JP6667806B2 - 甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体アイソタイプ測定を用いたバセドウ病の病態診断キット及びバセドウ病の病態の診断方法 - Google Patents

甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体アイソタイプ測定を用いたバセドウ病の病態診断キット及びバセドウ病の病態の診断方法 Download PDF

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Description

本発明は、甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体アイソタイプ測定を用いたバセドウ病の病態診断キット及びバセドウ病の病態の診断方法に関する。
甲状腺の甲状腺濾胞細胞は、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺刺激ホルモンレセプター(TSHR)との相互作用による刺激を受けて、甲状腺ホルモン(FT3, FT4)を分泌する。TSHは、TSHRの刺激によって分泌されるが、下垂体のTSHの分泌量は、血中のTSHレベルが一定に保たれるようにネガティブフィードバックによって調節されている。TSHレベルが上昇すると、甲状腺機能亢進症をきたし、TSHレベルが低下すると、甲状腺機能低下症をきたす。甲状腺機能亢進症の症状は、動悸、息切れ、暑がり及び体重減少が知られている。甲状腺機能低下症の症状は、無気力、倦怠感、寒がり及び浮腫が知られている。
甲状腺機能亢進症の9割は、バセドウ病(又はグレーブス病)が占めている。バセドウ病は、女性の年間発病率が、1000人あたり0.5人といわれる、頻度の高い疾患である。バセドウ病は、TSHRを刺激する甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体(TRAb)が甲状腺濾胞細胞を刺激することで甲状腺機能亢進症をきたす自己免疫疾患として知られている。
TRAbは、刺激性抗体、阻害抗体、Neutral抗体の三種類が知られている。刺激性抗体は、TSHRに結合して、TSHの分泌を誘導する。阻害抗体は、TSHRの結合サイトをブロックすることでTSHとTSHRとの相互作用を阻害する。Neutral抗体は、TSHRに結合するものの、TSHの分泌の誘導もTSHとTSHRとの相互作用の阻害にも関与しない。
甲状腺バセドウ病では、経過中、急激な機能低下がおこることがあり、これは今まで優位であった刺激性抗体に代って、TSHとTSHRとの相互作用を阻害する阻害抗体が優位となるため、と考えられている。
今日まで、いくつかのバセドウ病の検査方法が開発されてきた。特許公報1には、白血球中のSiglec1の発現量を測定する工程を含むバセドウ病の検査方法が開示されている。
特開2012−115195
しかしながら、特許文献1に示す方法は、バセドウ病の再発、再燃を予測する方法であり、特に、バセドウ病が甲状腺機能亢進症であるのか機能低下症であるのかに関しては検査できない問題点が存在していた。
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、2種類の抗体を用いるバセドウ病診断キットを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、TRAb-IgGが刺激性抗体であり、TRAb-IgMが阻害抗体及びNeutral抗体であることを明らかにし、TSHRに対するTRAbの作用は、TRAb-IgGとTRAb-IgMとのバランスで決定されるものであることが予想された。抗IgG抗体と抗IgM抗体を用いて、バセドウ病の患者由来のTRAbを調べたところ、TRAbへの抗IgG抗体の結合量に対する抗IgM抗体の結合量の比の値(M/G値)が、健常者におけるM/G値よりも有意に上昇していることが明らかとなった。従って、被験者(例えば、患者)のM/G値と、健常者におけるM/G値(例えば、複数の健常者由来のM/G値を統計学的に処理した値)と比較することで、被験者がバセドウ病を発症しているか否かを知ることができる。また、M/G値を経時的に測定することで、バセドウ病の発症を知ることができるだけでなく、バセドウ病が発症又は再発するか否かを予測することが可能になった。更に、甲状腺機能低下症の患者において、M/G値が上昇し、且つ、抗IgG抗体の結合量が低下していることが明らかとなったことから、M/G値と抗IgG抗体の結合量に基づいて、甲状腺機能低下症の発症を知ることができ、更には、甲状腺機能低下症を発症又は再発するか否かを予測することが可能になった。
本発明者らは、この驚くべき発見に基づいて鋭意研究し、バセドウ病を診断するためのキット及びバセドウ病の病態の診断方法を完成させるに至った。
本願発明によれば、
バセドウ病を診断するための診断キットであって、
甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に結合する標識化抗IgM抗体と、
上記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に結合する標識化抗IgG抗体と、を有し、
上記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に対する上記抗IgM抗体の結合量と上記抗IgG抗体の結合量の比をバセドウ病の病態指標として示す、診断キットが提供される。
TRAbへの抗IgG抗体の結合量に対する抗IgM抗体の結合量の比の値(M/G値)が、健常者におけるM/G値よりも有意に上昇していることが後述する実施例において実証されている。従って、この診断キットを用いることで、バセドウ病の診断が可能となる。
また、本願発明によれば、
バセドウ病の病態指標の検出方法であって、
(a) 被験体である哺乳動物の体液試料中の甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体を、上記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に結合する標識化抗IgM抗体を用いて検出する検出工程と、
(b) 上記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体を、上記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に結合する標識化抗IgG抗体を用いて検出する検出工程と、
(c) 上記標識化抗IgM抗体と上記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体との結合量を測定する測定工程と、
(d) 上記標識化抗IgG抗体と上記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体との結合量を測定する測定工程と、
(e) 上記標識化抗IgG抗体に関する上記結合量と上記標識化抗IgM抗体に関する上記結合量の比を算出する算出工程と、を有する、検出方法が提供される。
TRAbへの抗IgG抗体の結合量に対する抗IgM抗体の結合量の比の値(M/G値)が、健常者におけるM/G値よりも有意に上昇していることが後述する実施例において実証されている。従って、この検出方法を用いることで、バセドウ病の病態指標の検出が可能となる。
図1は、実施例におけるELISA法を用いた甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の検出方法を示す図である。 図2は、健常者(正常機能)とバセドウ病患者(亢進症及び低下症)におけるM/G値を示すグラフである。
<概要>
以下、本発明の実施形態について、詳しく説明する。なお、同様な内容については繰り返しの煩雑をさけるために、摘示説明を省略する。
<診断キット>
本発明の本実施形態によれば、
バセドウ病を診断するための診断キットであって、
甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に結合する標識化抗IgM抗体と、
上記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に結合する標識化抗IgG抗体と、を有し、
上記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に対する上記抗IgM抗体の結合量と上記抗IgG抗体の結合量の比をバセドウ病の病態指標として示す、診断キットが提供される。
本実施形態における、標識化抗IgM抗体及び標識化抗IgG抗体は、甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体(TRAb)に結合する抗体であり、所謂二次抗体である。標識化抗体は、完全な抗体、F(ab')2フラグメント又はFabフラグメントであってもよい。標識化抗IgM抗体の標識物は、標識化抗IgG抗体のものと同じであってもよく、異なっていてもよい。標識化抗体は、一次抗体(即ち、TRAb)の由来動物に対応する抗体(二次抗体)であるが、二次抗体の宿主動物は、適宜選択が可能である。TRAbに結合した抗IgM抗体及び抗IgG抗体を検出又は測定するために、各抗体にシグナルを発生させることができる標識物質を結合させている。
本実施形態における「結合量」とは、例えば重量、濃度、強度(蛍光又は放射線)等の数値データに基づく、TRAbに対して結合した抗体の量を意味する。また、かかる結合量は、統計学的処理を施した数値データであってもよい。また、「結合量」は、TRAbの濃度であってもよい。
本実施形態において、甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に対する抗IgM抗体の結合量と抗IgG抗体の結合量の比の変化をバセドウ病の病態指標として示す。TRAbに対する抗IgM抗体の結合量と抗IgG抗体の結合量の比は、例えば、抗IgG抗体の結合量に対する抗IgM抗体の結合量の比(M/G)であってもよく、その逆であってもよい。M/Gが特定の閾値を超えた場合、又は、経時的に測定したM/G値が上昇する傾向を示す場合、バセドウ病の可能性が高いと診断される。例えば、M/G値で計算した場合は、M/G値が、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5又は13以上の場合、バセドウ病の可能性が高いと診断される
本実施形態における「バセドウ病の病態指標」とは、例えば、バセドウ病の状態、更には、甲状腺機能亢進症及び甲状腺機能低下症を含めたバセドウ病の状態に関する指標のことをいう。ここで、バセドウ病の病態指標とは、例えば、バセドウ病の発症危険度の予測、バセドウ病の早期診断及び早期予知、病態把握、経過の予測、治療結果の観察・評価、予後の予測等の指標を含む。また、バセドウ病の病態指標は、複数組み合わせることも可能である。これにより、より確実な診断結果を得ることができる。上記の症状及びその症状を表すパラメーター等に関しては、この技術分野の医師にとってよく知られている日常的手法によって容易に測定が可能である。
本発明の更なる実施形態において、甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に対する抗IgM抗体の結合量と抗IgG抗体の結合量の比の変化と、抗IgG抗体の結合量の変化をバセドウ病の病態指標として示す。かかる比の変化と、抗IgG抗体の結合量の変化を組み合わせることで、バセドウ病の病態指標の信頼性が向上する。上記組み合わせを用いることで、甲状腺機能低下症の可能性を診断することができる。後述する実施例の通り、M/G値の上昇と、抗IgG抗体の結合量の低下が検出されると、被験体は、甲状腺機能低下症を患っている又は患うリスクがあると判断することができる。かかる比の変化は、特定の閾値を基準に判断してもよく、被験体から経時的に測定したかかる比の変化から判断してもよい。抗IgG抗体の結合量の変化も、かかる比の変化と同様に判断してもよい。例えば、時間的に前に測定した抗IgG抗体の結合量と比較して、時間的に後に測定した抗IgG抗体の結合量が0.2%、0.3%、0.5%、1.0%、2.0%、3.0%、4.0%、5.0%、10%、15%、20%又は30%以上の低下している場合、且つ、時間的に前に測定したM/G値と比較して、時間的に後に測定したM/G値が0.2%、0.3%、0.5%、1.0%、2.0%、3.0%、4.0%、5.0%、10%、15%、20%又は30%以上の上昇している場合、バセドウ病の可能性が高いと診断される
本発明の更なる実施形態において、標識化抗IgM抗体と標識化抗IgG抗体は、酵素、蛍光物質、ビオチン、呈色標識物質及び放射性物質からなる群より選択される標識物質で標識化されている。
標識として酵素を使用する場合には、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、炭酸脱水素酵素、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、マロン酸エステルデヒドロゲナーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ等を標識として使用することができる。これらの酵素で標識する方法としては、酵素の糖鎖を過ヨウ素酸で酸化し、生成したアルデヒド基に抗体のアミノ酸を結合させる方法や、酵素にマレイミド基あるいはピリジルスルフィド基等を導入し、抗体のFab’フラグメントに存在するチオール基と結合させる方法等を挙げることができる。
標識として酵素を使用する場合、試験試料と標識抗体とをインキュベートした後、遊離した標識抗体を洗浄して除去してから、上記の標識酵素の基質を作用させて発色等で反応を測定することによって標識抗体を検出することができる。例えば、ペルオキシダーゼで標識される場合には、基質として過酸化水素、発色試薬としてジアミノベンジジン又はO−フェニレンジアミンと組み合わさって褐色又は黄色を生じる。グルコースオキシダーゼで標識される場合には、基質として、例えば2, 2’ -アシド-ジ-(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)等を用いることができる。
標識として蛍光物質を使用する場合には、例えば、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)又はTRITC(テトラメチルローダミンBイソチオシアネート)等の蛍光色素で抗体を標識することができる。抗体と蛍光色素との結合は常法によって行うことができる。
標識としてビオチンを使用する場合には、抗体をビオチン化して、アビジン−ビオチン又はストレプトアビジン−ビオチン複合体を形成させて抗体を検出する。
標識として呈色標識物質を使用する場合には、例えば、コロイド金属及び着色ラテックス等を標識として使用できる。コロイド金属の代表例としては、金ゾル、銀ゾル、セレンゾル、テルルゾル又は白金ゾル等のそれぞれの分散粒子である金属コロイド粒子を挙げることができる。コロイド金属の粒子の大きさは、通常は、直径3〜60nm程度が好ましい。また、着色ラテックスの代表例としては、赤色及び青色等のそれぞれの着色料で着色されたポリスチレンラッテクス等の合成ラテックスが挙げられる。ラテックスとして天然ゴムラテックスのような天然ラッテクスを用いてもよい。着色ラテックスの大きさは、直径数十nm〜数百nm程度から選択することができる。これらの呈色標識物質は市販品をそのまま使用することができるが、さらに加工し、又は、それ自体公知の方法で製造することも可能である。
抗体と呈色標識物質との結合は常法によって行うことができる。例えば、呈色標識物質が金ゾルの分散粒子である金コロイド粒子の場合には、通常は、抗体と金ゾルとを室温下で混合することにより両者を物理的に結合することが可能である。
なお、標識としては、上記以外にも放射性同位体標識(例えば、125I、131I、3H、14C等)等を使用することも可能であり、本発明の範囲内に含まれる。
抗体の作製方法の一例を以下に示す。キャリアー蛋白質の種類及びキャリアーと抗原との混合比は、キャリアーに架橋させて免疫した抗原に対して抗体が効率良くできるならば、任意の条件でよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比で抗原1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合で結合させる方法が用いられる。また、抗原とキャリアーのカップリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、例えば、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。小分子を抗原として用いる場合、キャリアータンパク質を利用することが特に好ましい。
抗原又は抗原―キャリアー複合体は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは適当な担体、緩衝液、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、例えば、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、RAS〔MPL (Monophosphoryl Lipid A) + TDM (Synthetic Trehalose Dicorynomycolate) + CWS (Cell Wall Skeleton)アジュバントシステム〕、水酸化アルミニウム等の通常用いられるアジュバントを投与してもよい。これらのアジュバンドと抗原は、希釈剤を用いた懸濁液もしくは乳化液の形で投与してもよい。ここで、アジュバントとは、抗原とともに投与したとき、非特異的にその抗原に対する免疫反応を増強する物質のことをいう。
免疫する温血動物としては、例えば、ウサギ、マウス、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ラット、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ等の哺乳動物を用いることができる。例えば、免疫感作の方法としては、当業者に公知の通常の免疫感作の方法を用いて、例えば、抗原を1回以上投与することにより行うことができる。具体的には、抗原投与は、通常約1〜6週毎に1回ずつ、計約2〜10回程度行なうことができる。投与量は1回につき、例えば、抗原約0.05から2mg程度を目安とすることができる。投与経路も特に限定されず、例えば、皮下投与、皮内投与、腹膜腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与等を適宜選択することができるが、静脈内、腹膜腔内もしくは皮下に注射することにより投与することが好ましい。免疫感作した哺乳動物を0.5から4ヶ月間飼育した後、該哺乳動物の血清を耳静脈等から少量試料採取し、抗体価を測定することができる。抗体価が上昇してきたら、状況に応じて抗原の投与を適当回数実施する。例えば10μg〜1000μgの抗原を用いて追加免疫を行なうことができる。抗体価の測定は、例えば、標識化タンパク質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。
最後の投与から1〜2ヶ月後に免疫感作した哺乳動物から通常の方法により血液あるいは腹水を採取して、56℃で30分間処理して補体系を不活性化した後、アフィニティークロマトグラフィーで特異抗体の分離・精製を行ない、ポリクローナル抗体を得る。アフィニティー担体としては、例えば、抗原ペプチドをAffigel等に固相化したものを用いることができる。あるいは、得られた血液を、例えば遠心分離、硫酸アンモニウム又はポリエチレングリコールを用いた沈澱、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等の通常の方法によって分離・精製してもよい。
別の抗体の作製方法の一例を以下に示す。温血動物の免疫工程までは、前述のポリクローナル抗体の作製と同様の方法で行うことができる。免疫する温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられるが、好ましくは、マウス又はラットが用いられる。免疫感作の方法としては、当業者に公知の通常の免疫感作の方法を用いて、例えば、抗原を1回以上投与することにより行うことができる。具体的には、抗原投与は、通常約1〜6週毎に1回ずつ、計約2〜10回程度行なうことができる。投与量は1回につき、例えば、抗原約0.05から2mg程度を目安とすることができる。投与経路も特に限定されず、例えば、皮下投与、皮内投与、腹膜腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与等を適宜選択することができるが、静脈内、腹膜腔内もしくは皮下に注射することにより投与することが好ましい。
抗原を免疫された温血動物から、抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓又はリンパ節を採取し、それらに含まれる脾細胞、リンパ節細胞、Bリンパ球等の抗体産生細胞を得る。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、標識化タンパク質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。
ついで、これらの抗体産生細胞とミエローマ(骨髄腫細胞)の融合を行うが、融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法(G. Kohler et al.,Nature, 1975, 495, 256)に従い実施できる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウイルス等が挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。ミエローマとしては、例えば、NS-1、P3U1、SP2/0、AP-1等が挙げられるが、マウスでは特にP3U1、SP2/0、P3X63Ag8が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞数とミエローマ数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間培養することにより効率よく細胞融合を実施できる。
ハイブリドーマのスクリーニングを兼ねた選別的な培養は、通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行なうことができる。また、育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いてもよい。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI-1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM-101、日水製薬(株))等を用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。また、細胞融合により得られたハイブリドーマは限界希釈法等によりクローニングすることができる。
各ハイブリドーマの産生するモノクローナル抗体のスクリーニングには種々の方法が使用可能であるが、一例としては、抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(マイクロプレート等)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素等で標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられた抗体産生細胞と同じ種の免疫グロブリンと反応する抗体)、プロテインA又はプロテインGを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、免疫グロブリン抗体、プロテインA又はプロテインGを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素等で標識した抗原を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法等が用いられる。
このようにして選別されたハイブリドーマから目的とするモノクローナル抗体を製造するには、通常の細胞培養法や腹水形成法によりハイブリドーマを培養し、培養上清あるいは腹水からモノクローナル抗体を精製すればよい。培養上清もしくは腹水からのモノクローナル抗体の精製は、常法により行なうことができる。例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔塩析法、硫安分画、アルコール沈澱法、等電点沈澱法、電気泳動法、イオン交換体(DEAE等)による吸脱着法・クロマトグラフィー、超遠心法、ゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー、抗原結合固相あるいはプロテインA又はプロテインG等の活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法等〕に従って行なうことができる。
また、モノクローナル抗体としては、IgM抗体が得られる場合が多く、得られたIgM抗体をそのまま用いることも、当業者によく知られた遺伝子工学的手法でIgG抗体に改変して用いることも可能である。
以上は例示であり、当業者であれば、通常の抗体作成法にならい、目的の抗体を得るために種々の設計変更・改変、諸条件の調節は容易に可能である。
本発明の更なる本実施形態において、上記診断キットは、甲状腺刺激ホルモンレセプタータンパク質と、上記甲状腺刺激ホルモンレセプタータンパク質に特異的に結合する抗体を更に有する。このタンパク質と抗体を備えることで、より迅速にバセドウ病を診断することができる。甲状腺刺激ホルモンレセプター(TSHR)タンパク質は、供給の安定性とコストを考慮すると、リコンビナントタンパク質であることが好適である。リコンビナントTSHRタンパク質は、TSHRタンパク質の膜貫通領域を一部又は全部除かれたタンパク質であってもよい。また、リコンビナントTSHRタンパク質は、変性したTSHRタンパク質をリフォールディングしたものであってもよい。TSHRタンパク質に特異的に結合する抗体は、上記TSHRタンパク質を任意の支持手段(例えば、1又は複数のウェルを備えるプレート)に固定するために使用することができる。TSHRタンパク質に特異的に結合する抗体は、TRAbの結合を阻害するサイトには結合しない。従って、TSHRタンパク質に特異的に結合する抗体は、TSHRタンパク質のN末端又はC末端に結合することが好ましい。TSHRタンパク質に特異的に結合する抗体を介して、TSHRタンパク質を任意の支持手段に結合させることで、被験体の体液中に含まれるTRAbをTSHRタンパク質に結合させて取得することができる。そして、TSHRタンパク質に結合したTRAbは、標識化抗体(抗IgM抗体及び抗IgG抗体)を用いて検出することができる。
本発明の更なる本実施形態において、上記診断キットは、甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に対する各抗体の結合を検出するための支持手段を更に有する。上記診断キットがかかる支持手段を備えることによって、より迅速にバセドウ病を診断することができる。この支持手段は、標識化抗体の検出を容易にするために、TRAbと標識化抗IgM抗体又は標識化抗IgG抗体との複合体を支持する手段である。支持手段と複合体との結合は、TSHRタンパク質とTSHRタンパク質に特異的に結合する抗体を用いてもよい。かかる支持手段として、1又は複数のウェルを備えるプレート、プロテインA/Gなどであってもよく、標識化抗体の検出に適したものを適宜選択することは可能である。従って、標識抗体の検出方法に従う複数のタイプの診断キットも可能である。上記診断キットは、複数の支持手段を備えていてもよい。これによって、標識化抗体毎に支持手段を交換することが可能になる。
本発明の更なる本実施形態において、支持手段は、1又は複数のウェルを備えるプレートである。支持手段がかかるプレートであれば、ELISA法により迅速にバセドウ病を診断することができる。かかるプレートのウェルには、予めTSHRタンパク質とTSHRタンパク質に特異的に結合する抗体を結合させておいてもよい。これにより、ウェル中に抗体を固定する手間を省くことができる。
<検出方法>
本発明の本実施形態によれば、
バセドウ病の病態指標の検出方法であって、
(a) 被験体である哺乳動物の体液試料中の甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体を、上記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に結合する標識化抗IgM抗体を用いて検出する検出工程と、
(b) 上記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体を、上記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に結合する標識化抗IgG抗体を用いて検出する検出工程と、
(c) 上記標識化抗IgM抗体と上記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体との結合量を測定する測定工程と、
(d) 上記標識化抗IgG抗体と上記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体との結合量を測定する測定工程と、
(e) 上記標識化抗IgG抗体に関する上記結合量と上記標識化抗IgM抗体に関する上記結合量の比を算出する算出工程と、を有する、検出方法が提供される。
検出工程(a)と検出工程(b)は、同時に実施してもよく、異なる時間に実施してもよい。また、標識化抗IgM抗体と標識化抗IgG抗体を混合して、検出工程(a)と検出工程(b)を同時に実施してもよい。このような場合は、標識化抗IgM抗体と標識化抗IgG抗体の標識を区別して検出器が検出できる標識物質を選択する必要がある。蛍光物質を標識物質として使用する場合は、蛍光波長が互いに異なる識別物質を選択する。また、互いに異なるタイプの標識物質(例えば、蛍光物質と放射性物質)を使用する場合は、結合量の単位を統一するのが好ましい。例えば、強度と濃度に関する検量線を作製して、強度から濃度を算出してその濃度を結合量としてもよい。
本発明の更なる本実施形態において、上記検査方法は、(f) 被験体から以前に算出された各標識化抗体の結合量の比と、算出工程(e)で算出した結合量の比との間に有意な差が存在するか否かを判断する判断工程を更に含む。かかる判断工程を含むことによって、過去に被験体から得られた各標識化抗体の結合量の比を基準にすることができる。従って、基準となるこの結合量の比(即ち、閾値)を用いて、算出工程(e)で得られた結合量の比が変化したか否かが判断できる。例えば、基準となるM/G値に対して算出工程(e)で得られたM/G値が上昇している場合、被験者は、バセドウ病に罹患している又は罹患するリスクがあると診断することが可能になる。この基準となる結合量の比は、被験体自身から取得されているため、個人差による診断結果の幅を最小化することができる。
本発明の更なる本実施形態において、上記検査方法は、(g) 被験体から以前に測定された標識化抗IgG抗体に関する結合量と、測定工程(d)で測定した標識化抗IgG抗体に関する結合量との間に有意な差が存在するか否かを判断する判断工程を更に含む。かかる判断工程を含むことによって、過去に被験体から得られた標識化抗IgG抗体の結合量を基準にすることができる。従って、基準となるこの結合量(即ち、閾値)を用いて、測定工程(d)で得られた結合量が変化したか否かが判断できる。判断工程(f)において判断された比の変化と、判断工程(g)において判断された抗IgG抗体の結合量の変化を組み合わせることで、バセドウ病の病態指標の信頼性が向上する。上記組み合わせを用いることで、甲状腺機能低下症の可能性を診断することができる。後述する実施例の通り、M/G値の上昇と、抗IgG抗体の結合量の低下が検出されると、被験体は、甲状腺機能低下症を患っている又は患うリスクがあると判断することができる。また、本検査方法は、工程(f)と工程(g)の判断結果を組合せて、バセドウ病の病態指標(特に、甲状腺機能低下症の病態指標)を検出する工程を更に含めても良い。
本発明の更なる本実施形態において、上記検査方法は、(h) 健常な哺乳動物から以前に算出された各標識化抗体の結合量の比と、算出工程(e)で算出した上記結合量の比との間に有意な差が存在するか否かを判断する判断工程を更に含む。かかる判断工程を含むことによって、健常な哺乳動物から得られた各標識化抗体の結合量の比を基準にすることができる。従って、基準となるこの結合量の比(即ち、閾値)を用いて、算出工程(e)で得られた結合量の比が変化したか否かが判断できる。例えば、基準となるM/G値に対して算出工程(e)で得られたM/G値が上昇している場合、被験者は、バセドウ病に罹患している又は罹患するリスクがあると診断することが可能になる。この基準となる結合量の比は、健常な哺乳動物から取得されているため、被験者にとって最初の検査であっても診断結果の幅を最小化することができる。
本実施形態における「哺乳動物」とは、任意の哺乳動物をいい、ヒト、家畜用動物、ペット用動物、動物園用動物、又はスポーツ用動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギ等を含む。哺乳動物は、好ましくはヒトである。
本発明の更なる本実施形態において、上記検査方法は、(i) 健常な哺乳動物から以前に測定された標識化抗IgG抗体に関する結合量と、判断工程(d)で測定した結合量との間に有意な差が存在するか否かを判断する判断工程を更に含む。かかる判断工程を含むことによって、健常な哺乳動物から得られた標識化抗IgG抗体の結合量を基準にすることができる。従って、基準となるこの結合量(即ち、閾値)を用いて、測定工程(d)で得られた結合量が変化したか否かが判断できる。判断工程(h)において判断された比の変化と、判断工程(i)において判断された抗IgG抗体の結合量の変化を組み合わせることで、バセドウ病の病態指標の信頼性が向上する。上記組み合わせを用いることで、甲状腺機能低下症の可能性を診断することができる。後述する実施例の通り、M/G値の上昇と、抗IgG抗体の結合量の低下が検出されると、被験体は、甲状腺機能低下症を患っている又は患うリスクがあると判断することができる。また、本検査方法は、工程(h)と工程(i)の判断結果を組合せて、バセドウ病の病態指標(特に、甲状腺機能低下症の病態指標)を検出する工程を更に含めても良い。
本発明の更なる本実施形態において、体液試料は、血液である。TRAbは、被験者の体液(例えば、血液)から取得することができる。血液などの体液の採取は、採取方法が確率していることから、患者に対する危険度が低い診断を行なうことができる。血液に関しては、適切な遠心分離操作を行い、リンパ球の存在を無視できる量になるまで減少させた血清を用いることも可能である。本実施形態においては、その血清に対して検出試薬を反応させることも可能である。得られた血液、血清等の試料に対し、任意の処理工程を一又は複数追加してもよい。このような処理工程としては、例えば、各種カラムや免疫沈降法による不純物の除去・目的物の精製処理、トリプシン等によるタンパク質の断片化処理、酵素処理や化学処理による糖鎖の分離、他の酵素処理、各種化学修飾等が挙げられるが、これに限られない。
なお、上記の実施形態により説明される診断キット及び検出方法は、本願発明を限定するものではなく、例示することを意図して開示されているものである。本願発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載により定められるものであり、当業者は、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲において種々の設計的変更が可能である。
さらに、本発明に係る実施形態は、本発明に係る診断キットを含む製造品である。この製造品は、容器及び容器に備え付けられるラベル又はパッケージ挿入物を含む。容器は、例えば、ビン、バイアル、シリンジ等を含み、ガラス又はプラスチック等の適切な素材から選択される。ラベル又はパッケージ挿入物は、本発明に係る診断キットがバセドウ病診断のために使用されることを示す。ラベル又はパッケージ挿入物は、診断に用いる際の注意書きを更に含む。製造品はさらに、コントロール試料、各種緩衝液、希釈液、フィルター、針、シリンジ及び注射用の静菌水(BWFI)等を含む付加的な容器を具備してもよい。
上述の製造品に含まれる診断キットにおいては、その実施形態に応じて、抗体はあらかじめ固相化されていてもよい。本発明の実施形態に係る診断キットにおいて用いることができる固相は特に限定されず、例えば、ポリスチレン等のポリマー、ガラスビーズ、磁性粒子、マイクロプレート、イムノクロマトグラフィー用濾紙、グラスフィルター等の不溶性担体を挙げることができる。上述の製造品には、更に他の任意成分を含めることができる。他の任意成分としては、例えば、標識に用いる酵素、その基質、放射性同位元素、発光物質、蛍光物質、着色物質、緩衝液、プレート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
さらに、上記の診断キット及び検出方法は、本発明の実施形態の1つに過ぎず、本発明によれば、これらを用いたアルツハイマー病の診断方法も提供され、この診断方法によりアルツハイマーの病態と相関性の高い診断を行うこともできる。
[0112]
なお、上記実施の形態により説明される診断キット、検出方法及び診断方法等を用い、ヒトあるいは哺乳動物において、バセドウ病の治療薬や悪性化物質をスクリーニングする方法、病態を解析する方法等も、本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、本発明を実施例及び図面によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。機器の操作及びキットの使用は、各メーカーの製造元プロトコールに従った。
<実施例1>
血清試料
バセドウ病と診断された患者群50名とコントロール群10名(非バセドウ健常者)から経時的に採取した血清を用いた。
<実施例2>
TRAb-IgGとTRAb-IgMを用いたELISA測定
採取した血清を用いて、TRAb-IgGとTRAb-IgMをELISAで測定した。本ELISA測定方法の概略を図1に示している。全長リコンビナントヒト甲状腺刺激ホルモンレセプター(TSHR) (Abnova, Taipei, Taiwan)及びそのTSHRのC末端に対するヤギ抗TSHR IgG (Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)を、ELISAプレートにコートした。コーティングバッファー(0.05 M Carbonate-Bicarboate)で希釈した0.01 g/L 抗TSHR IgGを100 ml、それぞれのELISAプレートのウェルに入れて、ELISAプレートを4℃で一晩インキュベートした。200 mlのブロッキング液(50 nM Tris、0.14 M Nacl、0.05% Tween20)を加えて、37℃で60分間インキュベートした。ELISAプレートを洗浄して、アッセイバッファー(50 mM Tris、0.14 M NaCl、1% BSA、0.05% Tween 20)に、リコンビナントヒトTSHRを加えて4 ng/mlとした。室温で30分間振盪した後、ELISAプレートを37℃でインキュベートし、もう一度洗浄した。50 mlのアッセイバッファーをELISAプレートのそれぞれのウェルに加え、更に、採取した血清サンプルを50 mlを加えた。ELISAプレートを37℃で60分間インキュベートして、もう一度洗浄した。HRP-共役ヤギ抗ヒトIgG-Fc検出抗体を100 ml加え、洗浄してから、それぞれのウェルに100 mlのTMB基質溶液を加え、室温で20分間暗所に置いた。100 mlの停止液(0.18M H2SO4)を加えた。最後に、それぞれのウェルにおける450 nmでの吸光度をELISAプレートリーダーで読み取った。同様に、HRP-共役ヤギ抗ヒトIgM-Fc検出抗体を用いて行った。全IgのELISAにおけるヒト参照血清によって作成した検量線を用いて、サンプルのTRAb-IgMとTRAb-IgG濃度を計算した。TRAb-IgM濃度とTRAb-IgG濃度の比(M/G)を算出した。算出したM/Gは、表1に示している。
表1のデータに基づいた、診断結果とM/Gとの関係を示すグラフが図2である。表1に基づいて、カットオフ値を選択した(表2)。
表2の結果から、カットオフ値をM/G = 10とすると、感度が1となり、特異度が0.844となった。また、カットオフ値をM/G = 11とすると、感度が1となり、特異度が0.889となった。カットオフ値をM/G = 12とすると、感度が0.867となり、特異度が0.956となった。また、カットオフ値をM/G = 13とすると、感度が0.667となり、特異度が0.956となった。このから、カットオフ値は、M/G = 10-13の範囲内に設定することができることが明らかになった。
<実施例3>
TRAb-IgM濃度、TRAb-IgG濃度及びM/G値の経時的変化
バセドウ病と診断された3名の患者において、TRAb-IgM濃度、TRAb-IgG濃度及びM/G値を経時的に測定した。実験方法は、実施例1及び2に従った。対象患者1-3におけるTRAb-IgM濃度、TRAb-IgG濃度及びM/G値の経時的変化をそれぞれ表3-5に示している。
対象患者1において、亢進症から急に低下症となった時期(即ち、5月7日から9月7
日)は、TRAb-IgG濃度が低下していた。7月5日におけるTRAb-IgG濃度は、5月7日と比較して上昇しているものの、診察では低下症と診断された。これは、初期の低下症であると考えられた。また、不安定な状態が持続している患者であったため、経時的変化の観察中は、上述したカットオフ値以上のM/G値を維持していた。
対象患者2は、5月9日に低下症となった際に、M/G値は、安定期(7月13から8月6日)よりも上昇していたが、TRAb-IgG濃度は低下した。
対象患者3において、1月7日の亢進症から2月14日の低下症にかけてM/G値の上昇が見られる一方で、TRAb-IgG濃度の低下が観察された。
結果
以上の結果から、M/G値が上昇し且つTRAb-IgG濃度が低下する場合は、甲状腺機能低下症に罹患していること又は甲状腺機能低下症に罹患するリスクがあることが明らかとなった。従って、バセドウ病患者において、TRAb-IgM濃度、TRAb-IgG濃度及びM/G値を経時的に測定し、記録しておくことで、低下症であるか亢進症であるかが判断可能になる。また、低下症又は亢進症に罹患する傾向にあるか否かも判断することが可能になる。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。

Claims (12)

  1. バセドウ病を診断するための診断キットであって、
    甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に結合する標識化抗IgM抗体と、
    前記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に結合する標識化抗IgG抗体と、を有し、
    前記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に対する前記抗IgM抗体の結合量と前記抗IgG抗体の結合量の比をバセドウ病の病態指標として示す、診断キット。
  2. 前記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に対する前記抗IgM抗体の結合量と前記抗IgG抗体の結合量の比の変化と、前記抗IgG抗体の結合量の変化をバセドウ病の病態指標として示す、請求項1に記載の診断キット。
  3. 前記標識化抗IgM抗体と標識化抗IgG抗体は、酵素、蛍光物質、ビオチン、呈色標識物質及び放射性物質からなる群より選択される標識物質で標識化されている、請求項1又は2に記載の診断キット。
  4. 甲状腺刺激ホルモンレセプタータンパク質と、
    前記甲状腺刺激ホルモンレセプタータンパク質に特異的に結合する抗体を更に有する、請求項1から3のいずれかに記載の診断キット。
  5. 前記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に対する各抗体の結合を検出するための支持手段を更に有する、請求項1から4のいずれかに記載の診断キット。
  6. 前記支持手段は、1又は複数のウェルを備えるプレートである、請求項5に記載の診断キット。
  7. バセドウ病の病態指標の検出方法であって、
    (a) 被験体である哺乳動物の体液試料中の甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体を、前記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に結合する標識化抗IgM抗体を用いて検出する検出工程と、
    (b) 前記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体を、前記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体に結合する標識化抗IgG抗体を用いて検出する検出工程と、
    (c) 前記標識化抗IgM抗体と前記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体との結合量を測定する測定工程と、
    (d) 前記標識化抗IgG抗体と前記甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体との結合量を測定する測定工程と、
    (e) 前記標識化抗IgG抗体に関する前記結合量と前記標識化抗IgM抗体に関する前記結合量の比を算出する算出工程と、を有する、検出方法。
  8. (f) 前記被験体から以前に算出された各標識化抗体の結合量の比と、算出工程(e)で算出した前記結合量の比との間に有意な差が存在するか否かを判断する判断工程を更に含む、請求項7に記載の検出方法。
  9. (g) 前記被験体から以前に測定された前記標識化抗IgG抗体に関する結合量と、測定工程(d)で測定した前記標識化抗IgG抗体に関する結合量との間に有意な差が存在するか否かを判断する判断工程を更に含む、請求項8に記載の検出方法。
  10. (h) 健常な哺乳動物から以前に算出された各標識化抗体の結合量の比と、算出工程(e)で算出した前記結合量の比との間に有意な差が存在するか否かを判断する判断工程を更に含む、請求項7に記載の検出方法。
  11. (i) 前記健常な哺乳動物から以前に測定された前記標識化抗IgG抗体に関する結合量と、判断工程(d)で測定した前記結合量との間に有意な差が存在するか否かを判断する判断工程を更に含む、請求項10に記載の検出方法。
  12. 前記体液試料は、血液である、請求項7から11のいずれかに記載の検出方法。
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