JP2023146558A - 全長遊離aimに特異的なモノクローナル抗体およびその利用 - Google Patents

全長遊離aimに特異的なモノクローナル抗体およびその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】 AIMの特定の形態のみに結合するモノクローナル抗体、および当該モノクローナル抗体を用いた試料中の全長遊離AIMの免疫学的分析法を提供すること。【解決手段】 AIMのSRCR3ドメインを認識し、全長遊離AIMに特異的なモノクローナル抗体を作製し、当該モノクローナル抗体を用いて試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析することに成功した。【選択図】 なし

Description

本発明は、全長遊離AIMに特異的なモノクローナル抗体、および試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析するための当該モノクローナル抗体の利用に関する。
AIM(apoptosis inhibitor of macrophage;CD5L、api6、Spαとも称する)は、組織マクロファージが特異的に産生する約50kDaの分泌型タンパク質として知られ(非特許文献1)、急性腎障害、脂肪肝、肝細胞癌、肥満、真菌性腹膜炎、多発性硬化症など様々な疾患に対し抑制的な効果をもち、幅広い疾患に対する新規治療薬となる可能性が明らかにされている。
AIMの構造は、システイン残基を多く含む特異的な配列であるSRCR(scavenger receptor cysteine-rich)ドメインがタンデムに3つつながれた構造をしており、それぞれのシステイン残基は各ドメイン内で互いにジスルフィド結合することで、コンパクトな球状の立体構造をしていると考えられている。
AIMは、様々な分子と相互作用することが知られており、その結合パートナーとして様々な分子が報告されている。例えば、LTA(lipoteichoic acid)やLPS(lipopolysaccharide)などの菌類の病原体関連分子パターン(pathogen-associated molecular patterns:PAMPs)と結合し、細菌を凝集させる能力を持つことが知られている(非特許文献2)。また、体内には、AIMを細胞表面に結合する、あるいは細胞内に取り込む細胞も多く存在しており、産生細胞であるマクロファージ自身への取り込みのほか、脂肪細胞ではスカベンジャー受容体CD36を介してエンドサイトーシスにより取り込まれ、脂肪分解を誘導することが報告されている(非特許文献3)。
また、AIMは、血液中ではIgMに結合することが知られている。近年では、AIMが尿に排出されずに血液中で安定的に存在するためには、AIMとIgMの結合が重要であることが報告されている。また、血清検体中においては、AIMの多くはIgM結合型AIMとして存在しており、単量体で存在することがほとんどないことが報告されている(非特許文献4、5)。その一方、AIMは、疾患発症時にIgMから解離、活性化して、疾患の治癒を促進することが明らかになっている(非特許文献4)。血中でIgMから解離した遊離AIMは、糸球体の濾過膜を通過し、近位尿細管へと移行する。遊離AIMは尿細管の中の死細胞塊に付着し、周囲の細胞の貪食を促進することで急性腎障害の治癒に貢献し、この時、遊離AIMは尿中に排出される。実際、急性腎障害患者では、血中遊離AIMおよび尿中AIM濃度の顕著な増大が認められることが報告されている(非特許文献6)。
しかしながら、ヒト検体に存在するAIMの形態については、これまで十分な検証がなされてきたとは言えず、尿中のAIMの形態を免疫学的に分析するために、AIMの特定の形態のみに結合するモノクローナル抗体が必要とされていた。
Miyazaki T. et al.,J Exp Med 189:413-422,1999 Sarrias MR et al.,J Biol Chem 280:35391-35398,2005 Kurokawa J et al.,Cell Metab 11:479-492,2010 宮崎ら, 日本臨牀71巻9号(2013-9),1681頁-1689頁 Arai S.et al.,ScienceDirect 3(4):1187-1198,2013 北田研人ら,日腎会誌 58(8):1234-1237,2016
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、AIMの特定の形態のみに結合するモノクローナル抗体を提供することにある。本発明のさらなる目的は、当該モノクローナル抗体を用いて、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、AIMを認識する様々なモノクローナル抗体を作製し、ヒト尿検体および血清検体におけるAIMの検出を行った結果、ヒト尿中では、AIMは、全長遊離AIMとそのC末端側が切断されて分子量が小さくなった遊離AIM(以下、Small AIMと称する)の2つの形態で存在することを見出し、ヒト血清中では、ほとんどが全長遊離AIMであることを見出した。
さらに、本発明者らは、AIMの識別に使用したモノクローナル抗体のエピトープ解析の結果、AIMのSRCR3ドメインを認識するモノクローナル抗体が、全長遊離AIMへの特異性をもたらし、試料中の全長遊離AIMと他の形態のAIM(Small AIM、IgM結合型AIM)の免疫学的な識別に特に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、AIMのSRCR3ドメインを認識し、全長遊離AIMに特異的なモノクローナル抗体およびその利用に関し、より詳しくは、以下を提供するものである。
[1]ヒトAIMの263位から347位に結合するモノクローナル抗体。
[2]ヒトAIMの295位から347位に結合するモノクローナル抗体。
[3][1]または[2]に記載のモノクローナル抗体を試料に接触させることを含む、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析する方法。
[4][1]または[2]に記載のモノクローナル抗体を含む、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析するための組成物。
[5][1]または[2]に記載のモノクローナル抗体が結合した、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析するための固相。
[6][4]に記載の組成物または[5]に記載の固相を含む、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析するためのキット。
[7]全長遊離AIMに特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法であって、ヒトAIMまたはその263位から347位を含む断片で免疫してモノクローナル抗体を調製する工程、およびヒトAIMの263位から347位に結合するモノクローナル抗体を選抜する工程、を含む方法。
[8]全長遊離AIMに特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法であって、ヒトAIMまたはその295位から347位を含む断片で免疫してモノクローナル抗体を調製する工程、およびヒトAIMの295位から347位に結合するモノクローナル抗体を選抜する工程、を含む方法。
[9]ヒトAIMの263位から347位に結合するモノクローナル抗体を含む、AIM関連疾患の治療薬。
[10]ヒトAIMの295位から347位に結合するモノクローナル抗体を含む、AIM関連疾患の治療薬。
[11]ヒトAIMの263位から347位に結合するモノクローナル抗体を用いて、全長遊離AIMを免疫学的に検出することを含む、AIM関連疾患の検査方法。
[12]ヒトAIMの295位から347位に結合するモノクローナル抗体を用いて、全長遊離AIMを免疫学的に検出することを含む、AIM関連疾患の検査方法。
[13]ヒトAIMの263位から347位に結合するモノクローナル抗体を含むAIM関連疾患の検査用キット。
[14]ヒトAIMの295位から347位に結合するモノクローナル抗体を含むAIM関連疾患の検査用キット。
本発明により、初めて、ヒト尿中において、AIMが、全長遊離AIMとSmall AIMの2つの形態で存在することが見いだされたが、このAIMの2つの形態は、その生理的意義が異なることが予想される。本発明のモノクローナル抗体によれば、Small AIMやIgM結合型AIMの影響を排除して、試料中の全長遊離AIMを特異的に分析することが可能となる。
ゲル濾過クロマトグラフィーにより分画した全長AIM(rAIM)の濃度を市販のキットを用いたサンドイッチELISA法により検出した結果を示す図である。 ゲル濾過クロマトグラフィーにより分画した血清中のAIMを、様々な抗体の組み合わせ(試薬1~3)を用いた生物発光酵素免疫測定法(BLEIA(登録商標)法)により検出した結果を示す図である。比較例として、市販のキットを用いたサンドイッチELISA法により検出した結果を示した。 様々な抗体の組み合わせ(試薬1~3)を用いたBLEIA法により、全長AIM(rAIM)およびrSmall AIMを検出した結果を示す図である。 血清中のAIMのウエスタンブロット法の結果を示す図である。 抗体クローンのエピトープマッピングの結果を示す図である。
本発明は、全長遊離AIMに特異的なモノクローナル抗体を提供する。
本発明における「AIM」は、組織マクロファージにより産生される、約40kDaの分泌型の血中タンパク質である。ヒト由来のAIMの典型的なアミノ酸配列を配列番号1に示す。なお、タンパク質をコードする遺伝子のDNA配列は、その変異等により、自然界において(すなわち、非人工的に)変異し得る。したがって、本発明にかかるAIMは、前記典型的なアミノ酸配列に特定されることなく、それらアミノ酸配列の天然の変異体も含まれる。ヒト由来のAIMは、システインを多く含む3つのSRCRドメインを含んでおり、SRCR1ドメインは、配列番号1の24~124位に相当し、SRCR2ドメインは、配列番号1の138~238位に相当し、SRCR3ドメインは、配列番号1の244~346位に相当する。
本発明において「遊離AIM」とは、IgMと結合していない状態で存在するAIMを意味し、IgMとの複合体の状態で存在する複合体AIM(以下、「IgM結合型AIM」と称する)との対比で用いられる。また、「全長遊離AIM」とは、遊離AIMのうち、完全長のアミノ酸配列を有するAIMを意味し、C末端側が切断されて分子量が小さくなった遊離AIMであるSmall AIMとの対比で用いられる。Small AIMは、例えば、配列番号1に示されるヒトAIMのアミノ酸配列における262位以下、1~262位を有する。Small AIMは遊離AIMに含まれうる。
本発明において「全長遊離AIMに特異的」とは、実質的にIgM結合型AIMおよびSmall AIMと交差反応しない、すなわち遊離AIMに対する反応性に対し、IgM結合型AIMに対する反応性が十分に低く、かつ、全長AIMに対する反応性に対し、Small AIMに対する反応性が十分に低いことを意味する。「十分に低い」とは、遊離AIMとの反応性に対して、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、かつ、全長AIMとの反応性に対して、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下であることを指す。これらAIMへの反応性は、例えば、評価対象となるモノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法により評価することができる。サンドイッチELISA法において評価対象となるモノクローナル抗体と組み合わせる抗体としては、AIMを認識できる限り特に制限はなく、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。組み合わせるモノクローナル抗体は、評価対象となるモノクローナル抗体とAIMへの結合において競合しないこと(すなわち、異なるエピトープを認識すること)が好ましい。
サンドイッチELISA法は、例えば、実施例1および2に記載の方法に準じて行うことができる。具体的には、まず、評価対象となるモノクローナル抗体をプレートに結合(固相化)したモノクローナル抗体固相化プレートを作製し、モノクローナル抗体固相化プレートに、試料(遊離AIMを含む試料、全長遊離AIMを含む試料、Small AIMを含む試料、またはIgM結合型AIMを含む試料)を添加して反応させる。次いで、洗浄後、ポリクローナル抗AIM抗体を添加して反応させ、洗浄後、さらに、標識した二次抗体を添加して反応させる。洗浄後、最後に、標識のシグナル強度を測定する。標識として、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用いた場合、発色基質を添加後、マイクロプレートリーダーを用いてシグナルを測定することができる。
全長遊離AIMに特異的なモノクローナル抗体の一つの好ましい態様は、配列番号1に記載の263~347位からなるアミノ酸配列、好ましくは295~347位からなるアミノ酸配列に結合するモノクローナル抗体である。当該モノクローナル抗体は、典型的には、AIMのSRCR3ドメインの一部を認識する。具体例としては、本願実施例に記載の抗体クローン3および抗体クローン4が挙げられる。
本発明のモノクローナル抗体の作製は、一般的に知られている方法で行えばよい。例えば、本願実施例に記載のように、まず、組換えAIM(rAIM)またはその一部を免疫原としてハイブリドーマを作製し、その中から、当該AIMに対して高い反応性を示すモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選抜し、さらに、選抜したハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体について、AIMの各形態への特異性の解析やエピトープ解析を行って、上記特徴を有するモノクローナル抗体を産生するクローンを同定すればよい。
本発明によれば、AIMまたは、配列番号1に記載の263~347位、好ましくは295~347位を含む断片で免疫してモノクローナル抗体を調製し、AIMの263~347位、好ましくは295~347位に結合するモノクローナル抗体を選択することにより、効率的に、全長遊離AIMに特異的に結合するモノクローナル抗体を製造することができる。
モノクローナル抗体を製造するための方法としては、ハイブリドーマ法、代表的には、ケーラーおよびミルスタインの方法(Kohler&Milstein,Nature,256:495(1975))が挙げられる。この方法における細胞融合工程に使用される抗体産生細胞は、抗原(標的タンパク質、その部分ペプチド、またはこれらを発現する細胞など)で免疫された動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、サル、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ラクダ、アルパカ、ニワトリ)の脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血白血球などである。免疫されていない動物から予め単離された上記の細胞またはリンパ球などに対して、抗原を培地中で作用させることによって得られた抗体産生細胞も使用することが可能である。ミエローマ細胞としては公知の種々の細胞株を使用することが可能である。抗体産生細胞およびミエローマ細胞は、それらが融合可能であれば、異なる動物種起源のものでもよいが、好ましくは、同一の動物種起源のものである。ハイブリドーマは、例えば、抗原で免疫されたマウスから得られた脾臓細胞と、マウスミエローマ細胞との間の細胞融合により産生され、その後のスクリーニングにより、抗原に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。抗原に対するモノクローナル抗体は、ハイブリドーマを培養することにより、また、ハイブリドーマを投与した哺乳動物の腹水から、取得することができる。
また、目的とするモノクローナル抗体をコードするDNAが取得できれば、組換えDNA法によって作製することもできる。この方法は、上記抗体をコードするDNAをハイブリドーマやB細胞などからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主細胞(例えば哺乳類細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞など)に導入し、組換え抗体として産生させる手法である(例えば、P.J.Delves,Antibody Production:Essential Techniques, 1997、WILEY、P.Shepherd and C.Dean, Monoclonal Antibodies, 2000, OXFORD UNIVERSITY PRESS、Vandamme A.M. et al.,Eur.J.Biochem.192:767-775, 1990)。抗体をコードするDNAの発現においては、重鎖または軽鎖をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換してもよく、重鎖および軽鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換してもよい(国際公開第94/11523号参照)。組換え抗体は、上記宿主細胞を培養し、宿主細胞内または培養液から分離・精製し、実質的に純粋で均一な形態で取得することができる。抗体の分離・精製は、通常のポリペプチドの精製で使用されている方法を使用することができる。トランスジェニック動物作製技術を用いて、抗体遺伝子が組み込まれたトランスジェニック動物(ウシ、ヤギ、ヒツジまたはブタなど)を作製すれば、そのトランスジェニック動物のミルクから、抗体遺伝子に由来するモノクローナル抗体を大量に取得することも可能である。
本発明のモノクローナル抗体は、完全な抗体のみならず、抗原を認識し得る限り、抗体断片であってもよい。抗体断片は、例えば、F(ab’)、Fab’、Fab、Fv、単鎖抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明は、また、上記本発明のモノクローナル抗体を試料に接触させることを含む、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析する方法を提供する。
本発明の方法に用いられる「試料」としては、全長遊離AIMが存在し得る試料である限り特に制限はない。組織または体液を用いてもよく、組織としては、卵巣、子宮、乳房、甲状腺、脳、食道、舌、肺、膵臓、胃、小腸、十二指腸、大腸、膀胱、腎臓、肝臓、前立腺、胆嚢、咽頭、筋肉、骨および皮膚などが挙げられるがこれらに限定されない。体液としては、血清、血漿または全血などの血液、リンパ液、組織液、体腔液、消化液、鼻汁、尿などが挙げられる。
試料への本発明のモノクローナル抗体の「接触」は、例えば、本発明のモノクローナル抗体を試料に添加すること又は試料と混合すること等により行うことができる。
本発明の方法における「分析」は、全長遊離AIMの検出、定量、局在の解析など、全長遊離AIMを対象とした様々な分析が含まれる。
試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析する方法としては、例えば、標識物質で標識された抗体を用いるイムノアッセイ(標識イムノアッセイ)が挙げられ、標識した検出用抗体や検出用抗体に対する標識抗体を用いる免疫学的測定法である。例えば、免疫比ろう法、免疫比濁法等による免疫凝集法(ラテックス凝集法、金コロイド凝集法等)、標識として酵素を用いる酵素免疫測定法(EIA法)、標識として放射性同位元素を用いる放射免疫測定法(RIA法)、標識として化学発光性化合物を用いる化学発光免疫測定法(CLIA法)、標識として電気化学発光物質を用いる電気化学発光免疫測定法(ECLEIA法)、標識として蛍光物質を用いる蛍光免疫測定法、イムノクロマトグラフィー法、ウエスタンブロット法、イムノブロット法などが挙げられるが、これらに制限されない。
酵素免疫測定法としては、例えば、ELISA法、CLEIA法(化学発光酵素免疫測定法)や生物発光酵素免疫測定法が挙げられ、生物発光酵素免疫測定法としては、例えば、BLEIA(商標登録)法が挙げられる。
免疫学的に分析する方法として標識イムノアッセイを適用する場合、固相に固定(結合)した抗原捕捉用抗体(固相化抗体)および検出用抗体のうち少なくとも一方が上記本発明のモノクローナル抗体であればよく、上記本発明のモノクローナル抗体に標識物質を結合させて標識し、全長遊離AIMを直接的に検出するようにしてもよく、上記本発明のモノクローナル抗体には標識物質を結合せず、標識物質が結合した二次抗体などを利用して全長遊離AIMを間接的に検出するようにしてもよい。
標識イムノアッセイにおいて、固相に固定(結合)した抗原捕捉用抗体(固相化抗体)および標識した抗体(検出用抗体)の少なくとも一方に、本発明のモノクローナル抗体を用いた場合、他の一方の抗体は、AIMに結合し得る抗体(抗AIM抗体)であればよく、本発明のモノクローナル抗体以外の抗体を用いることもできる。他の一方の抗体は、モノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよい。本発明のモノクローナル抗体と組み合わせるモノクローナル抗体は、全長遊離AIMとの結合において競合しないこと(すなわち、異なるエピトープを認識すること)が好ましい。
標識イムノアッセイにおいて、抗原捕捉用抗体として本発明のモノクローナル抗体を用い、検出用抗体として他の抗体を用いる場合には、当該他の抗体を標識して用いることができる。また、当該他の抗体を標識しない場合には、同様に、標識された二次抗体などを利用するようにしてもよい。
ここで「二次抗体」とは、抗原に直接結合する抗体(一次抗体)に対して反応性を示す抗体である。例えば、一次抗体をマウス抗体とした場合には、二次抗体として抗マウスIgG抗体を使用することができる。ウサギ、ヤギ、マウスなどの様々な生物種に由来する抗体に対して、使用可能な標識二次抗体が市販されており、一次抗体の由来する生物種に応じて、適切な二次抗体を選択して使用することができる。二次抗体に代えて、標識物質を結合させたプロテインGやプロテインAなどを用いることも可能である。
よって、上記のとおり、標識物質を結合させた本発明のモノクローナル抗体を用いて全長遊離AIMを直接的に検出する方法以外に、本発明のモノクローナル抗体には標識物質を結合せず、標識物質が結合した二次抗体などを利用して間接的に検出する方法を利用することもできる。
標識物質としては、抗体に結合させて検出できるものであれば特に制限はないが、例えば、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(ALP)、βガラクトシダーゼ(β-gal)、ホタルルシフェラーゼなど)、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)やローダミンイソチオシアネート(RITC)など)、蛍光タンパク質(アロフィコシアニン(APC)やフィコエリスリン(R-PE)など)、125Iなどの放射性同位元素、磁気粒子、ラテックス粒子(例えば、ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体等)、金属コロイド粒子(例えば、金、銀、銅、鉄、白金、パラジウム等、またはこれらの混合物)、アビジン、ビオチンなどが挙げられる。
標識物質として酵素を用いた場合には、基質として、過酸化物および/または発色基質、蛍光基質、あるいは化学発光基質などを添加することにより、基質に応じて種々の検出を行うことができる。
例えば、酵素として、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用いる場合、過酸化水素とともに基質として、o-フェニレンジアミン(発色)、テトラメチルベンチジン(TMBZ)(発色)、ルミノール(化学発光)等を用いてもよく、酵素として、アルカリホスファターゼ(ALP)を用いる場合、その基質は、p-ニトロフェニルホスファート(発色)、AMPPD(登録商標)(化学発光)等であってよい。
酵素としてホタルルシフェラーゼを用いる場合、ATPとともに、基質としてホタル・ルシフェリンなどを用いてもよく、酵素として特許第3466765号公報に記載のビオチン化ルシフェラーゼを、基質として特許第4379644号公報や特許第4503724号公報に記載のルシフェリンを使用してもよい。
また、酵素がストレプトアビジンと結合して基質と反応して蛍光、発光又は発色を生じる場合、標識をビオチンとしてもよい。
抗体と標識物質との結合方法としては、公知の方法で行うことができ、例えば、ビオチン-アビジン系を利用することもできる。この方法においては、例えば、ビオチン化した抗体に、アビジン化した標識物質を作用させ、ビオチンとアビジンの相互作用を利用して、抗体に標識物質を結合させる。
また、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析する方法として、例えばサンドイッチ法を含む非競合的測定法や競合的測定法を利用することができる。
また、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析する方法として、不溶性担体等を用い、B/F分離を行うヘテロジニアスな方法(例えば、サンドイッチ法)で測定することも、B/F分離を行わないホモジニアスな方法(例えば、免疫凝集法)で測定することも可能である。
サンドイッチ法では、固相に固定(結合)した抗原捕捉用抗体で全長遊離AIMを捕捉し、それを標識物質が結合した検出用抗体に認識させ、B/F分離(洗浄)後、標識物質自体、又は酵素等の標識物質に対する基質等を加えて発色等させることにより、試料中の全長遊離AIMを検出する。
本発明の方法における全長遊離AIMの検出原理としては、高感度な検出システムを構築することができる点で、サンドイッチ法が好適である。
また、イムノクロマトグラフィー法のように、標識物質が結合した検出用抗体で全長遊離AIMを認識させ、B/F分離を行いつつ、固相に固定(結合)した抗原捕捉用抗体で全長遊離AIMを捕捉し、標識物質の種類に応じた検出を行うようにしてもよい。
また、BLEIA法のように、磁性粒子に抗原捕捉用抗体を結合させ、当該抗体と試料中の全長遊離AIMを反応させ、B/F分離後、ビオチン化した検出用抗体と反応させ、B/F分離後、ルシフェラーゼで標識したアビジンを用いて免疫反応を行い、B/F分離後、ルシフェリンを添加し、ルシフェラーゼ複合体の酵素活性を生物発光で検出し、試料中の全長遊離AIMを検出してもよい。
また、免疫凝集法のように、液相中で、本発明のモノクローナル抗体が固定(結合)された不溶性担体粒子(固相)を用い、当該不溶性担体粒子と全長遊離AIMとの免疫複合体の形成により不溶性担体粒子が凝集する性質を利用して、濁度の測定や目視、吸光度の測定により、不溶性担体粒子の凝集を検出してもよい。全長遊離AIMの検出前にB/F分離の工程が不要であり、簡便かつ迅速に全長遊離AIMの検出が可能であるという利点を有することから、本発明の方法では免疫凝集法が好ましい。
不溶性担体(固相)としては、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ラテックス、ゼラチン、アガロース、ニトロセルロース、セファロース、ガラス、金属、セラミックス、又は磁性体等の材質より成る粒子、プレート、又は試験片等の形状の不溶性担体を用いることができる。特に、不溶性担体粒子としては、金属や磁性粒子等を用いることができるが、ラテックス粒子が好ましく、一般に、ポリスチレンラテックスが用いられる。
抗体は、固相の表面に公知の技術、例えば物理吸着または化学結合によって固定化することができる。捕捉用抗体は固相に直接固定してもよいが、間接的に固定してもよい。例えば、捕捉用抗体に結合する物質を固相に固定し、当該物質に捕捉用抗体を結合させることにより、捕捉用抗体を固相に間接的に固定することができる。捕捉用抗体に結合する物質としては、例えば、上記の二次抗体、プロテインG、プロテインAなどが挙げられるが、これらに制限されない。また、捕捉用抗体がビオチン化されている場合には、アビジン化した固相を利用することができる。
得られた測定値からの全長遊離AIMの定量は、一般的に、標準試料による測定値との比較により行うことができる。この場合、例えば、標準検体による測定値に基づいて作成された標準曲線(検量線)上のどの位置に、実際の測定値が位置づけられるかを調べることにより、試料中の全長遊離AIMを定量することができる。
また、本発明は、上記本発明のモノクローナル抗体を含む、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析するための組成物を提供する。本発明の組成物に含まれるモノクローナル抗体は、上記の通り、標識物質が結合したものであってもよく、固相に結合したものであってもよい。
固相としては、上記不溶性担体が挙げられ、例えば、サンドイッチELISA法などのサンドイッチ法を検出原理とする場合には、本発明のモノクローナル抗体が結合したプレート、繊維状物質、粒子などが挙げられる。
イムノクロマトグラフィーを検出原理とする場合には、本発明のモノクローナル抗体が標識試薬ゾーンに含まれる不溶性担体粒子(検出用抗体の場合)または検出ゾーン(捕捉用抗体の場合)に結合したイムノクロマトデバイスが挙げられる。
また、免疫凝集法を検出原理とする場合には、本発明のモノクローナル抗体が結合した不溶性担体粒子、例えばラテックス粒子が挙げられる。
本発明の組成物においては、抗体成分の他、必要に応じて、滅菌水、生理食塩水、緩衝剤、保存剤など、他の成分を含むことができる。
また、本発明は、上記本発明のモノクローナル抗体が結合した、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析するための固相を提供する。
本発明のモノクローナル抗体が結合した固相としては、上記不溶性担体が挙げられ、例えば、サンドイッチELISA法などのサンドイッチ法を検出原理とする場合には、本発明のモノクローナル抗体が結合したプレート、繊維状物質、粒子などが挙げられる。
イムノクロマトグラフィーを検出原理とする場合には、本発明のモノクローナル抗体が標識試薬ゾーンに含まれる不溶性担体粒子(検出用抗体の場合)または検出ゾーン(捕捉用抗体の場合)に結合したイムノクロマトデバイスが挙げられる。
また、免疫凝集法を検出原理とする場合には、本発明のモノクローナル抗体が結合した不溶性担体粒子、例えばラテックス粒子が挙げられる。
また、本発明は、上記本発明の組成物または固相を含む、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析するためのキットを提供する。本発明のキットは、必要に応じて、さらに、標準試料(各濃度の全長遊離AIMを含む試薬)、対照試薬、試料の希釈液、希釈用カートリッジ、洗浄液などを組み合わせることができる。検出に酵素標識を利用する場合には、標識の検出に必要な基質や反応停止液などを含めることができる。間接的に全長遊離AIMを検出する場合においては、一次抗体に結合する物質(二次抗体、プロテインAなど)を標識したものを含めることができる。また、本発明のモノクローナル抗体をビオチン化している場合には、アビジン化した標識を含めることができる。本発明のキットには、さらに、当該キットの使用説明書を含めることができる。
また、本発明は、本発明のモノクローナル抗体を用いて、上記免疫学的方法により全長遊離AIMを検出することを含む、AIM関連疾患の検査方法を提供する。さらに、本発明は、本発明のモノクローナル抗体を含むAIM関連疾患の検査用キットを提供する。
さらに、本発明は、本発明のモノクローナル抗体を含むAIM関連疾患の治療薬を提供する。本発明のモノクローナル抗体は、AIMとIgMとの結合を阻害し、IgMによるAIMの不活性化を抑制し得る。従って、この機序により、上記AIM関連疾患を治療することも考えられる。
なお、本発明の方法において、「AIM関連疾患」としては、AIMをマーカーとし得る疾患であれば特に制限はなく、例えば、腎疾患(特に、急性腎障害)、感染症、炎症、動脈硬化、肥満関連炎症性疾患、COPD、癌、肝疾患(肝がん、脂肪肝など)、喘息、肺結核、変形性関節症、関節リウマチ、敗血症、虚血性脳卒中、肥満などが挙げられる。
また、本発明の「治療薬」は、本発明のモノクローナル抗体等の他、薬理学上許容される他の成分(医薬組成物として許容される他の成分)を含むことができる。このような他の成分としては、例えば、担体、乳化剤、湿潤剤、pH緩衝化剤、培地、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、等張化剤、懸濁剤、可溶化剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤が挙げられる。より具体的に、薬理学上許容される他の成分としては、注射剤等の液状製剤の場合には、水溶液(生理食塩水、注射用水、リン酸塩緩衝液、葡萄糖水溶液、グリセロール水溶液等)、水酸化アルミニウム等を例として挙げることができる。また、凍結乾燥した製剤の場合、糖(マンニトール、ラクトース、サッカロース等)、アルブミン等を例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明の治療薬は、上記成分が投与前に混合され得るような、キットの態様であってもよい。また、注射剤として用いる場合には、シリンジに導入された形態であり得る。
治療薬の投与方法は、組成物の態様、対象の年齢、体重、性別、健康状態などにより異なるが、非経口投与(例えば、静脈投与、動脈投与、局所投与)、経口投与のいずれかの投与経路で投与することができる。また、全身投与によらず、局所投与を行ってもよい。局所投与として、標的とする組織、臓器、器官への直接注入を例示することができる。
治療薬の投与量は、対象の年齢、体重、性別、健康状態、症状の進行の程度等により変動し得る。また、投与スケジュールも、これら条件によって適宜調整され、単回投与の他、連続的又は定期的に複数回投与してもよい。
[参考例1]抗AIM抗体の作製
抗原としてヒトリコンビナントAIM(以下、rAIM)(30~50μg)をマウスに3週間間隔で3~6回免疫した。免疫後の脾細胞とマウスミエローマ細胞とを融合し、融合された細胞を限外希釈法にてクローニングした。細胞をクローニング後、免疫原を固相化したELISA法でスクリーニングし、rAIMと反応を示す抗体を産生する細胞を得た。抗体産生が確認された細胞を培養し、培養上清中に産生された抗体をプロテインA又はプロテインGを用いて精製し、各抗体(以下、クローン1、クローン3、クローン4、またはクローン81と称する)を得た。
[参考例2]rAIMおよびrSmall AIMの作製
rAIMは、文献(生化学第84巻第7号,機能的なrAIMタンパク質の精製,588-591頁,2012)に記載の方法で作製し、全長AIMとして用いた(以下、全長AIMともいう)。リコンビナントSmall AIM(rSmall AIM)は、配列番号1に示されるAIMの1~262位のアミノ酸配列の発現株を用いた点を除き文献(生化学第84巻第7号,機能的なrAIMタンパク質の精製,588-591頁,2012)に記載の方法で作製し、Small AIMとして用いた(以下、Small AIMともいう)。
[実施例1]抗体の遊離AIMに対する特異性解析
ウサギにrAIMを免疫して通常の方法で得たウサギポリクローナル抗AIM抗体および参考例1で得た各モノクローナル抗体を固相用抗体として用いて、以下の方法で得た遊離AIMまたはIgM結合型AIMとの反応性を確認した。
(1)試料
測定試料は、血清検体を緩衝液(0.05M リン酸緩衝液:pH7.0,塩化ナトリウム:0.3M)に溶解し、カラムに注入して、以下の条件にてゲルろ過クロマトグラフィーによる分画を行い得た。
ゲルろ過クロマトグラフィー条件
使用機器:SHIMADZU SPD-20AV
カラム:PHENOMENEX(登録商標) SEC-3000
移動相:0.05M リン酸緩衝液,0.3M NaCl,pH7.0
流量:0.5mL/min
分画:0.5mL/fraction
溶出時間10-17分(溶出液量5-8.5mL)のフラクションを、AIM測定用キット(IBL社製)によって定量し、IgM結合型AIM20ng/mLの試料を調製した。同様に、溶出時間19-23分(溶出液量9.5-11.5mL)のフラクションから遊離AIM20ng/mLの試料を調製した。
(2)測定方法
固相用抗体(クローン1、クローン3、クローン4、またはクローン81)を96穴マイクロプレートの各ウェルに分注して固相化した後、洗浄し、1%BSAを含む溶液を加えて室温で2時間静置した。プレートを洗浄し、試料50μLを加えて室温にて1時間反応させた。次いで、ウェル内の溶液を吸引除去、洗浄後、ウサギポリクローナル抗AIM抗体50μLを加えて室温にて1時間反応させた。さらにウェル内の溶液を吸引除去、洗浄後、anti-rabbit IgG-HRP50μLを添加し、室温にて1時間反応させた。さらにウェル内の溶液を吸引除去、洗浄後、過酸化水素水、o-フェニレンジアミン含有緩衝液を50μL添加し反応させた後、2N硫酸50μLを反応停止液として添加した。マイクロプレートリーダーを用いて測定波長492/650nmにて測定した。
(3)測定結果
各抗体について、遊離AIMの測定値を基準(100)とした、遊離AIMの反応性に対するIgM結合型AIMの反応性の比(単位は、%)を表1に示す。抗体クローン3、抗体クローン4、抗体クローン1は、遊離AIMに特異的であることが判明した。
なお、本実施例で用いたポリクローナル抗体は、AIMの20-128位、124-240位、236-337位の各ペプチドと反応することをサンドイッチELISA法で確認している。
[実施例2]抗体の全長AIM、Small AIMに対する特異性解析
ウサギにrAIMを免疫して通常の方法で得たウサギポリクローナル抗AIM抗体および参考例1で得た各モノクローナル抗体を固相用抗体として用いて、参考例2の方法で得た全長AIMまたはSmall AIMとの反応性を測定した。
(1)試料
測定試料は、参考例2の方法で得た全長AIMまたはSmall AIMをPBSでそれぞれ20ng/mLに調製して得た。
(2)測定方法
測定試料の点を除き、各抗体の反応性を、実施例1と同様の測定方法で測定した。
各抗体について、全長AIMの測定値を基準(100)とした、全長AIMの反応性に対するSmall AIMの反応性の比(単位は、%)を表2に示す。抗体クローン3、抗体クローン4は、全長AIM特異的であることが示された。一方、抗体クローン1、抗体クローン81はSmall AIMに反応した。
なお、本実施例で用いたポリクローナル抗体は、AIMの20-128位、124-240位、236-337位の各ペプチドと反応することをサンドイッチELISA法で確認している。
[実施例3]サンドイッチELISA法による全長AIMの測定
参考例2で得た全長AIMをゲル濾過クロマトグラフィーによって溶出時間(溶出液量)ごとに分画し、反応性を測定した。
(1)試料
参考例2で得た全長AIMを、実施例1と同様の方法でゲルろ過クロマトグラフィーによる分画を行い、溶出時間8分から28分(溶出液量4-14mL)の0.5mL毎の分画を試料とした。
(2)測定方法
得られた試料について、Human AIM/CD5L Assay Kit(IBL,#27265)を用いてAIM濃度を測定した。
(3)測定結果
測定結果を図1に示す。参考例2で得た全長AIMは、20分(10mL)付近の分画試料においてメインピークが認められることが確認された。
[実施例4]生物発光酵素免疫測定法(以下、BLEIA法と称する)による遊離AIMに対する特異性解析
(1)試料
測定試料は、血清検体を緩衝液(0.05M リン酸緩衝液:pH7.0,塩化ナトリウム:0.3M)に溶解し、カラムに注入して、以下の条件にてゲルろ過クロマトグラフィーによる分画を行い得た。
ゲルろ過クロマトグラフィー条件
使用機器:SHIMADZU SPD-20AV
カラム:PHENOMENEX(登録商標) SEC-3000
移動相:0.05M リン酸緩衝液,0.3M NaCl,pH7.0
流量:0.5mL/min
分画:0.5mL/fraction
溶出時間9分から25分(溶出液量4.5-12.5mL)の0.5mL毎の分画を試料とした。
(2)遊離AIMに対する特異性解析
血清検体の分画試料を用いて、参考例1で得たクローン1、クローン3、クローン4、クローン81を以下の表3に記載の通り組み合わせて、BLEIA法で測定を行った。
(3)測定方法(BLEIA法)
特開平10-239314号公報(抗体と酵素の双方にビオチンを結合)に記載の方法で行った。詳細には、各種固相用抗体を磁性粒子に固相化した各種抗体固相化磁性粒子、標識用抗体(クローン81)とビオチン化試薬を混合して得られるビオチン標識抗体(クローン81)、およびストレプトアビジン-ビオチン化ルシフェラーゼを作製した。そして、試薬1~3の抗体の組合せにおいて、それぞれ、ビオチン標識抗体溶液80μLと、試料100μLと、抗体固相化磁性粒子(1.5mg/mL)20μLを混合し、37℃で15分間反応させた。さらに、磁性粒子を含む反応溶液に、BL洗浄液(栄研化学)500μLを加え、BL洗浄液を除去した。続いて、ストレプトアビジン-ビオチン化ルシフェラーゼを80μL加えて、37℃で15分間反応させた。磁性粒子を含む反応溶液にBL洗浄液(栄研化学)500μLを加え、洗浄液を除去した。続いて、BL発光試薬セット(栄研化学)のBL発光試薬1 50μLとルシフェラーゼに対する基質液(ルシフェリン溶液)であるBL発光基質液 50μLを加え、発光強度を全自動生物化学発光免疫測定装置BLEIA-1200にて測定し、試料中のAIM濃度を算出した。
(4)AIM総量(Total AIM)の測定(ELISA法)
市販キットHuman AIM/CD5L Assay Kit(IBL,#27265)(サンドイッチELISA法)を用いてAIM濃度を測定した(比較例)。
(5)測定結果
測定結果を図2に示す。試薬1、試薬2、試薬3のいずれにおいても、溶出時間(流量)が20分(10mL)付近の分画試料のピークのみが確認され、遊離AIMに特異的であることが判明した。
[実施例5]全長AIMに対する特異性解析
(1)試料
参考例2に記載の方法で得た全長AIMまたはSmall AIMをPBSで希釈し、それぞれ1.25、2.5、5、10、20ng/mLに調整した。
(2)測定方法(BLEIA法)
測定試料の点を除き、実施例4の測定方法(BLEIA法)と同様の方法で発光値を測定した。
(3)測定結果
測定結果を図3に示す。全ての試薬でAIMとの濃度依存的な反応を認めた。試薬1はSmall AIMにおいても濃度依存的な反応を認めた。一方、試薬2、試薬3は、Small AIMに対する反応性が低く、全長遊離AIM特異的であることが判明した。
[実施例6]全長AIMとSmall AIMに対する特異性解析
(1)試料
参考例2に記載の方法で得た全長AIMまたはSmall AIMをPBSで希釈して試料を調製した(各試料中のAIMの濃度は、後掲の表4を参照のこと)。
(2)測定方法(BLEIA法)
測定試料の点を除き、実施例4の測定方法(BLEIA法)と同様の方法で測定した。
(3)測定結果
測定結果を表4に示す。
試薬1で試料を測定した結果、全長AIMとSmall AIMの総量と一致する傾向を示した。一方、試薬2、試薬3は、Small AIMの影響を受けず、全長AIM濃度と一致していた。この結果より、試薬2、試薬3は、Small AIMと全長AIMの両方を含む試料中の全長AIMを定量的に測定できることが判明した。
[実施例7]尿検体の測定
(1)試料
試料として、尿検体5例を測定した。検体の希釈は行わなかった。
(2)測定方法(BLEIA法)
測定試料の点および試薬1、2の抗体の組合せを用いた点を除き、実施例4の測定方法(BLEIA法)と同様の方法で測定した。
(3)測定結果
測定結果を表5に示す。
試薬1と試薬2の測定値は異なる値となった。患者尿検体には、Small AIMと全長遊離AIMが存在することから、Small AIMと全長遊離AIMの両方を測定する試薬1では測定値が高くなり、全長遊離AIMのみを測定する試薬2の測定値が低くなり、これらの測定値は乖離したものと考えられる。
[実施例8]血清検体の測定
(1)試料
試料として、血清検体5例を測定した。検体は、1%BSAを含む溶液で500倍希釈した。
(2)測定方法(ELISA法)
得られた試料について、実施例4に示される試薬1および2の抗体の組み合わせを用いて、以下のサンドイッチELISA法で測定した。
まず、固相用抗体50μLを96穴マイクロプレートの各ウェルに分注した後、洗浄し、各固相用抗体を固相化した。洗浄後、1%BSAを含む溶液を加え、室温で2時間静置した。また、ビオチン標識試薬Biotin(AC5)2Slufo-osu(同仁化学研究所)を用いて、標識用抗体をビオチン化標識した。抗体固相化プレートを洗浄し、標準液または試料50μLを加えて室温にて1時間反応させた。続いてウェル内の溶液を吸引除去、洗浄後、ビオチン標識抗体50μLを加えて室温にて1時間反応させた。さらにウェル内の溶液を吸引除去、洗浄後、ストレプトアビジン-HRP50μLを添加し、室温にて1時間反応させた。さらにウェル内の溶液を吸引除去、洗浄後、過酸化水素水、o-フェニレンジアミン含有緩衝液50μLを添加して反応させた後、2N硫酸50μLを反応停止液として添加した。マイクロプレートリーダーを用いて測定波長492/650nmにて測定した。
(3)測定結果
測定結果を表6に示す。
試薬1と試薬2の測定値は一致した。これは、血清検体に存在する遊離AIMのほとんどが全長遊離AIMであることから、Small AIMと全長遊離AIMの両方を測定する試薬1と、全長遊離AIMのみを測定する試薬2の測定値が一致したものと考えられる。
[実施例9]血清中のAIMの測定
(1)試料
ヒト血清検体0.5μLまたは参考例2で作製した全長AIM、Small AIM10ngにEzApply(AE-1430,ATTO)を10μL添加し、95℃で10分間加熱し、試料を調製した。
(2)測定方法(ウエスタンブロット法)
ポリアクリルアミドゲルに試料を添加し、電気泳動を行った後、ゲル中のタンパク質をPVDF膜に転写した。これを5%スキムミルク/PBS中で25℃、1時間振盪した。続いて、PBS-Tを用いて4回洗浄後、市販のポリクローナル抗AIM抗体(CD5L Antibody,NBP1-76700,NOVUS BIOLOGICALS)溶液中で4℃、1晩反応させた。さらに、PBS-Tを用いて4回洗浄後、TIDY Blot WESTERN BLOT DETECTION REAGENT :HRP(BIO-RAD)溶液中で25℃、1時間反応させた。最後に、PBS-Tを用いて4回洗浄後、化学発光検出試薬を用いて1分間反応させ、CCDカメラで化学発光を検出した。
(3)測定結果
測定結果を図4に示す。ヒト血清検体では全長AIMのバンドが認められ、Small AIMのバンドが認められなかったことから、血清中にはSmall AIMがほとんど存在しないことが明らかとなった。血清検体に存在するAIMのほとんどが全長AIMであったため、実施例8ではSmall AIMと全長遊離AIMの両方を測定する試薬1と、全長遊離AIMのみを測定する試薬2の測定値が一致したものと考えられる。
[実施例10]抗AIM抗体のエピトープマッピング
実施例4に示される試薬1~3で用いた抗体クローン1、クローン3、クローン4、クローン81についてエピトープの解析を行った。
(1)AIM欠損変異体の調製
配列番号1のAIMの全長タンパク質または各欠損変異体の発現ベクター(pcDNA3.3)を作製し(表7)、HEK293T細胞にトランスフェクションし、培養上清を回収し、変異体A~DおよびrAIM(全長AIM)を得た。
(2)免疫沈降
抗体クローン1、クローン3、クローン4、クローン81をそれぞれDYNABEADS(登録商標)磁気ビーズproteinG(Invitrogen)に10分間反応させた。1回洗浄後、回収した培養上清を300μLずつ添加した。NC(陰性対照)として、ベクターを導入していないHEK293T細胞の培養上清を同様に添加した。室温で60分間反応させ、洗浄液で3回洗浄した。洗浄液を除き、EzApply(AE-1430,ATTO)を30μL添加し、95℃で10分間加熱し、ウエスタンブロットの試料とした。
(3)ウエスタンブロット
ポリアクリルアミドゲルに試料20μLを添加し、電気泳動を行った後、ゲル中のタンパク質をPVDF膜に転写した。これを5%スキムミルク/PBS中で25℃、1時間振盪した。続いて、PBS-Tを用いて4回洗浄後、市販のポリクローナル抗AIM抗体(CD5L Antibody,NBP1-76700,NOVUS BIOLOGICALS)を含む溶液中で4℃、1晩反応させた。さらに、PBS-Tを用いて4回洗浄後、TIDY Blot WESTERN BLOT DETECTION REAGENT :HRP(BIO-RAD)溶液中で25℃、1時間反応させた。最後に、PBS-Tを用いて4回洗浄後、化学発光検出試薬を用いて1分間反応させ、CCDカメラで化学発光を検出した。
その結果を図5に示す。抗体クローン3および抗体クローン4は各々、変異体A~変異体Cに反応せず、rAIMと反応した。このことから、抗体クローン3および抗体クローン4は、AIMにおけるSRCR3ドメインの一部(配列番号1に示されるAIMの263~347位、特に295~347位)と反応することが判明した。一方、抗体クローン81は、変異体A~変異体C、rAIMと反応したことから、SRCR1ドメインと反応することが判明した。遊離AIM特異的抗体であるクローン1は変異体Aに反応せず、変異体B、変異体C、rAIMと反応したことから、SRCR2ドメインと反応することが判明した。
本発明によれば、様々な試料の全長遊離AIMを特異的に分析することが可能となる。AIMは、急性腎障害などの疾患との関連が知られていることから、本発明は、研究上の利用にとどまらず、AIMが関連する疾患の診断にも貢献し得る。

Claims (9)

  1. ヒトAIMの263位から347位に結合するモノクローナル抗体。
  2. ヒトAIMの295位から347位に結合するモノクローナル抗体。
  3. 請求項1または請求項2に記載のモノクローナル抗体を試料に接触させることを含む、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析する方法。
  4. 請求項1または請求項2に記載のモノクローナル抗体を含む、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析するための組成物。
  5. 請求項1または請求項2に記載のモノクローナル抗体が結合した、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析するための固相。
  6. 請求項4に記載の組成物または請求項5に記載の固相を含む、試料中の全長遊離AIMを免疫学的に分析するためのキット。
  7. 全長遊離AIMに特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法であって、ヒトAIMまたはその263位から347位を含む断片で免疫してモノクローナル抗体を調製する工程、およびヒトAIMの263位から347位に結合するモノクローナル抗体を選抜する工程、を含む方法。
  8. 全長遊離AIMに特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法であって、ヒトAIMまたはその295位から347位を含む断片で免疫してモノクローナル抗体を調製する工程、およびヒトAIMの295位から347位に結合するモノクローナル抗体を選抜する工程、を含む方法。
  9. 請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体を含むAIM関連疾患の治療薬。
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