JP2008223427A - コンクリート中詰め鋼製セグメント - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コンクリート中詰め鋼製セグメントにおいて、トンネル周方向に間隔をおいて隣合う各縦リブ5の中心軸線をセグメントリング半径方向の中心に向かって延長した場合の交差部における各中心軸線で挟まれる角度θが10度〜25度の範囲とされ、かつ、継手板4に隣接する縦リブ5と継手板4との各中心軸線をセグメントリング半径方向の中心に向かって延長した場合の交差部における各中心軸線で挟まれる角度が、トンネル周方向に間隔をおいて隣合う前記縦リブ5同士の配置角度と同じか、または小さい角度となるように継手板4に隣接する各縦リブ5が配置されている。
【選択図】図20
Description
特に、大深度に構築されるシールドトンネルの覆工体として適用する場合にその効果が大きいコンクリート中詰め鋼製セグメントに関する。
従来、鋼枠内に配置される縦リブは一対の主桁の間隔を保持するために必要最小限の枚数が使用されており、また平板の縦リブが用いられることが多く、そのため縦リブとして使用される平板は形状の保持と主桁と縦リブを溶接するために必要な最小の板厚が選定されていた。
そのため、従来のコンクリート中詰め鋼製セグメントでは、鋼枠と中詰めコンクリートの一体性が十分ではなく、中詰めコンクリートを構造材として使用できなかった。
また、従来、トンネル周方向に組み立てられたセグメントリング中心に対して縦リブの配置角度と、中詰コンクリートとの一体合成化との関係については知られていない。
本発明者は、前記のトンネル周方向に組み立てられたセグメントリング中心に対して縦リブの配置角度と、中詰コンクリートとの一体合成化との関係について種々検討した結果、トンネル周方向に組み立てられたセグメントリング中心に対して縦リブの所定範囲の配置角度により、別個に中詰コンクリートに係合する鉄筋等の補助鋼材を使用しない場合でも、主桁または主桁,縦リブと中詰コンクリートとの一体合成化が可能であることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、コンクリート中詰め鋼製セグメントに特殊なずれ止め機構を追加することなく、二次覆工の代替材として用いられてきた中詰めコンクリートを構造材として、鋼枠と中詰めコンクリートを一体化させ、鋼コンクリート合成構造体としての性能を発揮させることができ、トンネル覆工体の経済性を向上させることが可能なコンクリート中詰め鋼製セグメントを提供することを目的とする。
また、第2発明のコンクリート中詰め鋼製セグメントでは、第1発明のコンクリート中詰め鋼製セグメントにおいて、セグメントのトンネル半径方向の高さH、縦リブと中詰めコンクリートの間の摩擦係数μ、セグメントの幅B、縦リブの配置間隔の中心角θ、中詰めコンクリートの断面積Ac、中詰めコンクリートのヤング率Ec、主桁の断面積As、主桁のヤング率Esおよび中詰めコンクリートのトンネル半径方向の高さhcを用いて、縦リブのトンネル半径方向の高さhrが下記式(1)で定められる範囲となるように縦リブのトンネル半径方向の高さhrを設定し、
かつ、前記縦リブの板厚trが、縦リブ1枚が主桁に伝達する荷重をPrとし、鋼材の種類により定まる許容せん断応力度をτsaとした場合に、下記式(2)
を満足するように縦リブの板厚trを設定したことを特徴とする。
また、第3発明においては、第1または第2発明のコンクリート中詰め鋼製セグメントであって、縦リブの表面に凹凸を付与することにより縦リブと中詰めコンクリートとの間の摩擦係数を向上させたことを特徴とするコンクリート中詰め鋼製セグメント。
また、第4発明のコンクリート中詰め鋼製セグメントにおいては、第1発明または第2発明の縦リブとして、断面T字状または断面L字状の縦リブを用いたことを特徴とする。
また、第5発明のコンクリート中詰め鋼製セグメントでは、第1発明または第2発明の縦リブに貫通孔を設けたことを特徴とする。
また、縦リブのトンネル半径方向の高さをセグメントのトンネル半径方向の高さ以下の範囲において設定すると共に縦リブの板厚を、定量的に設定することにより、より合理的なコンクリート中詰め鋼製セグメントとすることができる。
また、縦リブの表面に凹凸を付与することにより、縦リブと中詰めコンクリートとの間の摩擦係数μを向上させ、縦リブと中詰めコンクリートとを確実に一体にすることができる。
また、断面T字状または断面L字状の縦リブを用いることにより、剛性の高いコンクリート中詰め鋼製セグメントとすることができる。
また、縦リブに貫通孔を設けることにより、中詰めコンクリートと縦リブの一体化を確実に図り、剛性の高い経済的なコンクリート中詰め鋼製セグメントとすることができる。
先ず、第1発明のように設定した理由について順に説明する。
図1は、シールドトンネル工法により構築された円形トンネルの覆工構造を示している。
この図に示したシールドトンネル覆工体2の場合には、3つのAセグメント1Aと2つのBセグメント1Bと1つのKセグメント(キーセグメント)1Kにより円形のトンネル覆工体(セグメントリング)2が構成されており、各々のセグメント1A,1B,1K同士の接続は、セグメントの継手板を介してボルトにより接続されるのが一般的である。
前記のAセグメント1Aと、Bセグメント1Bと、Kセグメント1Kのうち、いずれの場合も適用可能であるが、特に、Aセグメント1Aを例にして説明する。
前記の土水圧による荷重について、図3に、縦リブ5および継手板4の位置において、主桁3に荷重f1が作用している状況を示している。
しかしながら、図6に示すように集中荷重F1が離散的に作用する場合には、図7に示す軸力N3のみではなく、図8に示すように曲げモーメントM1,M2および図9に示すようにせん断力S1、S2が発生する。
即ち、コンクリート中詰め鋼製セグメント9A(図2参照)における鋼製セグメント(鋼殻)のように、縦リブ5および継手板4がトンネル周方向に間隔をおいて離散的に配置されている場合には、コンクリート中詰め鋼製セグメント9Aの主桁3は、トンネル周方向の軸力Nおよび曲げモーメントM1,2に抵抗できる主桁仕様とすることが必要である。
しかしながら、土水圧が同じであれば発生するトンネル周方向の軸力Nは同じ大きさとなるので、縦リブ5が配置されている間隔、すなわち図10に示す中心角(トンネル周方向に間隔をおいて隣合う各縦リブの中心軸線をセグメントリング半径方向の中心に向かって延長した場合の交差部における各中心軸線で挟まれる角度)θの大小により曲げモーメントの大きさが異なり、小さな中心角となるように縦リブおよび継手板を配置すれば、主桁3のトンネル半径方向の桁高が同じであれば、主桁3の板厚は、トンネル周方向の軸力Nと、小さな曲げモーメントMに抵抗するために必要な板厚Tとすれば良い。
この図11左上図中の左に示すように、縦リブ5間隔が小さくなれば、M/Nは二次曲線的に小さくなり、トンネル周方向の軸力が卓越してくることが解る。
しかしながら、現実問題としては、中心角θが0度では、縦リブ5を配置することは不可能であるし、経済的な面からは縦リブ間隔の中心角θが大きく、縦リブ5の取り付け枚数が少ない方が有利である。
そこで、縦リブ間隔の中心角θをパラメータとして、主桁3の桁高さを一定として、トンネル周方向の軸力Nおよび曲げモーメント(M)に抵抗するために必要な主桁3の厚さを算定して求めた主桁3の鋼材重量(図12の右下がりの実線)、縦リブ5の取り付け手間を考慮して算定した換算重量に、縦リブ枚数を乗じて求めた縦リブ5の総鋼材重量(図12の右上がりの点線)、これら2つを加えて得られる換算重量(図12の上部プロット曲線)を算定した。
図12の実線は、縦リブ5の総重量の変化で、破線は主桁3の重量の変化であり、最上部のプロット線Lが換算鋼材重量を示している。
このように縦リブ間隔の中心角度θを10度から25度の範囲で設定すれば、経済的なコンクリート中詰めコンクリートを得ることができ、好ましくは縦リブ間隔の中心角度θを15度から20度の範囲とし、より好ましくは17度から18度の範囲で縦リブの間隔を設定することができる。
さらに、経済的なコンクリート中詰め鋼製セグメント9を得るためには、縦リブ5のトンネル半径方向の高さhrと板厚trを合理的に決定することが必要となる。
コンクリート中詰め鋼製セグメント9のスキンプレート6を介して、中詰めコンクリート8に作用する土水圧は、コンクリート中詰め鋼製セグメント9における中詰めコンクリート8中にも、トンネル周方向の軸力N,曲げモーメントMおよびせん断力Sを発生させる。しかしながら、中詰めコンクリート8には、土水圧は分布荷重として作用するので、中詰めコンクリート8中に発生する曲げモーメントおよびせん断力は、主桁3に比較すると小さな割合でありトンネル周方向の軸力Nが卓越する。
中詰めコンクリート8中に発生するトンネル周方向の軸力Nは、図13に示すように、縦リブ5および継手板4を挟み込むように作用する。また、縦リブ5および継手板4をトンネル半径方向で中心方向に向けて配置しておけば、中詰めコンクリート8が抜け出そうとすれば、トンネル周方向に隣合う縦リブ5相互がトンネル中心側に向かって接近するように傾斜しているくさび効果により、さらに大きなトンネル周方向の軸力Nが発生することとなる。
中詰めコンクリート8に圧縮力が発生すると同時に、中詰めコンクリート8は、セグメントリング2が縮まる方向(セグメントリングの半径が小さくなる方向)に変形するが、トンネル周方向の軸力Nで押さえ込まれた縦リブ5および継手板4も同様に引き込まれ、これら主桁3に溶接などの方法により固定された縦リブ5および継手板4に引き込まれて主桁3も半径方向に変形することとなる。
図16に示すように、縦リブ5の1枚が分担しなければならない分布荷重pの範囲は、縦リブ間隔の中心角度θに等しくなる。
コンクリート中詰め鋼製セグメント9の幅寸法が(B)で、トンネルを構成するセグメントリング2の外径が(D)の時、縦リブ1枚が主桁3に伝達する荷重(Pr)は、式6のようになる。
このようにして設定した縦リブ高さhrの縦リブ5の必要な板厚(tr)は、縦リブ5に使用する鋼材の種類に応じて決定される許容せん断応力度(τsa)を用いて、下記式9によりにより、合理的に決定できる。
の範囲で縦リブ5のトンネル半径方向の高さhrを決定できないことがある。
そのような場合には、縦リブ5の表面に凹凸を設けて、縦リブ5と中詰めコンクリート8の間の摩擦係数μ2を高める方法がある。そのような方法としては、縦リブ5に赤錆を発生させる方法,ブラスト処理を行う方法の他、縦リブ5の材料として、縞鋼板や床用鋼板などのような圧延時に凹凸が付けられた鋼板を用いる方法またはプレス加工により特殊な形状の凹凸を付与した鋼板を用いる方法などがある。
このような方法により縦リブ5と中詰めコンクリート8の間の摩擦係数を向上させ、実験により改善された縦リブ5と中詰めコンクリート8の間の摩擦係数(μ2)を求めた上で、下記式11の範囲で縦リブ5のトンネル半径方向の高さhrを決定することができる。
図17(a)(b)に示すように、縦リブ5の形状を断面T字状(図17bの場合)または断面L字状(図17aの場合)とした場合には、縦リブ5に設けられたフランジ10と中詰めコンクリート8の間のせん断(せん断力の伝達)を考慮して、縦リブ5のトンネル半径方向の高さを決定することが可能である。
縦リブ5のフランジ10とスキンプレート6の間の中詰めコンクリート8から縦リブ5に伝達できる荷重(Ps)を実験によるか、または縦リブ5のフランジ10とスキンプレート6の間の中詰めコンクリート8の断面積(Acr)と中詰めコンクリート8の強度に応じて設定されるコンクリートの許容せん断応力度(τca)を用いて、摩擦により縦リブ5から主桁3に伝達すべき荷重(Pr2)を算出する。
前記の計算による場合には、下記式(12)または(13)になる。
Ps=Acr×τca (12)
Pr2=Pr−Ps (13)
上式(12)(13)と中詰めコンクリート8から縦リブ5に摩擦により伝達可能な荷重(Pc)が等しくなるように縦リブ高さ(hr)を決定することが可能である。即ち、下記式14のようになる。
縦リブ5に貫通孔を設けることにより、縦リブ高さhrを低減する方法がある。
図18は、縦リブ5に貫通孔11を設けた状況を示しているが、貫通孔11の径および個数と位置は、任意に選択すればよいが、中詰めコンクリート8に使用される粗骨材の最大寸法の2倍程度の径以上にするのが好ましい。
このような貫通孔11に充填された中詰めコンクリート8が、縦リブ5に伝達可能な荷重Phを実験などにより求めるか、または貫通孔11の総面積(Ah)とコンクリートの種類により決定される許容せん断応力度(τca)を用いて、摩擦により縦リブ5から主桁3に伝達する荷重(Pr3)を下記式17により求めることができる。
Ph=Ah×τca (16)
Pr3=Pr−Ph (17)
図示の構造について簡単に説明すると、トンネル軸方向に間隔をおいて並行でトンネル周方向に延長するように配置される一対の主桁3と、トンネル軸方向に延長すると共にトンネル周方向に間隔をおいて並行な一対の継手板4と、前記継手板4間において、トンネル軸方向に延長すると共にトンネル周方向に並行な複数の縦リブ5と、各主桁3および継手板4並びに縦リブ5に溶接により固定される一枚のスキンプレート6で構成される曲率を有する鋼枠7の内部に、中詰めコンクリート8が充填されてコンクリート中詰め鋼製セグメント9が構成されている。
次に、本発明の実施例について、図19から図21を参照しながら説明する。
トンネル外径 Do=6450mm
セグメント分割数 6分割
セグメント桁高 Hs=225mm
セグメント幅 B=1500mm
縦リブ幅 Br=1462mm
主桁高さ H=187mm
スキンプレート板厚 ts=3mm
縦リブ高さ hr=158mm
コンクリート高さ hc=222mm
縦リブ配置間隔の中心角 θ=12度
縦リブと中詰めコンクリートの間の摩擦係数 μ=0.1
主桁の断面積 As =19mm×187mm×2 =7106mm2
コンクリートの断面積 Ac =(1500mm−19mm×2)×222mm
=324564mm2
鋼材のヤング率 Es=2.1×105 N/mm2
コンクリートのヤング率 Ec=1.4×104 N/mm2
EsAs=1.492×109N
EcAc=4.544×109N
前記の仕様値を式11の右辺に代入すると、次のようになる。
本実施例では、最小縦リブ高さhr=153mmであるので、余裕を考慮して縦リブ高さhrを158mmと設定した。
本実施例における外荷重p=543kN/m2であり、縦リブ5の必要板厚trを式6に代入して算定すると、次のような値になる。
また前記のように、本発明では、縦リブ5のトンネル半径方向の高さと板厚を、定量的にかつ経済的に算定して確実に設定することができ、コンクリート中詰め鋼製セグメント9の設計が容易になる。
1B Bセグメント
1K Kセグメント(キーセグメント)
2 トンネル覆工体(セグメントリング)
3 主桁
4 継手板
5 縦リブ
6 スキンプレート
7 鋼枠
8 中詰めコンクリート
9 コンクリート中詰め鋼製セグメント
10 フランジ
11 貫通孔
12 継手板補強リブ
13 継手アンカーリブ
14 鋼・コンクリート合成梁
15 長ナット
16 ボルトボックス
17 棒状部材
18 組立連結用鉄筋
19 脚部
20 雌ねじ管体
Claims (5)
- トンネル断面の曲率を有する部位の覆工体として使用されるコンクリート中詰め鋼製セグメントであって、一対の主桁と一対の継手板と複数の縦リブと一つのスキンプレートで構成される曲率を有する鋼枠の内部に、コンクリートを充填して得られるコンクリート中詰め鋼製セグメントにおいて、トンネル周方向に間隔をおいて隣合う各縦リブの中心軸線をセグメントリング半径方向の中心に向かって延長した場合の交差部における各中心軸線で挟まれる角度が10度〜25度の範囲とされ、かつ、継手板に隣接する縦リブと継手板との各中心軸線をセグメントリング半径方向の中心に向かって延長した場合の交差部における各中心軸線で挟まれる角度が、トンネル周方向に間隔をおいて隣合う前記縦リブ同士の配置角度と同じか、または小さい角度となるように継手板に隣接する各縦リブが配置されていることを特徴とするコンクリート中詰め鋼製セグメント。
- 請求項1のコンクリート中詰め鋼製セグメントにおいて、セグメントのトンネル半径方向の高さH、縦リブと中詰めコンクリートの間の摩擦係数μ、セグメントの幅B、縦リブの配置間隔の中心角θ、中詰めコンクリートの断面積Ac、中詰めコンクリートのヤング率Ec、主桁の断面積As、主桁のヤング率Esおよび中詰めコンクリートのトンネル半径方向の高さhcを用いて、縦リブのトンネル半径方向の高さhrが下記式で定められる範囲となるように縦リブのトンネル半径方向の高さhrを設定し、
かつ、前記縦リブの板厚trが、縦リブ1枚が主桁に伝達する荷重をPrとし、鋼材の種類により定まる許容せん断応力度をτsaとした場合に、下記式
を満足するように縦リブの板厚trを設定したことを特徴とするコンクリート中詰め鋼製セグメント。 - 請求項1または請求項2のコンクリート中詰め鋼製セグメントであって、縦リブの表面に凹凸を付与することにより、縦リブと中詰めコンクリートとの間の摩擦係数μを向上させたことを特徴とするコンクリート中詰め鋼製セグメント。
- 請求項1または請求項2の縦リブとして、断面T字状または断面L字状の縦リブを用いたことを特徴とするコンクリート中詰め鋼製セグメント。
- 請求項1または請求項2の縦リブに貫通孔を設けたことを特徴とするコンクリート中詰め鋼製セグメント。
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