JP2008231213A - リグノフェノールの製造方法及びそれから得られる低分子量リグノフェノール - Google Patents

リグノフェノールの製造方法及びそれから得られる低分子量リグノフェノール Download PDF

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Abstract

【課題】リグノフェノールの製造方法及びそれから得られる低分子量リグノフェノールを提供することを目的としている。
【解決手段】リグノフェノールの製造方法は、出発原料1となるリグノセルロース系材料からリグノフェノールを含むフェノールからなる相2を抽出する工程と、この相を貧溶媒へ添加して粗リグノフェノール4を分離する工程と、を備え、分離工程において貧溶媒へ超音波を照射する。粗リグノフェノールを親溶媒に添加し溶液とする工程と、この溶液を貧溶媒へ添加してリグノフェノールを分離する工程と、を備え、分離工程において貧溶媒へ超音波を照射してもよい。この製造方法によれば、高分子量のリグノフェノールを効率良く得ることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、リグノセルロースから効率よくリグノフェノールを製造することができるリグノフェノールの製造方法及びそれから得られる低分子量リグノフェノールに関する。さらに詳しくは、高分子量のリグノフェノールが得られるリグノフェノールの製造方法及びそれから得られる低分子量リグノフェノールに関する。
近年、中国、インドなどの石油の需要増加、及びヘッジファンドなどによる投資対象のため、石油価格の高騰が続いている。また、地球温暖化防止に関して京都議定書に定められた二酸化炭素削減目標を達成するために、温室効果ガスの増加を抑制する循環型社会の形成やバイオマス資源の利活用をさらに促進する必要があるとされている。
再生可能なバイオマス資源は、石油や石炭などと異なり、大気中の二酸化炭素を炭素源とし、燃焼廃棄しても大気中の二酸化濃度の増加は防げることからバイオマス資源の活用が望まれている。その中でも植物由来のリグノセルロース資源は再生可能な材料として再注目され、バイオマス発電やガス化などの熱化学的変換や発酵によるエタノールの生産などエネルギーとしての利用に関する研究が多くなされている。しかし、リグノセルロース資源は、エネルギーとして利用するのみでは、植物資源の再生能力を越えてしまい植物資源の枯渇の可能性が生じる。
植物資源を石油の代替工業原料として有効に利用するためには、石油から様々な有機化学製品が導かれるのと同様、生活に必要な製品の原料を植物資源から誘導することが重要である。植物資源を分子素材として完全活用するためには、分子レベルで高度に複合化された植物体の各構成成分をそれぞれの機能を活かした状態で効率よく分離することが重要である。
本発明者等は、フェノール類と濃酸とを用いた植物資源の相分離系変換システムを開発し、植物の主要構成成分であるセルロース、ヘミセルロースからなる炭水化物とリグニンとを迅速かつ定量的、そして容易に分離・変換することに成功した(特許文献1及び非特許文献1〜3参照)。相分離系変換システムにおいて、フェノール類はリグニンのフェノール化試薬、溶媒、濃酸からの保護媒体として機能し、濃酸は炭水化物の加水分解試薬、溶媒、リグニンのフェノール化触媒として機能する。この手法により誘導されたリグノフェノールは、従来の工業リグニンなどのリグニン系試料には見られない熱可塑特性や高いタンパク質吸着特性を有している(非特許文献2参照)。
相分離系変換システムに用いられる植物としては、木材や草、廃木材、建築廃材等が挙げられる。上記方法により誘導されたリグニン(以下、リグノフェノールと呼ぶ。)は有機溶媒に溶け、各種材料に塗布した後、乾燥して成形体とすることができる。成形体が不要となった場合には、有機溶媒に溶かして回収することで再利用が可能となる。
近年、リグノフェノールに関して用途研究が行われ、成形体以外の応用として、塗料、電子や電気用材料、医薬などへの幅広い用途が期待されている。リグノフェノールは、300〜100000の範囲を有する高分子であり、一般に幅広い分子量分布を有する。幅広い分子量分布を有する状態が望ましい用途に関してはそのまま用いればよいが、分子量分布が狭いもの、より高分子量、より低分子量のリグノフェノールが望ましいと考えられる用途がある。
上記フェノール相に含まれるリグノフェノールの精製は、以下のような2段階の精製が必要である。
(1次精製)
フェノール誘導体の親溶媒であり、リグノフェノールの貧溶媒であるジエチルエーテルやジイソプロピルエーテルやn−ヘキサンに滴下し、大過剰に存在する未反応フェノール誘導体及びリグノフェノール抽出用フェノール誘導体を可溶化し、リグノフェノールを不溶区分として回収する。相分離系変換システムでは、ヘミセルロースを中心とするリグニンと親和性のある炭水化物の一部がフェノール相に含まれるため(非特許文献3参照)、1次精製により回収された不溶区分をアセトンで抽出し、少量の炭水化物を除去する必要がある。さらに、1次精製では除去できなかったフェノール誘導体を除去するために2次精製を行っていた。
(2次精製)
抽出されたリグノフェノールアセトン溶液を、再度ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n−ヘキサン等に滴下することにより、精製されたリグノフェノールを回収することが可能となる。
従来の1次精製や2次精製で得られるリグノフェノールは、高分子リグノフェノールであった。
特開平02−233701号公報 特開平2004−115736号公報 特開平2004−137347号公報 M. Funaoka and I. Abe, Tappi Journal, 72 (1989) 145 M. Funaoka, Polymer International, 47 (1998) 277 K. Mikame and M. Funaoka, Polymer Journal, 38 (2006) 694
しかしながら、従来のリグノフェノールの製造方法では、1次及び2次精製ともに、リグノフェノールの親溶媒であるフェノール誘導体及びアセトン量に対して15倍から20倍量のジエチルエーテルやn−ヘキサンが必要となり、製造コストが高くなっていた。
さらに、従来のリグノフェノールの精製方法では、高分子量のリグノフェノールは得られるものの、低分子量リグノフェノールを効率良く製造することができなかった。
本発明は、上記課題に鑑み、リグノフェノールの製造方法及びそれから得られる低分子量リグノフェノールを提供することを目的としている。
本発明者等は鋭意研究を重ねたところ、リグノフェノールを含むフェノール類やリグノフェノールのアセトンなどの親溶媒に溶解した溶液を、ジエチルエーテルなどのリグノフェノールの貧溶媒に滴下してリグノフェノールの析出と分離を行う際に超音波照射を行うと凝集塊を形成しにくくなることを見出し、リグノフェノール溶液の高濃度化および滴下速度の高速化を達成できること、そして、精製された高分子量リグノフェノールを分離して回収した後の残液を、さらに溶媒に超音波照射下で滴下することで、低分子量リグノフェノールを回収できることをも見出し、本発明に至った。
上記目的を達成するために、本発明のリグノフェノールの製造方法は、出発原料となるリグノセルロース系材料からリグノフェノールを含むフェノール類からなる相を抽出する工程と、リグノフェノールを含むフェノール類からなる相を貧溶媒へ添加して粗リグノフェノールを分離する工程と、を備え、分離工程において貧溶媒へ超音波を照射することを特徴とする。
本発明のリグノフェノールの別の製造方法は、出発原料となるリグノセルロース系材料から粗リグノフェノールを抽出する工程と、粗リグノフェノールを親溶媒に添加し溶液とする工程と、溶液を貧溶媒へ添加してリグノフェノールを分離する工程と、を備え、分離工程において貧溶媒へ超音波を照射することを特徴とする。
上記何れの構成によっても、貧溶媒へ超音波を照射することで、効率良く高分子量リグノフェノールを製造することができる。
上記構成において、分離工程の貧溶媒残液を、好ましくは、無極性溶媒に投入して低分子量リグノフェノールを得る工程を有する。これにより、分離工程の貧溶媒残液から低分子量リグノフェノールを製造することができる。
上記構成において、好ましくは無極性溶媒へ超音波を照射する。無極性溶媒へ超音波を照射することで、さらに効率良く低分子量リグノフェノールを製造することができる。
本発明のリグノフェノールの他の製造方法は、出発原料となるリグノセルロース系材料から粗リグノフェノールを抽出する工程と、粗リグノフェノールを親溶媒へ添加し溶液とする工程と、溶液を貧溶媒に添加して高分子量リグノフェノールを分離する工程と、分離工程の貧溶媒残液を無極性溶媒に投入して低分子量リグノフェノールを得る工程と、を備え、分離工程において貧溶媒へ超音波を照射することを特徴とする。
好ましくは、無極性溶媒へ超音波を照射する。
親溶媒は、アセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、ジオキサン、メチルセロソルブ、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドの何れか一つの溶媒又はこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒であってよい。
貧溶媒として、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタンの何れか一つの溶媒又はこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒が好適である。
無極性溶媒は、n−ヘキサン又はシクロヘキサンが好ましい。
貧溶媒へ超音波を照射することで、効率良く高分子量リグノフェノール及び低分子量リグノフェノールを連続して製造することができる。
本発明の低分子量リグノフェノールは、上記した何れかの製造方法により製造することができる。
本発明によれば、不純物の少ない高分子量のリグノフェノールを、安価に工業的に量産化を達成することができる。さらに、低分子量のリグノフェノールの製法も確立され両者をあわせて用途の拡大など波及効果はきわめて大きい。
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は本発明のリグノフェノールの1実施形態による製造方法を示す工程図である。図において、出発原料1はリグノセルロース系材料である。リグノセルロース系材料とは、木材や草の他廃木材や建築廃材等の材料の総称である。
図示するように、第1工程は、出発原料1となるリグノセルロース系材料を、液状のフェノール類により親和し、親和溶液とする工程である。
第2工程は、第1工程で得た親和溶液に酸を添加し、リグノフェノールを含むフェノール類からなる相2と酸相3とに分離する工程である。
第3工程は、第2工程で得たリグノフェノールを含むフェノール類からなる相2を貧溶媒に添加し、貧溶媒に沈殿する沈殿物(不溶区分)を粗リグノフェノール4とフェノール類5とに分離する工程である。この分離工程において超音波を照射することが好ましい。
出発原料1となるリグノセルロース系材料について説明する。
リグノセルロース1自体は植物の主成分であり、針葉樹や広葉樹のような木本類、草本類の何れも使用可能である。木本類では廃材、間伐材、木粉など、ケナフやバガス、アブラヤシ空房といった草本系農産廃棄物、草本植物、新聞紙、コーヒーガラ等の産業廃棄物も使用可能である。リグノセルロースは、約70%の糖質と約30%の硬い部位のリグニンからなる。従来は、有用な糖質のみが抽出され、反応性が高いため抽出が困難なリグニンは廃棄されていた。これらの原料のひとつである木本類を用いた場合の特徴を以下に示す。
針葉樹はフェニルプロパン構造のフェニル部の3位にアリールメチルエーテル(メトキシル基)を有するグアイアシル型が全てを占める。広葉樹ではグアイアシル型と同時にフェニル部の3位、5位に共にメトキシル基があるシリンギル型を50:50で有する。さらに草本では広葉樹型の基本骨格に加え、メトキシル基がないフェニルプロパン骨格を有する。このような基本骨格以外は得られるリグノフェノールの構造はいずれの樹種を用いてもほぼ同様となる。針葉樹リグノフェノールではグアイアシル基のフェニル部の5位から単位間結合が形成されている。針葉樹では重量平均分子量であるMwが10000から20000程度、広葉樹や草本では、Mw=6000から8000程度となる。
この分子量の差と構造の相違は、たとえば熱機械分析(TMA)で測定した熱流動点に反映し、針葉樹では170℃程度で流動し始めるのに対し、広葉樹では140℃程度となる。NMR(核磁気共鳴装置)やFT−IR(フーリエ変換赤外分光装置)による構造解析ではほぼ同じ数値を示す。さらに、アルカリ下、分子スイッチを作動させると樹種に関係なく低分子化することから、高分子の基本骨格であるC2−O−アリール構造も同様に存在すると考えることができる。このように分子構造や分子量分布も用途に応じて自由に設計できる。
本発明の製造方法の第2工程において、出発原料1となるリグノセルロースを、フェノール類などにより溶媒和し、これを濃酸との界面反応でフェノール化する相分離系変換システムで抽出することができる(特許文献1参照)。
図2は、リグニンからp−クレゾール型のリグノフェノールに変換する化学反応式を示す図である。図2の反応においては、リグニン10をp(パラ)−クレゾールを用いてフェノール置換体とし、硫酸(H2SO4)と反応させ、出発原料となるp−クレゾール型のリグノフェノール12からなる相と水溶性炭水化物(糖類)からなる相、つまり酸相とに分離している。
上記p−クレゾール以外のフェノール類としては、フェノール、m(メタ)−クレゾール、o(オルト)−クレゾール、アニソール、2,4−ジメトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、プロピルフェノール、i−プロピルフェノール、tert−ブチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、ビスフェノール、バニリン、シリンゴール、グアイアゴール、フェルラ酸、クマル酸の何れか、又は、これらの組み合わせを使用することができる。
本発明に係るリグノフェノールの構造特性を示す。
リグノフェノールは、以下のような構造特性を有する不定形ポリマーである。植物中に20〜30%含まれるフェノール系物質でフェニルプロパン骨格(C6C3)を有するリグニンに酸触媒下、過剰のフェノール類(例えばp−クレゾールなど)との界面反応によってフェノール化処理を施すと、主にフェニルプロパン骨格のC1位にフェノールが、水酸基がC1に対しオルト位になるように求核的に導入され、ほぼ定量的にフェノール性リグニン系構造可変ポリマー(リグノフェノール)が得られる(図2の1−1,ビス(アリール)プロパン−2−O−アリールエーテル型構造参照)。
得られたリグノフェノールのフェノール性は、主に導入したフェノールの種類に依存する。同時にC1位に存在したリグニンの三次元構造を形成する単位間結合が切断され、比較的リニア構造を有する高分子化合物に誘導される。リニア型の構造は天然のリグニンの基本骨格であるC2−O−アリールエーテル骨格を有する。このアリールエーテルはフェニルプロパン鎖のフェニル部、4位と結合している。プロパン鎖の末端C3位置には脂肪族性水酸基が存在しており、フェノール性水酸基と共に豊富な水素結合を形成する。
上記フェノール類の内、p−クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、プロピルフェノールなどのフェノールを選択することにより、リグノフェノール自体を疎水化できる。
他方、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、ハイドロキノンなどから得られるリグノフェノールは親水性が高い。また、ハイドロキシメチル化リグノフェノール等の誘導体も水素結合が豊富なため親水性となる。
リグノセルロース1と接触させる酸としては、リグノフェノールやその誘導体であるリグニン誘導体を生成し得る範囲で各種の無機酸や有機酸を使用することができる。無機酸としては、硫酸、リン酸、塩酸などの何れかを使用することができる。有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを使用することができる。リグニン含有材料としてリグノセルロース系材料を使用する場合には、セルロースを膨潤させる作用を有していることが好ましい。
無機酸としては、65重量%以上の硫酸(好ましくは、72重量%の硫酸)、85重量%以上のリン酸、38重量%以上の塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを挙げることができる。好ましい酸は、85重量%以上(好ましくは95重量%以上)のリン酸、トリフルオロ酢酸又はギ酸である。また、リグニン誘導体を高収率で得るには、65重量%以上の硫酸(とくに、72重量%の硫酸)が好ましい。
このようにして得られたリグノフェノールは、幅広い分子量分布を持つ高分子で、用途に応じて分子量の高いあるいは低いリグノフェノールに分割して提供することが望ましい。沈殿物生成時にアセトンなどの親溶媒とジエチルエーテルなどの貧溶媒との比率を変えることによりある程度の分子量の大小や分布を制御することを試みたが限度があった。
ここで、リグノフェノールは、図2で説明した反応で得られるリグノフェノール単体以外に、この単体リグノフェノールをさらに熱などの物理処理により得たリグノフェノール、単体リグノフェノールとセルロースとの複合体、単体リグノフェノールと合成高分子との複合体、単体リグノフェノールの次誘導体、単体リグノフェノールの高次フェノール導入体、単体リグノフェノールと金属化合物との安定な錯体様複合体を用いることができる。リグノフェノール単体以外の上記リグノフェノールをリグノフェノール誘導体と呼ぶことにする。本発明におけるリグノフェノールは、単体リグノフェノール及びリグノフェノール誘導体を含む。
第3工程で用いる貧溶媒としては、使用や回収の工程を考慮すると、リグノフェノールに対する親和性も考慮し、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル(以下、適宜IPEと呼ぶ。)、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタンの何れか一つの溶媒、又はこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒を用いることができる。
上記リグノフェノールを含むフェノール類からなる相2の貧溶媒中への投入量は、3〜20重量%程度とすればよい。この範囲外の場合には、親溶媒の影響によりリグノフェノールの溶解度が高まり、その沈殿が生じ難くなり好ましくない。
第3工程で得た粗リグノフェノール4は、次いで洗浄工程を実施することで、精製度を向上することができる。洗浄工程は、第3工程で回収した沈殿物に洗浄用有機溶媒を加えて混合し、その後、固液分離することによって行うことができる。粗リグノフェノール4及びリグニン誘導体は沈殿物として不溶区分に分配される。この工程においても超音波照射を行うと分散性が向上し、洗浄回数を減らすことが可能である。
ここで、洗浄用有機溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレンから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のリグノフェノールの製造方法は、第3工程で用いる貧溶媒に超音波を照射することにあるが、リグノフェノールを含むフェノール類からなる相2を貧溶媒に添加する場合には、この相2を過剰の貧溶媒に滴下等により添加し混合等することが好ましい。リグノフェノールを含むフェノール類からなる相2に対する貧溶媒の容量比は超音波照射のないときは15倍以上必要なのに対し、超音波照射すると5〜15倍程度で十分となる。
また、滴下時において超音波照射する場合は、貧溶媒への溶解度の上昇を防いで収率を確保するには混合熱の発生を避けることが好ましい。このため、貧溶媒を約0℃〜20℃程度、好ましくは、0℃〜10℃に冷却しながら行うことが好ましい。
超音波照射を行うとリグニン誘導体の分散性が向上し、滴下速度を無照射時の60倍以上に上げることが可能であった。さらに、アセトンなどの親溶媒中にリグノフェノールを含むフェノール類からなる相2を溶解させた溶液の濃度も10倍以上に上げることが可能であり、ジエチルエーテル、n−ヘキサン、IPEなどの引火性の高い低沸点有機溶媒の使用量を大幅に削減することが可能となる。この第3工程で超音波照射を行うと、粗リグノフェノールの抽出効果が促進され、抽出時間の短縮が可能である。
本発明のリグノフェノールの製造方法における第2の実施の形態について説明する。
図3は、本発明のリグノフェノールの第2実施形態の製造方法を示す工程図である。図において、出発原料1はリグノセルロース系材料である。図示するように、第1A工程は、出発原料となるリグノセルロース系材料1に固体状又は液状のフェノール類を溶解した溶媒を浸透させる工程であり、リグノセルロース系材料に上記フェノール類溶解液を十分に浸透させ後で、第1B工程で溶媒を留去する。
第2工程は、第1A及び1B工程で得たフェノール類を吸着したリグノセルロース系材料に酸を添加する工程である。この第2工程により、リグノフェノールは酸との混合物6として得られる。
第2A工程は、第2工程の酸処理で得た混合物6に水を添加して、粗リグノフェノール4と高分子炭水化物とからなる沈殿物8として得る工程である。第2A工程において、水に超音波照射を行ってもよく、水に溶けない区分である粗リグノフェノール4の分散性が向上し、脱酸効果が促進される効果が生じる。
さらに、粗リグノフェノール4と高分子炭水化物とからなる沈殿物8を洗浄、乾燥する工程を追加することで、効率良く粗リグノフェノール4を得ることができる(図3の点線で囲まれた工程)。つまり、粗リグノフェノール4と高分子炭水化物とからなる沈殿物8を水に添加し、不溶区分として、粗リグノフェノール及びリグニン誘導体区分を得ることができる。水に代えて有機溶媒の使用も可能であるが使用した酸の除去の点では水の方が好ましい。
第4工程は、第2A工程で得た粗リグノフェノール4を親溶媒に溶解し、粗リグノフェノール溶液とする工程である。
ここで用いる親溶媒は、粗リグノフェノール4を溶解し、炭水化物を溶解しない溶媒であれば何でもよいが、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドの何れか一つの溶媒又はこれらの2種以上からなる混合溶媒を使用することができる。
第5工程は、粗リグノフェノール溶液を貧溶媒に添加して、貧溶媒に沈殿する沈殿物(不溶区分)を精製された精製リグノフェノール7として分離する工程である。この工程は、図1で説明した第3工程と同じであり、貧溶媒も同じものでよい。この分離工程においても超音波を照射することが好ましい。
第5工程で得た精製リグノフェノール7は、次いで、図1の製造方法で説明した洗浄工程を実施することで、精製度を向上することができる。精製リグノフェノール7は、高分子量リグノフェノールを主成分とし、粗リグノフェノール4からさらにフェノール類が除去されている。
本発明のリグノフェノールの製造方法における第3の実施の形態について説明する。
図4は、本発明のリグノフェノールの第3実施形態の製造方法を示す工程図である。図において、第2工程までは図3に示す製造工程と同じである。第2工程で酸添加した後で、第2B工程において、不活性な疎水性有機溶媒を添加する。疎水性有機溶媒としては、ベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサン又はこれらの混合溶媒を用いることができる。
次に、第2C工程で遠心分離を行い、中間層を抽出する。この中間層は、粗リグノフェノール4と未反応のフェノール類や酸などが共存した状態となっている。
第2D工程は、中間層に水を添加して、粗リグノフェノール4を析出物として得る工程である。さらに、この粗リグノフェノール4を水に添加して不溶区分として、粗リグニン誘導体区分を得ることができる。水に代えて有機溶媒の使用も可能であるが使用した酸の除去の点では水の方が好ましい。第2D工程において、水に超音波照射を行ってもよく、水に溶けない区分である粗リグノフェノール4の分散性が向上し、脱酸効果が促進される効果が生じる。
第4工程は、第2D工程で得た粗リグノフェノール4を親溶媒に溶解し、粗リグノフェノール溶液とする工程であり、溶媒中の炭水化物等は沈殿物として残留する。この第4工程は、図3で説明した工程4と同じあり、用いる親溶媒も同様のものでよい。第4工程で、粗リグノフェノール溶液に超音波照射を行うと、粗リグノフェノール4の抽出効果が促進され、抽出時間の短縮が可能である。さらに、抽出した粗リグノフェノール液を遠心分離又はろ過等の固液分離手段により分離することができる。
沈殿物である固形分は、さらに、粗リグノフェノール4を抽出することができる溶媒で洗浄することで、固形分に混合している粗リグノフェノール4を回収できる。なお、この場合の固液分離手段としては、ろ過で十分に達成できる。
第5工程は、粗リグノフェノール溶液を貧溶媒に添加して、溶液から精製されたリグノフェノール7を分離する工程である。この分離工程においても超音波を照射することが好ましい。この第5工程は、図3で説明した第5工程と同じあり、用いる貧溶媒も同様のものでよい。
第5工程で得た精製リグノフェノール7は、次いで、図1の製造方法で説明した洗浄工程を実施することで、精製度を向上することができる。精製リグノフェノール7は、高分子量リグノフェノールを主成分とし、粗リグノフェノール4からさらにフェノール類が除去されている。
上記第1〜3の実施形態のリグノフェノールの製造方法によれば、比較的分子量の大きいリグノフェノールを効率良く析出させることができる。さらに、リグノフェノールを析出した後の残液である貧溶媒中には、従来は効率的に取得することが困難であった低分子量のリグノフェノールが、含有されていることが判明した。この低分子量のリグノフェノールの重量平均分子量(Mw)は1000前後である。
上記貧溶媒の残液に含有されている低分子量のリグノフェノールを回収する方法について説明する。
図5は、本発明の低分子量のリグノフェノールを回収する製造方法を説明する工程図である。
第6工程として、リグノフェノールを抽出した貧溶媒の残液を、低分子量のリグノフェノールが溶解し難い貧溶媒中に添加して、低分子量リグノフェノール9を沈殿物として得ることができる。この第6工程でも超音波の照射は、低分子量リグノフェノール9の分散性の向上、不純物の除去や取得率の向上に大きな効果を示す。
低分子量リグノフェノール9の抽出工程は、リグノフェノールを抽出した貧溶媒の残液を回収して、単独の工程として行うことができる。
さらに、図1に示した第3工程及び図3、4の第5工程の貧溶媒残液を用いて、第6工程を追加した工程、つまり、連続する工程として行ってもよい。これらの工程によれば、最初の貧溶媒から分子量の大きい精製リグノフェノール7を回収し(図1の第3工程及び図3、4の第5工程)、第6工程では最初の貧溶媒から回収できなかった分子量の小さいリグノフェノール9を回収することができる。つまり、分子量の異なるリグノフェノール7,9を、一連の工程で分離回収することができる。
本発明により製造される分子量の大きいリグノフェノール7、つまり、高分子量リグノフェノールの用途は、成型体用のポリマーとしての直接用途や、レゾール型フェノール樹脂化を目的としたハイドロキシメチル化などにより高分子量に誘導するためのプレポリマー用途、プラスチック化を目的としたウレタン化やエポキシ化などのプレポリマー用途などが挙げられる。
低分子量リグノフェノール9は、ウイルス抑制剤や抗アレルゲン剤などの医薬品用途、プラスチック用紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤用途、光化学電池用光増感剤などのエレクトロニクス用途への材料として用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
図1に示す製造方法でリグノフェノールを製造した。エゾマツ(Spruce)脱脂木粉1gにp−クレゾール10cm3を加え、これに硫酸(H2SO4、72%)を20cm3添加し、激しく攪拌した。60分攪拌後、遠心分離によりp−クレゾール相と硫酸相に分離した。
次に、p−クレゾール相を滴下カラムを使用して貧溶媒であるIPEへ30秒で高速滴下した。高速滴下時にIPEへ超音波発生器(株式会社日本精機製作所製、USS-1、Ultrasonic Stirrer)により超音波照射を行い、不溶区分を回収した。超音波の周波数は40kHzであり、その出力は35Wである。
次に、不溶区分をアセトンにより抽出し、アセトン溶液をろ過して実施例1の粗リグノフェノール4を得た。
(比較例1)
次に、実施例1の比較例として、超音波照射せずにp−クレゾール相のIPEへの高速(30秒)滴下を行った以外は、実施例1と同様にして比較例1のリグノフェノールを抽出した。
(比較例2)
実施例1の比較例として、超音波照射せずにp−クレゾール相のIPEへの滴下を、1滴ずつ15分かけて行った以外は、実施例1と同様にして比較例1のリグノフェノールを抽出した。
実施例1、比較例1及び2で抽出した粗リグノフェノール4をゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)で分析し、p−クレゾールの残存量を比較した。
GPCの分析条件は以下のとおりである。
(GPC条件)
コラム:Shodex KF-801, KF-802, KF-803, KF-804 (内径8.0mm、長さ30cm)
溶離液:テトラハイドロフラン(THF)、流量:1.0cm3/分
温度:40℃
検出波長:280nm
標準ポリスチレン(重量平均分子量(Mw)=196000、76600、28500、13100、9860、7000、5000、2960、1270、682、578、474、370、266、162)、p−クレゾール(Mw=108)
図6は、実施例1、比較例1及び2で得たリグノフェノールのゲルパーミッションクロマトグラフィーの測定結果を示す図である。図6において、横軸は溶出時間(分)であり、縦軸は信号強度(mV)である。
図6から明らかなように、実施例1の超音波照射下高速滴下した場合、溶出開始後40分付近に見られるp−クレゾールの量が、超音波照射なしで高速滴下した比較例1の場合と比べ少なくなることがわかった。
実施例1のリグノフェノールの分子量分布は、通常の超音波照射なしで低速滴下した比較例2の場合とほぼ同じであった。これにより、実施例1で用いた超音波照射によりp−クレゾールの除去効果が促進されることが分かった。つまり、実施例1の場合には、比較例2において超音波照射無しで15分必要な滴下時間を、30秒で行うことができ、滴下速度を30倍に上げることができた。
予め、Klason法によりリグニン含有量を定量したスギ脱脂木粉1000gから実施例2の精製リグノフェノール4を図3に示す製造方法により抽出した。
最初に、リグニン含有量の3倍モル量に相当するp−クレゾールをアセトン溶媒と共にスギ脱脂木粉1000gに収着させた。アセトン留去後、72%硫酸を加え、30℃水浴中にて激しく撹拌した。1時間撹拌後、反応液を10倍量の水に分散させた。この懸濁液から遠心分離により不溶解区分を回収し、不溶解物を再度水に懸濁し、遠心分離することにより上澄みが中性になるまで洗浄した。この不溶解区分を凍結乾燥し、次いでP25存在下で減圧乾燥し、未精製リグノクレゾール(Lignocresol)、つまり粗リグノフェノール4を得た。
次に、未精製リグノクレゾール4を親溶媒のアセトンに溶解し、固形分量として30mg/cm3、50mg/cm3、100mg/cm3、150mg/cm3、200mg/cm3、300mg/cm3のリグノクレゾールアセトン溶液を調製した。
各溶液5cm3を、滴下カラムを用いて、貧溶媒であるIPE75cm3に滴下した。貧溶媒であるIPEへは超音波照射を行い、10秒の高速滴下及び1滴ずつ10分の滴下をし、不溶区分として実施例2の精製リグノクレゾール7を得た。
(比較例3)
実施例2の比較例として、超音波照射をしないで実施例2と同様にして比較例の精製リグノクレゾールを抽出した。
実施例2及び比較例3で回収した精製リグノクレゾール7をGPC分析し、p−クレゾール残存量及び分子量分布を比較した。
SHAPE \* MERGEFORMAT SHAPE \* MERGEFORMAT 図7は、実施例2及び比較例3で得たリグノフェノールのゲルパーミッションクロマトグラフィーの測定結果を示す図である。図7において、横軸は溶出時間(分)であり、縦軸は信号強度(mV)である。図には、粗リグノフェノールの測定結果も併せて示している。
図7から明らかなように、実施例2においては、200mg/cm3の未精製リグノフェノールアセトン溶液を超音波照射下で高速滴下した場合、溶出開始後40分付近に見られるp−クレゾールの量が、比較例3の30mg/cm3の未精製リグノフェノールアセトン溶液を超音波照射なしで低速(10分)滴下した場合と同様に未反応p-クレゾール、リグニン分解物が除去されていた。
比較例3において、150mg/cm3の未精製リグノフェノールアセトン溶液5cm3を75cm3のIPEに10分間で滴下したところ、IPE中に褐色のアセトン溶液の粒子がそのまま分散した。図7に示すように、この場合には、未反応p-クレゾール、リグニン分解物が残留し、除去されていないことが分かった。
さらに、実施例2において、未精製リグノフェノールアセトン溶液30mg/cm3を低速で超音波処理しながら滴下した場合には、淡桃色のリグノフェノールの沈殿物が得られた。100mg/cm3、150mg/cm3、200mg/cm3の未精製リグノフェノールアセトン溶液5cm3を超音波照射しながら10秒で滴下した結果、上記の未精製リグノフェノールアセトン溶液30mg/cm3を低速で超音波処理しながら滴下した場合と同様に、淡桃色のリグノフェノールの沈殿物が得られた。これらを回収し、GPC分析した結果、何れの場合も未反応p-クレゾール、リグニン分解物が除去されていることが分かった。
表1は、実施例2及び比較例3の精製リグノクレゾール7の貧溶媒への分散性を示す。表1に示すように、超音波照射をした実施例2の場合には、未精製リグノフェノールの濃度が30〜200mg/cm3では分散性が良好であり、300mg/cm3では一部が凝集した。
Figure 2008231213
一方、比較例3の場合には、未精製リグノフェノールアセトン溶液濃度が30mg/cm3及び50mg/cm3で、低速適下した場合だけが分散性が良好で、他の条件では未分散であり、精製リグノクレゾールは得られなかった。
上記結果から、実施例2の場合には、未精製リグノフェノールアセトン溶液濃度の貧溶媒への滴下時に超音波照射を行うことにより分散性が向上することがわかった。実施例2において、未精製リグノフェノールアセトン溶液濃度が30mg/cm3の場合、高速適下をすることで比較例3の低速滴下と同様の精製効果が得られるので、精製速度を60倍に上げることが可能であった。さらにアセトン溶液の濃度も6.7倍上げることが可能であり、ジエチルエーテル、n−ヘキサン、IPEなどの引火性の高い低沸点有機溶媒の使用量を大幅に削減することが可能であった。
エゾマツ(Spruce)脱脂木粉1gにp−クレゾール10cm3を加え、これに72%H2SO4を20cm3添加し、激しく攪拌した。60分攪拌後、遠心分離によりp−クレゾール相とH2SO4相とに相分離した。p−クレゾール相を超音波照射下、滴下カラムにてn−ヘキサン200cm3中に滴下し、その析出区分をろ別した。この処理により未反応フェノールを除去し、分子量数百の低分子区分を高分子区分とともに不溶化した。
不溶区分をアセトンに溶解後、ジエチルエーテルに超音波照射下、滴下カラムにて滴下した。このろ液をエバポレーターで濃縮後n−ヘキサン100cm3中に超音波照射下に30秒で滴下し、析出沈殿物をろ別回収し、n−ヘキサン20cm3で2回洗浄した。乾燥後得られた固形物は0.2gであった。GPCで分析したところ、Mw=400から1500程度の分布を有する低分子量リグノフェノール9であることが分かった。
本発明によれば、分離、回収、精製工程で超音波照射を行うことにより、引火等の危険性がある有機溶媒の使用量を大幅に削減でき、処理時間も短縮され製造設備も小型化することが可能となり、高品質の高分子量リグノフェノールの量産が低コストで精製可能となる。また高付加価値の用途に期待できる低分子量のリグノフェノールも量産可能となる。
本発明のリグノフェノールの製造方法を示す工程図である。 リグニンからp−クレゾール型のリグノフェノールに変換する化学反応式を示す図である。 本発明のリグノフェノールの第2の実施の形態の製造方法を示す工程図である。 本発明のリグノフェノールの第3の実施の形態の製造方法を示す工程図である。 本発明の低分子量のリグノフェノールを製造する方法を説明する工程図である。 実施例1、比較例1及び2で得たリグノフェノールのゲルパーミッションクロマトグラフィーの測定結果を示す図である。 実施例2及び比較例3で得たリグノフェノールのゲルパーミッションクロマトグラフィーの測定結果を示す図である。
符号の説明
1:出発原料(リグノセルロース系材料)
2:リグノフェノールを含むフェノール類からなる相
3:酸相
4:粗リグノフェノール
5:フェノール類
6:リグノフェノールと酸との混合物
7:精製リグノフェノール
8:粗リグノフェノールと高分子炭水化物とからなる沈殿物
9:低分子量リグノフェノール
10:リグニン
12:p−クレゾール型のリグノフェノール

Claims (10)

  1. 出発原料となるリグノセルロース系材料からリグノフェノールを含むフェノール類からなる相を抽出する工程と、
    上記リグノフェノールを含むフェノール類からなる相を貧溶媒へ添加して粗リグノフェノールを分離する工程と、を備え、
    上記分離工程において上記貧溶媒へ超音波を照射することを特徴とする、リグノフェノールの製造方法。
  2. 出発原料となるリグノセルロース系材料から粗リグノフェノールを抽出する工程と、
    上記粗リグノフェノールを親溶媒に添加し溶液とする工程と、
    上記溶液を貧溶媒へ添加してリグノフェノールを分離する工程と、を備え、
    上記分離工程において上記貧溶媒へ超音波を照射することを特徴とする、リグノフェノールの製造方法。
  3. 前記分離工程の貧溶媒残液を無極性溶媒に投入して低分子量リグノフェノールを得る工程を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のリグノフェノールの製造方法。
  4. 前記無極性溶媒へ超音波を照射することを特徴とする、請求項3に記載のリグノフェノールの製造方法。
  5. 出発原料となるリグノセルロース系材料から粗リグノフェノールを抽出する工程と、
    上記粗リグノフェノールを親溶媒へ添加し溶液とする工程と、
    上記溶液を貧溶媒に添加して高分子量リグノフェノールを分離する工程と、
    上記分離工程の貧溶媒残液を無極性溶媒に投入して低分子量リグノフェノールを得る工程と、を備え、
    上記分離工程において上記貧溶媒へ超音波を照射することを特徴とする、リグノフェノールの製造方法。
  6. 前記無極性溶媒へ超音波を照射することを特徴とする、請求項5に記載のリグノフェノールの製造方法。
  7. 前記親溶媒は、アセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、ジオキサン、メチルセロソルブ、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドの何れか一つの溶媒又はこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒であることを特徴とする、請求項2又は5に記載のリグノフェノールの製造方法。
  8. 前記貧溶媒は、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタンの何れか一つの溶媒又はこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒であることを特徴とする、請求項1、2、5の何れかに記載のリグノフェノールの製造方法。
  9. 前記無極性溶媒は、n−ヘキサン又はシクロヘキサンであることを特徴とする、請求項3〜6の何れかに記載のリグノフェノールの製造方法。
  10. 請求項1〜9の何れかに記載のリグノフェノールの製造方法により製造されたことを特徴とする、低分子量リグノフェノール。
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