JP2008221338A - テーパー摩擦撹拌溶接工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】摩擦撹拌溶接法に使用するための改良された摩擦撹拌溶接工具を提供する。
【解決手段】摩擦撹拌溶接工具は、軸の周りに回転可能で、肩部を規定する端部を有する支持体32と、支持体の前記端部から肩部の下方へ伸長する回転ピン36と、底部支持部材54にして、前記回転ピンが支持体と当該底部支持部材との間に配置されるように該ピンの先端部に連結される底部支持部材とを備える。底部支持部材は、前記軸の周りに回転可能で、かつ支持体の肩部40に向く底肩部56を含む。底部支持部材の底肩部及び支持体の肩部は、テーパーが付けられ、かつ少なくとも一つの溝60が形成された面を含む。
【選択図】図4
【解決手段】摩擦撹拌溶接工具は、軸の周りに回転可能で、肩部を規定する端部を有する支持体32と、支持体の前記端部から肩部の下方へ伸長する回転ピン36と、底部支持部材54にして、前記回転ピンが支持体と当該底部支持部材との間に配置されるように該ピンの先端部に連結される底部支持部材とを備える。底部支持部材は、前記軸の周りに回転可能で、かつ支持体の肩部40に向く底肩部56を含む。底部支持部材の底肩部及び支持体の肩部は、テーパーが付けられ、かつ少なくとも一つの溝60が形成された面を含む。
【選択図】図4
Description
本発明は、一般に、摩擦撹拌溶接に向けられ、更に詳しくは、摩擦撹拌溶接法に使用するための改良された工具に向けられる。
摩擦撹拌溶接は、回転非消耗性ピンと加工物との間に発生した熱と、変形され混合される加工物材料から塑性加工の結果として生じる熱とを含む摩擦熱を利用し、(複数の)加工品を共に溶接する方法である。発生した摩擦熱は、加工品材料を可塑化し、それらを固め、もともと二つであったものの一体型の材料を作り出す。摩擦撹拌溶接は、金属、プラスチック、及び、摩擦熱適用下で軟化し、固まって一体に結合されることとなる他の材料といった材料の種々の部分を共に接合するために使用される。摩擦撹拌溶接は、突合わせ接合及び角接合に一般に適用されているが、重ね接合及び他の種類の接合にも、並びに、与えられた材料におけるひび割れを除去する、すなわち閉じるため、及び、材料の二つの側部を共に接合し、管のような中空区域を形成するためにも適用され得る。
摩擦撹拌溶接用の先行技術装置は、一般に図1に示される。装置10は、軸線12の周りに回転可能であり、支持体14と、支持体14の先端から伸長する非消耗性ピン16とを含む。図1に示されるように、二つの加工品18及び20は、共に溶接される加工品の縁が、境界面22で直接接触して保持されるように整列される。回転装置10が加工品18及び20間の境界面22と接触するようにされると、回転ピン16は、図1に示されるように、加工品18及び20の両方の材料と接触するように強制される。ピン16は、支持体14の先端の平肩部24が加工品18及び20の上面と接するまで加工品18及び20の材料内に挿入される。装置10が該材料を通って移動されると、材料におけるピン16の回転、加工品18及び20の上面に対する平肩部24の摩擦、並びに、変形され混合される加工品材料から結果として生じる塑性加工は、加工品境界面22の付近に大量の摩擦熱を生成する。この摩擦熱は、回転ピン16及び肩部24の付近の加工品18及び20の材料を軟化し、可塑化領域を作り出し、かつ該材料の混合をもたらし、これは、硬化し次第、溶接部26を形成する。装置10が境界面22に沿って長手方向に移動されると、溶接部26は、加工品18及び20間の境界面22に沿って形成され、これにより、加工品18及び20を共に接合する。支持体14の平肩部24は、加工品からの軟化材料が上方に逃げるのを防ぎ、該材料を可塑化領域内へと押しやる。溶接が終了すると、装置10は取り去られる。
先行技術摩擦撹拌溶接工具は、溶接接合箇所にわたる加工品の厚さに最小の差異を要求する。従って、加工品の境界面における厚さのばらつきは、摩擦撹拌溶接法によって形成される溶接部の一体性を損ない得る。同様に、先行技術摩擦撹拌溶接工具は、材料を適切に可塑化するのに十分な摩擦熱を発生させるため、該工具の位置が加工品の上面を基準として正確に制御されることを要求する。十分な摩擦熱の発生に対する怠りも、溶接接合箇所の一体性を損なう。
加えて、先行技術ボビン型摩擦撹拌溶接工具では、ピン及び後肩部が加工品の後面を基準として正確に制御されなければならない。従って、該ピンは、前肩部、例えば摩擦撹拌溶接工具の支持体14に対して軸方向に独立に移動可能でなければならない。
本発明は、一又は複数の上記問題点を克服することに向けられる。
本発明によれば、摩擦撹拌溶接法を利用して(複数の)加工品同士を共に接合するための摩擦撹拌溶接工具が提供される。本発明の工具は、第1軸(第1軸線)の周りに回転可能で、かつ、肩部を形成する先端部を有する支持体を含む。回転可能ピンは、支持体の先端部から肩部の下方へと伸長する。支持体の肩部は、ピンに向かって下方へと延長するテーパーが付けられる少なくとも一の部分を含む。
本発明の一の形態において、肩部は、少なくとも一の溝が形成された面(表面)を含む。該少なくとも一の溝は、肩部の該面に形成された螺旋形状溝又は複数の同心状溝のいずれかを含み得る。
本発明の別の形態において、肩部は、実質的に扁平な区域(実質的扁平区域)と、ピンに向かって下方に延長するテーパーを有するテーパー区域とを含む。実質的扁平区域及びテーパー区域は同心状で、ピンから支持体の外側縁へと半径方向に配置される。好ましくは、実質的扁平区域はピンに隣接して設けられ、テーパー区域は、支持体の外側縁に隣接して設けられる。しかしながら、逆の配置が利用され得る。
本発明の更に別の形態において、肩部は、第1及び第2テーパー区域を含む。第1テーパー区域は、ピンに向かって下方に延長する第1のテーパーを有する。第1のテーパーは、第1軸に垂直な面を基準として第1の角度で形成される。第2テーパー区域は、これもピンに向かって下方に延長する第2のテーパーを有する。第2のテーパーは、第1軸に垂直な面を基準として、第1の角度より大きい第2の角度で形成される。第1及び第2テーパー区域は同心状で、ピンから支持体の外側縁へと半径方向に配置される。好ましくは、第1テーパー区域はピンに隣接して設けられ、第2テーパー区域は支持体の外側縁に隣接して設けられる。しかしながら、該区域の逆の配置が利用され得る。
本発明の更に別の形態において、肩部は、ピンに向かって下方に延長する第3のテーパーを有する第3テーパー区域を追加的に含む。第3のテーパーは、第1軸に垂直な面を基準として、第1及び第2の角度とは異なる第3の角度で形成される。第1、第2及び第3テーパー区域は同心状で、ピンから支持体の外側縁へと半径方向に配置される。好ましくは、第2の角度は、第1及び第3の角度の両方よりも大きく、第1テーパー区域はピンに隣接して設けられ、第3テーパー区域は支持体の外側縁に隣接して設けられ、また、第2テーパー区域は、第1及び第3テーパー区域間に設けられる。しかしながら、これら区域の逆の配置が利用され得る。
第3の角度は、第1の角度より大きいか又は等しい角度であり得る。本発明の更なる形態において、第1テーパー区域が実質上平らであるように第1の角度は実質上0°である。
本発明の追加の形態において、第1、第2及び第3テーパー区域の各々は、少なくとも一の溝が形成された面(表面)を含む。第1、第2及び第3区域の面の各々に形成された少なくとも一の該溝は、螺旋形状溝又は複数の同心状溝のいずれかを含み得る。一の形態において、該溝は、第1、第2及び第3区域の面それぞれに対し直角(垂直)に形成される。
本発明の別の実施形態において、摩擦撹拌溶接工具は、ピンの先端部に連結される底部支持部材を更に含み、ピンは支持体と底部支持部材との間に配置される。この実施形態において、本発明の工具は、ボビン型摩擦撹拌溶接工具として構成される。底部支持部材も第1軸の周りに回転可能で、支持体の肩部に向く底肩部を含む。底部支持部材の底肩部は、テーパーが付けられる少なくとも一の部分を含み、該テーパーは、ピンに向かって上方に延長する。
別の一の実施形態において、テーパー付けは、支持体の肩部及び底部支持部材の底肩が相互の鏡像のように形成されるように行われる。
別の実施形態において、底肩部は、少なくとも一の溝が形成された面を含む。該少なくとも一の溝は、底肩部の該面に形成された螺旋形状溝又は複数の同心状溝のいずれかを含み得る。
本発明の工具がボビン型溶接工具として構成されると共に、支持体、ピン及び底部支持部材は、一体に形成されるか、又は慣用の連結手段によって連結され得る。
本発明の目的は、接合される加工品の境界面における継ぎ目(接合)の不整合に対する許容誤差を改善した摩擦撹拌溶接工具を提供することである。
本発明の更なる目的は、熱発生特性が高められた摩擦撹拌溶接工具を提供することである。
本発明の更に別の目的は、溶接プロセスの操作特性が頑強である摩擦撹拌溶接工具を提供することである。
本発明の更に別の目的は、固定ピン−ロビン型溶接を容易化可能な摩擦撹拌溶接工具を提供することにある。
本発明の他の目的、側面及び利点は、明細書、図面及び特許請求の範囲の検討から得ることができる。
図2を参照して、本発明に従う摩擦撹拌溶接工具が一般に30で示される。摩擦撹拌溶接工具30は、軸線34の周りに回転可能な支持体32と、支持体32に取り付けられ、かつ、支持体32の端部38から伸長する非消耗性ピン36とを含む。支持体32の端部38は肩部40を規定し、ピン36は、支持体32の端部38から下方で肩部40から離れる矢印41方向に伸長する。一般に、支持体32は、断面が円形であり、ピン36は、ピン36も軸線34の周りに回転するように支持体32の中心に置かれる。しかしながら、ピン36は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、支持体32の中心から外され得る。
図2に示されるように、肩部40は、テーパーが付けられ、該テーパーは、支持体32の外側縁42から、軸線34に垂直な平面44を基準に角度θでピン36に向かって矢印41方向の下方に伸長する。加えて、テーパー肩部40は、肩部40の正面へと機械加工された複数の溝46を含む。溝46は、渦形(スクロール)肩部として摩擦撹拌溶接技術において一般に知られている。溝46は、螺旋形状溝又は複数の同心溝のように肩部40の表面へと機械加工され得、加えて、肩部40の表面に普通に機械加工され得る。
支持体32及びピン36は、一般に、接合される加工品材料より硬い材料から成る。図3に示されるように、ピン36は、接合領域、すなわち、接合される二つの加工品50及び52間の境界面48内に挿入され、肩部40は、加工品50及び52の上面に接触する。軸線34の周りの摩擦撹拌溶接工具30の回転は、摩擦熱の発生をもたらし、該摩擦熱は、摩擦撹拌溶接工具30(特にピン36及び肩部40)と加工品50及び52との間に発生した熱と、変形され混ぜられる加工品材料からの塑性加工の結果として発生した熱とを含み、加工品50及び52を境界面48の近くの領域で可塑化させる。摩擦撹拌溶接工具30が境界面48に沿って移動されると、加工品50及び52は可塑化され、次に硬化して、溶接部を形成し加工品50及び52を共に接合する。摩擦撹拌溶接法は、金属及び合金、MMCs(金属基複合材料)のような強化金属、熱可塑性型材料を含む広範囲の材料を接合するために利用されている。摩擦撹拌溶接は、一般に、突合わせ接合及び角接合に適用されるが、該方法は、重ね接合及び他の種類の接合、並びに、材料のひび割れを閉じるために使用され得る。
本発明の工具30のテーパー肩部設計は、図3から理解され得るような、先行技術摩擦撹拌溶接工具を上回るいつくかの利点を提供する。第1に、本発明の設計は、可変有効直径Deを有する溶接工具30をもたらす。平肩部を有する先行技術摩擦撹拌溶接工具は、材料の厚さ、ピンの直径及び他の因子に依存する異なる固定肩部直径によって一般に構成される。しかしながら、本発明の工具30のテーパー肩部設計は、加工品50及び52への溶接工具30の貫入深さ変えることにより、可変有効直径Deを簡単に作り出すことができる。加工品50及び52への工具30の貫入深さを増すと、有効直径Deが拡大する。同様に、加工品50及び52への工具30の貫入深さを減らすと、有効直径Deが縮小する。この有効直径Deの増減は、溶接工具30が境界面48に沿って移動される際の「進行中に」行われ得る。
テーパー肩部設計の第2の利点は、溶接工具30が、溶接部の品質の変化をほとんど又は全く伴わずに、少なくとも溶接部の上方部分に関する限り、材料厚さのばらつき、又は、加工品50及び52への工具30の突っ込み深さ(貫入深さ)の計画されていないばらつきを吸収することである。一般に、先行技術摩擦撹拌溶接工具では、溶接工具と加工品の表面との間の空間的関係が非常に小さい許容誤差内に維持されることが極めて重要である。加工品材料が接合境界面に沿う厚さを万一減らしたら、その際、従来摩擦撹拌溶接工具の肩部は、加工品の上面から持ち上がり、結果として生じる溶接部に即座のかつ大きな欠陥をもたらし得る。他方、加工品の厚さが通常のばらつきの結果、接合境界面に沿って大きくなるなら、従来溶接工具の肩部の前縁が加工品の表面下に突っ込み得、過剰なばりをもたらし、また、加工品の厚さを縮小する。しかしながら、図3から理解され得るように、たとえ加工品50、52厚さTwが増減しても、本発明の工具30は、加工品50及び52の上面に対する工具30の貫入深さに応じる可変有効肩部直径Deで簡単に続行する。有効直径Deは、加工品の厚さTwに比例して増減する。本発明の工具30の適切な操作を保証するため、操作者は、ピン36の端部と金床(図示せず)との間の間隙を維持すること、及び、テーパー肩部40の長さが、加工品50及び52の厚さにおけるどのような通常の又は設計上のばらつきをも吸収するのに十分であることを確保することのみをしなければならない。
本発明の設計の第3の利点は、肩部40に形成された溝46によって引き起こされる可塑化材料の流れ及び摩擦熱の増加である。通常、先行技術摩擦撹拌溶接工具において、渦形溝は、溶接工具の進行中のピンによって「けり上げられる」加工品材料のみによって与えられる。本発明のテーパー肩部設計では、肩部40の下向きのテーパーが、加工品材料を全有効直径Deにわたる進行中の溝へと押しやり、加工品材料の撹拌及び該材料を可塑化する発生摩擦熱において該渦形をより一層有効にし、より良い全体的な溶接部を形成する。角度θは実施的に任意の角度であり得るが、一形態において角度θは約1°〜約60°である。しかしながら、他のテーパー角度が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなしに企図され、利用され得る。
最終的に、本発明のテーパー肩部設計の追加の利点は、それが、自動的に反応する溶接工具としても知られている一般に30’で示されたボビン型摩擦撹拌溶接工具を簡易化することである。図4において、図2と同様の構成要素が同じ参照番号で示され、一方、変更を必要とする構成要素は、プライム符号(’)を用いて示される。
図4に示された溶接工具30’は、ピン36’の先端部に連結された底部支持部材54を含む。底部支持部材54は、ピン36’が支持体32と底部支持部材54との間に配置されるように、支持体32から離隔され、かつ支持体32の肩部40を向く底肩部56を含む。底肩部56もテーパーが付けられ、該テーパーは、底部支持部材54の外側縁58から矢印59方向の上方に、軸線34に垂直な面44から角度φでピン36’に向かって延長する。加えて、底肩部56は、その表面に、上方体32の肩部40に機械加工された溝と同様に機械加工された溝60を含む。
一形態において、角度θ=角度φのように肩部40及び56のテーパー角度は等しい。この場合、工具30’の肩部40及び底肩部56は、相互の鏡像のように形成される。しかしながら、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、異なるテーパー角度θ及びφが、肩部40及び56にそれぞれ利用され得る。
図4に示された本発明の工具30’は、ことによると摩擦溶接法の最初の始動時を除き、支持体32と底部支持部材54との間の積極的な相対運動関係を必要としない。ピン36’は、支持体32及び底部支持部材54の両方に、これらの間に発生する相対運動を全く伴わずに、固定して取り付けられ得る。これは、テーパー肩部40及び56によって可能となり、これは、加工品50及び52への貫入深さにほとんど関係なく溶接を成し遂げ得る。支持体32及び底部支持部材54は、加工品厚さTwのばらつきを吸収するため、ピン36’に対して移動するように作動される必要はない。図4に示された固定肩部ボビン工具30’は、ピン36’の中央を、おおよそ加工品厚さTwの中央に維持するため、簡単に制御され得る。加工品厚さTwの小さなばらつきは、テーパー肩部40及び56によって自動的に吸収され、結果として生じる溶接部にはほとんど又は全く欠陥がもたらされない。支持体32、ピン36’及び底部支持部材54は、一体的に形成されるか又は慣用の連結手段を介して連結され得る。
本発明による摩擦撹拌溶接工具30は、試験され、良好な溶接部を生成することが分かった。一の溶接部は、全長にわたって厚さに0.03インチ(0.762mm)のばらつきを有する材料に形成された。従来の摩擦撹拌溶接工具を利用すると、この厚さのばらつきは、良好な溶接接合を生成することを困難にするであろう。しかしながら、本発明の摩擦撹拌溶接工具30は、単に不定溶接クラウン幅を有する溶接部を生成し、該幅は局所的な材料厚さに依存する。工具30の突入深さは、ピン36端部と金床との間に適切な間隙を与えるであろう値に設定され、溶接工具30のテーパー肩部外形は、該溶接部の長さに沿って加工品厚さを変えることに応じ、不定幅の溶接部を生成した。0.03インチ(0.762mm)の不整合(一方の側部が他方より厚い)を有する加工品の追加試験も図示され、本発明の溶接工具30は、該不整合がテーパー区域の垂直長さを超えなければ、いかなるばり又は放出された材料をも作り出すことなく、そのような不整合を吸収することができる。
図5を参照して、これは、溝46が省かれた図3の溶接工具30であり、溶接工具30のテーパー肩部は、種々のパラメーターに基づいて異なる有効直径Deをもたらすことができる。図5に示されるように、テーパー肩部40は、外径Doと内径Diと有効直径Deとを有し、有効直径Deは、テーパー肩部40と加工品50及び52の上面との境界によって定義される。テーパー肩部40は、突入深さpだけ加工品50及び52内へと達し、また、垂直長さΔl及びテーパー角度θを有する。これらのパラメーターを用いて、テーパー肩部40の有効直径Deは次のように計算され得る。
式1と式2を組み合わせると、テーパー肩部によってもたらされた有効直径Deは、次式によって計算され得る。
摩擦撹拌溶接工具30が、有効直径Deに大きな変化がなく、突入深さpに大きな変動を有する加工品材料に効果的な溶接をもたらすことができるようになるため、大きい垂直テーパー長Δlを有する肩部40で工具30を構成することが一般に望ましいであろう。この性質は、突入深さpに対する有効直径Deの微分をとることによって理解され得る。
一般に、内径Diは、本発明の工具30の外形(断面)では、ピン36の直径又はそのシャンク(軸部)の直径に固定される。従って、突入深さpに対する有効直径Deの変動を低減するため、式4から、大きい垂直長さΔlを有することがこの目的を達成することは明らかである。
他の工具外形が、一般テーパー肩部概念から派生され得る。図5と同様な構成要素が同じ参照番号で示された図6に示されるように、支持体64を有する摩擦撹拌溶接工具62が図示され、支持体64は、ピン36から支持体64の外側縁70まで延長する第1及び第2同心肩部区域66及び68を含む。第1肩部区域66は、実質上扁平なものとして図示される一方、第2肩部区域68はテーパーが付けられ、該テーパーは、支持体64の外側縁70からピン36に向かって、軸線34に垂直な面44を基準にある角度で下方に延長する。第2肩部区域68は、比較的大きいテーパー角度α、従って比較的大きい垂直テーパー長Δlを有する。図6の二重区域設計は、ピン36の溶接効果を損なうであろうため、非常に長い垂直テーパー長Alを有することが、特に薄い加工品にとって望ましくないということを考慮に入れる。しかしながら、工具62の有効直径Deにおいて突入深さpの変動(ばらつき)の影響を減じるため、急勾配のテーパー角度、従って比較的長い垂直テーパー長Alを有することが望ましい。図6に示された断面図はこれを実現する。角度αは実質的に任意の角度であり得るが、一の形態において、該角度αは約1°〜約60°である。しかしながら、本発明の精神及び目的の範囲から逸脱することなく、他のテーパー角度が企図され、また利用され得る。加えて、第1肩部区域66は、実質上扁平なものとして図6に示され、これも、第2肩部区域68のテーパー角度よりも一般に小さい角度でピン36に向かって下方にテーパーが付けられ得る。更に、図6には示されないが、肩部区域66及び68の一方又は両方は、それぞれの表面へと機械加工された螺旋状又は同心状の溝(図示せず)を含み得る。更に、該溝は、これらが各区域66及び68のそれぞれの表面に対し直角であるように機械加工され得る。
別の工具断面が、図5と同様な構成要素が同じ参照番号で示されて図7に例示され、これは、浅いテーパー断面が突入力において大きい変動(ばらつき)をもたらすという事実から派生する。これは、過度の突っ込みを防ぐための負荷制御溶接状況において有益であろう。図7に示された摩擦撹拌溶接工具72は、そのような使用のために設計される。工具72は、ピン36から支持体74の外側縁82へと半径方向に延長する第1、第2及び第3同心肩部区域76、78及び80を有する支持体74を含む。各肩部区域76、78及び80は、テーパーが付けられ、該テーパーは、軸線34に垂直な面44を基準としたあるテーパー角度でピン36に向かって下方に延長する。図7に示されるように、第1肩部区域76はテーパー角度βを含み、第2肩部区域78はテーパー角度γを含み、また第3肩部区域80は、テーパー角度ωを含む。一般に、角度γは、角度ω又は角度βのいずれかよりも大きい。第3肩部区域80のテーパー角度ωは、過度の突っ込みから保護するため、一般に比較的小さい。種々の要因に応答して溶接工具72の突入深さが増加するにつれ、小テーパー肩部区域80は、加工品50及び52と接触する肩部区域80の領域が拡大するため、突入力の要求が突入深さに対して急速に増えるようにする。この増加は、肩部区域80における小さいテーパーのため、突入深さの小さい変化にわたって発生し、結果として、より安定した貫入深さをもたらす。テーパー角度ω及びテーパー角度βは、種々の用途に応じて、互いに等しくても又は異なってもよい。更に、第1肩部区域76は、図7にテーパーが付けられて示されるが、実質上平坦であり得る。加えて、各肩部区域76、78及び80は、そこに機械加工される螺旋状又は同心状の溝(図示せず)を含み得る。更に、該溝は、各区域76、78及び80のそれぞれの面に対し直角に機械加工され得る。
図7に示された溶接工具72の種々のテーパー区域の構成を容易にするため、そのような工具は、図8に示されるような二つの部品から構成され得る。図8に示された溶接工具72’は、第1及び第2区域84及び86を含む支持体74’を含む。第1区域84は、肩部区域76及び78を含むのに対し、第2区域86は、肩部区域80を含む。第1及び第2区域84及び86は、慣用に取り付けられ得る。図8に示されるように、各肩部区域76、78及び80は、そこに機械加工された溝88を含む。溝88は、螺旋形状又は同心状であり得、その上、各区域76、78及び80のそれぞれの表面に対し直角に機械加工され得る。
本発明は、図面を特に参照して説明されたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされ得ることが理解されるべきである。
30 摩擦撹拌溶接工具
32 支持体
34 軸線
36 ピン
40 肩部
46、60 溝
50、52 加工品
54 底部支持部材
56 底肩
32 支持体
34 軸線
36 ピン
40 肩部
46、60 溝
50、52 加工品
54 底部支持部材
56 底肩
Claims (23)
- 摩擦撹拌溶接工具であって、
軸の周りに回転可能で、肩部を規定する端部を有する支持体と、
支持体の前記端部から肩部の下方へ伸長する回転ピンと、
底部支持部材にして、前記回転ピンが支持体と当該底部支持部材との間に配置されるように該ピンの先端部に連結される底部支持部材とを備え、
底部支持部材は、前記軸の周りに回転可能で、かつ支持体の肩部に向く底肩部を含み、
底部支持部材の底肩部及び支持体の肩部の少なくとも一方は、テーパーが付けられ、
底部支持部材の底肩部にテーパーが付けられる場合、該テーパーは、底部支持部材の外側縁からピンに向かって上方に延長し、かつ該テーパー底肩部は少なくとも一の溝が形成された面を含み、
支持体の肩部にテーパーが付けられる場合、該テーパーは、支持体の外側縁からピンに向かって下方に延長し、かつ該テーパー肩部は少なくとも一つの溝が形成された面を含む摩擦撹拌溶接工具。 - 前記テーパーが付けられた底肩部又はテーパーが付けられた肩部に形成された前記少なくとも一つの溝は、螺旋形状溝及び複数の同心状溝から成る群から選択される請求項1の摩擦撹拌溶接工具。
- 前記支持体肩部及び/又は底部支持部材肩部のテーパーは、前記軸に垂直な面から1〜60度の角度で形成される請求項1の摩擦撹拌溶接工具。
- 前記支持体、ピン及び底部支持部材は一体形成される請求項1の摩擦撹拌工具。
- 摩擦撹拌溶接工具であって、
軸の周りに回転可能で、肩部を規定する端部を有する支持体と、
支持体の前記端部から肩部の下方へ伸長する回転ピンと、
底部支持部材にして、前記回転ピンが支持体と当該底部支持部材との間に配置されるように該ピンの先端部に連結される底部支持部材とを備え、
底部支持部材は、前記軸の周りに回転可能で、かつ支持体の肩部に向く底肩部を含み、
底部支持部材の底肩部及び支持体の肩部の少なくとも一方は、テーパーが付けられる少なくとも一つの区域を含み、
底部支持部材の底肩部にテーパーが付けられる場合、該テーパーは、底部支持部材の外側縁からピンに向かって上方に延長し、かつ該テーパー底肩部は少なくとも一の溝が形成された面を含み、
支持体の肩部にテーパーが付けられる場合、該テーパーは、支持体の外側縁からピンに向かって下方に延長し、かつ該テーパー肩部は少なくとも一つの溝が形成された面を含む摩擦撹拌溶接工具。 - 前記テーパーが付けられた底肩部又はテーパーが付けられた肩部に形成された前記少なくとも一つの溝は、螺旋形状溝及び複数の同心状溝から成る群から選択される請求項5の摩擦撹拌溶接工具。
- 前記支持体、ピン及び底部支持部材は一体形成される請求項5の摩擦撹拌工具。
- 前記支持体肩部及び/又は底部支持部材肩部のテーパーは、前記軸に垂直な面から1〜60度の角度で形成される請求項5の摩擦撹拌溶接工具。
- 前記底部支持部材の底肩部にテーパーが付けられる場合、該底肩部は、(a)扁平区域と、(b)ピンに向かって上方に延長するテーパーを有するテーパー区域とを含み、扁平区域及びテーパー区域は同心状で、ピンから底部支持部材の外側縁へと半径方向にずらされ、扁平区域及びテーパー区域の少なくとも一方は、そこに形成された少なくとも一つの溝を含み、
前記支持体の肩部にテーパーが付けられる場合、該肩部は、(a)扁平区域と、(b)ピンに向かって下方に延長するテーパーを有するテーパー区域とを含み、扁平区域及びテーパー区域は同心状で、ピンから支持体の外側縁へと半径方向にずらされ、扁平区域及びテーパー区域の少なくとも一方は、そこに形成された少なくとも一つの溝を含む請求項5の摩擦撹拌溶接工具。 - 前記扁平区域はピンに隣接して設けられ、前記テーパー区域は支持体又は底部支持部材の外側縁に隣接して設けられる請求項9の摩擦撹拌溶接工具。
- 前記扁平区域及びテーパー区域は、少なくとも一つの溝が形成された面を含む請求項9の摩擦撹拌溶接工具。
- 前記少なくとも一つの溝は、螺旋形状溝及び複数の同心状溝から成る群から選択される請求項11の摩擦撹拌溶接工具。
- 前記底部支持部材の底肩部にテーパーが付けられる場合、該底肩部は、ピンに向かって上方に延長し、かつ、前記軸に垂直な面から第1の角度で形成される第1のテーパーを有する第1テーパー区域と、ピンに向かって上方に延長し、かつ、前記軸に垂直な面から第1の角度とは異なる第2の角度で形成される第2のテーパーを有する第2テーパー区域とを含み、第1及び第2テーパー区域は同心状で、ピンから底部支持部材の外側縁へと半径方向にずらされ、第1及び第2テーパー区域の少なくとも一方は、そこに形成された少なくとも一の溝を含み、
前記支持体の肩部にテーパーが付けられる場合、該肩部は、ピンに向かって下方に延長し、かつ、前記軸に垂直な面から第1の角度で形成される第1のテーパーを有する第1テーパー区域と、ピンに向かって下方に延長し、かつ、前記軸に垂直な面から第1の角度とは異なる第2の角度で形成される第2のテーパーを有する第2テーパー区域とを含み、第1及び第2テーパー区域は同心状で、ピンから支持体の外側縁へと半径方向にずらされ、第1及び第2テーパー区域の少なくとも一方は、そこに形成された少なくとも一の溝を含む請求項5の摩擦撹拌溶接工具。 - 前記第2の角度は第1の角度より大きく、前記第1テーパー区域はピンに隣接して設けられ、第2テーパー区域は支持体又は底部支持部材の外側縁に隣接して設けられる請求項13の摩擦撹拌溶接工具。
- 前記第1及び第2テーパー区域各々は、少なくとも一つの溝が形成された面を含む請求項13の摩擦撹拌溶接工具。
- 前記少なくとも一つの溝は、螺旋形状溝及び複数の同心状溝から成る群から選択される請求項15の摩擦撹拌溶接工具。
- 前記底部支持部材の底肩部にテーパーが付けられる場合、該底肩部は、ピンに向かって上方に延長し、かつ、前記軸に垂直な面から第3の角度で形成される第3のテーパーを有する第3テーパー区域を更に含み、第1、第2及び第3テーパー区域は同心状で、ピンから底部支持部材の外側縁へと半径方向にずらされ、
前記支持体の肩部にテーパーが付けられる場合、該肩部は、ピンに向かって下方に延長し、かつ、前記軸に垂直な面から第3の角度で形成される第3のテーパーを有する第3テーパー区域を更に含み、第1、第2及び第3テーパー区域は同心状で、ピンから支持体の外側縁へと半径方向にずらされる請求項13の摩擦撹拌溶接工具。 - 前記第2の角度は第1及び第3の角度より大きく、前記第1テーパー区域はピンに隣接して設けられ、第3テーパー区域は支持体又は底部支持部材の外側縁に隣接して設けられ、かつ、第2テーパー区域は第1及び第3テーパー区域間に設けられる請求項17の摩擦撹拌溶接工具。
- 前記第3の角度は第1の角度と等しいか又はそれより大きい請求項18の摩擦撹拌溶接工具。
- 前記第3の角度は、第1の角度より大きく、第1の角度は、第1テーパー区域が扁平区域から成るように0度である請求項18の摩擦撹拌溶接工具。
- 各第1、第2及び第3テーパー区域は、少なくとも一つの溝が形成された面を含む請求項17の摩擦撹拌溶接工具。
- 前記第1、第2及び第3テーパー区域の各面に形成された前記少なくとも一つの溝は、螺旋形状溝及び複数の同心状溝から成る群から選択される請求項21の摩擦撹拌溶接工具。
- 前記第1、第2及び第3テーパー区域の各面に形成された前記少なくとも一つの溝は、該第1、第2及び第3の面それぞれに対し直角に形成される請求項22の摩擦撹拌溶接工具。
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