JP2008239511A - モノクローナル抗体、ウマsaa測定用キット及びウマ炎症性疾患診断方法 - Google Patents

モノクローナル抗体、ウマsaa測定用キット及びウマ炎症性疾患診断方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ウマSAAの免疫学的測定に適するモノクローナル抗体、ウマから採取した検体のウマSAAを特異的に且つ高感度で測定可能なウマSAA測定用キット、及びウマの炎症性疾患の病態を鋭敏且つ正確に診断可能な方法を提供する。
【解決手段】 モノクローナル抗体は、ウマの血液から分離精製し得られたアポ蛋白質を免疫原として用い調製したハイブリドーマによって産生され、ウマSAAと特異的に結合する。ウマSAA測定用キットは、ウマSAAの免疫学的測定に用いられ、上記のようなモノクローナル抗体を含んでなる。また、ウマ炎症性疾患診断方法は、上記のウマSAA測定用キットを用いて、ウマから採取した血液中のSAAを測定することによって行なう。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ウマ血清アミロイドA(ウマSAA)モノクローナル抗体及びウマSAAの免疫学的測定キット、並びにウマ炎症性疾患の診断方法に関する。
感染症をはじめとするウマの炎症性疾患は、早期に適切な抗菌薬や抗炎症薬の投与が必要であることが多く、その判断が重要である。これまで、その判断は臨床症状、末梢血中白血球数或は炎症マーカーのひとつである血漿中フィブリノーゲン値の変化により行われてきた。臨床症状は極めて重要な指標ではあるが、その臨床経験に左右されることや客観性に乏しい。また、末梢血中白血球数は感染の初期段階において、その生産と感染局所での消費とのバランスから、感染が存在するにも関わらず末梢血中では逆に減少していることも少なくない。血漿中フィブリノーゲンは、炎症の程度とその変動には比較的大きなタイムラグがあるため、その変化には即時性がないことから、実際の炎症性疾患病態の推移とは必ずしも一致しないことが指摘されている。
血清アミロイドA(SAA)蛋白質は、体内のIL−1やIL−6、TNFなどのサイトカインの増加、刺激により主として肝臓で合成される急性相蛋白質の一つであり、リポ蛋白質(主にHDL)として血液中を循環しており、ヒトSAAを多く含むHDLにヒトのアポAI、アポAIIを加えてインキュベートするとアポSAAとして解離し、アポAI、アポAIIと置換されることが知られている〔例えば、非特許文献1参照〕。ヒトSAA蛋白質としては3種のアイソフォームに大別され、そのうち104のアミノ酸から成るSAA1、2が主として急性相に産生されるが、ウマについても、急性期相にあるウマの血清から110のアミノ酸からなる(分子量12.3kDa)のウマSAA蛋白質が単離され、また、このウマSAA蛋白質のC末端側アミノ酸が切断されたアミノ酸残基数80のアミロイド繊維素原となり得るアミロイドA蛋白質も同定されている〔例えば、非特許文献2、非特許文献3等参照〕。このようなSAAは、SAAと同様の急性相蛋白質でありヒト医療における代表的な炎症マーカーであるC反応性蛋白質(C−reactive protein: CRP)と比較しても、ウイルス感染症を含めて広範な炎症疾患の急性相において血液中濃度の変動が概して大きいことから、SAAが優れた炎症マーカーであると言われており、ヒトSAAに対する各種モノクローナル抗体、及びこれらを用いた免疫学的測定法について多くの報告がある〔例えば、特許文献1、非特許文献4参照〕。ウマ医療においても炎症マーカーとしてのSAAの有用性が報告されているが、現在用いられている測定系(ラテックス凝集免疫測定法)は、ヒト医療用に開発されたものであるため、専用の測定機器若しくは血液自動分析装置が必要であり、その測定は一般的ではない。また、ヒトSAAに対する抗体を用いているため、ウマSAAに対する特異性が不明であるばかりか、測定系の改変も実質的に不可能である。ウマSAAの免疫学的測定法として、固相酵素免疫測定法(ELISA)や化学発光免疫測定法による方法〔例えば、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7等参照〕があるが、いずれもウマSAAに対する抗血清やポリクローナル抗体を用いたものであり、特異性の点で問題が残っていた。
特開平9−67398号公報 Husebekk.A, et al,Characterization of Amyloid Proteins AA and SAA as Apolipoproteins of High Density Lipoprotein(HDL),Scand.J.Immunol.,25,pp375−381,(1987) Sletten K.,et al,The primary structure of equine serum amyloid A (SAA) protein,Scand. J. Immunol.,30,pp117−122(1989) Sletten K.,et al,The amino acid sequence of an amyloid fibril protein AA isolated from the horse, Scand. J. Immunol.,26,pp79−84(1987) McDonald,T.,et al.,A monoclonal antibody sandwich immunoassay for serum amyloid A (SAA) protein;J.Immunol.Methods,144,pp149−155(1991) Pepys MB,et al.,Serum amyloid A protein(SAA) in horses:objective measurement of the acute phase response,Equine Vet.J.,21(2),pp106−109(1989) Nunokawa Y,et al,Evaluation of serum amyloid A protein as an acute−phase reactive protein in horses,J.Vet.Med.Sci.,55:pp1011−1016 (1993) Hulten C,et al,A non−competitive chemiluminescence enzyme immunoassay for the equine acute phase protein serum amyloid A(SAA),Vet.Immunol.Immunopathol.,68:pp267−281(1999)
かかる観点から、本発明の目的は、ウマSAAの免疫学的測定に適するモノクローナル抗体、ウマから採取した検体のウマSAAを特異的に且つ高感度で測定可能なウマSAA測定用キット、及びウマの炎症性疾患の病態を鋭敏且つ正確に診断可能な方法を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明によるモノクローナル抗体は、ウマ血清アミロイドA(ウマSAA)と特異的に結合することを特徴とする。このようなモノクローナル抗体において、ウマの血液から分離精製し得られたアポ蛋白質(精製ウマSAA蛋白質)を免疫原として用い調製したハイブリドーマによって産生されたものであることが好適であり、また、。ハイブリドーマが、JRA−SAA1(受託番号Ferm P−21165)又はJRA−SAA3(受託番号Ferm P−21166)であることが好ましい。
また、上記目的を達成するため、本発明のウマSAA測定用キットは、ウマSAAの免疫学的測定に用いられ、ウマの血液から分離精製し得られたアポ蛋白質を免疫原として調製したハイブリドーマが産生し、ウマSAAと特異的に結合し得るモノクローナル抗体、或いは、ハイブリドーマJRA−SAA1又はJRA−SAA3が産生するモノクローナル抗体を含んでなることを特徴とする。このようなウマSAA測定用キットにおいて、免疫学的測定の方法が固相酵素免疫測定法であることが好ましく、また、免疫学的測定の方法が、免疫クロマトグラフ法であることが好適である。
また、本発明によるウマ炎症性疾患診断方法は、上述のようなウマSAA測定用キットを用いて、ウマから(経時的に)採取した血液中のSAAを測定することによってウマの炎症性疾患の病態診断を行なうことを特徴とする。このウマ炎症性疾患診断方法では、ウマの炎症性疾患が感染症疾患であることが好ましい。
本発明により、HDLなどのリポプロテインとして脂質部分に会合した状態或はアポ蛋白質としてリポプロテインから解離した状態に拘らずウマSAAを認識することができ、ウマSAAと特異的に結合するモノクローナル抗体が提供される。また、本発明のウマSAA測定用キット及び測定方法によれば、ウマから採取した検体中のウマSAAを特異的且つ高感度で定性的或は定量的に検出、測定することができる。そして、本発明のウマ炎症性疾患診断方法によれば、ウマの炎症性疾患罹患の有無、及び病態を鋭敏且つ正確に診断することができる。
以下、本発明によるウマSAAに対するモノクローナル抗体、ウマSAA測定用キット及びウマ炎症性疾患診断方法を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕(モノクローナル抗体の作製)
本第1実施形態におけるウマSAAと特異的に結合するモノクローナル抗体の作製においては、ウマの血液から分離精製し得られるアポ蛋白質(精製ウマSAA蛋白質)を免疫原として用いてハイブリドーマを調製する。
(1−1:精製ウマSAA蛋白質の調製)
本実施形態におけるハイブリドーマを調製するために用いる免疫原とする精製ウマSAA蛋白質は、例えば、非特許文献2、3、5、6などに記載された公知の方法に準じて調製することができ、非特許文献6に準じて行なうことが好ましい。すなわち、急性期相炎症症状を呈するウマの血液中に存在するウマSAA蛋白質が会合した状態のリポ蛋白質(主としてHDL)からアポ蛋白質としてのウマSAAを解離させ、単離、精製する。病原性細菌やウイルスによる感染症のような炎症性疾患を発症し急性期相炎症症状を呈するウマから採取した血液も使用可能であるが、ここでは、健常なウマに対して組織障害性因子を作用させて炎症を実験的に誘発させ、急性期相にあるウマから血液を採取する。組織障害性因子としては、例えば、熱(火傷)や外傷又は放射線のような物理的因子、酸やアルカリ又はテレピン油のような化学的因子の他、病原性微生物などを挙げることができ、実験的炎症誘発によりウマの受けるダメージが少なく比較的短期間の内に健康な状態に復帰できる点で、化学的因子又は弱毒性の病原性微生物が好ましく、化学的因子のうちでもテレピン油(テレビン油)がより好適に使用できる。化学的因子を用いて炎症を誘発する場合、化学的因子の組織障害性の強弱、炎症誘発対象とするウマの年齢や体重に応じて5〜100mLの化学的因子を当該ウマの筋肉組織内や皮下に注入する。例えば、組織障害性因子としてテレピン油を用いる場合には、20〜80mL筋注することが好ましく、40〜60mLがより好ましい。また、組織障害性因子として、病原性微生物を用いる場合には、当該微生物の性質、病原性の強弱、炎症誘発対象とするウマの年齢や体重に応じて接種組織や接種方法、接種量を決定すれば良い。例えば、病原性微生物として肺炎誘発性のストレプトコッカス・ズーエピデミカスを炎症誘発対象ウマに接種する場合には、10 〜1015 CFU/頭を肺後葉に接種することができ、当該ウマが1歳前後の若齢馬であれば10 〜1012 CFU/頭を接種することが好ましい。
以上のようにして、炎症を誘発したウマからの血液採取法としては、炎症の急性期であれば如何なる時期において採血を行なっても良いが、生体内で循環する血液中のリポ蛋白質(HDL)に存在するSAAの割合が高く、また、アポ蛋白質として解離したり、さらにプロテアーゼにより分解される割合が少ない場合がある点で、急性期におけるSAAの血中濃度がピーク(極大)に達する前に採血することが好ましく、例えば、テレピン油を筋注した後、6時間以上、48時間未満経過した時期に採血することが好ましく、12時間以上、36時間未満経過した時期に採血することがより好ましい。採取した血液からアポ蛋白質としての精製ウマSAA蛋白質の分離精製を行なうに際して、血液にヘパリンやクエン酸塩などの抗凝固剤を加えて血漿として用いても良いが、後段の分離精製段階において精製に好ましくない影響を及ぼす場合がある点で、抗凝固剤を血液に添加することなく遠心分離して血清とし、後段の分離精製段階に用いることが好ましい。例えば、2〜25℃にて、200×g〜2000×g、3分間〜15分間、血液を遠心分離することにより血清を得ることができ、本実施形態では以下の分離精製段階用の材料として血清を用いた。
このようにして得られた血清について、排除限界分子量1500〜5500、より好ましくは排除限界分子量2500〜4500の透析チューブ又は透析膜(限外濾過膜)を用い、2〜25℃、好ましくは2〜10℃にて、10〜24時間、蒸留水により透析を行う。透析後の液につき、10000×g〜20000×g、10分間〜50分間遠心分離し、沈殿物を分離除去した上清を用い液体クロマトグラフ法により分離精製し、アポ蛋白質としての精製ウマSAA蛋白質を得ることができる。液体クロマトグラフ法としては、例えば、ゲル濾過クロマトグラフ法(SEクロマトグラフ法)、イオン交換クロマトグラフ法、疎水クロマトグラフ法(HICクロマトグラフ法)、イムノアフィニティクロマトを含むアフィニティクロマトグラフ法、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフ法、吸着クロマトグラフ法、クロマトフォーカシング(等電点クロマトグラフ法)、逆相クロマトグラフ法など各種蛋白質やポリペプチドに適用される公知の如何なる方法も使用することができ、これらを適宜組み合わせて用いても良い。このような液体クロマトグラフ法の充填剤の選定、溶離液、分離検出条件などは、例えば、〔日本生化学会編、「生化学実験講座1;タンパク質の化学」、東京化学同人(1976)〕、東京化学同人(1975)〕、〔日本生化学会編、「続生化学実験講座2;タンパク質の化学」、東京化学同人(1987)〕、〔日本生化学会編、「新生化学実験講座1;タンパク質I」、東京化学同人(1990)〕、〔日本生化学会編、「基礎生化学実験法;第3巻、タンパク質I」、東京化学同人(2001)〕などに準じて実施することができる。ここでは、非特許文献6に準じ、デキストラン架橋ゲルを充填剤とするゲル濾過クロマトグラフ法により、溶離液として有機酸水溶液を用い、複数回分離精製を繰り返し目的のアポ蛋白質を含有する溶出液分画を凍結乾燥し、精製ウマSAA蛋白質を得る。得られた精製ウマSAA蛋白質は、還元条件下、ドデシル硫酸ナトリウム加ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって、分子量及び純度を確認することができる。精製ウマSAA蛋白質(又は精製ウマSAA蛋白質断片は、SDS−PAGEによって測定される分子量が10.5〜12kDaであり、実質的に単一のバンドとなる純度であることが好ましい。
(1−2:ハイブリドーマ調製)
各種蛋白質やポリペプチドなどを免疫原として、単一のエピトープを認識し免疫原に対して特異的に結合し得るモノクローナル抗体を産生するマウス−マウスハイブリドーマの調製方法は、ケラーらにより確立されており〔G.Kohler,C.Milstein.,Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity.,Nature,1975,256(5517):pp495−497〕、BALB/Cマウスに免疫して得られる抗体産生B細胞と、HAT選択培地(ハイポキサンチン、アミノプテリン、チミン含有培地)に感受性のある8−アザグアニン抵抗性HGPRT(ハイポキサンチン−グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ)欠損株であるBALB/Cマウス由来ミエローマ細胞とを細胞融合し、マウス−マウスハイブリドーマを得ることができる。但し、ミエローマ細胞株X63(P3−X63Ag8)自体が特異性の不明なIgG1(κ)の分泌能を有することから、X63と同様BALB/Cマウス由来であり、IgG非分泌のクローンとして選択された、例えば、NSI(P3/NS1/1−Ag4−1:Kohler G.,et al,Eur.J.Immunol.,1976,6(4),pp292−295)、P3U1(P3X63Ag8U1:Yelton,D.E,et al.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.,1978,81,pp1−7)、653(P3X63Ag8.653:Kearney JF,et al,J Immunol.,1979,123(4),pp1548−1550)、Sp2/O(Sp2/O−Ag14:Shulman M.,et al.,Nature,276,pp269−271,1978)の他、FO−2(Sp2/O/FO−2:de St.Groth SF,Scheidegger D.,J.Immunol.Methods,35,pp1−21,1980)などのマウスミエローマ細胞株を用いて抗体産生B細胞(免疫マウス脾臓リンパ球)と細胞融合することが好ましい。また、(1−1)にて調製した精製ウマSAA蛋白質を免疫原とし、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヒツジなど、マウス以外のげっ歯類動物や他の哺乳類動物に免疫して得られる脾臓リンパ球細胞と上記のようなマウスミエローマ細胞株とを細胞融合してハイブリドーマを調製することもできる〔特許文献1、非特許文献4〕。本実施形態においては、BALB/Cマウス(4〜6周齢)に免疫(感作)して得られた脾臓リンパ球とBALB/Cマウス由来のIgG非分泌のミエローマ細胞株とを細胞融合し、マウス−マウスハイブリドーマを調製する。
免疫原としての精製ウマSAA蛋白質を生理食塩水や緩衝液に溶解又は懸濁して免疫原液(抗原液)とし、感作する動物1匹、一回当たり10〜500μg相当量の抗原液を静注、筋注、皮下注又は腹腔内に投与する。抗原液には、フロインド完全アジュバントやフロインド不完全アジュバント、明礬、百日咳死菌体等のアジュバントを加えることもできるが、本実施形態においてはアジュバント非添加の抗原液を用いる。免疫の間隔、回数としては、1週間乃至6週間、より好ましくは2週乃至4週間隔にて複数回ブーストすることが好ましく、本実施形態においては計3回免疫した。最終免疫日から2日乃至7日後に脾臓リンパ球を採取することにより、活発な抗体産生能を有するマウス抗体産生B細胞を得ることができる。このようにして得られるマウス抗体産生B細胞とミエローマ細胞との細胞融合としては、仙台ウイルス(HVJ)による上記ケラーらの方法、各種市販されている電気パルス細胞融合装置を用いるエレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール(PEG)やジメチルスホキサイド(DMSO)添加PEGのような細胞融合剤を用いる方法などが確立されており、いずれの融合方法を用いても良いが、本実施形態においては、分子量1000〜5000のPEGを用いて細胞融合を行なう。上述のように得られた抗体産生B細胞とミエローマ細胞との混合比率としては20:1〜1:20、より好ましくは10:1〜1:10とし、細胞融合剤として20〜60(V/V)%のPEG溶液を用いることができる。選択培養には、RPMI−1640 培地に市販のHATを添加した培地を使用することができ、また、この選択培地には、5〜15(V/V)%のFCS(胎児牛血清)を添加することもできる。選択培養開始14日以上経過後において増殖性の良好な融合細胞株を選ぶことにより本実施形態のハイブリドーマ候補を得ることができる。
(1−3:ハイブリドーマのスクリーニング及びモノクローナル抗体の精製)
上記(1−2)によって増殖性の良好な融合細胞として選別されたハイブリドーマ候補の各培養上清について、(1−1)において調製した精製ウマSAA蛋白質を用い、公知の各種免疫測定法や表面プラズモン共鳴法(SPR法:永田知宏、半田宏編集、シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社1998年発行、「生体物質相互作用のリアルタイム解析実験法」)などによりウマSAAに対して高い抗体価を有するハイブリドーマのスクリーニングを行なうことができる。免疫測定法としては、例えば、沈降反応(precipitin reaction)、免疫拡散(Immunodiffusion)、重層法、赤血球やラテックスを用いる直接又は間接凝集反応(agglutination)、免疫電気泳動、免疫クロマトグラフ法、エライザ(ELISA)を含む酵素免疫測定法(EIA)、ビオチン−アビジン法、放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、蛍光酵素免疫測定法(FEIA)、生物発光免疫測定法(BLIA)、生物発光酵素免疫測定法(BLEIA)、化学発光免疫測定法(CLIA)、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)などを挙げることができ、本実施形態においては、固相酵素免疫測定法(ELISA)によりスクリーニングを行なう。マイクロプレートに精製ウマSAA蛋白質を200ng〜800ng/well、より好ましくは400ng〜600ng/wellの一定量を固相化し、各ウェル(well)にハイブリドーマ候補の各培養上清を加えて反応させた後、酵素標識抗マウスIgG抗体を加えて反応させ、標識酵素に対応する発色基質を加えて発色後、マイクロプレートリーダによりウェル毎の吸光度の測定を行い、所定の吸光度以上を呈した培養上清に対応するハイブリドーマを選別することによりスクリーニングを行なうことができる。なお、表面プラズモン共鳴法では抗体の標識を行なうことなく抗原との親和性(特異的反応性)について、サンドイッチELISAに相当するシグナル増強法により定量的に評価することができる〔永田知宏、半田宏編集、シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社1998年発行、「生体物質相互作用のリアルタイム解析実験法」、pp59−60〕ことから、固相酵素免疫測定法と表面プラズモン共鳴法を適宜組み合わせてスクリーニングすることも好ましい。このようなハイブリドーマ候補のスクリーニングは複数回繰返し行なうことが好ましい。また、選別したハイブリドーマについては軟寒天法や限界希釈法によってクローニングすることができ、クローニングしたハブリドーマにつき、マウス−マウスハイブリドーマの増殖培養に適した血清添加又は無血清の動物細胞培養培地を用いて培養し、各ハイブリドーマの培養上清から、モノクローナル抗体を分離精製する。
モノクローナル抗体の分離精製に先立ち、培養上清を用いて沈降反応(オクタロニィ法)、ELISA、RIAなどの免疫学的測定法により、抗体のサブタイプ(アイソタイプ)の確認を行なうことが好ましく、各種市販のモノクローナル抗体サブタイプ試験キットを使用することができる。モノクローナル抗体の分離精製は、(1−1)に示したような各種分離精製法、特に液体クロマトグラフ法を組み合わせることにより行なうことができ、確認された抗体のクラス、サブタイプに応じて分離精製条件を適宜決定し行なうことが好ましく、市販の精製用キットを用いることもできる。また、上述のように分離精製し得られたモノクローナル抗体については、(1−1)における精製ウマSAA蛋白質を用い、オクタロニィ法やウェスタンブロッティング法などにより、ウマSAAに対する特異性の確認を行なうことが好ましく、ウェスタンブロッティング法については、各種市販の試験キットを使用することもできる。さらに、本第1実施形態によりスクリーニング、クローニングされた複数のハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体の内から、予め、後述の第2実施形態におけるウマSAAの免疫学的測定方法及び測定用キットに適用するために最適なモノクローナル抗体の最終選別を行なうことが好ましい。このモノクローナル抗体の最終選別においては、例えば、市販の表面プラズモン共鳴センサ(SPRセンサ)を用い、シグナル増強法に準じて行なうことができる。
〔第2実施形態〕(ウマSAAの免疫学的測定法及び免疫学的測定用キット)
第1実施形態において作製されたウマSAAに対するモノクローナル抗体は、JRASAA1Ab、JRASAA3Ab、JRASAA5Ab、JRASAA7Abであり、夫々ハイブリドーマJRA−SAA1、JRA−SAA3、JRA−SAA5、JRA−SAA7が産生する。これら4種のモノクローナル抗体は、ウマSAAに対して特異的に結合し得ることから、ウマSAAの免疫学的測定法に好適に用いることができ、ウマSAAの免疫学的測定用キットの抗体成分として適するものである。4種のモノクローナル抗体の内でも、JRASAA1Ab及びJRASAA3Abは、ウマSAAに対する親和性が特に高く、ウマSAAの免疫学的測定用キットの抗体成分として最適であることが、第1実施形態において確認されている。したがって、本第2実施形態によるウマSAAの免疫学的測定方法は、第1実施形態により得られたモノクローナル抗体によりウマ血液中に存在するウマSAAを定性的、或は定量的に測定するものであり、また、本実施形態によるウマSAAの測定用キットは、第1実施形態におけるいずれかのモノクローナル抗体をウマSAAに対する抗体として備える他、以下に説明するようなウマSAAの免疫学的測定方法において使用する各種薬剤、材料を含み構成することができる。ウマSAAの免疫学的測定方法としては、ウマSAAと特異的に反応する抗体として第1実施形態のモノクローナル抗体を用いることから、免疫反応を利用する方法であれば如何なる測定方法であっても良く、特に限定されない。例えば、第1実施形態(1−3)ハイブリドーマのスクリーニングに用いる免疫学的測定法として挙げた全ての測定法が適用できる。また、本第2実施形態において、第1実施形態で得られたモノクローナル抗体は、高密度リポプロテイン(HDL)と会合した状態であっても、アポSAAとしてHDLなどのリポプロテインから解離した状態のウマSAAであっても特異的に反応、結合し得る。さらに、ウマSAA蛋白質全長110アミノ酸残基のうち、N末端側及び/又はC末端側からアミノ酸残基数として総計で1〜15残基切断(truncate)されたウマSAA蛋白質断片に対しても結合することができる。そして、本第2実施形態において、モノクローナル抗体は、パパインやペプシンなどのプロテアーゼで消化分解させて得られるFabやF(ab’)、F(ab’)の半分子型還元体Fab’など、フラグメント化した抗体としても用いることができるが、感度が低下する場合がある点では、第1実施形態で得られた形で用いることが好ましい。
免疫学的測定方法として、ここでは、比較的検出感度が高く一般的に汎用される酵素免疫測定法を中心に説明する。酵素免疫測定法は、競合法と非競合法に大別され、それぞれ、抗原・抗体反応結合体(B:Bound Form)と非結合未反応体(F:Free Form)とをBF分離するヘテロジニアス法(不均一法)と、BF分離しないホモジニアス法(均一法)に区分される。ヘテロジニアス法においては、抗原・抗体反応を液相で行う液相法、固相と液相間にて行う固相法がある。競合法及び非競合法のいずれも使用可能であり限定されないが、検出感度が優れる点では、非競合法を用いることが好ましく、また、液相法より固相法を適用することが好ましい。本実施形態においては、ヘテロジニアス−固相法が好適に使用できる。固相としては、例えば、チューブ、マイクロプレート、ビーズ、ストリップ、マイクロチップなど如何なる形態のものであっても良く、また、その材質についても、例えばポリスチレン、ガラス、ラテックス、セルロース、セファロース、磁性体、濾紙など酵素免疫測定用の抗原又は抗体が物理吸着、共有結合などによって不溶化され担持可能であれば、如何なる材質の固相も使用できる。
酵素免疫測定法の発色標識剤〔酵素(標識)剤と発色基質剤を組み合わせたものを含む〕としては、発色基質剤又は酵素(標識)剤が、第1実施形態のモノクローナル抗体などの酵素免疫測定法用抗体に結合、又は物理的に付着又は吸着し、このような状態で発色させることにより検出可能とするものであれば如何なる発色標識剤であっても使用できる。また、酵素(標識)剤、発色基質剤の他、発色補助剤、発色増強剤、pH緩衝剤などを組み合わせた発色標識剤も使用可能である。発色基質剤としては、酵素剤や発色補助剤により発色するものであれば如何なる発色基質剤であっても使用可能であり、例えば、オルトフェニレンジアミン、5−アミノサリチル酸、パラニトロフェノールリン酸、フェノールリン酸、フェノール、4−アミノアンチピリン、オルトジアニシジン、オルトニトロフェノール−β−D−ガラクシド、3,3′,5,5′−テトラメチルベンジジン:TMB、2,2′−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸):ABTSなどを挙げることができる。酵素(標識)剤としては、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼなどを挙げることができる。それぞれ適切な発色基質剤と酵素剤を組み合わせれば良く、例えば、ペルオキシダーゼとオルトフェニレンジアミン、ペルオキシダーゼと5−アミノサリチル酸、ペルオキシダーゼとABTS、アルカリフォスファターゼとパラニトロフェノールリン酸、アルカリフォスファターゼとフェノールリン酸、アルカリフォスファターゼとフェノール及び4−アミノアンチピリン、β−D−ガラクトシダーゼとオルトニトロフェノール−β−D−ガラクシド、などを挙げることができ、これらに過酸化水素などの酸化剤や各反応の至適pHとするpH緩衝剤を加えても良い。さらに、ビオチンとアビジンを組み合わせた発色標識剤も使用できる。また、第1実施形態のモノクローナル抗体、又はその他の酵素免疫測定用の抗体に標識する場合における酵素剤の標識方法としては、例えば、過ヨウ素酸法、カルボジイミド法、グルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法など公知の如何なる標識方法によっても標識することが可能である。このような発色標識剤を用いる際の各詳細な条件、標識方法の詳細条件などについては、例えば、〔日本生化学会編、1975年東京化学同人発行、「生化学実験講座5;酵素研究法」〕、〔石川英治ら、1987年医学書院発行、「酵素免疫測定法」〕、〔日本生化学会編、、1991年東京化学同人発行、「新生化学実験講座1;タンパク質V」〕、〔日本生化学会編、1992年東京化学同人発行、「新生化学実験講座12;分子免疫学III」〕、〔Avrameas,S. et al「Development of Immunology」Elsevir Vol.18、(1983)〕、〔Butt,W.R. et al,「Practical Immunoassay」 Marcel Dekker(1984)〕などに準じて適宜決定し、実施することができる。
なお、例えば、放射免疫測定法(RIA)によりウマ血液中に存在するウマSAAを測定する場合には、酵素免疫測定法における酵素(標識)剤、発色基質剤に替えて、125I、131I、H、14Cなどの放射性同位元素標識剤を使用すれば良い。また、例えば、蛍光免疫測定法(FIA)や蛍光酵素免疫測定法(FEIA)によりウマSAAを測定する場合には、酵素免疫測定法における酵素(標識)剤、発色基質剤に加えて、或いは替えて、例えば、フルオレセイン、アクリジン、キノリン、クマリンなどの芳香族複素環化合物や、ナフタレン、アントラセン、ペリレン、ピレンなどの多環芳香族化合物の外、アントラニル酸、ニトロベンゾフラン、スチルベンなどの発蛍光団となる化合物、また、これら発蛍光団化合物の各種誘導体化化合物などのような蛍光基質剤を含む蛍光標識剤を用いることができる。蛍光標識剤には、反応補助剤として酸化剤や補酵素を含む酵素剤、また、各反応の至適pHに調整するpH緩衝剤を加えて使用することができ、また、例えば、ペルオキシダーゼとパラヒドロキシフェニル酢酸又はパラヒドロキシフェニルプロピオン酸又はフルオレセインイソチオシアネート又はチラミン、β−Dガラクトシダーゼと4−メチルウンベリフェリル−β−Dガラクトシド、アルカリフォスファターゼと4−メチルウンベリフェリルリン酸など、発色基質剤と酵素(標識)剤との組み合わせ使用も可能である。蛍光免疫測定法や蛍光酵素免疫測定法の詳細測定条件については、酵素免疫測定法についての参考文献に加えて、例えば、〔Frei,R.W. et al;「Chemical Derivatization In Analytical Chemistry」 Vol.I,II、CRC Press(1981,82)〕に準じて適宜決定し、実施することができる。また、生物発光免疫測定法(BLIA)、生物発光酵素免疫測定法(BLEIA)などにより、ウマSAAを測定する場合には、酵素免疫測定法における酵素(標識)剤、発色基質剤に加えて、或いは替えて、例えば、生物発光基質、酵素(標識)剤の外に、他の酵素剤、反応補助剤、pH緩衝剤などの組み合わせを含む生物発光標識剤を用いることができる。例えば、ホタル、ウミホタル、発光ミミズ、ラチア、ホタルイカ、バクテリアなどのような発光生物由来のルシフェリン、オワンクラゲ由来のエクオリンなどの生物発光基質、それぞれ対応する生物由来のルシフェラーゼ、AMP、ATP、マグネシウム塩やカルシウム塩のような金属塩、脂肪族アルデヒドなどを適宜組み合わせて使用可能である。
また、化学発光免疫測定法(CLIA)、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)により、ウマSAAを測定する場合には、酵素免疫測定法における酵素(標識)剤、発色基質剤に加えて、或いは替えて、例えば、ベンゾペリレン−1,2−ジカルボン酸ヒドラジドやイソルミノールのN−アルキル誘導体のようなルミノール誘導体、アクリジニウム塩やルシゲニンのようなアクリジン系化合物、3−(2′−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3″−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタンのようなアダマンチル−1,2−ジオキセタン誘導体、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、3−メチルインドール、テトラキスエチレンなどの化学発光化剤の他、過酸化水素、過マンガン酸塩、次亜塩素酸のような酸化剤や、鉄、コバルト、銅、マンガンのような金属の化学発光増強剤、pH緩衝剤などを組み合わせて使用することができる。このような、化学発光免疫測定法、化学発光酵素免疫測定法や上述の生物発光免疫測定法、生物発光酵素免疫測定法による詳細な測定条件は、例えば、〔後藤俊夫著、「生物発光」共立出版(1975)〕、〔Schroeder,H.R.et al;Methods in Enzymol. Vol.57、p424(1978)〕、〔VanDyke,K.et al;「Bioluminescense And Chemiluminescence」 Vol.I,II、CRC Press Florida(1985)〕、〔今井一洋編、「生物発光と化学発光」広川書店(1989)〕、〔稲場文男ら、「最新ルミネッセンスの測定と応用」NTS出版(1990)〕などに準じて、適宜決定し実施することができる。また、例えば、免疫クロマトグラフ法により、ウマSAAを測定する場合には、酵素免疫測定法におけるマイクロプレートやビーズ、試験管などの固相に替えて、クロマトグラフ担体として機能し得る濾紙、多孔質のPVDFやニトロセルロース、ナイロンメンブランのような膜を短冊状、帯状などに形成したストリップやシートを用いることが可能であり、例えば、金、白金、銀、セレニウムのような金属の金属コロイド、着色ラテックスなどの色素含有物で標識した第1実施形態のモノクローナル抗体をテストストリップ上で、検体中のウマSAAと免疫複合体を形成可能に固定することができる。このような、免疫クロマトグラフ法の詳細な測定条件、金属コロイドの調製や金属コロイドによる標識方法などについては、例えば、〔G Frens, Controlled Nucleation for Regulation of Particle Size in Monodisperse Gold Solutions, Nature (Physical Science)vol.241, pp.20−22(1973)〕、特開昭61−142463号公報、特開昭61−145459号公報、特開昭55−15100号公報などの記載に準じて実施することができる。
〔第3実施形態〕(ウマ炎症性疾患の診断方法)
本第3実施形態におけるウマ炎症性疾患の診断方法は、第2実施形態のウマSAA免疫学的測定方法及びウマSAA免疫学的測定用キットを用いて、ウマから採取した血液中のSAAを測定することによってウマの炎症性疾患の病態診断を行なうものである。第2実施形態のウマSAA免疫学的測定方法及びウマSAA免疫学的測定用キットの内でも定量的に測定可能な方法及び測定用キットが好ましく、特に、モノクローナル抗体JRASAA1Ab及びJRASAA3Abの両抗体を含んで成るウマSAA測定用キット、このウマSAA測定用キットとしてJRASAA1Ab及びJRASAA3Abのいずれかを固相化に用い、他のモノクローナル抗体を酵素標識したサンドイッチELISA、免疫クロマトグラフ法により血液中、好ましくは血清中のウマSAA濃度を測定することによってウマの炎症性疾患の診断を客観的、定量的に行なうことができる。測定したウマSAA濃度が1μg/mLを超えていれば、感染症などの炎症性疾患に罹患している病馬と診断し、ウマSAA濃度が1μg/mL以下であれば健康な状態であると診断することができる。さらには、ウマから経時的、例えば12時間毎、又は24時間毎に複数回採血を行い、血清中のウマSAA濃度の経時変化を測定することによって、炎症性疾患の病態変化を正確に診断することができる。
以下、本発明によるウマSAAに対するモノクローナル抗体、ウマSAA測定用キット及びウマ炎症性疾患診断方法について、実施例を示して具体的に説明するが、これによって本発明を限定するものではない。
〔実施例1:モノクローナル抗体の作製〕
第1実施形態に従いウマSAAに対するモノクローナル抗体を作製した。
〔Exp.1−1〕(精製ウマSAA蛋白質の調製)
ここでは非特許文献6に準じて精製ウマSAA蛋白質の調製を行なった。但し、炎症を誘発する組織障害性因子としてテレピン油(テレビン油:turpentine oil ;関東化学社製)50mLを用い健常なサラブレット馬(雄、4歳)の生体筋肉組織内に投与(筋注)した。この筋肉内投与したウマから、投与24時間後に採血を実施し血清を得た。得られた血清は、蒸留水により透析(Spectra/Por3(商品名;限界排除分子量3500)、Spectram社製)後、遠心操作(15000×g、30分間)により分離した。その上清につき、デキストラン架橋ゲル(セファデックスG−75(商品名)、アマシャムファルマシア社製)によるゲル濾過クロマトグラフ法(カラム80×2.5cm)により分離精製した。溶離液としては、10%(V/V蒸留水%)ギ酸を用いた。ピーク部の分画のうち、ボイドボリューム溶出後に現れた第2ピーク部を回収し、(血清透析時と同様の透析チューブを用い)蒸留水にて透析後、凍結乾燥して次のステップの試料とした。この凍結乾燥試料につき上記分離精製操作を繰り返した。すなわち、凍結乾燥試料を0.5mLの10%ギ酸に溶解し、セファデックスG−75クロマトグラフィーに添加した。10%ギ酸にて溶出し、ボイドボリューム溶出後に現れた第2ピーク部を回収後、蒸留水による透析、凍結乾燥、10%ギ酸による溶解を順次実施した。さらに、セファデックスG−75クロマトグラフィーに添加、10%ギ酸にて溶出し、溶出液を凍結乾燥し得られたアポリポ蛋白質を精製ウマSAA蛋白質とした。
以上のように調製した精製ウマSAA蛋白質につき、下記試験条件による電気泳動(SDS−PAGE)により分子量及び純度の確認を行なった。図1に示すように、得られた精製ウマSAA蛋白質は、分子量11.2kDaの位置に、実質的に単一のバンドとして検出された。
〔SDS−PAGE試験条件〕
既製のゲル(NuPAGE 10% Bis−Tris Gel,NP0301(商品名、品番),Invitrogen社製)、分子量マーカー(MultiMark Multi−Colored Standard,LC5725(商品名、品番),Invitrogen社製)および泳動バッファー(NuPAGE MES SDS Running Buffer,NP0002(商品名、品番),Invitrogen社製)を用い、アプライ量5μgとして、130mAで35分間泳動した。泳動したゲルは、既製染色液(セーフステイン,LC6060(商品名、品番),Invitrogen社製)で染色した。
〔Exp.1−2〕(ハイブリドーマ調製)
免疫原として〔Exp.1−1〕で得られた精製ウマSAA蛋白質を用い、ケラーらの調製方法〔G.Kohler,C.Milstein., Nature,1975,256(5517):pp495−497〕に準じてハイブリドーマを調製した。但しここでは、ミエローマ細胞株として、X63(P3−X63Ag8)からIgG1非分泌クローンとして選択されたP3U1(P3X63Ag8U1:Yelton,D.E,et al.,Fusion of mouse myeloma and spleen cells, Curr.Top.Microbiol.Immunol.,1978,Vol.81,pp1−7)を使用した。すなわち、精製ウマSAA蛋白質をBALB/Cマウスに50μg/headで3回免疫し、最終免疫の3日後に全身麻酔下で脾臓を摘出し、細切、濾過および洗浄により脾臓リンパ球を得た。得られたマウス脾臓リンパ球(1×10個)とミエローマ細胞P3U1(1×10個)とをポリエチレングリコール(PEG1500、 Boehringer Mannheim社製)を用いて細胞融合し、HAT(HAT Supplement、GIBCO社製)添加RPMI−1640培地(品番11875、GIBCO社製)により選択培養を行った。選択培養開始14日以上経過後において増殖性の良好なハイブリドーマを選び、各ハイブリドーマの培養上清について、以下のウマSAAに対するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング用検体とした。
〔Exp.1−3〕(ハイブリドーマ(モノクローナル抗体)のスクリーニング及びモノクローナル抗体の精製)
精製ウマSAA蛋白質(Exp.1−1にて調製)を酵素免疫測定用マイクロプレート(96ウェルELISAプレート;MAXISORP、NUNC社製)に固相化(500ng/well)し、これを(Exp.1−2)で得られた培養上清と反応させた。さらにペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(品番A9044、シグマ−アルドリッチ社製)で検出することにより、ウマSAAに対して高い抗体価を有するハイブリドーマのスクリーニングを3回実施した。すなわち、1回目のスクリーニングで選択された16種のハイブリドーマは、2回目のスクリーニングで8種に、3回目のスクリーニングで4種類に選択された。その結果、ウマSAAと特異的に反応するモノクローナル抗体としてJRASAA1Ab、JRASAA3Ab、JRASAA5AbおよびJRASAA7Abが得られた。得られた各モノクローナル抗体のアイソタイプはIgG1であったので、市販のアフィニティカラムキット(Hitrap ProteinG HP(商品名)、Amersham Biosciences社製)によりそれぞれ精製した。また、得られた各モノクローナル抗体について、以下に示すウエスタンブロッティングにより特異性の検討を行った。その結果、図2に示すとおりモノクローナル抗体JRASAA1Ab、JRASAA3Ab、JRASAA5AbおよびJRASAA7Abは、精製ウマSAAと特異的に反応した。
〔ウエスタンブロッティング条件〕
精製ウマSAA蛋白質(アプライ量5μg相当)につき、〔Exp.1−1〕におけるSDS−PAGE試験条件に準じて泳動した。泳動後のゲルを転写用緩衝液(NuPAGE Transfer Buffer,NP0006−1(商品名、品番),Invitrogen社製)を用いて170mAで60分間、PVDF膜(PVDF Filter Paper Sandwich,LC2005(商品名、品番),Invitrogen社製)に転写した。PVDF膜に転写した精製ウマSAA蛋白質につき、ブロッキング後、モノクローナル抗体JRASAA1Ab、JRASAA3Ab、JRASAA5AbあるいはJRASAA7Abを37℃で60分間反応させた後、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(品番A9044、シグマ−アルドリッチ社製)を反応させた。その後、市販の発色試薬(HRP Conjugate Substrate Kit,170−6431(商品名、品番),BIO−RAD社製)で発色させた。
〔Exp.1−4〕(ウマSAA免疫学的測定用モノクローナル抗体の選別)
表面プラズモン共鳴センサ(SPRセンサ;BIACORE社製)を用い、BIACORE社操作マニュアル及び非特許文献 〔永田知宏、半田宏編集、シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社1998年発行、「生体物質相互作用のリアルタイム解析実験法」〕などに準じ、〔Exp.1−3〕におけるスクリーニングで得られたモノクローナル抗体のうち、第2実施形態におけるウマSAAの免疫学的測定方法及び測定用キットに適用するために最適なモノクローナル抗体の選別を行なった。但しここでは、まず、作製したモノクローナル抗体JRASAA1Ab、JRASAA3Ab、JRASAA5Ab及びJRASAA7Abのいずれかをセンサーチップ(CM−5(商品名)、BIACORE社製、東京)にアミンカップリング法により固相化した。すなわち、センサーチップをNHS(N−ヒドロキシコハク酸イミド:N−hydroxysuccinimide)およびEDC(N−エチル−N’(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド:N−ethyl−N’(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride)で活性化した後、ウマSAAモノクローナル抗体(20μg/mL)をカップリングし、続いてエタノールアミンによりブロッキングした。その後、ウマ標準SAAとして〔Exp.1−1〕で得た精製ウマSAA蛋白質(100μg/mL)を抗原−抗体法により結合させた。次に、夫々のセンサーチップに固相化されているモノクローナル抗体とは異なる3種類のモノクローナル抗体(20μg/mL)をそれぞれ反応させ、得られた各センサーグラムからSPRシグナルの変化単位と定義されているレゾナンスユニット(RU)を求めることにより最良の組み合わせについて検討した(シグナル増強法)。その結果、3回の繰返し測定の平均RU値を表1に示したとおり、モノクローナル抗体JRASAA1AbとJRASAA3Abとの反応において高い反応性が示されたことから、この組み合わせがサンドイッチ固相酵素免疫測定法(サンドイッチELISA)として最良の組み合わせであることが判明した。なお、これらのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマについては、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに(平成19年1月23日付)、JRASAA1Abを産生するハイブリドーマJRA−SAA1は受託番号FERM P−21165として、また、JRASAA3Abを産生するハイブリドーマJRA−SAA3は受託番号FERM P−21166として寄託されている。
〔実施例2:ウマSAAの免疫学的測定法及び免疫学的測定用キットの開発〕
第2実施形態に準じ、免疫学的測定法として固相酵素免疫測定法(サンドイッチELISA)及び免疫クロマトグラフ法について各測定法、測定用キットの検討を行った。モノクローナル抗体としては、〔Exp.1−4〕にて選別したJRASAA1Ab、JRASAA3Abを使用した。標準ウマSAAとしては、〔Exp.1−1〕において得られた精製ウマSAA蛋白質を1次標準としたテレピン油筋肉組織内投与馬血清(〔Exp.1−1〕)を2次標準SAAとして用い、また、ウマSAA測定用検体(臨床検体)には、健常なサラブレット又は急性期相炎症症状を呈するサラブレットから採血して得られた血清を用いた。
〔Exp.2−1〕(サンドイッチELISAによる測定条件検討)
モノクローナル抗体JRASAA1Ab若しくはJRASAA3Ab(5又は10μg/mL炭酸バッファー)をELISAプレートに添加し、37℃で1時間反応させた。ブロッキング(ブロッキングバッファー;蒸留水で4倍希釈、ブロックエース、大日本製薬)後、標準ウマSAA(200, 100, 50, 25, 12.5, 6.25, 3.125, 0 μg/mL)をブロッキング希釈液(蒸留水で10倍希釈、ブロックエース、大日本製薬)で500倍、1000倍、2000倍、4000倍希釈、あるいは検体をブロッキング希釈液で500倍、1000倍若しくは2000倍希釈し、反応(50μL/well;37℃、1時間)させた。ELISAプレートの洗浄後、2次抗体としてHRP標識モノクローナル抗体JRASAA1Ab若しくはJRASAA3Ab(ブロッキング希釈液で1000倍、2000倍若しくは4000倍希釈;50μL/well)を37℃で1時間反応させた。ELISAプレートの洗浄後、発色試薬(ABTS)により発色(50μL/well)させ、2(W/V)%シュウ酸(50μL/well)で反応を停止した後、分光光度計で吸光度を測定した。標準ウマSAAの吸光度から標準曲線を作成し、検体のSAA濃度を求めることによって、酵素標識剤としてHRP(西洋わさびペルオキシダーゼ)、発色試薬としてABTS(2,2′−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸))を使用する非競合のヘテロジニアス固相酵素免疫測定法としてのサンドイッチELISAについて最適な測定条件の検討を行なった。その結果から確立された至適測定条件は以下のとおりであった。
(1)モノクローナル抗体のELISAプレートへの固定:モノクローナル抗体JRASAA3Abを炭酸バッファで5μg/mLとし、50μL/wellで分注、37℃にて60分間静置。
(2)ブロッキング:ブロッキングバッファーを使用し、200μL/wellで分注、25℃にて20分間静置。
(3)標準ウマSAA:標準ウマSAA(200, 100, 50, 25, 12.5, 6.25, 3.125, 1.563, 0.781, 0.391, 0.195, 0.098, 0 μg/mL)をブロッキング希釈液で2000倍希釈し、この標準ウマSAA希釈系列につき、50μL/wellで分注、37℃にて60分間静置。
(4)検体:ブロッキング希釈液で2000倍希釈し、50μL/wellで分注、37℃にて60分間静置。
(5)各ウェルをリン酸緩衝液にて3回洗浄。
(6)2次抗体:HRP標識モノクローナル抗体JRASAA1Abをブロッキング希釈液で2000倍希釈し、50μL/wellで分注、37℃にて60分間静置。
(7)各ウェルをリン酸緩衝液にて5回洗浄。
(8)発色:発色試薬(ABTS;50μL/well)で15分間反応。
(9)シュウ酸の2%水溶液(50μL/well)で反応停止。
(10)吸光度測定:415nm。
(11)標準ウマSAAの吸光度から標準曲線を作成。
(12)検体のSAA濃度を算出。
以上の測定条件にて得られた標準曲線は図3に示すとおりであり、抗ウマSAAポリクローナル抗体や抗血清を用いた場合と同程度又はそれ以上の感度を有し、ウマSAA測定の最小検出感度は、0.098μg/mLであった。
〔Exp.2−2〕(免疫クロマトグラフ法による測定条件検討及び確立)
ここでは、標識剤として金コロイド(塩化金酸の還元により調製した20〜40nm金粒子分散コロイド:G Frens, Controlled Nucleation for Regulation of Particle Size in Monodisperse Gold Solutions, Nature (Physical Science)vol.241, pp.20−22(1973))、コントロール用抗体としてウサギ抗マウスIgG抗体を用い、ニトロセルロース膜の長さ方向一端部に吸水性材(綿布)からなる試料液アプライ部(サンプル添加口)と他端部に余剰試料液吸収部(濾紙)とを設け、ニトロセルロース膜の長さ方向中間にサンプル添加口側から一次反応部、2次反応検出部(テストライン捕捉部)及び対照反応確認部(コントロールライン捕捉部)を設けたテストストリップ(幅5mm×長さ75mm)を用いる免疫クロマトグラフ法(イムノクロマト法)について測定条件及び測定用キットの検討及び確立を行なった。なお、〔Exp.2−1〕におけるサンドイッチELISAの検討成績を参考にして、金コロイドによる標識抗体としてモノクローナル抗体JRASAA3Abを、また、テストライン捕捉部用抗体としてモノクローナル抗体JRASAA1Abを使用した。本実施例では、(抗ウマSAA)モノクローナル抗体の蛋白換算重量1μgと金コロイド液1mLとを混合し、室温で2分間静置してこの抗体を金コロイド粒子表面に結合させた後、金コロイド液における最終濃度が1%になるようにウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を加え、この金コロイド粒子の残余の表面をBSAでブロックして、金コロイド標識抗体液を調製した。モノクローナル抗体0.2mg/mLを含む溶液0.5μLをニトロセルロース膜(クロマト展開用膜担体)におけるクロマト展開開始始点側の末端から7.5mmの位置にライン状(線幅1mm)に塗布し、これを室温で乾燥して、SAA蛋白と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位であるテストライン捕捉部とした。また、一次反応部としては、帯状のガラス繊維不織布に、金コロイド標識抗体液37.5μLを含浸させ、これを室温で乾燥させた金コロイド標識抗体含浸部材をニトロセルロース膜に重ね合わせることにより構成した。
この結果から確立した測定条件は表2に示すとおりであり、また、ウマSAA測定用臨床検体(血清)を生理食塩水で2000倍希釈して試料液とし、サンプル添加口に試料液100μLを添加し、15分後にクロマトリーダー(Dia Scan 10−T、タウンズ社製)を用いテストライン捕捉部における呈色をデンシトメトリー(反射率測定法)によって測定した。以上のように確立したウマSAA測定用条件、測定用キットを使用して得られた測定値(x)から、検体のウマSAA濃度(y:μg/mL)を次のような換算式によって求めることができる。すなわち、測定値(x)が0〜380の場合にはy=0.262x、測定値(x)が380以上の場合にはy=0.04x−31.92x+6543.04により換算する。このようにして得られた検体のウマSAA濃度は、〔Exp.2−1〕におけるサンドイッチELISAにより測定された値に匹敵し、サンドイッチELISAと同等の感度、特異性レベルでウマSAAを定量可能である。
〔実施例3:ウマ炎症性疾患病態の診断方法〕
第3実施形態に準じ、ウマの検体(臨床検体)として、健常なサラブレット又は急性期相炎症症状を呈するサラブレットから採血して得られた血清を用い、実施例2にて確立したウマSAA測定用測定条件及び測定用キットにより各検体のウマSAA濃度を測定した。
〔Exp.3−1〕(健康馬におけるSAA値)
競馬出走に向けて十分なトレーニングが負荷されている健常なサラブレッド競走馬40頭を含む臨床的に健康なウマ(延べ185頭、雄104頭、雌81頭;2.5±0.8歳)を用いた。トレーニング終了後2時間以上が経過し、安静状態下にある競走馬の頚静脈からプレイン採血管(VP−P100K(商品名)、テルモ東京社製)を使用して血液を採取し、3000rpm(600×g)、4℃、10分間遠心分離して検体として血清を得た。各血清について実施例2で確立した測定方法によりSAAを測定した。その結果、健常馬群のSAA値は0.11±0.14μg/mLであった。また、185検体中76検体(41%)のSAA値は0μg/mLであり、最も高い検体でも1.0μg/mLであった。
〔Exp.3−2〕(実験的肺炎発症馬におけるSAAの変動)
若齢馬9頭(サラブレッド;雄2頭、雌7頭;1.0±0歳)に対し、ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(1010 CFU/頭)を内視鏡観察下で右肺後葉前部に接種して細菌性肺炎を誘発した。接種前および接種後1〜15日、22日および29日に臨床症状の観察および採血(プレイン採血管:VP−P100K(商品名)、テルモ東京社製)を実施した。各血液につき3000rpm(600×g)、4℃、10分間遠心分離して検体として血清を得た。各血清について実施例2で確立した測定方法によりSAAを測定した。その結果は、採血と同時に測定した体温と共に図4に示すとおり(9頭の平均値±SD)、細菌接種24時間後には、接種前値(0.2±0.4μg/mL)に比較して著しく上昇(297.6±146.1μg/mL)した。その最大値は、細菌接種後3日目(925.0±447.5μg/mL)に認められた。また、細菌接種前値への復帰日数は、細菌接種後15日であった。細菌接種後に認めた発熱は、細菌接種後11日に接種前値に復し、それに伴い臨床症状も消失した。
以上、実施例1〜3の結果から、実施例1により作製したモノクローナル抗体、特に、JRASAA1Ab、JRASAA3Abは、ウマSAAに対する特異性および親和性が高いことから、極めて鋭敏にウマSAAを検出することが確認された。また、これまでの研究成績から、健常なウマにおけるSAAの生理基準値は0〜1μg/mLであるが、JRASAA1Ab、JRASAA3Abの両モノクローナル抗体を用い実施例2のように確立したウマSAAの免疫学的測定キット及び測定方法は、極めて感度がよく(最小検出感度:0.098μg/mL)、健康馬と病馬を明確に区別することができ、ウマ炎症性疾患の病態に即した反応を示すことから、臨床的にも極めて有用な測定系であることが確認された。
本発明の実施例1において、ウマの血液から得られたアポ蛋白質である精製ウマSAA蛋白質につき、その純度、分子量を試験した結果の一例を示す電気泳動像の図面代用写真である。 本発明によるモノクローナル抗体のウマSAAに対する特異性について試験した結果の一例を示すウエスタンブロッティング像の図面代用写真である(レーン1:JRASAA1Ab、レーン2:JRASAA3Ab、レーン3:JRASAA5Ab、レーン4:JRASAA7Ab)。 本発明による免疫学的測定法に固相酵素免疫測定法(サンドイッチELISA)を採用した一例(実施例2)としてのウマSAA免疫学的測定用キットを用いた場合の標準曲線を示すグラフである。 本発明のウマ炎症性疾患(病態)診断方法による試験結果の一例として、実験的肺炎発症馬におけるSAA測定値の変動を体温の変動と対比して示すグラフである。

Claims (8)

  1. ウマ血清アミロイドA(ウマSAA)と特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体。
  2. ウマの血液から分離精製し得られるアポ蛋白質を免疫原として用い調製したハイブリドーマによって産生されたものであることを特徴とする請求項1に記載のモノクローナル抗体。
  3. 前記ハイブリドーマが、JRA−SAA1(受託番号Ferm P−21165)又はJRA−SAA3(受託番号Ferm P−21166)であることを特徴とする請求項2に記載のモノクローナル抗体。
  4. ウマSAAの免疫学的測定に用いられ、請求項1乃至3のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含んでなることを特徴とするウマSAA測定用キット。
  5. 前記免疫学的測定の方法が、固相酵素免疫測定法であることを特徴とする請求項4に記載のウマSAA測定用キット。
  6. 前記免疫学的測定の方法が、免疫クロマトグラフ法であることを特徴とする請求項4に記載のウマSAA測定用キット。
  7. 請求項4乃至6のいずれかに記載のウマSAA測定用キットを用いて、ウマから採取した血液中のSAAを測定することによってウマの炎症性疾患の病態診断を行なうことを特徴とするウマ炎症性疾患診断方法。
  8. 前記ウマの炎症性疾患が感染症疾患であることを特徴とする請求項7に記載のウマ炎症性疾患診断方法。
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