JP2008218282A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】液体燃料を用いた燃料電池において、出力およびその立ち上がり特性を向上させる。
【解決手段】燃料電池1は、燃料極13と、空気極16と、前記燃料極13と前記空気極16とに挟持された電解質膜17とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の燃料極13側に配置された複数の燃料流通孔20を有する燃料極用集電体18と、前記膜電極接合体の空気極16側に配置された空気極用集電体19とを具備する。膜電極接合体には、燃料収容部4と流路5を介して接続された燃料分配機構3から燃料が供給される。燃料分配機構3は複数の燃料排出口32を有し、その50%(個数比)以上が燃料極用集電体18の燃料流通孔20と少なくとも一部が重なるように配置される。
【選択図】図1
【解決手段】燃料電池1は、燃料極13と、空気極16と、前記燃料極13と前記空気極16とに挟持された電解質膜17とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の燃料極13側に配置された複数の燃料流通孔20を有する燃料極用集電体18と、前記膜電極接合体の空気極16側に配置された空気極用集電体19とを具備する。膜電極接合体には、燃料収容部4と流路5を介して接続された燃料分配機構3から燃料が供給される。燃料分配機構3は複数の燃料排出口32を有し、その50%(個数比)以上が燃料極用集電体18の燃料流通孔20と少なくとも一部が重なるように配置される。
【選択図】図1
Description
本発明は液体燃料を用いた燃料電池に関する。
近年、ノートパソコンや携帯電話等の各種携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、これら携帯用電子機器の電源に燃料電池を用いる試みがなされている。燃料電池は燃料と空気を供給するだけで発電することができ、燃料を補給すれば連続して長時間発電することが可能であるという特徴を有している。このため、燃料電池を小型化できれば、携帯用電子機器の電源として極めて有利なシステムといえる。
直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)は小型化が可能であり、さらに燃料の取り扱いも容易であるため、携帯用電子機器の電源として有望視されている。DMFCにおける液体燃料の供給方式としては、気体供給型や液体供給型等のアクティブ方式、また燃料収容部内の液体燃料を電池内部で気化させて燃料極に供給する内部気化型等のパッシブ方式が知られている。
これらのうち、内部気化型等のパッシブ方式はDMFCの小型化に対して特に有利である。パッシブ型DMFCにおいては、例えば燃料極、電解質膜および空気極を有する膜電極接合体(燃料電池セル)を、樹脂製の箱状容器からなる燃料収容部上に配置した構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。燃料収容部から気化した燃料を直接燃料電池セルに供給する場合、燃料電池の出力の制御性を高めることが重要となるが、現状のパッシブ型DMFCでは必ずしも十分な出力制御性は得られていない。
一方、DMFCの燃料電池セルと燃料収容部とを流路を介して接続することが検討されている(特許文献2〜4参照)。燃料収容部から供給された液体燃料を燃料電池セルに流路を介して供給することによって、流路の形状や径等に基づいて液体燃料の供給量を調整することができる。ただし、流路からの液体燃料の供給構造によっては、燃料電池セルに対する燃料の供給状態が不均一になり、燃料電池の出力が低下するおそれがある。例えば、溝状の流路に沿って液体燃料を流す場合、流路を液体燃料が流れるにつれて順次燃料が消費されていくため、流路出口側では燃料濃度が減少する。このため、燃料電池セルの流路出口に近い部分では発電反応が低下し、その結果として出力の低下を招いてしまう。
また、特許文献3では燃料収容部から流路にポンプで液体燃料を供給している。特許文献3にはポンプに代えて、流路に電気浸透流を形成する電界形成手段を用いることも記載されている。特許文献4には電気浸透流ポンプを用いて液体燃料等を供給することが記載されている。燃料の循環構造を適用した燃料電池ではポンプが有効であるものの、パッシブ型DMFCのように燃料を循環させない場合には単にポンプを適用しても燃料消費量が増大するだけで、燃料電池セル全体での均一な発電反応を生起することは難しい。特に濃厚な燃料を使用する場合、単位時間当たりに供給される燃料の量が微量となるため、供給された燃料による発電遅れや、燃料の不均一が発生しやすくなる。
この課題を解決する手段として、燃料をポンプ等の燃料移送手段により燃料電池セルに供給する箇所を複数点とし、燃料電池セル内での燃料分布の均一性を改善することが検討されている。しかしながら、これらの複数の燃料供給箇所と燃料電池セルを構成する集電体との位置関係等によっては、所望の特性が得られないことが明らかとなってきた。
国際公開第2005/112172号パンフレット
特表2005−518646号公報
特開2006−085952号公報
米国特許公開第2006/0029851号公報
本発明は、燃料電池の小型化等を損なうことなく、燃料電池セルへの燃料の供給状態を均一化することができ、しかも、燃料の供給開始と共に燃料電池セルにおいて速やかに発電反応を生起させることができ、出力およびその立ち上がり特性を向上させることができる燃料電池を提供することを目的とする。また、本発明は、燃料電池セルへの燃料供給の制御性を高めることができ、動作の安定化を図ることができる燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る燃料電池は、燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の燃料極側に配置された複数の燃料流通孔を有する燃料極用集電体と、前記膜電極接合体の空気極側に配置された空気極用集電体と、前記膜電極接合体の前記燃料極側に配置され、前記燃料極の面方向に燃料を分散させて供給するように設けられた複数の燃料排出口を有する燃料分配機構と、液体燃料を収容すると共に、前記燃料分配機構と流路を介して接続された燃料収容部とを具備し、前記複数の燃料排出口は個数比で50%以上が前記燃料極用集電体の燃料流通孔と少なくとも一部が重なるように配置されていることを特徴としている。
本発明の一態様に係る燃料電池は、燃料収容部から流路を介して燃料分配機構に液体燃料を供給し、燃料分配機構で燃料電池セルに対し複数所で燃料を供給すると共に、該供給箇所の所定数が燃料電池セルに設けられた燃料極用集電体の燃料流通孔と少なくとも一部が重なるように構成しているため、燃料電池セルへ燃料を均一に供給することができると共に、燃料電池セルにおいて速やかに発電反応を生起させることができる。これによって、燃料電池の小型化等を損なうことなく、出力およびその立ち上がり特性を向上させることができる。また、燃料電池セルへの燃料供給の制御性を高めることができ、動作の安定化を図ることが可能になる。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施形態による燃料電池の構成を示す断面図である。図1に示す燃料電池1は、起電部を構成する燃料電池セル2と、この燃料電池セル2に燃料を供給する燃料分配機構3と、液体燃料を収容する燃料収容部4と、これら燃料分配機構3と燃料収容部4とを接続する流路5とから主として構成されている。
燃料電池セル2は、アノード触媒層11とアノードガス拡散層12とを有するアノード(燃料極)13と、カソード触媒層14とカソードガス拡散層15とを有するカソード(空気極/酸化剤極)16と、アノード触媒層11とカソード触媒層14とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜17とから構成される膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)、並びに、アノードガス拡散層12およびカソードガス拡散層15にそれぞれ積層された燃料極用集電体18および空気極用集電体19を有している。
アノード触媒層11やカソード触媒層14に含有される触媒としては、例えばPt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等の白金族元素の単体、白金族元素を含有する合金等が挙げられる。アノード触媒層11にはメタノールや一酸化炭素等に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Mo等を用いることが好ましい。カソード触媒層14にはPtやPt−Ni等を用いることが好ましい。ただし、触媒はこれらに限定されるものではなく、触媒活性を有する各種の物質を使用することができる。触媒は炭素材料のような導電性担持体を使用した担持触媒、あるいは無担持触媒のいずれであってもよい。
電解質膜17を構成するプロトン伝導性材料としては、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸重合体のようなフッ素系樹脂(ナフィオン(商品名、デュポン社製)やフレミオン(商品名、旭硝子社製)等)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂等の有機系材料、あるいはタングステン酸やリンタングステン酸等の無機系材料が挙げられる。ただし、プロトン伝導性の電解質膜17はこれらに限られるものではない。
アノード触媒層11に積層されるアノードガス拡散層12は、主としてアノード触媒層11に燃料を均一に供給する役割を有する。カソード触媒層14に積層されるカソードガス拡散層15は、主としてカソード触媒層14に酸化剤を均一に供給する役割を有する。アノードガス拡散層12およびカソードガス拡散層15は多孔質基材で構成されている。
アノードガス拡散層12およびカソードガス拡散層15にそれぞれ積層される燃料極用集電体18および空気極用集電体19は、例えばAuのような導電性金属材料からなるメッシュ、多孔質膜、薄膜等で構成される。そして、アノードガス拡散層12は、複数の燃料流通孔20を有している。
燃料電池セル2上にはカバープレート21が積層され、このカバープレート21と電解質膜17との間、および電解質膜17と燃料分配機構3との間には、それぞれゴム製のOリング22が介在されている。Oリング22によって燃料電池セル2からの燃料漏れや酸化剤漏れが防止される。
図示を省略したが、カバープレート21は酸化剤である空気を取入れるための開口を有している。カバープレート21と空気極用集電体19との間には、必要に応じて保湿層や表面層が配置される。保湿層はカソード触媒層14で生成された水の一部が含浸されて、水の蒸散を抑制すると共に、カソード触媒層14への空気の均一拡散を促進するものである。表面層は空気の取入れ量を調整するものであり、空気の取入れ量に応じて個数や大きさ等が調整された複数の空気導入口を有している。
燃料収容部4には、燃料電池セル2に対応した液体燃料が収容されている。液体燃料としては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。液体燃料は必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料は、例えばエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。いずれにしても、燃料収容部4には燃料電池セル2に応じた液体燃料が収容される。
燃料電池セル2のアノード(燃料極)13側には、燃料分配機構3が配置されている。燃料分配機構3は配管のような液体燃料の流路5を介して燃料収容部4と接続されている。燃料分配機構3には燃料収容部4から流路5を介して液体燃料が導入される。流路5は燃料分配機構3や燃料収容部4と独立した配管に限られるものではない。例えば、燃料分配機構3と燃料収容部4とを積層して一体化する場合、これらを繋ぐ液体燃料の流路であってもよい。燃料分配機構3は流路5を介して燃料収容部4と接続されていればよい。
流路5には、燃料の移送手段としてポンプ41が介挿されている。ポンプ41は燃料を循環される循環ポンプではなく、あくまでも燃料収容部4から燃料分配機構3に液体燃料を送液する燃料供給ポンプである。このようなポンプ41で必要時に液体燃料を送液することによって、燃料供給量の制御性を高めることができる。
ポンプ41の種類は特に限定されるものではないが、少量の液体燃料を制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能という観点から、ロータリーベーンポンプ、電気浸透流ポンプ、ダイアフラムポンプ、しごきポンプ等を使用することが好ましい。ロータリーベーンポンプはモータで羽を回転させて送液するものである。電気浸透流ポンプは電気浸透流現象を起こすシリカ等の焼結多孔体を用いたものである。ダイアフラムポンプは電磁石や圧電セラミックスによりダイアフラムを駆動して送液するものである。しごきポンプは柔軟性を有する燃料流路の一部を圧迫し、燃料をしごき送るものである。これらのうち、駆動電力や大きさ等の観点から、電気浸透流ポンプや圧電セラミックスを有するダイアフラムポンプを使用することがより好ましい。
なお、液体燃料の燃料収容部4から燃料分配機構3への移送手段は、ポンプ41に限られるものではない。例えば、使用時の設置場所が固定される場合には、重力を利用して液体燃料を燃料収容部4から燃料分配機構3まで落下させて送液することができる。また、多孔体等を充填した流路5を用いることによって、毛細管現象で燃料収容部4から燃料分配機構3まで送液することができる。さらに、燃料収容部4を加圧しその圧力により液体燃料を燃料収容部4から燃料分配機構3へ送液することができる。また、燃料分配機構3からMEAへの燃料供給が行われる構成であればポンプ6に代えて燃料遮断バルブを配置する構成とすることも可能である。この場合には、燃料遮断バルブは、流路による液体燃料の供給を制御するために設けられるものである。
燃料分配機構3は、図2に示すように、液体燃料が流路5を介して流入する少なくとも1個の燃料注入口31と、液体燃料やその気化成分を排出する複数の燃料排出口32とを有する燃料分配板33を備えている。燃料分配板33の内部には図1に示すように、燃料注入口31から導かれた液体燃料の通路となる空隙部34が設けられている。複数の燃料排出口32は燃料通路として機能する空隙部34にそれぞれ直接接続されている。
燃料注入口31から燃料分配機構3に導入された液体燃料は空隙部34に入り、この燃料通路として機能する空隙部34を介して複数の燃料排出口32にそれぞれ導かれる。複数の燃料排出口32には、例えば液体燃料の気化成分のみを透過し、液体成分は透過させない気液分離体(図示せず)を配置してもよい。これによって、燃料電池セル2のアノード(燃料極)13には液体燃料の気化成分が供給される。なお、気液分離体は燃料分配機構3と燃料極用集電体18との間に気液分離膜等として設置してもよい。液体燃料の気化成分は複数の燃料排出口32から燃料極用集電体18の複数箇所に向けて排出される。
燃料排出口32は燃料電池セル2の全体に燃料を供給することが可能なように、燃料分配板33の燃料極用集電体18と接する面に複数設けられている。燃料排出口32の個数は2個以上であればよいが、燃料電池セル2の面内における燃料供給量を均一化する上で、0.1〜10個/cm2の燃料排出口32が存在するように形成することが好ましい。燃料排出口32の個数が0.1個/cm2未満であると、燃料電池セル2に対する燃料供給量を十分に均一化することができない。燃料排出口32の個数を10個/cm2を超えて形成しても、それ以上の効果が得られない。
燃料分配機構3から放出された燃料は、燃料電池セル2の燃料極用集電体18を介してアノード(燃料極)13に供給される。燃料電池セル2内において、燃料はアノードガス拡散層12を拡散してアノード触媒層11に供給される。液体燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層11で下記(1)式に示すメタノールの内部改質反応が生じる。なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、カソード触媒層14で生成した水や電解質膜17中の水をメタノールと反応させて(1)式の内部改質反応を生起させる。あるいは、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e− …(1)
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e− …(1)
この反応で生成した電子(e−)は燃料極用集電体18を経由して外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、カソード(空気極)16に導かれる。また、(1)式の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は電解質膜17を経てカソード16に導かれる。カソード16には酸化剤として空気が供給される。カソード16に到達した電子(e−)とプロトン(H+)は、カソード触媒層14で空気中の酸素と下記(2)式にしたがって反応し、この反応に伴って水が生成する。
6e−+6H++(3/2)O2 → 3H2O …(2)
6e−+6H++(3/2)O2 → 3H2O …(2)
なお、図1に示す燃料電池1において、燃料分配機構3から燃料電池セル2に供給された燃料は発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容部4に戻されることはない。図1に示す燃料電池1は燃料を循環しないことから、従来のアクティブ方式とは異なるものであり、装置の小型化等を損なうものではない。また、液体燃料の供給にポンプ41を使用しており、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも異なるため、図1に示す燃料電池1は例えばセミパッシブ型と呼称される方式を適用したものである。
上述した燃料電池1の発電反応において、供給された燃料が速やかにアノード触媒層11へ移動することは、燃料電池の出力立ち上がりを迅速にする上で非常に重要な点である。そのため、本実施形態においては、アノード13側の集電体、つまり燃料極用集電体18に、前述したように、燃料分配機構3の燃料排出口32から供給された燃料が通過するための開口部、燃料流通孔20を複数設けると共に、燃料排出口32の50%(個数比)以上がそれらの燃料流通孔32と少なくとも一部が重なるようにしている。
図3に燃料極用集電体18の外観を示す。図示したように、燃料極用集電体18には複数の燃料流通孔20が設けられており、これらの燃料流通孔20に対し、燃料排出口32の総個数の50%以上が少なくとも一部重なるようにすることにより、燃料を速やかにアノード触媒層11へ移動させることができ、燃料電池の出力の立ち上がりを迅速にすることができる。燃料流通孔20に対しすべての燃料排出口32が、例えば図4に示すように、重なるようにすることが好ましいが、例えば図5に示すように、燃料排出口32の総個数の50%未満であれば、燃料流通孔20と全く重ならない燃料排出口32が存在していてもよい。図3ないし図5において、23は、燃料極用集電体18に取り付けられたリードを示している。
ここで、第1の実施形態の具体例(実施例)として、燃料排出口32の90%(個数比)が燃料極用集電体18の燃料流通孔20と少なくとも一部が重なるように配置した燃料分配機構3を有する燃料電池1を作製し、燃料の供給開始からの燃料電池の出力の変化を調べた結果を図6に示す。なお、MEAの形状は40×80mmとし、また液体燃料に濃度90%のメタノール水溶液を使用した。図6から明らかなように、この実施例の燃料電池では、出力は燃料を供給した時点から増加し始め、約10分後に最高出力に達した。最高出力の80%に到達するまでの時間は、約4.5分であった。
また、燃料流通孔20と少なくとも一部が重なる燃料排出口32の割合を変えた以外は実施例と同様にして燃料電池を作製し、燃料の供給開始からの燃料電池の出力の変化を測定し、燃料流通孔20と少なくとも一部が重なった燃料排出口32の割合(個数比)と最高出力の80%に到達するまでの時間との関係を調べた。結果は図7に示した通りで、燃料流通孔20と少なくとも一部が重なった燃料排出口32の割合が50%以上になると、最高出力の80%に到達するまでの時間が急激に短くなっている。
出力の立ち上がり時間が短くなると、燃料の供給を制御する系の遅れ時間が短くなり、燃料制御の応答性が改善され、出力の変動が抑制される。また、燃料電池に環境温度、負荷変動等の外乱が加わった場合にも、安定状態に復帰するまでの時間を短くすることができる。これらの特性はいずれも、実用的な燃料電池を構成する上で極めて重要な意義を有するものである。
実施例で用いた燃料分配機構3はその内部に設けられた空隙部34から燃料を複数の燃料排出口32に分配している。このため、厳密には燃料注入口31に近い側の温度が若干高く、奥に行くに従って温度が低下する現象が観察される。また、燃料電池1を傾斜させた場合には重力の影響等から傾斜方向によって温度分布が変化し、下側の部分の反応が高くなる傾向が観察される。実用上はこれでも十分な性能を得ることができるが、さらに出力を改善するためには、図8に示すように、燃料注入口31と複数の燃料排出口32とを細管35で接続した燃料分配機構3を用いることが好ましい。
図8に示す燃料分配機構3は、液体燃料が流入する少なくとも1個の燃料注入口31と、液体燃料もしくはその気化成分を排出する複数の燃料排出口32とを有する燃料分配板33Aを備えている。燃料分配板33Aの内部には、液体燃料の通路として機能する細管35が形成されている。細管35の一端(始端部)には燃料注入口31が設けられている。細管35は途中で複数に分岐しており、これら分岐した細管35の各終端部に燃料排出口32がそれぞれ設けられている。細管35は例えば内径が0.05〜5mmの貫通孔であることが好ましい。
燃料注入口31から燃料分配機構3に導入された液体燃料は、複数に分岐した細管35を介して複数の燃料排出口32にそれぞれ導かれる。なお、図8に示す燃料分配機構3は、その内部の燃料通路として細管35を用いる以外は図1に示した燃料分配機構3と同様な構成を有している。このような構造の燃料分配機構3を使用することによって、燃料注入口31から燃料分配機構3内に注入された液体燃料を方向や位置に係わりなく、複数の燃料排出口32に均等に分配することができる。従って、燃料電池セル2の面内における発電反応の均一性をより一層高めることが可能となる。
さらに、細管35で燃料注入口31と複数の燃料排出口32とを接続することによって、燃料電池1の特定箇所により多くの燃料を供給するような設計が可能となる。例えば、装置装着上の都合から燃料電池1の半分の放熱がよくなってしまうような場合、従来では温度分布が生じてしまい、平均出力の低下が避けられない。これに対して、細管35の形成パターンを調整し、予め放熱のよい部分に燃料排出口32を密に配置することによって、その部分での発電に伴う発熱を多くすることができる。これによって、面内の発電度合いを均一化することができ、出力低下を抑制することが可能となる。
また、燃料分配機構3とアノード(燃料極)13との間には、例えば図9に示すように多孔体24を挿入することができる。図9は、図8に示す燃料電池1に多孔体24を用いた例である。多孔体24の構成材料としては各種樹脂が使用され、多孔質状態の樹脂フィルム等が多孔体24として用いられる。このような多孔体24を配置することによって、燃料極13に対する燃料供給量をより一層平均化することができる。すなわち、燃料分配機構3の燃料排出口32から噴出した液体燃料は一旦多孔体24に吸収され、多孔体24の内部で面内方向に拡散する。この後、多孔体24から燃料極13に燃料が供給されるため、燃料供給量をより一層平均化することが可能となる。多孔体24は複数の多孔膜を積層して配置してもよい。
第1の実施形態の燃料電池1においては、燃料収容部4や流路5に燃料収容部4内の圧力を外気とバランスさせるバランスバルブを装着することが好ましい。図10は、図1に示す燃料電池1の燃料収容部4にバランスバルブ42を設置した状態を示している。バランスバルブ42は、燃料収容部4内の圧力に応じてバルブ可動片43を動作させるスプリング44と、バルブ可動片43をシールして閉状態とするシール部45とを有している。
燃料収容部4から液体燃料が燃料分配機構3に供給され、燃料収容部4の内圧が減圧状態になると、バランスバルブ42のバルブ可動片43が外圧を受け、スプリング44の反発力に打ち勝ってシール部45が開放される。このバランスバルブ42の開放状態に基づいて、外気が内外圧力差を減少するよう導入される。内外の圧力差が解消されると、再度バルブ可動片43が移動して、シール部45が密閉される。
このように動作するバランスバルブ42を燃料収容部4等に設置することによって、液体燃料の供給に伴って発生する燃料収容部4の内圧低下に起因する送液量の変動を抑制することができる。すなわち、燃料収容部4内が減圧状態になると、ポンプ41による液体燃料の吸い込みが不安定になり、送液量が変動しやすくなる。このような送液量の変動をバランスバルブ42を設置することで解消することができる。従って、燃料電池1の動作安定性を向上させることが可能となる。
上述した実施形態の燃料電池1は、各種の液体燃料を使用した場合に効果を発揮し、液体燃料の種類や濃度は限定されるものではない。ただし、複数の燃料排出口22を有する燃料分配機構3の特徴がより顕在化するのは燃料濃度が濃い場合である。このため、各実施形態の燃料電池1、30は、濃度が80%以上のメタノールを液体燃料として用いた場合に、その性能や効果を特に発揮することができる、従って、各実施形態は濃度が80%以上のメタノールを液体燃料として用いた燃料電池に適用することが好ましい。
なお、本発明は液体燃料を使用した各種の燃料電池に適用することができる。また、燃料電池の具体的な構成や燃料の供給状態等も特に限定されるものではなく、MEAに供給される燃料の全てが液体燃料の蒸気、全てが液体燃料、または一部が液体状態で供給される液体燃料の蒸気等、種々形態に本発明を適用することができる。実施段階では本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。さらに、上記実施形態に示される複数の構成要素を適宜に組合せたり、また実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除する等、種々の変形が可能である。本発明の実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、この拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1…燃料電池、2…燃料電池セル、3…燃料分配機構、4…燃料収容部、5…流路、11…アノード触媒層、12…アノードガス拡散層、13…アノード(燃料極)、14…カソード触媒層、15…カソードガス拡散層、16…カソード(空気極)、17…電解質膜、18…燃料極用集電体、19…空気極用集電体、20…燃料流通孔、24…多孔体、31…燃料注入口、32…燃料排出口、33,33A…燃料分配板、34…空隙部、35…細管、41…ポンプ、42…バランスバルブ。
Claims (9)
- 燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の燃料極側に配置された複数の燃料流通孔を有する燃料極用集電体と、
前記膜電極接合体の空気極側に配置された空気極用集電体と、
前記膜電極接合体の前記燃料極側に配置され、前記燃料極の面方向に燃料を分散させて供給するように設けられた複数の燃料排出口を有する燃料分配機構と、
液体燃料を収容すると共に、前記燃料分配機構と流路を介して接続された燃料収容部とを具備し、
前記複数の燃料排出口は個数比で50%以上が前記燃料極用集電体の燃料流通孔と少なくとも一部が重なるように配置されていることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1記載の燃料電池において、
前記燃料分配機構は、前記液体燃料が前記流路を介して流入する燃料注入口と、前記燃料注入口と燃料通路を介して接続された前記複数の燃料排出口とを有する燃料分配板を備えることを特徴とする燃料電池。 - 請求項2記載の燃料電池において、
前記燃料通路は前記燃料分配板の内部に形成された細管を有することを特徴とする燃料電池。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の燃料電池において、
さらに、前記流路に設けられた燃料供給ポンプを具備することを特徴とする燃料電池。 - 請求項4記載の燃料電池において、
前記燃料供給ポンプは電気浸透流ポンプ、ダイアフラムポンプ、ロータリーベーンポンプおよびしごきポンプから選ばれる1種であることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の燃料電池において、
さらに、前記燃料収容部または前記流路に接続され、外気を導入して前記燃料収容部内の内圧を調整するバランスバルブを具備することを特徴とする燃料電池。 - 請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の燃料電池において、
さらに、前記膜電極接合体と前記燃料分配機構との間に配置された少なくとも1つの多孔体を具備することを特徴とする燃料電池。 - 請求項1ないし請求項7のいずれか1項記載の燃料電池において、
前記液体燃料はメタノール燃料であることを特徴とする燃料電池。 - 請求項8記載の燃料電池において、
前記メタノール燃料は、メタノール濃度が80%以上のメタノール水溶液または純メタノールであることを特徴とする燃料電池。
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