JP2008239922A - 有機無機複合材料とその製造方法、および光学部品 - Google Patents
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本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、無機微粒子が樹脂マトリックス中に均一に分散され、離型性が良好で、優れた透明性と高い屈折率を有する有機無機複合材料、ならびに、これを用いたレンズ基材等の光学部品を提供することにある。
[1] 下記一般式(1)で表される単位構造を少なくとも一種有する熱可塑性樹脂中に数平均粒子サイズが1〜15nmの無機微粒子が分散していることを特徴とする有機無機複合材料。
[3] 前記熱可塑性樹脂が、
[4] 前記無機微粒子の波長589nmにおける屈折率が1.90〜3.00であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[5] 前記無機微粒子が、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化錫およびチタニアからなる群より選ばれるいずれか一種であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[6] 波長589nmにおける屈折率が1.63以上、かつ、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が80%以上であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
[7] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を含んで構成される光学部品。
[9] 下記一般式(1)で表される単位構造を少なくとも一種有する熱可塑性樹脂中に数平均粒子サイズが1〜15nmの無機微粒子を分散させる工程を含むことを特徴とする有機無機複合材料の製造方法。
[11] 金型を用いて成形することを特徴とする[7]および[8]に記載の光学部品の製造方法。
本発明の有機無機複合材料には、数平均粒子サイズが1〜15nmの無機微粒子を用いる。無機微粒子の数平均粒子サイズは、小さすぎると該微粒子を構成する物質固有の特性が変化する場合があり、逆に大きすぎるとレイリー散乱の影響が顕著となり、有機無機複合材料の透明性が極端に低下する場合がある。従って、本発明における無機微粒子の数平均粒子サイズは1〜15nmにすることが必要であり、好ましくは2〜13nmであり、より好ましくは3〜10nmである。
この方法に用いられる溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、アニソール等が例として挙げられる。これらは、1種類を単独で使用してもよく、また複数種を混合して使用してもよい。
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、一般式(1)で表される単位構造を少なくとも一種有することを特徴とする。一般式(1)で表される単位構造は、熱可塑性樹脂を構成するポリマー中に化学結合を介して結合されていてもよいし、熱可塑性樹脂中に含まれる化合物中に含まれていてもよい。熱可塑性樹脂と無機微粒子との相分離を抑制する観点から好ましいのは、熱可塑性樹脂を構成するポリマー中に化学結合を介して結合されている態様である。ここで、「化学結合」としては、例えば、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合等が挙げられる。
R21およびR22のアルキレン基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。アルキレン基は置換されていてもよく、置換基としてアルキル基、アリール基の他に、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)を挙げることができる。アルキレン基の具体例として、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基を挙げることができる。
一般式(2a)におけるn21およびn22の好ましい範囲は、一般式(1)のnの好ましい範囲と同じである。また、一般式(2a)におけるR23の好ましい範囲は、一般式(2)のR15の好ましい範囲と同じである。
一般式(3)におけるR31〜R34の好ましい範囲は、一般式(1)のR1およびR2の好ましい範囲と同じである。一般式(3)におけるA31およびA32の好ましい範囲は、一般式(1)におけるAの好ましい範囲と同じである。また、一般式(3)におけるm31とm32の好ましい範囲は、一般式(3)のmの好ましい範囲と同じである。さらに、一般式(3)におけるn31とn32の好ましい範囲は、一般式(1)のnの好ましい範囲と同じである。
一般式(3a)におけるR41およびR42の好ましい範囲は、一般式(2a)におけるR21およびR22の好ましい範囲と同じである。一般式(3a)におけるn41およびn42の好ましい範囲は、一般式(1)のnの好ましい範囲と同じである。
0.05〜10質量%であることがより好ましく、0.05〜5質量%であることがさらに好ましい。
本発明の有機無機複合材料は、一般式(1)で表される単位構造を少なくとも一種有する熱可塑性樹脂中に数平均粒子サイズが1〜15nmの無機微粒子が分散していることを特徴とする。本発明の有機無機複合材料の作成方法は特に限定されるものではない。具体的には、熱可塑性樹脂と無機微粒子をそれぞれ独立に合成して両者を混合させる方法、予め合成した無機微粒子の存在下で熱可塑性樹脂を合成する方法、予め合成した熱可塑性樹脂の存在下で無機微粒子を合成する方法、熱可塑性樹脂と無機微粒子の両者を同時に合成する方法等を挙げることができ、これらのいずれの方法で作成してもよい。
無機微粒子を熱可塑性樹脂中に分散して本発明の有機無機複合材料を製造する際に、分散剤を用いて無機微粒子を熱可塑性樹脂中に分散してもよい。分散剤の分子量としては、通常100〜1000程度である。分子量が大きすぎると、有機無機複合材料の屈折率を上げることが難しくなる場合がある。
一般式(4)
X−R
これらの分散剤は、1種類を単独で用いてもよく、また複数種を併用してもよい。
本発明の有機無機複合材料を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度が高い場合、成形が必ずしも容易ではないことがある。このため、成形温度を下げるために、本発明の有機無機複合材料に可塑剤を含有させてもよい。本発明で使用する可塑剤としては、一般式(5)で表される構造を有するものが好ましい。
B1,B2の基としては、具体的には、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖アルキル基や、2−ヘキシルデシル基、メチル分岐オクタデシル基等の分岐アルキル基、またはベンジル基、2−フェニルエチル基等のアリールアルキル基が挙げられる。一般式(6)で表される化合物の具体例としては次に示すものが挙げられ、中でもW−1(花王株式会社製の商品名〔KP−L155〕)が好ましい。ただし、本発明で用いることができる可塑剤はこれらの化合物に限定されない。
本発明における有機無機複合材料の成形法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、キャスト成形等、一般の熱可塑性樹脂材料の成形法を採用することができる。有機無機複合材料の流動性が低いことから、本発明では圧縮成形により成形することが好ましい。
本発明の有機無機複合材料は、高屈折性、低分散性(高いアッベ数)、光線透過性、加工性を併せ持ち、光学特性に優れた有機無機複合材料である。また、本発明の有機無機複合材料の屈折率は例えば無機微粒子と樹脂との混合比を変えることにより任意に調節することが可能である。
本発明の光学部品は、上記の有機無機複合材料を含むものである。本発明の光学部品の種類は、特に制限されない。特に、有機無機複合材料の優れた光学特性を利用した光学部品、特に光を透過する光学部品(いわゆるパッシブ光学部品)に好適に利用される。かかる光学部品を備えた機能装置としては、各種ディスプレイ装置(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等)、各種プロジェクタ装置(OHP、液晶プロジェクタ等)、光ファイバー通信装置(光導波路、光増幅器等)、カメラやビデオ等の撮影装置等が例示される。
(1)透過型電子顕微鏡(TEM)観察
日立製作所(株)社製H−9000UHR型透過型電子顕微鏡(加速電圧200kV、観察時の真空度約7.6×10-9Pa)にて行った。
(2)光線透過率測定
測定する樹脂を成形して厚さ1.0mmの基板を作成し、紫外可視吸収スペクトル測定用装置UV−3100(島津製作所製)で波長589nmの光について測定した。
(3)屈折率測定
アッベ屈折計(アタゴ社製DR−M4)にて、波長589nmの光について行った。
(4)離型性評価
加熱成形後、ステンレスでできた金型から成形体を外す際に、自然に離型した場合を◎、若干の力を必要とするものの、容易に離型した場合を○、無理な力が必要となり、破損はないものの、内部歪みやレンズ面の変形のために光学的に影響を受けた場合を△、大きな力が必要となり、破損してしまった場合を×とした。
(1)チタニア微粒子の合成
0.1モル/Lの硫酸チタニル水溶液を攪拌しながら、同容量の1.5モル/Lの炭酸ナトリウム水溶液を室温で10分かけて滴下した。こうして得た白色の超微粒子の懸濁液を、3500rpmで遠心分離し、上澄み液のデカンテーションによる除去および水洗の工程を繰り返すことにより精製した。こうして得た白色沈殿を0.3モル/Lの希塩酸中に攪拌分散しながら50℃で約1時間加熱して、透明感のある酸性ヒドロゾルを得た。この酸性ヒドロゾルを氷冷し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩の水溶液を加えたところ白色沈殿を生じたので、次いでトルエンで抽出し、乾燥後濃縮した。この濃縮残渣のXRDとTEMより、アナタース型チタニア微粒子(数平均粒子サイズは約5nm)の生成を確認した。
50g/Lの濃度のオキシ塩化ジルコニウム溶液を48%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水和ジルコニウム懸濁液を得た。この懸濁液をろ過した後、イオン交換水で洗浄し、水和ジルコニウムケーキを得た。このケーキを、イオン交換水で溶媒としてジルコニア換算で濃度15質量%に調整して、オートクレーブに入れ、圧力150気圧、150℃で24時間水熱処理してジルコニア微粒子懸濁液を得た。TEMより数平均粒子サイズが5nmのジルコニア微粒子の生成を確認した。
前記(2)で合成したジルコニア微粒子懸濁液と日本化薬製の「KAYAMER PM−21」を溶解させたトルエン溶液を混合し、50℃で8時間攪拌した後、トルエン溶液を抽出し、ジルコニア微粒子トルエン分散液を作製した。
他の分散剤を用いる場合にも、同様の方法により調製できる。
P−13の合成:
還流冷却器、ガス導入コックを付した300ml三口フラスコに、アルドリッチ社製2−カルボキシエチルアクリレート(M−14)0.50gを添加し、2回窒素置換した後、スチレン(M−5)48.5g、新中村化学工業株式会社製NKエステルM−230G(S−7、n=23)1.0g、酢酸エチル21.4g、さらに開始剤として和光純薬工業株式会社製V−601 0.5gを添加し、さらに2回窒素置換した後、窒素気流下80℃で3時間加熱した。室温に戻した後、酢酸エチル30mlを添加後、10分間攪拌し、メタノール2Lに投入し、再沈殿した。沈殿を濾取した後、大量のメタノールで洗浄し、60℃で3時間真空乾燥することによりP−13を得た(収率48%、数平均分子量21,400、重量平均分子量37,600)。
他の例示したポリマーについても、同様の方法で調製できる。
還流冷却器、ガス導入コックを付した200ml三口フラスコに、α,α’−ジブロモ−p−キシレン20g(75.8mmol)、m−キシレン70mlを仕込み、加熱還流しながら、窒素気流下、トリイソプロピルホスファイト16.8g(80.7mmol)をm−キシレン20mlに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後3時間加熱還流し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、開始剤Aを得た(収率53%)。
還流冷却器、ガス導入コックを付した200ml三口フラスコに臭化銅0.41g、スチレン59.6g(M−5)、日本油脂株式会社製ブレンマー30PET−800(S-23、n=55、n‘=9.7)1.2g、N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン0.5g、開始剤A1.0gを仕込み、5回窒素置換した後、窒素気流下80℃で5時間加熱した。室温に戻した後、アルミナ30gとトルエン50mlを添加し10分間攪拌し、セライト濾過した。濾液を大量のメタノールに投入し、沈殿させ、沈殿を濾取した後、大量のメタノールで洗浄し、60℃で3時間真空乾燥してポリマーを得た(収率38%)。
ガス導入コックを付した100ml三口フラスコに上記で得られたポリマー10g、トリメチルシリルブロマイド2.3g、塩化メチレン40mlを仕込み、窒素気流下、室温で24時間攪拌した。水10mlを添加し1時間攪拌した後、大量のメタノールに投入し、沈殿させ、沈殿を濾取した後、大量のメタノールで洗浄し、60℃で3時間真空乾燥することによりP−11を得た(収率96%、数平均分子量32,900、重量平均分子量38,200)。
他の例示したポリマーについても、同様の方法で調製できる。
(3)で合成したジルコニア微粒子のトルエン分散液を樹脂P−13のトルエン溶液に5分かけて滴下し、これを1時間攪拌した後、溶媒を除去することにより、有機無機複合材料を粉体として得た。
他の有機無機複合材料についても、同様の方法で調製した。
実施例1〜9と比較例1〜5の各レンズを上記の手順で製造した。使用した無機微粒子の種類と無機成分としての使用量は表2に示す通りとした。但し、比較例1では、例示化合物P−3においてモノマー成分S−5を用いずに他はすべて同様の比率で合成したQ−3を樹脂として使用し、比較例2では、例示化合物P−14においてモノマー成分S−26を用いずに他はすべて同様の比率で合成したQ−14を樹脂として使用し、比較例3および4では無機微粒子を添加せず熱可塑性樹脂のみを成形し、比較例5ではアルドリッチ社製のポリスチレンを用いた。
製造した各有機無機複合材料を220℃で加熱成形し、厚さ1mmのレンズ用成形体を作成した。このとき金型からの離型性を評価した。成形体を切削し、断面をTEMで観察して、無機微粒子が熱可塑性樹脂中に均一に分散しているか否かを確認した。さらに光線透過率測定と屈折率測定を行った。これらの結果は以下の表2に記載した。その後、レンズ用成形体をレンズの形状に成形して、光学部品であるレンズを得た。
Claims (11)
- 前記熱可塑性樹脂を構成するポリマーが、前記一般式(1)で表される単位構造の少なくとも一種を化学結合を介して有することを特徴とする請求項1に記載の有機無機複合材料。
- 前記無機微粒子の波長589nmにおける屈折率が1.90〜3.00であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
- 前記無機微粒子が、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化錫およびチタニアからなる群より選ばれるいずれか一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
- 波長589nmにおける屈折率が1.63以上、かつ、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を含んで構成される光学部品。
- 光学部品がレンズ基材であることを特徴とする請求項7に記載の光学部品。
- 前記無機微粒子を分散剤の存在下で前記熱可塑性樹脂中に分散することを特徴とする請求項9に記載の有機無機複合材料の製造方法。
- 金型を用いて成形することを特徴とする請求項7および8に記載の光学部品の製造方法。
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