JP2008222485A - 被覆複合焼結体、切削工具および切削方法 - Google Patents

被覆複合焼結体、切削工具および切削方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、耐熱膜の剥離が発生せずかつ亀裂等の機械的損傷が立方晶窒化硼素焼結体に伝播し難い被覆複合焼結体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の被覆複合焼結体は、立方晶窒化硼素と結合材とを少なくとも含む複合焼結体を耐熱膜で被覆したものであって、上記立方晶窒化硼素の質量をMA、フッ硝酸に溶解しない上記アルミニウム化合物に含まれるアルミニウムの質量をMB、フッ硝酸に溶解する上記アルミニウム化合物に含まれるアルミニウムの質量をMCとした場合、質量比MC/MAが0.001以上0.1以下であり、かつ質量比MB/MCが0.1以上15以下であり、上記耐熱膜は、特定の化合物により形成され、かつその厚みが0.5μm以上12μm以下である被膜であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、難削鋳鉄材料の切削に関して、立方晶窒化硼素を高含有率で含む複合焼結体と耐熱膜との密着力を高めることによって優れた耐摩耗性を長時間に亘り持続させる被覆複合焼結体に関するとともに、それを含む切削工具および切削方法に関する。
立方晶窒化硼素(cBNと記すこともある)焼結体工具は、従来の超硬工具などの工具材料と比較し、立方晶窒化硼素焼結体の化学的安定性、鉄との低親和性や高硬度に起因する高能率で長寿命を達成できる材料的な高性能特性と、また切削工具などの塑性加工工具としての研削工具を大きく凌ぐ優れたフレキシビリティーや環境への負荷が小さい点が評価され、鉄系難加工性材料の加工において従来工具を置換してきた。
立方晶窒化硼素焼結体の材種は、大きく2つに分類され、1つは特許文献1に記載されているように立方晶窒化硼素の含有率が高く、立方晶窒化硼素同士が結合し、残部がCoやAlを主成分とする結合材からなるものや、特許文献2のような、極力立方晶窒化硼素以外の成分を含有しない焼結体(以下、高cBN含有率焼結体と記す)であり、もう1つは、特許文献3に記載されているように立方晶窒化硼素含有率が比較的低く、立方晶窒化硼素同士の接触率が低く、鉄との親和性の低いTiの窒化物(TiN)や炭化物(TiC)からなるセラミックスを介して結合されているものである(以下、低cBN含有率焼結体と記す)。
前者の高cBN含有率焼結体は、切り屑が分断され、切り屑でのせん断熱の発生し難い用途では、立方晶窒化硼素の優れた機械特性(高硬度、高強度、高靭性)と高熱伝導率により、抜群の安定性と長寿命を達成し、被削材中の硬質粒子との擦れによる機械的な摩耗や損傷が支配的な鉄系焼結部品や高速断続切削時の熱衝撃による損傷が支配的なねずみ鋳鉄の切削加工に適している。しかしながら、連続した切り屑により発生する多量のせん断熱により刃先が高温に曝される焼入鋼などの加工では、立方晶窒化硼素成分が鉄との熱的な摩耗により、従来の超硬工具やセラミックス工具よりも急速に摩耗が発達するため短寿命となる。
一方後者の低cBN含有率焼結体は、立方晶窒化硼素よりも、高温下での鉄との親和性の低いTiNやTiCセラミックスからなる結合材の働きにより、優れた耐摩耗性を発揮し、特に、従来の超硬工具やセラミックス工具では実用加工ができなかった焼入鋼加工において、従来工具の10倍〜数十倍の工具寿命を達成できる切削工具として、焼入鋼切削市場を開拓してきた。
近年では、特許文献4や特許文献5に記載されているように、立方晶窒化硼素焼結体にセラミックスコーティングを施すことにより、耐欠損性に優れた立方晶窒化硼素焼結体に耐摩耗性を付加することに成功し、焼入鋼加工において、飛躍的な長寿命化を実現しており、既に実用化されている。
また上述のとおり、鋳鉄の高能率切削では、高cBN含有率焼結体が実用化されている。近年、自動車エンジンの高性能化に伴い、軽量化を目的としたシリンダブロックのアルミ化が進んでいる。シリンダブロックのピストン摺動部分であるライナーについては強度と耐摩耗性に優れる鋳鉄が採用されるが、砂型鋳鉄より量産性に優れる遠心鋳造鋳鉄が採用されることが近年増加している。
遠心鋳造鋳鉄の鋳造方法である遠心鋳造法とは、ライナーの鋳造の際に、鋳型を回転させ遠心力を利用して中子を用いずに中空の鋳物を作る手法である。この遠心鋳造法では、原理上、鋳造物が薄肉であるため急冷することにより微細パーライト組織やデンドライト組織が生成されるため、薄肉かつ耐摩耗性に優れるライナーが製造されるようになり、難削化が益々進んでいる。このように、従来の高cBN含有率焼結体では耐摩耗性が不足し、満足する工具寿命が得られていないのが最近の実情である。
上記のような遠心鋳造鋳鉄の特徴として、通常の鋳物に比較し熱伝導率が低いことが挙げられる。通常の砂型を利用した鋳物の熱伝導率は、一般的に50W/m・K以上であるのに対し、遠心鋳造鋳鉄では50W/m・K以下である場合が多く、特に46W/m・K以下である場合には被削性が悪く、微細パーライト組織やデンドライト組織が低熱伝導率の原因と推定される。このような熱伝導率の低い遠心鋳造鋳鉄を、熱伝導率の比較的高い一般の砂型鋳鉄を切削するような切削速度500m/分を超える高速で切削した場合、遠心鋳造鋳鉄の熱伝導率が低いため刃先に発生したせん断熱や摩擦熱が被削材側に放出されずに熱伝導率の高い立方晶窒化硼素焼結体側に流入し、刃先温度の上昇を引き起こす。その結果、熱的な要因による摩耗が著しく発達し、砂型鋳鉄に比較し極端に短寿命になると推定される。
特公昭52−043486号公報 特開平10−158055号公報 特開昭53−077811号公報 特公平08−119774号公報 特許第3591457号明細書
本発明者らは、上記のような現状に鑑み、鋳鉄切削用途において、化学的安定性に優れ、かつ熱伝導率の低い耐熱膜を立方晶窒化硼素焼結体に密着力良く被覆することにより、切削時のせん断熱を遮断し立方晶窒化硼素焼結体への流入を防ぐ断熱膜を採用することで、上記のような遠心鋳造鋳鉄の高速切削において、耐摩耗性を大幅に向上させることを検討した。
まず、本発明者らは遠心鋳造鋳鉄FC250における摩耗メカニズムを解明すべく、市販の立方晶窒化硼素焼結体工具を用いた切削評価を実施し、工具損傷部について詳細に分析を行ったところ、摩耗部が平滑に摩滅している箇所と結合材(結合相と記すこともある)の破壊による立方晶窒化硼素粒子の脱落や立方晶窒化硼素粒子自体の破壊の集積による機械的損傷箇所を発見した。前者の損傷は主に切削時の温度が高温になる刃先稜線近傍とすくい面に発生していることから、熱的な要因によるものであり、後者の損傷は主に応力が集中する切れ刃境界部に集中していたことから、機械的な要因によるものと推定した。
次に低cBN含有率焼結体にTiAlNコーティングを施した市販の被覆cBN焼結体工具で同様の切削評価を実施したところ、切れ刃境界部でコーティング膜が早期に剥離し、目的とする性能は得られなかった。剥離箇所を詳細に分析したところ、セラミックス膜表面から立方晶窒化硼素焼結体の結合材部に向かって亀裂が無数に発生しており、その箇所から膜剥離と膜チッピングが生じていること、さらに立方晶窒化硼素粒子とセラミックス膜の界面に多くの剥離を見出した。
次に市販の高cBN含有率焼結体にTiAlNコーティングを施した被覆立方晶窒化硼素焼結体工具を作製し、同様の切削評価を実施したところ、切れ刃全体に亘りコーティング膜が早期に剥離し、目的とする性能は得られなかった。
上記の実験結果から以下の仮説に至った。
(1)立方晶窒化硼素焼結体の結合材とセラミックスコーティング間の密着力は立方晶窒化硼素の含有率が76体積%未満の場合、遠心鋳造鋳鉄の加工に耐えうるだけの強度は得られるが、結合材の機械的強度が立方晶窒化硼素粒子に比較し劣るため、セラミックスコーティングに発生した亀裂が立方晶窒化硼素焼結体に進展し刃先のチッピングを誘発し、所望の工具寿命が得られない。
(2)立方晶窒化硼素粒子とセラミックスコーティングの密着力は遠心鋳造鋳鉄の加工に耐えうるだけの強度が得られないため、立方晶窒化硼素の含有率が76体積%以上の市販の高cBN含有率焼結体にセラミックスコーティングを施すだけでは所望の工具寿命が得られない。
そこで、本発明は、鉄系材料の高強度難削材切削、例えば、遠心鋳造FC鋳鉄、球状黒鉛鋳造鋳鉄(FCD)、オーステンパード鋳鉄(ADI)、合金鋳鉄等の切削において、耐熱膜の剥離が発生せず耐摩耗性が長時間持続可能であり、かつ耐熱膜に亀裂等の機械的損傷が発生した場合にその損傷が工具基材である立方晶窒化硼素焼結体に伝播し難い被覆複合焼結体を提供することを目的とする。
上記仮説にしたがって、高cBN含有率焼結体とセラミックスコーティング(耐熱膜)の密着力を向上させる方策を種々検討した。上記仮説に従うと密着力に寄与するのは主に結合材であるが、高cBN含有率焼結体では相対的に結合材の含有率が低くなるため密着力が十分に得られない。
したがって少ない結合材で十分な密着力が得られる結合材を選択すべく、様々な複合焼結体と様々なセラミックスコーティング膜(すなわち耐熱膜)との極めて多数の組み合わせを検討する中で、耐熱膜との密着力に最も効果が高い物質はアルミニウム化合物であり、特にフッ硝酸に溶解するアルミニウム化合物を適量含有することが好適であるという知見を得、この知見に基づきさらに鋭意検討を続けた結果、ついに本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、立方晶窒化硼素と結合材とを少なくとも含む複合焼結体を耐熱膜で被覆した被覆複合焼結体であって、上記複合焼結体は、立方晶窒化硼素を76体積%以上99体積%以下含み、上記結合材は、アルミニウムの酸化物、酸窒化物、窒化物、硼化物およびこれらの固溶体からなる群より選ばれた少なくとも2種のアルミニウム化合物を含み、上記複合焼結体は、上記立方晶窒化硼素の質量をMA、フッ硝酸に溶解しない上記アルミニウム化合物に含まれるアルミニウムの質量をMB、フッ硝酸に溶解する上記アルミニウム化合物に含まれるアルミニウムの質量をMCとした場合、質量比MC/MAが0.001以上0.1以下であり、かつ質量比MB/MCが0.1以上15以下であるという質量比を有し、上記耐熱膜は、周期律表のIVa族元素(Ti、Zr、Hf等)、Va族元素(V、Nb、Ta等)、およびVIa族元素(Cr、Mo、W等)からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素と、Al、Si、および硼素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素と、炭素、酸素、および窒素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素と、を含む化合物により形成され、かつその厚みが0.5μm以上12μm以下である被膜であることを特徴とする被覆複合焼結体に係る。
また、上記アルミニウム化合物の少なくとも1種は、アルミニウムの酸窒化物であり、その平均粒径が0.1μm以上0.9μm以下であることが好ましい。
また、本発明は、上記の被覆複合焼結体を少なくとも一部に含む切削工具に関し、この切削工具は、切削に関与する表面の算術平均面粗さRaが0.08μm以下であることが好ましい。
また、本発明は、上記の被覆複合焼結体を少なくとも一部に含む切削工具を用いて鋳鉄である被削材を切削する切削方法であって、上記複合焼結体の熱伝導率をX(W/m・K)、被削材における切削部の熱伝導率をY(W/m・K)とした場合、Yが46以下であり、かつ比X/Yが2以下であることが好ましく、上記切削工具は、切削に関与する表面の算術平均面粗さRaが0.08μm以下であることが好ましい。
本発明の被覆複合焼結体は、耐熱膜の剥離が発生しにくく耐摩耗性が長時間持続可能であり、かつ耐熱膜に亀裂等の機械的損傷が発生した場合にその損傷が複合焼結体に伝播し難いという優れた効果を有する。このため、本発明の被覆複合焼結体は、鉄系材料の高強度難削材の切削、例えば、遠心鋳造FC鋳鉄、球状黒鉛鋳造鋳鉄(FCD)、オーステンパード鋳鉄(ADI)、合金鋳鉄等の特に耐摩耗性が要求される切削において、特に好適に用いること(すなわち長寿命を達成すること)ができる。
<被覆複合焼結体>
本発明の被覆複合焼結体は、立方晶窒化硼素と結合材とを少なくとも含む複合焼結体の表面を耐熱膜で被覆した構成を有している。
<複合焼結体>
本発明の複合焼結体は、立方晶窒化硼素と結合材とを少なくとも含むものである。このような複合焼結体は、立方晶窒化硼素と結合材の各原料粉末を加圧焼結することにより製造することができる。
<立方晶窒化硼素>
上記複合焼結体には、立方晶窒化硼素が76体積%以上99体積%以下含まれる。このように本発明の複合焼結体は、立方晶窒化硼素を高含有率で含むものである。立方晶窒化硼素が76体積%未満であれば、上記仮説に従い、相対的に結合材の含有率が高くなり複合焼結体の機械的強度が低下する。一方、立方晶窒化硼素が99体積%以上含まれると、耐熱膜との接着効果を担う結合材の含有率が相対的に小さくなることから耐熱膜の密着力が低下する。
<結合材>
上記結合材は、アルミニウムの酸化物、酸窒化物、窒化物、硼化物およびこれらの固溶体からなる群より選ばれた少なくとも2種のアルミニウム化合物を含む。上記結合材は、このようなアルミニウム化合物以外に他の化合物をさらに含むこともできる。このような他の化合物としては、たとえばタングステンを含む化合物、コバルトを含む化合物、チタンを含む化合物等(WC、W2Co216、Co33C、Co、CoWB、TiN、TiB2等)を挙げることができる。
上記アルミニウム化合物は、フッ硝酸に溶解しないという特性を有するアルミニウム化合物と、フッ硝酸に溶解するという特性を有するアルミニウム化合物とを含む。
ここで、フッ硝酸に溶解しないアルミニウム化合物とは、好ましくは主としてAl23であるが、これに限定されるものではない。また、フッ硝酸に溶解するアルミニウム化合物とは、好ましくは主としてAlN、AlB2、AlON、AlBON等であるがこれらのみに限定されるものではない。
上記Al23は、化学的に安定であるため熱的な要因による摩耗を抑制する効果が得られるが、耐熱膜のコーティング時の温度が500℃以上の場合であっても耐熱膜の構成成分との化学反応は進行し難く密着力を高める役割を担わない。
一方、AlN、AlB2、AlON、AlBON等は、耐熱膜のコーティング時の温度が500℃以上の高温時には、TiAl、TiAlSi、TiSi、CrAl、CrAlSi等の耐熱膜の構成成分との化学反応が促進される。その結果、結合材であるこれらのアルミニウム化合物と耐熱膜との界面において、微細なTiAlN、TiAlSiN、TiSiN、CrAlN、CrAlSiN、TiAlBN、TiAlON、TiAlBON等の化合物が生成し、両者の密着力を高める役割を担うと推定される。
つまり、フッ硝酸に溶解しないアルミニウム化合物(すなわちAl23)は、化学的安定性に優れ複合焼結体の耐摩耗性向上に寄与し、フッ硝酸に溶解するアルミニウム化合物は耐熱膜との密着力向上に寄与すると考えられる。
そして、上記のような特性は、上記複合焼結体の構成成分が特定の質量比を有する場合に極めて顕著に現れる。すなわち、複合焼結体に含まれる上記立方晶窒化硼素の質量をMA、フッ硝酸に溶解しない上記アルミニウム化合物に含まれるアルミニウムの質量をMB、フッ硝酸に溶解する上記アルミニウム化合物に含まれるアルミニウムの質量をMCとした場合、質量比MC/MAが0.001以上0.1以下であり、かつ質量比MB/MCが0.1以上15以下であるという質量比を複合焼結体が有する場合に、上記のような優れた特性が示される。
上記質量比MC/MAが0.001未満であると複合焼結体と耐熱膜との密着力を高める効果が得られず、質量比MC/MAが0.1を超えると複合焼結体の耐摩耗性が低下する。また、質量比MB/MCが0.1未満であるとフッ硝酸に溶解しないアルミニウム化合物がフッ硝酸に溶解するアルミニウム化合物に比較し相対的に少なくなることから摩耗抑制効果が得られない。質量比MB/MCが15を超えるとフッ硝酸に溶解するアルミニウム化合物がフッ硝酸に溶解しないアルミニウム化合物に比較し相対的に少なくなることから複合焼結体と耐熱膜との密着力を高める効果が得られない。
ここで、上記のようなアルミニウム化合物(フッ硝酸に溶解するものとしないものとの両者)に含まれるアルミニウムの質量(含有量)は次の手法により求めることができる。まず、複合焼結体を粉砕した粉末を、密閉容器中で、フッ硝酸(濃度60%以上65%未満の硝酸を2倍希釈したもの40mlと、濃度45%以上50%未満のフッ化水素酸10mlとを混合したもの)にて、120℃以上150℃未満で48時間処理を行う。次に冷却後、ろ紙を用いてろ過し、溶液成分(フッ硝酸可溶性)と残渣成分(フッ硝酸不可溶性)に分離する。上記フッ硝酸に溶解するアルミニウム化合物はこの溶液成分中に含まれ、フッ硝酸に溶解しないアルミニウム化合物はこの残渣成分中に含まれることになる。その後、この残渣成分に関しては、灰化/ばい焼後、炭酸カリウムナトリウムで溶解し、塩酸と硫酸を用いて抽出する。
そして、上記溶液成分についてはその溶液成分自体を、また上記残渣成分に関しては上記のようにして抽出された抽出溶液を、それぞれ別々にプラズマ発光分光分析(ICP分析)を行なうことにより、含有元素の定量分析を実施する。このようにして、フッ硝酸に溶解するアルミニウム化合物に含まれるアルミニウムの質量MC(上記溶液成分の分析結果)と、フッ硝酸に溶解しないアルミニウム化合物に含まれるアルミニウムの質量MB(上記残渣成分(抽出溶液)の分析結果)とが得られる。なお、このようなアルミニウムの質量の多寡は、それを含むアルミニウム化合物自体の多寡の指標となるものであるが、アルミニウム化合物の質量を直接求めないのはその測定が困難なことによる。
なお、立方晶窒化硼素はフッ硝酸に溶解しないため、上記残渣成分(抽出溶液)のICP分析から硼素(B)の含有量を測定することにより立方晶窒化硼素の質量MAを求めることができる。
また、上記のようなアルミニウム化合物の少なくとも1種は、アルミニウムの酸窒化物(AlON)であることが好ましく、その平均粒径が0.1μm以上0.9μm以下であることが好ましい。アルミニウムの酸窒化物(AlON)は、耐熱膜との密着力を高める効果が大きく、特にその平均粒径が0.1μm以上0.9μm以下である場合に特に優れた密着力の向上効果を得ることができる。AlONの平均粒径が0.1μm未満であると、耐熱膜との反応層が生成し難く十分な密着力が得られない。AlONの平均粒径が0.9μmを超えると、反応層の粒径も同様に粗大化するため、このような反応層(耐熱膜と密着する層)の強度が低下する。
<耐熱膜>
本発明の耐熱膜は、上記のような複合焼結体を被覆するものである。このような耐熱膜は、上記複合焼結体の全表面を被覆することが好ましいが、部分的に被覆されていない部分が含まれていても本発明の範囲を逸脱するものではない。
このような耐熱膜は、周期律表のIVa族元素、Va族元素、およびVIa族元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素と、Al、Si、および硼素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素と、炭素、酸素、および窒素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素と、を含む化合物により形成され、かつその厚みが0.5μm以上12μm以下である被膜である。
該耐熱膜を形成する化合物としては、例えば、TiAlN、TiAlMN(ここで、Mは周期律表のIVa族元素、Va族元素、およびVIa族元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示す)、TiAlSiN、TiAlON、CrAlON、TiSiN、TiAlCN、CrAlN、TiCrAlSiN、TiBN、TiBON、TiSiBN、TiAlBN等が挙げることができる。これらの化合物は、熱伝導率が45W/m・K以下であり、複合焼結体よりも熱伝導率が低いため切削時の断熱作用が得られる。
なお、このような耐熱膜としてAl23からなる被膜を採用した場合、断熱膜としての機能はある程度得られるものの、複合焼結体中に結合材として含まれるAl23と同様に化学的安定性に優れるため、複合焼結体との密着力が得られ難く、かつ強度と靭性に代表される機械的物理特性に劣るため、Al23からなる被膜自体に切削時の亀裂やチッピングが発生し、目的とする摩耗抑制効果が得られなくなるため好ましくない。
また、該耐熱膜の厚みが0.5μm未満であれば、所望の耐摩耗性が得られず、12μmを超えると膜剥離や膜チッピングが発生する。
なお、このような耐熱膜は、通常、上記のような複合焼結体が切削工具としての形状を有するように成形加工された後に、その表面を被覆するようにして従来公知の物理蒸着法により形成することができる。
<切削工具>
本発明の切削工具は、上記の被覆複合焼結体を少なくとも一部に含むものである。すなわち、切削工具の全体が上記の被覆複合焼結体で形成されていても良いし、切削工具の一部が上記の被覆複合焼結体で形成されていても良い。切削工具の一部が上記の被覆複合焼結体で形成される場合は、少なくとも切削に関与する表面が上記の被覆複合焼結体で形成されていることが好ましい。
そして、このような本発明の切削工具は、切削に関与する表面の算術平均面粗さRaが0.08μm以下であることが好ましい。Raが0.08μmを超える場合、切削時に被削材成分が刃先に溶着し易くなり、膜剥離や被削材の面粗さが悪化する場合がある。
<切削方法>
本発明の切削方法は、上記の被覆複合焼結体を少なくとも一部に含む切削工具を用いて鋳鉄(たとえば遠心鋳造FC鋳鉄、球状黒鉛鋳造鋳鉄(FCD)、オーステンパード鋳鉄(ADI)、合金鋳鉄等)である被削材を切削する切削方法であって、上記複合焼結体の熱伝導率をX(W/m・K)、被削材における切削部の熱伝導率をY(W/m・K)とした場合、Yが46以下であり、かつ比X/Yが2以下であることが好ましく、上記切削工具は、切削に関与する表面の算術平均面粗さRaが0.08μm以下であることが好ましい。
このような条件を採用する場合に、特に従来工具を用いた切削方法に比較し切削性能に優れる切削方法を提供することができる。一般的に、切削時に発生するせん断熱は、熱伝導率の高い物質に流入し易い。本発明の複合焼結体は立方晶窒化硼素の含有率が体積で76%以上と比較的高いため、その熱伝導率は70W/m・K以上であるのに対し、一般的に耐熱膜は15〜45W/m・K、鉄系被削材は60W/m・K以下である。
このため、切削時に発生するせん断熱に対しては最も熱伝導率の低い耐熱膜が断熱膜としての役割を担い、複合焼結体への流入を防ぐ。しかし、複合焼結体の熱伝導率が高い場合、切削時に発生するせん断熱が複合焼結体に流入する割合が増加する。そこで、複合焼結体の熱伝導率をX(W/m・K)、被削材における切削部の熱伝導率をY(W/m・K)とした場合、Yが46以下であり、かつ比X/Yが2以下の場合、切削時に発生するせん断熱が複合焼結体に流入し難いため刃先温度が上昇し、熱的要因による摩耗の割合が増加する。その結果、耐熱膜による摩耗抑制効果が顕在化する。X/Yが2を超えると、切削時に発生するせん断熱が複合焼結体に流入し易くなるため刃先温度の上昇が抑制され熱的要因による摩耗の割合が減少する。同様にYが46を超えると、切削時に発生するせん断熱が被削材に流入し易くなるため刃先温度の上昇が抑制され熱的要因による摩耗の割合が減少する。その結果、機械的要因に起因する摩耗の割合が増加するため、耐熱膜による摩耗抑制効果が小さくなる。
本発明の切削方法は、このように切削に関与する関係成分の熱伝導率を制御することにより、優れた切削性能を達成することに成功したものである。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
まず、複合焼結体の結合材の原料であるWC、Co、Al23、AlN、AlON、Al、Ti、TiN、Ti2AlNの微粉末を準備した。次に超硬合金製のポットおよびボールを用いて、これら結合材の原料と平均粒径3μmの立方晶窒化硼素粉末とを種々の配合比で混合し、真空炉で900℃、20分間保持し、脱ガスした。
ここで、上記の配合比は、以下の表1に示すように、複合焼結体中に含まれる立方晶窒化硼素の体積%(表1では「含有率」として表記)、結合材組成(表1ではX線回折(XRD)により分析した結果を示す)、質量比MC/MAおよび質量比MB/MCを種々変化させたことに各対応するようにして配合したものである。
次に、このような各混合粉末をMo(モリブデン)製容器に充填し、6.0GPa、1500℃で焼結することにより、実施例No.1−1〜No.1−13の13種の本発明の複合焼結体を得た。
なお、これらの複合焼結体に含まれるフッ硝酸に溶解しないアルミニウム化合物、およびフッ硝酸に溶解するアルミニウム化合物の各含有量は、上記Al、Al23、AlN、AlON等の混合割合を変えることで調整した。例えば、フッ硝酸に溶解しないアルミニウム化合物の割合を増やす場合はAl23粉末の割合を増やし、フッ硝酸に溶解するアルミニウム化合物を増やす場合はAlNの粉末またはAlNの粉末を酸素雰囲気中で熱処理しAlONの粉末を作製し、その割合を増やすなどすることにより調整した。そして、このようにして得られた複合焼結体に対して上記のようなICP分析を行なうことにより、質量比MC/MAおよび質量比MB/MCを算出した。
続いて、上記のように表1に示す各組成の複合焼結体を、ISO規格CNGA120408の切削加工用チップに加工した後、アークイオンプレーティング方式の物理蒸着(PVD)法により、各複合焼結体の表面に表1記載の各種耐熱膜を0.5〜12μmの厚みで被覆することにより、実施例No.1−1〜No.1−13の13種の本発明の被覆複合焼結体(ISO規格CNGA120408の切削加工用チップの形状を有する)を得た。
一方、比較用として、上記で採用した各条件を適宜変更することにより、比較例No.1−14〜No.1−22の9種の被覆複合焼結体(ISO規格CNGA120408の切削加工用チップの形状を有する)を得た。
そして、これらの各実施例および比較例の被覆複合焼結体(切削加工用チップの形状を有するため切削工具でもある)を用いることにより、以下の切削条件で切削評価した結果(15km切削後の摩耗量と損傷状況)を表1に合わせて示す。
(切削条件)
被削材:FC250遠心鋳造鋳鉄
(硬度:HB235、熱伝導率42W/m・K)
切削条件:速度vc=900m/min
送り量f=0.2mm/rev
切り込みap=0.3mm
乾式/湿式=湿式切削
表1より明らかなように、実施例の被覆複合焼結体は比較例の被覆複合焼結体に比べ、いずれも摩耗量が少なく損傷状況も正常摩耗であった。たとえば立方晶窒化硼素の含有率が76体積%未満の比較例No.1−16は、被覆複合焼結体の耐欠損性不足によりチッピングが発生している(表1中、15km切削後の摩耗量の項が空欄となっているものはチッピング等の発生により摩耗量が測定できなかったことを示す)。また、質量比MC/MAが0.001未満の比較例No.1−17は、フッ硝酸に溶解するアルミニウム化合物の含有量が少ないため、耐熱膜の密着力が不足し耐熱膜の剥離(すなわち膜剥離)が発生している。質量比MC/MAが0.1を超える比較例No.1−18は、フッ硝酸に溶解するアルミニウム化合物の含有量が過剰であるため、摩耗量が多くなっている。質量比MB/MCが0.1未満の比較例No.1−19はフッ硝酸に溶解しないアルミニウム化合物がフッ硝酸に溶解するアルミニウム化合物に比較し相対的に少なくなることから摩耗量が多くなっている。質量比MB/MCが15を超える比較例No.1−20はフッ硝酸に溶解しないアルミニウム化合物が過剰であるため、耐熱膜との密着力が得られず剥離が発生している。比較例No.1−21は耐熱膜がAl23であるため、膜自体の耐欠損性と複合焼結体への密着力が不足し、膜剥離とチッピングが発生している。
Figure 2008222485
<実施例2>
実施例1と同様の方法で、以下の表2に示す組成の複合焼結体を得た(実施例No.2−1〜No.2−5)。各複合焼結体は仕込み組成は同一であるが、焼結温度を1450℃〜1900℃の間で適宜選択し、結合材として含まれるアルミニウムの酸窒化物の粒径を変化させたものである。各複合焼結体のXRD分析では、いずれの複合焼結体でも立方晶窒化硼素以外に、WC、W2Co216、Co33C、Co、CoWB、Al23、AlON、AlN、AlB2が検出された。また、各複合焼結体のICP分析から算出した質量比MC/MAおよび質量比MB/MC、ならびに複合焼結体組織のSEM(電子顕微鏡)観察により測定したアルミニウムの酸窒化物の平均粒径を合わせて表2に示す。
続いて、上記のように表2に示す各組成の複合焼結体(「含有率」は立方晶窒化硼素の体積%を示す)を、ISO規格CNGA120408の切削加工用チップに加工した後、アークイオンプレーティング方式の物理蒸着(PVD)法により、各複合焼結体の表面に表2記載の耐熱膜を3.0μmの厚みで被覆することにより、実施例No.2−1〜No.2−5の5種の本発明の被覆複合焼結体(ISO規格CNGA120408の切削加工用チップの形状を有する)を得た。
そして、これらの各実施例の被覆複合焼結体(切削加工用チップの形状を有するため切削工具でもある)を用いることにより、以下の切削条件で切削評価した結果(15km切削後の摩耗量と損傷状況)を表2に合わせて示す。
(切削条件)
被削材:FC300遠心鋳造鋳鉄
(外周部に2本のV溝あり、硬度:HB220、熱伝導率45W/m・K)
切削条件:速度vc=600m/min
送り量f=0.1mm/rev
切り込みap=0.15mm
乾式/湿式=湿式切削
表2より明らかなように、アルミニウムの酸窒化物の平均粒径が0.1μm以上0.9μm以下の実施例No.2−1、No.2−2、No.2−3は正常摩耗であるのに対し、平均粒径がそれぞれ0.1μm未満、および0.9μmを超える実施例No.2−4、No.2−5は微小な膜剥離が発生した。
Figure 2008222485
<実施例3>
実施例1と同様の方法で、以下の表3に示す組成の複合焼結体を得た(実施例No.3−1〜No.3−5)。各複合焼結体のXRD分析では、いずれの複合焼結体でも立方晶窒化硼素以外に、WC、W2Co216、Co33C、Co、CoWB、Al23、AlON、AlN、AlB2が検出された。また、各複合焼結体のICP分析から算出した質量比MC/MAおよび質量比MB/MC、およびレーザーフラッシュ法により測定した複合焼結体の熱伝導率X(W/m・k)と被削材における切削部の熱伝導率Y(W/m・k)を合わせて表3に示す。
続いて、上記のように表3に示す各組成の複合焼結体(「含有率」は立方晶窒化硼素の体積%を示す)を、ISO規格CNGA120408の切削加工用チップに加工した後、アークイオンプレーティング方式の物理蒸着(PVD)法により、各複合焼結体の表面に表3記載の耐熱膜を3.0μmの厚みで被覆することにより、実施例No.3−1〜No.3−5の5種の本発明の被覆複合焼結体(ISO規格CNGA120408の切削加工用チップの形状を有する)を得た。
また、比較用として、耐熱膜を形成しない複合焼結体を上記と同様にして得た(比較例No.3−6〜No.3−8)。
そして、これらの各実施例の被覆複合焼結体および比較例の複合焼結体(切削加工用チップの形状を有するため切削工具でもある)を用いることにより、以下の切削条件で切削評価した結果(15km切削後の摩耗量)を表3に合わせて示す。
(切削条件)
被削材No.1:FC250遠心鋳造鋳鉄
(硬度:HB235、熱伝導率42W/m・K)
被削材No.2:FC250遠心鋳造鋳鉄
(硬度:HB230、熱伝導率46W/m・K)
被削材No.3:FC250丸棒
(硬度:HB220、熱伝導率58W/m・K)
切削条件:速度vc=900m/min
送り量f=0.2mm/rev
切り込みap=0.3mm
乾式/湿式=湿式切削
なお、被削材No.1〜No.3において切削条件は共通する。
表3より明らかなように、複合焼結体の熱伝導率をX(W/m・K)、被削材における切削部の熱伝導率をY(W/m・K)とした場合、比X/Yが2以下である実施例No.3−1は、比X/Yが2を超える実施例No.3−2より摩耗量が少ない。
また、耐熱膜による摩耗抑制効果に関して、複合焼結体が同一の実施例No.3−1と比較例No.3−6とを比較した場合、耐熱膜を施している実施例No.3−1は耐熱膜を施していない比較例No.3−6の約53%の摩耗量に低減されている。一方、実施例No.3−2と比較例No.3−7とを比較した場合、耐熱膜を施している実施例No.3−2は耐熱膜を施していない比較例No.3−7の約65%の摩耗量に低減されていることから、実施例No.3−2に比較して実施例No.3−1の方がより摩耗抑制効果が大きいと言える。
これは、複合焼結体の熱伝導率がより低い実施例No.3−1の方が、切削時のせん断熱が複合焼結体に流入しにくく、刃先の温度が上昇するため、熱的な要因の摩耗を抑制する効果のある耐熱膜の摩耗抑制効果が顕在化したものと推定される。また熱伝導率の高い被削材No.3を切削した場合、実施例No.3−5および比較例No.3−8のいずれも摩耗量は被削材No.1を切削した場合より大幅に少なく、また、耐熱膜による摩耗抑制効果も少ないことが分かる。これは、Yが46を超えており、かつ比X/Yが2を超えているため、複合焼結体と被削材の熱伝導率が共に高いため、切削時のせん断熱が効率的に放熱されることとなり、刃先温度の上昇が抑制された結果、熱的な要因の摩耗の割合が小さくなり、機械的な要因による摩耗の割合が大きくなったことが原因と推定される。
Figure 2008222485
<実施例4>
実施例1と同様の方法で、以下の表4に示す組成の複合焼結体を得た(実施例No.4−1〜No.4−3)。これら3種類の複合焼結体は同一組成を有する。
続いて、これらの複合焼結体を、ISO規格CNGA120408の切削加工用チップに加工した後、アークイオンプレーティング方式の物理蒸着(PVD)法により、各複合焼結体の表面に表4記載の同一組成の耐熱膜を3.0μmの厚みで被覆することにより、3種の被覆複合焼結体(ISO規格CNGA120408の切削加工用チップの形状を有する)を得た。
その後、このようにして得られた被覆複合焼結体に対してホーニング処理を施した。そして、このホーニング処理の条件を変更することにより切削に関与する表面(工具刃先の部分)の算術平均面粗さRaが互いに異なった実施例No.4−1〜No.4−3の3種の本発明の被覆複合焼結体(「含有率」は立方晶窒化硼素の体積%を示す)を得た。
なお、上記のホーニング処理は回転ブラシとダイヤモンド砥粒により行なった。また、上記複合焼結体に対するXRD分析では、いずれの複合焼結体でも立方晶窒化硼素以外に、WC、W2Co216、Co33C、Co、CoWB、Al23、AlON、AlN、AlB2が検出された。また、複合焼結体のICP分析から算出した質量比MC/MAおよび質量比MB/MC、ならびに切削に関与する表面(工具すくい面)の算術平均面粗さRaの測定値を合わせて表4に示す。
なお、この算術平均面粗さRaは、JIS B0601に規定の方法に準じて測定した。すなわち、測定長を0.8mmとし、切削に関与する表面の任意の三箇所についてRaを測定し、その平均値を表4に示している。
そして、これらの被覆複合焼結体(切削加工用チップの形状を有するため切削工具でもある)を用いることにより、以下の切削条件で切削評価した結果(15km切削後の摩耗量および損傷状況)を表4に合わせて示す。
(切削条件)
被削材:FC250遠心鋳造鋳鉄
(硬度:HB235、熱伝導率44.3W/m・K)
切削条件:速度vc=900m/min
送り量f=0.2mm/rev
切り込みap=0.3mm
乾式/湿式=湿式切削
表4より明らかなように、実施例No.4−1、No.4−2、およびNo.4−3のいずれも正常摩耗で、ほぼ同等の摩耗量であるが、切削に関与する表面の算術平均面粗さRaが0.08μmを超える実施例No.4−3では、実施例No.4−1およびNo.4−2と比較して刃先への被削材の溶着が多い結果となった。
Figure 2008222485
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (5)

  1. 立方晶窒化硼素と結合材とを少なくとも含む複合焼結体を耐熱膜で被覆した被覆複合焼結体であって、
    前記複合焼結体は、立方晶窒化硼素を76体積%以上99体積%以下含み、
    前記結合材は、アルミニウムの酸化物、酸窒化物、窒化物、硼化物およびこれらの固溶体からなる群より選ばれた少なくとも2種のアルミニウム化合物を含み、
    前記複合焼結体は、前記立方晶窒化硼素の質量をMA、フッ硝酸に溶解しない前記アルミニウム化合物に含まれるアルミニウムの質量をMB、フッ硝酸に溶解する前記アルミニウム化合物に含まれるアルミニウムの質量をMCとした場合、質量比MC/MAが0.001以上0.1以下であり、かつ質量比MB/MCが0.1以上15以下であるという質量比を有し、
    前記耐熱膜は、周期律表のIVa族元素、Va族元素、およびVIa族元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素と、Al、Si、および硼素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素と、炭素、酸素、および窒素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素と、を含む化合物により形成され、かつその厚みが0.5μm以上12μm以下である被膜であることを特徴とする被覆複合焼結体。
  2. 前記アルミニウム化合物の少なくとも1種は、アルミニウムの酸窒化物であり、その平均粒径が0.1μm以上0.9μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の被覆複合焼結体。
  3. 請求項1または2に記載の被覆複合焼結体を少なくとも一部に含む切削工具であって、
    前記切削工具は、切削に関与する表面の算術平均面粗さRaが0.08μm以下であることを特徴とする切削工具。
  4. 請求項1または2に記載の被覆複合焼結体を少なくとも一部に含む切削工具を用いて鋳鉄である被削材を切削する切削方法であって、
    前記複合焼結体の熱伝導率をX(W/m・K)、被削材における切削部の熱伝導率をY(W/m・K)とした場合、Yが46以下であり、かつ比X/Yが2以下であることを特徴とする切削方法。
  5. 前記切削工具は、切削に関与する表面の算術平均面粗さRaが0.08μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の切削方法。
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