JP2008223062A - 母材および溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の厚鋼板は、所定の化学成分組成を満足すると共に、下記(1)式の関係を満足し、且つ、円相当直径で0.05μm以下のTi含有窒化物が1mm2当り5.0×106個以上存在すると共に、REMおよび/またはCaと、TiとZrを含有する酸化物であって、円相当直径で0.2〜5μmの酸化物が1mm2当り500個以上存在するものである。
[Ti]×16[Si]×(12−40[C])<0.38(%)…(1)
但し、[Ti],[Si]および[C]は、夫々Ti,SiおよびCの含有量(質量%)を示す。
【選択図】なし
Description
[Ti]×16[Si]×(12−40[C])<0.38(%)…(1)
但し、[Ti],[Si]および[C]は、夫々Ti,SiおよびCの含有量(質量%)を示す。
[Ti]×16[Si]×(12−40[C])<0.38(%)…(1)
但し、[Ti],[Si]および[C]は、夫々Ti,SiおよびCの含有量(質量%)を示す。
Cは、鋼板の強度を確保するために欠くことのできない元素であり、また前述のごとく鋼の状態図におけるδ域の温度範囲を縮小させるのに有効な元素である。C含有量が0.03%未満では、鋼板の強度が確保できないばかりか、δ域の縮小効果が発揮されず、Ti含有窒化物が粗大化することになる。好ましくは0.04%以上であり、より好ましくは0.05%以上である。しかしながら、0.12%を超えると、溶接時にHAZに島状マルテンサイト相(MA相)が多く生成してHAZの靭性劣化を招くことになる。従ってCは0.12%以下(好ましくは0.10%以下)に抑える必要がある。
Siは、固溶強化によって鋼板の強度を確保するのに有用な元素であるが、過剰に含有させると、上記(1)式を満足していてもTiの活量を高めることによってTi含有窒化物の粗大化を招くことになる。こうした観点から、Si含有量は0.20%以下にする必要があり、好ましくは0.15%以下に抑える。尚、HAZに更なる高靭性が求められる場合には、Si含有量は0%であっても良い。
Mnは、鋼板の強度を確保する上で有用な元素であり、こうした効果を有効に発揮させるには、1.0%以上含有させる必要がある。好ましくは1.4%以上である。しかし、2.0%を超えて過剰に含有させるとHAZの強度が上昇し過ぎて靭性が劣化するので、Mn含有量は2.0%以下とする。好ましくは1.8%以下である。
不純物元素であるPは、粒界破壊を起こし易く靭性に悪影響を及ぼすので、その量はできるだけ少ないことが好ましい。靭性を確保するという観点からして、P含有量は0.03%以下に抑制する必要があり、好ましくは0.02%以下とする。しかし、工業的に、鋼中のPを0%にすることは困難である。
Sは、HAZの高温割れを助長する不純物であり、その量ができるだけ少ないことが好ましい。HAZ靭性を確保するという観点からして、S含有量は0.015%以下に抑制する必要があり、好ましくは0.008%以下とする。しかし、工業的に、鋼中のSを0%にすることは困難である。
Alは、脱酸元素として有用であるが、その含有量が過剰になるとHAZ靭性が劣化するので、0.01%以下に抑える必要があり、好ましくは0.008%以下とする。
Tiは、Nと微細な窒化物および酸化物を形成して母材およびHAZの靭性向上に寄与する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、Tiは0.015%以上含有させることが必要であり、好ましくは0.018%以上とする。しかし過剰に添加すると、Ti含有窒化物が粗大になってHAZの靭性を劣化させるため、0.08%以下に抑えるべきである。好ましくは0.060%以下とする。
Nは、高温で溶け残る窒化物(Ti含有窒化物)を形成することによって、HAZ靭性を確保する上で有用な元素である。N含有量を0.0060%以上(好ましくは0.0070%以上)とすることによって、高温で溶け残るTi含有窒化物が増加することになる。しかしN含有量が過剰になると、固溶N量が増大してHAZ靭性が劣化する。従ってNは0.0120%以下に抑える必要があり、好ましくは0.010%以下とする。
Bは、溶接時に加熱されたHAZが冷却される過程において鋼中のNと結合してBNを析出しHAZ靭性を改善させる。こうした効果を有効に発揮させるには、0.0010%以上含有させる必要がある。好ましくは0.0015%以上である。しかし、B含有量が過剰になると、HAZのベイナイト組織を粗大化させて靭性が劣化するので、0.0050%以下とする必要がある。好ましくは0.0040%以下とするのがよい。
Zrは、母材およびHAZの靭性向上に寄与する酸化物を構成する元素であり、これらが含有されることによって酸化物の微細化が図れることになる。こうした効果を有効に発揮させるには、Zrは0.0001%以上含有させる必要があり、好ましくは0.001%以上とする。しかし過剰に添加すると、酸化物が粗大になって母材およびHAZの靭性を劣化させるため、0.05%以下に抑えるべきである。好ましくは0.040%以下とする。
REM(希土類元素)およびCaは、上記Zrと同様に、母材およびHAZの靭性向上に寄与する酸化物を構成する元素であり、これらが含有されることによって酸化物の微細化が図れることになる。こうした効果を有効に発揮させるには、REMで0.0001%以上、Caで0.0003%以上含有させる必要がある。好ましくはREMで0.001%以上、Caで0.0005%以上である。しかしこれらの元素の含有量が過剰になると、介在物(酸化物)が粗大化して母材およびHAZの靭性が劣化するため、REMで0.05%以下、Caで0.02%以下とする必要がある。好ましくはREMで0.03%以下、Caで0.015%以下である。
Cu,NiおよびCrは、いずれもHAZ靭性に影響を与えず、焼入れ性を高めて鋼板の強度を高めるのに有効に作用する元素である。こうした効果を発揮させるには、これらを1種または2種以上(合計)で0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.15%以上とする。しかしこれらの元素の含有量が過剰になると、HAZにおけるMA相増加によってHAZ靭性が劣化するため、1.5%以下に抑えることが好ましい。より好ましくは1.0%以下である。
Mo,NbおよびVは、母材およびHAZの両方の強度を高めるのに有効に作用する元素である。こうした効果は、含有量が増加するにつれて増大するが、それらの効果をより有効に発揮させるためには、Moで0.1%以上、Nbで0.005%以上、Vで0.01%以上含有させることが好ましい。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰になると、HAZにおけるベイナイト組織を粗大化させて靭性が劣化するため、Moで0.5%以下(より好ましくは0.4%以下)、Nbで0.05%以下(より好ましくは0.030%以下)、Vで0.1%以下(より好ましくは0.08%以下)に抑えることが好ましい。
各鋼板のt(板厚)/4部位を、透過型電子顕微鏡(TEM)で、観察倍率6万倍、観察視野2×2(μm)、観察箇所5箇所の条件で観察した。そして画像解析によって、その視野中の各Ti含有窒化物の面積を測定し、この面積から各窒化物の円相当直径を算出した。尚、Ti含有窒化物であることは、EDX(エネルギー分散型X線検出器)によって判別した。そして、円相当直径が0.05μm以下となるTi含有窒化物の個数を、1mm2当りに換算して求めた。
島津製作所製「EPMA−8705」(商品名)を用いて倍率:1000倍で観察し、円相当直径が0.2〜5μmである析出物(酸化物)について成分組成を分析した。観察視野面積を1〜5cm2、分析個数を100個数とし、特性X線の波長分散分光により析出物中央部での成分組成を分析した。分析対象元素は、Al,Mn,Si,Ti,Zr,Ca,La,CeおよびOとした。また、酸化物の個数を、観察視野面積で割ることによって、1mm2当りに換算して求めた。
得られた試験板のt(板厚)/2部位から、圧延方向に対して直角の方向にJIS Z 2201の4号試験片を採取し、JIS Z 2242に準拠して、−40℃でシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギー(vE-40)を測定した。このとき3本の試験片について吸収エネルギー(vE-40)を測定し、その最低値を算出した。この最低値が200Jを超えるもの母材靭性に優れると評価した。
各鋼板のt(板厚)/4部位から、圧延方向に対して直角の方向にJIS Z 2201の4号試験片を採取し、大入熱溶接を模擬した熱サイクル試験を行い、HAZ靭性を評価した。このとき熱サイクル試験は、上記試験片を1400℃に加熱して60秒間保持した後、800〜500℃の温度範囲を500秒かけて冷却することにより、溶接入熱量が65kJに相当する熱サイクルを与えた。JIS Z 2242に準拠して、−40℃でシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギー(vE-40)を測定した。このとき3本の試験片について吸収エネルギー(vE-40)を測定し、その最低値を求めた。そして、vE-40の最低値が100Jを超えるものをHAZ靭性に優れると評価した。
Claims (3)
- C:0.03〜0.12%(「質量%」の意味。以下同じ)、Si:0.20%以下(0%を含む)、Mn:1.0〜2.0%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.015%以下(0%を含まない)、Al:0.01%以下(0%を含まない)、Ti:0.015〜0.08%、N:0.0060〜0.0120%、B:0.0010〜0.0050%およびZr:0.0001〜0.050%の他、REM:0.001〜0.05%および/またはCa:0.0003〜0.02%を含有すると共に、下記(1)式の関係を満足し、且つ円相当直径で0.05μm以下のTi含有窒化物が1mm2当り5.0×106個以上存在すると共に、REMおよび/またはCaと、TiとZrを含有する酸化物であって、円相当直径で0.2〜5μmの酸化物が1mm2当り500個以上存在することを特徴とする母材および溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板。
[Ti]×16[Si]×(12−40[C])<0.38(%)…(1)
但し、[Ti],[Si]および[C]は、夫々Ti,SiおよびCの含有量(質量%)を示す。 - 更に、Cu,NiおよびCrよりなる群から選ばれる1種以上の元素:合計で0.1〜1.5%を含むものである請求項1に記載の厚鋼板。
- 更に、Mo:0.5%以下(0%を含まない),Nb:0.05%以下(0%を含まない)およびV:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素を含むものである請求項1または2に記載の厚鋼板。
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