しかしながら、引用文献1の構成であっても、金属板からの打ち抜きと屈曲加工により、分離爪片の先端縁が角張っているため、光沢紙(シート)の表面が分離爪片の先端縁に擦れることで傷付き現象が発生することがあった。特に、給紙カセットに堆積させるシート量が多い(堆積高さが高い)場合、上記Uターンパス(搬送路)でのシート(光沢紙)の曲率半径が更に小さくなるので、上記の傷付き現象を完全には回避することができないという問題があった。
本発明は、上記課題を解消するものであり、画像記録部へ給送される被記録媒体の表面に傷付き現象を発生させない給紙装置及びそれを備えた画像記録装置を提供することを目的とするものである。
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明における給紙装置は、シート状の被記録媒体を堆積状態で収容可能な上面開放状のカセット本体と、前記堆積された最上層の被記録媒体を給送する給紙ローラ手段と、前記カセット本体における前記被記録媒体の給送方向の下流端にてその給送方向と直交して延びるように設けられ、且つ前記収容可能な被記録媒体の最大高さ位置より高い位置まで設けられている傾斜分離板と、この傾斜分離板に取り付けられ、前記被記録媒体の給送方向に沿って適宜間隔にて配列される複数の分離爪片を備え、前記給紙ローラ手段と前記分離爪片との協働により被記録媒体を1枚ずつに分離して給送する給紙装置であって、前記傾斜分離板には、前記各分離爪片における先端突出部を前記傾斜分離板の被記録媒体当接面側に突出させる窓穴が設けられ、少なくとも給送方向の最下流側に配置される前記分離爪片における先端突出部は、前記被記録媒体と接触する頂上部と、この頂上部からさらに給送方向下流側に向かって延びると共に給送される被記録媒体から退避する方向に屈曲形成される先端部とを有するものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の給紙装置において、給送方向の最下流側に配置される前記分離爪片における前記頂上部の前記傾斜分離板の前記当接面からの突出量が、その他の分離爪片における先端突出部の前記傾斜分離板の前記当接面からの突出量よりも大きくなるように設定されているものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の給紙装置において、前記分離爪片の列の数は、前記給送方向の下流側よりも前記給送方向の上流側で多く配置されているものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の給紙装置において、前記分離爪片の列のうち、前記給送方向の上流側に位置する列における分離爪片は、前記給送方向と直交する方向に対して千鳥状に配列されているものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の給紙装置において、 前記分離爪片は1つの分離体に形成されており、各分離体が前記傾斜分離板の裏面側に対して着脱可能に設けられているものである。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の給紙装置において、前記給紙ローラ手段は左右一対のローラを有しており、前記分離爪片の列は、左右一対のローラの配置間隔の間に対応するように配置されているものである。
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の給紙装置において、前記分離体は、扁平な金属板製であり、本体部分から延びるアーム部と、該アーム部から起立した自由端側が被記録媒体と接触可能な前記分離爪片と、本体部分から延びる弾性付与片とからなるものである。
請求項8に記載の発明は、請求項5乃至7のいずれかに記載の給紙装置において、前記傾斜分離板の前記当接面の反対側の面には、前記分離体を収容する収容部が形成され、この収容部の背面側から挿入する支持体にて前記分離体を脱落不能に支持するように構成されているものである。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8の何れかに記載の給紙装置と、この給紙装置から搬送されてくる被記録媒体上に画像を記録する画像記録部と、この画像記録部にて画像の記録された被記録媒体を排出する排出部と、を備えた画像記録装置である。
請求項1に記載の発明によれば、傾斜分離板には、各分離爪片を背面側から臨ませるための窓穴が被記録媒体(用紙)の給送方向に沿って列状で且つ適宜の所定間隔を開けて分割されて開口しているので、複数の分離爪片を囲むような細長い一連の窓穴を穿設する構成に比べて、隣接する窓穴の間のブリッジ部は傾斜分離板の前記中央部の曲げ撓みに対する剛性を補強する機能を有することになる。従って、傾斜分離板の長手方向の中央部位(窓穴に対応するブリッジ部)は表面側に向かって急激に突出するような反りが発生しないので、設計とおりの所定の突出量だけ、分離爪片を突出させることができ、給送される被記録媒体を1枚ずつに分離し捌く作用を確実にならしめることができる。
そして、請求項1の発明によれば、少なくとも給送方向の最下流側に配置される前記分離爪片における先端突出部は、前記被記録媒体と接触する頂上部と、この頂上部からさらに給送方向下流側に向かって延びると共に給送される被記録媒体から退避する方向に屈曲形成される先端部とを有するものである。このように、先端突出部の先端と先端部との間に頂上部が形成されていることにより、頂上部は滑らかな屈曲部となり、給送された被記録媒体の表面が頂上部に当接しても、当該被記録媒体が光沢紙であっても、その光沢面(記録面)が傷つかない。また、先端部は給送方向下流側に向かって延びると共に給送される被記録媒体から退避する方向に屈曲形成されているので、その先端部にプレス加工時に発生するカエリがあっても、そのカエリに被記録媒体の光沢面(記録面)が接触することがないのである。従って、記録された画像に傷ムラが生じず、被記録媒体の画質を高く維持することができる。
請求項2に記載の発明によれば、給送方向の最下流側に配置される前記分離爪片における前記頂上部の前記傾斜分離板の前記当接面からの突出量が、その他の分離爪片における先端突出部の前記傾斜分離板の前記当接面からの突出量よりも大きくなるように設定されているものであるので、各分離爪片における頂上部よりも給送下流側に配置される先端部が給送中の被記録媒体の表面に接触することが少なく、被記録媒体の光沢面(記録面)により傷が付き難くなるのである。
請求項3に記載の発明によれば、給送ローラ手段と、カセット本体の被記録媒体(用紙)の給送方向下流側の傾斜分離板から先端部が突出する分離爪片とが協働して用紙を給送する場合に、分離爪片の列の数を、給送方向の上流側、従って、カセット本体への用紙の堆積量が少ない状態の時に対応させて多くすることにより、基端(上端)を中心にして上下揺動する給紙アームの下端に装着された給紙ローラにより用紙を傾斜分離板における分離爪片の個所での給送抵抗力を大きくして、複数枚の用紙の先端部の捌き(ほぐし)作用を確実にならしめて、用紙の重送現象をなくすることができる。他方、給送方向の下流側、従って、カセット本体の底板から遠い側、即ちカセット本体への用紙の堆積量が多い状態のときの分離爪片の列の数を少なくすることにより、傾斜分離板における分離爪片の個所での給送抵抗力を大き過ぎないように制限し、用紙の空送り現象が発生しない効果を奏する。
請求項4に記載の発明によれば、前記分離爪片の列のうち、前記給送方向の上流側に位置する列における分離爪片は、前記給送方向と直交する方向に対して千鳥状に配列されているものであるので、請求項1に記載の発明による作用・効果に加えて、給送される複数枚の用紙の先端縁が、カセット本体の底板からの異なる高さの複数の分離爪片に衝突する機会が増大するので、用紙の重送現象をなくすることが一層確実になるという効果を奏する。
請求項5に記載の発明によれば、分離爪片は1つの分離体に形成されており、各分離体が前記傾斜分離板の裏面側に対して着脱可能に設けられているものである。このように1つの分離体に複数列の分離爪片を一体的に形成すると、各分離爪片の配置関係がバラつきなく設定でき、用紙の分離給送作用が確実にできる。
請求項6に記載の発明によれば、分離爪片の列は、前記給紙ローラ手段における左右一対のローラの配置間隔の間に対応するように配置されているものであるので、給送される用紙の幅方向の中央部に分離爪片による給送抵抗力が集中し、用紙が斜行することを効果的に防止できる。また、給紙ローラと分離爪片との間で、用紙に座屈現象が発生し難くなるので、重送現象も発生し難くなるという効果を奏する。
請求項7に記載の発明によれば、前記分離体は、扁平な金属板製であり、本体部分から延びるアーム部と、該アーム部から起立した自由端側が被記録媒体と接触可能な前記分離爪片と、本体部分から延びる弾性付与片とからなるものである。
従って、アーム部、分離爪片及び弾性付与片を金属板から打ち抜いた後、所定の屈曲工程を経ることにより、簡単に分離体を形成することができる。
請求項8に記載の発明によれば、傾斜分離板の前記当接面の反対側の面には、前記分離体を収容する収容部が形成され、この収容部の背面側から挿入する支持体にて前記分離体を脱落不能に支持するように構成されているものであるので、分離体の組立作業が至極簡単に行えるという効果を奏する。また、分離体における分離爪片の突出量を所定値にするように組み込むことが簡単にできるという効果を奏する。
請求項9に記載の発明によれば、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の給紙装置を備えた画像記録装置であるので、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の効果を有する画像記録装置を簡単に構成することができるという効果を奏する。
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。図1は本発明のインクジェット式の記録ヘッドが備えられた画像記録装置の斜視図、図2は概略側断面図、図3はカセット本体と給紙ローラ手段の斜視図、図4は傾斜分離板と給紙ローラ手段の斜視図、図5は分離爪片の第1実施形態の正面図、図6(a)は図4のVIa −VIa 線矢視断面図、図6(b)は図4の VIb−VIb 線矢視断面図、図7(a)は図5のVIIa−VIIa線矢視断面図、図7(b)は図7(a)の要部平面図、図8は分離爪片の第2実施形態の正面図、図9は第1及び第2実施形態における分離爪片と給紙ローラの配置関係を示す説明図、図10は分離爪片の第3実施形態の正面図、図11は第3実施形態における分離爪片と給紙ローラの配置関係を示す説明図である。
本実施形態の画像記録装置1は、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device )に本発明を適用したものである。図1及び図2に示すように、この画像記録装置1は、合成樹脂製の射出成形品からなるハウジング2を備えている。
ハウジング2の上部には、コピー機能やファクシミリ機能における画像読取装置12が配置されている。この画像読取装置12は、図示しない枢軸部を介してハウジング2の一側端に対して上下開閉回動可能に構成されている。さらに画像読取装置12の上面を覆う原稿カバー体13の後端は、画像読取装置12の後端に対して、図示しない枢軸を中心に開閉回動可能に装着されている。
ハウジング2の上側には、画像読取装置12の前方に各種操作ボタンや液晶表示部等を備えた操作パネル部14が設けられている。そして、画像読取装置12の上面には、原稿カバー体13を上側に開けて原稿を載置することができる載置用ガラス板(図示せず)が設けられ、その下側に原稿読取り用の密着イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)(図示せず)が図2の紙面と直交する方向(図1におけるX軸方向)に延びるガイドシャフトに沿って往復移動可能に設けられている。
本実施形態では、図示しないインク貯蔵部に個別の色毎のカートリッジとして、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用の4つのインクカートリッジが収納されている。そして、各インクカートリッジと記録部7(請求項の画像記録部に相当)における記録ヘッド4とは、可撓性を有するインク供給管で常時連結されている。この構成により、各色のインクは各インクカートリッジから記録ヘッド4へと供給されている。
このハウジング2の下部(底部)には、その前側(図2において左側)の開口部2aから挿抜可能なカセット本体3が配置されている。本実施形態では、カセット本体3は、被記録媒体(カットシート)としての、例えば、A4サイズ、レターサイズ、リーガルサイズ、はがきサイズ等にカットされた用紙Pをその短辺が用紙搬送方向(Y軸方向)と直交する方向(図2において、紙面と直交する方向)に延びるようにして、複数枚積層(堆積)されて収容できる形態とする。
給紙装置におけるカセット本体3には、図3に示すように、用紙Pを載置する底板31が備えられ、この底板31における給送方向(矢印A方向、図2参照)に沿う両側部に側板32、32が立設されている。そして、本実施形態では、排紙トレイ33が、底板31に載置された用紙Pの給送方向(矢印A方向)の上流側の一部を覆うように、両側板32、32の一部に跨って取り付けられている。なお、カセット本体3の底板31に用紙Pを収納容易とするために、この排紙トレイ33は、図示しない回動軸を中心として、カセット本体3上で開閉回動可能に取り付けられている。
また、底板31における給送方向(矢印A方向)下流側には、用紙Pをカセット本体3の幅方向の中心に対して左右対称にセットするとともに用紙Pの搬送方向をガイドするための用紙幅ガイド(図示せず)が左右方向(用紙Pの幅方向:X軸方向)に連動して移動可能に配置されている。
カセット本体3の奥側(図2において右側、図3において左側)には、用紙Pの先端縁を1枚ずつに分離するための分離体11を備えた分離傾斜板8が着脱可能に固定されている。また、ハウジング2側には、後述するように、給紙ローラ手段6における給紙アーム6aの基端部が駆動軸34の回りに上下方向に回動可能に装着されている。この給紙アーム6aの先端部に設けられた左右一対の給紙ローラ6bには、図示しない駆動源からの駆動力が、駆動軸34と給紙アーム6a内に設けられた歯車伝達機構とを介して伝達される(図3、図4参照)。
給紙ローラ手段6は、上述したように、給紙アーム6aと、一対の給紙ローラ6bと、駆動軸34と、を備えている。そして、合成樹脂製の枠状の給紙アーム6aの自由端部(下端)の左右両側に、ゴムなどの高摩擦係数部材をその外周部に巻回した左右一対の給紙ローラ6bが回転可能に軸支されている。また、給紙アーム6aの基端部は、合成樹脂製の駆動軸34の先端部分で回動可能に支持されている。そして、図示しない駆動源から駆動軸34に伝達された駆動力は給紙アーム6a内に設けられた複数の歯車列からなる歯車伝動機構を介して給紙ローラ6bに伝達される。その結果、給紙ローラ6bは所定の方向(カセット本体3内に収容されている用紙Pを搬送する方向)に回転するのである。なお、歯車伝動機構は、駆動軸34と一体的に回転する歯車と、駆動軸34に対して回転自在に被嵌した遊星アームの先端に枢支され、且つ上述の歯車に噛合う遊星歯車と、この遊星歯車から給紙ローラ6bの側部に形成されている歯車に動力伝達する複数の中間歯車とにより構成されている。
そして、給紙ローラ6bと分離傾斜板8における分離体11(後に詳述する)との協働により、カセット本体3に堆積収容された被記録媒体である用紙Pを最上層から一枚ずつ分離給送することができる。分離された用紙Pは横向きのUターンパスを含む搬送路9を介して、カセット本体3の上側(高い位置)に設けられた記録部7に搬送される。従って、カセット本体3には、光沢紙等の用紙Pの記録面(光沢面)を下向きにして堆積させておくと、Uターンパスを含む搬送路9を介して記録部7に搬送された用紙Pの記録面(光沢面)は上向く(記録ヘッドのノズル面と対面する)ことになる。しかして、用紙Pの記録面(光沢面)は分離傾斜板8における分離体11と対面した状態で、給送されることになる。
搬送路9は、そのUターン形状の外周側を構成する第1搬送路体と、内周側を構成するガイド部材である第2搬送路体との間隙に形成されている。この搬送路9では、搬送方向に直交する幅方向(以下、単に幅方向と記載する)の中心線(図示せず)に、用紙Pの幅方向の中心線が位置合わせされるセンター合わせにより、用紙Pが搬送されるように構成されている。
記録部7は、箱型のメインフレーム21とその左右一対の側板にて固定支持され、X軸方向(記録ヘッド4の主走査方向)に延びる横長の板状の第1および第2ガイド部材(図示せず)との間に形成される。記録部7におけるインクジェット式の記録ヘッド4が搭載されたキャリッジ5は、用紙搬送方向の上流側の第1ガイド部材及び下流側の第2ガイド部材に跨って摺動自在に支持(搭載)されて主走査方向(X軸方向)に往復移動可能になっている。
キャリッジ5を往復移動させるために、用紙搬送方向(矢印A方向)の下流側に配置された第2ガイド部材の上面には、主走査方向(X軸方向)に延びるようにタイミングベルト(図示せず)が配置され、このタイミングベルトを駆動するCR(キャリッジ)モータ(図示せず)は第2ガイド部材の下面に固定されている。
キャリッジ5における記録ヘッド4の下面と対峙するようにX軸方向に延びる扁平状のプラテン26は、前記第1及び第2ガイド部材の間にて、メインフレーム21に固定されている。
プラテン26の搬送方向上流側には、用紙Pを記録ヘッド4の下面に搬送するための搬送(レジスト)ローラとして、駆動ローラ27aと、この駆動ローラ27aに対向する下方に従動ローラとが配置されている。また、プラテン26の搬送方向下流側には、記録済みの用紙Pを排紙トレイ33に搬送(排送)するように駆動される排紙ローラ28aと、これに対向して排紙ローラ28a側に付勢された拍車ローラとが配置されている(図2参照)。
次に、傾斜分離板8及び分離体11の構成について説明する。図3〜図7に示すように、用紙分離用の傾斜分離板8はカセット本体3の奥側(図3において左側端)端部に対して着脱可能に配置されるものであり、傾斜分離板8及びカセット本体3は合成樹脂材の射出成形品である。傾斜分離板8は1枚の連続な板状である。この傾斜分離板8は、用紙Pの幅方向(X軸方向)における中央部で突出し、用紙Pの幅方向の左右両端部側に行くに従って後退するように平面視で凸湾曲状に形成されている。更に傾斜分離板8の中央部には、用紙Pの先端縁に当接して分離を促進するための分離爪片(爪状の弾性体)36が一体的に形成された分離体11が、傾斜分離板8の背面から取り付けられるようになっている。
傾斜分離板8の背面側には、側面視略三角形状の背面支持部38がX軸方向に沿って適宜間隔にて複数設けられている。この背面支持部38は、傾斜分離板8がカセット本体3に装着されたとき、カセット本体3における奥側板37に当接して配置される。従って、傾斜分離板8は、上述したように、平面視で凸湾曲状に維持されると共に、用紙Pの搬送時等に変形するのを規制されるのである。
さらに、傾斜分離板8の長手方向(X軸方向、用紙Pの幅方向)中央部には、後述する分離体11における各分離爪片36を背面側から用紙Pの当接面(表面)側に臨ませるための複数の窓穴44が用紙Pの給送方向(矢印A方向、図4、図5、図7など参照)に沿って設けられている。これらの窓穴44は、2列状で且つ適宜の所定間隔(分離爪片36の配置間隔に略等しい間隔)をもって開口されている(図4、図7参照)。これらの窓穴44から各分離爪片36が傾斜分離板8の用紙Pの当接面(表面)側に突出するのである。従って、隣接する小さい窓穴44の間の部位(ブリッジ部)50は、傾斜分離板8と一体である。また、傾斜分離板8の背面側には、分離体11を支持するための取付ケース46が全ての窓穴44を囲むように一体的に形成されている。この取付ケース46は、後述する合成樹脂製の箱状支持部材45(支持体)を収容することが可能である。分離体11は、取付ケース46と支持部材45とによって固定支持されるのである(図6(a)及び図6(b)参照)。
なお、取付ケース46よりも、用紙Pの幅方向の外側には、用紙Pの給送作用を円滑にするための、一対の回転自在なコロ47の軸受部48が傾斜分離板8の背面側に設けられ、各コロ47の円周面の一部が傾斜分離板8の当接面(表面)に臨むような穴49が穿設されている(図4及び図6(a)参照)。
そして、給送方向の上流側(カセット本体3における底板31に近い側)に配置される複数の分離爪片36はアーム部40から直角に起立する基部36aと、用紙Pの給送方向下流側に向かって倒れ傾斜する(傾斜分離板8の表面に対して斜め上方向に傾斜する)ように屈曲された先端突出部(自由端側ともいう)36bとを有する。
さらに、本発明では、少なくとも給送方向の最下流側(カセット本体3における底板31から最も遠い(最も高い側)の分離爪片36における先端突出部36bは、用紙Pと接触する頂上部36cと、この頂上部36cからさらに給送方向下流側に向かって延びると共に給送される用紙Pから退避する方向に屈曲形成される先端部36dと有する。
実施形態では、図7(a)に示すように、最下流側を含む3箇所の分離爪片36には、それぞれ頂上部36cと先端部36dと有しているが、他の実施形態では、最下流側の分離爪片36のみに、頂上部36cと先端部36dと有しておれば良い。後述する複数列の分離爪片36を有する場合(図5、図8及び図10参照)においては、カセット本体3の底板31に近い部位で分離爪片36の列が終了する場合、その列についての最下流側における分離爪片36には、上述の頂上部36c及び先端部36dは有していないものとする。
このように、先端突出部36bの先端と先端部36dとの間に頂上部36cが形成されていることにより、頂上部36cは滑らかな屈曲部となり、給送された用紙Pの表面が頂上部36cに当接しても、当該用紙P(光沢紙)の光沢面(記録面)が傷つかない。また、先端部36dは給送方向下流側に向かって延びると共に給送される用紙Pから退避する方向に屈曲形成されているので、その先端部36dにプレス加工時に発生するカエリがあっても、そのカエリに用紙P(光沢紙)の光沢面(記録面)が接触することがないのである。
そして、頂上部36cを有する分離爪片36における頂上部36cから傾斜分離板8の表面までの高さ寸法H1は、頂上部36cを有しない分離爪片36における先端突出部36bの最突出端から傾斜分離板8の表面までの高さ寸法H2よりも大きく設定されている。好ましくは、最下流側に配置される分離爪片36における頂上部36cから傾斜分離板8の表面までの高さ寸法H1が最も大きいように設定する。実施形態では、寸法H1は0.2mm程度である。
このように、構成することにより、各分離爪片36における頂上部36cよりも給送下流側に配置される先端部36dが給送中の用紙Pの表面に接触することがなく、用紙Pの光沢面(記録面)に傷が付かないのである。
本発明(実施形態)においては、分離爪片36の列の数は、給送方向の上流側(カセット本体3の底板31に近い側、従って、カセット本体3への用紙Pの堆積量が少ない場合に相当)で多く、給送方向の下流側(カセット本体3の底板31から遠い側、従って、カセット本体3への用紙Pの堆積量が多い場合に相当)で少なく配置されている。要するに、分離爪片36の列の数は給送方向の下流側よりも給送方向の上流側に多く配置されている。
第1実施形態(図5参照)、第2実施形態(図8参照)、第3実施形態(図10参照)では、分離爪片36の列の数は、給送方向の上流側で2列であり、給送方向の下流側で1列とする。しかしながら、分離爪片36の列の数はこれに限ったものではなく、給送方向の下流側よりも給送方向の上流側に多く配置されていれば良い。
このように、分離爪片36の列の数を、給送方向の上流側、従って、カセット本体3への用紙Pの堆積量が少ない状態の時に対応させて多くすることにより、基端(上端)を中心にして上下揺動する給紙アーム6aの下端に装着された給紙ローラ6bにより用紙Pを傾斜分離板8における分離爪片36の個所での給送抵抗力を大きくして、複数枚の用紙Pの先端部の捌き(ほぐし)作用を確実にならしめて、用紙Pの重送現象を低減することができる。他方、給送方向の下流側、従って、カセット本体3の底板31から遠い側、即ちカセット本体3への用紙Pの堆積量が多い状態のときの分離爪片36の列の数を少なくすることにより、傾斜分離板8における分離爪片36の個所での給送抵抗力を大き過ぎないように制限し、用紙Pの空送り現象を低減することができる。
分離爪片36は1つまたは複数の分離体11に形成されており、各分離体11が傾斜分離板8の裏面側に対して着脱可能に設けられている。即ち前述したように、分離体11は、背面開放形の取付ケース46(請求項における収容部に相当)に収容される。そして、取付ケース46の背面側から、着脱可能な箱状の支持部材45(請求項における支持体に相当)を装着することにより、分離体11は脱落不能に固定支持される(図6(a)及び図6(b)参照)。分離体11が複数ある場合は、各分離体11毎に、傾斜分離板8の裏面側に取り付けケース46が別々に形成され、各取り付けケース46毎に支持部材45が配置されるものとする。
次に、第1実施形態の分離体11の構成について詳述する。図5〜図7に示すように、分離体11はステンレスなどの弾性体としての金属板製である。分離体11は、扁平な本体部(ベース部)39から延びる山形(逆V字状)のアーム部40と、このアーム部40の中央部から起立し(切り起こし)て自由端側が用紙Pと接触可能な爪状の分離爪片36と、本体部分39から延びる外向きに延びる弾性付与片(板バネ部)41とを備えている。
第1実施形態では、下側の本体部分(ベース部)39の幅寸法が大きい。この本体部分(ベース部)39に左右2列状で且つ上下方向に一定間隔で左右平行状にて、アーム部40及び分離爪片36が形成され、本体部分39の左右両側端から弾性付与片41が斜め上向きに突出されている。上側の本体部分39の左右幅寸法は小さく、その幅中央部位には、給送方向に沿って一定間隔で1列にてアーム部40及び分離爪片36が形成されている。上側の本体部分39の左右両側端にも同様に弾性付与片41が斜め上向きに突出されている。
各分離爪片36はアーム部40から直角に起立する基部36aと、用紙Pの給送方向下流側に向かって倒れ傾斜する(傾斜分離板8の表面に対して斜め上方向に傾斜する)ように屈曲された先端部(自由端側ともいう)36bとを有しており、さらに、その一部の分離爪片36には、先端部36bと頂上部36c及び先端部36dを有している。これらの構成では、金属板から打ち抜いて後所定の屈曲工程を経ることにより、簡単に分離体を形成することができる。
基部36aと先端部36bとの屈曲部分は傾斜分離板8の板厚内にあるように設定されている。これにより、給送される用紙Pの先端縁が基部36a及び屈曲部分に衝突せず(この部分に衝突すると、抵抗力が大きくなりすぎて、給送できない)、先端部36b側に斜めの角度の角度で摺接する。このときの用紙Pの先端縁に対する抵抗力にて、給送される複数枚の用紙Pがほぐされ、最上層の用紙Pのみが分離給送されるのである。
なお、左右両側の弾性付与片41の自由端側は、箱状の支持部材45の内面に突出形成された上下長手のリブ部45a、45b、45cの端面にそれぞれ支持されることにより(図5、図6(a)及び図6(b)参照)、本体部分39の全体(全長)が傾斜分離板8の裏面に隙間無く当接した状態で、弾力付勢できることになる。
上述のように、複数列の分離爪片36を1つの分離体11に一体的に形成すると、1つの分離体11に1列の分離爪片36のみを形成する場合に比べて、部品点数を少なくすることができる。また、複数列の分離爪片36を1つの分離体11の本体部分(ベース部)39の幅の中央寄りにまとめて(近接させて)形成することができて、分離体11の形状をコンパクトにできる。複数列の分離爪片36を1つの分離体11に一体的に形成すると、分離体11の板厚さや、材質(バネ常数)などについての各分離爪片36の品質のばらつきが少なくなり、上記の用紙Pの重送現象、空送り現象を一層低減することができる。
分離爪片36の列のうち、給送方向の上流側に位置する複数列における分離爪片36は、第1実施形態(図5参照)及び第3実施形態(図10参照)では、給送方向と直交する方向に対して平行に配列されており、第2実施形態(図8参照)では、千鳥状に配列されている。このように、カセット本体3の底板31に近い側における左右複数列の分離爪片36の配列を千鳥状にすることにより、給送される複数枚の用紙Pの先端縁が、底板31からの異なる高さの複数の分離爪片36に衝突する機会が増大するので、用紙Pの重送現象を低減することが一層確実になるという効果を奏する。
なお、第2実施形態(図8参照)では、分離体11の下側(給送方向の上流側に)位置する2列の分離爪片36が千鳥状に配列されている他は、第1実施形態の形態(構成)と全く同じであるので、同じ構成については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
第3実施形態(図10参照)では、分離体11の下側(給送方向の上流側に)位置する2列の分離爪片36が本体部分39の広い幅方向に左右対称状に形成されている一方、分離体11の上側(給送方向の下流側に)位置する1列の分離爪片36は本体部分39の幅方向の中央部に形成され、且つ下側の2列の分離爪片36の間に位置している。この構成により、上下両方の分離爪片36の列や、本体部分39、アーム部40、弾性付与片41などが左右対称状に形成されているので、この1つの分離体11を、傾斜分離板8の左右中央部に配置することで、左右センター配置の用紙Pに対する分離給送作用が左右バランスの取れた状態にできる。
また、分離爪片36の列は、給紙ローラ手段6における左右一対の給紙ローラ6bの配置間隔L1の間に対応する(図9及び図11参照)か、または各給紙ローラ6bによる給送作用部と対向する位置に配置されるように設定する。このように構成することにより、給送される用紙Pの幅方向の中央部に分離爪片36による給送抵抗力が集中し、用紙Pが斜行することを効果的に防止できる。また、給紙ローラ6bと分離爪片36との間で、用紙Pに座屈現象が発生し難くなるので、重送現象も発生し難くなる(低減できる)という効果を奏する。
なお、上記の構成において、傾斜分離板8の背面側から取り付けケース46内に分離体11を挿入し、各アーム部40を各窓穴44に嵌め、支持部材45を固定すると、この支持部材45にて分離体11の全ての弾性付与辺(弾性足)41が支持される。その結果、本体部分39は傾斜分離板8の背面側にぴったりと当接し、各分離爪片36は傾斜分離板8の用紙Pの当接(表)面側に所定量だけ突出し、その突出量にバラツキが生じない(図6(a)及び図6(b)参照)。
傾斜分離板8をカセット本体3の奥側板37における各背面支持部38の係止溝に上方から係止する一方、傾斜分離板8の背面を各背面支持部38の傾斜面に当接させて配置すると、その傾斜分離板8の表面(用紙Pの先端縁と対峙又は当接する面)も、その長手方向(X軸方向、用紙Pの幅方向)の中央部で突出し、且つ用紙Pの幅方向の左右両端部側に行くに従って後退する(用紙Pの先端縁から離れる)ように平面視で凸湾曲状(弓形)に形成されることになる。その場合、傾斜分離板8の長手方向の中央部位(窓穴44を有する箇所)が最も曲げ応力及び撓み変形が大きくなるが、複数の分離爪片36を囲むような上下に細長い一連の窓穴を穿設する構成に比べて、本発明のように、隣接する小さい窓穴44の間の複数箇所のブリッジ部50は、傾斜分離板8の長手方向の中央部位の曲げ剛性を補強する(高める)ことに寄与できるものである。従って、傾斜分離板8の長手方向の中央部位(窓穴44に対応するブリッジ部50)は表面側に向かって急激に突出するような反りが発生しないので、設計とおりの所定の突出量だけ、分離爪片36を突出させることができ、給送される用紙Pを1枚ずつに分離し捌く作用を確実ならしめることができる。
上記各実施形態(発明)は、カセット本体3が上下多段に配置された画像記録装置にも適用できることはいうまでもない。