JP2008238843A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ステアリングダンパ効果を期待できるとともに、ステアリングの不自然な挙動を防止できる電動パワーステアリング装置を供する。
【解決手段】第1猶予時間設定マップM1と猶予時間をより短く設定した第2猶予時間設定マップM2が記憶されたマップ記憶手段41と、トルク変化量dTと電流変化量dImがともに各所定変化量より小さいときは第1猶予時間設定マップM1を選択し、それ以外では第2猶予時間設定マップM2を選択する猶予時間設定マップ選択手段44と、操舵トルクとモータ電流の組み合わせの点座標を、選択された猶予時間設定マップに照合して猶予時間を決定する猶予時間決定手段45と、決定された猶予時間に対応する領域に、前記点座標が該猶予時間継続して存在したときにモータ駆動停止と判断するモータ駆動停止判断手段46とからなるサブ制御システムを備え、モータ駆動停止判断手段がモータ駆動停止と判断したときは、メイン制御システムにより駆動制御されるモータの駆動を停止する電動パワーステアリング装置。
【選択図】図4

Description

本発明は、運転者の操舵力を補助する電動パワーステアリング装置に関する。
電動パワーステアリング装置は、運転者の操舵力を電動機の動力により補助するものであるから、運転者の操舵による操舵トルクの方向と電動機の駆動による補助トルクの方向は同じであるのが通常であり、正常な状態であるので、操舵トルクの方向と補助トルクの方向が異なる事態が生じたときは、CPU等により構成される制御系のシステムの異常が考えられるので、このような事態に対処すべく別個にサブCPUにより構成される第2の制御系を備えて監視するようにした例がある(例えば、特許文献1参照)。
同特許文献1には、操舵トルクの方向と補助トルクの方向が異なる状態が、所定時間(猶予時間)以上継続した場合は、モータの駆動を禁止する制御が開示されている。
以上のように、操舵トルクの方向と補助トルクの方向は、通常同じであるが、操舵切り返し時などでステアリングダンパ効果を持たせるために、操舵トルクの方向とは逆方向の補助トルクを働かせるように制御することがある。
前記特許文献1における制御でも、モータの駆動を禁止するのに所定時間以上継続を条件としているので、この所定時間に多少このステアリングダンパ効果を持たせることができるが、状態に応じてステアリングダンパ効果を適切に得るために、この所定時間を操舵トルクの大きさによって可変とした制御が別途提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平5−112251号公報 特許第3418098号公報
しかし、特許文献2の制御では、操舵トルクが小さいときに、十分なステアリングダンパ効果を得るために、長い所定時間が設定されているが、操舵トルクの方向と補助トルクの方向が異なる事態がシステム異常で生じているとすると、この比較的長い所定時間ダンパとしても働かないモータの余計な駆動が続くことになり、特にトルク変化が大きい場合等にステアリングの不自然な挙動として現われる。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、ステアリングダンパ効果を期待できるとともに、システム異常の場合等にステアリングの不自然な挙動を防止できる電動パワーステアリング装置を供する点にある。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、操舵トルクおよび車速に基づきアシストベース電流値を算出する操舵アシスト制御手段と、少なくとも操舵トルクの変化量に基づきダンパ電流を演算するダンパ電流演算手段とを備えて、前記アシストベース電流に前記ダンパ電流を加算した電流に基づき求めたアシスト目標電流に従ってモータを駆動制御して人力を補助するメイン制御システムを構成した電動パワーステアリング装置において、操舵トルクとモータ電流を2変数とした座標マップであり予め定めたモータ駆動停止領域内にモータ駆動を停止するための猶予時間を設定した猶予時間設定マップとして、第1猶予時間設定マップと猶予時間をより短く設定した第2猶予時間設定マップが記憶されたマップ記憶手段と、前記操舵トルクを微分してトルク変化量を算出するトルク変化量演算手段と、前記モータ電流を微分して電流変化量を算出する電流変化量演算手段と、前記トルク変化量と前記電流変化量がともに各所定変化量より小さいときは前記第1猶予時間設定マップを選択し、それ以外では前記第2猶予時間設定マップを選択する猶予時間設定マップ選択手段と、前記操舵トルクと前記モータ電流の組み合わせの点座標を、前記猶予時間設定マップ選択手段により選択された猶予時間設定マップに照合してモータ駆動停止領域にあれば対応する猶予時間を抽出し決定する猶予時間決定手段と、前記決定された猶予時間に対応する領域に、前記操舵トルクと前記モータ電流の組み合わせの点座標が該猶予時間継続して存在したときにモータ駆動停止と判断するモータ駆動停止判断手段とからなるサブ制御システムを備え、前記サブ制御システムのモータ駆動停止判断手段がモータ駆動停止と判断したときは、前記メイン制御システムにより駆動制御されるモータの駆動を停止する電動パワーステアリング装置とした。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電動パワーステアリング装置において、前記マップ記憶手段が記憶する前記第1猶予時間設定マップおよび前記第2猶予時間設定マップにおける前記モータ駆動停止領域は、前記操舵トルクの方向と前記モータの前記モータ電流により生じる補助トルクの方向とが互いに逆方向となる領域に主に存在することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の電動パワーステアリング装置において、前記マップ記憶手段が記憶する前記第1猶予時間設定マップと前記第2猶予時間設定マップは、モータ駆動停止領域を互いに同じ領域とし、同モータ駆動停止領域のうちの猶予時間を設定した領域をモータ電流に応じて複数の領域に分割し、各領域に対応してモータ駆動を停止するための猶予時間が設定され、猶予時間を設定した領域の分割された各領域はモータ電流が大きい領域ほど短い猶予時間が対応することを特徴とする。
請求項1記載の電動パワーステアリング装置によれば、猶予時間設定マップ選択手段によりトルク変化量と電流変化量がともに所定変化量より小さいときは第1猶予時間設定マップを選択し、それ以外では猶予時間をより短く設定した第2猶予時間設定マップを選択するので、モータ駆動を停止するための猶予時間は長短あるものの所要時に常に働き必要とされるステアリングダンパ効果は期待できるとともに、トルク変化量と電流変化量の少なくとも一方が大きくステアリングに挙動が生じ易い場合に、猶予時間を短くしてモータの駆動を短時間に停止してステアリングに不自然な挙動が発生するのを防止することができる。
そのため、メイン制御システムにシステム異常が生じた場合でもステアリングの不自然な挙動を防止することができる。
請求項2記載の電動パワーステアリング装置によれば、第1猶予時間設定マップおよび第2猶予時間設定マップにおけるモータ駆動停止領域は、操舵トルクの方向と前記モータのモータ電流により生じる補助トルクの方向とが互いに逆方向となる領域に主に存在するので、通常のステアリングの切り込み時にはモータ駆動を停止せずに操舵力を補助し、ステアリングの切り返し時などに猶予時間モータ駆動を駆動した後停止してステアリングダンパを働かせることができる。
請求項3記載の電動パワーステアリング装置によれば、猶予時間を設定した領域の分割された各領域はモータ電流が大きい領域ほど短い猶予時間が対応するので、システム異常時などにモータ電流が大きくステアリングの挙動が大きく現われる領域ではモータ駆動を停止するための猶予時間を短くして、短時間にモータの駆動を停止してステアリングの不自然な挙動を可及的に抑えることができる。
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図5に基づいて説明する。
本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置1の全体の概略後面図を図1に示す。
電動パワーステアリング装置1は、車両の左右方向(図1における左右方向に一致)に指向した略円筒状のラックハウジング2内にラック軸3が左右軸方向に摺動自在に収容されている。
ラックハウジング2の両端開口から突出したラック軸3の両端部にそれぞれジョイントを介してタイロッドが連結され、ラック軸3の移動によりタイロッドが動かされ、さらに転舵機構を介して車両の転舵輪が転舵される。
ラックハウジング2の右端部にステアリングギアボックス4が設けられている。
ステアリングギアボックス4には、ステアリングホイール(図示せず)が一体に取り付けられたステアリング軸にジョイントを介して連結される入力軸5が軸受を介して回動自在に軸支されており、図2に示すように入力軸5はステアリングギアボックス4内でトーションバー6を介して相対的なねじり可能に操舵ピニオン軸7と連結されている。
この操舵ピニオン軸7のはす歯7aがラック軸3のラック歯3aと噛合している。
したがってステアリングホイールの回動操作により入力軸5に伝達された操舵力は、トーションバー6を介して操舵ピニオン軸7を回動して操舵ピニオン軸7のはす歯7aとラック歯3aの噛合によりラック軸3を左右軸方向に摺動させる。
ラック軸3は、ラックガイドスプリング8に付勢されたラックガイド9により背後から押圧されている。
ステアリングギアボックス4の上部にはアシストモータ24が取り付けられ、アシストモータ24の駆動力を減速して操舵ピニオン軸7に伝達するウオーム減速機構10がステアリングギアボックス4内に構成されている。
ウオーム減速機構10は、操舵ピニオン軸7の上部に嵌着されたウオームホイール11にアシストモータ24の駆動軸に同軸に連結されたウオーム12が噛合して構成されている。
アシストモータ24の駆動力をこのウオーム減速機構10を介して操舵ピニオン軸7に作用させて操舵を補助する。
なお、アシストモータ24には、その回転駆動軸の回転を直接検出するロータリエンコーダ、レゾルバなどの回転角センサ27が設けられている。
ウオーム減速機構10のさらに上方に操舵トルクセンサ20が設けられている。
トーションバー6の捩れをコア21の軸方向の移動に変換し、コア21の移動をコイル22,23のインダクタンス変化に変えて操舵トルクTを検出している。
なお、トーションバー6の捩れを光学的に検出するトルクセンサでもよい。
この操舵トルクをもとに制御され操舵を補助するアシストモータ24は、メインCPU30によるメイン制御システムにより駆動制御されており、このメイン制御システムを監視する別のサブCPU40によるサブ制御システムが付設されている。
以上のメイン制御システムおよびサブ制御システムの概略ブロック図を図3に示す。
まず、メインCPU30によるメイン制御システムにおいて、操舵トルクセンサ20が検出した操舵トルクTと車速センサ25が検出した車速vに基づいて操舵アシスト制御手段31がアシストベース電流Ibを演算し出力する。
アシストベース電流Ibは、アシストモータ24を駆動するベースとなる電流で、操舵トルクTが大きい程アシストベース電流Ibは大きくして操舵する者の負担を軽減するのを基本として演算され、同じ操舵トルクでも車速が高速のときより低速のときの方がハンドルは重くなるのでアシストベース電流Ibを大きくして操舵トルクを軽減する。
操舵アシスト制御手段31は、操舵トルクTと車速vから上記のことを考慮して適切なアシストベース電流Ibを演算する。
例えば、操舵トルクTに対するアシストベース電流Ibの最適な関係を所定の車速毎に予め決めておき、同関係をもとに操舵トルクTと車速vからアシストベース電流Ibを演算する。
さらに、ステアリング系の慣性トルクやモータの慣性トルクを補償する演算も加えてアシストベース電流Ibを求めるようにしてもよい。
一方で、ダンパ電流演算手段32が操舵トルクTと車速vに基づいてダンパ電流ΔIを演算する。
ダンパ電流演算手段32は、操舵トルクTを時間微分してトルク変化量dTを求め、車速vに応じて予め設定しておいた微分定数をトルク変化量dTに乗算して微分電流値であるダンパ電流ΔIを算出する。
なお、トルク変化量dTは、メインCPU30による演算サイクル(例えば、100ms)ごとの操舵トルクTの今回値から前回値を減算した差として求められる。
こうしてダンパ電流演算手段32により算出されたダンパ電流ΔIが、加算手段33により前記アシストベース電流Ibに加算されて、アシスト目標電流Ioが求められ、このアシスト目標電流Ioは、電流フィードバック制御手段34に入力される。
電流フィードバック制御手段34には、アシストモータ24に備えられたモータ電流検出装置28により検出されたモータ電流Imがフィードバックして入力されている。
したがって、電流フィードバック制御手段34は、前記アシスト目標電流Ioとフィードバックしたモータ電流Imとの差を0にするようにPID演算し、演算結果に基づく駆動電流Idがモータ駆動回路27に出力され、モータ駆動回路27のPWM制御によってアシストモータ24が駆動される。
以上のメインCPU30によるメイン制御システムに対して、メイン制御システムを監視するサブCPU40によるサブ制御システムについて、以下説明する。
サブCPU40は、前記トルクセンサ20により検出された操舵トルクTと前記モータ電流検出装置28により検出されたモータ電流Imを入力して操舵トルクTとモータ電流Imに基づいてメインCPU30を監視し、アシストモータ24の駆動を停止するか否かを判断する。
サブCPU40によるサブ制御システムには、マップ記憶手段41が付随しており、図5に示す予め作成された第1猶予時間設定マップM1と第2猶予時間設定マップM2の2種類が記憶されている。
猶予時間設定マップM1,M2は、操舵トルクTとモータ電流Imを2変数とした直交座標マップであり予め定めたモータ駆動停止領域内にモータ駆動を停止するための猶予時間を設定したものである。
猶予時間設定マップM1,M2は、横軸を操舵トルクTとし、原点0より右側が右回り方向の操舵トルクを示し、左側が左回り方向の操舵トルクを示し、一方縦軸をモータ電流Imとし、原点0より上側がアシストモータ24の右回り方向の補助トルクを生じるモータ電流Imを示し、下側が左回り方向の補助トルクを生じるモータ電流Imを示す。
この猶予時間設定マップM1,M2において、操舵トルク値がTでモータ電流値がImの状態は、操舵トルクTとモータ電流Imの組み合わせの点座標(T,Im)で示される。
通常、この点座標(T,Im)は、操舵トルクTの方向とモータ電流Imによる補助トルクの方向とが同じである第1象限と第3象限に存在する。
すなわち、点座標(T,Im)が第1象限と第3象限に存在することで、運転者の操舵力をアシストモータ24の補助トルクが補助することができる。
したがって、操舵トルクTの方向とモータ電流Imによる補助トルクの方向とが互いに異なる第2象限と第4象限に、点座標(T,Im)が存在することは、通常なく、もしこのような事態が生じたとすると、メインCPU30の故障などのメイン制御システムの異常が想定されるので、第2象限と第4象限は略モータ駆動停止領域とされる。
しかし、本電動パワーステアリング装置1は、メインCPU30にダンパ電流演算手段32を有してトルク変化量dTに基づくダンパ電流ΔIをアシストベース電流Ibに加算しているので、ステアリングの切り返し時などに、モータ電流Imが反転して操舵トルクの方向と反対方向に補助トルクが働き制動が加わることでステアリングダンパ効果を得ている。
したがって、略第2象限と第4象限にあたるモータ駆動停止領域内であっても、操舵トルクTとモータ電流Imの組み合わせの点座標(T,Im)が存在する場合がある。
しかし、ステアリングダンパとして作用する過渡状態に存在するのであって、長時間に亘るものではなく、ここにモータ駆動を停止するための猶予時間t1,t2を設定している。
図5に示すように、第1猶予時間設定マップM1と第2猶予時間設定マップM2は、モータ駆動停止領域内で操舵トルクTが所定値以上に大きい領域はモータの駆動が完全に禁止された領域(駆動禁止領域)である。
モータ駆動停止領域内で駆動禁止領域以外の領域は、猶予時間が設定された領域であり、この猶予時間設定領域は、モータ電流によって3つの領域に分けられており、モータ電流が大きい領域ほど猶予時間は短く設定されている。
駆動禁止領域は、猶予時間が0msに相当する。
第1猶予時間設定マップM1と第2猶予時間設定マップM2は、そのモータ駆動停止領域および猶予時間設定領域を同じくしており、その猶予時間設定領域において、第1猶予時間設定マップM1における猶予時間t1は、モータ電流が小さい順に500ms、50ms、4msに設定されており、第2猶予時間設定マップM2における猶予時間t2は、モータ電流が小さい順に100ms、30ms、4msに設定されている。
なお、1ms(ミリ秒)は、0.001s(秒)のことである。
第1猶予時間設定マップM1に比べ第2猶予時間設定マップM2の方が、モータ電流が大きい領域の最小時間4msを同じくする以外、猶予時間は短い(t1≧t2)。
なお、第2象限と第4象限のモータ駆動停止領域は、それぞれ第1象限と第3象限に若干はみ出しているが、このはみ出し領域は操舵トルクTが極めて小さい領域なので、補助トルクを必要とせず、却ってモータを駆動すると不安定となるので、モータの駆動を停止としている。
また、猶予時間設定領域は、モータ電流が極めて小さい領域が除かれているが、これは猶予時間を余裕をもって設定し、安易に設定することによるモータの不安定な駆動制御を防止するためである。
以上のような第1猶予時間設定マップM1と第2猶予時間設定マップM2の2種類の猶予時間設定マップを、サブCPU40のマップ記憶手段41が記憶している(図3参照)。
サブCPU40には、トルク変化量演算手段42と電流変化量演算手段43が設けられ、トルク変化量演算手段42はトルクセンサ20が検出した操舵トルクTを時間微分してトルク変化量dTを求め、電流変化量演算手段43は前記モータ電流検出手段28が検出したモータ電流Imを時間微分して電流変化量dImを求める。
電流変化量dImは、サブCPU30による演算サイクルごとのモータ電流Imの今回値から前回値を減算した差として求められる。
そして、サブCPU40は、猶予時間設定マップ選択手段44、猶予時間決定手段45およびモータ駆動停止判断手段46を備えており、猶予時間設定マップ選択手段44は、上記トルク変化量dTと電流変化量dImに基づいてマップ記憶手段41が記憶している2種類の猶予時間設定マップM1,M2のうちいずれかの猶予時間設定マップを選択し、猶予時間決定手段45は、その選択された猶予時間設定マップに、操舵トルクTとモータ電流Imの組み合わせの点座標(T,Im)を照合して、点座標(T,Im)が存在する領域の猶予時間を抽出して決定する。
モータ駆動停止判断手段46は、この決定された猶予時間継続して点座標(T,Im)が該領域に存在するか否かを判別してモータ駆動停止係数Cを出力する。
モータ駆動停止係数Cは、0か1の値をとり、モータ駆動を停止するときはC=0とされ、それ以外のときは、C=1と設定される。
以上のサブCPU40におけるモータ駆動停止判断処理の手順を、図4にフローチャートで示す。
まず、モータ電流Imおよび操舵トルクTを読込み(ステップ1,2)、フラグFに“1”が立っているか否かを判別する(ステップ3)。
フラグFは、猶予時間設定マップ選択手段44により第1猶予時間設定マップが選択されたときは、“0”に設定され(ステップ9)、第2猶予時間設定マップが選択されたときは、“1”が立つものである(ステップ15)。
ステップ3からF=0ならばステップ4に進み、F=1ならばステップ14に飛ぶが、当初、フラグFは“0”であり、ステップ3からステップ4に進む。
ステップ4では電流変化量演算手段43によりモータ電流Imを時間微分して電流変化量dImを算出し、次のステップ5でトルク変化量演算手段42により操舵トルクTを時間微分してトルク変化量dTを算出する。
そして、ステップ6で算出した電流変化量dImが所定変化量dI1以上か否かを判別し、所定変化量dI1以上ならばステップ14に飛び、電流変化量dImが所定変化量dI1より小さければステップ7に進み、ステップ7ではトルク変化量dTが所定変化量dT1以上か否かを判別し、所定変化量dT1以上ならばステップ14に飛び、トルク変化量dTが所定変化量dT1より小さければステップ8に進む。
すなわち、電流変化量dImとトルク変化量dTが、ともに所定変化量dI1、dT1より小さいときは、ステップ8に進み、猶予時間設定マップ選択手段44により第1猶予時間設定マップM1が選択され、電流変化量dImとトルク変化量dTの少なくとも一方が所定変化量dI1、dT1以上であるときは、ステップ14に飛んで、猶予時間設定マップ選択手段44により第2猶予時間設定マップM2が選択される。
ステップ8で第1猶予時間設定マップM1が選択されると、フラグFを“0”にしておき(ステップ9)、ステップ10に進み、ステップ14で第2猶予時間設定マップM2が選択されと、フラグFに“1”を立て(ステップ15)、ステップ16に進む。
電流変化量dImとトルク変化量dTが、ともに所定変化量dI1、dT1より小さく、第1猶予時間設定マップM1が選択されてステップ10に進んだときは、第1猶予時間設定マップM1において操舵トルクTとモータ電流Imの組み合わせの点座標(T,Im)がモータ駆動停止領域内にあるか否かが判別される。
点座標(T,Im)がモータ駆動停止領域内になければ、ステップ12に飛び、モータ駆動停止係数Cに1を設定してステップ1に戻り、点座標(T,Im)がモータ駆動停止領域内にあればステップ11に進み、点座標(T,Im)が存在する領域に対応する猶予時間t1の間同領域に継続して存在しているか否かを判別し、猶予時間t1を経過するまでは、ステップ12に進み、モータ駆動停止係数C=1のままステップ1に戻り、猶予時間t1を設定した領域に点座標(T,Im)が猶予時間t1継続して存在したとき、はじめてステップ13に進み、モータ駆動停止係数Cに0を設定してモータ駆動を停止すると判断して今回のモータ駆動停止判断処理を終了する。
なお、猶予時間t1を設定した領域に猶予時間t1を経過する前に、点座標(T,Im)がモータ駆動停止領域から外れれば、ステップ10からステップ12に飛んでモータ駆動停止係数Cに1を設定してステップ1に戻る。
一方、電流変化量dImとトルク変化量dTの少なくとも一方が所定変化量dI1、dT1以上で、第2猶予時間設定マップM2が選択され(ステップ14)、フラグFに“1”を立て(ステップ15)、ステップ16に進むと、第2猶予時間設定マップM2において操舵トルクTとモータ電流Imの組み合わせの点座標(T,Im)がモータ駆動停止領域内にあるか否かが判別される。
点座標(T,Im)がモータ駆動停止領域内になければ、ステップ18に飛び、フラグFを0にし、ステップ19でモータ駆動停止係数Cに1を設定してステップ1に戻り、また点座標(T,Im)がモータ駆動停止領域内にあればステップ17に進み、点座標(T,Im)が存在する領域に対応する猶予時間t2の間、同領域に継続して存在しているか否かを判別し、猶予時間t2を経過するまでは、ステップ19に進み、モータ駆動停止係数C=1のままステップ1に戻り、猶予時間t2を設定した領域に点座標(T,Im)が猶予時間t2継続して存在したとき、はじめてステップ20に進み、モータ駆動停止係数Cに0を設定してモータ駆動を停止すると判断し、フラグFを0にして(ステップ21)、今回のモータ駆動停止判断処理を終了する。
なお、猶予時間t2を設定した領域に猶予時間t2を経過する前に、点座標(T,Im)がモータ駆動停止領域から外れれば、ステップ16からステップ18に飛んでフラグFを0にし、モータ駆動停止係数Cに1を設定して(ステップ19)、ステップ1に戻る。
したがって、第2猶予時間設定マップM2が選択され(ステップ14)、フラグFに“1”が立ち(ステップ15)、一度点座標(T,Im)が猶予時間設定領域に入り猶予時間t2が設定されると、モータ駆動停止領域から外れるまでは、フラグF=1であり、ステップ3からステップ14に飛んで第2猶予時間設定マップM2が維持される。
これに対して、第1猶予時間設定マップM1が選択され(ステップ8)、フラグFに“0”が設定され(ステップ9)、点座標(T,Im)が猶予時間設定領域に入って猶予時間t1が設定されたとしても、電流変化量dImとトルク変化量dTの少なくとも一方が所定変化量dI1、dT1以上となれば、第1猶予時間設定マップM1は維持されず第2猶予時間設定マップM2に変更される。
以上のように、サブCPU40においてモータ駆動停止の判断をした結果であるモータ駆動停止係数Cが、モータ駆動停止判断手段46から乗算手段26に出力される(図3参照)。
図3を参照して、メインCPU30の電流フィードバック制御手段34から出力された前記駆動電流Idは、この乗算手段26によりモータ駆動停止係数Cが乗算されて乗算結果Id・Cが、モータ駆動回路27に出力される。
したがって、モータ駆動停止判断手段46がモータ駆動停止と判断し、モータ駆動停止係数Cに“0”が設定さたときは、駆動電流Idはモータ駆動停止係数Cの乗算により0となり、アシストモータ24は駆動を停止する。
モータ駆動停止判断手段46がモータ駆動停止と判断しない間は、駆動電流Idは“1”が設定されたモータ駆動停止係数Cが乗算されるので、乗算結果もIdのままでモータ駆動回路27に出力され、同駆動電流Idに基づくPWM制御によってアシストモータ24が駆動される。
操舵トルクTとモータ電流Imの組み合わせの点座標(T,Im)が、猶予時間設定マップM1,M2の猶予時間設定領域(概ね操舵トルクの方向と前記モータのモータ電流により生じる補助トルクの方向とが互いに逆方向となる領域)にあって猶予時間t1,t2が設定されたときは、猶予時間t1,t2を経過するまでモータ駆動を継続することで、ステアリングに制動を効かせてステアリングダンパ効果を発揮することができる。
そして、メインCPU30とは別個に設けられたサブCPU40において、猶予時間設定マップ選択手段44により電流変化量dImとトルク変化量dTがともに所定変化量dI1、dT1より小さいときは第1猶予時間設定マップM1を選択し、それ以外では猶予時間をより短く設定した第2猶予時間設定マップM2を選択するので、電流変化量dImとトルク変化量dTの少なくとも一方が所定変化量dI1、dT1以上で大きくステアリングに挙動が生じ易い場合に、猶予時間を短くしてアシストモータ24の駆動を短時間で停止してステアリングに不自然な挙動が発生するのを防止することができる。
そのため、メインCPU30のメイン制御システムにシステム異常が生じた場合でもステアリングの不自然な挙動を短時間に防止することができる。
例えば、ステアリングを右回りから左回りに切り返す場合、右回りの操舵トルクTが減少して0となり、次いで左回りの操舵トルクが増加していくが、右回りの操舵トルクTが減少していく過程で、モータ電流Imも減少しdIm<0となりモータ電流Imが左回り方向の補助トルクに逆転することがあり、よってと操舵トルクTとモータ電流Imの組み合わせの点座標(T,Im)が、猶予時間設定マップM1,M2の第4象限の猶予時間設定領域に現われる。
電流変化量dIm<dI1かつトルク変化量dT<dT1のときは、点座標(T,Im)が第1猶予時間設定マップM1の猶予時間500msの領域にあれば、この猶予時間500msは、モータを停止せずに駆動することで、操舵トルクTと反対方向に補助トルクが働き、制動によりダンパ効果が発揮され、猶予時間500msを経過した時点でモータの駆動は停止される。
これが、電流変化量dIm≧dI1またはトルク変化量dT≧dT1でステアリングに挙動が生じ易い場合には、点座標(T,Im)が第2猶予時間設定マップM2の猶予時間100msの領域にあることになり、猶予時間t2(<t1)が短縮され、制動時間が短くなるが、アシストモータ24の駆動を短時間で停止してステアリングに不自然な挙動が発生するのを防止することができる。
メインCPU30のメイン制御システムにシステム異常が生じ、モータ電流が異常に増加してステアリングに大きな挙動が懸念されるような場合でも、アシストモータ24の駆動を停止する猶予時間をますます短くして、短時間でモータ駆動を停止してステアリングの不自然な挙動を未然に防止することができる。
また、猶予時間設定マップM1,M2の猶予時間設定領域がモータ電流Imによって分割され、その分割された各領域はモータ電流Imが大きい領域ほど短い猶予時間t1,t2が対応するので、メイン制御システムのシステム異常時などにモータ電流Imが大きくステアリングの挙動が大きく現われる領域ではモータ駆動を停止するための猶予時間t1,t2をより短くして、短時間に判定してアシストモータ24の駆動を停止してステアリングの不自然な挙動を可及的に抑えることができる。
本発明の一実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の全体の概略後面図である。 ステアリングギアボックス内の構造を示す断面図である。 メイン制御システムおよびサブ制御システムの概略ブロック図である。 サブCPUにおけるモータ駆動停止判断処理の手順を示すフローチャートである。 猶予時間設定マップを示す図である。
符号の説明
1…電動パワーステアリング装置、2…ラックハウジング、3…ラック軸、4…ステアリングギアボックス、5…入力軸、6…トーションバー、7…操舵ピニオン軸、8…ラックガイドスプリング、9…ラックガイド、10…ウオーム減速機構、11…ウオームホイール、12…ウオーム、
20…トルクセンサ、21…コア、22,23…コイル、24…アシストモータ、25…車速センサ、26…乗算手段、27…モータ駆動回路、28…モータ電流検出装置、
30…メインCPU、31…操舵アシスト制御手段、32…ダンパ電流演算手段、33…加算手段、34…電流フィードバック制御手段、
40…サブCPU、41…マップ記憶手段、42…トルク変化量演算手段、43…電流変化量演算手段、44…猶予時間設定マップ選択手段、45…猶予時間決定手段、46…モータ駆動停止判断手段。

Claims (3)

  1. 操舵トルクおよび車速に基づきアシストベース電流値を算出する操舵アシスト制御手段と、少なくとも操舵トルクの変化量に基づきダンパ電流を演算するダンパ電流演算手段とを備えて、
    前記アシストベース電流に前記ダンパ電流を加算した電流に基づき求めたアシスト目標電流に従ってモータを駆動制御して人力を補助するメイン制御システムを構成した電動パワーステアリング装置において、
    操舵トルクとモータ電流を2変数とした座標マップであり予め定めたモータ駆動停止領域内にモータ駆動を停止するための猶予時間を設定した猶予時間設定マップとして、第1猶予時間設定マップと猶予時間をより短く設定した第2猶予時間設定マップが記憶されたマップ記憶手段と、
    前記操舵トルクを微分してトルク変化量を算出するトルク変化量演算手段と、
    前記モータ電流を微分して電流変化量を算出する電流変化量演算手段と、
    前記トルク変化量と前記電流変化量がともに各所定変化量より小さいときは前記第1猶予時間設定マップを選択し、それ以外では前記第2猶予時間設定マップを選択する猶予時間設定マップ選択手段と、
    前記操舵トルクと前記モータ電流の組み合わせの点座標を、前記猶予時間設定マップ選択手段により選択された猶予時間設定マップに照合してモータ駆動停止領域にあれば対応する猶予時間を抽出し決定する猶予時間決定手段と、
    前記決定された猶予時間に対応する領域に、前記操舵トルクと前記モータ電流の組み合わせの点座標が該猶予時間継続して存在したときにモータ駆動停止と判断するモータ駆動停止判断手段とからなるサブ制御システムを備え、
    前記サブ制御システムのモータ駆動停止判断手段がモータ駆動停止と判断したときは、前記メイン制御システムにより駆動制御されるモータの駆動を停止することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記マップ記憶手段が記憶する前記第1猶予時間設定マップおよび前記第2猶予時間設定マップにおける前記モータ駆動停止領域は、前記操舵トルクの方向と前記モータの前記モータ電流により生じる補助トルクの方向とが互いに逆方向となる領域に主に存在することを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記マップ記憶手段が記憶する前記第1猶予時間設定マップと前記第2猶予時間設定マップは、モータ駆動停止領域を互いに同じ領域とし、
    同モータ駆動停止領域のうちの猶予時間を設定した領域をモータ電流に応じて複数の領域に分割し、各領域に対応してモータ駆動を停止するための猶予時間が設定され、
    猶予時間を設定した領域の分割された各領域はモータ電流が大きい領域ほど短い猶予時間が対応することを特徴とする請求項2記載の電動パワーステアリング装置。
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