JP2008229692A - 耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手及び溶接構造体 - Google Patents

耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手及び溶接構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼板の多層盛突合せ溶接継手において、脆性き裂が伝播し難く、かつ、伝播してもいずれ停止する特性、即ち、耐脆性き裂伝播特性に優れた溶接継手を形成する。
【解決手段】鋼板の多層盛突合せ溶接継手において、表面溶接層2aと裏面溶接層2b間に、超音波打撃処理による圧縮残留応力を付与されて靭性が向上した改質層3xが形成されており、この改質層は脆性き裂の伝播を抑制又は止める破壊抵抗層として機能する多層盛突合せ溶接継手とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶接継手に発生した脆性き裂の伝播を抑制するか又は止める特性、即ち、耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手と、該溶接継手を有する溶接構造体に関する。
鋼板を溶接して溶接構造体を建造する場合、建造コストの低減や、溶接施工能率の向上のため、通常、大入熱溶接方法を用いるが、大入熱溶接方法で形成した溶接継手においては、溶接熱影響部(以下「HAZ部」ということがある)の靭性が低下するし、また、HAZ部の幅が増大して、破壊靭性値Kc(脆性破壊に係る指標)も低下する。
溶接継手の破壊は、溶接時に形成された欠陥に応力が集中して、該欠陥を起点にき裂が発生し、このき裂が、継手内部を伝播して起きる。溶接継手の破壊靭性値Kcが低いと、き裂が発生し易く、かつ、き裂の伝播は速いので、突発的に、溶接継手の破壊が起きることになる。即ち、溶接継手が脆性破壊する。
溶接継手の脆性破壊を防止するためには、(i)き裂の発生を抑制する、及び、(ii)発生したき裂の伝播を抑制するか又は止めることが必要である。そこで、本出願人は、上記(i)の観点に立ち、破壊靭性値Kcを充分に高める手法を見出し、耐脆性破壊発生特性に優れた大入熱突合せ溶接継手を提案し(特許文献1及び2、参照)、また、破壊靭性値Kcに基いて、大入熱突合せ溶接継手の耐脆性破壊発生特性を適確に検証する検証方法を提案した(特許文献2、参照)。
本出願人が提案した上記溶接継手は、脆性破壊が発生し難く、溶接構造物の安全性を高めることができる点で、有用なものであり、また、上記検証方法は、脆性破壊が発生し難い溶接継手を設計する上で、有用なものである。
しかし、通常の応力負荷環境でき裂が発生しないように設計した溶接継手においても、突発的又は衝撃的な応力や、不規則で複雑な応力を受けて、き裂が発生することがある。
従来、板厚が25mm程度のTMCP鋼板の突合せ溶接継手において、脆性き裂は、溶接継手内部の残留応力の作用により、母材側に逸れていくので、母材の耐脆性き裂伝播特性を高めれば、溶接継手内部で発生した脆性き裂を母材に誘導して停止させることができると考えられていた。
しかしながら、近年、溶接構造物の大型化や、構造の簡素化に伴い、設計応力を高く設定することができることから使用され始めた高張力厚鋼板の場合、突合せ溶接継手で発生した脆性き裂は、溶接継手の破壊抵抗値の程度によっては、母材側に逸れず、HAZ部に沿って伝播することが、本発明者の破壊試験の結果、判明した(非特許文献1、参照)。
また、本発明者は、板厚が、例えば、70mm以上の鋼板の場合、溶接継手には、板厚方向に大きな靭性分布が形成され、脆性き裂が、例え、溶接継手に交差して補強板を隅肉溶接していても、該補強板で捕捉されず、溶接金属部又はHAZ部に沿って伝播し、溶接継手が破壊に至ることが判明した。
そこで、本発明者は、上記判明事実を踏まえ、垂直部材の突合せ溶接継手と水平部材の隅肉溶接継手が交差する領域の一部又は全部を除去し、補修溶接により圧縮残留応力を有するNi含有量が2.5質量%以上の靭性に優れた溶接金属(特許文献3、参照)、または、アレスト性能(KCa値)が2000N/mm1.5以上の破壊靭性の優れた溶接金属(特許文献4、参照)を形成し、脆性き裂が垂直部材の突合せ溶接部の長手方向に沿って伝播した場合でも、このき裂伝播方向を高靭性または高アレスト性能の溶接金属周囲に逸らし、水平部材の母材部で停止させる脆性き裂伝播停止能に優れた溶接継手および溶接方法を提案した。
これらの方法は主に1パス大入熱突合せ溶接継手においてFL(溶接金属と母材熱影響部との境界)に沿って伝播するき裂をアレスト性能が高い鋼板側に逸らして母材内で停止させることにより突合せ溶接継手の安全性を向上するものである。
しかし、本発明者らは、多層盛突合せ溶接継手の大型破壊試験の結果から、多層盛突合せ溶接継手では、き裂が溶接金属内部で伝播するため、従来の1パス大入熱突合せ溶接継手で有効であった方法を適用しても多層盛突合せ溶接継手では十分な効果が得られない場合のあることを知見した。
このため、板厚50mm以上の鋼板の多層盛突合せ溶接継手において発生した脆性き裂を確実に停止し、突合せ溶接継手の大規模損傷を回避する技術が必要となる。
特開2005−144552号公報 特開2006−088184号公報 特開2005−111520号公報 特開2006−075874号公報 特開2004−130315号公報 米国特許第6467321号明細書 溶接構造シンポジウム講演概要集2006、p.195〜202
本発明は、鋼板を多パスで突合せ溶接する際、溶接継手に、万一、脆性き裂が発生しても、脆性き裂が溶接継手の長手方向に伝播し難く、かつ、伝播してもいずれ停止する特性、即ち、耐脆性き裂伝播特性に優れた溶接継手を形成することを課題とする。
そして、本発明は、上記課題を解決し、耐脆性き裂伝播特性に優れた溶接継手、及び、該溶接継手を有する溶接構造体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記判明事実を踏まえ、上記課題を解決する手法について鋭意研究した。その結果、多層盛溶接継手の表面溶接層と裏面溶接層の間に、他の溶接金属部より高靭性を有する層を形成し、その層によって溶接継手の板厚方向における靭性分布を分断しておけば、上記高靭性を有する層が破壊抵抗層として機能し、万一脆性き裂が発生しても、溶接継手の長手方向へのき裂の伝播を抑制するか、又は、止めることができることを見いだした。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)鋼板の多層盛突合せ溶接継手において、表面溶接層と裏面溶接層間に、超音波打撃処理により圧縮残留応力が付与された破壊挙動改質層が形成されており、この改質層は脆性き裂の伝播を抑制又は止める破壊抵抗層として機能することを特徴とする耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手。
(2)前記改質層が、溶接継手の厚み方向に複数間隔を置いて形成されていることを特徴とする上記(1)に記載の耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手。
(3)前記改質層が、溶接継手の長手方向において連続して形成されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手。
(4)前記改質層が、溶接継手の長手方向において断続して形成されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手。
(5)前記改質層の長さが、200mm以上であることを特徴とする上記(4)に記載の耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手。
(6)前記改質層の断続間隔が、400mm以下であることを特徴とする上記(4)又は(5)に記載の耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手。
(7)さらに、前記表面溶接層と裏面溶接層のいずれか一方または両方にも、超音波打撃処理により圧縮残留応力が付与された破壊挙動改質層が形成されていることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の多層盛突合せ溶接継手。
(8)前記鋼板の厚みが50mm以上であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の多層盛突合せ溶接継手としたことを特徴とする溶接構造体。
(9)前記鋼板の多層盛突合せ溶接継手部を有する溶接構造体であって、前記溶接継手部の少なくとも脆性き裂が発生し、伝播する可能性のある溶接継手部を、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の多層盛突合せ溶接継手としたことを特徴とする溶接構造体。
本発明によれば、鋼板の多パス突合せ溶接において、耐脆性き裂伝播特性に優れた溶接継手を形成することができ、その結果、鋼板を用いて、耐脆性き裂伝播特性に優れた溶接構造体を建造することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1に、鋼板1の突合せV開先を多パスで溶接して形成した本発明の多層盛突合せ溶接継手の一態様を示す。
図1に示した態様においては、各溶接層を、裏面溶接層2bを除いて複数のパスで形成し、多層盛溶接によりそのような溶接層を多層に順次積み上げたものである。
その際、表面溶接層2aと裏面溶接層2bの間の溶接層の中に、超音波打撃処理を施すことにより溶接層2a、2b及び中間の溶接層2cとは異なる脆性き裂伝播挙動を示す改質層3xを形成する。
超音波打撃処理を施すことにより圧縮残留応力が付与された改質層3xは、その他の引張残留応力状態にある溶接層2a、2b及び2cとは見かけ上異なるき裂伝播挙動を示し、高靭性を有する溶接層が形成されている場合と同様な効果を有する。なお、本発明では、この超音波打撃処理により溶接層に形成された改質層を、その他の溶接層の部分と区別するために「破壊挙動改質層」と定義する。
超音波打撃処理は、特許文献5に示されているように、例えば、直径が2〜8mm程度の超音波振動端子を、振動数5〜60kHz、出力500W〜10kWの条件で機械的に振動させ、この超音波振動端子の前面で被処理部に打撃を加えることにより、被処理部の物理的性状を改質する処理で、例えば特許文献6に示すような装置によって実施される。
このような超音波打撃処理を多層盛溶接の途中で、図2に示すように溶接ビード部に実施する。超音波振動端子4による打撃を受けた溶接ビードの表層には、図3に示すように板厚方向での深さが数ミリにおよぶ圧縮残留応力を付与することができる。この圧縮残留応力が付与された部分3x’は、次の上層の溶接の際、表面は再溶融して消滅するが、その下部は図1に示すように圧縮残留応力が付与された改質層3xとして残る。
一般に溶接により形成された溶接層は凝固後に冷却により熱収縮するが、この収縮が周囲から拘束される結果、溶接層に引張残留応力が導入される。溶接層の引張残留応力が導入された領域では、脆性き裂が発生しやすく、また脆性き裂の伝播成長も助長されやすい。これに対して、溶接層に超音波打撃処理が施された改質層3xでは表層から数ミリ程度の深さ範囲に圧縮残留応力が付与されるため、脆性破壊に対する大きな抵抗を有し、脆性き裂は発生しにくく、また脆性き裂が伝播しにくい特性を有する。このため、改質層3xではその他の溶接層よりも脆性き裂の伝播が遅れることになり、き裂の伝播を抑制するように作用する。
図7に示すように、溶接継手の溶接線の長手方向に脆性き裂が伝播成長する状況では、溶接継手に引張応力が作用するが、圧縮残留応力が付与された改質層3xの領域ではその主応力方向が通常の板厚に垂直な方向から傾いた方向となるため、その他の溶接層よりも傾いた破面を呈することとなる。
このため、万一溶接継手内部に脆性き裂が発生しても、次に説明するように、破壊挙動改質層3xによって、溶接継手長手方向のき裂の伝播を抑制するか又は止めることができる。
溶接継手を構成する多層盛溶接層の中に、破壊挙動改質層3xを配置することにより、溶接継手の板厚方向における靭性分布は、破壊挙動改質層3xのところで、急峻に変化するから、上下に分断された形となる。即ち、図1に示す溶接継手においては、破壊挙動改質層3xを挟み、上下に、相対的に低靭性の溶接層2cが存在する。
溶接継手に、例えば、衝撃的な応力が作用すると、破壊挙動改質層3xは、脆性破壊し難いから、脆性き裂は、図6に示すように、板厚表面側の脆性き裂Xと板厚裏面側の脆性き裂Yに分岐して生成して、それぞれの側で、溶接層2c中を伝播する。
図6のように、脆性き裂Xは、その両端が継手表面と破壊挙動改質層3xに達しているが、脆性き裂Yは、まだ、溶接層2c中に存在しているような場合、2本の脆性き裂X、Yは、ともに、板厚方向に幅の狭いき裂のまま溶接継手の長手方向に伝播して行く。その結果、き裂先端の応力拡大係数が低下して、き裂を伝播させるドライビングフォースが小さくなるので、き裂の伝播が止まり易くなる。
脆性き裂Yが、徐々に、板厚方向に伝播し、図7に示すように、溶接層2cの脆性破壊領域を伝播し破壊挙動改質層3xに達すると、破壊挙動改質層3xにおける脆性き裂X、Y間の延性破壊領域Zで、塑性変形が生じ、延性破壊しながら、脆性き裂X、Yの伝播エネルギーを吸収する。
その結果、脆性き裂X、Yは、図8に示すように、板厚表面側及び板厚裏面側において、それぞれ、ある程度伝播したところで、停止することになる。
以上のような破壊挙動改質層3xは、図1に示すような1層のみに限らず、図4に示すように、表面溶接層2aと裏面溶接層2bの間の複数の溶接層の中に、溶接層2a、2b及び2cの靭性より優れた靭性を備える破壊挙動改質層3xと3yを形成することもできる。破壊挙動改質層3x、3yを形成する溶接層は、図4に示すように上下に連続する溶接層でもよいし、間に改質層を形成しない溶接層を挟んでその上下の溶接層でもよい。改質層を複数設けることにより、より脆性き裂の伝播を抑制する性能が高まる。
さらに、溶接後、表面溶接層2aと裏面溶接層2bのいずれか一方の溶接層、または両方の溶接層にも超音波打撃処理を施し、それらの表層に圧縮残留応力が付与された破壊挙動改質層を形成してもよい。図5に、表面溶接層2aに破壊挙動改質層3zを形成した場合を示す。
溶接継手の表面溶接層2aと裏面溶接層2bのいずれか一方の溶接層、または両方の溶接層に超音波打撃処理を施すと、圧縮残留応力を付与することによる前述した効果に加え、超音波打撃処理が施された表層及び/又は裏層の表層領域が超音波加工処理によって組織微細化がなされるため、より脆性破壊に対する抵抗が著しく向上する。そのため、脆性き裂を板厚内部に埋没させることができ、脆性き裂の伝播を抑制する性能が一層高まるとともに、超音波打撃処理による塑性流動により、溶接金属部表層の微小な溶接欠陥が消滅し、溶接止端部における形状不連続部や溶接欠陥が解消されるので、溶接継手からの疲労き裂の発生を遅らせることができるという効果も得られる。
なお、超音波打撃処理は、溶接ビードの温度が300℃以下の状態で行うことが好ましい。温度が300℃以上では、超音波振動端子による打撃時に、溶接金属の降伏応力が低くなっているため好ましくない。
以上のような超音波打撃処理により形成された破壊挙動改質層は、溶接継手の長手方向に連続して存在することが望ましいが、断続的に存在していてもよい。溶接継手の長手方向において、200mm以上の長さの破壊挙動改質層が確保されていれば、破壊挙動改質層は、溶接継手内部に発生した脆性き裂を、板厚表面側及び板厚裏面側に分岐させ、き裂の溶接継手の長手方向への伝播を抑制するか又は止める機能を発揮する。
ただし、破壊挙動改質層を断続的に形成する場合、断続間隔が400mmを超えると、初期に生成したき裂が伝播して、最終的に形成される一本のき裂の長が400mm以上になる可能性がある。き裂の長さが400mm以上になると、き裂が有するエネルギーが過大となり、破壊挙動改質層が充分に機能せずに、破壊挙動改質層で脆性き裂を分岐させることが難しくなるので、断続間隔を400mm以下に限定する。
破壊挙動改質層が断続的に存在する場合の脆性き裂が停止する機構は、上記連続に存在する場合と同じである。即ち、破壊挙動改質層が存在しない継手部分に、脆性き裂が発生し、溶接継手の長さ方向に伝播しても、破壊挙動改質層に遭遇すると、板厚表面側及び板厚裏面側に分岐して、それぞれの側を伝播し、ある程度伝播したところで、停止することになる。
本発明で対象とする溶接継手は、鋼板を多層盛突合せ溶接したものである。本発明では、鋼板の多層盛突合せ溶接継手における複数の溶接層のうち、一層、または、複数の溶接層に超音波打撃処理を施すことにより破壊挙動改質層を形成することで、上述した溶接継手の長さ方向での脆性き裂の伝播停止特性を向上する効果が発揮される。この効果を充分に発揮させるためには、MIGまたはMAGの溶接方法による多層盛突合せ溶接では、3層以上の溶接層を確保するための鋼板の板厚として50mm以上が好ましい。また、TIG溶接法による多層盛突合せ溶接では、溶接層を数ミリ程度とすることが可能であるため、鋼板の板厚は10mm以上で十分な効果が発揮できる。
また、本発明では、溶接継手を形成する開先形状については、V型、X型、K型、レ型など、特にその種類を限定するものではない。
その他、溶接継手を形成する際の、溶接姿勢、入熱量、パス数、多層盛溶接方法などについても、本発明は特に限定されるものではない。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この例に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、本発明は種々の条件を採用し得るものである。
表1に示す鋼板条件及び溶接パス条件で溶接継手を形成し、脆性き裂伝播試験で耐脆性き裂伝播特性を測定した。その結果を、表2に示す。なお、用いた鋼板鋼種の成分組成を表3に示す。
Figure 2008229692
Figure 2008229692
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No.1〜15の発明例において、脆性き裂は、伝播しても、その長さは短く、直ぐに停止していることが解る。
発明例のうち、No.5〜7、9〜15は溶接継手の板厚内部に破壊挙動改質層をもうけた発明例であり、厚み方向において改質層の前後で脆性き裂の伝播経路が変わったため、分岐後の脆性きれつの数が3以上となり、溶接線の長手方向でのき裂の伝播は停止した。また、それ以外のNo.1〜4、8は、溶接継手の表層部及び裏層部に連続的に複数の破壊挙動改質層を設けた発明例であり、表層部及び裏層部に延性破壊領域Zが形成され、厚み方向における脆性きれつの分岐はなく、き裂の数は1となり、溶接線の長手方向でのき裂の伝播は停止した。
一方、本発明の条件から外れた溶接継手であるNo.16〜25は、脆性き裂は、溶接線の長手方向での伝播を直ぐに停止することができなかった。
前述したように、本発明によれば、鋼板を用いて、耐脆性き裂伝播特性に優れた溶接継手を有する溶接構造体を建造することができる。したがって、本発明は、溶接構造物の建造分野において、利用可能性が大きいものである。
本発明の多層盛突合せ溶接継手の一態様を示す図である。 多層盛突合せ溶接の途中で高靭性な改質層を形成する過程を説明する図である。 多層盛突合せ溶接の途中で高靭性な改質層が形成された状態を示す図である。 本発明の多層盛突合せ溶接継手の別の態様を示す図である。 本発明の多層盛突合せ溶接継手のさらに別の態様を示す図である。 本発明の溶接継手において、板厚表面側と板厚裏面側のそれぞれに、脆性き裂が生成した態様を示す図である。 2本の脆性き裂間の領域で、塑性変形が生じ、延性破壊した態様を示す図である。 板厚表面側及び板厚裏面側において、脆性き裂がある程度伝播し、停止する態様を示す図である。
符号の説明
1 鋼板
2 溶接金属
2a 表面溶接層
2b 裏面溶接層
2c 多層盛溶接における中間の溶接層
3x’ 圧縮残留応力が付与された部分
3x、3y、3z 破壊挙動改質層
4 超音波振動端子
X、Y 脆性き裂
Z 延性破壊領域

Claims (9)

  1. 鋼板の多層盛突合せ溶接継手において、表面溶接層と裏面溶接層間に、超音波打撃処理により圧縮残留応力が付与された破壊挙動改質層が形成されており、この改質層は脆性き裂の伝播を抑制又は止める破壊抵抗層として機能することを特徴とする耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手。
  2. 前記改質層が、溶接継手の厚み方向に複数間隔を置いて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手。
  3. 前記改質層が、溶接継手の長手方向において連続して形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手。
  4. 前記改質層が、溶接継手の長手方向において断続して形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手。
  5. 前記改質層の長さが、200mm以上であることを特徴とする請求項4に記載の耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手。
  6. 前記改質層の断続間隔が、400mm以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載の耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手。
  7. さらに、前記表面溶接層と裏面溶接層のいずれか一方または両方にも、超音波打撃処理により圧縮残留応力が付与された破壊挙動改質層が形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層盛突合せ溶接継手。
  8. 前記鋼板の厚みが50mm以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の多層盛突合せ溶接継手としたことを特徴とする溶接構造体。
  9. 前記鋼板の多層盛突合せ溶接継手部を有する溶接構造体であって、前記溶接継手部の少なくとも脆性き裂が発生し、伝播する可能性のある溶接継手部を、請求項1〜8のいずれか1項に記載の多層盛突合せ溶接継手としたことを特徴とする溶接構造体。
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