JP2008229213A - 生体適合性接着剤組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、シアノアクリレート硬化物から、アセチルサリチル酸を徐放させることができ、好ましくは、一液型で使用することができる生体適合性接着剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】シアノアクリレートと、加水分解性のアセチルサリチル酸エステルを含む生体適合性接着剤組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、シアノアクリレート系生体適合性接着剤組成物に関する。
シアノアクリレートは、短時間で重合硬化する瞬間接着剤として、医療現場においても傷を縫合するために使用されている。
使用可能なシアノアクリレートとしては、アルキル−2−シアノアクリレート、アルコキシアルキルシアノアクリレート(特許文献1)およびアルキルエステルシアノアクリレート(特許文献2)が開示されている。
医療現場で使用されるシアノアクリレートは、傷を縫合する際、出血や痛み等も緩和させる接着剤が必要とされている。
前記要求に対して、特許文献3では、シアノアクリレートと抗炎症剤を含む接着剤であり、抗炎症剤としてゼラチンでマイクロカプセル化されたアスピリンが開示されている。
前記接着剤は、医薬をそのシアノアクリレート硬化物から適度に放出するために、欠陥または細孔形成剤が接着剤の一部として含まれ、その欠陥または細孔形成剤は、血液等水分に接触した際に溶解し、シアノアクリレート硬化物の内部に欠陥または細孔を形成し、通路を形成する。マイクロカプセル化した医薬は、それらの欠陥や細孔を通って、シアノアクリレート硬化物から徐放される。
なお、アスピリンは、保存中、シアノアクリレートとアスピリン等薬剤の化学的な相互作用を避けるために、ゼラチン等により、アルピリンをマイクロカプセル化して含有されている。
米国特許 第6224622号明細書 国際公開 02/09785号パンフレット 米国特許出願公開 第2003/0044380号明細書
本発明は、シアノアクリレート硬化物から、アセチルサリチル酸を徐放させることができ、好ましくは、一液型で使用することができる生体適合性接着剤組成物を提供することを目的とする。
本発明は、アセチルサリチル酸を加水分解性の誘導体として、シアノアクリレートと組み合わせることにより、上記課題を解決した。
(1)シアノアクリレートと、加水分解性アセチルサリチル酸エステルとを含む生体適合性接着剤組成物。
(2)上記シアノアクリレートが加水分解性硬化物を形成するものである上記(1)の生体適合性接着剤組成物。
(3)前記加水分解性アセチルサリチル酸エステルが液状である上記(1)または(2)の生体適合性接着剤組成物。
(4)前記加水分解性アセチルサリチル酸エステルは、そのエステル部位がカルボキシ基を含有するアルコール導入基から形成される上記(1)〜(3)のいずれかの生体適合性接着剤組成物。
(5)前記エステル部位が、
Figure 2008229213
(式中、Rは水素またはアルキル、Rはアルキルまたはアルコキシを表し、もしくはRとRは一緒になって1個の2価基を形成する)
である上記(4)の生体適合性接着剤組成物。
(6)前記加水分解性アセチルサリチル酸エステルを、前記シアノアクリレートに対して、0.1質量%〜10質量%含む上記(1)〜(5)のいずれかの生体適合性接着剤組成物。
本発明の生体適合性接着剤組成物は、その硬化物から、抗炎症や血小板凝集作用を有するアセチルサリチル酸を徐放させることができる。
さらに、一液型で使用することができる生体適合性接着剤組成物を提供することができる。
以下に、本発明に係る生体適合性接着剤組成物について詳細に説明する。
シアノアクリレートは、医療現場で使用できるものであれば、特に限定されない。
例えば、アルキル−2−シアノアクリレート、アルコキシアルキル−2−シアノアクリレート、アルキルエステル−2−シアノアクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、生体適合性シアノアクリレートであることが好ましい。生体適合性シアノアクリレートとは、シアノアクリレートの硬化物が生体適合性を示すものである。生体適合性とは、シアノアクリレートの硬化物が生体に使用可能な硬度(柔軟性)を有し、かつ適度な加水分解性であり、かつ起炎性が低いことを意味する。
前記生体適合性シアノアクリレートの具体例としては、アルキル−2−シアノアクリレート、アルコキシアルキル−2−シアノアクリレート、アルキルエステル−2−シアノアクリレートが挙げられ、その中でも、適度な柔軟性(硬度)や加水分解の観点から、アルコキシアルキル−2−シアノアクリレート、アルキルエステル−2−シアノアクリレートが最も好ましい。
前記アルキル−2−シアノアクリレートの具体例としては、エチル−2−シアノアクリレート、ブチル−2−シアノアクリレート、2−オクチル−2−シアノアクリレートが挙げられる。
前記アルコキシアルキル−2−シアノアクリレートは、式(II)または式(III)に示される。
Figure 2008229213
(式(II)中、Rは、炭素数1〜4の分岐、若しくは鎖状のアルキレン基であり、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を示す)
Figure 2008229213
(式(III)中、Rは、炭素数1〜4の分岐、若しくは鎖状のアルキレン基であり、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基であり、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す)
前記アルコキシアルキル−2−アクリレートの具体例としては、エトキシエチル−2−シアノアクリレート、エトキシプロピル−2−シアノアクリレート、エトキシイソプロピル−2−シアノアクリレート、プロポキシエチル−2−シアノアクリレート、イソプロポキシエチル−2−シアノアクリレート、ブトキシエチル−2−シアノアクリレート、メトキシプロピル−2−シアノアクリレート、メトキシイソプロピル−2−シアノアクリレート、メトキシブチル−2−シアノアクリレート、プロポキシメチル−2−シアノアクリレート、プロポキシプロピル−2−シアノアクリレート、ブトキシメチル−2−シアノアクリレート、ブトキシプロピル−2−シアノアクリレート、ブトキシイソプロピル−2−シアノアクリレート、ブトキシブチル−2−シアノアクリレート、ヘキシルオキシエチル−2−シアノアクリレート、エトキシブチル−2−シアノアクリレート、ペントオキシエチル−2−シアノアクリレート(2−アミルオキシエチル−2−シアノアクリレート)、2−(2’−メトキシ)エトキシエチル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−エトキシ)エトキシエチル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−プロピルオキシ)エトキシエチル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−ブチルオキシ)エトキシエチル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−ペンチルオキシ)エトキシエチル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−ヘキシルオキシ)エトキシエチル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−メトキシ)プロピルオキシプロピル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−エトキシ)プロピルオキシプロピル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−プロピルオキシ)プロピルオキシプロピル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−ブチルオキシ)プロポキシプロピル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−ペンチルオキシ)プロピルオキシプロピル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−ヘキシルオキシ)プロピルオキシプロピル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−メトキシ)ブチルオキシブチル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−エトキシ)ブチルオキシブチル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−ブチルオキシ)ブチルオキシブチル−2”−シアノアクリレート、2−(3’−メトキシ)プロピルオキシエチル−2”−シアノアクリレート、2−(3’−メトキシ)ブチルオキシエチル−2”−シアノアクリレート、2−(3’−メトキシ)プロピルオキシプロピル−2”−シアノアクリレート、2−(3’−メトキシ)ブチルオキシプロピル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−メトキシ)エトキシプロピル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−メトキシ)エトキシブチル−2”−シアノアクリレート、2−(2’−エトキシ)エトキシブチル−2”−シアノアクリレート等が挙げられる。
その中でも、適度な柔軟性(硬度)を有する理由から、エトキシエチル−2−シアノアクリレート、2−(2’−エトキシ)エトキシエチル−2”−シアノアクリレートが好ましい。
前記アルキルエステル−2−シアノアクリレートは、式(IV)に示される。
Figure 2008229213
(式中、Rは、炭素数1〜2の分岐、若しくは鎖状のアルキレン基であり、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す)
前記アルキルエステル−2−シアノアクリレートの具体例としては、エチルグリコイル−2−シアノアクリレート、ブチルグリコイル−2−シアノアクリレート、エチルラクトイル−2−シアノアクリレート、ブチルラクトイル−2−シアノアクリレートが挙げられる。その中でも、適度な加水分解性を有する理由から、ブチルグリコイル−2−シアノアクリレート、ブチルラクトイル−2−シアノアクリレートが好ましい。
前記シアノアクリレートの構造内にエーテル結合を有する場合、ガラス転移点が低くなるため、硬化後、水分子が侵入する確率が高くなり、加水分解されやすい。
また、前記シアノアクリレートの側鎖にエステル結合を有する場合、側鎖分解が受けやすく、その結果主鎖も加水分解されやすい。
なお、前記シアノアクリレートは、1種類もしくは2種類以上で混合使用することができる。
本発明のシアノアクリレートの製造方法は、公知の方法で製造することができる。
例えば、前記アルコキシアルキル−2−シアノアクリレートの製造方法としては、特開昭56−90871および特開昭56−135455に記載の方法に準じて製造することができる。
また、例えば、前記アルキルエステルシアノアクリレートは、特表2004−505121に記載の方法に準じて、アルキルシアノアセテートまたはアルキルエステルシアノアセテートを、パラホルムアルデヒドと共にクネ−フェナーゲル反応を行うことによって調製することができる。これをアルキルエステルシアノアクリレートオリゴマーへと導く。引き続いてそのオリゴマーを熱分解することにより、シアノアクリレートモノマーが形成される。更に蒸留した後に、高純度(95.0%以上、好ましくは99.0%以上、より好ましくは99.8%以上)のアルキルエステルシアノアクリレートモノマーが得られる。
本発明に係る加水分解性アセチルサリチル酸エステルは、一般式(V)で示され、その中でも液状のものであることが好ましい。液状であれば、一液型で使用することができる。
Figure 2008229213
ここで、Rは、カルボキシ基を含有するアルコール導入基を示す。
前記エステル部位にカルボキシ基を有していれば、生体内の乳酸やグリコール酸により、加水分解されやすくなるからである。
さらに、その中でも、前記エステル部位が、下記式(I)に示すダブルエステル構造を有する化合物が好ましい。
Figure 2008229213
ここで、Rは水素、アルキル、アルアルキルまたはアリールを表し、Rはアルキル、アミノアルキル、アミノ(置換アルキル)、アルアルキル、アリール、アルコキシ、アルアルコキシまたはアリールオキシを表し、もしくはRとRは一緒になって1個の2価基を形成し、それにより式(I)の化合物は酸素含有複素環を含み、Rは水素、アルキル、アルアルキルまたはアリールを表す。
なお、前記アルキル基(アルコキシ、アルアルキルおよびアルアルコキシ基の一部を形成するアルキル部分を含む)は、20個以下の炭素原子を含むことが好ましい。
前記アルキル基は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれでもよく、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、へプチル、オクチル、デシル、ドデシルまたはオクタデシルが挙げられる。
前記アリール基(アルアルキル、アリールオキシおよびアルアルコキシ基の一部を形成するアリール部分を含む)は、置換されていてもよい炭素環または複素環のいずれでもよく、具体的には、フェニル、ナフチル、フリルまたはチエニルが挙げられる。なお、置換基が存在する場合、それらは例えば、アルキル、アルコキシおよびハロゲンから選択される。
また、Rが水素、アルキル、アルアルキルまたはアリールを表し、Rがアミノアルキルまたはアミノ(置換アルキル)を表す場合、Rの定義は、−(O=)C−Rが、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニンまたはバリンのような自然界に存在するアミノ酸のアシル基でもよい。
前記式(I)の好ましい態様としては、Rは水素またはアルキル、Rはアルキルまたはアルコキシであるものが好ましい。
具体的には、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチルまたは第三ブチルであり、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、第二ブトキシ、または第三ブトキシである構造が挙げられる。
なお、式(I)において、RとRは一緒になって−CHCHO−、−CHCHCHO−およびo−フェニレンから選ばれる1個の2価基を形成する。
前記アセチルサリチル酸エステルの具体例としては、炭酸(1−アセチルサリチルオキシ)エチルエチル、アセチルサリチル酸ピバロイルオキシメチル等が挙げられ、その中でも、化合物(VI)に示される炭酸(1−アセチルサリチルオキシ)エチルエチル、化合物(VII)に示されるアセチルサリチル酸ピバロイルオキシメチルであれば、特に好ましい。
Figure 2008229213
Figure 2008229213
前記炭酸(1−アセチルサリチルオキシ)エチルエチルを前記シアノアクリレートに混合して使用すれば、生体内で加水分解され、アセチルサリチル酸、酢酸、二酸化炭素、エタノールに加水分解されて、アセチルサリチル酸を遊離させることができる。
また、前記アセチルサリチル酸ピバロイルオキシメチルを前記シアノアクリレートと混合して使用すれば、生体内で加水分解され、アセチルサリチル酸、ホルムアルデヒド、ピバロン酸に加水分解されて、アセチルサリチル酸を遊離させることができる。
前記アセチルサリチル酸エステルであれば、シアノアクリレートと均一に混合することができ、抗炎症剤としての効果も十分に得ることができる。また、加水分解物も生体内において毒性を有しない。
また、シアノアクリレートと混合して保管しても、シアノアクリレートと相互作用しにくく、硬化しにくい。
前記アセチルサリチル酸エステルは、前記シアノアクリレートに対して、0.1重量%〜20重量%含まれることが好ましい。
前記範囲であれば、適度な接着剤としての粘着性能を持つ。0.1重量%未満であれば、アセチルサリチル酸の抗炎症剤としての効果が十分に発現されないこともあり、20重量%超であれば、シアノアクリレートの重合効果を阻害して十分な接着性能を得られないため、不適である。
前記アセチルサリチル酸エステルの製造方法を以下に示す。
本発明により提供されるアセチルサリチル酸エステルは、以下の方法で製造することができるが、これらに限定されない。
例えば、前記炭酸(1−アセチルサリチルオキシ)エチルエチルの製造方法としては、サリチル酸(0.8mol)に炭酸1−クロロエチルエチル(0.8mol)、水酸化カリウム(0.96mol)、アセトニトリル、水、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム(40%aq)を混合し、90℃、4時間撹拌する。得られた有機層を分離し、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮する。さらに、減圧蒸留を行い、沸点154.5℃/220Paの溜分(炭酸(1−アセチルサリチルオキシ)エチルエチル)を得ることにより製造される。
また、例えば、前記アセチルサリチル酸ピバロイルオキシメチルの製造方法としては、アセチルサリチル酸(0.8mol)にピバロン酸クロロメチル(0.96mol)、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン(0.96mol)を混合し、室温で24時間撹拌する。得られた反応溶液に酢酸エチルを加え、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮する。さらに、減圧蒸留を行い、沸点141.0℃/230Paの溜分(アセチルサリチル酸ピバロイルオキシメチル)を得ることにより製造される。
以下、本発明の生体適合性接着剤組成物の使用方法を説明する。
本発明の生体適合性接着剤組成物は、滅菌をすることができる。
前記滅菌の方法としては、電子線滅菌法、γ線滅菌法、ろ過滅菌法、乾熱滅菌法が挙げられる。接着剤組成物は、主として活性の高いモノマーであるため、滅菌後の保管安定性の点より、ろ過滅菌法、乾熱滅菌法が好ましい。
本発明の生体適合性接着剤組成物は、微量の水分の存在、例えば空気中の水分により急速に重合を起こし、膜を形成し、被接着体を強固に接着させることができる。
なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、水分以外に、下記重合開始剤または促進剤を使用することもできる。
上記重合開始剤または促進剤としては、四級アミン、洗浄剤組成物(非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性または両イオン界面活性剤、分子内塩のような界面活性剤)、アミン、イミンおよびアミド、ホスフィン、ホスファイトおよびホスフォニウム塩、アルコール類、無機塩基類および塩類、硫黄化合物、重合化した環状エーテル類、環式および非環式炭酸塩、相転移触媒、有機金属類、ラジカル開始剤または促進剤、およびラジカルが挙げられる。
上記四級アミンとしては、例えば、臭化ドミフェン、塩化ブチリルコリン、臭化ベンザルコニウム、塩化アセチル等が挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート20(例えば、商品名 Tween20TM ICIアメリカズ社製)、ポリソルベート80(例えば、商品名 Tween80TM ICIアメリカズ社製)、ポロキサマー等が挙げられる。
上記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、臭化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
上記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、テトラデシル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
上記両性または両イオン界面活性剤としては、ドデシルジメチル(3−スルフォプロピル)アンモニウム水酸化物等が挙げられる。
上記アミン、イミンおよびアミドとしては、イミダゾール、トリプタミン、尿素、アルギニン、ポビドン等が挙げられる。
上記ホスフィン、ホスファイトおよびホスフォニウム塩としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスファイト等が挙げられる。
上記アルコール類としては、エチレングリコール、没食子酸メチル(メチルガレート)、アスコルビン酸、タンニン、タンニン酸等が挙げられる。
上記無機塩基類および塩類としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、硫酸カルシウム、珪酸ナトリウム等が挙げられる。
上記硫黄化合物としては、チオ尿素、ポリスルフィド等が挙げられる。
上記重合化した環状エーテル類としては、例えば、モネンシン、ノナクチン、クラウンエーテル、カリックスアレーン、重合化したエポキシド等が挙げられる。
上記環式および非環式炭酸塩としては、例えば、ジエチルカルボネート等が挙げられる。
上記相転移触媒としては、例えば、アリコート336TM等が挙げられる。
上記有機金属類としては、例えば、コバルトナフテネート、マンガンアセチルアセトネート等が挙げられる。
上記ラジカル開始剤または促進剤、およびラジカルとしては、ジ−t−ブチルパーオキシド、アゾビ水素ブチロニトリル等が挙げられる。
上記重合開始剤または促進剤は、2つ以上組み合わせて使用することもできる。複数の重合開始剤または促進剤を組み合わせて使用する場合、下記のような効果が得られる。
例えば、比率および/または成分の異なる前記シアノアクリレートモノマーを複数使用した場合、1つのモノマーを優先的に重合を開始する開始剤と他のモノマーを優先的に重合を開始する開始剤を与えることができ、その結果、両モノマーの重合を等価もしくは非等価に適宜調節することができる。
また、この様な複数の開始剤または促進剤の混合物は、1つの開始剤を添加するより、少量化できる可能性がある。
本発明の生体適合性接着剤組成物は、生体組織同士、生体組織と人工補綴物との接合、または接合補助に使用することができる。
なお、前記生体組織としては、皮膚、血管、心筋、肺胞、骨、管腔臓器、実質臓器等の組織があげられる。
また、前記人工補綴物としては、人工血管、止血材、骨ピン、縫合糸等が挙げられる。
本発明の生体適合性接着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、下記添加剤の少なくとも一つを、前記生体適合性接着剤組成物の全重量に基づいて、0超、25重量%以下、より好ましくは、0超、10重量%以下で含有させることができる。
前記添加物としては、増粘剤、可塑剤、着色剤、保存剤、熱放散剤、安定化剤等が挙げられる。
なお、先述した比率および/または成分が異なる生体適合性接着剤組成物を使用することもできる。
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<炭酸(1−アセチルサリチルオキシ)エチルエチルの合成>
1Lのナスフラスコに、105.70g(0.8mol)のサリチル酸(和光純薬工業社製)、122.06g(0.8mol)の炭酸1−クロロエチルエチル(東京化成工業社製)、53.87g(0.96mol)の水酸化カリウム(和光純薬工業社製)、および350mLのアセトニトリル(和光純薬工業社製)を秤取り、さらに0.4gの水および0.4gの水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム(40%水溶液、東京化成工業社製)を添加した。この混合溶液を還流下にて90℃で4時間攪拌した。濾紙を用いて、得られた反応溶液を濾過して濾液を得た。その濾液にジエチルエーテル(国産化学社製)を加えた有機相を水で3回分液洗浄を行い、洗浄後の有機相を、硫酸マグネシウム(和光純薬社製)を用いて乾燥した。その後、エバポレーターを用いて、その有機相よりジエチルエーテルを除去して、炭酸(1−サリチルオキシ)エチルエチルのクルード品を得た。
そのクルード品を、1Lのナスフラスコに秤取った、350mLのピリジン(和光純薬工業社製)、250mLの無水酢酸(和光純薬工業社製)に、氷浴下にて滴下して24時間攪拌した。得られた反応液を、氷浴下にて1Lの水に滴下した後、ジエチルエーテルを加え、有機相を水で3回分液洗浄を行った。洗浄後の有機相を、硫酸マグネシウム(和光純薬社製)を用いて乾燥した。その後、エバポレーターを用いて、その有機相よりジエチルエーテルを除去して、減圧蒸留を行い、沸点154.5℃/220Paの留分を得た。NMR解析より、その留分が炭酸(1−アセチルサリチルオキシ)エチルエチルであることを確認した。収量は133.27g(0.45mol)であり、収率は58%であった。
上記NMR解析の結果を、図1に示す。
(実施例2)
<アセチルサリチル酸ピバロイルオキシメチルの合成>
1Lのナスフラスコに、144.13g(0.8mol)のアセチルサリチル酸(和光純薬工業社製)、144.58g(0.96mol)のピバロン酸クロロメチル(東京化成工業社製)、300mLのジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製)を秤取り、さらに97.14g(0.96mol)のトリエチルアミンを添加した。室温で24時間攪拌した。得られた反応溶液に酢酸エチル(国産化学社製)を加え、それを有機相として水で3回分液洗浄を行い、洗浄後の有機相を、硫酸マグネシウム(和光純薬社製)を用いて乾燥した。その後、エバポレーターを用いて、その有機相より酢酸エチルを除去して、減圧蒸留を行い、沸点141.0℃/230Paの留分を得た。NMR解析より、その溜分がアセチルサリチル酸ピバロイルオキシメチルであることを確認した。収量は202.97g(0.69mol)であり、収率は86%であった。
上記NMR解析の結果を、図2に示す。
なお、実施例1および2のNMR解析は、下記条件により実施した。
NMR機器:Varian製Unity Plus NMR Spectrometer
共鳴周波数:399.897 MHz
積算:16回
測定溶媒:CDCl3 (Isotec Chloroform-d “100%”99.96 atom% D; Lot No.09321DC)
基準ピーク:7.26 ppm (CDCl3中の残留プロトン)
(実施例1)71.29 mg / 0.6 mL CDCl3
(実施例2)81.30 mg/ 0.6 mL CDCl3
(実施例3〜10、比較例1〜4)
<安定性評価(粘度評価)>
[表1]に示す配合割合にて、各接着剤組成物(実施例3〜10、比較例1〜4)を調製し、安定性を評価した。表中の単位は、重量%である。
なお、安定化剤として、各組成物にハイドロキノン1000ppm、二酸化硫黄20ppmを配合した。
上記結果は、[表2]に示す。なお、安定性の測定方法および評価方法は下記に示すとおりである。
各組成物の安定性評価は、室温(25℃)で3ヶ月、50℃で1週間保管したものについて、保管前は液状物である組成物の性状変化の肉眼観察する方法で行った。保管後の性状が液状物である場合は○とし、硬化して固体になってしまった場合は×とした。
また、もう一つの方法として、保管前の液状物のもの、保管後の性状が液状物であったものについて、E型回転粘度計(トキメック社製)を用いて初期粘度(A)、及び保管後粘度の粘度(B)(室温(25℃)で3ヶ月保管後の粘度(B1)、50℃で1週間保管後の粘度(B2))を測定した。(B)/(A)の粘度比を算出した。
前記粘度比が1に近い方、すなわち粘度変化が小さく安定性に優れると判断した。前記粘度比(B)/(A)が1以上、100未満であるものが安定性の点で好ましく、さらに好ましくは、(B)/(A)が1以上、20未満である。(B)/(A)が100以上である場合は、保管時に著しく増粘しており安定性に欠けると判断した。2−シアノアクリレートの粘度は、通常では2〜20cPである。
なお、エトキシエチル−2−シアノアクリレートおよびブチルラクトイル−2−シアノアクリレートの安定性評価は、表2の参考例1および2に示す。
Figure 2008229213
Figure 2008229213
なお、配合直後、シアノアクリレートにアセチルサリチル酸を配合した組成物(比較例1〜4)は、シアノアクリレートにアセチルサリチル酸の結晶が分散した組成物となった。一方、シアノアクリレートに、炭酸(1−アセチルサリチルオキシ)エチルエチル(実施例1)およびアセチルサリチル酸ピバロイルオキシメチル(実施例2)を配合した組成物は、均一の溶液であった。
表2の結果が示すように、シアノアクリレートにアセチルサリチル酸を配合した組成物(比較例1〜4)は、シアノアクリレートとアセチルサリチル酸の相互作用により、保管後、硬化し、適切な安定性(粘性)を保つことができなかったが、シアノアクリレートに炭酸(1−アセチルサリチルオキシ)エチルエチル(実施例1)およびアセチルサリチル酸ピバロイルオキシメチル(実施例2)を配合した組成物は、適切な安定性(粘性)を保つことができた。
図1は、炭酸(1−アセチルサリチルオキシ)エチルエチルのNMRスペクトルを示す図である。 図2は、アセチルサリチル酸ピバロイルオキシメチルのNMRスペクトルを示す図である。

Claims (6)

  1. シアノアクリレートと、加水分解性アセチルサリチル酸エステルとを含む生体適合性接着剤組成物。
  2. 前記シアノアクリレートが加水分解性硬化物を形成するものである請求項1に記載の生体適合性接着剤組成物。
  3. 前記加水分解性アセチルサリチル酸エステルが液状である請求項1または2に記載の生体適合性接着剤組成物。
  4. 前記加水分解性アセチルサリチル酸エステルは、そのエステル部位がカルボキシ基を含有するアルコール導入基から形成される請求項1〜3のいずれかに記載の生体適合性接着剤組成物。
  5. 前記エステル部位が、
    Figure 2008229213
    (式中、Rは水素またはアルキル、Rはアルキルまたはアルコキシを表し、もしくはRとRは一緒になって1個の2価基を形成する)
    である請求項4に記載の生体適合性接着剤組成物。
  6. 前記加水分解性アセチルサリチル酸エステルを、前記シアノアクリレートに対して、0.1質量%〜10質量%含む請求項1〜5のいずれかに記載の生体適合性接着剤組成物。
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