である。
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。しかしながら、Alを過剰に含有すれば、鋼中の介在物が増加し、鋼の耐食性が低下する。したがって、Al含有量は0.001〜0.1%である。
窒素(N)は不純物である。Nは硫化物応力腐食割れ感受性を高める。したがって、N含有量は少ない方が好ましい。そこで、N含有量は0.1%以下とする。好ましいN含有量は、0.02%以下である。
ニッケル(Ni)は、鋼の強度、耐食性及び熱間加工性を向上する。しかしながら、Niを過剰に含有すれば、その効果は飽和する。したがって、Ni含有量は4.0〜8.0%である。
クロム(Cr)は耐食性被膜を形成し、鋼の耐食性を向上する。しかしながら、Crを過剰に含有すれば、Moとの相乗効果によりフェライトが生成され、強度が低下する。したがって、Cr含有量は9.0〜15%である。
モリブデン(Mo)は、硫化水素に対する耐食性を向上する。特に、溶接熱影響部の耐食性を改善する。しかしながら、Moを過剰に含有すれば、Crとの相乗効果によりフェライトが生成され、強度が低下する。したがって、Mo含有量は1.5〜7.0%である。好ましいMo含有量は2.0〜7.0%である。
ベンド管の製造方法の一例を以下に説明する。ベンド管の製造方法は、直線状のラインパイプ用鋼管を準備する工程(鋼管準備工程)と、直線状のラインパイプ用鋼管を曲げ加工する工程(曲げ加工工程)と、曲げ加工された鋼管(ベンド管)を焼入れする工程(焼入れ工程)と、焼入れされたベンド管を焼戻しする工程(焼戻し工程)とを備える。以下、それぞれの工程を説明する。
上記化学組成のラインパイプ用鋼管を準備する。ラインパイプ用鋼管は、たとえば、以下の方法により製造される。上記化学組成の鋼を溶製し、連続鋳造法によりビレットにする。製造されたビレットを穿孔圧延してラインパイプ用鋼管にする。上述の方法では、ラインパイプ用鋼管として継目無鋼管を製造したが、サブマージドアーク溶接(SAW)、メタルイナートガス溶接(MIG)及びタングステンイナートガス溶接(TIG)等を含む種々の溶接法により溶接された溶接管を製造してもよい。
準備された直線状のラインパイプ用鋼管を曲げ加工して、ベンド管にする。曲げ加工の一例として、高周波加熱による曲げ加工について説明する。
直線状のラインパイプ用鋼管を高周波コイル内に挿入する。高周波コイルに挿入されたラインパイプ用鋼管の一端を、水平に回転するアーム(ベンディングアーム)に挟む。その後、ラインパイプ用鋼管を、鋼管の他端から管軸方向に徐々に押し込む。鋼管が押し込まれることにより、ベンディングアームが回転し、これにより、鋼管は高周波コイルで部分的に加熱されながら徐々に曲げ加工される。曲げ加工時、鋼管のうち、高周波コイルにより加熱された部分の温度範囲は930〜970℃である。
上述の説明では、高周波加熱による曲げ加工を説明したが、他の熱間曲げ加工によりベンド管を製造してもよい。
焼入れ工程は、本発明で最も重要な工程である。本発明では、焼入れ温度を950℃未満とする。焼入れ温度を950℃以上とすれば、焼入れ焼戻し後のベンド管の耐SSC性が低下し、SSCが発生するためである。その理由は定かではないが、上記化学組成のベンド管を950℃以上の焼入れ温度で均熱した場合、鋼中に2次生成物が発生し、この2次生成物が耐SSC性を低下するものと推定される。生成される2次生成物は定かではないが、Fe2Mo等のラーベス相化合物が考えられる。以上より、焼入れ温度は950℃未満とする。好ましい焼入れ温度は945℃以下であり、さらに好ましい焼入れ温度は940℃以下である。
上記焼入れ温度で均熱されたベンド管は、周知の冷却速度で室温まで冷却される。冷却方法は、水冷であっても、ミスト冷却であってもよい。
ベンド管を焼入れ後、周知の焼戻しを実施する。焼戻し温度は、たとえば、600℃〜700℃であり、好ましい均熱時間は、45〜60分である。
以上の製造工程により製造されたラインパイプ用ベンド管は、優れた耐SSC性を有する。なお、上述の条件で焼入れ焼戻しされたベンド管の降伏強度は550MPa〜725MPaとなる。
試験番号1〜4のベンド管の各々から、引張試験片を採取し、引張試験を実施した。具体的には、各ベンド管から平行部の外径が8.9mmである丸棒試験片を採取した。採取された丸棒試験片に対して、常温で引張試験を実施した。引張試験により得られた降伏強度(MPa)を表1中の「YS」欄に、引張強度(MPa)を表2中の「TS」欄にそれぞれ示す。引張試験の結果、試験番号1〜4のベンド管の降伏強度は、いずれも550MPa〜725MPaの範囲内であった。
各ベンド管から、幅10mm、厚さ2mm及び長さ75mmの平滑4点曲げ試験片を採取した。採取された4点曲げ試験片を用いて、硫化水素を含む試験液中で4点曲げ試験を実施した。具体的には、試験液として、5質量%のNaClと0.5質量%の氷酢酸(CH3COOH)とを含む水溶液(NACE−TM0177で規定されるSolution A)を準備した。試験中の4点曲げ試験片への付加応力は、歪みゲージ法で90%の実降伏応力とした。また、試験中、分圧0.004(bar)のH2Sガスと分圧0.996(bar)のCO2ガスとで構成される混合ガスを試験液に吹き込んだ。試験温度は、25±1℃、試験時間は720時間とした。
試験後、試験片のSSCの有無を目視で観察した。表2中の「SSC」中の「有り」は、SSCが発生したことを示し、「無し」はSSCが発生しなかったことを示す。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.009%以下、Mn:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Ti:0.01〜0.2%、V:0.01〜0.10%、Al:0.001〜0.1%、N:0.1%以下、Ni:4.0〜8.0%、Cr:9.0〜15.0%、Mo:1.5〜7.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなる鋼管を準備する工程と、
前記鋼管を曲げ加工してベンド管とする工程と、
前記ベンド管を950℃未満の焼入れ温度で焼入れする工程と、
焼入れされたベント管を焼戻しする工程とを備えたことを特徴とするラインパイプ用ベンド管の製造方法。 - 質量%で、C:0.009%以下、Mn:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Ti:0.01〜0.2%、V:0.01〜0.10%、Al:0.001〜0.1%、N:0.1%以下、Ni:4.0〜8.0%、Cr:9.0〜15.0%、Mo:1.5〜7.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、曲げ加工された後、950℃未満の焼入れ温度で焼入れされたことを特徴とするラインパイプ用ベンド管。
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