JP5358140B2 - 摩擦撹拌接合装置及び摩擦撹拌接合方法 - Google Patents

摩擦撹拌接合装置及び摩擦撹拌接合方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属材同士を接合する摩擦撹拌接合装置及び摩擦撹拌接合方法に関する。
従来、金属材の接合方法として、摩擦撹拌接合(FSW:Friction Stir Welding)が知られている。この摩擦撹拌接合を行う摩擦撹拌接合装置では、その回転ツールが、円柱形状を呈するショルダ部を有している(例えば、特許文献1参照)。
特開表平9−508073号公報
ここで、上述したような摩擦撹拌接合装置を用いて金属材同士を接合する場合、まず、回転ツールを回転手段で回転させながら、この回転ツールの先端側を金属材同士の当接部分に押し込む。このとき、回転ツールを、その発熱量が接合可能な所定発熱量となるように回転させる。そして、回転ツールの面圧が接合可能な所定面圧となるよう当該回転ツールを押圧すると共に、この回転ツールを移動手段で当接部分に沿って移動させる。これにより、回転ツールの回転で生じる摩擦熱が利用されて当接部分が塑性流動され、金属材同士が接合されることになる。
しかしながら、上述したような摩擦撹拌接合装置では、例えば接合する金属材の融点が高いと、場合によっては、回転手段や移動手段への負荷が大きくなり、これら回転手段及び移動手段の電力消費量が増加してしまうことがある。そのため、所望なエネルギ効率を得ることができないおそれがある。
そこで、本発明は、所望なエネルギ効率を得ることが可能な摩擦撹拌接合装置及び摩擦撹拌接合方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ショルダ部の先端面の外径(以下、「ショルダ径」という)に関して以下の知見を得た。
すなわち、ショルダ径を小さくすると、ショルダ部の先端面の面積が小さくなるため、回転ツールの面圧を所定面圧に保つべく押圧される接合荷重が低下する。よって、この接合荷重の低下に応じて、移動手段及び回転手段に対する負荷が低下する。一方、ショルダ部の先端面の面積が小さくなると、摩擦による発熱量が低減するため、発熱量を所定発熱量に保つべく回転ツールの回転数が増加する。よって、この回転数の増加に応じて、回転手段に対する負荷が大きくなる。この点、本発明者らは鋭意検討を重ね、回転手段においては、回転数増加よりも接合荷重低下の寄与が大きく、そのため、ショルダ部の先端面の面積が小さくすると、結果としては負荷が低下することを見出した。つまり、ショルダ径を小さくすると、移動手段及び回転手段に対する負荷が低下し、これらの消費電力量が低減するという知見を得た。
そこで、本発明者らは、ショルダ径に着目すれば、所望なエネルギ効率を得ることが可能になることに想到し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明に係る摩擦撹拌接合装置は、回転ツールを回転させながら当該回転ツールの先端側を金属材同士の当接部分に押し込むと共に、回転ツールを当接部分に沿って移動させることで、金属材同士を接合する摩擦撹拌接合装置であって、回転ツールの面圧が接合可能な所定面圧となるよう回転ツールを押圧する押圧手段と、回転ツールによる発熱量が接合可能な所定発熱量となるよう回転ツールを回転させる回転手段と、回転ツールを当接部分に沿って移動させる移動手段と、を備え、回転ツールは、円柱形状を呈するショルダ部を含んで構成されており、ショルダ部の先端面の外径は、回転手段及び移動手段の消費電力量に基づいて設定されていることを特徴とする。
この摩擦撹拌接合装置によれば、ショルダ径が、回転手段及び移動手段の消費電力量(以下、単に「電力消費量」という)に基づいて設定されている。よって、ショルダ径を小さくするに伴い消費電力量が低減するという上記関係を利用して、所望なエネルギ効率を得ることが可能になる。
また、回転ツールは、ショルダ部の先端面の中心部に設けられ円柱形状を呈するプローブ部をさらに含んで構成され、ショルダ部の先端面の外径は、プローブ部の先端面の外径に対する二乗比が下記式(1)を満たすことが好ましい。
/d<6 …(1)
但し、D:ショルダ部の先端面の外径
d:プローブ部の先端面の外径
この場合、消費電力量を低減し、高いエネルギ効率を得ることが可能となる。これは、ショルダ径の二乗がプローブ径の二乗の6倍よりも小さいと、消費電力量が顕著に低減することが見出されるためである。
ここで、ショルダ部の先端面の外径は、プローブ部の先端面の外径に対する二乗比が下記式(2)を満たすことが好ましい。
:d=4:1 …(2)
但し、D:ショルダ部の先端面の外径
d:プローブ部の先端面の外径
この場合、接合不良を抑制しつつショルダ径を最小化することができる。これは、ショルダ径の二乗がプローブ径の二乗の3倍よりも小さいと、場合によっては、ショルダ部の先端面が有する機能、つまり、プローブ部によって撹拌し塑性流動させた金属材を留めるという機能を、充分に発揮し難いことから、接合不良が生じてしまうおそれがあるためである。よって、上記式(2)を満たす場合、ショルダ径を小さくするに伴い消費電力量が低減するという上記関係から、消費電力量が一層低減されることとなる。
また、ショルダ部の先端面の外径は、具体的には、10mmよりも大きく且つ15mmよりも小さい場合がある。
また、ショルダ部は、その先端側周縁部を面取りしてなる面取部を有し、面取部は、ショルダ部の先端面の外径を画定することが好ましい。この場合、ショルダ部における面取部以外の部分でもって、ショルダ部の強度低下を抑制し、回転ツールの折損を防止することができる。
また、本発明に係る摩擦撹拌接合方法は、上記摩擦撹拌接合装置を用いて金属材同士を接合することを特徴とする。
この摩擦撹拌接合方法においても、ショルダ径を小さくするに伴い消費電力量が低減するという上記関係を利用して、所望なエネルギ効率を得ることが可能になる。
本発明によれば、所望なエネルギ効率を得ることが可能となる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る摩擦撹拌接合装置を示す概略斜視図である。図1に示すように、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1は、互いに突き合せられた外板10a,10b(金属材)同士を、その突合わせ部分(当接部分)Lに沿って接合するものである。なお、ここでの摩擦撹拌接合装置1は、荷重制御方式とされている。
外板10a,10bは、高融点材料である鉄鋼材料で形成された板材であり、鉄道車両等に採用されるものである。ここでは、外板10a,10bをオーステナイト系ステンレス鋼で形成し、その厚さを数mm程度としている。
この摩擦撹拌接合装置1は、回転ツール2及びツールホルダ3を備えている。回転ツール2は、突合わせ部分Lに押し込まれ回転されるものである。この回転ツール2は、円柱形状を呈するショルダ部8と、ショルダ部8の先端面8aの中心部に設けられ円柱形状を呈するプローブ部9と、を含んで構成されている(詳しくは、後述)。
ツールホルダ3は、金属等の延性材料で形成された略円柱形状を呈している。このツールホルダ3は、その下端部に回転ツール2の上端部が差し込まれている。これにより、回転ツール2は、ツールホルダ3に把持されることとなる。
また、摩擦撹拌接合装置1は、回転モータ(回転手段)4、移動モータ(移動手段)5及び押圧装置(押圧手段)6を備えている。回転モータ4は、回転ツール2の軸線(いわゆる、スピンドル軸)G回りに当該回転ツール2を回転させるモータである。移動モータ5は、回転ツール2を突合わせ部分Lに沿って移動させるモータである。押圧装置6は、回転ツール2に対し押付力としての接合荷重を加えるものであり、例えばZ軸シリンダが用いられている。これら回転モータ4、移動モータ5及び押圧装置6には、その動作を制御するコントローラ7が接続されている。
コントローラ7は、押圧装置6を制御し、押し込まれた回転ツール2の面圧が接合可能な所定面圧となるように接合荷重を制御する。また、コントローラ7は、回転モータ4を制御し、回転ツール2による発熱量が接合可能な所定発熱量となるように、回転ツール2の回転数を制御する。さらにまた、コントローラ7は、移動モータ5を制御し、回転ツール2を突合わせ部分Lに沿って移動させる速度(以下、「接合速度」という)を制御する。
以上に説明した摩擦撹拌接合装置1によって外板10a,10b同士を接合する場合、まず、外板10a,10bを載置部11に載置し、外板10a,10bの端面同士を互いに突き合わせる(図2のS1)。
続いて、回転ツール2を回転させながら、回転ツール2の先端側を外板10a,10bの突合わせ部分Lの一端に押し込む(S2)。このとき、回転ツール2の回転数は、回転ツール2による発熱量が所定発熱量(外板10a,10bを接合可能な発熱量)となるような回転数とされている。そして、回転ツール2を、その面圧が所定面圧(外板10a,10bを接合可能な面圧)となるような接合荷重でもって押圧する(S3)。
これにより、回転する回転ツール2と外板10a,10bとの間で発生する摩擦熱が利用され、塑性流動が生じる。具体的には、外板10a,10bが、プローブ部9によって撹拌されて回転ツール2側に溢れ出るよう流動する。これと共に、この流動した外板10a,10bが、ショルダ部8の先端面8aによって留められつつさらに撹拌される。その結果、外板10a,10bを互いに接合する接合部Wが形成される。
そして、回転ツール2を移動方向に対し手前側に傾斜角度θ(例えば、3°)で傾斜させた状態で、突合わせ部分Lの他端まで当該突合わせ部分Lに沿って移動させる(S4)。これにより、突合わせ部分Lの一端から他端に至るまで、接合部Wが形成されることとなる。その後、回転ツール2を外板10a,10bから引き上げ、処理を終了する。
次に、上述した回転ツール2について、詳細に説明する。
図3は、図1の摩擦撹拌接合装置における回転ツールの先端側を示す拡大断面図である。図3に示すように、回転ツール2は、外板10a,10bを摩擦撹拌させるためのものとして、その先端側(図示下側)が突合せ部分Lに押し込まれるツールである。この回転ツール2は、上述したように、ショルダ部8とプローブ部9とを含んで構成されている。
ショルダ部8の先端面8aは、流動した外板10a,10bを留めるために好ましいとして、中心に向かって窪むような傾斜面とされている。ショルダ部8は、その先端側周縁部の角部を面取りしてなる面取部Kを有している。面取部Kは、ショルダ部8の先端面8aの外径(以下、「ショルダ径」という)Dを画定する。
プローブ部9は、ショルダ径Dより小径の円柱形状を呈し、ショルダ部8の先端面8aに同軸に設けられている。プローブ部9の先端面9aの外径(以下、「プローブ径」という)dは、プローブ部9の強度と外板10a,10bの板厚とに基づいて、一義的に設定されている。ここでのプローブ径dは、強度を重視して6mmとされている。また、プローブ部9の高さは、ショルダ径Dに基づいて設定され、ここでは、1.3mmとされている。これにより、回転ツール2を傾斜角度θで傾斜させたとき(上記S4のとき)、ショルダ部8が外板10a,10bに強く干渉してしまうのを防止でき、例えば回転ツール2の面圧が不均一となるのを抑制できる。
ところで、摩擦撹拌接合装置1においては、ショルダ径Dが小さくなるに伴って、ショルダ部8の先端面8aの面積が小さくなることから、回転ツール2の面圧(先端面8a,9aの面圧)を所定面圧に保つべく押圧される接合荷重が低下し、かかる接合荷重低下に応じて各モータ4,5に対する負荷が低下する。一方、ショルダ部8の先端面8aの面積が小さくなると、摩擦による発熱量が低減するため、所定発熱量を保つべく回転ツール2の回転数が増加し、かかる回転数増加に応じて回転モータ4に対する負荷が大きくなる。
この点、本発明者らは鋭意検討を重ね、回転モータ2においては、回転数増加よりも接合荷重低下の寄与が大きく、そのため、先端面8aの面積が小さくなると、結果としては負荷が低下することを見出した。すなわち、ショルダ径Dを小さくするに伴って、各モータ4,5に対する負荷が低下し、モータ4,5の双方の消費電力量が低減するのである。
図4(a)は回転モータの電流値と接合速度との関係の一例を示すグラフであり、図4(b)は移動モータの電流値と接合速度との関係の一例を示すグラフである。各図において、D12,D15は、用いる回転ツール2がそれぞれ異なるデータであって、符号Dの後の数字がショルダ径Dの大きさ(mm)を意味している。D12,D15での各回転ツール2のプローブ径dは、一定(ここでは、6mm)としている。なお、D12,D15では、接合条件は、互いに同様なビート外観が得られる条件としている。ここでは、D12では回転数を900rpmとし、D15では回転数を600rpmとしている。
図4に示すように、ショルダ径Dを小さくすると、電流値ひいては消費電力量が低減するという関係が確認できる。具体的には、図4(a)に示すように、接合速度300mm/min〜600mm/minの範囲において、D15では、接合速度が大きくなるに連れて回転モータ4の電流値が急増し大きな値を示している。D12では、接合速度によらずに小さい値を維持している。また、図4(b)に示すように、移動モータ5の電流値についても、回転モータ4と同様な傾向となっている。
また、例えば、接合速度600mm/minの場合、「D15では、回転モータ4の電流値が51A、移動モータ5の電流値が3.8A」であるのに対し、「D12では、回転モータ4の電流値が21A、移動モータ5の電流値が2.1A」となっている。つまり、ショルダ径Dを4/5とすると、回転モータ4の電流値が約60%、移動モータ5の電流値が約45%だけ低減した。これにより、ショルダ径Dが小さい場合、各モータ4,5の電流値が低いものとなることがわかる。
従って、本実施形態の回転ツール2にあっては、ショルダ径Dと消費電力量との上記関係に基づき高いエネルギ効率得るべく、ショルダ径Dを消費電力量に基づいて設定しており、ここでは、12mmに設定している。よって、本実施形態では、ショルダ径Dと消費電力量との上記関係を好適に利用して、所望なエネルギ効率を得ることができる。
なお、図4(a)に示すように、D15では、接合速度が600mm/minのとき、電流値が上限を超えるために限界であるのに対し、本実施形態のD12では、接合速度を1500mm/minとしても、電流値が所定値(ここでは、40mA)以下とすることが可能となる。これにより、本実施形態では、接合速度を速めても各モータ4,5の消費電力量を低く維持できる。換言すると、本実施形態では、接合速度に関する消費電力量の最大値が所定値以下となるようショルダ径Dを設定している。その結果、最大接合速度を向上することができる。
また、本実施形態では、上述したように、ショルダ径Dが、12mmとされており、プローブ径dに対する二乗比が下式(1)を満たしている。これにより、消費電力量を低減し、高いエネルギ効率を得ることが可能となる。これは、図4に示すように、ショルダ径Dの二乗がプローブ径dの二乗の6倍よりも小さいD12では、ショルダ径Dの二乗がプローブ径dの二乗の6倍以上のD15に対し、消費電力量が顕著に低減されるためである。なお、本実施形態では、下式(1)を満たすショルダ径Dは、14.7mm以下となる。
/d<6 …(1)
但し、D:ショルダ径、d:プローブ径
ここで、ショルダ径Dの二乗がプローブ径dの二乗の3倍よりも小さいと、接合不良が生じ易くなるおそれがある。これは、次の理由による。すなわち、ショルダ部8の先端面8aは、プローブ部9により塑性流動する外板10a,10bを拡散しないよう留めるという機能を有する。そして、ショルダ径Dの二乗がプローブ径dの二乗の3倍よりも小さいと、かかる機能を充分に発揮され難くなると考えられるためである。
この点、本実施形態では、上述したように、ショルダ径Dが、12mmとされており、プローブ径dに対する二乗比が下式(2)を満たしている。つまり、本実施形態のショルダ径Dにあっては、接合不良を抑制しつつ最小化されている。その結果、良好な摩擦撹拌接合を実現しつつ、ショルダ径Dと消費電力量との上記関係(図4参照)から消費電力量を一層低減することができ、ショルダ径Dをエネルギ効率に関して最適化することが可能となる。よって、ランニングコストを低減できると共に、接続する一次側電源(ブレーカ等)の電気容量を抑制でき、設置コストを低減することが可能となる。
:d=4:1 …(2)
但し、D:ショルダ径、d:プローブ径
図5は、接合状態の判定結果の一例を示す表である。図5に示すように、プローブ径dを6mmで一定とした場合において、ショルダ径Dが12mmのとき(D:d=4:1のとき)、接合状態が良好(図中の○)となった。また、ショルダ径Dが12mmよりも小さい10mmのとき、接合状態が斑になり不良(図中の×)となった。これにより、ショルダ径Dの二乗がプローブ径dの二乗の4倍のとき(3倍よりも大きいとき)、ショルダ径Dは、接合不良を抑制しつつ最小化されるのを確認することができる。なお、上式(1),(2)にてショルダ径D及びプローブ径dが二乗関係にあるのは、先端面8aの上記機能がその面積に関わるためと考えられる。
ちなみに、本実施形態では、ショルダ径Dは、上式(1)及び上述したプローブ部9の機能を考慮すると、下式(3)を満たすことが好ましいといえる。つまり、ショルダ径Dは、10mmよりも大きく且つ15mmよりも小さいことが好ましい。より具体的には、ショルダ径Dは、10.4mmよりも大きく且つ14.7mm以下となることが好ましい。
3<D/d<6 …(3)
図6(a)は、回転モータにおける電流値の時間変化の一例を示すグラフであり、図6(b)は、移動モータにおける電流値の時間変化の一例を示すグラフである。各図中では、接合速度をともに600mm/minとしている。図6(a)に示すように、回転ツールを挿入後に移動開始する際、回転モータ4の電流値は、D15では大きく増加する一方、本実施形態のD12では大きな増加が見られない。これにより、本実施形態では、回転ツール2に対する負荷を低減でき、回転ツール2の折損を防止することも可能となる。
図7は、摩擦撹拌接合後の外板における図1のVII−VII線に沿う断面図である。図7(a)は、本実施形態の回転ツール2(ショルダ径12mm)によって摩擦撹拌接合を行った外板10a,10bを示し、図7(b)は、従来の回転ツール(ショルダ径15mm)によって摩擦撹拌接合を行った外板10a,10bを示している。図7(a),(b)に示すように、従来の回転ツールによる摩擦撹拌接合では、接合部Wの上面への入熱範囲が過剰であるため、角変形や接合線の歪みが大きくなる。これに対し、本実施形態の回転ツール2による摩擦撹拌接合においては、接合部Wの上面への入熱範囲が適正となり、良好な接合部Wが形成されているのがわかる。
また、本実施形態では、上述したように、ショルダ部8は、その先端側周縁部を面取りしてなる面取部Kを有し、面取部Kは、ショルダ径Dを画定している。これにより、例えばショルダ径Dを小径化したとしても、ショルダ部8における面取部K以外の部分の軸径を比較的大きいものに維持できる。そのため、かかる面取部K以外の部分でもって、ショルダ部8の強度低下を抑制し、回転ツール2の折損を防止することができる。さらにこの場合、面取部Kを設けるだけで上記効果を得られるため、汎用性が高いものといえる。
また、本実施形態では、上述したように、高融点材料の鉄鋼材料である外板10a,10bを、所望なエネルギ効率ひいては高いエネルギ効率で摩擦撹拌接合している。よって、本実施形態は、特に有効なものである。
図8は、押圧装置により回転ツールを押圧する圧力と接合速度との関係の一例を示すグラフである。図8に示すように、ショルダ径Dを小さくすると、必要な接合荷重(圧力)が小さくなることがわかる。よって、回転ツール2の剛性を下げることが可能となり、摩擦撹拌接合装置1の質量を低減することができる。
なお、本実施形態では、上述したように、回転ツール2のショルダ径Dは、上記式(2)を満たしており、接合不良の生じない範囲内での最小値となっている。よって、所定発熱量を確保するために回転ツール2の回転数が大きくなるため、プローブ部9による撹拌性を高めることができ、接合状態を一層良好とすることが可能となる。
ちなみに、本実施形態の回転ツール2のプローブ部9高さは、1.3mmであるのに対し、従来の回転ツール(ショルダ径15mm)のプローブ部9高さは、1.5mmとなっている。つまり、本実施形態では、プローブ部9の高さを低く設定することができる。これは、ショルダ径Dが小さくなるのに伴って、回転ツール2の移動の際に(上記S4の際に)ショルダ部8が外板10a,10bに干渉し難くなるためである。その結果、プローブ部9の曲げ強度を高めることができ、長寿命化が可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、鉄鋼材料である外板10a,10bを摩擦撹拌接合したが、例えばアルミニウム合金等の非鉄金属材料を摩擦撹拌接合してもよい。
また、上記実施形態では、外板10a,10bを互いに突合せて接合(いわゆる、突合せ接合)したが、接合形態は限定されるものではなく、外板10a,10bを重ね合わせて接合(いわゆる、重ね合わせ接合)してもよい。
図9は、重ね合わせた外板を摩擦撹拌接合した結果を示す図7に対応する断面図である。図9(a)は、回転ツール2(ショルダ径12mm)によって摩擦撹拌接合を行った外板10c,10dを示し、図9(b)は、従来の回転ツール(ショルダ径15mm)によって摩擦撹拌接合を行った外板10c,10dを示している。図9(a),(b)に示すように、本発明は、重ね合わせ接合にも好適に適用可能であることがわかる。また、回転ツール2を重ね合わせ接合に適用した溶接部W(図9(a)参照)にあっては、図7に示す結果と同様に、従来の回転ツールにより形成された接合部W(図9(b)参照)に比べ、その上面への入熱範囲が適正となり、接合状態が良好であるのがわかる。
また、上記の「4:1」、「円柱形状」、「中央部」は、略4:1、略円柱形状、略中央部をそれぞれ含んでおり、例えば寸法公差や製造上の誤差等によるばらつきを含むものである。
なお、本発明の接合は、当接部分に沿って連続的に接合部を形成する連続接合(通常のFSW)と、断続的に接合部を形成する断続接合(スポットFSW)と、を含むものである。よって、本発明の接合には、例えば上記の突合せ接合及び重ね合わせ接合との関係を考慮すると、突合せ連続接合、突合せ断続接合、重ね合わせ連続接合、及び重ね合わせ断続接合等を含んでいる。
本発明の一実施形態に係る摩擦撹拌接合装置を示す概略斜視図である。 図1の摩擦撹拌接合装置によって外板同士を接合する方法の手順を示すフローチャートである。 図1の摩擦撹拌接合装置における回転ツールの先端側を示す拡大断面図である。 (a)は回転モータの電流値と接合速度との関係の一例を示すグラフであり、(b)は移動モータの電流値と接合速度との関係の一例を示すグラフである。 接合状態の判定結果の一例を示す表である。 (a)は回転モータにおける電流値の時間変化の一例を示すグラフであり、(b)は移動モータにおける電流値の時間変化の一例を示すグラフである。 外板における図1のVII−VII線に沿う断面図である。 押圧装置により回転ツールに負荷する圧力と接合速度との関係の一例を示すグラフである。 重ね合わせた外板を摩擦撹拌接合した結果を示す図7に対応する断面図である。
符号の説明
1…摩擦撹拌接合装置、2…回転ツール、4…回転モータ(回転手段)、5…移動モータ(移動手段)、6…押圧装置(押圧手段)、8…ショルダ部、8a…先端面、9…プローブ部、9a…先端面、10a,10b…外板(金属材)、K…面取部、L…突合せ部分(当接部分)、D…ショルダ径、d…プローブ径。

Claims (3)

  1. 回転ツールを回転させながら当該回転ツールの先端側を、互いに厚さが等しいオーステナイト系ステンレス鋼の板材である金属材同士の当接部分に押し込むと共に、前記回転ツールを前記当接部分に沿って移動させることで、前記金属材同士を突合わせ接合する摩擦撹拌接合装置であって、
    前記回転ツールの面圧が接合可能な所定面圧となるよう前記回転ツールを押圧する押圧手段と、
    前記回転ツールによる発熱量が接合可能な所定発熱量となるよう前記回転ツールを回転させる回転手段と、
    前記回転ツールを前記当接部分に沿って移動させる移動手段と、を備え、
    前記回転ツールは、
    円柱形状を呈する、先端面の外径が12mmのショルダ部と、
    前記ショルダ部の先端面の中心部に設けられ円柱形状を呈するプローブ部と、を含んで構成されており、
    前記ショルダ部の先端面の外径は、
    前記回転手段を移動させる速度に関する前記移動手段の消費電力量の最大値が所定値以下となるように設定され、
    前記プローブ部の先端面の外径に対する二乗比が下記式(2)を満たすことを特徴とする摩擦撹拌接合装置。
    :d=4:1 …(2)
    但し、D:ショルダ部の先端面の外径
    d:プローブ部の先端面の外径
  2. 前記ショルダ部は、その先端側周縁部を面取りしてなる面取部を有し、
    前記面取部は、前記ショルダ部の先端面の外径を画定することを特徴とする請求項1記載の摩擦撹拌接合装置。
  3. 請求項1又は2記載の摩擦撹拌接合装置を用いて前記金属材同士を接合することを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
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