JP2008222888A - 無機充填材含有ポリエステルシート - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、真空成形等の加熱成形によって、外観と表面硬度、耐傷付き性を兼ね備えた成形体を得ることのできる無機充填材含有ポリエステルシート、及び該シートを熱成形した成形体の提供を目的とする。
【解決手段】(A)ポリアルキレンテレフタレートと、(B)無機充填材含有材を含有し、0〜150℃の間に結晶化由来の発熱ピークが観察され、等温結晶化のピーク時間が30〜120℃のいずれかの温度で1〜600秒であることを特徴とする、無機充填材含有ポリエステルシート及び該シートを加熱成形する成形体及びその成形方法を特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、無機充填材含有ポリエステルシートと該シートを加熱して成形する方法、及び熱成形した成形体に関する。詳しくは、特定の結晶化特性を有する無機充填材含有ポリエステルシートと、該シートを加熱して結晶化させる成形方法、及びその成形体に関する。該無機充填材含有ポリエステルシートは、成形性に優れ、真空圧空成形等の成形方法により容易に賦型することができ、優れた外観、及び高い表面硬度、耐傷付き性を有する成形体を得ることができる。
浴室、洗面所、トイレ、台所の洗面ボール、手洗いボールやカウンターなどの水周り建築部材あるいは、壁材、床材などの住宅資材、室内装飾材などのうち表面硬度が必要な建築部材には、金属、陶器類や、熱硬化性樹脂が多く使用されてきた。特に耐久性、耐加水分解性が必要な部品を安価で大量に供給するために、プレス成形、中継成型などの成型方法によって製造された熱硬化性樹脂製品が多く使用されている。しかし、リサイクル使用が困難な熱硬化性樹脂製品は、その廃棄処理方法や、生産時の作業環境に課題がある。 このため、熱硬化性樹脂材料に代わり、熱可塑性樹脂材料を用いて、平易な成型方法で製品を生産する方法が期待されている。
熱可塑性樹脂の中でも機械的強度、剛性、耐熱性、耐候性、耐薬品性等の点で、ポリエチレンテレフタレート(「以下PET」と略す)やポリブチレンテレフタレート(以下「PBT」と略す)に代表される熱可塑性ポリエステル樹脂は優れた性能を有しており、更にその機械的強度や剛性を向上させる手段として、無機充填材を配合する方法はよく知られている。
上記の用途分野に用いることができる樹脂材料として、例えば、加水分解安定性及び溶融粘度安定性に優れ且つセラミック類似の感触を有する高密度の熱可塑性樹脂組成物の提供を目的に、ポリエステル樹脂と特定のエポキシ化合物、触媒化合物、無機充填材とを配合する方法が開示されている。(特許文献1参照)
また、表面硬度と表面外観に優れた建材等に使用可能な樹脂シートを提供することを目的として、一種以上の結晶性樹脂と一種以上の非結晶性樹脂、酸化珪素を含有する無機充填材からなる特定の性能を有する樹脂シートが提案されている(特許文献2参照)。
また、絞り加工用の積層フィルムの構成成分として、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、エチレン系アイオノマー樹脂、無機フィラー、リン含有化合物からなる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる層が提案されている。(特許文献3参照)
特公平07−047685号公報 特開平10−219122号公報 特開平06−240118号公報
しかしながら、前述特許文献1のセラミック類似の感触を改善する方法においては、射出成形での実施例は示されているものの、本願が目的とする非晶性の樹脂シートについては何ら言及されていない。明細書中に、組成物をシート状に押出してから熱成形する、との記載があるが、実際には、PET樹脂は結晶化速度が遅いため、通常の成形加工中には結晶化せず、熱成形によってセラミック類似の高い表面硬度、耐傷付き性を得ることはできない。また、PBT樹脂は結晶化速度が非常に早いため、非晶性のシートを得る事はできず、従って真空成形などで加熱して成形することはできない。また両者をブレンドして使用した実施例においても、主たる構成成分であるPBT樹脂の結晶化特性を保持し、非晶性シートを得るのに十分な程度に結晶化速度を調整することは困難であり、高温で加熱して押出すのみで非晶性シートを得ることはできず、結晶性シートを得たとしても十分な熱成形性は達成できない。
また、特許文献2では、表面硬度と表面外観に優れた樹脂シートを目的としているが、結晶性樹脂は単に非結晶性樹脂の耐薬品性の改良を目的として配合されており、シートの加工性は非結晶性樹脂に負っている。したがって、本願の目的とする非晶性シートを加熱して成形し、結晶化させることとは全く目的を別とした発明である。
また特許文献3においては、ポリプロピレン樹脂積層フィルムに、PET樹脂、PBT樹脂と無機フィラー等の樹脂組成物からなる表面層を接着したフィルムが提案されているが、ポリエステルフィルム自体は結晶性フィルムであり、ポリプロピレン樹脂フィルムのプレス成形に追従して変形することを主旨としており、本願の目的とする非晶性シートを加熱して成形し、結晶化させることは何ら示唆されていない。
このように、これまでの従来技術では、成形性に優れ、真空圧空成形等の成形方法により容易に賦型することができ、優れた外観、及び高い表面硬度、耐傷付き性を有する成形体を得ることができる、特定の結晶化特性、つまり非晶性の無機充填材含有ポリエステルシートを提供することは出来なかった。
本発明は、真空成形等の加熱成形によって、外観と表面硬度、耐傷付き性を兼ね備えた成形体を得ることのできる無機充填材含有ポリエステルシート、及び該シートを熱成形した成形体の提供を目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究した結果、ポリアルキレンテレフタレート、無機充填材からなる、適切な結晶化速度を有する非結晶性シートとすることで、前記の課題を達成できることを見出し、本発明に到った。
即ち、本発明は、
(1) (A)ポリアルキレンテレフタレートと、(B)無機充填材を含有し、0〜150℃の間に結晶化由来の発熱ピークが観察され、等温結晶化のピーク時間が30〜120℃のいずれかの温度で1〜600秒であることを特徴とする、無機充填材含有ポリエステルシート。
(2) (A)ポリアルキレンテレフタレートの50〜100重量%がポリトリメチレンテレフタレートである、上記(1)記載の無機充填材含有ポリエステルシート。
(3) (B)無機充填材がウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウムの群から選ばれる一種以上の充填材であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の無機充填材含有ポリエステルシート。
(4) 無機充填材含有ポリエステルシートが(A)ポリトリメチレンテレフタレートを50〜100重量%含有する樹脂成分100重量部に対して(B)無機充填材を2〜300重量部含有することを特徴とする上記(2)記載の無機充填材含有ポリエステルシート。
(5) 無機充填材含有ポリエステルシートが(B)無機充填材を3〜200重量部含有することを特徴とする上記(4)記載の無機充填材含有ポリエステルシート。
(6) 上記(1)〜(5)記載の無機充填材含有ポリエステルシートを加熱成形して得られる無機充填材含有ポリエステル成形体。
(7) 表面硬度が、バーコル硬度20以上である上記(6)記載の無機充填材含有ポリエステル成形体。
(8) 0〜150℃の結晶化由来の発熱ピークが観察されないことを特徴とする上記(6)記載の無機充填材含有ポリエステル成形体。
(9) 上記(1)〜(5)記載の無機充填材含有ポリエステルシートを加熱して成形する工程を有する成形方法。
(10) 前記の加熱して成形する工程において、無機充填材含有ポリエステルシートを結晶化させることを特徴とする上記(9)記載の成形方法。
(11) 前記の加熱して成形する工程において、無機充填材含有ポリエステルシートを結晶化させて成形体の表面硬度を高めることを特徴とする上記(10)記載の成形方法。
(12) 前記無機充填材含有ポリエステルシートが真空圧空成形法により成形される上記(9)記載の成形方法。
(13) 前記の無機充填材含有ポリエステルシートを加熱して成形する工程が、無機充填材含有ポリエステルシートを30〜100℃に加熱する工程、及び、60〜180℃の金型を用いて成形する工程を有する上記(9)記載の成形方法。
(14) 前記の無機充填材含有ポリエステルシートを加熱して成形する工程が、60〜180℃に加熱した回転ロールに前記無機充填材含有ポリエステルシートを接触させて結晶化させる工程を有する上記(9)記載の成形方法。
本発明の無機充填材含有ポリエステルシートは、成形性に優れ、真空圧空成形等の成形方法により容易に賦型することができ、優れた外観、及び高い表面硬度、耐傷付き性を有する成形体を得ることができる。このため浴室、洗面所、トイレ、台所の洗面ボール、手洗いボールやカウンターなどの水周り建築部材あるいは、壁材、床材などの住宅資材、室内装飾材などのうち表面硬度が必要な建築部材に使用することができる。
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の無機充填材含有ポリエステルシートは、(A)ポリアルキレンテレフタレートと(B)無機充填材を含有する。
ここでポリアルキレンテレフタレートとは、酸成分がテレフタル酸から構成され、グリコール成分がアルキレン部の炭素数が2〜12までの脂肪族グリコール群、脂環式グリコール群、ポリアルキレングリコールの中から選ばれた少なくとも1種類のアルキレングリコールから構成されるポリエステルを示す。耐熱性、シート製造の容易性よりポリアルキレンテレフタレートの割合は樹脂成分の70〜100重量%であることが好ましく、80〜100重量%であることがより好ましく、90〜100重量%であることが更に好ましい。アルキレングリコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、1,1-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2-プロパンジオール1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらのポリアルキレンテレフタレートのうち、耐熱性、シート製造の容易性が優れている点を考慮するとアルキレングリコールとしてエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-プロパンジオールを用いた、PET、ポリトリメチレンテレフタレート(以下「PTT」と略す)、PBTが好ましい。
該ポリアルキレンテレフタレートには他の共重合成分を含有することも含む。共重合成分としては、主として用いた以外のアルキレングリコールや、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、3,5-ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、イソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のエステル形成性モノマーやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びこれらの共重合体などが挙げられる。シートを製造する際の熱安定性や成形体の耐熱性を高める為には、結晶融点や到達結晶化度を下げるランダム共重合となるような成分を30モル%以下とすることが好ましく、20モル%以下とすることがより好ましく、10モル%以下とすることが更に好ましい。
これらのポリアルキレンテレフタレートのうち、優れた加熱成形性を有し、真空成形などの加熱成形をすることにより優れた外観、高い表面硬度、耐傷付き性を有する成形体を得ることのできるシートという本発明の目的を容易に達成するためにはポリアルキレンテレフタレートの50〜100重量%がテレフタル酸を酸成分としトリメチレングリコール(1,3-プロパンジオールともいう)をジオール成分とした、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)であることが好ましい。これは、PTT固有の適度な結晶化速度や、化学的な反応性の低い飽和ポリエステルの一種であるというPTTの分子構造からくる化学的な安定性や、ジグザグの分子骨格構造からくる結晶構造に由来した表面特性と無機充填材含有材との相互作用によると考えられる。
本発明のポリアルキレンテレフタレートの重合度は固有粘度[η]を指標として0.5〜4dl/gの範囲であることが好ましい。固有粘度を0.5dl/g以上とすることでシートを製造することが容易になるとともに、優れた機械的強度、剛性と表面硬度、耐傷付き性を有するシート及び成形体とすることが容易になる。一方、4.0dl/g以下とすることで、シートに成形することが容易になる。固有粘度[η]は0.6〜3dl/gの範囲がより好ましく、0.68〜2.5dl/gの範囲が更に好ましく、0.75〜2dl/gの範囲が特に好ましい。
また、本発明のポリアルキレンテレフタレートは、カルボキシル末端基濃度が0〜80eq/トンであることが好ましい。このようにすることでシート及び成形体の耐薬品性、耐加水分解性、及び、耐熱性を高めることが容易になる。カルボキシル末端基濃度は0〜50eq/トン以下がより好ましく、0〜30eq/トン以下が更に好ましく、0〜20eq/kgが特に好ましく、低ければ低いほど良い。
また、同様の理由よりポリアルキレンテレフタレートのグリコール成分がエーテル結合を介して結合したグリコール二量体成分の含有率が0〜2重量%であることが好ましい。グリコール二量体成分としてはPTTの場合はビス(3-ヒドロキシプロピル)エーテル成分(構造式:-OCH2CH2CH2OCH2CH2CH2O-、以下「BPE」と略す)、PETの場合はビス(ヒドロキシエチル)エーテル成分(構造式:-OCH2CH2OCH2CH2O-、以下「BEE」と略す)などがある。これらは0.1〜1.5重量%であることがより好ましく、0.15〜1.2重量%であることが更に好ましい。
本発明の無機充填材含有ポリエステルシートは、必要に応じて更にポリアルキレンテレフタレート以外の有機物質(樹脂成分)を含むことができる。
このようなポリアルキレンテレフタレート以外の有機物質としては、環状や線状のポリアルキレンテレフタレートオリゴマー、ポリアルキレンテレフタレートを構成する酸成分やグリコール成分のモノマー及びこれらに由来する低分子量反応物、ポリアルキレンテレフタレート以外の樹脂、及び、各種添加剤が挙げられる。ポリアルキレンテレフタレート以外の樹脂としてはポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどの熱可塑性ポリエステル、熱硬化性のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などの熱可塑性ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリウレタン、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ポリフェニレンサルファイト、ポリフェニレンエーテル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、セルロースなど、及び、これらの共重合樹脂などが挙げられる。
中でも機械的特性の観点から、ポリカーボネート樹脂が好ましく用いられる。
ポリカーボネート樹脂は二価フェノールとカーボネート前駆体から溶融法または溶液法によって製造される。即ち、塩化メチレン等の溶剤中で公知の酸受容体、分子量調整剤の存在下、ニ価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応、またはニ価フェノールとジフェニルカルボネートのようなカルボネート前駆体とのエステル交換反応等によって製造することができる。ここで好ましいニ価フェノールとしてはビスフェノール類が挙げられ、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ちビスフェノールAが好ましい。また、フェノールAの一部または全部をニ価フェノールで置換したものであってもよい。
ビスフェノールA以外のニ価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルのような化合物を挙げることができる。これらのニ価フェノールは、ニ価フェノールのホモポリマーまたは二種以上のコポリマーであってもよい。
また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル等が挙げられるが、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、及びこれらの混合物が好ましく用いられる。また、本発明に用いられるポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(MW)は、5000から200000の範囲が好ましく、より好ましくは15000〜40000である。
また、表面硬度と耐傷付き性の観点から、エポキシ樹脂も好ましく用いることができる。具体的には、ビルフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合反応により製造されるいわゆるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、フェノールノボラックや線状高分子量クレゾールノボラックをグリシジル化した多官能エポキシであるノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ポリグリシジルアミン型エポキシなどが挙げられる。
好ましいエポキシ樹脂としては、耐薬品と樹脂への分散の観点からエポキシ当量150〜280(/eq.)のノボラック型エポキシ樹脂、またはエポキシ当量600〜3000(/eq.)のビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。より好ましくはエポキシ当量180〜250(/eq.)で分子量1000〜6000のノボラック型エポキシ樹脂、またはエポキシ当量600〜3000(/eq.)で分子量1200〜6000のビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
本発明の(B)無機充填材は、目的に応じて繊維状、粉粒状、板状の無機充填材から選ばれる一種以上の無機充填材を用いることができる。
繊維状無機充填材としては、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ウォラストナイト、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物などが挙げられる。
繊維状無機充填材の平均繊維長(L)、平均繊維径(D)、アスペクト比(L/D)については特に限定されないが、機械的特性の点から、平均繊維長が50μm以上、平均繊維径は5μm以上、アスペクト比は10以上であることが好ましい。また炭素繊維は、平均繊維長が100〜750μm、数平均繊維径が3〜30μm、アスペクト比が10〜100であるものが好ましく用いられる。さらに、ウォラストナイトは、平均繊維径が3〜30μm、平均繊維長が10〜500μm、アスペクト比が3〜100のものが好ましく用いられる。
粉粒状無機充填材としてはカーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土等の硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等の金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属の硫酸塩、その他、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末が挙げられる。
又、板状無機充填材としてはガラスフレーク、タルク、マイカ、各種の金属箔等が挙げられる。なお、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムは平均粒径が0.1〜100μmのものが好ましく用いられる。
本発明の無機充填材としては、外観、機械的強度の点から、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウムの群から選ばれる一種以上の無機充填材含有材が好ましい。最も好ましくはウォラストナイトである。
無機充填材の配合量は機械的強度、剛性、表面硬度の改良効果と、外観への影響の観点から、(A)ポリアルキレンテレフタレート樹脂を50〜100重量%含有する樹脂成分100重量部に対して、(B)無機充填材を2〜300重量部、より好ましくは3〜250重量部、更には5〜120重量部含有することが好ましい。
なお、前記必要に応じて配合される有機物質(樹脂成分)は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂を含有する樹脂成分100重量部中、0〜50重量部含有することができる。
これらの無機充填材の使用にあたっては、必要に応じて収束剤又は表面処理剤を使用することができる。例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物である。これらの化合物はあらかじめ表面処理又は収束処理を施して用いるか、又は材料調整時の祭同時に添加してもよい。
また本発明の無機充填材含有ポリエステルシートは、添加剤として、有機や無機の染料や顔料、艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、増白剤、不純物の捕捉剤、増粘剤、表面調整材などを用いることができる。
熱安定剤としては、5価または/および3価のリン化合物やヒンダードフェノール系化合物が好ましい。リン化合物の添加量は、粉体中のリン元素の重量割合として2〜500ppmであることが好ましく、10〜200ppmがより好ましい。具体的な化合物としてはトリメチルホスファイト、リン酸、亜リン酸、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト((チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrgafos168など)が好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物とは、フェノール系水酸基の隣接位置に立体障害を有する置換基を持つフェノール系誘導体であり、分子内に1個以上のエステル結合を有する化合物である。ヒンダードフェノール系化合物の添加量としては、粉体に対する重量割合として0.001〜1重量%であることが好ましく、0.01〜0.2重量%がより好ましい。
具体的な化合物としては、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrganox1010など)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrganox1076など)、N,N‘−ヘキサメチレンビス(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrganox245など)、N,N‘ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製のIrganox1098など)などが好ましい。もちろんこれらの安定剤を併用することも好ましい方法の一つである。
次に、本発明の無機充填材含有ポリエステルシートは、熱成形により容易に賦型することができ、また熱成形により結晶化させることにより、優れた外観を維持しながら、高い表面硬度、耐傷付き性を達成することができる。このために、本発明の無機充填材含有ポリエステルシートは熱成形により、非晶状態から結晶状態へ変化する特性を有し、且つ適度な結晶化速度を有する。
結晶状態の指標は入力補償型示差熱量計(以下「DSC」と略す)にて、シートを0℃で3分間保持した後、10℃/minの設定昇温速度にて0℃から260℃まで昇温して熱分析を行った際に観察される発熱ピークの大きさを用いることができる。発熱ピークが観察されるということは結晶化する余地がある、すなわち、結晶化度が低いことを示し、加熱成形により結晶化が可能であることを示す。
本発明の無機充填材含有ポリエステルシートは、0〜150℃の間に結晶化由来の発熱ピークが観察されることが好ましい。ここで発熱ピークが観察されるとは、熱量が1J/g以上のピークが観察されることを示す。成形性の観点から、熱量は5J/g以上であることが好ましく、8J/g以上であることが更に好ましい。上限は通常90J/g以下である。また、この無機充填材含有ポリエステルシートを加熱成形して得られる成形体は、熱量は3J/g以下であることが好ましく、1J/g以下で、発熱ピークが観察されないことが最も好ましい。
また、本発明の無機充填材含有ポリエステルシートを加熱成形により結晶化させるためには、等温結晶化のピーク時間が30〜120℃のいずれかの温度で1〜600秒であることが好ましい。またその温度範囲が連続して5℃以上あることが好ましく、10℃あることがより好ましく、20℃以上あることが更に好ましい。シートの等温結晶化ピーク時間とは、DSCを用いてシートを500℃/minの設定昇温速度にて所定温度まで加熱しそのまま保持した際に観察される、結晶化に由来する吸熱がピークを示す時間をいう。温度範囲は加熱する時間として30〜120℃の範囲にて5℃毎に結晶化ピーク時間を測定して求めることができる。等温結晶化のピーク時間は、シートの結晶化速度を示す指標であり、このようなシートとすることで、加熱成形が容易であるとともに、加熱成形で容易に結晶化し高表面硬度、耐傷付き性を達成することができる。
また、本発明の無機充填材含有ポリエステルシートを構成する樹脂組成物が適度な結晶化速度を有していることが好ましい。具体的には、樹脂組成物を溶融状態から液体窒素で急冷・固化し0℃で3分間保持した後、DSCを用いて500℃/minの設定昇温速度にて所定温度まで加熱しそのまま保持した際に観察される結晶化に由来する吸熱がピークを示す時間が、100℃〜150℃のいずれかの温度で、1〜60秒であることが好ましい。
このような無機充填材含有ポリエステルシートの熱特性や結晶化特性は、前記したポリアルキレンテレフタレートの組成を適宜選択したり、結晶核剤などの添加剤を添加することにより樹脂成分の結晶化特性を制御すること、及び、シート成形工程でシート製造装置より吐出させた溶融した樹脂組成物をシート状に成形する際に、温度制御したロール等にキャストして冷却固化したり、速やかに冷却水に浸漬し冷却固化するなど製造条件を制御することで達成できる。特にポリアルキレンテレフタレートとしてPTTを用いることで、本発明が目的とする無機充填材含有ポリエステルシートを作成することが容易な樹脂組成物を得る事ができる。
シート厚みは加熱成形が可能である限り特に制限はないが、表面硬度と加熱成形性の観点から、10μm〜5mmであることが好ましく、50μm〜3mmであることがより好ましい。
次に本発明の無機充填材含有ポリエステルシートの製造方法について説明する。
ポリアルキレンテレフタレートは、従来公知の方法により得ることができる。例えば、PTT組成物はテレフタル酸ジメチルとトリメチレングリコール、及び必要に応じて他の共重合成分を原料とし、チタンテトラブトキシドを触媒として常法によって、常圧、180〜260℃の温度でエステル交換反応を行った後、減圧下、220〜270℃に重縮合反応を行うことにより得ることができる。無機充填材含有ポリエステルシートを製造する上で必要な無機充填材、及び必要に応じその他の樹脂成分、添加剤等は、ポリアルキレンテレフタレートの重合時に添加する方法、重合後に一軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、ブラベンダーなどを用いて溶融混練して添加する方法、或いは、これらを組み合わせる方法などによって添加することができ、添加物の種類や量、要求される性能等により適宜選択することができる。
本発明の無機充填材含有ポリエステルシートは、公知の樹脂シートを製造する技術を適用することが出来る。例えば、(A)ポリアルキレンテレフテレート、(B)無機充填材、及び必要に応じその他の樹脂成分、添加剤等を一軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、ブラベンダーなどを用いて溶融混練して樹脂組成物を得た後、Tダイ、Iダイと呼ばれる直線状のスリットや、丸ダイと呼ばれる円周状のスリットを装備したシート製造装置を用いてシート状に押出し、シート成形用ロールを用いてシート化する方法、あるいは組成物を得る工程を省きシート押出機に直接樹脂成分、無機充填材等の必要な原料を供給することもできるし、または全組成物の一部を組成物化して供給することもできる。
本願の目的とする結晶化特性を有する無機充填材含有ポリエステルシートを得る為には、樹脂組成物をシート状に成形する際に、結晶化が抑えられるように、速やかに冷却して固化させることが好ましい。具体的には、ダイスより押出してから結晶化温度以下にシートを冷却する時間を60秒以内とすることが好ましく、より好ましくは40秒以内、更には20秒以内とすることが最も好ましい。このような冷却固化方法としては溶融物を、ポリアルキレンテレフタレート組成物の結晶化温度以下にコントロールした冷却ロール等の固体と接触させる方法、シートを水などの液体と接触させる方法、及び、これらを組み合わせた方法などが挙げられる。特に、生産の容易さから樹脂シートを冷却ロールに接触冷却固化させる方法が好ましく、ポリトリメチレンテレフタレートを50〜100重量%含有する樹脂組成物の場合、ロール冷却温度で60℃以下、好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下に制御したシート成形用ロールによって冷却固化することが好ましい。なお、冷却ロールは熱伝導の良好な金属製のものが好ましい。
本発明の無機充填材含有ポリエステルシートは加熱成形することにより成形体とすることができる。成形体は加熱成形の際に結晶化させることが好ましい。結晶化させることで表面硬度を高め、ひいては耐傷付き性を向上させることができる。結晶化の程度としては、DSCにて熱分析を行った際に0〜150℃の間に結晶化に由来する発熱ピークが5J/g以下、より好ましくは、3J/g以下、さらには観察されないことが最も好ましい。また、結晶化度としては10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
また、結晶化させた成形品の表面硬度がバーコル硬度20以上、鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、更にはバーコル硬度30以上、鉛筆硬度2H以上が好ましい。
このような成形体を加熱成形する方法としてはプレス成形やストレート成形、ドレープ成形、プラグアシスト成形、真空成形、真空圧空成形、圧空成形等が挙げられるが、このうち真空圧空成形がより好ましい。
成形を行う際は、まずシートを30℃〜100℃の温度にヒーター輻射あるいは加熱板等の手段により加熱することが好ましい。ポリアルキレンテレフタレート樹脂のガラス転移温度以上かつ結晶化開始温度以下に加熱制御することで、シートを結晶化させずに軟化させることが容易になり成形性や転写性が向上する。シート温度は温度は40〜80℃とすることがより好ましく、45〜70℃とすることが特に好ましい。
次に無機充填材含有ポリエステルシートは金型と接触させて成形するが、この際の金型温度は60℃〜180℃とすることが好ましい。本発明においては、無機充填材含有ポリエステルシートは成形性を確保するために賦形時においてほぼ非晶状態であるが、賦形後は表面硬度を確保するために、成形体を結晶化させることが重要である。そのためには金型温度を適切な温度範囲にコントロールして成形体を結晶化させることが望ましい。該成形体に十分な表面硬度を与えるために金型温度は60℃以上が望ましく、また成形後の金型からの離型性と取り出し後の変形抑制のためには180℃以下とすることが望ましい。金型温度は80〜160℃とすることがより好ましく、100〜150℃とすることが特に好ましい。成形した後に金型の温度を上げたり、外部より加熱したりしてシートを上記範囲の温度とすることも好ましい方法の一つである。
また、本発明において結晶化したフィルム、またはシート状の成形体を得るために、本発明の無機充填材含有ポリエステルシートを60〜180℃に加熱した回転ロールに接触させて結晶化させることで得ることもできる。この際、ロール表面を鏡面や梨地をはじめとした様々な模様とすることにより、所望の表面形状を有したフィルム、またはシート状の成形体を得ることができる。
本発明を実施例に基づいて説明する。以下の実施例中の測定値は以下の方法で測定した。
(1)固有粘度[η]
固有粘度[η]は、オストワルド粘度計を用い、35℃、o−クロロフェノール中での比粘度ηspと濃度C(g/100ミリリットル)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下の式に従って求めた。
[数1]
[η]=lim (ηsp/C)
C→0
(2)カルボキシル末端基濃度
ポリアルキレンテレフタレート1gをベンジルアルコール25mlに溶解し、その後、クロロホルム25mlを加えた後、1/50Nの水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定を行い、滴定値VA(ml)とPTT組成物が無い場合のブランク値V0より、以下の数2式に従って求めた。
[数2]
カルボキシル末端基濃度(eq/トン)=(VA−V0)×20
(3)グリコール二量体成分含有率
HFIP:CDCl3=1:1溶媒中、1H−NMR測定により求めた。測定機はFT−NMR DPX−400(Bruker社製)を用いた。
(4)結晶化由来の発熱ピーク、結晶化熱量
結晶化由来の発熱ピークの有無、及び、発熱ピーク面積は、シート又は成形体を、入力補償型示差熱量計(DSC)により0℃で3分間保持した後、10℃/minの設定昇温速度にて0℃から260℃まで昇温して熱分析を行って観察した。
(5)等温結晶化のピーク時間
等温結晶化のピーク時間は、DSCにより、シートまたは成形体を500℃/minの設定昇温速度にて所定温度まで加熱し、保持して、結晶化に由来する吸熱量がピークを示す時間を測定して求めた。
(6)加熱成形性
シートを真空圧空成形法にて口部内径200mm、底内部内径100mm、深さ30mmの皿状成形品を成形して、底部の形状転写性を評価した。
○:真空圧空成形にて、シートが金型形状に追従し賦型可能
×:真空圧空成形不可
(7)バーコル表面硬度
JIS K7060に準じシート、及び成形品表面のバーコル硬度を測定した。
(8)鉛筆硬度
JIS K5600 引っかき硬度(鉛筆法)に準じ成形品表面の鉛筆硬度を測定した。
また、実施例で用いた無機充填材は以下の通り。
ワラストナイト:NICO社製 NYGLOSS8
マイカ:レプコ社製 M−400
硫酸バリウム:堺化学工業社製 BMH−60
ガラス繊維:日本電気硝子社製 03T−187/PL
(実施例1)
固有粘度[η]が1.0dl/g、カルボキシル基末端基濃度15eq/トン、グリコール二量体BPE含有量0.5重量%のPTTを240℃に設定した二軸押出機を用いて溶融混練し、サイドフィーダーから無機充填材としてワラストナイトを組成物全体の40重量%の比率となるように添加し、樹脂組成物を得た。先端ノズルからストランド状に排出された組成物は、水冷後カッティングしペレットとした。該ペレットを除湿型乾燥機で120℃にて5時間乾燥した後、250℃に設定した単軸押出機に投入、Tダイより、30℃に設定した金属ロール上に押出して冷却し、Tダイ間隔を調整し厚さ0.5mmの無機充填材含有シートを得た。この時、引取り速度は3m/分、Tダイから金属ロール面の距離は100mm、吐出後回転ロールに接触するまでの時間は2秒だった。
該組成物の結晶化温度は68℃であり、シートが68℃以下に冷却されるまでの時間は15秒以内だった。この組成物中のPTT成分の固有粘度は0.95dl/g、カルボキシル基末端濃度が20eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であった。
このシートの結晶化熱量は9J/g、等温結晶化のピーク時間は70〜120℃の範囲で1〜600秒の間であった。バーコル表面硬度は20、鉛筆硬度Fであった。
得られた無機充填材含有シートを真空圧空成形法にて成形し、外径200mm、深さ30mm、底面部分の内径100mmの皿状成形体を得た。成形は無機充填材含有シートを55℃にヒーター輻射にて加熱した後、120℃に加熱したアルミニウム製金型に真空度720mmH、加圧圧力0.2MPaにて接触させて賦型し、そのまま120秒間保持して結晶化させることによって行った。得られた成形品の底面部分の表面硬度はバーコル硬度34、鉛筆硬度2Hであった。またDSC測定において0〜150℃の間に結晶化に由来する発熱ピークは観察されなかった。
(実施例2)
実施例1において、ニ軸押出機に投入する樹脂をPTT95:ポリカーボネート5の重量比に調整した以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を得、無機充填材含有シートを作成し、更に真空圧空成形を実施した。シートおよび成形品特性を表1に示した。
(実施例3)実施例1において、二軸押出機に投入する樹脂をPTT85:ポリカーボネネート12:エポキシ樹脂3の重量比に調整した以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を得、シートを作成し、更に真空圧空成形を実施した。シートおよび成形品特性を表1に示した。
(実施例4)
実施例3において、無機充填材をマイカに代えた以外は実施例1と同様に樹脂組成物を得、無機充填材含有シートを作成し、更に真空圧空成形を実施した。シートおよび成形品特性を表1に示した。
(実施例5,6)
実施例3において、無機充填材として、ワラストナイトに加えサイドフィーダーより更に、硫酸バリウムまたはガラス繊維を表1に示した配合比率で添加した以外は実施例1と同様に、樹脂組成物を得、無機充填材含有シートを作成し、更に真空圧空成形を実施した。シートおよび成形品特性を表1に示した。
(比較例1)
実施例1において金属製の回転ロールを冷却せず冷却固化させ、シートを得た。この際、回転ロールの温度は溶融物の持ち込む熱により65℃までに上昇し、シートが組成物の結晶化温度である68℃以下に冷却されるのに、3分かかった。得られたシートは0〜150℃の間に結晶化に由来する発熱ピークが観察されず、180℃に折り曲げると割れ、柔軟性に劣るものだった。既に結晶化が起こっているため、真空圧空成形をしようとしたが、割れを起こし、成形ができなかった。
(比較例2、3)
PTTの代わりに、比較例2では固有粘度[η]が0.85dl/g、カルボキシル末端基濃度が30eq/トンのPETを、比較例3では固有粘度[η]が1.0dl/g、カルボキシル末端基濃度が50eq/トンのPBTを用いた以外は実施例1と同様にして無機充填材含有シートを得た。なお、比較例2では押出機やTダイ等の温度を実施例1に比べて30℃高く設定した。
比較例2のシートは30〜120℃において結晶化が60秒では起こらず、実施例1と同様にして真空成形を実施したが、成形体での表面硬度の向上は起こらず、またその絶対値も低かった。この成形体をDSCにて0〜150℃の間の結晶化に由来する発熱ピークを再測定したところ、発熱ピークが観察され、結晶化が進んでいないことを確認した。
一方、比較例3に無機充填材含有シートは既に結晶しているため0〜150℃の間に結晶化に由来する発熱ピークが観察されず、180℃に折り曲げると割れる柔軟性に劣るものであった。真空圧空成形を行おうとしたが、割れを起こし、形成できなかった。
(実施例7)
実施例1で作成した無機充填材含有シートに、120℃に過熱した回転ロールを20秒圧着させて、結晶化をさせた結晶化シートを得た。シートのバーコル表面硬度は36、鉛筆硬度は3Hであった。また、この結晶化シートの表面に、#0000スチールウールのφ25円形パットに、1kgの荷重をかけ試料表面を10往復する傷付き性試験を実施した。試験の後、表面観察写真を図1に示した。
(比較例4)
比較例3で作成したシートを、実施例7と同様に、120℃に過熱した回転ロールを20秒圧着させた。このシートのバーコル表面硬度は23、鉛筆硬度はHであった。また、実施例7と同様に傷付き性試験を実施し、試験後の表面観察を行った。表面観察写真を図2に示した。実施例7で表面の傷付きが殆どないのに比較し、表面に多数の傷が発生し、耐傷付き性に劣った。
本発明の無機充填材含有ポリエステルシートは、成形性に優れ、真空圧空成形等の成形方法により容易に賦型することができ、優れた外観、及び高い表面硬度、耐傷付き性を有する成形体を得ることができる。このため浴室、洗面所、トイレ、台所の洗面ボール、手洗いボールやカウンターなどの水周り建築部材あるいは、壁材、床材などの住宅資材、室内装飾材などのうち表面硬度が必要な建築部材に使用することができる。
実施例7に説示する本発明による無機充填材含有シートの表面観察写真。 比較例3に説示する無機充填材含有シートの表面観察写真。

Claims (14)

  1. (A)ポリアルキレンテレフタレートと、(B)無機充填材含有材を含有し、0〜150℃の間に結晶化由来の発熱ピークが観察され、等温結晶化のピーク時間が30〜120℃のいずれかの温度で1〜600秒であることを特徴とする、無機充填材含有ポリエステルシート。
  2. (A)ポリアルキレンテレフタレートの50〜100重量%がポリトリメチレンテレフタレートである、請求項1記載の無機充填材含有ポリエステルシート。
  3. (B)無機充填材含有材がウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウムの群から選ばれる一種以上の充填材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無機充填材含有ポリエステルシート。
  4. 無機充填材含有ポリエステルシートが(A)ポリトリメチレンテレフタレートを50〜100重量%含有する樹脂成分100重量部に対して(B)無機充填材を2〜300重量部含有することを特徴とする請求項2に記載の無機充填材含有ポリエステルシート。
  5. 無機充填材含有ポリエステルシートが(B)無機充填材を3〜200重量部含有することを特徴とする請求項4に記載の無機充填材含有ポリエステルシート。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の無機充填材含有ポリエステルシートを加熱成形して得られる無機充填材含有ポリエステル成形体。
  7. 表面硬度が、バーコル硬度20以上であることを特徴とする請求項6に記載の無機充填材含有ポリエステル成形体。
  8. 0〜150℃間に結晶化由来の発熱ピークが観察されないことを特徴とする請求項6に記載の無機充填材含有ポリエステル成形体。
  9. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の無機充填材含有ポリエステルシートを加熱して成形する工程を有する成形方法。
  10. 前記の加熱して成形する工程において、無機充填材含有ポリエステルシートを結晶化させることを特徴とする請求項9に記載の成形方法。
  11. 前記の加熱して成形する工程において、無機充填材含有ポリエステルシートを結晶化させて成形体の表面硬度を高めることを特徴とする請求項10に記載の成形方法。
  12. 前記無機充填材含有ポリエステルシートが真空圧空成形法により成形される請求項9に記載の成形方法。
  13. 前記の無機充填材含有ポリエステルシートを加熱して成形する工程が、無機充填材含有ポリエステルシートを30〜100℃に加熱する工程、及び、60〜180℃の金型を用いて成形する工程を有する請求項9に記載の成形方法。
  14. 前記の無機充填材含有ポリエステルシートを加熱して成形する工程が、60〜180℃に加熱した回転ロールに前記無機充填材含有ポリエステルシートを接触させて結晶化させる工程を有する請求項9に記載の成形方法。
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