JP2008232236A - 摺動式ボール形等速ジョイント - Google Patents
摺動式ボール形等速ジョイント Download PDFInfo
- Publication number
- JP2008232236A JP2008232236A JP2007071410A JP2007071410A JP2008232236A JP 2008232236 A JP2008232236 A JP 2008232236A JP 2007071410 A JP2007071410 A JP 2007071410A JP 2007071410 A JP2007071410 A JP 2007071410A JP 2008232236 A JP2008232236 A JP 2008232236A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- ball
- peripheral surface
- inner ring
- cage
- ring
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
【課題】等速性を確保しつつ、内輪と保持器との組み付け性を良好とするとともに、内輪と保持器との摺動抵抗を低減できる摺動式ボール形等速ジョイントを提供する。
【解決手段】外輪20の内周面22は円筒状からなり、複数の外輪ボール溝23は外輪軸方向に平行に延びるように形成されている。内輪30の外周面31は円筒状からなり、複数の内輪ボール溝32は内輪軸方向に平行に延びるように形成されている。複数のボール40は、外輪ボール溝23および内輪ボール溝32に対して周方向に係合している。保持器50は、外周面の軸方向断面形状が円弧凸状の環状からなり、外輪20と内輪30との間に配置され、外周面51が外輪20の円筒状内周面22に接触し、内周面52の最小内径が内輪30の外径より大きく形成されるとともに、周方向にボール40をそれぞれ収容する複数の開口窓部53が形成されている。
【選択図】図1
【解決手段】外輪20の内周面22は円筒状からなり、複数の外輪ボール溝23は外輪軸方向に平行に延びるように形成されている。内輪30の外周面31は円筒状からなり、複数の内輪ボール溝32は内輪軸方向に平行に延びるように形成されている。複数のボール40は、外輪ボール溝23および内輪ボール溝32に対して周方向に係合している。保持器50は、外周面の軸方向断面形状が円弧凸状の環状からなり、外輪20と内輪30との間に配置され、外周面51が外輪20の円筒状内周面22に接触し、内周面52の最小内径が内輪30の外径より大きく形成されるとともに、周方向にボール40をそれぞれ収容する複数の開口窓部53が形成されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、摺動式ボール形等速ジョイントに関するものである。
従来の摺動式ボール形等速ジョイントとして、例えば、特開平9−88995号公報(特許文献1)や特開2004−347113号公報(特許文献2)に記載された、いわゆるダブルオフセット形等速ジョイントがある。特許文献1または2に記載のダブルオフセット形等速ジョイントは、円筒状の外輪に嵌入される内輪の外周面の軸方向断面形状を円弧凸状とし、保持器の内周面を内輪の外周面に嵌合するように軸方向断面形状を円弧凹状としている。しかし、ダブルオフセット形等速ジョイントは、内輪と保持器の組み付けが容易ではなく、また、内輪が外輪の軸方向に移動する際に内輪と保持器との摺動抵抗が大きくなるという問題がある。さらに、内輪の外周面の軸方向断面が円弧凸状であることに加えて、内輪ボール溝が内輪軸方向に延びるようにされている。そのため、内輪の外周面の研削加工と内輪ボール溝の研削加工とを、それぞれ別々に行わなければならない。従って、加工コストが非常に高くなる。
ところで、ボール形継手として、例えば、米国特許第3069874号明細書(特許文献3)に記載されたものがある。このボール形継手は、外輪の内周面を円筒状とし、内輪の外周面を円筒状とし、保持器の外周面および内周面を円筒状としたものである。
特開平9−88995号公報
特開2004−347113号公報
米国特許第3069874号明細書
ここで、特許文献3に記載のボール形継手の構成を、摺動式ボール形等速ジョイントに適用するとすれば、特許文献1および2に記載のダブルオフセット形等速ジョイントのような、内輪と保持器との組み付け性、摺動抵抗の問題、および、加工コストの問題は解決できそうである。しかし、等速ジョイントがジョイント角(外輪の回転軸線と内輪の回転軸線とのなす角)をとって回転する際に、等速性を確保するためには、外輪と内輪の回転軸の二等分面上に各ボールが配列されるよう、保持器によってボールが適切に保持されなければならない。すなわち、ボールと保持器とが接触する状態を維持する必要がある。そして、ジョイント角をとって等速ジョイントが回転する際には、ボールと保持器との接触点は変動する。ところで、特許文献3に記載のボール形継手において、ジョイント角を大きく確保しようとすると、保持器の外径を小さくするか、保持器の内径を大きくする必要がある。つまり、保持器の肉厚を薄くすることになる。そうすると、保持器とボールとの接触点を確保できないおそれがある。つまり、保持器によりボールを適切に保持できないおそれがある。これにより、ボールが保持器から離脱しようとする力が働き、結果として、等速性を確保できないおそれがある。
さらに、特許文献3に記載のボール形継手によれば、保持器が外輪および内輪に対して径方向にガタを有するため、保持器が外輪または内輪に対して相対移動することに伴う振動および異音の発生の問題が発生するおそれもある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、等速性を確保しつつ、内輪と保持器との組み付け性を良好とするとともに、内輪と保持器との摺動抵抗を低減できる摺動式ボール形等速ジョイントを提供することを目的とする。
本発明の摺動式ボール形等速ジョイントは、外輪と、内輪と、複数のボールと、保持器とを備える。外輪は、少なくとも一端に開口部を有し且つ円筒状内周面を持つ筒状からなり、円筒状内周面に外輪軸方向に平行に延びるように複数の外輪ボール溝が形成されている。内輪は、円筒状外周面を持つとともに、円筒状外周面に内輪軸方向に平行に延びるように複数の内輪ボール溝が形成され、外輪の内側に配置される。複数のボールは、それぞれの外輪ボール溝およびそれぞれの内輪ボール溝に対して周方向に係合し、外輪と内輪との間でトルクを伝達する。保持器は、外周面の軸方向断面形状が円弧凸状の環状からなり、外輪と内輪との間に配置され、外周面が外輪の円筒状内周面に接触し、内周面の最小内径が内輪の外径より大きく形成される。さらに、この保持器は、周方向にボールをそれぞれ収容する複数の開口窓部が形成される。
本発明によれば、保持器の内周面の最小内径が、内輪の外径より大きく形成されている。従って、内輪と保持器とを組み付けるためには、内輪と保持器とを同軸上にした状態で内輪を保持器の内部に挿入することで足りる。このように、非常に容易に内輪と保持器とを組み付けることができる。また、内輪の外周面と保持器の内周面とが、従来のダブルオフセット形等速ジョイントのように常に接触する状態とはならない。従って、内輪と保持器との摺動抵抗を低減することができる。さらに、内輪の外周面が円筒状であり、内輪ボール溝が内輪軸方向に平行に延びるようにしている。このように、内輪の外周面と内輪ボール溝は、何れも内輪軸に平行な面状である。従って、内輪の外周面と内輪ボール溝とを同一の研削機械により研削加工が可能となる。これにより、加工コストを低減できる。
さらに、本発明によれば、外輪の円筒状内周面に保持器の外周面を接触させている。例えば、保持器の外周面の最大外径が、外輪の円筒状内周面の内径(最も径の小さい部分の直径)と同一、もしくは、円筒状内周面の内径よりも僅かに小さくされる。つまり、保持器の外周面のうち少なくとも一部が、外輪の円筒状内周面に接触する。これにより、外輪に対して保持器の径方向の位置決めができる。そして、この保持器の位置決めに加えて、保持器の外周面の軸方向断面形状を円弧凸状とすることで、外輪と内輪との回転速度の等速性を確保しつつ、大きなジョイント角をとることができる。さらに、外輪に対して保持器の径方向の位置決めができることで、等速ジョイントが回転する際に保持器ががたつくことを抑制できる。この結果、保持器のがたつきを原因とする振動および異音の発生を抑制できる。なお、保持器の外周面は、保持器の中心軸上に中心を有する球面の一部である円弧凸状であることが望ましい。
さらに、保持器の外周面の軸方向断面形状を円弧凸状とすることで、大きなジョイント角を確保しつつ、保持器の肉厚を十分に厚くすることができる。従って、保持器とボールとの接触点を確実に確保できる。これにより、ボールが保持器から離脱することを防止でき、結果として、等速性を損なうことを防止できる。
また、本発明の摺動式ボール形等速ジョイントにおいて、保持器は、ジョイント角が0度から最大角未満の角度範囲において、内輪に対して非接触状態であり、最大角は保持器と内輪との干渉によって規定されるように設定するとよい。ここで、ジョイント角の最大角とは、等速ジョイントとして適用可能な角度のうちの最大の角度を意味する。つまり、等速ジョイントとして適用する際に、保持器は内輪と接触しない。ところで、車両に適用する場合には、摺動式ボール形等速ジョイントは、例えば、一方を内燃機関側に連結し、他方を車輪側に連結される。そして、内燃機関が発生した振動が等速ジョイントを介して他方へ伝達されることがある。しかし、本発明の摺動式ボール形等速ジョイントにおいて、内輪と保持器とを非接触状態とすることで、内輪と保持器との間における振動の伝達が抑制される。
また、保持器の内周面は、円筒状からなるようにしてもよい。その他に、保持器の内周面の軸方向断面形状を円弧凸状としてもよい。保持器の内周面を円筒状とする場合には、加工が非常に容易となり、低コスト化を図ることができる。一方、保持器の内周面の軸方向断面形状を円弧凸状とすることで、ジョイント角を確実に確保しつつ、内輪の外周面と保持器の内周面との隙間を小さくできる。これにより、ジョイント角をとったときに、内輪と保持器とが当接して、内輪の外周面と保持器の内周面との間においても、保持器ががたつくことを抑制できる。
また、保持器の外周面は、球面凸状としてもよい。これにより、ジョイント角をとって回転する際に、保持器の外周面と外輪の円筒状内周面とが接触する状態を維持できる。従って、ジョイント角をとった場合に、等速性を確実に確保できる。
また、本発明の摺動式ボール形等速ジョイントにおいて、内輪の外周面の軸方向両端に配置され、ボールに対して軸方向に係合する係合手段をさらに備えるようにするとよい。ここで、ジョイント角が0度でない場合には、外輪および内輪に対するそれぞれのボールの位置は、必然的に一箇所に決定されることになる。なぜなら、各ボールの位置は、保持器によって外輪と内輪の回転軸のなす角の二等分面上に一列に配列され、この状態において各ボールが存在し得る位置は一箇所しかないからである。従って、ジョイント角が0度でない場合には、ボールおよび保持器が内輪から離脱することはない。これに対して、ジョイント角が0度の場合には、外輪および内輪に対するボールの位置は、決定されない。つまり、ボールは、内輪に対して軸方向に自由に移動できる。従って、ボールおよび保持器が内輪から離脱するおそれがある。ただし、係合手段を備えることにより、ボールの移動範囲は、軸方向両端の係合手段の間に規制される。これにより、ジョイント角が0度の場合にも、ボールおよび保持器が内輪から離脱することを防止できる。
このように、係合手段を備える場合には、以下のようにするとよい。すなわち、内輪の外周面の軸方向両端に、係合溝が形成され、係合手段は、係合溝に係合する止め輪とするとよい。これにより、係合手段である止め輪を内輪に組み付けることができる。
本発明の摺動式ボール形等速ジョイントによれば、等速性を確保しつつ、内輪と保持器との組み付け性を良好とするとともに、内輪と保持器との摺動抵抗を低減できる。
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
<第一実施形態>
第一実施形態の摺動式ボール形等速ジョイント10(以下、単に「等速ジョイント」と称す)について、図1を参照して説明する。図1は、ジョイント角θの場合における等速ジョイント10の軸方向に切断した断面図(軸方向断面図)である。
第一実施形態の摺動式ボール形等速ジョイント10(以下、単に「等速ジョイント」と称す)について、図1を参照して説明する。図1は、ジョイント角θの場合における等速ジョイント10の軸方向に切断した断面図(軸方向断面図)である。
図1に示すように、摺動式ボール形等速ジョイント10は、外輪20と、内輪30と、6個のボール40と、保持器50と、2個の止め輪60と、シャフト70とを備える。以下、各構成部品について詳細に説明する。
外輪20は、図1の右端に開口部を有するカップ状(有底筒状)からなる。この外輪20のカップ底部の外方(図1の左側)には、連結軸21が外輪軸方向に延びるように一体成形されている。この連結軸21は、他の動力伝達軸に連結される。さらに、外輪20の内周面22は、円筒状、すなわち外輪軸方向に亘って同径に形成されている。この外輪20の円筒状内周面22には、円弧凹状からなる6本の外輪ボール溝23が、外輪軸方向に平行に延びるように形成されている。6本の外輪ボール溝23は、径方向に切断した断面で見た場合に、周方向に等間隔に(60度間隔に)形成されている。ここで、外輪軸方向とは、外輪20の中心軸を通る方向、すなわち、外輪20の回転軸方向を意味する。このように、外輪20の内周面22が円筒状であり、外輪ボール溝23が外輪軸方向に平行に延びるようにすることで、外輪20の加工コストを低減できる。
内輪30は、環状からなり、外輪20の内側に配置されている。この内輪30の外周面31は、円筒状、すなわち内輪軸方向に亘って同径に形成されている。この内輪30の円筒状外周面31には、径方向断面が円弧凹状からなる6本の内輪ボール溝32が、内輪軸方向に平行に延びるように形成されている。6本の内輪ボール溝32は、径方向に切断した断面で見た場合に、周方向に等間隔に(60度間隔に)に形成されている。そして、内輪ボール溝32は、外輪20に形成される外輪ボール溝23と同数形成されている。つまり、それぞれの内輪ボール溝32が、外輪20のそれぞれの外輪ボール溝23に対向するように位置する。このように、内輪30の外周面31が円筒状であり、内輪ボール溝32が内輪軸方向に平行に延びるようにすることで、内輪30の加工コストを低減できる。
また、内輪30の内周面には、内輪軸方向に延びる内周スプライン33が形成されている。この内周スプライン33は、後述するシャフト70の外周スプライン71に嵌合(噛合)する。ここで、内輪軸方向とは、内輪30の中心軸を通る方向、すなわち、内輪30の回転軸方向を意味する。さらに、内輪30の円筒状外周面31のうち軸方向両端には、止め輪溝34、35(本発明における「係合溝」に相当する)が、周方向全周に亘って形成されている。ただし、これらの止め輪溝34、35の溝底は、内輪ボール溝32の溝底よりも浅く形成されている。従って、実際に止め輪溝34、35として形成される部分は、内輪ボール溝32間のみとなる。
6個のボール40は、それぞれ、外輪20の外輪ボール溝23および内輪30の内輪ボール溝32に配置されている。そして、それぞれのボール40は、それぞれの外輪ボール溝23およびそれぞれの内輪ボール溝32に沿って転動自在であって、それぞれの外輪ボール溝23およびそれぞれの内輪ボール溝32に対して周方向(外輪軸回りまたは内輪軸回り)に係合している。従って、ボール40は、外輪20と内輪30との間でトルクを伝達する。
保持器50は、環状からなり、外輪20の円筒状内周面22と内輪30の円筒状外周面31との間に配置されている。より詳細には、外輪20の円筒状内周面22内に保持器50が配置され、保持器50の内周に内輪30が挿通している。この保持器50の外周面51は、球面凸状に形成されている。具体的には、保持器50の軸方向中央における外径が、最も大きくなるような球面凸状に形成されている。なお、当該外周面51が球面凸状であるので、保持器50の外周面51の軸方向断面形状が円弧凸状となる。
そして、球面凸状からなる外周面51の直径は、外輪20の円筒状内周面22の内径と同一、もしくは、外輪20の円筒状内周面22の内径より僅かに小さく設定されている。従って、保持器50の外周面51は、外輪20の円筒状内周面22にほぼ接触する状態となる。さらに、保持器50の中心軸と外輪20の外輪軸とが傾斜する状態においても、保持器50の外周面51は、外輪20の円筒状内周面22にほぼ接触する状態となる。
このように、保持器50の球面凸状からなる外周面51が外輪20の円筒状内周面22にほぼ接触する状態となることにより、保持器50は、外輪20に対して保持器50の径方向の位置決めがされる。従って、この保持器50の外輪20に対する位置決めに加えて、保持器50の外周面51の軸方向断面形状を円弧凸状とすることで、外輪20と内輪30との回転速度の等速性を確保しつつ、大きなジョイント角をとることができる。さらに、外輪20に対して保持器50の径方向の位置決めができることで、等速ジョイント10が回転する際に保持器50ががたつくことを抑制できる。この結果、保持器50のがたつきを原因とする振動および異音の発生を抑制できる。
また、保持器50の内周面52は、円筒状に形成されている。従って、保持器50の肉厚は、軸方向の中央が最も厚くなり、軸方向端部に行くにつれて徐々に薄くなる。さらに、保持器50の円筒状内周面52の内径は、内輪30の円筒状外周面31の外径よりも十分に大きく設定されている。つまり、内輪30と保持器50とが同軸的に位置する場合に両者は接触せず、且つ、内輪30と保持器50とが最大ジョイント角θの半分の角度だけ傾斜した場合にも、両者が接触しないようにしている。ここで、最大ジョイント角θ(ジョイント角の最大角ともいう)とは、外輪軸と内輪軸とのなす鋭角であって、等速ジョイントとして適用可能な角度のうち最大の角度を意味する。このように、内輪30と保持器50が接触しないようにすることで、内輪30と保持器50との摺動抵抗を低減でき、内輪30と保持器50との間における振動の伝達が抑制される。さらに、内輪30と保持器50の組付性が良好となる。
また、保持器50は、周方向(保持器軸心の周方向)に等間隔に、略矩形孔の開口窓部53を6個形成している。これらの開口窓部53は、保持器50の軸方向のほぼ中央に形成されている。つまり、開口窓部53は、保持器50のうち最も肉厚が厚い部位に形成されている。そして、それぞれの開口窓部53には、ボール40が1つずつ収容されている。このように、保持器50の開口窓部53の厚みを十分に厚くすることにより、ジョイント角をとったときであっても、ボール40と保持器50との接触点を確実に確保できる。これにより、ボール40が保持器50から離脱することを防止でき、結果として、等速性を損なうことを防止できる。
2個の止め輪60は、スリットが形成された環状からなる。従って、これらの止め輪60は、拡径可能である。止め輪60の内径は、止め輪溝34、35の内径とほぼ同一である。さらに、止め輪60の外径は、内輪30の円筒状外周面31の外径よりも僅かに大きく形成されている。そして、2個の止め輪60は、止め輪溝34、35にそれぞれ嵌め込まれる。従って、一方の止め輪60は、ボール40が内輪ボール溝32を内輪軸方向の一方に移動した場合に、ボール40に対して内輪軸方向に係合するようになる。また、他方の止め輪60は、ボール40が内輪ボール溝32を内輪軸方向の他方に移動した場合に、ボール40に対して内輪軸方向に係合するようになる。つまり、ボール40が内輪ボール溝32から離脱しないようにされている。
シャフト70は、例えば、自動車などに用いられる場合には、内燃機関の動力を伝達する動力伝達シャフトである。このシャフト70の一端側の外周面には、外周スプライン71が形成されている。この外周スプライン71が内輪30の内周スプライン33に嵌合(噛合)されることにより、シャフト70は内輪30に同軸的に連結される。ただし、シャフト70に内輪30を一体に形成してもよい。
次に、上述した等速ジョイント10の動作について説明する。ここで、等速ジョイント10は、通常、ジョイント角が0度でない状態に設定して使用されるため、ジョイント角が所定角度θの場合における動作を説明する。
この場合、まず、外輪20のトルクが、外輪ボール溝23に対して周方向に係合するボール40に伝達される。そして、ボール40が内輪ボール溝32に対して周方向に係合していることにより、ボール40に伝達されたトルクが内輪30に伝達される。そして、内輪30に連結されているシャフト70に、トルクが伝達される。このように、ボール40を介することで、外輪20からシャフト70へトルクの伝達が行われる。
ここで、等速ジョイント10が等速性を確保するためには、ジョイント角がθの場合に、各ボール40の中心を通る面が、ジョイント中心点Oを通り外輪20の外輪軸に直交する面とジョイント中心点Oを通り内輪30の内輪軸に直交する面との二等分面であることが必要となる。
そして、本実施形態の等速ジョイント10においては、上述したように、内輪30の円筒状外周面31と保持器50の円筒状内周面52とが接触しない。従って、各ボール40の中心を通る面が、上記二等分面となるかが問題となる。しかし、結論としては、各ボール40の中心を通る面が、上記二等分面となる。この理由について図2および図3を参照しながら説明する。
図2は、図1に示す断面図に相当する状態における、外輪ボール溝23、内輪ボール溝32およびボール40の模式図である。ここで、図2において、実線にて外輪ボール溝23の溝底を示し、破線にて内輪ボール溝32の溝底を示す。具体的には、図2は、ジョイント角をθとった場合における外輪軸および内輪軸とを通る平面上に、第一のボール40a、第一のボール40aに対して保持器50の中心軸を挟んで反対側に位置する第四のボール40d、第一のボール40aが配置される第一の外輪ボール溝23a、これに対応する第一の内輪ボール溝32a、第四のボール40dが配置される第四の外輪ボール溝23d、および、これに対応する第四の内輪ボール溝32dの位置関係を示す図である。
図3は、ジョイント角を図2に示すようにした場合に、各外輪ボール溝23、各内輪ボール溝32および各ボール40の位置関係を、外輪20の径方向外方から外輪20の外輪軸に向かって透視的に示した図である。ここで、図3において、図2と同様に、実線にて外輪ボール溝23の溝底を示し、破線にて内輪ボール溝32の溝底を示す。ただし、外輪ボール溝23と内輪ボール溝32が平行に位置する場合は、説明のため、実線と破線をずらして示す。具体的には、図3(a)が、第一のボール40aと、第一のボール40aが係合する第一の外輪ボール溝23aおよび第一の内輪ボール溝32aの位置関係を示す図である。図3(b)が、第一のボール40aに隣接する第二のボール40bと、第二のボール40bが係合する第二の外輪ボール溝23bおよび第二の内輪ボール溝32bの位置関係を示す図である。図3(c)が、第二のボール40bに隣接する第三のボール40cと、第三のボール40cが係合する第三の外輪ボール溝23cおよび第三の内輪ボール溝32cの位置関係を示す図である。図3(d)が、第三のボール40cに隣接する第四のボール40dと、第四のボール40dが係合する第四の外輪ボール溝23dおよび第四の内輪ボール溝32dの位置関係を示す図である。図3(e)が、第四のボール40dに隣接する第五のボール40eと、第五のボール40eが係合する第五の外輪ボール溝23eおよび第五の内輪ボール溝32eの位置関係を示す図である。図3(f)が、第五のボール40eに隣接する第六のボール40fと、第六のボール40fが係合する第六の外輪ボール溝23fおよび第六の内輪ボール溝32fの位置関係を示す図である。
図2および図3(a)に示すように、ジョイント角がθの場合、第一の外輪ボール溝23aと第一の内輪ボール溝32aは、第一の外輪ボール溝23aの径方向外方から見た場合に、同一方向に延びるように位置している。また、図2および図3(d)に示すように、ジョイント角がθの場合、第四の外輪ボール溝23dと第四の内輪ボール溝32dは、外輪ボール溝23dの径方向外方から見た場合に、同一方向に延びるように位置している。従って、第一のボール40aおよび第四のボール40dは、位置決めされないことになる。
これに対して、第二の外輪ボール溝23bと第二の内輪ボール溝32bは、第二の外輪ボール溝23bの径方向外方から見た場合に、交差する方向に延びるように位置している。そして、この交差する位置は、上述した二等分面上に位置する。また、第三、第五、第六の外輪ボール溝23c、23e、23fと第三、第五、第六の内輪ボール溝32c、32e、32fは、それぞれ、対応する第三、第五、第六の外輪ボール溝23c、23e、23fの径方向外方から見た場合に、交差する方向に延びるように位置している。これらも同様に、交差するそれぞれの位置は、上述した二等分面上に位置する。
つまり、第二、第三、第五、第六のボール40b、40c、40e、40fは、外輪ボール溝23と内輪ボール溝32に対して上記二等分面上に位置決めされた状態となる。ここで、6個のボール40のうち4個のボール40が上記二等分面上に位置決めされるため、残りの2個のボール40も結果として上記二等分面上に位置決めされることになる。このように、各ボール40の中心を通る面が、上記二等分面となる。
このように、ジョイント角をとった状態においては、ボール40は外輪20および内輪30に対して位置決めされることになる。従って、止め輪34、35が機能する場合は、実質的にジョイント角が0度の場合、および、等速ジョイント10の組み付けを行う場合となる。これらの場合に、止め輪34、35によりボール40が内輪ボール溝32から離脱することを防止できる。
<その他>
なお、上記実施形態における保持器50の内周面52が円筒状であるとしたが、これに限られるものではない。そこで、保持器50の他の形態について、図4を参照して説明する。図4は、保持器150の軸方向断面図(軸方向に切断した断面図)である。ここで、保持器150のうち、第一実施形態の保持器50と同一構成について同一符号を付して説明を省略する。
なお、上記実施形態における保持器50の内周面52が円筒状であるとしたが、これに限られるものではない。そこで、保持器50の他の形態について、図4を参照して説明する。図4は、保持器150の軸方向断面図(軸方向に切断した断面図)である。ここで、保持器150のうち、第一実施形態の保持器50と同一構成について同一符号を付して説明を省略する。
図4に示すように、保持器150の外周面51は、球面凸状に形成されている。また、保持器150の内周面152の軸方向断面形状は、径方向内方に突出する円弧凸状に形成されている。この保持器150の内周面152の最小内径は、内輪30の円筒状外周面31の外径より大きく形成されている。さらに、最大ジョイント角においても、保持器150の内周面152が内輪30の円筒状外周面31が接触しないようにしておく。そして、保持器150は、周方向(保持器軸心の周方向)に等間隔に、略矩形孔の開口窓部53を6個形成している。
これにより、上記第一実施形態の等速ジョイント10による効果と同一効果を奏することができる。さらに、保持器150の内周面152を上記のようにすることで、保持器50の軸方向中央の肉厚がより厚くすることができる。従って、ボール40と保持器50との接触点をより確実に確保できる。これにより、ボール40が保持器50から離脱することをより確実に防止できる。
10:摺動式ボール形等速ジョイント、
20:外輪、 21:連結軸、 22:円筒状内周面、
23、23a〜23f:外輪ボール溝、
30:内輪、 31:円筒状外周面、 32、32a〜32f:内輪ボール溝、
33:内周スプライン、 34、35:止め輪溝、
40、40a〜40f:ボール、
50、150:保持器、 51:外周面、 52、152:円筒状内周面、
53:開口窓部、
60:止め輪、 70:シャフト、 71:外周スプライン
20:外輪、 21:連結軸、 22:円筒状内周面、
23、23a〜23f:外輪ボール溝、
30:内輪、 31:円筒状外周面、 32、32a〜32f:内輪ボール溝、
33:内周スプライン、 34、35:止め輪溝、
40、40a〜40f:ボール、
50、150:保持器、 51:外周面、 52、152:円筒状内周面、
53:開口窓部、
60:止め輪、 70:シャフト、 71:外周スプライン
Claims (7)
- 少なくとも一端に開口部を有し且つ円筒状内周面を持つ筒状からなり、前記円筒状内周面に外輪軸方向に平行に延びるように複数の外輪ボール溝が形成された外輪と、
円筒状外周面を持つとともに、前記円筒状外周面に内輪軸方向に平行に延びるように複数の内輪ボール溝が形成され、前記外輪の内側に配置される内輪と、
それぞれの前記外輪ボール溝およびそれぞれの前記内輪ボール溝に対して周方向に係合し、前記外輪と前記内輪との間でトルクを伝達する複数のボールと、
外周面の軸方向断面形状が円弧凸状の環状からなり、前記外輪と前記内輪との間に配置され、前記外周面が前記外輪の前記円筒状内周面に接触し、内周面の最小内径が前記内輪の外径より大きく形成されるとともに、周方向に前記ボールをそれぞれ収容する複数の開口窓部が形成された保持器と、
を備えることを特徴とする摺動式ボール形等速ジョイント。 - 前記保持器は、ジョイント角が0度から所定の最大角までの角度範囲において前記内輪に対して非接触状態となる請求項1に記載の摺動式ボール形等速ジョイント。
- 前記保持器の内周面は、円筒状からなる請求項1または2に記載の摺動式ボール形等速ジョイント。
- 前記保持器の内周面の軸方向断面形状が円弧凸状である請求項1に記載の摺動式ボール形等速ジョイント。
- 前記保持器の外周面は、球面凸状からなる請求項1に記載の摺動式ボール形等速ジョイント。
- 前記内輪の外周面の軸方向両端に配置され、前記ボールに対して軸方向に係合する係合手段をさらに備える請求項1〜5の何れか一項に記載の摺動式ボール形等速ジョイント。
- 前記内輪の外周面の軸方向両端に、係合溝が形成され、
前記係合手段は、前記係合溝に係合する止め輪である請求項6に記載の摺動式ボール形等速ジョイント。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007071410A JP2008232236A (ja) | 2007-03-19 | 2007-03-19 | 摺動式ボール形等速ジョイント |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007071410A JP2008232236A (ja) | 2007-03-19 | 2007-03-19 | 摺動式ボール形等速ジョイント |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2008232236A true JP2008232236A (ja) | 2008-10-02 |
Family
ID=39905298
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007071410A Pending JP2008232236A (ja) | 2007-03-19 | 2007-03-19 | 摺動式ボール形等速ジョイント |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2008232236A (ja) |
Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS57129925A (en) * | 1981-01-29 | 1982-08-12 | Loehr & Bromkamp Gmbh | Synchronous rotary joint |
JPH0391524A (ja) * | 1989-08-23 | 1991-04-17 | Ciba Geigy Ag | カルボキシル末端基を含むポリヒドロキシエステル、及びそれらの使用方法 |
JP2003220846A (ja) * | 2001-08-31 | 2003-08-05 | Gkn Automotive Inc | プロペラシャフト組立体 |
WO2006030855A1 (ja) * | 2004-09-16 | 2006-03-23 | Ntn Corporation | 車両用軸継手 |
-
2007
- 2007-03-19 JP JP2007071410A patent/JP2008232236A/ja active Pending
Patent Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS57129925A (en) * | 1981-01-29 | 1982-08-12 | Loehr & Bromkamp Gmbh | Synchronous rotary joint |
JPH0391524A (ja) * | 1989-08-23 | 1991-04-17 | Ciba Geigy Ag | カルボキシル末端基を含むポリヒドロキシエステル、及びそれらの使用方法 |
JP2003220846A (ja) * | 2001-08-31 | 2003-08-05 | Gkn Automotive Inc | プロペラシャフト組立体 |
WO2006030855A1 (ja) * | 2004-09-16 | 2006-03-23 | Ntn Corporation | 車両用軸継手 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4320669B2 (ja) | ボール形等速ジョイント | |
JP5163930B2 (ja) | ボール形等速ジョイント | |
JP5131064B2 (ja) | ボール型等速ジョイント | |
JP2008232236A (ja) | 摺動式ボール形等速ジョイント | |
JP2008261391A (ja) | トリポード型等速自在継手 | |
JP2010185541A (ja) | ボール型等速ジョイント | |
JP2007120667A (ja) | トリポード型等速自在継手 | |
JP2006242263A (ja) | 固定型等速自在継手及びその製造方法 | |
JP2005106233A (ja) | 固定型等速自在継手 | |
CN111197623B (zh) | 等速万向节及其组装方法 | |
JP2008039036A (ja) | トリポード型等速ジョイント | |
US20170241481A1 (en) | Constant velocity joint | |
JP2008121794A (ja) | ツェッパ形等速ジョイント | |
JP2008240970A (ja) | 固定型等速自在継手 | |
JP2009222194A (ja) | ボール型等速ジョイント | |
JP2017203538A (ja) | 摺動式等速自在継手 | |
US11073179B2 (en) | Sliding-type constant velocity universal joint and method for manufacturing same | |
JP2008051190A (ja) | 固定式等速自在継手 | |
JP2007132379A (ja) | 固定式等速自在継手 | |
WO2020066997A1 (ja) | 固定式等速自在継手 | |
JP2009068682A (ja) | クロスグルーブ型等速自在継手 | |
JP2008002567A (ja) | トリポード型等速ジョイント | |
JP2008164128A (ja) | 摺動式トリポード形等速ジョイント | |
JP2010014198A (ja) | 摺動式トリポード型等速ジョイント | |
JP4624892B2 (ja) | 等速自在継手 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20100222 |
|
A977 | Report on retrieval |
Effective date: 20110722 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Effective date: 20110802 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20111213 |