JP2024060569A - 本態性高血圧症を検出するためのバイオマーカー、それを用いた検出方法及び検出試薬 - Google Patents

本態性高血圧症を検出するためのバイオマーカー、それを用いた検出方法及び検出試薬 Download PDF

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【課題】本態性高血圧症を客観的かつ迅速に検出することができるマーカー、およびそれを用いた本態性高血圧症を検出する方法等を提供する。【解決手段】 ミオシン重鎖11(MYH11)を、本態性高血圧症を検出するためのバイオマーカーとして使用し、ヒト体液中のMYH11の濃度を測定し、その濃度が基準値よりも高い場合には、本態性高血圧症が検出されたとし、当該基準値は、本態性高血圧症が認められなかったヒト体液中のMYH11濃度である方法。【選択図】図1

Description

本発明は、ヒト体液中のミオシン重鎖11(Myosin heavy chain 11;MYH11)の濃度を指標として、本態性高血圧症を検出する方法等に関する。
高血圧は、本態性高血圧(原因がはっきりしないもの)と二次性高血圧(原因が特定できるもの)に分けられる。日本人の高血圧の約9割が本態性高血圧であり、生活習慣などの環境因子や遺伝的因子により起こるものである。一方、二次性高血圧は若年者に多く、血圧を上昇させるホルモンの異常や心臓・腎臓・血管の病気などで起こるものである。
現在、本態性高血圧症の診断には家庭血圧測定が推奨されているが、自己測定では正しく計測できていない場合があり、患者自身がデータを選んで報告してしまう報告バイアスも存在する。
家庭血圧測定では、ガイドラインに則った方法で1日2回以上7日間の測定平均が求められているが、厳密に実行することは困難なケースがある。
別の方法として、カフ・オシロメトリック法による自動血圧計を用いて非観血的に24時間自由行動下に血圧を測定する方法ambulatory blood pressure monitoring (ABPM)があるが、その日の活動性や睡眠状態により値は変動するため、1回のABPMでは血圧の再現性は十分ではない。さらに、装置が高価であり被装着者の負担も大きいことから日常診療に用いることは容易ではない(非特許文献1)。
本邦では約4300万人が本態性高血圧症に罹患していると推定され、このうち適切に血圧がコントロールされているのはわずか28%であり、残りの3100万人のうち、自らの本態性高血圧症を認識していない者が1400万人、認識しているが未治療の者が450万人、治療を受けているが管理不良の者が1250万人と推計されている。近年、2017年に米国(ACC/AHA2017)、2018年に欧州(ESC/ESH2018)、2019年に本邦(JSH2019)において高血圧症の治療ガイドライン(非特許文献1)が発表され、降圧目標値が定められた疾患が増えた。
血圧と相関する血中蛋白としては、neurotensin(非特許文献2)、cyclophilin-A(非特許文献3)、long noncoding RNA NR_104160(非特許文献4)、has_miR-3656(非特許文献5)、has_circ_0014243(非特許文献6)が論文報告されている。非特許文献2~5は34名~86名を対象とした小規模検討であり、これらの血中蛋白により高血圧症を検出できると言える程度の相関関係は実証されていない。また、非特許文献6は178名を対象としているが、本態性高血圧症の検出はThe area under the ROC curve (AUC)=0.732であり、必ずしも十分な検出能とはいえない。
また、これらの報告を含めて本態性高血圧症を検出するバイオマーカーは見出されていない。
MYH11はミオシン重鎖のサブタイプであり、血管平滑筋で特異的に高発現する構造タンパクであり、通常は細胞内に存在している。MYH11と血圧との関連は遺伝子改変動物やヒト高血圧症での遺伝子発現変化の観点からも報告がないため、血圧との関連を推定できるものではない。
高血圧治療ガイドライン2019 日本高血圧学会 Clin. Exp. Hypertens., 2020;42(3):266-270. doi: 10.1080/10641963.2019.1632340. Biomarkers., 2013 Dec;18(8):716-20. doi: 10.3109/1354750X.2013.847122. Am. J. Transl., Res. 2020 Oct 15;12(10):6060-6075. J. Hypertens., 2022 Feb 1;40(2):310-317. doi: 10.1097/HJH.0000000000003010. Exp. Ther. Med., 2019 Mar;17(3):1728-1736. doi: 10.3892/etm.2018.7107.
本発明は、本態性高血圧症を客観的かつ迅速に検出することができるマーカー、およびそれを用いた本態性高血圧症を検出する方法等を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に関し鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は以下のとおりである。
[1]ミオシン重鎖11(MYH11)からなる、本態性高血圧症を検出するためのバイオマーカー。
[2]ヒト体液中のMYH11の濃度を測定し、その測定値から本態性高血圧症を検出する方法。
[3]MYH11の濃度が基準値よりも高い場合には、本態性高血圧症が検出されたとし、当該基準値は、本態性高血圧症が認められなかったヒト体液中のMYH11濃度である、[2]に記載の方法。
[4]前記体液が、血清又は血漿である、[2]又は[3]に記載の方法。
[5]MYH11の濃度を測定する方法が免疫学的測定法である、[2]~[4]の何れかに記載の方法。
[6]MYH11を特異的に認識する抗体を用いて行われる、[5]に記載の方法。
[7]MYH11を特異的に認識する抗体を含有することを特徴とする、[5]又は[6]に記載の方法に使用するための検出試薬又は検出キット。
本発明により、MYH11を測定することにより、本態性高血圧を客観的かつ迅速に検出することができる。なお、後述の実施例が示すように、113名規模の検討におけるMYH11のThe area under the ROC curve(AUC)=0.885は、非特許文献6に開示されるhas_circ_0014243よりも高く、優れた検出能を示した。これによって、例えば適切な治療介入が可能となり、臨床的、経済的価値が非常に高いと考えられる。
実施例1で、健常者と本態性高血圧症患者群において、MYH11を測定した結果を示す図である。Mann-Whitney U testでの検討結果ではp<0.0001を示した。 実施例1で、MYH11による本態性高血圧症の検出能を受信者動作特性(ROC)解析により評価した結果を示す図である。 実施例2で、血中MYH11と平均血圧のとの相関を示す図である。 実施例3で、血中MYH11と拡張期血圧のとの相関を示す図である。 比較例1で、血中MYH11とhsCRPとの相関を示す図である。 比較例2で、健常者と本態性高血圧症患者群において、hsCRPを測定した結果を示す図である。 実施例4で全自動化学発光酵素免疫測定装置用の測定試薬で測定した結果と、実施例1でサンドイッチELISAで測定した結果との相関を示す図である。
本発明の第一の態様は、本態性高血圧症を検出するためのバイオマーカーである。本発明のバイオマーカーは、ヒト体液中に存在するMYH11からなる。
後述の実施例が示す通り、本態性高血圧症が認められたヒト体液中のMYH11の濃度(レベルともいう)は、本態性高血圧症が認められなかったそれに比べて有意に高い。そのため、検体中のMYH11は、本態性高血圧症を検出するための指標となり得る。
本態様の別の側面は、MYH11の、本態性高血圧症を検出するためのバイオマーカーとしての使用である。
かかる知見に基づく本発明の第二の態様は、ヒト体液中のMYH11濃度を測定し、その測定値から本態性高血圧症を検出する方法である。この方法は、通常はインビトロ(in vitro)で行われる。また、ヒト体液中におけるMYH11の濃度の測定は、通常イムノアッセイで行われる。降圧剤を検討する際にヒト体液中のMYH11濃度を測定する事で、その治療方針を選択する為の判断材料が提出される。
なお、本発明の方法は、本態性高血圧症を検出する段階までを含むものであり、その診断の最終的な判断行為は含まれない。医師は、本発明の方法による検出結果等を参照して、本態性高血圧症の有無を診断したり治療方針を決定したりする。したがって、本発明の方法は、本態性高血圧症を診断するための判断材料を提供する方法と言い換えることができる。
ヒト検体中のMYH11は、試料中のMYH11タンパク質又はその断片の測定により調べることができる。MYH11は、組織タンパク質であるが、MYH11全長タンパク質及びその断片には、遊離して存在するものの他、他のタンパク質等と結合ないしは会合した形態で検体中に存在するものが包含される。従って、本発明においてバイオマーカーとして使用される「MYH11」という語には、検体中に遊離して存在するMYH11全長タンパク質及びその部分断片、並びに他のタンパク質又はタンパク質断片と結合ないしは会合した形態で検体中に存在するMYH11及びその部分断片が包含される。
本発明における検体とは、ヒト体液であり、血液(全血、血清、血漿等)等を用いることができるが、血清又は血漿を用いることが望ましい。本発明の方法に用いられる検体は、被験者から採取された、すなわち単離された検体を指す。検体を採取されるヒト(被験者)は、通常、本態性高血圧症患者又はそれが疑われる患者である。
本発明の方法の測定を行う時期は、本態性高血圧症治療を始める前であってもよい。他の方法による本態性高血圧症の検出結果と共に、本発明の方法による検出結果を合わせる
ことで、治療を行う判断の一助となる。
また、本発明の方法の測定を行う時期は、本態性高血圧症に対し加療した後であってもよい。例えば、降圧剤を投与した後の経過観察において本発明の方法による検出結果を参照することで、本態性高血圧症の経過を判定でき、その後の治療を行う判断の一助となる。
ヒト検体中のMYH11を測定する方法は、免疫測定法、液体クロマトグラフィー法、電気泳動法、質量分析法等定量性のある測定法であれば特に限定されないが、免疫測定法は大掛かりな機器類が不要であり測定操作も簡便なので、本発明においても好ましく用いることができる。
免疫測定自体はこの分野において周知である。免疫測定法を反応形式に基づいて分類すると、サンドイッチ法、競合法、凝集法、ウェスタンブロット法等があり、また、標識に基づいて分類すると、酵素免疫分析、放射免疫分析、蛍光免疫分析等がある。本発明においては、定量的検出が可能な免疫測定方法のいずれを用いてもよい。特に限定されないが、例えば、サンドイッチELISA等のサンドイッチ法を好ましく用いることができる。
本発明に用いられる抗体の製法は特に限定はなく、典型的には、マウス、ウサギ等の非ヒト動物で調製された非ヒト動物ポリクローナル又はモノクローナル抗体である。また、上述の通りMYH11のアミノ酸配列及びこれをコードする塩基配列も公知であるので、常法のハイブリドーマ法等によりMYH11の特定部位を特異的に認識するMYH11抗体を調製して用いてもよい。
本発明に用いられる抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。ポリクローナル抗体として抗血清を用いてもよい。本発明において、ポリクローナル抗体という語には、精製前の抗血清も包含される。また、抗体に代えて該抗体の抗原結合性断片を用いることもできる。以下、本明細書において、文脈からそうではないことが明らかな場合を除き、「抗体」という語には当該抗体の抗原結合性断片も包含される。ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗原結合性断片は、いずれも周知の常法により調製することができる。
具体的には、MYH11の特定部位を認識するポリクローナル抗体は、例えば、当該部位を特異的に認識するモノクローナル抗体を複数種混合して得ることができる。又は、化学合成等の周知の手法により調製したMYH11の当該部位を含むポリペプチド、又はこれらをコードするポリヌクレオチドなどを免疫原として適宜アジュバントと共に非ヒト動物に免疫し、該動物から採取した血液から抗血清を得て、該抗血清中のポリクローナル抗体(非ヒト動物抗可溶性MYH11ポリクローナル抗体)を精製することで得ることができる。免疫は、被免疫動物中での抗体価を上昇させるため、通常数週間かけて複数回行なう。抗血清中の抗体の精製は、例えば、硫酸アンモニウム沈殿や陰イオンクロマトグラフィーによる分画、アフィニティーカラム精製等により行なうことができる。
モノクローナル抗体の周知の作製方法の一例として、ハイブリドーマ法を挙げることができる。具体的には、例えば、上記のように免疫した非ヒト動物から脾細胞やリンパ球のような抗体産生細胞を採取し、これをミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを調製し、MYH11の特定部位と結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択し、これを増殖させて培養上清から非ヒト動物抗MYH11特定部位を特異的に認識するモノクローナル抗体を得ることができる。
「抗原結合性断片」とは、例えば免疫グロブリンのFab断片やF(ab’)断片のような、当該抗体の対応抗原に対する結合性(抗原抗体反応性)を維持している抗体断片を意味する。このような抗原結合性断片もイムノアッセイに利用可能であることは周知であり、もとの抗体と同様に有用である。Fab断片やF(ab’)断片は、周知の通り
、抗体をパパインやペプシンのようなタンパク分解酵素で処理することにより得ることができる。なお、抗原結合性断片は、Fab断片やF(ab’)断片に限定されるものではなく、対応抗原との結合性を維持しているいかなる断片であってもよく、遺伝子工学的手法により調製されたものであってもよい。また、例えば、遺伝子工学的手法により、一本鎖可変領域(scFv: single chain fragment of variable region)を大腸菌内で発現させた抗体を用いることもできる。scFvの作製方法も周知であり、上記の通りに作製したハイブリドーマのmRNAを抽出し、一本鎖cDNAを調製し、免疫グロブリンH鎖及びL鎖に特異的なプライマーを用いてPCRを行なって免疫グロブリンH鎖遺伝子及びL鎖遺伝子を増幅し、これらをリンカーで連結し、適切な制限酵素部位を付与してプラスミドベクターに導入し、それで大腸菌を形質転換し、大腸菌からscFvを回収することによりscFvを作製することができる。このようなscFvも「抗原結合性断片」に包含される。
免疫測定法自体は周知の技術であるが、簡単に記載すると、例えば、サンドイッチ法では、MYH11に結合する抗体を固相に不動化し(固相化抗体)、試料と反応させ、必要に応じて洗浄後、固相化抗体と同一又は異なる部位でMYH11に結合する抗体に標識を付した標識抗体を反応させ、洗浄後、固相に結合した標識抗体を測定する。
標識抗体の測定は、標識物質からのシグナルを測定することにより行なうことができる。シグナルの測定方法は、標識物質の種類に応じて適宜選択される。例えば、酵素標識の場合、該酵素に対応した発色基質、蛍光基質又は発光基質等の基質を該酵素と反応させ、その結果発生する発色や発光等のシグナルを吸光光度計やルミノメータ等の適当な機器で測定することにより、酵素活性を求め測定対象物を測定することができる。例えば、標識物質としてALPを用いる場合、3-(4-メトキシスピロ(1,2-ジオキセタン-3,2’-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン)-4-イル)フェニルホスフェート2ナトリウム(例えば商品名AMPPD)などの発光基質を用いることができる。標識抗体は、標識物質が当該抗体に直接結合されていてもよいし、ビオチン又はハプテン等の特異結合分子を抗体に結合させ、標識物質を結合した特異結合分子のパートナー(ストレプトアビジン又はハプテン抗体等)を反応させることにより、間接的に標識物質が結合されていてもよい。MYH11を種々の濃度で含む濃度既知の標準試料について、抗MYH11抗体又はその抗原結合性断片を用いて免疫測定を行ない、標識からのシグナルの量と標準試料中のMYH11の濃度との相関関係をプロットして検量線を作成しておき、MYH11が未知の検体について同じ操作を行なって標識からのシグナル量を測定し、測定値をこの検量線に当てはめることにより、検体中のMYH11を定量することができる。
ヒト体液中のMYH11レベルが高いか否かは、本態性高血圧症が認められなかった患者群の体液中の、MYH11レベルから統計学的に適切に算出して定められた基準値を閾値とし、この閾値との比較により判断することができる。そして、MYH11レベルの測定値が、この基準値よりも高い場合には、本態性高血圧症が検出されたとすることができる。この閾値は、年代ごと(例えば、30歳未満、30歳代、40歳代、50歳代など)、性別ごと、人種ごとに設定してもよい。
医師は、ヒト体液中のMYH11レベルに基づいて本態性高血圧症が検出された結果等を参照して、最終的に本態性高血圧症の有無を診断したり治療方針を決定したりする。
本発明の本態性高血圧症を検出する方法は、本態性高血圧症治療の方針の一助とすることができる。すなわち、本発明により、患者における本態性高血圧症を治療する方法であって、
(i)患者から採取した体液中のMYH11濃度を測定する工程、
(ii)前記測定値が予め設定した基準値を超える場合に、本態性高血圧症が検出されたと同定する工程、及び
(iii)(ii)で本態性高血圧症が検出されたと同定された患者に対して該高血圧症の診断を行い、治療を施す工程、を含む方法が提供される。治療としては、特に限定されないが、降圧剤の投与等の薬物療法が好ましい。
また本発明の第三の態様は、MYH11を特異的に認識する抗体を含有する、本態性高血圧症を検出する方法に使用するための試薬に関する。
この検出試薬は、MYH11を特異的に認識する抗体ないし抗原結合性断片のみからなっていてもよいし、これら抗体又はその抗原結合性断片の安定化等に有用な他の成分をさらに含んでいてもよい。また、これら抗体又はその抗原結合性断片は、標識物質ないしはビオチン等の特異結合分子が結合した形態や、プレート、粒子等の固相に固定化された形態であってもよい。
本発明の第四の態様はまた、上記した本発明の検出試薬を含む、本態性高血圧症を検出するキットであってもよい。当該キットは免疫測定キットであり、免疫測定に必要な他の試薬類等も含んでいてよい。免疫測定に必要な他の試薬類は周知である。例えば、当該キットには、上記した検出試薬のほか、検体希釈液、洗浄液、及び、標識抗体に使用されている標識物質が酵素の場合には該酵素の基質液等がさらに含まれ得る。また、キットには通常、使用説明書が含まれる。
本態様の別の側面は、MYH11を特異的に認識する抗体の、本態性高血圧症を検出するための試薬又はキットの製造における使用である。また別の側面は、MYH11を特異的に認識する抗体の、本態性高血圧症の検出における使用である。また別の側面は、本態性高血圧症の検出のために使用される、MYH11を特異的に認識する抗体である。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
<作製例1>MYH11 C末端領域を認識するモノクローナル抗体(MYVF5r08M02, MYVF5r06M05)の作製
既知のRat腸骨リンパ免疫法により、MYH11 C末端領域を認識するモノクローナル抗体を複数作製し、そのうち2種を選択した。
即ち、免疫には哺乳動物細胞を用いた組換えMYH11を用いた。MYH11を含むORF(株式会社ダナフォーム)を購入し、MYH11 C末端領域をPCR法にて増幅し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit(タカラバイオ株式会社)を用いてpECE Vectorに導入した。作製したプラスミドにより、Lipofectamine(登録商標) 3000(Thermo社)を用いてHEK293Tを形質転換し、一過性発現にて組換えMYH11 C末端領域を得た。これを免疫抗原とし、Ratモノクローナル抗体(MYVF5r08M02, MYVF5r06M05)を得た。
<作製例2>ビオチン化検出抗体の作製
得られたモノクローナル抗体MYVF5r06M05はBiotin Labeling Kit-NH2(同仁化学研究所)を用いてBiotinラベル化を行い、ビオチン化MYVF5r06M05とした。
<実施例1>自作抗体を用いたサンドイッチELISAによるミオシン重鎖11測定
本態性高血圧症血漿検体は、本態性高血圧症と診断された患者82名より採取した。陰
性対照の健常者の血漿検体は、本態性高血圧症及びそのリスクファクターのない日本人健常者31名より採取した。
作製例1で得られたRatモノクローナル抗体(MYVF5r08M02)を200ng/ウェルになるようカーボネート緩衝液(pH9.8)で希釈し、MaxiSorp96穴プレート(Nunc社製)に固相化した。4℃にて一晩反応後、TBS-T(0.05% Tween20を含むTris-Buffered Saline)により3回洗浄し、3%ウシ血清アルブミン(BSA;Bovine Serum Albumin)を含むTBS溶液を200μL/ウェルにて各ウェルに添加し、室温で2時間放置した。
TBS-Tで3回洗浄を行なった後、本態性高血圧症患者82名の血漿検体、又は本態性高血圧症及びそのリスクファクターのない日本人健常者31名の血漿検体を、1%ウシ血清アルブミンを含むTBS-T溶液にて10倍希釈し50μL/ウェルにて添加し、室温で1時間放置した。
TBS-Tにより3回洗浄を行なった後、作製例2で得られたビオチン化MYVF5r06M05抗体を、1%ウシ血清アルブミンを含むTBS-T溶液で1μg/mLになるよう希釈し、50μL/ウェルで添加し、室温で1時間放置した。TBS-Tにより3回洗浄を行なった後、1%ウシ血清アルブミンを含むTBS-T溶液で50000倍希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識Streptavidin(フナコシ株式会社)溶液を50μL/ウェルにて添加し、室温で1時間放置した。TBS-Tにより4回洗浄を行ない、TMB Microwell Peroxidase Substrate(KPL社製)を添加後、1mol/Lリン酸溶液で反応停止し、吸光測定プレートリーダーにて450nmの吸光値(MYH11_Signal)を測定した。
結果を図1に示す。健常者(control)と比較して、本態性高血圧症患者群では明らかに血中MYH11が有意に高値であった。
Figure 2024060569000002
表1及び図2は、MYH11による本態性高血圧症の検出能をROC解析により評価した結果である。この結果より、独立変数である血漿中のMYH11濃度と二分変数である動脈硬化の有無というアウトカムとの関係が有意に強いということが示された。また、ROC曲線下面積(AUC:area under the curve)0.885であった。
<実施例2>
実施例1にて測定した検体の電子カルテを参照し、血中MYH11と平均血圧との相関を検証した。
解析結果を表2及び図3に示す。Spearmanで検証した結果、P=0.0107であり相関性が示された。
Figure 2024060569000003
<実施例3>
実施例1にて測定した検体の電子カルテを参照し、血中MYH11と拡張期血圧との相関を検証した。
解析結果を表3及び図4に示す。Spearmanで検証した結果、P=0.0041であり相関性が示された。
Figure 2024060569000004
<比較例1>
実施例1にて測定した検体の電子カルテを参照し、high sensitivity
C-reactive protein(hsCRP)の測定結果がある112検体について、MYH11とhsCRPとの相関を検証した。
解析結果を表4及び図5に示す。Spearmanで検証した結果、P=0.723であり相関性は認められなかった。
Figure 2024060569000005
<比較例2>
実施例1にて測定した検体のうち、hsCRPの測定結果がある112検体についてhsCRP値を電子カルテから参照し、健常者(control)と本態性高血圧症患者群を比較した結果を図6に示す。Mann-Whitney U testでp=0.57
7であり、有意差は確認できなかった。
<作製例3> MYH11のAIA-CL2400測定試薬の調製
固相側にMYVF5r08M02抗体、検出側にMYVF5r06M05抗体を用いて、MYH11のAIA-CL2400測定試薬を以下の通り調製した。
2つのセルを有するカップを用いて、AIA-CL2400測定試薬を作製した(以下、中身に即して、カップの一方のセルを微粒子側のセル、他方のセルをコンジュゲート側のセルと呼ぶ)。
MYVF5r08M02抗体を固定化した微粒子を含む溶液を微粒子側のセルに分注し、コンジュゲート側のセルには、アルカリホスファターゼを標識した抗MYVF5r06M05抗体を含む溶液を分注した。溶液を凍結乾燥し、アルミシールし、MYH11のAIA-CL2400測定試薬とし、測定に供した。
<実施例4> 臨床検体の評価
作製例3で調製した測定試薬を用いて、実施例1で評価した本態性高血圧症の検体のうち32検体を測定した。評価用装置は全自動化学発光酵素免疫測定装置AIA-CL2400(東ソー(株)製:製造販売届出番号13B3X90002000018)を用いた。全自動化学発光酵素免疫測定装置AIA-CL2400によるMYH11の測定は、以下の手順で行った。
(1)サンプル10μLと界面活性剤を含む希釈液40μLを、作製例3で作製したMYH11のAIA-CL2400測定試薬の微粒子側のセルに自動で分注し、
(2)37℃恒温下で5分間の抗原抗体反応を行い、
(3)B/F(Bound/Free)分離後、界面活性剤を含む緩衝液にて洗浄を行い、
(4)コンジュゲート側のセルで別途溶解されたアルカリホスファターゼ標識抗体を微粒子側のセルに分注し、
(5)37℃恒温下で3分間の抗原抗体反応を行い、
(6)B/F分離後、界面活性剤を含む緩衝液にて洗浄を行い、
(7)微粒子側のセルに3-(5-tert-ブチル-4,4-ジメチル-2,6,7-トリオキサビシクロ[3.2.0]ヘプト-1-イル)フェニルリン酸エステルジナトリウム塩(DIFURAT)を添加し、単位時間当たりのアルカリホスファターゼによるDIFURATの分解で得られる化学発光強度をもって測定値(cps)とし、実施例1で得られたELISA測定結果と比較した。
結果を図7に示す。実施例1のサンドイッチELISAで得られた測定結果と実施例4のAIA-CL2400測定試薬で得られた結果との相関係数はR=0.9615であり、大きな乖離は見られなかった。

Claims (7)

  1. ミオシン重鎖11(MYH11)からなる、本態性高血圧症を検出するためのバイオマーカー。
  2. ヒト体液中のMYH11の濃度を測定し、その測定値から本態性高血圧症を検出する方法。
  3. MYH11の濃度が基準値よりも高い場合には、本態性高血圧症が検出されたとし、当該基準値は、本態性高血圧症が認められなかったヒト体液中のMYH11濃度である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記体液が、血清又は血漿である、請求項2又は3に記載の方法。
  5. MYH11の濃度を測定する方法が免疫学的測定法である、請求項2又は3に記載の方法。
  6. MYH11を特異的に認識する抗体を用いて行われる、請求項5に記載の方法。
  7. MYH11を特異的に認識する抗体を含有することを特徴とする、請求項5に記載の方法に使用するための検出試薬又は検出キット。
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