JP2008231213A - リグノフェノールの製造方法及びそれから得られる低分子量リグノフェノール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リグノフェノールの製造方法は、出発原料1となるリグノセルロース系材料からリグノフェノールを含むフェノールからなる相2を抽出する工程と、この相を貧溶媒へ添加して粗リグノフェノール4を分離する工程と、を備え、分離工程において貧溶媒へ超音波を照射する。粗リグノフェノールを親溶媒に添加し溶液とする工程と、この溶液を貧溶媒へ添加してリグノフェノールを分離する工程と、を備え、分離工程において貧溶媒へ超音波を照射してもよい。この製造方法によれば、高分子量のリグノフェノールを効率良く得ることができる。
【選択図】 図1
Description
(1次精製)
フェノール誘導体の親溶媒であり、リグノフェノールの貧溶媒であるジエチルエーテルやジイソプロピルエーテルやn−ヘキサンに滴下し、大過剰に存在する未反応フェノール誘導体及びリグノフェノール抽出用フェノール誘導体を可溶化し、リグノフェノールを不溶区分として回収する。相分離系変換システムでは、ヘミセルロースを中心とするリグニンと親和性のある炭水化物の一部がフェノール相に含まれるため(非特許文献3参照)、1次精製により回収された不溶区分をアセトンで抽出し、少量の炭水化物を除去する必要がある。さらに、1次精製では除去できなかったフェノール誘導体を除去するために2次精製を行っていた。
抽出されたリグノフェノールアセトン溶液を、再度ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n−ヘキサン等に滴下することにより、精製されたリグノフェノールを回収することが可能となる。
さらに、従来のリグノフェノールの精製方法では、高分子量のリグノフェノールは得られるものの、低分子量リグノフェノールを効率良く製造することができなかった。
本発明のリグノフェノールの別の製造方法は、出発原料となるリグノセルロース系材料から粗リグノフェノールを抽出する工程と、粗リグノフェノールを親溶媒に添加し溶液とする工程と、溶液を貧溶媒へ添加してリグノフェノールを分離する工程と、を備え、分離工程において貧溶媒へ超音波を照射することを特徴とする。
上記何れの構成によっても、貧溶媒へ超音波を照射することで、効率良く高分子量リグノフェノールを製造することができる。
好ましくは、無極性溶媒へ超音波を照射する。
親溶媒は、アセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、ジオキサン、メチルセロソルブ、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドの何れか一つの溶媒又はこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒であってよい。
貧溶媒として、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタンの何れか一つの溶媒又はこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒が好適である。
無極性溶媒は、n−ヘキサン又はシクロヘキサンが好ましい。
貧溶媒へ超音波を照射することで、効率良く高分子量リグノフェノール及び低分子量リグノフェノールを連続して製造することができる。
図1は本発明のリグノフェノールの1実施形態による製造方法を示す工程図である。図において、出発原料1はリグノセルロース系材料である。リグノセルロース系材料とは、木材や草の他廃木材や建築廃材等の材料の総称である。
図示するように、第1工程は、出発原料1となるリグノセルロース系材料を、液状のフェノール類により親和し、親和溶液とする工程である。
第2工程は、第1工程で得た親和溶液に酸を添加し、リグノフェノールを含むフェノール類からなる相2と酸相3とに分離する工程である。
第3工程は、第2工程で得たリグノフェノールを含むフェノール類からなる相2を貧溶媒に添加し、貧溶媒に沈殿する沈殿物(不溶区分)を粗リグノフェノール4とフェノール類5とに分離する工程である。この分離工程において超音波を照射することが好ましい。
リグノセルロース1自体は植物の主成分であり、針葉樹や広葉樹のような木本類、草本類の何れも使用可能である。木本類では廃材、間伐材、木粉など、ケナフやバガス、アブラヤシ空房といった草本系農産廃棄物、草本植物、新聞紙、コーヒーガラ等の産業廃棄物も使用可能である。リグノセルロースは、約70%の糖質と約30%の硬い部位のリグニンからなる。従来は、有用な糖質のみが抽出され、反応性が高いため抽出が困難なリグニンは廃棄されていた。これらの原料のひとつである木本類を用いた場合の特徴を以下に示す。
針葉樹はフェニルプロパン構造のフェニル部の3位にアリールメチルエーテル(メトキシル基)を有するグアイアシル型が全てを占める。広葉樹ではグアイアシル型と同時にフェニル部の3位、5位に共にメトキシル基があるシリンギル型を50:50で有する。さらに草本では広葉樹型の基本骨格に加え、メトキシル基がないフェニルプロパン骨格を有する。このような基本骨格以外は得られるリグノフェノールの構造はいずれの樹種を用いてもほぼ同様となる。針葉樹リグノフェノールではグアイアシル基のフェニル部の5位から単位間結合が形成されている。針葉樹では重量平均分子量であるMwが10000から20000程度、広葉樹や草本では、Mw=6000から8000程度となる。
図2は、リグニンからp−クレゾール型のリグノフェノールに変換する化学反応式を示す図である。図2の反応においては、リグニン10をp(パラ)−クレゾールを用いてフェノール置換体とし、硫酸(H2SO4)と反応させ、出発原料となるp−クレゾール型のリグノフェノール12からなる相と水溶性炭水化物(糖類)からなる相、つまり酸相とに分離している。
リグノフェノールは、以下のような構造特性を有する不定形ポリマーである。植物中に20〜30%含まれるフェノール系物質でフェニルプロパン骨格(C6C3)を有するリグニンに酸触媒下、過剰のフェノール類(例えばp−クレゾールなど)との界面反応によってフェノール化処理を施すと、主にフェニルプロパン骨格のC1位にフェノールが、水酸基がC1に対しオルト位になるように求核的に導入され、ほぼ定量的にフェノール性リグニン系構造可変ポリマー(リグノフェノール)が得られる(図2の1−1,ビス(アリール)プロパン−2−O−アリールエーテル型構造参照)。
ここで、洗浄用有機溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレンから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
図3は、本発明のリグノフェノールの第2実施形態の製造方法を示す工程図である。図において、出発原料1はリグノセルロース系材料である。図示するように、第1A工程は、出発原料となるリグノセルロース系材料1に固体状又は液状のフェノール類を溶解した溶媒を浸透させる工程であり、リグノセルロース系材料に上記フェノール類溶解液を十分に浸透させ後で、第1B工程で溶媒を留去する。
第2工程は、第1A及び1B工程で得たフェノール類を吸着したリグノセルロース系材料に酸を添加する工程である。この第2工程により、リグノフェノールは酸との混合物6として得られる。
第2A工程は、第2工程の酸処理で得た混合物6に水を添加して、粗リグノフェノール4と高分子炭水化物とからなる沈殿物8として得る工程である。第2A工程において、水に超音波照射を行ってもよく、水に溶けない区分である粗リグノフェノール4の分散性が向上し、脱酸効果が促進される効果が生じる。
ここで用いる親溶媒は、粗リグノフェノール4を溶解し、炭水化物を溶解しない溶媒であれば何でもよいが、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドの何れか一つの溶媒又はこれらの2種以上からなる混合溶媒を使用することができる。
図4は、本発明のリグノフェノールの第3実施形態の製造方法を示す工程図である。図において、第2工程までは図3に示す製造工程と同じである。第2工程で酸添加した後で、第2B工程において、不活性な疎水性有機溶媒を添加する。疎水性有機溶媒としては、ベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサン又はこれらの混合溶媒を用いることができる。
次に、第2C工程で遠心分離を行い、中間層を抽出する。この中間層は、粗リグノフェノール4と未反応のフェノール類や酸などが共存した状態となっている。
図5は、本発明の低分子量のリグノフェノールを回収する製造方法を説明する工程図である。
第6工程として、リグノフェノールを抽出した貧溶媒の残液を、低分子量のリグノフェノールが溶解し難い貧溶媒中に添加して、低分子量リグノフェノール9を沈殿物として得ることができる。この第6工程でも超音波の照射は、低分子量リグノフェノール9の分散性の向上、不純物の除去や取得率の向上に大きな効果を示す。
図1に示す製造方法でリグノフェノールを製造した。エゾマツ(Spruce)脱脂木粉1gにp−クレゾール10cm3を加え、これに硫酸(H2SO4、72%)を20cm3添加し、激しく攪拌した。60分攪拌後、遠心分離によりp−クレゾール相と硫酸相に分離した。
次に、実施例1の比較例として、超音波照射せずにp−クレゾール相のIPEへの高速(30秒)滴下を行った以外は、実施例1と同様にして比較例1のリグノフェノールを抽出した。
実施例1の比較例として、超音波照射せずにp−クレゾール相のIPEへの滴下を、1滴ずつ15分かけて行った以外は、実施例1と同様にして比較例1のリグノフェノールを抽出した。
(GPC条件)
コラム:Shodex KF-801, KF-802, KF-803, KF-804 (内径8.0mm、長さ30cm)
溶離液:テトラハイドロフラン(THF)、流量:1.0cm3/分
温度:40℃
検出波長:280nm
標準ポリスチレン(重量平均分子量(Mw)=196000、76600、28500、13100、9860、7000、5000、2960、1270、682、578、474、370、266、162)、p−クレゾール(Mw=108)
図6から明らかなように、実施例1の超音波照射下高速滴下した場合、溶出開始後40分付近に見られるp−クレゾールの量が、超音波照射なしで高速滴下した比較例1の場合と比べ少なくなることがわかった。
最初に、リグニン含有量の3倍モル量に相当するp−クレゾールをアセトン溶媒と共にスギ脱脂木粉1000gに収着させた。アセトン留去後、72%硫酸を加え、30℃水浴中にて激しく撹拌した。1時間撹拌後、反応液を10倍量の水に分散させた。この懸濁液から遠心分離により不溶解区分を回収し、不溶解物を再度水に懸濁し、遠心分離することにより上澄みが中性になるまで洗浄した。この不溶解区分を凍結乾燥し、次いでP2O5存在下で減圧乾燥し、未精製リグノクレゾール(Lignocresol)、つまり粗リグノフェノール4を得た。
各溶液5cm3を、滴下カラムを用いて、貧溶媒であるIPE75cm3に滴下した。貧溶媒であるIPEへは超音波照射を行い、10秒の高速滴下及び1滴ずつ10分の滴下をし、不溶区分として実施例2の精製リグノクレゾール7を得た。
実施例2の比較例として、超音波照射をしないで実施例2と同様にして比較例の精製リグノクレゾールを抽出した。
図7から明らかなように、実施例2においては、200mg/cm3の未精製リグノフェノールアセトン溶液を超音波照射下で高速滴下した場合、溶出開始後40分付近に見られるp−クレゾールの量が、比較例3の30mg/cm3の未精製リグノフェノールアセトン溶液を超音波照射なしで低速(10分)滴下した場合と同様に未反応p-クレゾール、リグニン分解物が除去されていた。
2:リグノフェノールを含むフェノール類からなる相
3:酸相
4:粗リグノフェノール
5:フェノール類
6:リグノフェノールと酸との混合物
7:精製リグノフェノール
8:粗リグノフェノールと高分子炭水化物とからなる沈殿物
9:低分子量リグノフェノール
10:リグニン
12:p−クレゾール型のリグノフェノール
Claims (10)
- 出発原料となるリグノセルロース系材料からリグノフェノールを含むフェノール類からなる相を抽出する工程と、
上記リグノフェノールを含むフェノール類からなる相を貧溶媒へ添加して粗リグノフェノールを分離する工程と、を備え、
上記分離工程において上記貧溶媒へ超音波を照射することを特徴とする、リグノフェノールの製造方法。 - 出発原料となるリグノセルロース系材料から粗リグノフェノールを抽出する工程と、
上記粗リグノフェノールを親溶媒に添加し溶液とする工程と、
上記溶液を貧溶媒へ添加してリグノフェノールを分離する工程と、を備え、
上記分離工程において上記貧溶媒へ超音波を照射することを特徴とする、リグノフェノールの製造方法。 - 前記分離工程の貧溶媒残液を無極性溶媒に投入して低分子量リグノフェノールを得る工程を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のリグノフェノールの製造方法。
- 前記無極性溶媒へ超音波を照射することを特徴とする、請求項3に記載のリグノフェノールの製造方法。
- 出発原料となるリグノセルロース系材料から粗リグノフェノールを抽出する工程と、
上記粗リグノフェノールを親溶媒へ添加し溶液とする工程と、
上記溶液を貧溶媒に添加して高分子量リグノフェノールを分離する工程と、
上記分離工程の貧溶媒残液を無極性溶媒に投入して低分子量リグノフェノールを得る工程と、を備え、
上記分離工程において上記貧溶媒へ超音波を照射することを特徴とする、リグノフェノールの製造方法。 - 前記無極性溶媒へ超音波を照射することを特徴とする、請求項5に記載のリグノフェノールの製造方法。
- 前記親溶媒は、アセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、ジオキサン、メチルセロソルブ、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドの何れか一つの溶媒又はこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒であることを特徴とする、請求項2又は5に記載のリグノフェノールの製造方法。
- 前記貧溶媒は、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタンの何れか一つの溶媒又はこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒であることを特徴とする、請求項1、2、5の何れかに記載のリグノフェノールの製造方法。
- 前記無極性溶媒は、n−ヘキサン又はシクロヘキサンであることを特徴とする、請求項3〜6の何れかに記載のリグノフェノールの製造方法。
- 請求項1〜9の何れかに記載のリグノフェノールの製造方法により製造されたことを特徴とする、低分子量リグノフェノール。
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